(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122334
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】組立支援装置及び組立方法
(51)【国際特許分類】
B66B 23/00 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
B66B23/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029819
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波田野 利昭
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321AA01
3F321CD20
(57)【要約】
【課題】作業効率の向上を図ることができる組立支援装置を提供する。
【解決手段】組立支援装置100は、機器101を有する機器調整ユニット106と、機器調整ユニット106を支持する支持ユニット108と、を備えている。機器調整ユニット106は、作業対象物4に設けられた基準13芯を検出する基準芯センサ105と、機器101が取り付けられるベースプレート113と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業対象物に対して所定の作業を行う機器を支持する組立支援装置において、
前記機器を有する機器調整ユニットと、
前記機器調整ユニットを支持する支持ユニットと、を備え、
前記機器調整ユニットは、
前記作業対象物に設けられた基準芯を検出する基準芯センサと、
前記機器が取り付けられるベースプレートと、
を備えた組立支援装置。
【請求項2】
前記機器調整ユニットは、
前記基準芯センサ及び前記ベースプレートの位置を調整可能に支持する位置調整部を有する
請求項1に記載の組立支援装置。
【請求項3】
前記基準芯センサは、
前記作業対象物の幅方向の基準となる第1基準芯を検出する第1基準芯センサと、
前記作業対象物の高さ方向の基準となる第2基準芯を検出する第2基準芯センサと、を有し、
前記機器調整ユニットは、前記第1基準芯センサが設けられた第1支持部材と、
前記第2基準芯センサが設けられた第2支持部材と、を有し、
前記第1支持部材及び前記第2支持部材は、前記位置調整部に移動可能に支持される
請求項2に記載の組立支援装置。
【請求項4】
前記機器調整ユニットは、前記基準芯センサ及び前記ベースプレートの姿勢を調整可能に支持する姿勢調整部を有する
請求項2に記載の組立支援装置。
【請求項5】
前記機器調整ユニットは、前記作業対象物に対する機器調整ユニットの傾きを検出する傾斜検出部を有する
請求項4に記載の組立支援装置。
【請求項6】
前記支持ユニットは、
前記機器調整ユニットを支持する横梁と、
前記横梁を支持する支持柱と、
前記支持柱の下端部に設けられ、前記支持ユニット及び前記機器調整ユニットを移動可能に支持する移動部と、を有する
請求項1に記載の組立支援装置。
【請求項7】
前記作業対象物は、乗客コンベアのフレームである
請求項1に記載の組立支援装置。
【請求項8】
作業対象物に対して所定の作業を行う機器を支持する組立支援装置を用いて行われる組立方法において、
前記作業対象物を設置する工程と、
前記作業対象物に基準芯を設置する工程と、
前記作業対象物に前記組立支援装置を配置する工程と、
前記組立支援装置に設けた基準芯センサにより、前記基準芯を検出させる工程と、
を含む組立方法。
【請求項9】
前記組立支援装置は、前記作業対象物に対して少なくとも2台配置される
請求項8に記載の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立支援装置及び組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両や乗客コンベア等の組立作業では、部品の取付け時に基準芯(中心線等)から部品までの距離を測定して、位置決め、固定する作業がある。特に、乗客コンベアの製造時には、上部、中間部、下部のフレームをそれぞれ製作した後、それらのフレームを連結させ、1本のフレームとする。続いて踏段を含むフレーム内の部品を全て取り付け、循環移動する踏段とその他の内蔵する部品との干渉確認を行い、工場から出荷する前に再度分解している。
【0003】
また、乗客コンベアの安全性と快適な乗り心地(運転時の騒音を最小限に止め、振動が少ない)を実現するためには、乗客コンベアの高い組立精度が要求されている。そこで、組立精度を向上させる従来技術として、特許文献1に記載されているような技術が開示されている。
【0004】
ここで、
図24及び
図25を参照して従来の乗客コンベアの組立方法について説明する。
図24は、従来の組立作業を示す図であり、
図25は、
図24のA-A線断面図である。
図24に示すように、事前に組み上げたフレーム4は、作業床10に設けられた組立台車11を介して平置きされる。フレーム4の長手方向の一端部(上部)と、他端部(下部)には、基準芯柱12、12が取り付けられる。2つの基準芯柱12、12は、フレーム4の幅方向であるX軸方向の中央部に設置される。そして、基準芯柱12、12の上端部には、基準芯13が張り渡される。この基準芯13がフレーム4の幅方向の基準となる。
【0005】
また、
図24及び
図25に示すように、基準芯13には、鉛直方向にそって垂れ下がる下げ振り14が吊り下げられる。また、
図25に示すように、作業者15は、下げ振り14を基準として、定規やコンベックス等の計測器16を用いてフレーム4内の部品17の位置を測定する。そして、寸法が基準値になるように部品17の位置を調整してから固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の組立方法では、作業者がコンベックス等の計測器を使用して部品の位置を測定する必要があるため、作業者によって測定値のばらつきが発生するおそれがあった。そのため、部品の取り付け精度が満足できる範囲にない場合や、精度にばらつきが生じる場合があった。
【0008】
さらに、フレームに取り付ける部品は、フレームの長手方向に沿って複数あるため、部品を取り付けるたびに、下げ振りを移動させる必要があり、部品の位置計測、位置調整、固定を行う必要があり、組立作業に時間を要していた。さらに、下げ振りは、僅かな風や振動で揺れやすい不安定な計測基準であるため、下げ振りを移動させた後に、下げ振りの揺れが収まるまで待つ必要があり、作業効率が悪化していた。
【0009】
本目的は、上記の問題点を考慮し、部品を精度良く、安定した精度で取り付けることができ、作業効率の向上を図ることができる組立支援装置及び組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し、目的を達成するため、組立支援装置は、作業対象物に対して所定の作業を行う機器を支持する組立支援装置である。組立支援装置は、機器を有する機器調整ユニットと、機器調整ユニットを支持する支持ユニットと、を備えている。機器調整ユニットは、作業対象物に設けられた基準芯を検出する基準芯センサと、機器が取り付けられるベースプレートと、を備えている。
【0011】
また、組立方法は、作業対象物に対して所定の作業を行う機器を支持する上述した組立支援装置を用いて行われる。そして、以下(1)から(4)に示す工程を含む。
(1)作業対象物を設置する工程。
(2)作業対象物に基準芯を設置する工程。
(3)作業対象物に組立支援装置を配置する工程。
(4)組立支援装置に設けた基準芯センサにより、基準芯を検出させる工程。
【発明の効果】
【0012】
上記構成の組立支援装置及び組立方法によれば、部品を精度良く、安定した精度で取り付けることができ、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態例にかかる組立支援装置を用いて組み立てられる作業対象物として乗客コンベアを示す概略構成図である。
【
図2】実施の形態例にかかる組立支援装置を示す正面図である。
【
図3】実施の形態例にかかる組立支援装置用いてフレームに部品を取り付ける状態を示す正面図である。
【
図4】実施の形態例にかかる組立支援装置を示す側面図である。
【
図5】実施の形態例にかかる組立支援装置の機器調整ユニットを傾斜させた状態を示す側面図である。
【
図6】実施の形態例にかかる組立支援装置の機器調整ユニットを傾斜させた状態を示す側面図である。
【
図7】レーム傾斜検出部を使用して、フレームの上限材の傾斜角を計測している様子を示す側面図である。
【
図8】
図7の状態から機器調整ユニットがフレームの上限材に対して平行となった状態を示す側面図である。
【
図9】実施の形態例にかかる組立支援装置をフレームの組立作業に用いた際の側面図である。
【
図10】実施の形態例にかかる組立支援装置のシステム構成図である。
【
図11】実施の形態例にかかる組立支援装置を用いた組立方法の第1の組立方法を示すフローチャートである。
【
図17】実施の形態例にかかる組立支援装置を用いた組立方法の第2の組立方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、組立支援装置及び組立方法の実施の形態例について、
図1~
図23を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0015】
1.実施の形態例
1-1.乗客コンベアの構成例
まず、実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる組立支援装置を用いて組み立てられる装置の一例として乗客コンベアの構成について
図1を参照して説明する。
図1は、乗客コンベアを示す概略構成図である。
【0016】
図1に示す乗客コンベア1は、建築構造物の下階床8と上階床9に設置される傾斜型の乗客コンベア、いわゆるエスカレーターである。
図1に示すように、乗客コンベア1は、建築構造物に設置されたフレーム4と、下部乗降床2と、上部乗降床3と、複数の踏段5と、欄干6と、を備えている。下部乗降床2は、下階床8に設置され、上部乗降床3は、上階床9に設置さている。
【0017】
フレーム4は、上階床9と下階床8にまたがって設置されている。そして、フレーム4は、上下方向の上部が開口したトラス構造により構成されている。フレーム4には、不図示のガイドレールが設けられている。そして、無端状に連結された複数の踏段5は、フレーム4に設けたガイドレールに移動可能に支持されている。そして、複数の踏段5は、フレーム4の長手方向に沿って循環移動する。
【0018】
複数の踏段5の幅方向の両端部には、欄干6が設置されている。欄干6の周縁部には、ハンドレール7が設けられている。そして、ハンドレール7は、複数の踏段5の循環移動の動作に同期して、循環移動する。
【0019】
1-2.組立支援装置の構成例
次に、上述した乗客コンベア1のフレーム4に各種部品を取り付ける際に用いられる本例の組立支援装置100の構成例について
図2から
図6を参照して説明する。
図2は、本例の組立支援装置を示す正面図、
図3は、本例の組立支援装置を用いてフレーム4に部品を取り付ける状態を示す正面図である。また、
図4は、本例の組立支援装置を示す側面図、
図5から
図6は、本例の組立支援装置の機器調整ユニットを傾斜させた状態を示す側面図である。
【0020】
図2に示す組立支援装置100は、作業対象物の一例を示す乗客コンベアのフレーム4の組立作業時における基準芯から部品までの距離を測定したり、位置決め治具や固定治具を取り付けたりする際に用いられる。
【0021】
ここで、鉛直方向をZ軸方向として、鉛直方向と直交するフレーム4の幅方向をX軸方向、Z軸方向及びX軸方向と直交する方向をY軸方向とする。さらに、X軸、Y軸、Z軸周りの回転をそれぞれPitch、Roll、Yawとする。なお、
図2に示すように、フレーム4は、鉛直方向を示すZ軸方向が開口した、U字状に形成されている。また、フレーム4は、その長手方向がY軸方向に延在している。
【0022】
組立支援装置100は、フレーム4のX軸方向の両側に配置されて、フレーム4のZ軸方向の上方に位置している。そして、作業者は、フレーム4内に入り、フレーム4の長手方向であるY軸方向にそって組立支援装置100を移動させながら組立作業(計測、位置決め、固定作業等)を実施する。
【0023】
図2に示すように、組立支援装置100は、機器101を有する機器調整ユニット106と、機器調整ユニット106を支持する支持ユニット108とを備えている。機器101は、フレーム4の組立作業時における基準芯から部品17(
図3参照)までの距離を測定する測定作業や位置決め治具や固定治具を取り付け作業等の所定の作業を行うための機器である。
【0024】
1-3.支持ユニットの構成
次に、支持ユニット108の構成について説明する。
支持ユニット108は、2つの支持柱108aと、横梁108bと、移動部107とを有している。2つの支持柱108aは、フレーム4の幅方向であるX軸方向の外側に配置される。そして、支持柱108aは、Z軸方向に沿って立設している。支持柱108aのZ軸方向の下端部には、移動部107が設けられている。
【0025】
移動部107としては、例えば、キャスターや作業床10上に設けられたレール109を移動するキャスターやスライダ等が適用される。そのため、支持柱108aは、移動部107によりY軸方向に沿って移動可能に支持される。なお、レール109は、フレーム4を支持する組立台車11が摺動する台車ガイドレール19と平行に配置されており、Y軸方向に沿って延在している。
【0026】
支持柱108aのZ軸方向の上端部には、横梁108bが取り付けられている。横梁108bは、X軸方向に沿って延在し、フレーム4のZ軸方向の上方において、フレーム4のX軸方向にわたって配置される。そして、横梁108bは、2つの支持柱108aの上端部に配置される。すなわち、
図2に示すように、支持ユニット108は、フレーム4を跨ぐ門型の構造に構成されている。
【0027】
また、支持ユニット108における横梁108bには、機器調整ユニット106が設置されている。
【0028】
1-4.機器調整ユニットの構成
次に、機器調整ユニット106の構成について説明する。
【0029】
図2から
図4に示すように、機器調整ユニット106は、機器101を有する姿勢調整部103と、位置調整部104と、ベースプレート113と、第1支持部材121と、第2支持部材122と、回動軸124と、を備えている。また機器調整ユニット106は、2つの基準芯センサ105a、105b(105)と、フレーム傾斜検出部111と、制御部114と、操作部を示す操作ペンダント115と、電源116(
図10参照)と、表示器110とを備えている。
【0030】
図4に示すように、機器調整ユニット106は、横梁108bに設けた回動軸124によりPitch周りに回動可能に支持されている。回動軸124には、位置調整部104が設置されている。位置調整部104は、第1部材104aと、第2部材104bとを有している。第2部材104bは、回動軸124に取り付けられている。そして、第1部材104aは、第2部材104bに、X軸方向及びZ軸方向に移動可能に支持されている。第1部材104a及び第2部材104bとしては、例えば、電動スライダやボールねじ機構等その他各種の移動機構が適用されるものである。
【0031】
第1部材104aには、第1支持部材121が取り付けられている。第1支持部材121は、第1部材104aに設けられて、横梁108bよりもZ軸方向の上方に向けて突出している。第1支持部材121のZ軸方向の上端部には、第1基準芯センサ105aが設けられている。
【0032】
第1支持部材121のZ軸方向の下端部には、第2支持部材122が設けられている。第2支持部材122は、X軸方向に延在している。第2支持部材122のX軸方向の一端部には、第2基準芯センサ105bが設けられている。また、第2支持部材122のX軸方向の一端部において、Z軸方向の下端面には、フレーム傾斜検出部111が設けられている。
【0033】
第2支持部材122における中間部のZ軸方向の下端部には、ベースプレート113が設けられている。ベースプレート113には、計測結果や現在の状態を表示させる表示器110が設置されている。さらに、ベースプレート113には、機器101が着脱可能に取り付けられている。機器101におけるベースプレート113への取り付け方法としては、例えば、フック、マグネット、接続ピン等のその他各種の方法が適用できる。
【0034】
図4に示すように、また、ベースプレート113におけるY軸方向の背面側には、姿勢調整部103の一端部が接続されている。姿勢調整部103は、例えば、電動あるいは油圧アクチュエータやボールねじ機構等のその他各種の伸縮可能な部材が適用される。姿勢調整部103におけるベースプレート113とは反対側の他端部は、固定部125に接続されている。固定部125は、横梁108bに固定されており、Y軸方向の背面側に向けて突出している。
【0035】
そして、姿勢調整部103を伸縮(可動)させることで、
図5及び
図4に示すように、位置調整部104及び第1支持部材121、第2支持部材122、ベースプレート113は、回動軸124を中心に回動する。これにより、機器調整ユニット106の姿勢を変更することができる。また、第1部材104aを第2部材104bに対して、X軸方向及びZ軸方向に移動させることで、第1支持部材121及び第2支持部材122、ベースプレート113におけるX軸方向及びZ軸方向の位置を調整することができる。このとき、第1基準芯センサ105a及び第2基準芯センサ105bは、第1支持部材121及び第2支持部材122、ベースプレート113と一体となって移動する。
【0036】
その結果、姿勢調整部103と位置調整部104により、ベースプレート113に取り付けた機器101を任意の位置(X軸及びZ軸平面)に移動させることができるとともに、任意の姿勢(Pitch軸方向、前後傾斜)に変化させることができる。
【0037】
次に、基準芯センサ105について説明する。第1基準芯センサ105aは、X軸方向(幅方向)の基準となる基準芯13aの位置を計測する。そして、第2基準芯センサ105bは、Z軸方向(高さ方向)の基準芯13bの位置を計測する。第1基準芯センサ105a及び第2基準芯センサ105bとしては、例えば、発光部と、受光部を有する透過型レーザセンサが適用される。そして、基準芯センサ105a、105bの検出範囲112内に基準芯13a、13bが入っていれば、基準芯センサ105a、105bは、基準芯13a、13bのエッジの位置を計測できる。
【0038】
なお、第1基準芯センサ105a、105bの計測結果は、表示器110に表示される。これにより、作業者に対して、現在の機器調整ユニット106の位置を掲示することができる。また、基準芯センサ105a、105bで取得した基準芯13a、13bの位置情報を用いて、機器調整ユニット106の位置調整部104を制御し、自動で機器調整ユニット106の位置を調整してもよい。
【0039】
ここで、
図9を参照して第1基準芯13aと第2基準芯13bの設置方法について説明する。
図9は、組立支援装置100をフレーム4の組立作業に用いた際の側面図である。
図9に示すように、フレーム4は、作業床10に設けられた組立台車11を介して平置きされる。また、フレーム4の長手方向の一端部(上部)と、他端部(下部)には、基準芯柱12a、12bが取り付けられる。基準芯柱12a、12bは、フレーム4の幅方向であるX軸方向の中央部に設置される。そして、基準芯柱12a、12bの上端部には、第1基準芯13aが張り渡される。
【0040】
また、フレーム4の幅方向(X軸方向)の一端部側の上面(上限材)には、複数の基準芯支持台18が設置される。基準芯支持台18には、第2基準芯13bが設置される。また、第2基準芯13bは、基準芯支持台18によりフレーム4の上面(上限材)から一定の高さとなるように設置される。
【0041】
なお、機器調整ユニット106の姿勢は、作業者が手動で姿勢調整部103を動かして調整してもよい。なお、本例の組立支援装置100では、機器調整ユニット106におけるフレーム4に対する傾きを検出するフレーム傾斜検出部(傾斜検出部)111を有している。次に、
図7及び
図8を参照してフレーム傾斜検出部111の構成及び機器調整ユニット106の姿勢調整動作について説明する。
【0042】
図7は、フレーム傾斜検出部111を使用して、フレーム4の上限材20の傾斜角を計測している様子を示す側面図である。
図8は、
図7の状態から機器調整ユニット106がフレーム4の上限材20に対して平行となった状態を示す側面図である。
【0043】
図7に示すように、フレーム傾斜検出部111は、第1センサ111aと、第2センサ111bとを有している。第1センサ111a及び第2センサ111bは、例えば、レーザ距離センサや超音波センサ等の非接触距離センサが適用される。
図7に示すように、第1センサ111a及び第2センサ111bは、上限材20までの距離を計測する。そして、上限材20と機器調整ユニット106が平行でない場合、
図7に示すように、第1センサ111aの測定値(例えば、105mm)と、第2センサ111bの測定値(例えば、96mm)は、異なる値となる。
【0044】
そこで、制御部114は、第1センサ111a及び第2センサ111bの測定値が等しくなるまでで、姿勢調整部103を制御する。これにより、
図8に示すように、機器調整ユニット106を上限材20に対して自動的に平行にすることができる。
【0045】
1-5.組立支援装置のシステム構成
次に、
図10を参照して組立支援装置100のシステム構成について説明する。
図10は、本例の組立支援装置100のシステム構成図である。
【0046】
図10に示すように、組立支援装置100は、制御部114、基準芯センサ105と、操作ペンダント115と、位置調整部104と、表示器110と、姿勢調整部103と、電源116と、フレーム傾斜検出部111とを有している。制御部114は、信号処理や演算を行う。この制御部114には、駆動用の電源116が接続されている。また、制御部114には、基準芯センサ105、操作ペンダント115及びフレーム傾斜検出部111からの操作情報や検出結果が入力される。
【0047】
そして、制御部114は、姿勢調整部103及び位置調整部104の制御信号を演算し、姿勢調整部103及び位置調整部104に出力する。また、姿勢調整部103及び位置調整部104は、制御部114からの制御信号に基づいて、可動する。さらに、制御部114は、表示器110に計測結果や、現在の機器調整ユニット106の状態を表示させる。
【0048】
なお、支持ユニット108としては、フレーム4を跨ぐ門型構造に限定されるものではなく、一つの支持柱で横梁108bを支持する片持支持構造でもよく、その他各種の構造が適用できるものである。
【0049】
2.組立方法
2-1.第1の組立方法
次に、
図11から
図16を参照して、上述した構成を有する組立支援装置100を用いた組立動作の第1の組立方法について説明する。
図11は、第1の組立方法を示すフローチャートである。
図12から
図16は、第1の組立方法を示す平面図である。
【0050】
なお、第1の組立方法では、組立支援装置100を2台用いた例について説明する。また、第1の組立方法では、フレーム4の傾きに合わせて組立支援装置100の姿勢調整部103を調整し、常に機器101がフレーム4の上限材20に対して垂直の姿勢が取られる。そして、第1の組立方法における組立支援装置100の位置調整部104は、高さ方向(Z軸方向)のみ調整可能である。
【0051】
図11に示すように、作業者は、フレーム4を組立台車11に設置する(ステップS1)。次に、
図12に示すように、フレーム4の長手方向の両端部に基準芯柱12a、12bを設置し、幅方向と基準となる第1基準芯13aを設置する(ステップS2)。なお、この時点では、基準芯13aと組立支援装置100が移動するレール109との平行度はまだ出ていない。
【0052】
次に、1台の組立支援装置100をフレーム4の長手方向の上部に配置し、残りの1台の組立支援装置100をフレーム4の長手方向の下部に配置する(ステップS3)。そして、第1基準芯13aと組立支援装置100のレール109の平行出しを開始する(ステップS4)。
【0053】
まず、第1基準芯センサ105aで第1基準芯13aの位置を計測する(ステップS5)。次に、制御部114は、2台の組立支援装置100の第1基準芯センサ105aで計測した値が、既定値であるか否かを確認する(ステップS6)。ここで、第1基準芯センサ105aの中心値は、機器101の中心に設定されている。そして、ステップS6で示す既定値は、第1基準芯センサ105aの中心値である。
【0054】
ステップS6の処理において、既定値外であると制御部114が判断した場合(ステップS6のNo判定)、
図13に示すように、作業者は、長手方向の上部と下部のフレーム4の位置をずらし、フレーム4のYaw軸方向の傾きを補正する(ステップS7)。そして、ステップS5の処理に戻り、第1基準芯センサ105aで第1基準芯13aの位置を計測する。
【0055】
また、ステップS6の処理において、既定値内であると制御部114が判断した場合(ステップS6のYes判定)、フレーム4は、
図14に示すように、第1基準芯13aとレール109の平行出しが完了する(ステップS8)。
【0056】
次に、
図15に示すように、組立時の高さの基準となる第2基準芯13bを、基準芯支持台18を介してフレーム4に設置する(ステップS9)。このステップS1からステップS9までの処理により部品組立前の準備が終了する。次に、フレーム4内の部品17の組立作業を開始する(ステップS10)。
【0057】
まず、組立支援装置100の第2基準芯センサ105bで第2基準芯13bの位置を計測する(ステップS11)。次に、制御部114は、第2基準芯センサ105bで計測した値が既定値(目標高さ)となっているか確認する(ステップS12)。
【0058】
ステップS12の処理において、既定値外であると制御部114が判断した場合(ステップS12のNo判定)、位置調整部104を操作し、機器101の高さを調整する(ステップS13)。そして、ステップS11の処理に戻り、再び第2基準芯センサ105bで第2基準芯13bの位置を計測する。
【0059】
また、ステップS12の処理において、既定値(目標高さ)内であると制御部114が判断した場合(ステップS12のYes判定)、位置決め治具を示す機器101に部品17を取り付ける(ステップS14)。これにより、部品17の位置決めが完了したため、作業者は、部品17をフレーム4に固定する(ステップS15)。その後、次の部品17の取り付け位置まで組立支援装置100を移動させる(ステップS16)。そして、
図16に示すように、全ての部品17が取り付けられるまで、ステップS11からステップS16の工程を繰り返す(ステップS17)。そして、全ての部品17の取り付け作業が完了すると、組立支援装置100をフレーム4の外まで移動させる(ステップS18)。
【0060】
これにより、本例の組立支援装置100を用いたフレーム4への部品17の組立作業が完了する。このように、本例の組立支援装置100を用いた組立方法によれば、下げ振りを用いた手計測作業と部品17の位置調整が不要となる。その結果、部品17の取付精度と作業性が向上し、リードタイムの短縮を図ることができる。
【0061】
なお、ステップS6及びステップS12の判断処理は、制御部114が行ってもよく、作業者が表示器110に表示された値を用いて行ってもよい。また、位置調整部104の操作は、作業者が手動で行ってもよく、又は制御部114の制御のもと自動で行っても良い。
【0062】
2-2.第2の組立方法
次に、
図17から
図23を参照して、上述した構成を有する組立支援装置100を用いた組立動作の第2の組立方法について説明する。
図17は、第2の組立方法を示すフローチャートである。
図18から
図23は、第2の組立方法を示す図である。
【0063】
この第2の組立方法では、組立支援装置100を1台用いた例にういて説明する。そして、第2の組立方法では、フレーム4の傾きに合わせて組立支援装置100の姿勢調整部103を調整し、常に機器101がフレーム4の上限材20に対して垂直の姿勢が取られる。そして、第2の組立方法における組立支援装置100の位置調整部104は、高さ方向(Z軸方向)と幅方向(X軸方向)の調整が可能である。
【0064】
図17に示すように、作業者は、フレーム4を組立台車11に設置する(ステップS21)。なお、この時にフレーム4の長手方向の軸とレール109がほぼ平行となるように設置するが、厳密に平行度を出さなくてもよい。次に、
図18に示すように、フレーム4の長手方向の両端部に基準芯柱12a、12bを設置し、幅方向と基準となる第1基準芯13aを設置する(ステップS22)。また、組立時の高さの基準となる第2基準芯13bを、基準芯支持台18を介してフレーム4に設置する(ステップS23)。
【0065】
次に、
図19に示すように、組立支援装置100をフレーム4の長手方向の上部又は下部に配置する(ステップS24)。そして、第1基準芯センサ105aで第1基準芯13aの位置を計測する(ステップS25)。次に、第1基準芯センサ105aで計測した値が、既定値(機器101の中心)であるか否かを確認する(ステップS26)。
【0066】
図20は、組立支援装置100の位置調整部104の調整前の状態を示す図である。
図20に示すように、機器調整ユニット106が既定の位置からずれているため、第1基準芯13a及び第2基準芯13bは、ともに目標値から外れている。そして、ステップS16の処理において、既定値外であると制御部114が判断した場合(ステップS26のNo判定)、
図21に示すうように、位置調整部104の幅方向(X軸方向)の位置を調整する(ステップS27)。そして、ステップS5の処理に戻り、第1基準芯センサ105aで第1基準芯13aの位置を計測する。
【0067】
また、ステップS26の処理において、第1基準芯13aの位置が既定値内であると制御部114が判断した場合(ステップS26のYes判定)、の第2基準芯センサ105bで第2基準芯13bの位置を計測する(ステップS28)。次に、制御部114は、第2基準芯センサ105bで計測した値が既定値(目標高さ)となっているか確認する(ステップS29)。
【0068】
ステップS29の処理において、既定値外であると制御部114が判断した場合(ステップS29のNo判定)、位置調整部104を操作し、機器101の高さを調整する(ステップS30)。そして、ステップS28の処理に戻り、再び第2基準芯センサ105bで第2基準芯13bの位置を計測する。
【0069】
ステップS29の処理において、既定値(目標高さ)内であると制御部114が判断した場合(ステップS29のYes判定)、
図22に示すように、機器101の位置決めが完了する。
【0070】
次に、位置決め治具を示す機器101に部品17を取り付ける(ステップS31)。これにより、部品17の位置決めが完了したため、作業者は、部品17をフレーム4に固定する(ステップS32)。その後、次の部品17の取り付け位置まで組立支援装置100を移動させる(ステップS33)。そして、
図23に示すように、全ての部品17が取り付けられるまで、ステップS25からステップS33の工程を繰り返す(ステップS34)。そして、全ての部品17の取り付け作業が完了すると、組立支援装置100をフレーム4の外まで移動させる(ステップS35)。
【0071】
これにより、本例の組立支援装置100を用いたフレーム4への部品17の組立作業が完了する。このように、本例の組立支援装置100を用いた組立方法によれば、下げ振りを用いた手計測作業と部品17の位置調整が不要となる。その結果、部品17の取付精度と作業性が向上し、リードタイムの短縮を図ることができる。また、第2の動作例によれば、1台の組立支援装置100で組立作業を行うことができるため、作業効率の向上を図ることができる。
【0072】
なお、ステップS26及びステップS29の判断処理は、制御部114が行ってもよく、作業者が表示器110に表示された値を用いて行ってもよい。また、位置調整部104の操作は、作業者が手動で行ってもよく、又は制御部114の制御のもと自動で行っても良い。
【0073】
なお、上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0074】
上述した実施の形態例では、組立支援装置を用いて作業を行う作業対象物として、乗客コンベアのフレームを適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。作業対象物としては、電車の車両等、その長手方向がY軸方向に沿って延在するものであればその他各種の物が適用可能である。
【0075】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…乗客コンベア、 4…フレーム(作業対象物)、 10…作業床、 11…組立台車、 12a、12b…基準芯柱、 13a…第1基準芯、 13b…第2基準芯、 17…部品、 18…基準芯支持台、 19…台車ガイドレール、 20…上限材、 100…組立支援装置、 101…機器、 103…姿勢調整部、 104…位置調整部、 104a…第1部材、 104b…第2部材、 105…基準芯センサ、 105a…基準芯センサ、 105a…第1基準芯センサ、 105b…第2基準芯センサ、 106…機器調整ユニット、 107…移動部、 108…支持ユニット、 108a…支持柱、 108b…横梁、 109…レール、 110…表示器、 111…フレーム傾斜検出部(傾斜検出部)、 111a…第1センサ、 111b…第2センサ、 112…検出範囲、 113…ベースプレート、 114…制御部、 115…操作ペンダント、 116…電源、 121…第1支持部材、 122…第2支持部材、 124…回動軸、 125…固定部