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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122348
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】電池昇温装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/637 20140101AFI20240902BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240902BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240902BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20240902BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20240902BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240902BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240902BHJP
   H01M 10/667 20140101ALI20240902BHJP
【FI】
H01M10/637
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/615
H01M10/6556
H01M10/6568
H01M10/667
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029842
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 基正
(72)【発明者】
【氏名】小島 隆義
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 満孝
(72)【発明者】
【氏名】風岡 諒哉
(72)【発明者】
【氏名】沼田 将成
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031HH01
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】蓄電装置における各蓄電池の温度差を抑制しつつ、各蓄電池を適正に昇温させる。
【解決手段】第1蓄電池41及び第2蓄電池42は、回転電機の巻線及びインバータを含む通電経路で相互の通電が行われることで昇温される。第1蓄電池41及び第2蓄電池41は端子間電圧が相違し、第1蓄電池41は第2蓄電池42よりも端子間電圧が小さい蓄電池である。冷却システム100は、第1蓄電池41及び第2蓄電池42との熱の授受を可能とする熱回路を構成する。制御装置70は、各蓄電池41,42の昇温制御の実施に、熱回路により第1蓄電池41及び第2蓄電池42の少なくともいずれかとの熱の授受を行わせることにより、第1蓄電池41及び第2蓄電池42の温度差を低減させる。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直列に接続された第1蓄電池(41)及び第2蓄電池(42)と、多相の巻線(22)を有する回転電機(21)と、前記回転電機に接続されたインバータ(30)とを備え、前記巻線及び前記インバータを含む通電経路で前記第1蓄電池と前記第2蓄電池との相互の通電を行わせ、その相互の通電により前記各蓄電池を昇温させる昇温制御を実施する電池昇温装置であって、
前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池は端子間電圧が相違し、前記第1蓄電池は前記第2蓄電池よりも端子間電圧が小さい蓄電池であり、
前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池の少なくともいずれかとの熱の授受を可能とする熱回路と、
前記昇温制御の実施時に、前記熱回路により前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池の少なくともいずれかとの熱の授受を行わせることにより、前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池の温度差を低減させる温度調整部と、
を備える電池昇温装置。
【請求項2】
前記熱回路として、前記回転電機及び前記インバータの少なくともいずれかに設けられた熱交換部(101)を経由して冷媒を循環させ、その冷媒が熱交換により熱を吸収して冷却を行わせる冷却回路を含み、
前記冷却回路は、前記熱交換部を流れる冷媒を少なくとも前記第2蓄電池を含む経路で循環させるように冷媒循環経路を切り替える切替装置(103)を有しており、
前記温度調整部は、前記昇温制御の実施時に、前記切替装置の経路切替により、前記冷却回路において少なくとも前記第2蓄電池に対して冷媒の熱を供給する状態とする、請求項1に記載の電池昇温装置。
【請求項3】
前記冷却回路は、前記熱交換部から前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池に対して熱を供給する第1状態と、前記熱交換部から前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池のうち第2蓄電池のみに対して熱を供給する第2状態との切り替えを可能とするものであり、
前記温度調整部は、前記昇温制御の実施時に、前記各蓄電池の昇温度合に応じて、前記切替装置により前記第1状態と前記第2状態との切り替えを実施する、請求項2に記載の電池昇温装置。
【請求項4】
前記冷却回路は、前記熱交換部から流出した冷媒を、前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池に通過させる冷媒通路を有するものであり、
前記温度調整部は、前記熱交換部から流出した冷媒を、前記第2蓄電池、前記第1蓄電池の順で通過させる、請求項2に記載の電池昇温装置。
【請求項5】
前記冷却回路は、前記熱交換部と前記第2蓄電池とで冷媒を循環させる第1経路と、前記第1蓄電池と前記第2蓄電池とで冷媒を循環させる第2経路とを形成可能にするものであり、
前記温度調整部は、前記昇温制御の実施時に、前記切替装置の経路切替により、前記第1経路と前記第2経路との両方を用いた冷媒の循環を行わせる、請求項2に記載の電池昇温装置。
【請求項6】
前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池に対して充電装置(80)による充電が可能となっており、
前記冷却回路は、前記熱交換部を流れる冷媒を放熱部(102)に流通可能にするものであり、
前記温度調整部は、前記切替装置の経路切替により、前記充電装置による前記各蓄電池の充電時には、冷媒循環経路として前記放熱部を含む経路で冷媒を循環させる一方、前記昇温制御の実施時には、冷媒循環経路として前記放熱部を含まない経路で冷媒を循環させることで、前記各蓄電池の充電時と前記昇温制御の実施時とで、前記冷却回路における冷媒の循環経路を相違させる、請求項2に記載の電池昇温装置。
【請求項7】
冷凍サイクル用の冷媒を圧縮して吐出するコンプレッサ(122)と、前記コンプレッサから吐出された当該冷媒を凝縮させる凝縮器(123)と、前記凝縮器の下流側において当該冷媒を蒸発させる蒸発器(125)とを有する冷凍サイクル回路を、前記熱回路として含むものであり、
前記温度調整部は、前記昇温制御の実施時に、前記凝縮器を流れる高温状態の前記冷凍サイクルの冷媒による前記第2蓄電池の昇温促進と、前記蒸発器を流れる低温状態の前記冷凍サイクルの冷媒による前記第1蓄電池の昇温抑制との少なくともいずれかを行わせる、請求項1~6のいずれか1項に記載の電池昇温装置。
【請求項8】
前記第2蓄電池に前記凝縮器が取り付けられている構成と、前記第1蓄電池に前記蒸発器が取り付けられている構成との少なくともいずれかを有する、請求項7に記載の電池昇温装置。
【請求項9】
前記熱回路として、
前記回転電機及び前記インバータの少なくともいずれかに設けられた熱交換部(101)を経由して第1冷媒を循環させ、その第1冷媒が熱交換により熱を吸収して冷却を行わせる冷却回路と、
第2冷媒を圧縮して吐出するコンプレッサ(122)と、前記コンプレッサから吐出された第2冷媒を凝縮させる凝縮器(123)と、前記凝縮器の下流側において第2冷媒を蒸発させる蒸発器(125)とを有する冷凍サイクル回路と、を含み、
前記温度調整部は、前記昇温制御の実施時に、前記各蓄電池の昇温度合に応じて、前記熱交換部と前記第2蓄電池とで冷媒を循環させる状態と、その冷媒循環に加えて前記凝縮器と前記第2蓄電池とで冷媒を循環させる状態とを切り替える、請求項1に記載の電池昇温装置。
【請求項10】
前記熱回路として、
前記回転電機及び前記インバータの少なくともいずれかに設けられた熱交換部(101)を経由して第1冷媒を循環させ、その第1冷媒が熱交換により熱を吸収して冷却を行わせる冷却回路と、
第2冷媒を圧縮して吐出するコンプレッサ(122)と、前記コンプレッサから吐出された第2冷媒を凝縮させる凝縮器(123)と、前記凝縮器の下流側において第2冷媒を蒸発させる蒸発器(125)とを有する冷凍サイクル回路と、を含み、
前記熱交換部と前記第2蓄電池とで前記第1冷媒を循環させる第1経路と、前記凝縮器と前記第2蓄電池とで前記第1冷媒を循環させる第2経路との形成が可能になっており、
前記温度調整部は、前記昇温制御の実施時に、前記第1経路と前記第2経路との両方を用いた冷媒の循環を行わせる、請求項1に記載の電池昇温装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池昇温装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動車両等に用いられる蓄電池において、低温時に内部抵抗が大きくなることに起因して入出力特性が悪化することを抑制すべく、蓄電池の昇温制御を行う技術が提案されている。例えば特許文献1に記載の技術では、複数の電池セルを有する組電池に、リップル電流を発生する電流発生装置を電気的に接続する構成とし、リップル電流により、昇温させたい電池セル同士の温度差を低減するようにしている。これにより、電池セル同士の温度差を低減しつつ、電池セルに流せる電流を大きくし電池セルをより速く昇温させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-98681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電池の昇温装置としては、上記以外に、互いに直列に接続された第1蓄電池及び第2蓄電池に対して、回転電機の巻線及びインバータを含む通電経路で蓄電池間相互の通電を行わせ、その相互の通電により各蓄電池を昇温させる技術が知られている。この構成の電池昇温装置では、第1蓄電池及び第2蓄電池の端子間電圧が相違する場合において、昇温速度が異なり、ひいては各蓄電池で温度差が生じることが懸念される。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄電装置における各蓄電池の温度差を抑制しつつ、各蓄電池を適正に昇温させることができる電池昇温装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
互いに直列に接続された第1蓄電池及び第2蓄電池と、多相の巻線を有する回転電機と、前記回転電機に接続されたインバータとを備え、前記巻線及び前記インバータを含む通電経路で前記第1蓄電池と前記第2蓄電池との相互の通電を行わせ、その相互の通電により前記各蓄電池を昇温させる昇温制御を実施する電池昇温装置であって、
前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池は端子間電圧が相違し、前記第1蓄電池は前記第2蓄電池よりも端子間電圧が小さい蓄電池であり、
前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池の少なくともいずれかとの熱の授受を可能とする熱回路と、
前記昇温制御の実施時に、前記熱回路により前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池の少なくともいずれかとの熱の授受を行わせることにより、前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池の温度差を低減させる温度調整部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
上記構成では、互いに直列に接続された第1蓄電池及び第2蓄電池を昇温させるべく、回転電機の巻線とインバータとを含む通電経路において、第1蓄電池と第2蓄電池との相互の通電が行われる。ただしこの場合、各蓄電池の端子間電圧が異なり、一方が高電圧の蓄電池、他方が低電圧の蓄電池になっていると、各蓄電池の相互に流れる電流が異なることに起因して、各蓄電池において温度差が生じることが考えられる。そこで本発明では、低電圧側の第1蓄電池と高電圧側の第2蓄電池との少なくともいずれかとの熱の授受を可能とする熱回路を設け、各蓄電池の昇温制御の実施時に、熱回路により第1蓄電池及び第2蓄電池の少なくともいずれかとの熱の授受を行わせることにより、第1蓄電池及び第2蓄電池の温度差を低減させるようにした。その結果、蓄電装置における各蓄電池の温度差を抑制しつつ、各蓄電池を適正に昇温させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る電力変換システムの構成図。
図2】制御装置の処理手順を示すフローチャート。
図3】電力変換システムの等価回路を示す図。
図4】昇温制御のブロック図。
図5】昇温制御時のスイッチングパターンと指令電流の推移を示すタイムチャート。
図6】電力変換システムに組み込まれた冷却システムを示す図。
図7】車両走行状態でのモータ装置の作動時における経路パターンを示す図。
図8】組電池の昇温制御時における経路パターンを示す図。
図9】組電池の充電時における経路パターンを示す図。
図10】各蓄電池の温度調整処理の手順を示すフローチャート。
図11】(a)は各蓄電池の温度差と冷媒流量との関係を示す図、(b)は各蓄電池の温度差とインバータのスイッチング周波数との関係を示す図。
図12】第2実施形態における冷却システムを示す図。
図13】第2実施形態における経路パターンを示す図。
図14】昇温制御中のパターン切替処理を示すフローチャート。
図15】第3実施形態における冷却システムを示す図。
図16】第3実施形態における経路パターンを示す図。
図17】昇温制御中の状態切替処理を示すフローチャート。
図18】第4実施形態における冷却システムを示す図。
図19】第4実施形態における経路パターンを示す図。
図20】第5実施形態における冷却システムを示す図。
図21】第5実施形態における経路パターンを示す図。
図22】経路パターンに関する別例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、車両用の電力変換システムにて具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、車両は、回転電機の駆動により走行可能な電気自動車又はハイブリッド自動車等の電動車両である。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0010】
図1に示すように、電力変換システム10は、回転電機21と、回転電機21に接続された電力変換器としてのインバータ30とを備えている。回転電機21はモータジェネレータであり、インバータ30の電力制御により力行及び回生発電が可能となっている。本実施形態では、回転電機21においてインバータ30が一体的に設けられており、回転電機21及びインバータ30のアセンブリが機電一体型のモータ装置20として構成されている。
【0011】
回転電機21は、3相の同期機であり、ステータ巻線としてU,V,W相巻線22U,22V,22Wを備えている。各相巻線22U,22V,22Wは、星形結線されており、電気角で互いに120°ずつの位相差を有している。回転電機21は、例えば永久磁石同期機である。本実施形態において、回転電機21は車載主機であり、車両の走行動力源となる。回転電機21は車軸に連結されている。
【0012】
インバータ30は、相ごとに、上アームスイッチ31と下アームスイッチ32との直列接続体を備えている。本実施形態では、各スイッチ31,32として、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、具体的にはIGBTやMOSFETなどが用いられている。各スイッチ31,32には、フリーホイールダイオードとしてのダイオード33が逆並列に接続されている。
【0013】
各相における上下の各アームスイッチ31,32の中間点にはそれぞれ、バスバ等の配線部を介して回転電機21の各相巻線22U,22V,22Wの第1端が接続されている。各相の相巻線22U,22V,22Wの第2端どうしは、中性点P1で接続されている。本実施形態において、各相巻線22U,22V,22Wはターン数が同じであり、これにより、各相巻線22U,22V,22Wのインダクタンスが同じになっている。各上アームスイッチ31の高電位側端子は、正極側経路35を介して組電池40の正極端子に接続され、各下アームスイッチ32の低電位側端子は、負極側経路36を介して組電池40の負極端子に接続されている。
【0014】
正極側経路35と負極側経路36との間にはコンデンサ(平滑コンデンサ)37が接続されている。なお、コンデンサ37は、インバータ30に内蔵されていてもよいし、インバータ30の外部に設けられていてもよい。
【0015】
組電池40は、単電池としての電池セルの直列接続体として構成された蓄電装置であり、正極側及び負極側の間の端子間電圧が例えば数百Vとなるものである。組電池40を構成する複数の電池セルのセル電圧(例えば定格電圧)は互いに同じ電圧に設定されている。電池セルとしては、例えば、リチウムイオン蓄電池等の2次電池が用いられている。
【0016】
組電池40を構成する各電池セルのうち、高電位側の複数の電池セルの直列接続体が第1蓄電池41を構成し、低電位側の複数の電池セルの直列接続体が第2蓄電池42を構成している。つまり、組電池40が2つのブロックに分けられている。第1蓄電池41を構成する電池セル数と、第2蓄電池42を構成する電池セル数とは相違しており、それにより、第1蓄電池41の端子間電圧と第2蓄電池42の端子間電圧とが相違している。本実施形態では、第1蓄電池41の端子間電圧が100V、第2蓄電池42の端子間電圧が400Vである。第1蓄電池41が低電圧の蓄電池に相当し、第2蓄電池42が高電圧の蓄電池に相当する。
【0017】
組電池40において、第1蓄電池41と第2蓄電池42との間の中間点P2、すなわち第1蓄電池41の負極端子と第2蓄電池42の正極端子との間には、接続経路61を介して回転電機21の中性点P1が電気的に接続されている。接続経路61には、接続スイッチ62が設けられている。本実施形態では、接続スイッチ62としてリレーが用いられている。接続スイッチ62がオンされることにより、組電池40の中間点P2と中性点P1とが電気的に接続される。一方、接続スイッチ62がオフされることにより、中間点P2と中性点P1との間が電気的に遮断される。接続経路61には、接続経路61に流れる電流を検出する電流センサ63が設けられている。
【0018】
制御装置70は、マイコンを主体として構成され、回転電機21の制御量をその指令値にフィードバック制御すべく、インバータ30を構成する各スイッチのスイッチング制御を行う。これにより、組電池40の直流電力が交流電力に変換され、回転電機21に供給される。制御量は、例えばトルクである。また、制御装置70は、接続スイッチ62のオンオフを制御する。
【0019】
制御装置70は、自身が備える記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、各種制御機能を実現する。各種機能は、ハードウェアである電子回路によって実現されてもよいし、ハードウェア及びソフトウェアの双方によって実現されてもよい。
【0020】
また、本システムでは、充電装置80による組電池40の充電が可能となっている。充電装置80は、例えば車外の充電設備に設けられている。充電装置80から組電池40への充電は、正極側のケーブル81が組電池40の中間点P2に接続され、かつ負極側のケーブル82が組電池40の負極側端子に接続された状態で行われる。充電装置80の充電電圧は、例えば第2蓄電池42の端子間電圧と同じ400Vである。本実施形態では、回転電機21及びインバータ30を昇圧チョッパ(昇圧コンバータ)として動作させて、組電池40の充電が行われる。具体的には、巻線22を昇圧チョッパのコイル、インバータ30の下アームスイッチ32を昇圧チョッパの入力スイッチとし、かつ上アームスイッチ31のダイオード33を昇圧チョッパの還流ダイオードとして機能させることにより、充電装置80の充電電圧を500Vまで昇圧し、第1蓄電池41及び第2蓄電池42の充電を行わせることとしている。
【0021】
電力変換システム10では、組電池40を昇温させるべく、回転電機21の各相巻線22U~22Wとインバータ30とを介して第1蓄電池41及び第2蓄電池42における相互の通電を行わせることとしている。次に、制御装置70により実行される組電池40の昇温制御の概要を説明する。図2は、昇温制御処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、制御装置70により、例えば所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0022】
ステップS10では、組電池40の昇温要求があるか否かを判定する。例えば、車両停車状態で上位制御装置から昇温指示があった場合、又は組電池40に設けられた温度センサの検出温度が所定温度未満である場合に、昇温要求があると判定される。昇温要求がなければ、ステップS11に進み、回転電機21の駆動要求があるか否かを判定する。駆動要求には、回転電機21の回転駆動により車両を走行させる要求が含まれる。
【0023】
回転電機21の駆動要求がなければ、ステップS12に進み、本システムを待機モードとする。待機モードでは、インバータ30の各スイッチ31,32がオフされる。続くステップS13では、接続スイッチ62をオフし、中間点P2と中性点P1とを電気的に遮断する。
【0024】
また、回転電機21の駆動要求があれば、ステップS14に進み、本システムを回転電機21の駆動モードとする。そして、ステップS15において、接続スイッチ62をオフする。その後、ステップS16において、回転電機21を回転駆動させるべく、インバータ30の各スイッチ31,32のスイッチング制御を行う。これにより、車両の駆動輪が回転し、車両を走行させることができる。なお、ステップS16におけるスイッチング制御は、例えば各相巻線22U~22Wに印加する指令電圧とキャリア信号(例えば三角波信号)との大小比較に基づくPWM、又はパルスパターンを用いて実施されればよい。
【0025】
昇温要求があれば、ステップS10からステップS17に進み、本システムを昇温制御モードとする。ステップS18では、接続スイッチ62をオンする。これにより、組電池40の中間点P2と巻線22の中性点P1とが接続経路61を介して電気的に接続される。ステップS19では、組電池40を昇温させる昇温制御を行う。以下、この昇温制御について説明する。
【0026】
図3に、昇温制御で用いられる電力変換システム10の等価回路を示す。図3では、各相巻線22U~22Wを巻線22として示しており、巻線22の一端には、インバータ30の上下アームの各スイッチ31,32の中間点が接続され、巻線22の他端には、組電池40における第1,第2蓄電池41,42の中間点P2が接続されている。
【0027】
図3の回路は、第1蓄電池41と第2蓄電池42との間で双方向の電力伝達が可能な昇降圧チョッパ回路である。図3において、VB1は第1蓄電池41の端子間電圧を示し、IB1は第1蓄電池41に流れる電流を示し、VB2は第2蓄電池42の端子間電圧を示し、IB2は第2蓄電池42に流れる電流を示す。第1,第2蓄電池41,42の放電電流が流れる場合にIB1,IB2は正となり、第1,第2蓄電池41,42の充電電流が流れる場合にIB1,IB2は負となる。また、IRは巻線22に流れる電流を示す。巻線22から中間点P2へと向かう正方向で電流が流れる場合にIRは正となり、その逆方向で巻線22に電流が流れる場合にIRは負となる。
【0028】
図3において、上下アームの各スイッチ31,32は交互にオンされる。上アームスイッチ31がオン状態になると、第1蓄電池41の端子間電圧VB1が巻線22に印加されることで、第1蓄電池41から巻線22に正方向の電流IRが流れ、上アームスイッチ31がオンからオフに移行した後は、下アームスイッチ32のダイオード33を含む循環経路で巻線22に継続的に電流IRが流れる。一方、下アームスイッチ32がオン状態になると、第2蓄電池42の端子間電圧VB2が巻線22に印加されることで、第2蓄電池42から巻線22に負方向の電流IRが流れ、下アームスイッチ32がオンからオフに移行した後は、上アームスイッチ31のダイオード33を含む循環経路で巻線22に継続的に電流IRが流れる。これにより、各蓄電池41,42の間で相互の充放電が行われ、その通電に伴い各蓄電池41,42の温度が上昇する。
【0029】
図4に、昇温制御のブロック図を示す。ここでは、指令電流IM*と検出電流との偏差に基づくフィードバック制御により、上下アームの各スイッチ31,32を交互にオンする制御を行う構成としている。ただし、指令電流IM*に応じたオープン制御により、各スイッチ31,32のオンオフを制御することも可能である。
【0030】
制御装置70において、電流偏差算出部71は、指令電流IM*から、電流センサ63により検出された電流(以下、検出電流IMr)を減算することにより、電流偏差を算出する。指令電流IM*は、その1周期において正の指令電流IM*及び負の指令電流IM*がそれぞれ正弦波になるように設定されるとよい。
【0031】
フィードバック制御部72は、算出された電流偏差を0にフィードバック制御するための操作量として、デューティ比Dutyを算出する。デューティ比Dutyは、各スイッチ31,32の1スイッチング周期Tswにおけるオン時間Tonの比率(Ton/Tsw)を定める値である。なお、フィードバック制御部72で用いられるフィードバック制御は、例えば比例積分制御とすればよい。
【0032】
PWM生成部73は、算出されたデューティ比Dutyに基づいて、各上アームスイッチ31のゲート信号を生成する。ゲート信号は、オン制御又はオフ制御を指示する信号である。本実施形態では、各上アームスイッチ31のゲート信号は同期している。
【0033】
反転器74は、PWM生成部73により生成された各上アームスイッチ31のゲート信号の論理を反転させることにより、各下アームスイッチ32のゲート信号を生成する。本実施形態では、各下アームスイッチ32のゲート信号は同期している。
【0034】
図5に、昇温制御時のスイッチングパターン等の推移を示す。図5において、(a)は、各上アームスイッチ31のゲート信号の推移を示し、(b)は、各下アームスイッチ32のゲート信号の推移を示す。(c)は、指令電流IM*の推移を示す。
【0035】
昇温制御では、指令電流IM*の1周期において指令電流IM*が図示のごとく正電流及び負電流で推移する。正の指令電流IM*が流れる期間が第1蓄電池41の放電期間であり、負の指令電流IM*が流れる期間が第2蓄電池42の放電期間である。つまり、指令電流IM*が正となる期間においては、第1蓄電池41から放電され、第2蓄電池42が充電される。一方、指令電流IM*が負となる期間においては、第2蓄電池42から放電され、第1蓄電池41が充電される。この場合、指令電流IM*の周期よりも短い周期で上アームスイッチ31と下アームスイッチ32とが交互にオン制御されることにより、第1蓄電池41及び第2蓄電池42において放電電流又は充電電流が流れる。
【0036】
本実施形態では、第1蓄電池41と第2蓄電池42とで端子間電圧が相違し、第2蓄電池42の端子間電圧が第1蓄電池41の端子間電圧よりも高電圧となっている。この場合、エネルギ保存則によれば、各蓄電池41,42の電圧比に応じて、各蓄電池41,42へ流れる電流に差違が生じる。つまり、第2蓄電池42では、第1蓄電池41よりも端子間電圧が高いことから、昇温制御時において、第2蓄電池42に流れる電流が、第1蓄電池41に流れる電流よりも小さくなる。電池セル発熱量は、セル抵抗と電流の2乗との積(R×I^2)により求められることを鑑みると、各蓄電池41,42に流れる電流の違いにより昇温速度に違いが生じる。
【0037】
なお、指令電流IM*の1周期における第1蓄電池41及び第2蓄電池42の電力収支を合わせることが考えられる。この場合、第2蓄電池42の放電期間では、第1蓄電池41の放電期間よりも指令電流IM*の絶対値を小さくするとよい。例えば、第1蓄電池41の端子間電圧が100V、第2蓄電池42の端子間電圧が400Vであることから、第2蓄電池42の放電期間における指令電流IM*のピーク値を、第1蓄電池41の放電期間における指令電流IM*のピーク値の1/4にするとよい。
【0038】
ところで、上記のごとく第1蓄電池41及び第2蓄電池42の相互の電流のやり取り(すなわち相互のエネルギの授受)により各蓄電池41,42を昇温させる場合において、両蓄電池41,42の端子間電圧の相違に起因して第1蓄電池41に流れる電流と第2蓄電池42に流れる電流とで差が生じると、各蓄電池41,42の昇温の速度が相違する。そのため、昇温制御時において両蓄電池41,42において温度差が生じる。
【0039】
そこで本実施形態では、電力変換システム10において、第1蓄電池41及び第2蓄電池42との熱の授受を可能とする熱回路を設けるとともに、制御装置70の昇温制御(温度調整制御)により、各蓄電池41,42の昇温に際し、熱回路により第1蓄電池41及び第2蓄電池42との熱の授受を行わせ、第1蓄電池41及び第2蓄電池42の温度差を低減させるようにしている。本実施形態では、制御装置70が「温度調整部」に相当する。
【0040】
本実施形態では、回転電機21及びインバータ30に設けられた熱交換部を経由して冷媒を循環させ、その冷媒が熱交換により熱を吸収して冷却を行わせる冷却回路を用い、第1蓄電池41及び第2蓄電池42との熱の授受を行わせる構成としている。そして、制御装置70は、各蓄電池41,42の昇温制御の実施時に、上記冷却回路において少なくとも第2蓄電池42に対して冷媒の熱を供給することで、第1蓄電池41及び第2蓄電池42の温度差を低減させる。
【0041】
図6は、電力変換システム10に組み込まれた冷却システム100を示す図である。冷却システム100は、例えば冷却水を冷媒として用いており、回転電機21及びインバータ30を一体化したモータ装置20を冷却対象としている。
【0042】
モータ装置20にはモータ冷却部101が設けられており、そのモータ冷却部101に冷媒通路L1が接続されている。また、放熱部102には、冷媒通路L2が接続されている。冷媒通路L1と冷媒通路L2との間には、冷媒を流す経路を切り替えるための切替装置103が設けられている。モータ冷却部101は、モータ装置20において回転電機21のハウジングやインバータ30のケースに設けられた冷媒通路を含む部位であり、その冷媒通路に冷媒を通過させることでモータ装置20の冷却が行われる。つまり、モータ装置20は、水冷式の冷却装置を有するものとなっている。モータ冷却部101が、モータ装置20に設けられた「熱交換部」に相当し、モータ冷却部101、放熱部102及びに冷媒通路L1を含む冷媒回路が「冷却回路」に相当する。放熱部102は、ラジエータ等の放熱装置である。冷媒通路L1にはポンプ104が設けられている。
【0043】
第1蓄電池41には熱交換部105が設けられ、その熱交換部105と切替装置103とが冷媒通路L3により接続されている。また、第2蓄電池42には熱交換部106が設けられ、その熱交換部106と切替装置103とが冷媒通路L4により接続されている。熱交換部105,106は、各蓄電池41,42を収容する電池ケース等に設けられた冷媒通路を含む部位であり、熱交換部105,106において各蓄電池41,42と冷媒との熱交換が行われる。
【0044】
冷媒通路L1~L4は、冷媒を通過させる配管等により構成されている。以下の説明では、冷媒通路L1,L3,L4の区別を明確化すべく、冷媒通路L1をモータ冷媒通路L1、冷媒通路L3を第1電池冷媒通路L3、冷媒通路L4を第2電池冷媒通路L4とも称する。
【0045】
切替装置103には、モータ冷媒通路L1の通路端部A1,A2と、放熱通路L2の通路端部B1,B2と、第1電池冷媒通路L3の通路端部C1,C2と、第2電池冷媒通路L4の通路端部D1,D2とが接続されている。切替装置103は、冷媒通路L1~L4の相互の接続状態を切り替えるものであり、切替装置103の経路切替により、モータ装置20にて温度上昇した冷媒の行き先が変更可能となっている。切替装置103は、電気駆動により切替操作される複数の切替弁を有しており、切替弁の切替操作により、各冷媒通路L1~L4の接続先が切り替えられる。
【0046】
制御装置70により、切替装置103の経路切替やポンプ104の駆動が制御される。第1蓄電池41及び第2蓄電池42にはそれぞれ温度センサ91,92が設けられており、これら各温度センサ91,92の検出値(すなわち電池温度)は制御装置70に適宜入力される。なお、各蓄電池41,42には、温度センサ91,92が各々複数設けられていてもよい。
【0047】
以下には、切替装置103により切り替えられる冷媒の循環経路として複数の経路パターンを説明する。ここでは、車両走行状態でのモータ装置20の作動時における経路パターンと、組電池40の昇温制御時における経路パターンと、組電池40の充電時における経路パターンとを説明する。
【0048】
図7は、車両走行状態でのモータ装置20の作動時における経路パターンを示す図である。図7に示す経路パターンでは、切替装置103において、モータ冷媒通路L1の通路端部A1,A2と放熱通路L2の通路端部B1,B2とが接続されている。この場合、冷媒は、モータ装置20(モータ冷却部101)と放熱部102との間を循環する。これにより、モータ装置20の作動時において、冷媒によりモータ装置20が冷却される。図7の経路パターンを「第1パターン」とする。
【0049】
図8(a),(b)は、組電池40(蓄電池41,42)の昇温制御時における経路パターンを示す図である。図8(a)に示す経路パターンでは、切替装置103において、モータ冷媒通路L1の通路端部A2と第2電池冷媒通路L4の通路端部D1とが接続され、第2電池冷媒通路L4の通路端部D2と第1電池冷媒通路L3の通路端部C1とが接続され、第1電池冷媒通路L3の通路端部C2とモータ冷媒通路L1の通路端部A1とが接続されている。この経路パターンでは、冷媒が、モータ装置20(モータ冷却部101)、第2蓄電池42(熱交換部106)、第1蓄電池41(熱交換部105)の順序で循環する。この場合、モータ装置20で加熱された冷媒が第2蓄電池42に供給されることで、第2蓄電池42が昇温され、さらにその後、冷媒が第1蓄電池41に供給されることで、第1蓄電池41が昇温される。図8(a)の経路パターンを「第2パターン」とする。
【0050】
図8(b)は、組電池40(蓄電池41,42)の昇温制御時における2つ目の経路パターンを示す図である。図8(b)に示す経路パターンでは、切替装置103において、モータ冷媒通路L1の通路端部A2と第2電池冷媒通路L4の通路端部D1とが接続され、第2電池冷媒通路L4の通路端部D2とモータ冷媒通路L1の通路端部A1とが接続されている。この経路パターンでは、冷媒が、モータ装置20(モータ冷却部101)と第2蓄電池42(熱交換部106)との間で循環する。この場合、モータ装置20で加熱された冷媒が第2蓄電池42に供給されることで、第2蓄電池42が昇温される。図8(b)の経路パターンを「第3パターン」とする。
【0051】
図9は、組電池40(蓄電池41,42)の充電時における経路パターンを示す図である。図9に示す経路パターンでは、切替装置103において、モータ冷媒通路L1の通路端部A2と第2電池冷媒通路L4の通路端部D1とが接続され、第2電池冷媒通路L4の通路端部D2と第1電池冷媒通路L3の通路端部C1とが接続され、第1電池冷媒通路L3の通路端部C2と放熱通路L2の通路端部B1とが接続され、放熱通路L2の通路端部B2とモータ冷媒通路L1の通路端部A1とが接続されている。この経路パターンでは、冷媒が、モータ装置20(モータ冷却部101)、第2蓄電池42(熱交換部106)、第1蓄電池41(熱交換部105)、放熱部102の順序で循環する。この場合、放熱部102で放熱された冷媒が、モータ装置20、第2蓄電池42、第1蓄電池41の順に循環することで、充電装置80による充電時において、モータ装置20と各蓄電池41,42とが冷却される。図9の経路パターンを「第4パターン」とする。
【0052】
図10は、各蓄電池41,42の温度調整処理の手順を示すフローチャートである。本処理は、制御装置70により所定周期で繰り返し実行される。
【0053】
図10において、ステップS21では、今現在、車両走行状態でのモータ装置20の作動中であるか否かを判定する。そして、ステップS21が肯定されれば、ステップS22に進む。ステップS22では、切替装置103の切替操作により、冷却システム100の冷媒循環経路を図7に示す第1パターンとする。続くステップS23では、ポンプ104をオンする。この場合、モータ装置20と放熱部102との間で冷媒が循環され、モータ装置20が冷却される。
【0054】
ステップS21が否定された場合は、ステップS24に進み、今現在、第1,第2蓄電池41,42の昇温制御中であるか否かを判定する。そして、ステップS24が肯定されれば、ステップS25に進む。ステップS25では、第1,第2蓄電池41,42の温度差が比較的小さい状態であるか否かを判定する。例えば、各蓄電池41,42の温度センサ91,92により検出された検出温度の差が所定値未満であれば、温度差が小さい状態である旨を判定し、各温度センサの検出温度の差が所定値以上であれば、温度差が大きい状態である旨を判定する。又は、電池昇温制御の開始後において所定時間が経過するまでは両蓄電池41,42の温度差が小さい状態であるとみなし、所定時間の経過後は両蓄電池41,42の温度差が大きい状態であるとみなすものであってもよい。
【0055】
ステップS25が肯定されればステップS26に進み、切替装置103の切替操作により、冷却システム100の冷媒循環経路を図8(a)に示す第2パターンとする。また、ステップS25が否定されればステップS27に進み、切替装置103の切替操作により、冷却システム100の冷媒循環経路を図8(b)に示す第3パターンとする。その後、ステップS23では、ポンプ104をオンする。ステップS25~S27によれば、各蓄電池41,42の温度差が比較的小さければ、冷媒がモータ装置20、第2蓄電池42、第1蓄電池41の順序で循環される。また、各蓄電池41,42の温度差が比較的大きければ、冷媒がモータ装置20と第2蓄電池42との間で循環される。ここでは、モータ冷却部101から第1蓄電池41及び第2蓄電池に42対して熱を供給する第1状態と、モータ冷却部101から第1蓄電池41及び第2蓄電池42のうち第2蓄電池42のみに対して熱を供給する第2状態との切り替えが行われる。
【0056】
また、ステップS28では、今現在、充電装置80による組電池40の充電中であるか否かを判定する。そして、ステップS28が肯定されれば、ステップS29に進む。ステップS29では、切替装置103の切替操作により、冷却システム100の冷媒循環経路を図9に示す第4パターンとする。その後、ステップS23では、ポンプ104をオンする。この場合、冷媒が、放熱部102、モータ装置20、第2蓄電池42、第1蓄電池41の順序で循環される。
【0057】
なお、図10の処理において、各蓄電池41,42の昇温制御中である場合に、冷却システム100の冷媒循環経路を、第2パターンと第3パターンのうちいずれか一方のみに切り替える構成としてもよい。昇温制御中において、常に第2パターンとする場合、ステップS25,S27を削除し、常に第3パターンのみとする場合、ステップS25,S26を削除する。
【0058】
ステップS26,S27において、各蓄電池41,42の温度差に基づいて、冷媒流量や、インバータ30のスイッチング周波数を可変に設定する構成としてもよい。具体的には、制御装置70は、例えば図11(a)の関係を用い、各蓄電池41,42の温度差が大きいほど冷媒流量を多くする。この場合、冷媒流量を多くすることで、第2蓄電池42での熱交換の度合が大きくなり、第2蓄電池42の昇温が一層促される。これは、特に第3パターンにおいて有効である。
【0059】
また、制御装置70は、例えば図11(b)の関係を用い、各蓄電池41,42の温度差が大きいほどインバータ30のスイッチング周波数を大きくする。この場合、インバータ30のスイッチング周波数を大きくすることで、モータ装置20での発熱量が増え、第2蓄電池42の昇温が一層促される。これは、特に第3パターンにおいて有効である。
【0060】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0061】
低電圧側の第1蓄電池41と高電圧側の第2蓄電池42との熱の授受を可能とする熱回路を設け、各蓄電池41,42の昇温制御の実施時において、熱回路により第1蓄電池41及び第2蓄電池42との熱の授受を行わせることにより、第1蓄電池41及び第2蓄電池42の温度差を低減させるようにした。その結果、組電池40における各蓄電池41,42の温度差を抑制しつつ、各蓄電池41,42を適正に昇温させることができる。
【0062】
巻線22及びインバータ30を含む通電経路で各蓄電池41,42に通電を行わせて蓄電池41,42を昇温させる場合には、回転電機21及びインバータ30の温度が上昇し、それに伴い、モータ冷却部101を含む冷却回路を循環する冷媒の温度が上昇する。この場合、切替装置103により冷媒循環経路を切り替え、回転電機21やインバータ30からの受熱により高温となった冷媒により第2蓄電池42の温度を上昇させることで、第1蓄電池41及び第2蓄電池42の温度差を好適に低減させることができる。
【0063】
各蓄電池41,42の昇温制御時には、高電圧の第2蓄電池42が低電圧の第1蓄電池41よりも低温になり、また、時間の経過等に応じて蓄電池41,42間の温度差の大きさが変化することが考えられる。これを鑑み、切替装置103の経路切替により、モータ冷却部101から第1蓄電池41及び第2蓄電池に42対して熱を供給する第1状態と、モータ冷却部101から第1蓄電池41及び第2蓄電池42のうち第2蓄電池42のみに対して熱を供給する第2状態との切り替えを可能とし、各蓄電池41,42の昇温度合に応じて、第1状態と第2状態とを切り替えるようにした。これにより、各蓄電池41,42の温度差の状況に応じて適正な温度調整が可能となる。
【0064】
冷却システム100においてモータ冷却部101から流出した冷媒は、その流出直後が最も高温であり、その高温の冷媒を、第1蓄電池41と第2蓄電池42とのうち第2蓄電池42に優先的に供給するようにした。これにより、比較的低温となる第2蓄電池42において昇温促進を図ることができる。
【0065】
充電装置80による各蓄電池41,42の充電時には、冷媒循環経路として放熱部102を含む経路で冷媒を循環させる一方、昇温制御の実施時には、冷媒循環経路として放熱部102を含まない経路で冷媒を循環させることで、各蓄電池41,42の充電時と昇温制御の実施時とで、冷却回路における冷媒の循環経路を相違させるようにした。この場合、同一の冷却回路を用いつつ冷媒の循環経路を相違させることにより、充電装置80による各蓄電池41,42の充電時と昇温制御の実施時とで、各々適正に各蓄電池41,42の温度調整を行わせることができる。
【0066】
以下、別の実施形態を、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0067】
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態における冷却システム100を示す図である。図12の冷却システム100は、図6に示す構成の一部を変更したものである。
【0068】
図12では、第2蓄電池42に、2つの熱交換部106,107が設けられており、熱交換部106と切替装置103とが冷媒通路L4により接続されるとともに、熱交換部107と切替装置103とが冷媒通路L5により接続されている。これら各熱交換部106,107は、第2蓄電池42の電池ケース等に別々に設けられている。切替装置103には、第2蓄電池42に通じる冷媒通路L4の通路端部D1,D2と、同じく第2蓄電池42に通じる冷媒通路L5の通路端部E1,E2とが接続されている。冷媒通路L5には、ポンプ111が設けられている。
【0069】
本実施形態の冷却システム100では、組電池40(蓄電池41,42)の昇温制御時において図13に示す経路パターンで冷媒が循環されることにより、第2蓄電池42の昇温が優先的に行われる。
【0070】
図13に示す経路パターンでは、切替装置103において、モータ冷媒通路L1の通路端部A2と第2電池冷媒通路L4の通路端部D1とが接続され、第2電池冷媒通路L4の通路端部D2とモータ冷媒通路L1の通路端部A1とが接続されている。また、切替装置103において、冷媒通路L5の通路端部E2と第1電池冷媒通路L3の通路端部C1とが接続され、第1電池冷媒通路L3の通路端部C2と冷媒通路L5の通路端部E1とが接続されている。
【0071】
要するに、図13の経路パターンでは、モータ冷却部101と第2蓄電池42とで冷媒を循環させる第1経路と、第1蓄電池41と第2蓄電池42とで冷媒を循環させる第2経路とが形成されるものとなっている。
【0072】
制御装置70は、昇温制御時において、切替装置103を操作して図13に示す2つの冷媒循環経路を形成し、かつポンプ104,111をオンすることで、各蓄電池41,42の温度調整を実施する。より具体的には、図10の温度調整処理において、第1,第2蓄電池41,42の昇温制御中であると判定され、かつ第1,第2蓄電池41,42の温度差が比較的大きい状態であると判定された場合(ステップS24がYES、ステップS25がNOの場合)に、ステップS27において、図8(b)に示す第3パターンに代えて、図13の経路パターンにより冷媒を循環させる。
【0073】
また、図8(a)に示す冷媒循環経路(第2パターン)と、図8(b)に示す冷媒循環経路(第3パターン)と、図13に示す冷媒循環経路(便宜上、第5パターンとする)との3パターンを適宜切り替える構成としてもよい。この場合、これら3パターンを比べると、図13の第2パターンが最も第2蓄電池42の昇温が促進され、次いで図8(b)の第3パターン、図8(a)の第5パターンの順となる。そこで、これら3つの経路パターンを、各蓄電池41,42の昇温度合に基づいて切り替えるようにしてもよい。具体的には、制御装置70は、昇温制御中の状態下において、図14の処理を実行する。
【0074】
図14では、ステップS31で各蓄電池41,42の温度差ΔTを算出し、続くステップS32では、温度差ΔTが第1閾値TH1未満であるか否かを判定する。そして、温度差ΔTが第1閾値TH1未満であればステップS33に進み、図8(a)の第2パターンで冷媒を循環させる。また、ステップS34では、温度差ΔTが第2閾値TH2未満であるか否かを判定する。なお、TH2>TH1である。そして、温度差ΔTが第2閾値TH2未満であれば、すなわち温度差ΔTがTH1~TH2の範囲内の温度であればステップS35に進み、図8(b)の第3パターンで冷媒を循環させる。さらに、温度差ΔTが第2閾値TH2以上であればステップS36に進み、図13の第5パターンで冷媒を循環させる。
【0075】
以上詳述した本実施形態によれば、各蓄電池41,42の昇温制御時において、モータ冷却部101から第2蓄電池42への熱の供給と、第1蓄電池41から第2蓄電池42への熱の供給とをそれぞれ独立して行わせることができ、第2蓄電池42を昇温させ、かつ各蓄電池41,42間の温度差を解消させる上で好適な構成を実現できる。
【0076】
(第3実施形態)
第3実施形態では、モータ装置20の冷却システム100に、車室内空調を行う空調システム120を組み合わせて、組電池40の温度調整を行わせるものとしている。図15は、第3実施形態における冷却システム100を示す図である。図15の冷却システム100は、図6に示す構成の一部を変更したものであり、冷凍サイクル回路である空調システム120が組み合わされた構成となっている。
【0077】
空調システム120は、フロン系冷媒等よりなる空調用の冷媒を循環させる冷媒通路121と、冷媒を圧縮して吐出するコンプレッサ122と、コンプレッサ122から吐出された冷媒を凝縮(液化)させる凝縮器123(コンデンサ)と、冷媒の圧力を低下させる膨張弁124と、冷媒を蒸発(気化)させる蒸発器125(エバポレータ)とを備えている。空調システム120では、冷媒の循環に伴い、凝縮器123での冷媒の凝縮と、蒸発器125での蒸発とが繰り返し行われる。本実施形態において、冷却システム100に循環される冷媒が「第1冷媒」に相当し、空調システム120に循環される冷媒が「第2冷媒」に相当する。
【0078】
空調システム120の凝縮器123には、冷却システム100側の切替装置103から延びる冷媒通路L11の一部が一体化されており、凝縮器123と冷媒通路L11との間の熱交換が可能になっている。冷媒通路L11は、通路端部X1,X2で切替装置103に接続されており、その冷媒通路L11にはポンプ112が設けられている。この場合、凝縮器123では冷媒温度が上昇して高温冷媒となるため、冷媒通路L11を流れる冷媒は凝縮器123を通過する際に加熱される。
【0079】
また、空調システム120の蒸発器125には、冷却システム100側の切替装置103から延びる冷媒通路L12の一部が一体化されており、蒸発器125と冷媒通路L12との間の熱交換が可能になっている。冷媒通路L12は、通路端部Y1,Y2で切替装置103に接続されている。この場合、蒸発器125では冷媒温度が低下して低温冷媒となるため、冷媒通路L12を流れる冷媒は蒸発器125を通過する際に放熱される。
【0080】
第1電池冷媒通路L3にはポンプ113が設けられている。なお、図15では便宜上割愛するが、切替装置103には図6と同様に、放熱部102が接続されている。
【0081】
本実施形態の冷却システム100では、組電池40(蓄電池41,42)の昇温制御時において図16に示す経路パターンで冷媒が循環される。
【0082】
図16に示す経路パターンでは、切替装置103において、モータ冷媒通路L1の通路端部A2と第2電池冷媒通路L4の通路端部D1とが接続されている。また、第2電池冷媒通路L4の通路端部D2が、モータ冷媒通路L1の通路端部A1に接続されるとともに、冷媒通路L11の通路端部X1に接続されている。冷媒通路L11の通路端部X2は第2電池冷媒通路L4の通路端部D1に接続されている。この経路は、熱供給により第2蓄電池42の昇温を促進する高温経路であり、モータ装置20で加熱された冷媒が第2蓄電池42に供給されるとともに、凝縮器123で加熱された冷媒が第2蓄電池42に供給されることで、第2蓄電池42の温度上昇が促される。
【0083】
また、切替装置103において、第1電池冷媒通路L3の通路端部C2が、冷媒通路L12の通路端部Y1に接続され、冷媒通路L12の通路端部Y2が、第1電池冷媒通路L3の通路端部C1に接続されている。この経路は、放熱により第1蓄電池41の昇温を抑制する低温経路であり、蒸発器125で放熱された冷媒が第1蓄電池41に供給されることで、第1蓄電池41の温度上昇が抑制される。
【0084】
制御装置70は、昇温制御時において、切替装置103を操作して図16に示す冷媒循環経路を形成し、かつポンプ104,112,113をオンすることで、各蓄電池41,42の温度調整を実施する。より具体的には、図10の温度調整処理において、第1,第2蓄電池41,42の昇温制御中であると判定され、かつ第1,第2蓄電池41,42の温度差が比較的大きい状態であると判定された場合(ステップS24がYES、ステップS25がNOの場合)に、ステップS27において、図8(b)に示す第3パターンに代えて、図16の経路パターンにより冷媒を循環させる。
【0085】
なお、図16では、昇温制御時において、凝縮器123を流れる高温冷媒による第2蓄電池42の昇温促進と、蒸発器125を流れる低温冷媒による第1蓄電池41の昇温抑制との両方を行わせる構成としたが、これを変更してもよい。例えば、昇温制御時において、凝縮器123を流れる高温冷媒による第2蓄電池42の昇温促進と、蒸発器125を流れる低温冷媒による第1蓄電池41の昇温抑制とのうち何れか一方のみを行わせる構成としてもよい。これら各状態を、各蓄電池41,42の昇温度合に応じて切り替えることも可能である。
【0086】
また、モータ装置20で加熱された冷媒により第2蓄電池42が昇温される状態と、凝縮器123で加熱された冷媒により第2蓄電池42が昇温される状態とを、各蓄電池41,42の昇温度合に応じて切り替えることも可能である。
【0087】
具体的には、制御装置70は、昇温制御中の状態下において、図17の処理を実行する。図17では、ステップS41で、高温側の蓄電池である第1蓄電池41の温度T1が所定の閾値TH11以上であるか否かを判定する。閾値TH11は、昇温制御時において第1蓄電池41の温度上昇が不要となる上限温度(例えば目標温度)に基づいて定められているとよい。第1蓄電池41の温度T1が閾値TH11以上であればステップS42に進み、蒸発器125を流れる低温冷媒による第1蓄電池41の昇温抑制を行わせるべく、切替装置103の切替操作を実施する。
【0088】
ステップS43では、各蓄電池41,42の温度差ΔTを算出し、続くステップS44では、温度差ΔTが閾値TH12未満であるか否かを判定する。そして、温度差ΔTが閾値TH12未満であればステップS45に進み、モータ装置20で加熱された冷媒による第2蓄電池42の昇温を行わせるべく、切替装置103の切替操作を実施する。また、温度差ΔTが閾値TH12以上であればステップS46に進み、モータ装置20で加熱された冷媒による第2蓄電池42の昇温と、凝縮器123で加熱された冷媒による第2蓄電池42の昇温とを行わせるべく、切替装置103の切替操作を実施する。
【0089】
以上詳述した本実施形態によれば、凝縮器123の高温冷媒を用いて第2蓄電池42の昇温を促進し、かつ蒸発器125の低温冷媒を用いて第1蓄電池41の昇温を抑制することで、各蓄電池41,42間の温度差を好適に抑制できる。
【0090】
(第4実施形態)
本実施形態では、第3実施形態と同様に、モータ装置20の冷却システム100に、車室内空調を行う空調システム120を組み合わせて、組電池40の温度調整を行わせるものとしている。図18は、第4実施形態における冷却システム100を示す図である。
【0091】
図18では、第2蓄電池42に凝縮器123が取り付けられるとともに、第1蓄電池41に蒸発器125が取り付けられている。具体的には、各蓄電池41,42を収容する電池ケース等に、凝縮器123や蒸発器125が固定されているとよい。
【0092】
本実施形態の経路パターンを図19に示す。この経路パターンでは、切替装置103において、モータ冷媒通路L1の通路端部A2が第2電池冷媒通路L4の通路端部D1に接続されるとともに、第2電池冷媒通路L4の通路端部D2がモータ冷媒通路L1の通路端部A1に接続されている。この場合、モータ装置20で加熱された冷媒が第2蓄電池42に供給されることにより第2蓄電池42の温度上昇が促されるとともに、凝縮器123を流れる高温冷媒により第2蓄電池42の温度上昇が促される。第1蓄電池41においては、第1電池冷媒通路L3が他の冷媒通路に対して非接続とされ、蒸発器125を流れる低温冷媒によって第1蓄電池41の温度上昇が抑制される。
【0093】
ただし、図18の構成では、制御装置70は、モータ冷却部101を含む循環経路での冷媒の循環を停止させ、凝縮器123を流れる高温冷媒による第2蓄電池42の昇温促進のみを行わせるようにしてもよい。
【0094】
上記構成によれば、凝縮器123の高温冷媒による第2蓄電池42の直接的な加熱と、蒸発器125の低温冷媒による第1蓄電池41の直接的な放熱とを行わせることができる。この場合、空調システム120の凝縮器123や蒸発器125から各蓄電池41,42までの配管を省略することができ、構成の簡素化を図ることができる。
【0095】
なお、図18の冷却システム100では、第2蓄電池42に凝縮器123が取り付けられている構成と、第1蓄電池41に蒸発器125が取り付けられている構成とのいずれか一方のみが採用されていてもよい。
【0096】
(第5実施形態)
図20は、第5実施形態における冷却システム100を示す図である。図20の冷却システム100は、図15に示す構成の一部を変更したものである。
【0097】
図20では、第2蓄電池42に、2つの熱交換部106,107が設けられており、熱交換部106と切替装置103とが冷媒通路L4により接続されるとともに、熱交換部107と切替装置103とが冷媒通路L5により接続されている。これら各熱交換部106,107は、第2蓄電池42の電池ケース等に別々に設けられている。切替装置103には、第2蓄電池42に通じる冷媒通路L4の通路端部D1,D2と、同じく第2蓄電池42に通じる冷媒通路L5の通路端部E1,E2とが接続されている。図15との相違点としては、第2蓄電池42の冷媒循環系統が1系統から2系統に変更されている。
【0098】
本実施形態の冷却システム100では、組電池40(蓄電池41,42)の昇温制御時において図21に示す経路パターンで冷媒が循環される。図21に示す経路パターンでは、図16の経路パターンとの違いとして、第2蓄電池42の冷媒循環系統が互いに独立する2系統となっており、その一方の系統では、モータ冷却部101と第2蓄電池42とで冷媒が循環し、他方の系統では、第2蓄電池42と凝縮器123とで冷媒が循環する。
【0099】
要するに、図21の経路パターンでは、モータ冷却部101と第2蓄電池42とで冷媒(第1冷媒)を循環させる第1経路と、凝縮器123と第2蓄電池42とで冷媒(第1冷媒)を循環させる第2経路との形成が可能になっている。
【0100】
制御装置70は、昇温制御中の状態下において、図17に示す状態切替処理を実行するとよい。
【0101】
上記構成によれば、モータ冷却部101から第2蓄電池42への熱の供給と、凝縮器123から第2蓄電池42への熱の供給とをそれぞれ独立して行わせることができ、第2蓄電池42を昇温させ、かつ各蓄電池41,42間の温度差を解消させる上で好適な構成を実現できる。
【0102】
(他の実施形態)
上記実施形態を例えば次のように変更してもよい。
【0103】
・上記実施形態では、モータ冷却部101を、回転電機21及びインバータ30の両方で熱交換するものとしたが、これを変更し、モータ冷却部101を、回転電機21及びインバータ30のうちいずれか一方で熱交換するものとしてもよい。
【0104】
・第1実施形態における図6の冷却システム100において、図22に示す経路で冷媒を循環させるようにしてもよい。図22では、切替装置103の切替操作により、モータ冷却部101と第2蓄電池42との間で熱交換が行われるとともに、第1蓄電池41と放熱部102との間で熱交換が行われ、第1蓄電池41の昇温抑制が図られる。
【0105】
この場合、図8(a),(b)に示す2つの経路パターンと、図22に示す経路パターンとの切替が可能になっている。かかる構成では、昇温制御時において、各蓄電池41,42の昇温度合(例えば蓄電池間の温度差)に基づいて、上記3つの経路パターンを切り替える構成にするとよい。具体的には、制御装置70は、温度差が小さい場合から順に、図8(a)に示す経路パターン、図8(b)に示す経路パターン、図22に示す経路パターンの順に、各パターンの切替を行うとよい。
【0106】
・モータ冷却部101を、昇温制御時に、第2蓄電池42の昇温促進と第1蓄電池41の昇温抑制とのうち後者の昇温抑制のみを実施する構成としてもよい。例えば、図16において、冷媒循環経路として、第1蓄電池41と蒸発器125との間で熱交換が行われる経路のみを有する構成や、図22において、冷媒循環経路として、第1蓄電池41と放熱部102との間で熱交換が行われる経路のみを有する構成とする。
【0107】
・第3~第5実施形態では、モータ装置20を熱源として第2蓄電池42の昇温促進を図る構成と、空調システム120の凝縮器123を熱源として第2蓄電池42の昇温促進を図る構成との両方を備える構成としたが、それらのうちいずれか一方の構成のみを有するものであってもよい。
【0108】
・第3~第5実施形態で説明した冷凍サイクル回路は、空調以外の用途で設けられたものであってもよい。例えば、車載の冷凍庫等として設けられたものであってもよい。
【0109】
・回転電機は、力行及び回生発電のうち力行の機能のみを行う電動機であってもよい。又は、回転電機は、力行及び回生発電のうち回生発電の機能のみを行う発電機であってもよい。
【0110】
・本発明は、電動車両以外の移動体に適用されるものであってもよい。また、定置式のシステムに適用されるものであってもよい。
【0111】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0112】
上述の実施形態から抽出される技術思想を以下に記載する。
[構成1]
互いに直列に接続された第1蓄電池(41)及び第2蓄電池(42)と、多相の巻線(22)を有する回転電機(21)と、前記回転電機に接続されたインバータ(30)とを備え、前記巻線及び前記インバータを含む通電経路で前記第1蓄電池と前記第2蓄電池との相互の通電を行わせ、その相互の通電により前記各蓄電池を昇温させる昇温制御を実施する電池昇温装置であって、
前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池は端子間電圧が相違し、前記第1蓄電池は前記第2蓄電池よりも端子間電圧が小さい蓄電池であり、
前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池の少なくともいずれかとの熱の授受を可能とする熱回路と、
前記昇温制御の実施時に、前記熱回路により前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池の少なくともいずれかとの熱の授受を行わせることにより、前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池の温度差を低減させる温度調整部と、
を備える電池昇温装置。
[構成2]
前記熱回路として、前記回転電機及び前記インバータの少なくともいずれかに設けられた熱交換部(101)を経由して冷媒を循環させ、その冷媒が熱交換により熱を吸収して冷却を行わせる冷却回路を含み、
前記冷却回路は、前記熱交換部を流れる冷媒を少なくとも前記第2蓄電池を含む経路で循環させるように冷媒循環経路を切り替える切替装置(103)を有しており、
前記温度調整部は、前記昇温制御の実施時に、前記切替装置の経路切替により、前記冷却回路において少なくとも前記第2蓄電池に対して冷媒の熱を供給する状態とする、構成1に記載の電池昇温装置。
[構成3]
前記冷却回路は、前記熱交換部から前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池に対して熱を供給する第1状態と、前記熱交換部から前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池のうち第2蓄電池のみに対して熱を供給する第2状態との切り替えを可能とするものであり、
前記温度調整部は、前記昇温制御の実施時に、前記各蓄電池の昇温度合に応じて、前記切替装置により前記第1状態と前記第2状態との切り替えを実施する、構成2に記載の電池昇温装置。
[構成4]
前記冷却回路は、前記熱交換部から流出した冷媒を、前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池に通過させる冷媒通路を有するものであり、
前記温度調整部は、前記熱交換部から流出した冷媒を、前記第2蓄電池、前記第1蓄電池の順で通過させる、構成2又は3に記載の電池昇温装置。
[構成5]
前記冷却回路は、前記熱交換部と前記第2蓄電池とで冷媒を循環させる第1経路と、前記第1蓄電池と前記第2蓄電池とで冷媒を循環させる第2経路とを形成可能にするものであり、
前記温度調整部は、前記昇温制御の実施時に、前記切替装置の経路切替により、前記第1経路と前記第2経路との両方を用いた冷媒の循環を行わせる、構成2~4のいずれか1つに記載の電池昇温装置。
[構成6]
前記第1蓄電池及び前記第2蓄電池に対して充電装置(80)による充電が可能となっており、
前記冷却回路は、前記熱交換部を流れる冷媒を放熱部(102)に流通可能にするものであり、
前記温度調整部は、前記切替装置の経路切替により、前記充電装置による前記各蓄電池の充電時には、冷媒循環経路として前記放熱部を含む経路で冷媒を循環させる一方、前記昇温制御の実施時には、冷媒循環経路として前記放熱部を含まない経路で冷媒を循環させることで、前記各蓄電池の充電時と前記昇温制御の実施時とで、前記冷却回路における冷媒の循環経路を相違させる、構成2~5のいずれか1つに記載の電池昇温装置。
[構成7]
冷凍サイクル用の冷媒を圧縮して吐出するコンプレッサ(122)と、前記コンプレッサから吐出された当該冷媒を凝縮させる凝縮器(123)と、前記凝縮器の下流側において当該冷媒を蒸発させる蒸発器(125)とを有する冷凍サイクル回路を、前記熱回路として含むものであり、
前記温度調整部は、前記昇温制御の実施時に、前記凝縮器を流れる高温状態の前記冷凍サイクルの冷媒による前記第2蓄電池の昇温促進と、前記蒸発器を流れる低温状態の前記冷凍サイクルの冷媒による前記第1蓄電池の昇温抑制との少なくともいずれかを行わせる、構成1~6のいずれか1つに記載の電池昇温装置。
[構成8]
前記第2蓄電池に前記凝縮器が取り付けられている構成と、前記第1蓄電池に前記蒸発器が取り付けられている構成との少なくともいずれかを有する、構成7に記載の電池昇温装置。
[構成9]
前記熱回路として、
前記回転電機及び前記インバータの少なくともいずれかに設けられた熱交換部(101)を経由して第1冷媒を循環させ、その第1冷媒が熱交換により熱を吸収して冷却を行わせる冷却回路と、
第2冷媒を圧縮して吐出するコンプレッサ(122)と、前記コンプレッサから吐出された第2冷媒を凝縮させる凝縮器(123)と、前記凝縮器の下流側において第2冷媒を蒸発させる蒸発器(125)とを有する冷凍サイクル回路と、を含み、
前記温度調整部は、前記昇温制御の実施時に、前記各蓄電池の昇温度合に応じて、前記熱交換部と前記第2蓄電池とで冷媒を循環させる状態と、その冷媒循環に加えて前記凝縮器と前記第2蓄電池とで冷媒を循環させる状態とを切り替える、構成1~8のいずれか1つに記載の電池昇温装置。
[構成10]
前記熱回路として、
前記回転電機及び前記インバータの少なくともいずれかに設けられた熱交換部(101)を経由して第1冷媒を循環させ、その第1冷媒が熱交換により熱を吸収して冷却を行わせる冷却回路と、
第2冷媒を圧縮して吐出するコンプレッサ(122)と、前記コンプレッサから吐出された第2冷媒を凝縮させる凝縮器(123)と、前記凝縮器の下流側において第2冷媒を蒸発させる蒸発器(125)とを有する冷凍サイクル回路と、を含み、
前記熱交換部と前記第2蓄電池とで前記第1冷媒を循環させる第1経路と、前記凝縮器と前記第2蓄電池とで前記第1冷媒を循環させる第2経路との形成が可能になっており、
前記温度調整部は、前記昇温制御の実施時に、前記第1経路と前記第2経路との両方を用いた冷媒の循環を行わせる、構成1~9のいずれか1つに記載の電池昇温装置。
【符号の説明】
【0113】
21…回転電機、22…巻線、41…第1蓄電池、42…第2蓄電池、70…制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22