(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012234
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】電池装置
(51)【国際特許分類】
H01M 12/06 20060101AFI20240123BHJP
【FI】
H01M12/06 A
H01M12/06 G
H01M12/06 F
H01M12/06 D
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114425
(22)【出願日】2022-07-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】521173580
【氏名又は名称】東友株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183575
【弁理士】
【氏名又は名称】老田 政憲
(72)【発明者】
【氏名】東 友也
【テーマコード(参考)】
5H032
【Fターム(参考)】
5H032AA02
5H032AS01
5H032AS02
5H032AS11
5H032CC01
5H032CC11
5H032CC16
5H032HH04
(57)【要約】
【課題】電解質層における電解液の減少を抑制しながらも電池装置全体の小型・軽量化が可能な電池装置を提供する。
【解決手段】電池装置は、第1電極11と、第2電極12と、第1電極12及び第2電極13の間に介在されて吸湿性を有する電解質層13とを有する。電解質層13は、吸湿性を有する吸湿材14と、吸湿材14に含まれた電解液15とを有すると共に、第2電極12の外周を覆うように設けられており、第1電極11は、電解質層13の外周に金属線11aが所定の間隔で巻き掛けられることによりコイル状に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第2電極と、上記第1電極及び上記第2電極の間に介在されて吸湿性を有する電解質層とを有する電池装置であって、
上記電解質層は、吸湿性を有する吸湿材と、該吸湿材に含まれた電解液とを有すると共に、上記第2電極の外周を覆うように設けられており、
上記第1電極は、上記電解質層の外周に金属線が所定の間隔で巻き掛けられることによりコイル状に形成されている、電池装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電池装置において、
水分を含むと共に該水分が蒸発して周囲へ放散させる水分供給源を備え、
上記水分供給源から蒸発した水分を含む湿り空気が上記電解質層へ供給される、電池装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電池装置において、
上記第2電極は管状に形成されている、電池装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電池装置において、
上記電解質層は、上記第2電極における一方の端部よりも延出した延出部を有している、電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属電池は、イオン化傾向が異なる二種類の金属電極と電解質水溶液(電解液)とを組み合わせて構成するが、電解質水溶液に金属電極を浸漬することにより、例えば電極に設けた集電体などに腐食が生じる問題がある。また、電極を平板金属によって形成すると、重量が嵩むとともにコストの上昇を招く問題もある。
【0003】
ここで、特許文献1には、正極である空気極と負極との間に電解液を介在させた空気電池を有する空気電池装置が開示されている。この空気電池装置は、空気極と負極とを有して電解液を保持する第1電解液槽と、空気電池の外部に設けられた第2電解液槽と、第1電解液槽及び第2電解液槽を繋ぐ循環路と、循環路に設けられたポンプとを備えている。
【0004】
そうして、この特許文献1の電池装置では、電解液を循環させることによって第1電解液槽に電解液を供給し続けるとともに、第2電解液槽において電解液から析出物を回収するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1には、金属電極を金属板によって形成することも記載されているが、その場合、軽量化することが難しく、材料コストも高くならざるを得ない。
また、上記特許文献1の電池装置では、電解液を電解質層へ供給するために、循環路、ポンプ及び第2電解液槽などの設備が必要であるため、電池装置の全体を小型で軽量なものにすることが難しい。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その主たる目的とするところは、電解質層における電解液の減少を抑制しながらも電池装置全体の小型・軽量化が可能な電池装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電池装置は、第1電極と、第2電極と、上記第1電極及び上記第2電極の間に介在されて吸湿性を有する電解質層とを有する電池装置であって、上記電解質層は、吸湿性を有する吸湿材と、該吸湿材に含まれた電解液とを有すると共に、上記第2電極の外周を覆うように設けられており、上記第1電極は、上記電解質層の外周に金属線が所定の間隔で巻き掛けられることによりコイル状に形成されている。
【0009】
さらに、水分を含むと共に該水分が蒸発して周囲へ放散させる水分供給源を備え、上記水分供給源から蒸発した水分を含む湿り空気が上記電解質層へ供給される構成としてもよい。
【0010】
上記第2電極は管状に形成されていてもよい。上記電解質層は、上記第2電極における一方の端部よりも延出した延出部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電解質層における電解液の減少を抑制しながらも電池装置全体の小型・軽量化が可能な電池装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態1における電池本体の構成を示す説明図である。
【
図2】
図2は、本実施形態1における電池本体を拡大して模式的に示す説明図である。
【
図3】
図3は、本実施形態1における電池装置を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、電池本体の単位セルを直列に接続した例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、電池本体の単位セルを直列に接続した例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、本実施形態2における電池本体を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
《実施形態1》
【0014】
図1は、本実施形態1における電池本体10の構成を示しており、
図2は、電池本体10を拡大して模式的に示している。また、
図3は、本実施形態1における電池装置1を模式的に示す斜視図である。
【0015】
電池装置1は、
図3に示すように、電池本体10と、水分供給源20と、筐体30とを備えている。本実施形態1では、電池本体10が金属電池(正極及び負極が金属電極である金属電池)である例について説明する。
【0016】
図1及び
図2に示すように、電池本体10は、第1電極11と、第2電極12と、電解質層13とを有する。電解質層13は、第1電極11及び第2電極12の間に介在されている。
【0017】
本実施形態1では、第1電極11を銅とし、第2電極12をマグネシウムとする。第1電極11は銅以外の金属材料でもよい。また、第2電極12は、リチウム、チタン、マグネシウム、亜鉛、真鍮、又はアルミニウム等の他の金属材料(第1電極11よりもイオン化傾向が大きい金属材料)を適用してもよい。
【0018】
第2電極12は、例えば円管状に形成されている。尚、第2電極12は、例えば矩形管などの円管以外の管状であってもよく、その他にも板状や中実の棒状であってもよい。第2電極12が円管状である場合、その直径は例えば3mm以上且つ30mm以下であることが好適である。第2電極12の用途に応じて使い分けるが、その直径は例えば3mm以上且つ15mm以下であり、厚みが0.2mm以上且つ1mm以下であることが最適である。
【0019】
尚、第2電極12が板状である場合、その厚みは例えば0.2mm以上且つ10mm以下であることが最適である。板状の第2電極12は、正方形状でも長方形状でもよいが、長方形状である方が僅かに高出力を得ることができる。
【0020】
電解質層13は、吸湿性を有する吸湿材14と、吸湿材14に含まれた電解液15とを有している。この構成により、電解質層13は吸湿性を有し、周囲の湿り空気から吸湿するようになっている。吸湿材14は、例えば和紙などの紙や布などによって形成することが可能である。電解液15には、例えば電解質としての塩化ナトリウムを含む水溶液を適用することができる。
【0021】
図1に示すように、電解質層13は、第2電極12の外周を覆うように設けられている。また、電解質層13は、第2電極12における一方の端部(
図1で下側端部)よりも外側(
図1で下側)へ延出した延出部13aを有している。第2電極12の他方の端部(
図1で上側端部)は、電解質層13から露出した露出部12aとなっている。このように、電解質層13が延出部13aを有することにより、電解質層13の吸湿性を高めることができる。
【0022】
電解質層13は、第2電極12の外周面に複数回重ねて巻くようにしてもよい。そのことにより、重ねた電解質層13の内部に電解液を閉じ込めて外部への流出を抑制することが可能である。
【0023】
第1電極11は、電解質層13の外周にコイル状に巻き掛けられた金属線11aによって構成されている。本実施形態1における第1電極11は正極であり、例えば銅線によって形成されている。また、金属線11aは、これら以外にも第2電極12の材料に応じて、他の金属線11aを用いることも可能である。
【0024】
金属線11aの外径は問わないが、0.1mm以上且つ2mm以下程度とすることが適している。また、金属線11aの外径は、例えば第2電極12の厚みの半分くらいであることが好ましい。これは、第2電極12よりも金属線11aの分解(溶解)速度が遅く、第2電極12の劣化と同等にするためである。
【0025】
図1及び
図2に示すように、第1電極11は、電解質層13の外周に金属線11aが所定の間隔で巻き掛けられることによりコイル状に形成されている。金属線11aは、
図1に示すように、第2電極12と電解質層13とが重なる領域において、電解質層13の外周面に巻き掛けられている。電解質層13の延出部13aには金属線11aが巻き掛けられていない。
【0026】
電池本体10を製作するときは、一例として、円管状のマグネシウムの外形を6mm、厚みを0.6mm、長さを36mmとする。電解質層13の吸湿材14となる紙の幅(第2電極12の軸方向の幅)を35mm程度とする。金属線11aである銅線は、第2電極12であるマグネシウム管及び電解質層13を3回~数百回程度巻くことができる長さとする。
【0027】
そして、吸湿材14に濃いめの塩水(5~7%程度)をたっぷりと染みこませて、第2電極12に巻き付ける。このとき、吸湿材14を第2電極12の一方の端から5mm程度外側に延出させることにより、吸湿材14を第2電極12の他方の端から6mm程度内側(中央側)に巻き掛ける。これにより、第2電極12における一方の端部に電解質層13の延出部13aを形成すると共に、第2電極12における他方の端部に露出部12aを形成する。
【0028】
そして、電解質層13に巻き掛けた金属線11aが所定間隔で配置されることにより、金属線11a同士の間から電解質層13が露出する。そのため、電解質層13は周囲から吸湿しやすくなる。
【0029】
金属線11aを第2電極12及び電解質層13に巻き掛ける回数は、3回~数百回程度であることの好ましいが、13回~50回程度が最適である。また、金属線11aを巻き掛ける方向は、時計回りでもよいが、反時計回りの方がより高出力を得ることができるため好ましい。尚、第2電極12が平板形状である場合も同様の仕様とすることが望ましい。
【0030】
尚、金属線11aを互いに隙間を空けずにぎっしりと詰めて巻き掛けてもよい。そのことにより、一枚の金属板電極と同じような効果を得ることができる。この場合、金属線11aは、二重、三重と重ねて巻き掛けてもよい。
【0031】
図1に示すように、第2電極12には、集電体17が設けられており、この集電体17に配線18が接続される。集電体17は、例えば第2電極12の露出部12aに設けることが可能である。また、第1電極11の金属線11aには配線18が接続される。こうして、上述した第1電極11、第2電極12及び電解質層13の構成により電池本体10の単位セル(ワンセル)5が構成される。
【0032】
そして、電池本体10では、第2電極12を構成している金属(マグネシウム)がイオン化し、電子を発生させる。第2電極12で生じた電子は、
図2に矢印Bで示すように、正極である第1電極11へ向かって配線18を流れる。そうして、電池本体10による放電(電池反応)が起こる。
【0033】
電池本体10は、複数の単位セル5を直列接続ないし並列接続して組み合わせることにより、所望の電池出力を得ることができる。
図4は、単位セル5を直列に接続した例を示す。
図5は、単位セルを並列に接続した例を示す。
【0034】
単位セル5を直列接続する場合、一方の単位セル5における第1電極11(金属線11a)を、他方の単位セル5における第2電極12(例えば露出部12aの集電体17)に配線18等を介して接続する。
【0035】
単位セル5を並列接続する場合、単位セル5の第1電極11(金属線11a)同士を接続すると共に、単位セル5の第2電極12同士を接続する。このとき、一方の単位セル5における第2電極12の露出部12aを、他方の単位セル5における電解質層13の延出部13aの内側に挿入し、第2電極12同士を接続する。
【0036】
次に、
図3を参照して、筐体30及び水分供給源20について説明する。筐体30は、上述した電池本体10と水分供給源20とを収容する。
水分供給源20は、水分を含むと共にその水分が蒸発して周囲へ放散させるものである。水分供給源20は、例えば和紙などの紙やスポンジ等の水分を吸収しやすい材料からなる水分吸収体21と、この水分吸収体21に吸収保持された水分22とを有している。
【0037】
筐体30は、電池本体10を収容する第1室31と、水分供給源20を収容する第2室32とを区画する隔壁部33を有している。例えば、隔壁部33は、筐体30の内部を上下に区画しており、第1室31の下側に第2室32が配置されている。
【0038】
隔壁部33には、複数の貫通孔(図示省略)が形成されている。例えば網状の板部材によって隔壁部33を形成してもよい。そうして、隔壁部33は、水分供給源20から蒸発した水分を含む湿り空気を、第2室32から第1室31へ通過させるように構成されている。
【0039】
第2室32は、側壁部32a及び底面部32bによって側方及び底側が閉塞されており、隔壁部33のみから湿り空気を当該第2室32の外へ通過させる。一方、第1室31は、比較的小さな通気口31aを有している。例えば、筐体30は、側壁部31bにより周囲側方が閉塞されると共に、上部に蓋体34を有していて、その蓋体34に複数の通気口31aが貫通形成されている構成としてもよい。
【0040】
通気口31aは、ガスを通過させる一方、湿気を通過させにくい構成となっている。例えば、通気口31aは、蓋体34に形成された貫通孔が和紙などにより塞がれた構成とすることが可能である。このように、通気口31aを設けることにより、湿気の低下を抑制しつつ第1室31において電池反応により生じたガスや水素などを筐体30の外部へ排出することができる。尚、通気口31aは、蓋体34に限らず、側壁部31bに設けるようにしてもよい。
【0041】
このような構成により、筐体30内部を比較的高い湿度に維持することができる。水分供給源20の水分吸収体21には、例えば50cc程度の液体を含ませることにより、6ヶ月以上の間、筐体30内部の湿度を70%程度に維持することが可能である。水分吸収体21に含ませる液体は特に問わないが、水道水等の水で十分である。
【0042】
以上説明したように、本実施形態1における電池装置1は、第1室31と第2室32とを区画する隔壁部33を有する筐体30を備えている。筐体30の第1室31には電池本体10が収容され、第2室32には水分供給源20が収容される。そうして、隔壁部33は、水分供給源20から蒸発した水分を含む湿り空気を、第2室32から第1室31へ通過させる構成としている。
【0043】
このような構成により、筐体30は、水分供給源20の水分を湿り空気の状態で電池本体10に供給することができる。すなわち、第2室32から第1室31へ移動した湿り空気の水分は、電池本体10の電解質層13により吸湿される。
【0044】
しかも、本実施形態1では、第1電極11がコイル状の金属線11aによって形成されると共に、その金属線11aが所定の間隔で巻き掛けられている。そのことにより、電解質層13が金属線11a同士の隙間から露出するため、電解質層13による周囲の湿り空気からの吸湿性を高めることができるのである。さらに、湿り空気が金属線11aに触れることにより金属線11aに生じた水滴も、金属線11a同士の隙間から電解質層13へ吸収させることもできる。
【0045】
さらにまた、電解質層13に延出部13aを設けて大きく露出させるようにしたので、この延出部13aにおいて周囲の湿り空気から効率よく吸湿することができる。吸湿した水分は電解液として電解質層13の中央側へ供給される。よって、電解質層13における電解液を適切に維持することができる。
よって、本実施形態1によれば、電解質層13における電解液の減少を抑制することができ、電池性能を適切に維持できるのである。
【0046】
ここで、本実施形態1における筐体30では、水分供給源20の水分を湿り空気の状態で電池本体10へ供給することができる。したがって、電解液を電解質層13に強制的に供給するための設備(例えば、電解液の循環路、ポンプ及び電解液槽など)が不要になるので、電池装置1全体を小型・軽量化することができる。
【0047】
その上、本実施形態1では、第1電極11をコイル状の金属線11aによって構成したので、一般的な金属板によって電極を構成した電池装置に比べて軽量化し且つ材料コストも低減することができる。さらに、金属線11aを電解質層13及び第2電極12に巻き掛けるという方法により金属電極を製造できるので、その製造コストの低下を図ることもできる。
このように、本実施形態1によると、電解質層13における電解液の減少を抑制しながらも電池装置1全体の小型・軽量化が可能になるのである。
【0048】
さらにまた、本実施形態1では第1電極11及び第2電極12が一側面側において電解質層13に接触し、第1電極11及び第2電極12の全体が電解液に浸漬するような構成でないので、各電極11,12における集電体17等の腐食を抑制し、金属電極の分解も抑制することができる。よって、電池装置1の寿命性能を高めることができる。
《実施形態2》
【0049】
上記実施形態1では、電池本体10が金属電池である例について説明したが、これに限らず、電池本体10は空気電池であってもよい。尚、以降では、上記実施形態1と同じ内容についてはその説明を省略する。
【0050】
図6は、本実施形態2における電池本体を拡大して模式的に示している。本実施形態2における電池装置1は、上記実施形態1と同様に、電池本体10と、水分供給源20と、筐体30とを備えている。電池本体10は、第1電極11と、第2電極12と、電解質層13とを有する。電解質層13は、第1電極11及び第2電極12の間に介在されている。
正極及び負極が上記実施形態1とは異なる。本実施形態2における第2電極12は正極である一方、第1電極11は負極になっている。
【0051】
第2電極12は、酸素を正極活物質とする空気極である。第2電極12は、例えば活性炭等の導電性粒子を含んだ固体状に形成されている。第2電極12は、例えば円管状に形成されている。
【0052】
尚、導電性粒子には、他の炭素材料(例えばカーボンブラックやグラファイト等)を利用することも可能であるが、空気極である第2電極12に空気を取り入れやすくするためには、多孔質である活性炭を利用することが望ましい。
【0053】
また、第2電極12は、例えば矩形管などの円管以外の管状であってもよく、その他にも板状や中実の棒状であってもよい。ただし、第2電極12に空気を導入しやすくするためには、管状であることが好ましい。
【0054】
第2電極12が円管状である場合、その直径は例えば3mm以上且つ30mm以下であることが好適である。用途に応じて使い分けるが、第2電極12の直径は、例えば3mm以上且つ15mm以下であり、厚みが0.2mm以上且つ1mm以下であることがより好ましい。
【0055】
尚、第2電極12が板状である場合、その厚みは例えば0.2mm以上且つ10mm以下であることが好ましい。板状の第2電極12は、正方形状でも長方形状でもよいが、長方形状である方が僅かに高出力を得ることができる。
【0056】
電解質層13は、上記実施形態1と同様であり、吸湿性を有する吸湿材14と、吸湿材14に含まれた電解液15とを備え、吸湿性を有している。吸湿材14は、例えば和紙などの紙や布などによって形成される。電解液15は、例えば電解質としての塩化ナトリウムを含む。また、電解質層13は延出部13aを有する。
【0057】
第1電極11は、上記実施形態1と同様に、電解質層13の外周にコイル状に巻き掛けられた金属線11aによって構成されている。本実施形態2における金属線11aは、例えばマグネシウムによって形成されている。尚、第1電極11を構成する金属線11aは、正極である活性炭との組み合わせとしてマグネシウム及びアルミニウムが好適であることから、アルミニウムによって形成してもよい。金属線11aの外径は問わないが、0.1mm以上且つ2mm以下程度とすることが適している。
【0058】
上記実施形態1と同様に、金属線11aは、所定の間隔で巻き掛けられている。そのことにより、電解質層13が周囲から吸湿しやすくなっている。電解質層13の延出部13aには金属線11aが巻き掛けられていない。尚、金属線11aは、互いに隙間を空けずにぎっしりと詰めて巻き掛けてもよい。
【0059】
電池本体10を作製するときは、上記実施形態1と同様に、吸湿材14に濃いめの塩水(5~7%程度)をたっぷりと染みこませて、第2電極12に巻き付ける。このとき、吸湿材14を第2電極12の一方の端から5mm程度外側に延出させると共に、第2電極12の他方の端から6mm程度内側(中央側)に巻き掛ける。これにより、電解質層13の延出部13aと、第2電極12の露出部12aを形成する。
【0060】
第2電極12の露出部12aには、上記実施形態1と同様に、集電体17が設けられており、この集電体17に配線18が接続される(
図1参照)。一方、第1電極11の金属線11aには配線18が接続される。
【0061】
そして、電池本体10では、
図6に矢印Aで示すように、電解質層13の電解液15に含まれる電解質(塩化ナトリウム)が負極である第1電極11側へ移動する。塩化ナトリウムは、第1電極11を構成している金属(マグネシウム)をイオン化させると共に、電子を発生させる。
【0062】
第1電極11で生じた電子は、
図6に矢印Bで示すように、正極である第2電極12へ向かって配線18を流れる。一方、第1電極11で生じた金属イオン(マグネシウムイオン)は、
図6に矢印Cで示すように、電解質層13を通って第2電極12へ移動する。第2電極12に到達したマグネシウムイオンは、第2電極12の導電性粒子(活性炭)を伝って第2電極12内を移動する。そして、第2電極12周りにおける空気中の酸素が電子を受け取ってマグネシウムイオンと反応する。こうして、電池本体10による放電(電池反応)が起こる。
【0063】
本実施形態2においても、上記実施形態1と同様にして、複数の単位セル5を直列接続ないし並列接続することによって、所望の電池出力を得ることができる(
図4及び
図5参照)。
【0064】
また、本実施形態2における筐体30及び水分供給源20は、上記実施形態1と同じ構成を有する。すなわち、筐体30は、電池本体10を収容する第1室31と、水分供給源20を収容する第2室32とを区画する隔壁部33を有している。隔壁部33は、水分供給源20から蒸発した水分を含む湿り空気を、第2室32から第1室31へ通過させる。
筐体30は、複数の通気口31aが設けられた蓋体34を有している。通気口31aは、ガスを通過させる一方、湿気を通過させにくい構成を有する。
【0065】
このような構成により、筐体30内部を比較的高い湿度に維持することができる。水分供給源20の水分吸収体21には、例えば50cc程度の液体を含ませることにより、6ヶ月以上の間、筐体30内部の湿度を70%程度に維持することが可能である。水分吸収体21に含ませる液体は、例えば水道水等の水であってもよい。
したがって、本実施形態2によっても、上記実施形態1と同様に、筐体30により水分供給源20の水分を湿り空気の状態で電池本体10に供給できるので、電解質層13における電解液の減少を抑制することができ、電池性能を適切に維持することができる。
【0066】
さらに、第1電極11をコイル状の金属線11aによって形成し、その金属線11aを所定の間隔で巻き掛けるようにしたので、電解質層13による周囲の湿り空気からの吸湿性を高めることができる。また、湿り空気が金属線11aに触れることにより金属線11aに生じた水滴も、金属線11a同士の隙間から電解質層13へ吸収させることができる。
【0067】
加えて、電解質層13に延出部13aを設けたので、周囲の湿り空気から効率よく吸湿することができる。よって、電解質層13における電解液を好適に維持できる。
【0068】
さらに、上記筐体30を備えることにより、電解液を電解質層13に強制的に供給するための設備が不要になるので、電池装置1全体を小型・軽量化することができる。しかも、第1電極11をコイル状の金属線11aによって構成したので、一般的な金属板によって電極を構成した電池装置に比べて軽量化し且つ材料コストも低減することができる。
【0069】
このように、本実施形態2によると、上記実施形態1と同様に、電解質層13における電解液の減少を抑制しながらも電池装置1全体の小型・軽量化が可能になる。
【0070】
さらに、第1電極11及び第2電極12が一側面側において電解質層13に接触し、第1電極11及び第2電極12の全体が電解液に浸漬するような構成でないので、各電極11,12における集電体17等の腐食を抑制し、金属電極の分解も抑制できる。よって、電池装置1の寿命性能を高めることができる。
【0071】
尚、上記実施形態1及び2では、筐体30を有する電池装置1について説明したが、これに限らず、電解質層13が周囲の湿り空気から吸湿できる他の構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明したように、本発明は、電池装置について有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 電池装置
10 電池本体
11 第1電極
11a 金属線
12 第2電極
13 電解質層
20 水分供給源
【手続補正書】
【提出日】2022-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第2電極と、上記第1電極及び上記第2電極の間に介在されて吸湿性を有する電解質層とを有する電池装置であって、
上記電解質層は、吸湿性を有する吸湿材と、該吸湿材に含まれた電解液とを有すると共に、上記第2電極の外周を覆うように設けられており、
上記第1電極は、上記電解質層の外周に金属線が所定の間隔で巻き掛けられることによりコイル状に形成されており、
水分を含むと共に該水分が蒸発して周囲へ放散させる水分供給源を備え、
上記水分供給源から蒸発した水分を含む湿り空気が上記電解質層へ供給される、電池装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電池装置において、
上記第2電極は管状に形成されている、電池装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電池装置において、
上記電解質層は、上記第2電極における一方の端部よりも延出した延出部を有している、電池装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属電池は、イオン化傾向が異なる二種類の金属電極と電解質水溶液(電解液)とを組み合わせて構成するが、電解質水溶液に金属電極を浸漬することにより、例えば電極に設けた集電体などに腐食が生じる問題がある。また、電極を平板金属によって形成すると、重量が嵩むとともにコストの上昇を招く問題もある。
【0003】
ここで、特許文献1には、正極である空気極と負極との間に電解液を介在させた空気電池を有する空気電池装置が開示されている。この空気電池装置は、空気極と負極とを有して電解液を保持する第1電解液槽と、空気電池の外部に設けられた第2電解液槽と、第1電解液槽及び第2電解液槽を繋ぐ循環路と、循環路に設けられたポンプとを備えている。
【0004】
そうして、この特許文献1の電池装置では、電解液を循環させることによって第1電解液槽に電解液を供給し続けるとともに、第2電解液槽において電解液から析出物を回収するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1には、金属電極を金属板によって形成することも記載されているが、その場合、軽量化することが難しく、材料コストも高くならざるを得ない。
また、上記特許文献1の電池装置では、電解液を電解質層へ供給するために、循環路、ポンプ及び第2電解液槽などの設備が必要であるため、電池装置の全体を小型で軽量なものにすることが難しい。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その主たる目的とするところは、電解質層における電解液の減少を抑制しながらも電池装置全体の小型・軽量化が可能な電池装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電池装置は、第1電極と、第2電極と、上記第1電極及び上記第2電極の間に介在されて吸湿性を有する電解質層とを有する電池装置であって、上記電解質層は、吸湿性を有する吸湿材と、該吸湿材に含まれた電解液とを有すると共に、上記第2電極の外周を覆うように設けられており、上記第1電極は、上記電解質層の外周に金属線が所定の間隔で巻き掛けられることによりコイル状に形成されており、水分を含むと共に該水分が蒸発して周囲へ放散させる水分供給源を備え、上記水分供給源から蒸発した水分を含む湿り空気が上記電解質層へ供給される。
【0009】
上記第2電極は管状に形成されていてもよい。上記電解質層は、上記第2電極における一方の端部よりも延出した延出部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電解質層における電解液の減少を抑制しながらも電池装置全体の小型・軽量化が可能な電池装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態1における電池本体の構成を示す説明図である。
【
図2】
図2は、本実施形態1における電池本体を拡大して模式的に示す説明図である。
【
図3】
図3は、本実施形態1における電池装置を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、電池本体の単位セルを直列に接続した例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、電池本体の単位セルを直列に接続した例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、本実施形態2における電池本体を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
《実施形態1》
【0013】
図1は、本実施形態1における電池本体10の構成を示しており、
図2は、電池本体10を拡大して模式的に示している。また、
図3は、本実施形態1における電池装置1を模式的に示す斜視図である。
【0014】
電池装置1は、
図3に示すように、電池本体10と、水分供給源20と、筐体30とを備えている。本実施形態1では、電池本体10が金属電池(正極及び負極が金属電極である金属電池)である例について説明する。
【0015】
図1及び
図2に示すように、電池本体10は、第1電極11と、第2電極12と、電解質層13とを有する。電解質層13は、第1電極11及び第2電極12の間に介在されている。
【0016】
本実施形態1では、第1電極11を銅とし、第2電極12をマグネシウムとする。第1電極11は銅以外の金属材料でもよい。また、第2電極12は、リチウム、チタン、マグネシウム、亜鉛、真鍮、又はアルミニウム等の他の金属材料(第1電極11よりもイオン化傾向が大きい金属材料)を適用してもよい。
【0017】
第2電極12は、例えば円管状に形成されている。尚、第2電極12は、例えば矩形管などの円管以外の管状であってもよく、その他にも板状や中実の棒状であってもよい。第2電極12が円管状である場合、その直径は例えば3mm以上且つ30mm以下であることが好適である。第2電極12の用途に応じて使い分けるが、その直径は例えば3mm以上且つ15mm以下であり、厚みが0.2mm以上且つ1mm以下であることが最適である。
【0018】
尚、第2電極12が板状である場合、その厚みは例えば0.2mm以上且つ10mm以下であることが最適である。板状の第2電極12は、正方形状でも長方形状でもよいが、長方形状である方が僅かに高出力を得ることができる。
【0019】
電解質層13は、吸湿性を有する吸湿材14と、吸湿材14に含まれた電解液15とを有している。この構成により、電解質層13は吸湿性を有し、周囲の湿り空気から吸湿するようになっている。吸湿材14は、例えば和紙などの紙や布などによって形成することが可能である。電解液15には、例えば電解質としての塩化ナトリウムを含む水溶液を適用することができる。
【0020】
図1に示すように、電解質層13は、第2電極12の外周を覆うように設けられている。また、電解質層13は、第2電極12における一方の端部(
図1で下側端部)よりも外側(
図1で下側)へ延出した延出部13aを有している。第2電極12の他方の端部(
図1で上側端部)は、電解質層13から露出した露出部12aとなっている。このように、電解質層13が延出部13aを有することにより、電解質層13の吸湿性を高めることができる。
【0021】
電解質層13は、第2電極12の外周面に複数回重ねて巻くようにしてもよい。そのことにより、重ねた電解質層13の内部に電解液を閉じ込めて外部への流出を抑制することが可能である。
【0022】
第1電極11は、電解質層13の外周にコイル状に巻き掛けられた金属線11aによって構成されている。本実施形態1における第1電極11は正極であり、例えば銅線によって形成されている。また、金属線11aは、これら以外にも第2電極12の材料に応じて、他の金属線11aを用いることも可能である。
【0023】
金属線11aの外径は問わないが、0.1mm以上且つ2mm以下程度とすることが適している。また、金属線11aの外径は、例えば第2電極12の厚みの半分くらいであることが好ましい。これは、第2電極12よりも金属線11aの分解(溶解)速度が遅く、第2電極12の劣化と同等にするためである。
【0024】
図1及び
図2に示すように、第1電極11は、電解質層13の外周に金属線11aが所定の間隔で巻き掛けられることによりコイル状に形成されている。金属線11aは、
図1に示すように、第2電極12と電解質層13とが重なる領域において、電解質層13の外周面に巻き掛けられている。電解質層13の延出部13aには金属線11aが巻き掛けられていない。
【0025】
電池本体10を製作するときは、一例として、円管状のマグネシウムの外形を6mm、厚みを0.6mm、長さを36mmとする。電解質層13の吸湿材14となる紙の幅(第2電極12の軸方向の幅)を35mm程度とする。金属線11aである銅線は、第2電極12であるマグネシウム管及び電解質層13を3回~数百回程度巻くことができる長さとする。
【0026】
そして、吸湿材14に濃いめの塩水(5~7%程度)をたっぷりと染みこませて、第2電極12に巻き付ける。このとき、吸湿材14を第2電極12の一方の端から5mm程度外側に延出させることにより、吸湿材14を第2電極12の他方の端から6mm程度内側(中央側)に巻き掛ける。これにより、第2電極12における一方の端部に電解質層13の延出部13aを形成すると共に、第2電極12における他方の端部に露出部12aを形成する。
【0027】
そして、電解質層13に巻き掛けた金属線11aが所定間隔で配置されることにより、金属線11a同士の間から電解質層13が露出する。そのため、電解質層13は周囲から吸湿しやすくなる。
【0028】
金属線11aを第2電極12及び電解質層13に巻き掛ける回数は、3回~数百回程度であることの好ましいが、13回~50回程度が最適である。また、金属線11aを巻き掛ける方向は、時計回りでもよいが、反時計回りの方がより高出力を得ることができるため好ましい。尚、第2電極12が平板形状である場合も同様の仕様とすることが望ましい。
【0029】
尚、金属線11aを互いに隙間を空けずにぎっしりと詰めて巻き掛けてもよい。そのことにより、一枚の金属板電極と同じような効果を得ることができる。この場合、金属線11aは、二重、三重と重ねて巻き掛けてもよい。
【0030】
図1に示すように、第2電極12には、集電体17が設けられており、この集電体17に配線18が接続される。集電体17は、例えば第2電極12の露出部12aに設けることが可能である。また、第1電極11の金属線11aには配線18が接続される。こうして、上述した第1電極11、第2電極12及び電解質層13の構成により電池本体10の単位セル(ワンセル)5が構成される。
【0031】
そして、電池本体10では、第2電極12を構成している金属(マグネシウム)がイオン化し、電子を発生させる。第2電極12で生じた電子は、
図2に矢印Bで示すように、正極である第1電極11へ向かって配線18を流れる。そうして、電池本体10による放電(電池反応)が起こる。
【0032】
電池本体10は、複数の単位セル5を直列接続ないし並列接続して組み合わせることにより、所望の電池出力を得ることができる。
図4は、単位セル5を直列に接続した例を示す。
図5は、単位セルを並列に接続した例を示す。
【0033】
単位セル5を直列接続する場合、一方の単位セル5における第1電極11(金属線11a)を、他方の単位セル5における第2電極12(例えば露出部12aの集電体17)に配線18等を介して接続する。
【0034】
単位セル5を並列接続する場合、単位セル5の第1電極11(金属線11a)同士を接続すると共に、単位セル5の第2電極12同士を接続する。このとき、一方の単位セル5における第2電極12の露出部12aを、他方の単位セル5における電解質層13の延出部13aの内側に挿入し、第2電極12同士を接続する。
【0035】
次に、
図3を参照して、筐体30及び水分供給源20について説明する。筐体30は、上述した電池本体10と水分供給源20とを収容する。
水分供給源20は、水分を含むと共にその水分が蒸発して周囲へ放散させるものである。水分供給源20は、例えば和紙などの紙やスポンジ等の水分を吸収しやすい材料からなる水分吸収体21と、この水分吸収体21に吸収保持された水分22とを有している。
【0036】
筐体30は、電池本体10を収容する第1室31と、水分供給源20を収容する第2室32とを区画する隔壁部33を有している。例えば、隔壁部33は、筐体30の内部を上下に区画しており、第1室31の下側に第2室32が配置されている。
【0037】
隔壁部33には、複数の貫通孔(図示省略)が形成されている。例えば網状の板部材によって隔壁部33を形成してもよい。そうして、隔壁部33は、水分供給源20から蒸発した水分を含む湿り空気を、第2室32から第1室31へ通過させるように構成されている。
【0038】
第2室32は、側壁部32a及び底面部32bによって側方及び底側が閉塞されており、隔壁部33のみから湿り空気を当該第2室32の外へ通過させる。一方、第1室31は、比較的小さな通気口31aを有している。例えば、筐体30は、側壁部31bにより周囲側方が閉塞されると共に、上部に蓋体34を有していて、その蓋体34に複数の通気口31aが貫通形成されている構成としてもよい。
【0039】
通気口31aは、ガスを通過させる一方、湿気を通過させにくい構成となっている。例えば、通気口31aは、蓋体34に形成された貫通孔が和紙などにより塞がれた構成とすることが可能である。このように、通気口31aを設けることにより、湿気の低下を抑制しつつ第1室31において電池反応により生じたガスや水素などを筐体30の外部へ排出することができる。尚、通気口31aは、蓋体34に限らず、側壁部31bに設けるようにしてもよい。
【0040】
このような構成により、筐体30内部を比較的高い湿度に維持することができる。水分供給源20の水分吸収体21には、例えば50cc程度の液体を含ませることにより、6ヶ月以上の間、筐体30内部の湿度を70%程度に維持することが可能である。水分吸収体21に含ませる液体は特に問わないが、水道水等の水で十分である。
【0041】
以上説明したように、本実施形態1における電池装置1は、第1室31と第2室32とを区画する隔壁部33を有する筐体30を備えている。筐体30の第1室31には電池本体10が収容され、第2室32には水分供給源20が収容される。そうして、隔壁部33は、水分供給源20から蒸発した水分を含む湿り空気を、第2室32から第1室31へ通過させる構成としている。
【0042】
このような構成により、筐体30は、水分供給源20の水分を湿り空気の状態で電池本体10に供給することができる。すなわち、第2室32から第1室31へ移動した湿り空気の水分は、電池本体10の電解質層13により吸湿される。
【0043】
しかも、本実施形態1では、第1電極11がコイル状の金属線11aによって形成されると共に、その金属線11aが所定の間隔で巻き掛けられている。そのことにより、電解質層13が金属線11a同士の隙間から露出するため、電解質層13による周囲の湿り空気からの吸湿性を高めることができるのである。さらに、湿り空気が金属線11aに触れることにより金属線11aに生じた水滴も、金属線11a同士の隙間から電解質層13へ吸収させることもできる。
【0044】
さらにまた、電解質層13に延出部13aを設けて大きく露出させるようにしたので、この延出部13aにおいて周囲の湿り空気から効率よく吸湿することができる。吸湿した水分は電解液として電解質層13の中央側へ供給される。よって、電解質層13における電解液を適切に維持することができる。
よって、本実施形態1によれば、電解質層13における電解液の減少を抑制することができ、電池性能を適切に維持できるのである。
【0045】
ここで、本実施形態1における筐体30では、水分供給源20の水分を湿り空気の状態で電池本体10へ供給することができる。したがって、電解液を電解質層13に強制的に供給するための設備(例えば、電解液の循環路、ポンプ及び電解液槽など)が不要になるので、電池装置1全体を小型・軽量化することができる。
【0046】
その上、本実施形態1では、第1電極11をコイル状の金属線11aによって構成したので、一般的な金属板によって電極を構成した電池装置に比べて軽量化し且つ材料コストも低減することができる。さらに、金属線11aを電解質層13及び第2電極12に巻き掛けるという方法により金属電極を製造できるので、その製造コストの低下を図ることもできる。
このように、本実施形態1によると、電解質層13における電解液の減少を抑制しながらも電池装置1全体の小型・軽量化が可能になるのである。
【0047】
さらにまた、本実施形態1では第1電極11及び第2電極12が一側面側において電解質層13に接触し、第1電極11及び第2電極12の全体が電解液に浸漬するような構成でないので、各電極11,12における集電体17等の腐食を抑制し、金属電極の分解も抑制することができる。よって、電池装置1の寿命性能を高めることができる。
《実施形態2》
【0048】
上記実施形態1では、電池本体10が金属電池である例について説明したが、これに限らず、電池本体10は空気電池であってもよい。尚、以降では、上記実施形態1と同じ内容についてはその説明を省略する。
【0049】
図6は、本実施形態2における電池本体を拡大して模式的に示している。本実施形態2における電池装置1は、上記実施形態1と同様に、電池本体10と、水分供給源20と、筐体30とを備えている。電池本体10は、第1電極11と、第2電極12と、電解質層13とを有する。電解質層13は、第1電極11及び第2電極12の間に介在されている。
正極及び負極が上記実施形態1とは異なる。本実施形態2における第2電極12は正極である一方、第1電極11は負極になっている。
【0050】
第2電極12は、酸素を正極活物質とする空気極である。第2電極12は、例えば活性炭等の導電性粒子を含んだ固体状に形成されている。第2電極12は、例えば円管状に形成されている。
【0051】
尚、導電性粒子には、他の炭素材料(例えばカーボンブラックやグラファイト等)を利用することも可能であるが、空気極である第2電極12に空気を取り入れやすくするためには、多孔質である活性炭を利用することが望ましい。
【0052】
また、第2電極12は、例えば矩形管などの円管以外の管状であってもよく、その他にも板状や中実の棒状であってもよい。ただし、第2電極12に空気を導入しやすくするためには、管状であることが好ましい。
【0053】
第2電極12が円管状である場合、その直径は例えば3mm以上且つ30mm以下であることが好適である。用途に応じて使い分けるが、第2電極12の直径は、例えば3mm以上且つ15mm以下であり、厚みが0.2mm以上且つ1mm以下であることがより好ましい。
【0054】
尚、第2電極12が板状である場合、その厚みは例えば0.2mm以上且つ10mm以下であることが好ましい。板状の第2電極12は、正方形状でも長方形状でもよいが、長方形状である方が僅かに高出力を得ることができる。
【0055】
電解質層13は、上記実施形態1と同様であり、吸湿性を有する吸湿材14と、吸湿材14に含まれた電解液15とを備え、吸湿性を有している。吸湿材14は、例えば和紙などの紙や布などによって形成される。電解液15は、例えば電解質としての塩化ナトリウムを含む。また、電解質層13は延出部13aを有する。
【0056】
第1電極11は、上記実施形態1と同様に、電解質層13の外周にコイル状に巻き掛けられた金属線11aによって構成されている。本実施形態2における金属線11aは、例えばマグネシウムによって形成されている。尚、第1電極11を構成する金属線11aは、正極である活性炭との組み合わせとしてマグネシウム及びアルミニウムが好適であることから、アルミニウムによって形成してもよい。金属線11aの外径は問わないが、0.1mm以上且つ2mm以下程度とすることが適している。
【0057】
上記実施形態1と同様に、金属線11aは、所定の間隔で巻き掛けられている。そのことにより、電解質層13が周囲から吸湿しやすくなっている。電解質層13の延出部13aには金属線11aが巻き掛けられていない。尚、金属線11aは、互いに隙間を空けずにぎっしりと詰めて巻き掛けてもよい。
【0058】
電池本体10を作製するときは、上記実施形態1と同様に、吸湿材14に濃いめの塩水(5~7%程度)をたっぷりと染みこませて、第2電極12に巻き付ける。このとき、吸湿材14を第2電極12の一方の端から5mm程度外側に延出させると共に、第2電極12の他方の端から6mm程度内側(中央側)に巻き掛ける。これにより、電解質層13の延出部13aと、第2電極12の露出部12aを形成する。
【0059】
第2電極12の露出部12aには、上記実施形態1と同様に、集電体17が設けられており、この集電体17に配線18が接続される(
図1参照)。一方、第1電極11の金属線11aには配線18が接続される。
【0060】
そして、電池本体10では、
図6に矢印Aで示すように、電解質層13の電解液15に含まれる電解質(塩化ナトリウム)が負極である第1電極11側へ移動する。塩化ナトリウムは、第1電極11を構成している金属(マグネシウム)をイオン化させると共に、電子を発生させる。
【0061】
第1電極11で生じた電子は、
図6に矢印Bで示すように、正極である第2電極12へ向かって配線18を流れる。一方、第1電極11で生じた金属イオン(マグネシウムイオン)は、
図6に矢印Cで示すように、電解質層13を通って第2電極12へ移動する。第2電極12に到達したマグネシウムイオンは、第2電極12の導電性粒子(活性炭)を伝って第2電極12内を移動する。そして、第2電極12周りにおける空気中の酸素が電子を受け取ってマグネシウムイオンと反応する。こうして、電池本体10による放電(電池反応)が起こる。
【0062】
本実施形態2においても、上記実施形態1と同様にして、複数の単位セル5を直列接続ないし並列接続することによって、所望の電池出力を得ることができる(
図4及び
図5参照)。
【0063】
また、本実施形態2における筐体30及び水分供給源20は、上記実施形態1と同じ構成を有する。すなわち、筐体30は、電池本体10を収容する第1室31と、水分供給源20を収容する第2室32とを区画する隔壁部33を有している。隔壁部33は、水分供給源20から蒸発した水分を含む湿り空気を、第2室32から第1室31へ通過させる。
筐体30は、複数の通気口31aが設けられた蓋体34を有している。通気口31aは、ガスを通過させる一方、湿気を通過させにくい構成を有する。
【0064】
このような構成により、筐体30内部を比較的高い湿度に維持することができる。水分供給源20の水分吸収体21には、例えば50cc程度の液体を含ませることにより、6ヶ月以上の間、筐体30内部の湿度を70%程度に維持することが可能である。水分吸収体21に含ませる液体は、例えば水道水等の水であってもよい。
したがって、本実施形態2によっても、上記実施形態1と同様に、筐体30により水分供給源20の水分を湿り空気の状態で電池本体10に供給できるので、電解質層13における電解液の減少を抑制することができ、電池性能を適切に維持することができる。
【0065】
さらに、第1電極11をコイル状の金属線11aによって形成し、その金属線11aを所定の間隔で巻き掛けるようにしたので、電解質層13による周囲の湿り空気からの吸湿性を高めることができる。また、湿り空気が金属線11aに触れることにより金属線11aに生じた水滴も、金属線11a同士の隙間から電解質層13へ吸収させることができる。
【0066】
加えて、電解質層13に延出部13aを設けたので、周囲の湿り空気から効率よく吸湿することができる。よって、電解質層13における電解液を好適に維持できる。
【0067】
さらに、上記筐体30を備えることにより、電解液を電解質層13に強制的に供給するための設備が不要になるので、電池装置1全体を小型・軽量化することができる。しかも、第1電極11をコイル状の金属線11aによって構成したので、一般的な金属板によって電極を構成した電池装置に比べて軽量化し且つ材料コストも低減することができる。
【0068】
このように、本実施形態2によると、上記実施形態1と同様に、電解質層13における電解液の減少を抑制しながらも電池装置1全体の小型・軽量化が可能になる。
【0069】
さらに、第1電極11及び第2電極12が一側面側において電解質層13に接触し、第1電極11及び第2電極12の全体が電解液に浸漬するような構成でないので、各電極11,12における集電体17等の腐食を抑制し、金属電極の分解も抑制できる。よって、電池装置1の寿命性能を高めることができる。
【0070】
尚、上記実施形態1及び2では、筐体30を有する電池装置1について説明したが、これに限らず、電解質層13が周囲の湿り空気から吸湿できる他の構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明は、電池装置について有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 電池装置
10 電池本体
11 第1電極
11a 金属線
12 第2電極
13 電解質層
20 水分供給源