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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122353
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】エア抜き装置及びエア抜き方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/06 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
F16K17/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029854
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達夫
【テーマコード(参考)】
3H059
【Fターム(参考)】
3H059AA02
3H059AA06
3H059AA17
3H059BB06
3H059BB40
3H059CA02
3H059CA04
3H059CA05
3H059CA12
3H059CA15
3H059CC02
3H059CD05
3H059CD11
3H059CE04
3H059DD13
3H059EE01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電磁リリーフ弁内のエア抜きを行うためのエア抜き装置及びエア抜き方法を提供する。
【解決手段】エア抜き装置30は、弁体が閉弁している逆比例型の電磁リリーフ弁100に対して、ポート76hあるいは低圧側の通路からスプリング室77内に作動液を供給するポンプEPを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆比例タイプの電磁リリーフ弁内のエアを抜くためのエア抜き装置であって、
前記電磁リリーフ弁は、
高圧側の通路と低圧側の通路とを連通または遮断する弁体と、
前記弁体を閉弁方向に付勢する付勢部と、を備え、
前記付勢部は、
前記弁体に当接するロッドが固定されたプランジャと、
前記プランジャを介して前記弁体を閉弁方向に付勢する付勢部材と、
電流が印加されると前記付勢部材の付勢力に対向する反力を前記プランジャに付与するコイルと、
前記プランジャを挟んで前記弁体と反対側に設けられ、前記付勢部材が収容される付勢部材室と、
前記付勢部材室と大気とを連通するポートと、を有し、
前記エア抜き装置は、
前記弁体が閉弁している前記電磁リリーフ弁に対して、前記ポートあるいは前記低圧側の通路から前記付勢部材室内に作動液を供給するポンプを備えることを特徴とするエア抜き装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたエア抜き装置であって、
前記電磁リリーフ弁は、前記弁体を収容するバルブハウジングをさらに備え、
前記エア抜き装置は、前記バルブハウジングが着脱自在に取り付けられ、前記低圧側の通路に連通する通路が形成されたアダプタをさらに備えることを特徴とするエア抜き装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたエア抜き装置であって、
前記アダプタと前記電磁リリーフ弁とは、迅速継手によって接続されることを特徴とするエア抜き装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載されたエア抜き装置であって、
前記電磁リリーフ弁から排出された作動液が流れる排出通路を有し、
前記排出通路は、前記排出通路の内部を流れる作動液を視認できるように少なくとも一部が透明の部材によって形成されていることを特徴とするエア抜き装置。
【請求項5】
逆比例タイプの電磁リリーフ弁内のエアを抜くためのエア抜き方法であって、
前記電磁リリーフ弁は、
高圧側の通路と低圧側の通路とを連通または遮断する弁体と、
前記弁体を閉弁方向に付勢する付勢部と、を備え、
前記付勢部は、
前記弁体に当接するロッドが固定されたプランジャと、
前記プランジャを介して前記弁体を閉弁方向に付勢する付勢部材と、
電流が印加されると前記付勢部材の付勢力に対向する反力を前記プランジャに付与するコイルと、
前記プランジャを挟んで前記弁体と反対側に設けられ、前記付勢部材が収容される付勢部材室と、
前記付勢部材室と大気とを連通するポートと、を有し、
前記ポートから前記付勢部材室に作動液を供給して前記低圧側の通路から前記電磁リリーフ弁の外部に作動液を排出する、あるいは、前記低圧側の通路から前記付勢部材室に作動液を供給して前記ポートから前記電磁リリーフ弁の外部に作動液を排出することを特徴とするエア抜き方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁リリーフ弁のエア抜き装置及び電磁リリーフ弁のエア抜き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高圧通路内の作動油の圧力が設定圧に達すると開弁し、高圧通路から低圧通路へ作動油を逃がすことにより、高圧通路内の作動油の圧力が異常に高圧となることを防止する電磁リリーフ弁が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の電磁リリーフ弁は、設定圧を変更することを可能にするソレノイド部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-12406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電磁リリーフ弁は、出荷時に検査を行った後、搬送され、その後、バルブブロックなどの油圧機器に取り付けられる。特許文献1に記載の電磁リリーフ弁では、搬送中の振動などの影響により、弁内部にエアが混入することがある。
【0006】
例えば、ソレノイド部のプランジャを付勢するスプリングが収容されるスプリング室にエアが混入してしまうと、プランジャの移動に伴いエアが膨張及び収縮して、電磁リリーフ弁の作動が不安定になる。
【0007】
このため、電磁リリーフ弁を油圧機器に取り付ける直前に電磁リリーフ弁内のエア抜きを行うことが好ましい。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単に電磁リリーフ弁内のエア抜きを行うためのエア抜き装置及びエア抜き方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、逆比例タイプの電磁リリーフ弁内のエアを抜くためのエア抜き装置であって、電磁リリーフ弁は、高圧側の通路と低圧側の通路とを連通または遮断する弁体と、弁体を閉弁方向に付勢する付勢部と、を備え、付勢部は、弁体に当接するロッドが固定されたプランジャと、プランジャを介して弁体を閉弁方向に付勢する付勢部材と、電流が印加されると付勢部材の付勢力に対向する反力をプランジャに付与するコイルと、プランジャを挟んで弁体と反対側に設けられ、付勢部材が収容される付勢部材室と、付勢部材室と大気とを連通するポートと、を有し、エア抜き装置は、弁体が閉弁している電磁リリーフ弁に対して、ポートあるいは低圧側の通路から付勢部材室内に作動液を供給するポンプを備えることを特徴とする。
【0010】
この発明では、ポンプから吐出された作動液が電磁リリーフ弁内を通過することにより、電磁リリーフ弁内に溜まっているエアが作動液とともに、電磁リリーフ弁の外部に排出される。
【0011】
また、本発明は、電磁リリーフ弁が、弁体を収容するバルブハウジングをさらに備え、エア抜き装置は、バルブハウジングが着脱自在に取り付けられ低圧側の通路に連通する通路が形成されたアダプタをさらに備えることを特徴とする。
【0012】
この発明では、アダプタに電磁リリーフ弁を取り付けてエア抜きを行うことができる。これにより、機器本体から離れた場所でもエア抜きを行うことができるので、作業の自由度が向上する。
【0013】
また、本発明は、アダプタと電磁リリーフ弁とが、迅速継手によって接続されることを特徴とする。
【0014】
この発明では、迅速継手によって電磁リリーフ弁を簡単にアダプタに着脱できるので、作業効率を向上させることができる。
【0015】
また、本発明は、電磁リリーフ弁から排出された作動液が流れる排出通路を有し、排出通路は、排出通路の内部を流れる作動液を視認できるように少なくとも一部が透明の部材によって形成されていることを特徴とする。
【0016】
この発明では、排出通路の一部が透明の部材によって形成されているので、排出通路の内部を流れる作動液にエアが混入しているか否かを視認できる。これにより、エア抜きを終了するタイミングを簡単に把握することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡単に電磁リリーフ弁内のエア抜きを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る電磁リリーフ弁の断面図である。
図2】(A)本発明の実施形態に係る電磁リリーフ弁におけるエア抜き機構の閉状態の断面図である。(B)本発明の実施形態に係る電磁リリーフ弁におけるエア抜き機構の開状態の断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るエア抜き装置の概略図である。
図4】本発明の実施形態の変形例に係るエア抜き装置の概略図である。
図5】本発明の実施形態の変形例に係るエア抜き装置の概略図である。
図6】本発明の実施形態の変形例に係るエア抜き装置の概略図である。
図7】本発明の実施形態の変形例に係るエア抜き装置の概略図である。
図8】本発明の実施形態の変形例に係るエア抜き装置の概略図である。
図9】本発明の実施形態の変形例に係るエア抜き装置の概略図である。
図10】本発明の実施形態の変形例に係るエア抜き装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
はじめに、図1を参照して、本発明の実施形態に係る電磁リリーフ弁100について説明する。
【0020】
電磁リリーフ弁100は、逆比例タイプの電磁リリーフ弁である。逆比例タイプとは、後述するソレノイドに印加する電流値が大きくなるほど、リリーフ圧が小さくなるように構成されたリリーフ弁である。
【0021】
電磁リリーフ弁100は、高圧通路H内の作動油の圧力が設定圧(リリーフ圧)に達すると開弁し、高圧通路Hから低圧通路Lへ作動油を逃がすことにより、高圧通路H内の作動油の圧力が異常に高圧となることを防止する。また、電磁リリーフ弁100は、アンチボイド機能を有しており、高圧通路Hが負圧になったときに開弁し、低圧通路Lから高圧通路Hへ作動油を供給することにより、キャビテーションの発生を防止する。
【0022】
図1に示すように、電磁リリーフ弁100は、機器本体1にねじ締結により取り付けられる。機器本体1は、油圧シリンダ、油圧ポンプ、油圧モータ、複数の弁を有するバルブブロック等の油圧機器の本体である。本実施形態では、機器本体1の作動液として作動油を使用した場合を例に説明するが、作動液は、作動水などの他の液体であってもよい。
【0023】
機器本体1には、電磁リリーフ弁100を境界として高圧通路Hと低圧通路Lとが設けられる。機器本体1には、高圧通路Hと低圧通路Lとの間に後述するサクションポペット3が着座する第1弁座としてのシート部1aが設けられる。なお、機器本体1は、油圧機器の本体に限定されず、各油圧機器間に設置されるブロック体などであってもよい。
【0024】
図1に示すように、電磁リリーフ弁100は、高圧通路Hと低圧通路Lとを連通または遮断するためのバルブ部Vと、設定圧(リリーフ圧)を調整するためのソレノイド部Sと、を備える。
【0025】
図1に示すように、バルブ部Vは、高圧通路Hと低圧通路Lとが設けられる機器本体1に取り付けられるバルブハウジング2と、バルブハウジング2内に設けられ、シート部1aから離座またはシート部1aに着座することで高圧通路Hと低圧通路Lとを連通または遮断する第1弁体としてのサクションポペット3と、サクションポペット3内に設けられ、サクションポペット3に形成された第2弁座としてのシート部3fから離座またはシート部3fに着座することで高圧通路Hと低圧通路Lとを連通または遮断する第2弁体としてのメインポペット5と、サクションポペット3内において、高圧通路Hからメインポペット5を閉弁方向に付勢するための作動油が導かれる背圧室8と、背圧室8をメインポペット5との間で区画するスリーブ7と、メインポペット5に設けられ、高圧通路H及び背圧室8とを連通するパイロット通路10と、スリーブ7内に設けられ背圧室8の作動油が排出されるドレン室12と、スリーブ7に設けられドレン室12と背圧室8とを連通する第1連通路P1と、スリーブ7内に設けられ、第1連通路P1を開閉する第3弁体としてのパイロットポペット20と、を備える。
【0026】
図1に示すように、バルブハウジング2は、機器本体1に取り付けられる第1円筒部2aと、第1円筒部2aとは反対側において連結部材90に結合される第2円筒部2bと、を有する円筒状に形成された部材である。バルブハウジング2は、連結部材90によって、ソレノイド部Sのソレノイドハウジング71と連結される。本実施形態のバルブハウジング2、連結部材90及びソレノイドハウジング71は、特許請求の範囲の「バルブハウジング」に相当する。
【0027】
サクションポペット3は、円筒部3aと底部3bとを有する有底円筒状に形成された部材である。サクションポペット3は、バルブハウジング2内に軸方向に移動可能に設けられ、一部がバルブハウジング2の第1円筒部2aの開口から突出する。サクションポペット3の底部3bには、高圧通路Hに連通する高圧ポート3Hが設けられ、円筒部3aの底部3b近傍には、低圧通路Lに連通する低圧ポート3Lが設けられる。
【0028】
サクションポペット3の円筒部3aと底部3bとの間の角部3cは、テーパ状に形成されており、この角部3cが機器本体1のシート部1aに着座することにより、機器本体1とサクションポペット3との間を通じた高圧通路Hと低圧通路Lとの連通が遮断される。サクションポペット3の底部3b側には、メインポペット5が収容される第1収容孔3dが設けられ、底部3bとは反対側の端部には、第1収容孔3dより径が大きく、スリーブ7が収容される第2収容孔3eが設けられる。
【0029】
メインポペット5は、第1収容孔3d内を摺動可能な本体部50と、本体部50に軸方向に貫通して形成された摺動孔50a内を摺動可能なパイロットピストン51と、を有する。
【0030】
本体部50は、サクションポペット3の角部3cの内側に形成されるシート部3fに着座する弁部50bを有する。弁部50bがシート部3fに着座することにより、サクションポペット3とメインポペット5との間を通じた高圧通路Hと低圧通路Lとの連通が遮断される。本体部50の外周面とサクションポペット3の内周面との間には、本体部50とサクションポペット3との間の隙間をシールするシール部材(Oリング)が設けられる。
【0031】
パイロットピストン51は、サクションポペット3の内周面とメインポペット5とスリーブ7とによって区画される空間である背圧室8に臨んで設けられるフランジ部51aと、フランジ部51aから軸方向に延在し摺動孔50a内に挿入される円柱状の軸部51bと、を有する。軸部51bの先端部は、高圧通路Hに臨む本体部50の先端面から突出する。また、パイロットピストン51には、高圧通路Hと背圧室8とを連通するパイロット通路10が設けられる。パイロット通路10には、パイロット通路10を流れる作動油に抵抗を付与する絞りが設けられる。
【0032】
スリーブ7は、サクションポペット3に挿入される先端部7aと、連結部材90に結合される基端部7bと、先端部7aとは反対側の軸方向端部に開口する収容孔7cと、先端部7aと基端部7bとの間に設けられサクションポペット3と連結部材90との間において外周面が露出する中間部7dと、を有する。スリーブ7は、先端部7aにおいてサクションポペット3を摺動自在に支持する。スリーブ7の先端部7aの外周面とサクションポペット3の内周面との間には、スリーブ7とサクションポペット3との間の隙間をシールするシール部材(Oリング)が設けられる。
【0033】
また、スリーブ7には、一端が背圧室8に開口するとともに他端が収容孔7cの底面に開口し、背圧室8と収容孔7cとを連通する第1連通路P1と、一端が収容孔7cの内周面に開口するとともに他端が中間部7dの外周面に開口するドレン通路13と、が形成される。
【0034】
収容孔7cに開口する第1連通路P1の開口端には、パイロットポペット20の弁部22が離着座するシート部11aが設けられる。シート部11aは、その中心軸が収容孔7cの中心軸と一致するように収容孔7cと同軸上に形成される。また、シート部11aと背圧室8との間の第1連通路P1上には、第1連通路P1を流れる作動油の流れに抵抗を与える絞り11bが設けられる。なお、本実施形態では、第1連通路P1が、特許請求の範囲における「高圧側の通路」に相当する。
【0035】
ドレン室12は、収容孔7cとパイロットポペット20とによって区画された空間である。
【0036】
ドレン通路13は、サクションポペット3の外周面とバルブハウジング2の内周面との間の隙間14を通じてドレン室12と低圧通路Lと常時連通する。なお、本実施形態では、ドレン室12ないしドレン室12から低圧通路Lに至る通路が、特許請求の範囲における「低圧側の通路」に相当する。
【0037】
図1に示すように、パイロットポペット20は、略円柱状に形成された部材であり、スリーブ7の収容孔7cに収容される。パイロットポペット20は、収容孔7cに摺動自在に支持される本体部21と、本体部21から軸方向に突出して円錐状に形成された弁部22と、を有する。
【0038】
パイロットポペット20の本体部21には、ドレン通路13と常時連通するように形成された環状溝21aと、環状溝21aから弁部22側へと向かって軸方向に沿って形成された第1切欠部21bと、環状溝21aからソレノイド部S側へと向かって軸方向に沿って形成された第2切欠部21cと、が設けられる。
【0039】
第1切欠部21bは、本体部21の外周面を平面状に切り欠くことにより形成される。このように本体部21に第1切欠部21bが形成されることによって、ドレン室12は、収容孔7cの内周面と第1切欠部21bとにより区画される通路と、環状溝21aと、ドレン通路13と、隙間14と、を通じて低圧通路Lと連通する。収容孔7cの内周面と第1切欠部21bとにより区画される通路は、背圧室8から低圧通路Lに排出される作動油に抵抗を付与する第1絞りとしても機能する。なお、以下では、収容孔7cの内周面と第1切欠部21bとにより区画される通路と、環状溝21aと、ドレン通路13と、隙間14と、によって構成される通路を「第2連通路P2」という。
【0040】
また、第2切欠部21cは、ソレノイド部S側の端部が収容孔7cから常時露出するように、環状溝21aからソレノイド部S側へと向かって軸方向に沿って、本体部21の外周面を平面状に切り欠くことにより形成される。このように本体部21に第2切欠部21cが形成されることによって、パイロットポペット20の後端側が露出する空間SPは、収容孔7cの内周面と第2切欠部21cとにより区画される通路と、環状溝21aと、ドレン通路13と、隙間14と、を通じて低圧通路Lと連通する。
【0041】
このように形成されるパイロットポペット20は、シート部11aと同軸上に形成された収容孔7cによって摺動自在に支持されている。つまり、パイロットポペット20は、その中心軸がシート部11aの中心軸に対して傾かないように収容孔7cによって支持されている。このように、シート部11aに対してパイロットポペット20が傾いた状態となることが抑制されることで、弁部22がシート部11aに着座する際にシート部11aに片当たりすることが防止される。これにより、シート部11aが傷ついたり変形したりすることが抑制され、結果として、弁部22がシート部11aに着座した際のシート性を向上させることができる。
【0042】
なお、環状溝21aは、パイロットポペット20の本体部21の外周面に形成されているが、これに代えて、環状溝21cは収容孔7cの内周面に形成されていてもよい。また、第1切欠部21b及び第2切欠部21cは、パイロットポペット20の本体部21の外周面に形成されているが、これに代えて、第1切欠部21b及び第2切欠部21cは、収容孔7cの内周面に軸方向に溝状に形成されていてもよい。
【0043】
図1に示すように、パイロットピストン51のフランジ部51aとスリーブ7との間にはスプリング81が設けられ、サクションポペット3と連結部材90との間にはスプリング82が設けられる。スプリング81は、フランジ部51aがメインポペット5の本体部50に当接するようにパイロットピストン51を付勢するとともに、本体部50がサクションポペット3のシート部3fに着座するようにフランジ部51aを介して本体部50を付勢する。一方、スプリング82は、サクションポペット3の角部3cが機器本体1のシート部1aに着座するようにサクションポペット3を付勢する。
【0044】
続いて、図1を参照して、ソレノイド部Sについて説明する。
【0045】
ソレノイド部Sは、ソレノイドハウジング71内に摺動自在に収容されるプランジャ72と、プランジャ72に固定され先端がパイロットポペット20に当接するロッド73と、ソレノイドハウジング71内に係止されプランジャ72をパイロットポペット20側に向けて付勢する付勢部材としてのスプリング74と、ソレノイドハウジング71に収容されプランジャ72にスプリング74の付勢力に対向する反力を付与するコイル75と、後述するスプリング室77と大気とを連通または遮断するエア抜き機構76と、を有する。なお、本実施形態では、コイル75を覆うハウジングもソレノイドハウジング71に含まれる。
【0046】
ソレノイドハウジング71は、プランジャ72が収容される収容孔71cが端部71aに開口して形成された有底筒状部材であり、端部71aにおいて連結部材90に結合される。ソレノイドハウジング71には、収容孔71cと軸方向に連続してスプリング74が収容される付勢部材室としてのスプリング室77が形成される。
【0047】
スプリング74の付勢力は、プランジャ72及びプランジャ72に連結されるロッド73を介してパイロットポペット20を閉弁方向に付勢するように作用する。つまり、スプリング74は、パイロットポペット20の弁部22がシート部11aに着座するようにパイロットポペット20を付勢している。
【0048】
コイル75は、電流が印加されると、プランジャ72にスプリング74の付勢力に対向する推力を付与する。コイル75に印加される電流が大きくなるにつれて、プランジャ72及びロッド73を介してパイロットポペット20に作用するスプリング74の付勢力が小さくなる。この結果、パイロットポペット20の弁部22をシート部11aから離座させるために必要となる圧力、いわゆるクラッキング圧は小さくなる。電磁リリーフ弁100では、コイル75に印加する電流を制御してパイロットポペット20に作用するスプリング74の付勢力を変化させることによって、パイロットポペット20が開弁する設定圧(リリーフ圧)を変更することができる。
【0049】
バルブハウジング2とソレノイドハウジング71とを連結する連結部材90は、円筒状に形成された部材であり、バルブハウジング2が結合される第1結合部90aと、ソレノイドハウジング71が結合される第2結合部90bと、第1結合部90aの内側に設けられる収容孔90cと、収容孔90cに連通し第2結合部90bの内側を軸方向に貫通して形成される貫通孔90dと、を有する。収容孔90cには、スリーブ7の基端部7bが結合されるとともに、スリーブ7から突出したパイロットポペット20が収容される。また、連結部材90にソレノイドハウジング71が結合された状態において、貫通孔90dには、ロッド73が挿通する。
【0050】
上記形状の連結部材90を介してバルブハウジング2とソレノイドハウジング71とが連結された状態において、ソレノイドハウジング71内に形成されたスプリング室77は、プランジャ72を軸方向に貫通する貫通孔72aと、連結部材90の貫通孔90d及び収容孔90c(空間SP)と、収容孔7cの内周面と第2切欠部21cとにより区画される通路と、環状溝21aと、ドレン通路13と、隙間14と、を通じて低圧通路Lと連通する。なお、以下では、貫通孔72aと、貫通孔90dと、収容孔90c(空間SP)と、収容孔7cの内周面と第2切欠部21cとにより区画される通路と、によって構成される通路を「第3連通路P3」という。収容孔7cの内周面と第2切欠部21cとにより区画される通路は、第3連通路P3を流れる作動油に抵抗を付与する第2絞りとして機能する。
【0051】
図1及び図2に示すように、エア抜き機構76は、ソレノイドハウジング71の端部にソレノイドハウジング71を貫通するように形成された貫通孔78にねじ締結などにより取り付けられる。エア抜き機構76は、貫通孔78に取り付けられるアタッチメント76aと、アタッチメント76aに形成された貫通孔76c内に嵌合するプラグ76bと、を有する。
【0052】
アタッチメント76aとプラグ76bとは、ねじ部76dにおいてねじ結合しており、プラグ76bを回転させることで、プラグ76bがアタッチメント76aに対して軸方向に移動する。
【0053】
図2に示すように、プラグ76bの一端には、テーパ面によって形成された弁部76eが設けられ、他端には、ポート76hが設けられる。プラグ76bの弁部76eが、アタッチメント76aの貫通孔76cに設けられた段部76fに当接すると(図2(A)に示す状態)、スプリング室77と大気との連通が遮断される。これに対し、プラグ76bの弁部76eが、段部76fから離間すると(図2(B)に示す状態)、スプリング室77は、弁部76eと段部76fとの間の隙間、及びプラグ76bに形成された貫通孔76gを通じて大気へ連通する。
【0054】
次に、電磁リリーフ弁100の動作について説明する。
【0055】
高圧通路Hの作動油は、パイロット通路10及び背圧室8を通じて第1連通路P1に導かれる。第1連通路P1に導かれた作動油の圧力が、ソレノイド部Sによって設定されるパイロットポペット20の設定圧(クラッキング圧)に達すると、作動油の圧力によって、パイロットポペット20の弁部22がシート部11aから離座する。
【0056】
パイロットポペット20の弁部22がシート部11aから離座すると、背圧室8内の作動油が、第1連通路P1、弁部22とシート部11aとの間の隙間、ドレン室12及び第2連通路P2を通じて低圧通路Lへと排出される。
【0057】
背圧室8には、パイロット通路10を通じて高圧通路Hから作動油が常時供給される。しかしながら、高圧通路Hから背圧室8への作動油の供給は、パイロット通路10に設けられた絞りによって制限される。このため、弁部22がシート部11aから離座して背圧室8内の作動油が排出されると、背圧室8の圧力は、高圧通路Hの圧力よりも次第に低くなる。
【0058】
このように、背圧室8の圧力が低下すると、メインポペット5の本体部50をサクションポペット3のシート部3fに着座させる方向に作用する背圧室8の圧力による付勢力が低下する。そして、背圧室8の圧力と高圧通路Hの圧力との圧力差が予め設定された圧力差を超えると、メインポペット5の本体部50がサクションポペット3のシート部3fから離座し、メインポペット5が開弁する。これにより、高圧通路Hから低圧通路Lへと作動油が排出される。これにより、高圧通路Hの圧力が異常に高圧となることが防止される。
【0059】
ところで、このように構成された電磁リリーフ弁100を輸送している間に、電磁リリーフ弁100内にエアが混入することがある。本実施形態のようなコイル75への電流の通電量を大きくするにつれて、設定圧(リリーフ圧)が高くなる逆比例タイプの電磁リリーフ弁100では、パイロットポペット20が開弁するために移動すると、これに伴いプランジャ72が移動してスプリング室77の容積が縮小する。このとき、スプリング室77の作動油の一部が貫通孔72aを通じて貫通孔90dに移動する。しかしながら、電磁リリーフ弁100内に混入したエアが、例えば、スプリング室77内に入り込んでしまうと、リリーフ作動時に貫通孔90d内の圧力とスプリング室77内の圧力との圧力バランスが崩れ、プランジャ72をスプリング室77側に移動させる力が作用する。このようなプランジャ72の両端面に作用する圧力及びパイロットポペット20に作用する圧力の変化に起因して、パイロットポペット20が過度に開く(オーバーシュートする)ことで発振するおそれがある。このようにプランジャ72が発振すると、リリーフさせている機器の圧力が変動し、振動の発生や騒音の発生につながるおおそれがある。
【0060】
このため、電磁リリーフ弁100を機器本体1に取り付ける際に、図3に示すエア抜き装置30を用いて電磁リリーフ弁100内のエア抜きを行うことで、電磁リリーフ弁100内に混入したエアを除去する。以下に、図3を参照しながら、電磁リリーフ弁100のエア抜きに用いられるエア抜き装置30ついて具体的に説明する。
【0061】
図3に示すように、エア抜き装置30は、作動油を貯留するタンクTと、タンクTに貯留された作動油を吸い込んで吐出するポンプEPと、ポンプEPを駆動するモータMと、電磁リリーフ弁100が取り付けられるアダプタ31と、プラグ76bのポート76hに接続される継手32と、を備える。
【0062】
ポンプEPとタンクTは、通路33によって接続され、ポンプEPと継手32は、通路34によって接続され、アダプタ31とタンクTとは、通路35によって接続される。また、通路34と通路35との間には、これらを接続するバイパス通路36が設けられる。バイパス通路36には、通路34内の圧力を制限するためのリリーフ弁37が設けられる。なお、ポンプEPをタンクT内で油没させると通路33を不要にすることができる。同様に、リリーフ弁37をタンクT内で油没させるとバイパス通路36を不要にすることができる。
【0063】
アダプタ31には、電磁リリーフ弁100の第2連通路P2と通路35とを連通する第4連通路P4が設けられる。
【0064】
ポンプEP、モータM、タンクT、アダプタ31、及びリリーフ弁37は、例えば、一体型のユニット(図示せず)として構成される。なお、これらを個別に構成してもよいし、これらの内、複数をユニットとして構成してもよい。
【0065】
次に、エア抜き装置30を用いた電磁リリーフ弁100内のエア抜き方法について説明する。
【0066】
まず、電磁リリーフ弁100をアダプタ31に取り付ける。具体的には、バルブハウジング2の第1円筒部2aをアダプタ31の取付孔31aにねじ込み、電磁リリーフ弁100をアダプタ31に取り付ける。
【0067】
次に、エア抜き機構76のプラグ76bを回転させ、プラグ76bの弁部76eを段部76fから離間させる(図2(B)に示す状態)とともに、電磁リリーフ弁100のポート76hに、継手32を接続する。
【0068】
その後、モータMに電流を印加してポンプEPを駆動する。ポンプEPから吐出された作動油は、通路34、継手32、及びエア抜き機構76(ポート76h)を通過して、スプリング室77内に供給される。スプリング室77内に供給された作動油は、図3に太線の矢印で示すように、第3連通路P3、及び第2連通路P2を順に通過して、アダプタ31の第4連通路P4に排出される。アダプタ31の第4連通路P4に排出された作動油は、通路35を通ってタンクTに戻される。これにより、電磁リリーフ弁100内の作動油に混入したエアは、電磁リリーフ弁100内を通過する作動油とともにタンクTに排出される。ポンプEPが駆動されている間、作動油は上述したルートを循環する。このように、エア抜き装置30を用いることにより、電磁リリーフ弁100内に混入したエアを除去することができる。
【0069】
例えば、パイロット通路10から作動油を供給してエア抜きを行うことも考えられる。しかしながら、この場合には、パイロット通路10から供給された作動油によってパイロットポペット20が開弁することになる。しかしながら、この場合、上述のように、スプリング室77に侵入したエアに起因してプランジャ72が発振してしまう可能性があり、困難である。
【0070】
エア抜き装置30によるエア抜きは、例えば、所定時間ポンプEPを駆動することにより行われる。具体的には、タイマー(図示せず)を設け、所定時間経過したときに、モータMへの電流の印加を停止する。このように、タイマーによってポンプEPを駆動する時間を制御することで、ポンプEPの稼働時間を適切なものとすることができる。これにより、エネルギーの浪費を抑制することができる。
【0071】
また、電磁リリーフ弁100内に作動油をあらかじめ定められた量(所定量)だけ供給することによってエア抜きを行うようにしてもよい。具体的には、例えば、タンクTを、供給用と排出用に分け、供給用のタンクT内に貯留された作動油が所定量減少した場合に、ポンプEPを停止する。この場合にも、電磁リリーフ弁100内の作動油に混入したエアを作動油とともにタンクTに排出することで、電磁リリーフ弁100内に混入したエアを除去することができる。
【0072】
なお、上記実施形態では、ポンプEPをモータMで駆動する電動ポンプを例に説明したが、ポンプEPは、手動ポンプであってもよい。
【0073】
ここで、エア抜き装置30の変形例について、図4を参照しながら説明する。
【0074】
図4に示すエア抜き装置130は、ポンプが手動のポンプMPである点、電磁リリーフ弁100が機器本体1に取り付けられる点、及びエア抜き装置130が排出された作動油を回収するためのタンクを備えていない点で、上記実施形態(エア抜き装置30)と相違する。以下では、エア抜き装置30と異なる点のみを説明し、同一の構成については同じ付番を付して説明を省略する。
【0075】
エア抜き装置130では、電磁リリーフ弁100は、所定量の作動油が貯留されたタンクT1を備える。タンクT1に貯留された作動油は、機器本体1において使用される作動油と同じ成分の作動油である。
【0076】
次に、エア抜き装置130を用いた電磁リリーフ弁100内のエア抜き方法について説明する。
【0077】
まず、電磁リリーフ弁100を機器本体1に取り付ける。次に、エア抜き機構76のプラグ76bを回転させ、プラグ76bの弁部76eを段部76fから離間させるとともに、電磁リリーフ弁100のポート76hに、継手32を接続する。
【0078】
次に、ポンプMPを駆動する。ポンプMPから吐出された作動油は、通路34、継手32、及びエア抜き機構76(ポート76h)を通過して、スプリング室77内に供給される。スプリング室77内に供給された作動油は、図4に太線の矢印で示すように、第3連通路P3、及び第2連通路P2を順に通過して、機器本体1の低圧通路Lに排出される。低圧通路Lに排出された作動油は、機器本体1内の通路を通って機器本体1のタンク(図示せず)に回収される。エア抜き装置130では、タンクT1内に貯留された作動油を所定量供給した時点で、電磁リリーフ弁100への作動油の供給を停止する。このように、エア抜き装置130を用いた場合でも、電磁リリーフ弁100内の作動油に混入したエアを、電磁リリーフ弁100外に排出することで、電磁リリーフ弁100内に混入したエアを除去することができる。
【0079】
この変形例のエア抜き装置130によるエア抜き方法では、アダプタ31を設ける必要がないので、その分コストの上昇を抑制できるとともに、装置をコンパクト化することができる。
【0080】
なお、この変形例において、手動のポンプMPに換えて、モータMによって駆動されるポンプEPを用いてもよい。
【0081】
次に、図5を参照して、エア抜き装置30の別の変形例について説明する。
【0082】
図5に示すエア抜き装置230は、ポンプEPから吐出した作動油をアダプタ31から第2連通路P2を通じて電磁リリーフ弁100内に供給し、電磁リリーフ弁100内に供給された作動油をエア抜き機構76(ポート76h)から排出させる点で、上記実施形態(エア抜き装置30)と相違する。以下では、エア抜き装置30と異なる点のみを説明し、同一の構成については同じ付番を付して説明を省略する。
【0083】
エア抜き装置230では、ポンプEPとアダプタ31とが、通路134によって接続され、継手32とタンクTとが、通路135によって接続される。
【0084】
このように構成されたエア抜き装置230では、モータMに電流を印加してポンプEPを駆動すると、ポンプEPから吐出された作動油は、アダプタ31の第4連通路P4を通過して第2連通路P2から電磁リリーフ弁100内に流入する。第2連通路P2から電磁リリーフ弁100内に流入した作動油は、図5に太線の矢印で示すように、第3連通路P3、スプリング室77、及びエア抜き機構76(ポート76h)を順に通過して電磁リリーフ弁100の外部に排出される。エア抜き機構76(ポート76h)から外部に排出された作動油は、継手32及び通路135を通過してタンクTに戻される。このように、エア抜き装置230を用いたエア抜き方法であっても、電磁リリーフ弁100内の作動油に混入したエアを、作動油とともにタンクTに排出することで、電磁リリーフ弁100内に混入したエアを除去することができる。なお、この場合でも、パイロットポペット20が閉弁している状態でエア抜きが行われる。
【0085】
次に、図6を参照して、エア抜き装置30のさらに別の変形例について説明する。
【0086】
図6に示すエア抜き装置330は、アダプタ131が、2つの部材で構成される点で、上記実施形態(エア抜き装置30)と相違する。以下では、エア抜き装置30と異なる点のみを説明し、同一の構成については同じ付番を付して説明を省略する。
【0087】
図6に示すように、エア抜き装置330では、アダプタ131は、バルブハウジング2とねじ結合によって接続される継手部131aと、継手部131aを介して電磁リリーフ弁100を支持する支持部31bと、を有する。継手部131aと支持部131bとは、迅速継手(ワンタッチ継手、カプラ)によって構成される。
【0088】
エア抜き装置330では、まず、バルブハウジング2と継手部131aとを接続し、その後、継手部131aと支持部131bとを接続する。継手部131aと支持部131bとは、迅速継手によって構成されているので、電磁リリーフ弁100とアダプタ131とをワンタッチで接続することができる。これにより、電磁リリーフ弁100を簡単にアダプタ131に着脱できるので、電磁リリーフ弁100をアダプタ31にねじ締結で取り付ける場合に比べ、作業効率を向上させることができる。また、機器本体1に装着するまで電磁リリーフ弁100を迅速継手に装着しておくことで、機器本体1がエア抜き装置330と離れた場所にあっても、移動の際にエアが混入することなく搬送することが可能となる。
【0089】
なお、電磁リリーフ弁100は、上記実施形態に例示したものに限らない。ここで、図7を参照して、電磁リリーフ弁200の変形例について具体的に説明する。
【0090】
図7に示す電磁リリーフ弁200は、電磁リリーフ弁100のサクションポペット3に換えて、バルブハウジング203を備えている。言い換えると、電磁リリーフ弁200は、電磁リリーフ弁100からサクションポペット3に係る機能を取り除いている。以下では、電磁リリーフ弁100と異なる点のみを説明し、同一の構成については適宜説明を省略する。
【0091】
バルブハウジング203は、スリーブ7に移動不能に固定され、メインポペット5を摺動自在に収容する。図7に示す例では、バルブハウジング203がサクションポペット3と同一の形状を有する部材で構成されているが、これに限らず、バルブハウジング203の形状は、適宜変更できる。
【0092】
このような構成の電磁リリーフ弁200は、サクションポペット3によるサクション機能以外は、電磁リリーフ弁100と同様に機能する。したがって、電磁リリーフ弁200においても、エア抜き装置30,130,230,330を用いることにより、電磁リリーフ弁200内のエア抜きを簡単に行うことができる。
【0093】
次に、図8を参照して、電磁リリーフ弁100の別の変形例である電磁リリーフ弁300について説明する。
【0094】
図8に示す電磁リリーフ弁300は、電磁リリーフ弁200から、バルブハウジング2を取り除いたものである。以下では、電磁リリーフ弁100及び200と異なる点のみを説明し、同一の構成については適宜説明を省略する。
【0095】
電磁リリーフ弁300は、連結部材90の第1結合部90aの外周に形成されたおねじを機器本体1の取付孔1bにねじ込むことで、アダプタ31または機器本体1に取り付けられる。
【0096】
図8に示すように、エア抜き装置30を用いて電磁リリーフ弁300のエア抜きを行う場合には、ポート76hからスプリング室77内に供給された作動油は、第3連通路P3、ドレン通路13、及びバルブハウジング203の外周面とアダプタ31の取付孔31aの内周面との間の隙間314、第4連通路P4を通じてタンクTに戻される。これにより、電磁リリーフ弁300内に混入したエアを除去することができる。なお、説明は省略するが、エア抜き装置130,330によっても同様に電磁リリーフ弁300内に混入したエアを除去することができる。
【0097】
また、電磁リリーフ弁300は、図5に示すエア抜き装置230を用いてエア抜きを行うこともできる。この場合には、ポンプEPから吐出した作動油は、隙間314を通じて電磁リリーフ弁300内に供給し、ドレン通路13、第3連通路P3、スプリング室77、及びエア抜き機構76(ポート76h)を順に通過して電磁リリーフ弁300の外部に排出される。このように、電磁リリーフ弁300は、エア抜き装置230を用いた場合であっても、電磁リリーフ弁300内に混入したエアを除去することができる。
【0098】
次に、図9を参照して、電磁リリーフ弁100の別の変形例である電磁リリーフ弁400について説明する。
【0099】
図9に示す電磁リリーフ弁400は、電磁リリーフ弁300から、バルブハウジング203を取り除いたものである。以下では、電磁リリーフ弁100、200及び300と異なる点のみを説明し、同一の構成については適宜説明を省略する。
【0100】
電磁リリーフ弁400では、メインポペット5が機器本体1の取付孔1b内に摺動自在に収容される。また、電磁リリーフ弁400が取り付けられる機器本体1には、ドレン通路13から排出された作動油を低圧通路Lないしタンク(図示せず)へ導く排出通路1cが設けられる。
【0101】
電磁リリーフ弁400は、メインポペット5を保持するためのバルブハウジング203やバルブハウジング2を備えていないため、電磁リリーフ弁400単体で形状を保持することができない。このため、電磁リリーフ弁400のエア抜きは、機器本体1に組付けた状態で行われる。具体的には、電磁リリーフ弁400のエア抜きは、図4に示すエア抜き装置130を用いて行われる。
【0102】
電磁リリーフ弁400では、ポート76hを通じてスプリング室77内に供給された作動油は、第3連通路P3及びドレン通路13を順に通過して、機器本体1の排出通路1cに排出される。排出通路1cに排出された作動油は、機器本体1内の通路を通って機器本体1のタンク(図示せず)に回収される。
【0103】
このように、電磁リリーフ弁400においても、エア抜き装置130を用いることにより、電磁リリーフ弁400内に混入したエアを除去することができる。
【0104】
次に、図10を参照して、電磁リリーフ弁100のさらに別の変形例である電磁リリーフ弁500について説明する。以下では、電磁リリーフ弁100と異なる点のみを説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0105】
上述した電磁リリーフ弁100及び変形例における電磁リリーフ弁200,300,400は、パイロット形式のリリーフ弁であるが、本変形例における電磁リリーフ弁500は、逆比例タイプの直動形式の電磁リリーフ弁である。具体的には、図10に示すように、電磁リリーフ弁500では、電磁リリーフ弁100,200,300,400のようなパイロットポペット20、背圧室8、パイロット通路10及びパイロットピストン51が存在していない。さらに、電磁リリーフ弁500では、電磁リリーフ弁200,300におけるバルブハウジング203、連結部材90、及びソレノイドハウジング71が、バルブハウジング503として一体に構成されている。
【0106】
また、電磁リリーフ弁500では、バルブハウジング503内にメインポペット505及びプランジャ72が設けられる。メインポペット505は、ロッド73に固定されている。さらに、電磁リリーフ弁500では、バルブハウジング503に、高圧通路Hに連通する高圧ポート503Hと、低圧通路Lに連通する低圧ポート503Lと、が設けられる。メインポペット505は、高圧ポート503Hと低圧ポート503Lとの連通を制御する。なお、この変形例における高圧ポート503Hは、特許請求の範囲の「高圧側の通路」に相当し、低圧ポート503Lは、特許請求の範囲の「低圧側の通路」に相当する。
【0107】
このように構成された電磁リリーフ弁500では、スプリング74の付勢力は、プランジャ72、ロッド73を介してメインポペット5に直接作用する。
【0108】
エア抜き装置30,130,330を用いて電磁リリーフ弁500内のエア抜きを行う場合には、ポート76hからスプリング室77内に作動油を供給し、第3連通路P3及び低圧ポート503Lを通じて電磁リリーフ弁500の外部に作動油を排出することができる。これにより、電磁リリーフ弁300内に混入したエアを除去することができる。
【0109】
また、エア抜き装置230を用いて電磁リリーフ弁500内のエア抜きを行う場合には、低圧ポート503Lから作動油を供給し、第3連通路P3、スプリング室77内、及びポート76hを通じて電磁リリーフ弁500の外部に作動油を排出することができる。これにより、エア抜き装置230を用いた場合であっても、電磁リリーフ弁300内に混入したエアを除去することができる。
【0110】
このように、電磁リリーフ弁500のような直動形式の電磁リリーフ弁であっても、エア抜き装置30,130,230,330を用いることにより、電磁リリーフ弁500内に混入したエアを簡単に除去することができる。
【0111】
なお、これ以外にも様々な変更が可能である。例えば、エア抜き装置30,130,230,330において、電磁リリーフ弁100,200,300,500から排出された作動液が流れる排出通路(第4連通路P4、通路35、通路135など)を、内部を流れる作動液が視認できるように少なくとも一部が透明の部材によって形成してもよい。排出通路(第4連通路P4、通路35、通路135など)は、ブロック内に形成される、あるいは配管などの管状の部材によって構成されているので、内部を確認することができない。このため、排出通路(第4連通路P4、通路35、通路135など)の少なくとも一部を透明の部材で形成することにより、流れている作動液の状態を簡単に確認できる。これにより、エア抜きを終了するタイミングを簡単に把握することができる。
【0112】
上記実施形態及び変形例では、エア抜き機構76をプランジャ72などの軸線上に位置するように設けているが、これに限らず、エア抜き機構76をプランジャ72などの軸線からずれた位置、あるいは、エア抜き機構76をプランジャ72などの軸線に直交する方向などに設けてもよい。
【0113】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0114】
逆比例タイプの電磁リリーフ弁100,200,300,400,500は、高圧側の通路(第1連通路P1、高圧ポート503H)と低圧側の通路(ドレン室12、低圧ポート503L)とを連通または遮断する弁体(パイロットポペット20,メインポペット205)と、弁体(パイロットポペット20,メインポペット205)を閉弁方向に付勢する付勢部(ソレノイド部S)と、を備え、付勢部(ソレノイド部S)は、弁体(パイロットポペット20,メインポペット205)に当接するロッド73が固定されたプランジャ72と、プランジャ72を介して弁体(パイロットポペット20,メインポペット205)を閉弁方向に付勢する付勢部材(スプリング74)と、電流が印加されると付勢部材(スプリング74)の付勢力に対向する反力をプランジャ72に付与するコイル75と、プランジャ72を挟んで弁体(パイロットポペット20,メインポペット205)と反対側に設けられ、付勢部材(スプリング74)が収容される付勢部材室(スプリング室77)と、付勢部材室(スプリング室77)と大気とを連通するポート76hと、を有する。
【0115】
エア抜き装置30,130,230,330は、弁体(パイロットポペット20,メインポペット205)が閉弁している電磁リリーフ弁100,200,300,400,500に対して、ポート76hあるいは低圧側の通路(ドレン室12、低圧ポート503L)から付勢部材室(スプリング室77)内に作動液を供給するポンプEP,MPを備える。
【0116】
この構成では、ポンプEP,MPから吐出された作動液(作動油)が電磁リリーフ弁100,200,300,400,500内を通過することにより、電磁リリーフ弁100,200,300,400,500内に溜まっているエアが作動液(作動油)とともに、電磁リリーフ弁100,200,300,400,500の外部に排出される。これにより、電磁リリーフ弁100,200,300,400,500内のエア抜きを簡単に行うことができる。
【0117】
電磁リリーフ弁100,200,300,500は、弁体を収容するバルブハウジング(バルブハウジング2、連結部材90、ソレノイドハウジング71、バルブハウジング203、バルブハウジング503)をさらに備え、エア抜き装置30,230,330は、バルブハウジング(バルブハウジング2、連結部材90、ソレノイドハウジング71、バルブハウジング203、バルブハウジング503)が着脱自在に取り付けられ、低圧側の通路(ドレン室12、低圧ポート503L)に連通する通路(第4連通路P4)が形成されたアダプタ31,131をさらに備える。
【0118】
この構成では、アダプタ31,131に電磁リリーフ弁100,200,300,500を取り付けてエア抜きを行うことができる。これにより、機器本体1から離れた場所でもエア抜きを行うことができるので、作業の自由度が向上する。
【0119】
エア抜き装置330では、アダプタ131と電磁リリーフ弁100,200,300,500とは、迅速継手によって接続される。
【0120】
この構成では、迅速継手によって電磁リリーフ弁100,200,300,500を簡単にアダプタ131に着脱できるので、作業効率を向上させることができる。
【0121】
エア抜き装置30,130,230,330では、電磁リリーフ弁100,200,300,500から排出された作動液(作動油)が流れる排出通路(第4連通路P4、通路35、通路135)を有し、排出通路(第4連通路P4、通路35、通路135など)は、排出通路(第4連通路P4、通路35、通路135など)の内部を流れる作動液(作動油)を視認できるように少なくとも一部が透明の部材によって形成されている。
【0122】
この構成では、排出通路(第4連通路P4、通路35、通路135)の一部が透明の部材によって形成されているので、排出通路(第4連通路P4、通路35、通路135)の内部を流れる作動液(作動油)にエアが混入しているか否かを視認できる。これにより、エア抜きを終了するタイミングを簡単に把握することができる。
【0123】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0124】
100,200,300,400,500・・・電磁リリーフ弁、1・・・機器本体、1a・・・シート部、2・・・バルブハウジング、3・・・サクションポペット、3f・・・シート部、5・・・メインポペット(弁体)、7・・・スリーブ、7c・・・収容孔、8・・・背圧室、10・・・パイロット通路、11a・・・シート部(第3弁座)12・・・ドレン室(低圧側の通路)、13・・・ドレン通路、14・・・隙間、20・・・パイロットポペット(第3弁体)、21a・・・環状溝、21b・・・第1切欠部、21c・・・第2切欠部、30・・・エア抜き装置、31・・・アダプタ、31a・・・取付孔、31b・・・継手部、31c・・・支持部、32・・・継手、35・・・通路(排出通路)、71・・・ソレノイドハウジング(バルブハウジング)、72・・・プランジャ、72a・・・貫通孔、73・・・ロッド、74・・・スプリング(付勢部材)、75・・・コイル、76・・・エア抜き機構、76h・・・ポート、77・・・スプリング室(付勢部材室)、90・・・連結部材(バルブハウジング)、130・・・エア抜き装置、131・・・アダプタ、134・・・通路、135・・・通路(排出通路)、203・・・バルブハウジング、205・・・メインポペット(弁体)、230・・・エア抜き装置、330・・・エア抜き装置、503・・・バルブハウジング、EP・・・ポンプ(電動ポンプ)、H・・・高圧通路、L・・・低圧通路、MP・・・ポンプ、P1・・・第1連通路(高圧側の通路)、P2・・・第2連通路、P3・・・第3連通路、P4・・・第4連通路(排出通路)、S・・・ソレノイド部、503H・・・高圧ポート(高圧側の通路)、503L・・・低圧ポート(低圧側の通路)
図1
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図10