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特開2024-122356金属捕捉剤及び金属捕捉剤の製造方法、並びに流動接触分解触媒組成物
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  • 特開-金属捕捉剤及び金属捕捉剤の製造方法、並びに流動接触分解触媒組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122356
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】金属捕捉剤及び金属捕捉剤の製造方法、並びに流動接触分解触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/04 20060101AFI20240902BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20240902BHJP
   B01J 37/06 20060101ALI20240902BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240902BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20240902BHJP
   B01J 29/06 20060101ALI20240902BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20240902BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B01J20/04 B
B01J37/00 F
B01J37/06
B01J37/08
B01J35/10 301A
B01J29/06 M
B01J20/28 Z
B01J20/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029860
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 隆喜
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博紀
【テーマコード(参考)】
4G066
4G169
【Fターム(参考)】
4G066AA16B
4G066AA17B
4G066AA20D
4G066AA22D
4G066BA20
4G066BA25
4G066BA26
4G066BA38
4G066CA46
4G066FA03
4G066FA21
4G066FA36
4G066FA37
4G066FA38
4G066FA40
4G169AA08
4G169AA11
4G169AA14
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA03A
4G169BA03B
4G169BA06A
4G169BA06B
4G169BA07B
4G169BA37
4G169BC01A
4G169BC02B
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169CC07
4G169DA08
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EB18Y
4G169EC02Y
4G169EC03X
4G169EC03Y
4G169EC06X
4G169EC06Y
4G169EC15X
4G169EC15Y
4G169EC16X
4G169EC16Y
4G169EC17X
4G169EC17Y
4G169EC30
4G169ED03
4G169ED08
4G169FA01
4G169FB05
4G169FB27
4G169FB29
4G169FB63
4G169FC08
4G169FC09
4G169ZA01B
4G169ZE02
4G169ZE10
4G169ZF02B
(57)【要約】      (修正有)
【課題】バナジウムを捕捉固定化し、流動接触分解触媒の劣化を抑えることができると共に、安定してきわめて良好な耐摩耗性を満たしており、更に高い触媒活性を維持できる金属捕捉剤を提供する。
【解決手段】シリカ成分と、アルミナ成分と、金属成分と、を含む金属捕捉剤であって、(a)シリカ成分の含有量が金属捕捉剤に対して、酸化物換算で15~30質量%であり、(b)アルミナ成分の含有量が金属捕捉剤に対して、酸化物換算で10~30質量%であり、(c)金属成分の含有量が金属捕捉剤に対して、酸化物換算で40~70質量%であり、(d)金属成分はMgとCaとを含み、MgとCaとの質量比(Mg/Ca)は、酸化物換算で1.2~3.0であり、(e)金属捕捉剤の比表面積が160~300m/gにあり、水銀圧入法で測定される細孔径が10~150nmの細孔容積(PV)が0.12ml/g以下にあることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ成分と、アルミナ成分と、金属成分と、を含む金属捕捉剤であって、
(a)前記シリカ成分の含有量が前記金属捕捉剤に対して、酸化物換算で15~30質量%であり、
(b)前記アルミナ成分の含有量が前記金属捕捉剤に対して、酸化物換算で10~30質量%であり、
(c)前記金属成分の含有量が前記金属捕捉剤に対して、酸化物換算で40~70質量%であり、
(d)前記金属成分はマグネシウムとカルシウムとを含み、前記マグネシウムと前記カルシウムとの質量比(Mg/Ca)は、酸化物換算で1.2~3.0であり、
(e)前記金属捕捉剤の比表面積が160~300m/g、水銀圧入法で測定される細孔径が10~150nmの細孔容積(PV)が0.12ml/g以下にあることを特徴とする金属捕捉剤。
【請求項2】
前記金属捕捉剤の耐摩耗性指標(CAI)が4.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属捕捉剤。
【請求項3】
前記金属捕捉剤に、更にアルカリ金属Mが含まれ、前記アルカリ金属Mの含有量が前記金属捕捉剤に対して、酸化物MO換算で0.5質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属捕捉剤。
【請求項4】
請求項1に記載の金属捕捉剤の製造方法であって、
シリカ成分を含むシリカゾルと、pHが9.0~12.0のスラリー状のアルミナ成分と、金属成分とを混合して得られた混合スラリーを噴霧乾燥することにより、金属捕捉剤前駆体を得る第一工程と、
前記金属捕捉剤前駆体を洗浄して、噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを得る第二工程と、
前記噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを加熱することにより金属捕捉剤を得る第三工程と、を含むことを特徴とする金属捕捉剤の製造方法。
【請求項5】
前記噴霧乾燥粒子洗浄ケーキは、前記金属捕捉剤を更に温水に懸濁し、脱水し、掛水を行う洗浄を少なくとも1回繰り返すことにより得られることを特徴とする請求項4に記載の金属捕捉剤の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の金属捕捉剤と、流動接触分解触媒と、を含むことを特徴とする流動接触分解触媒組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属捕捉剤及び金属捕捉剤の製造方法、並びに流動接触分解触媒組成物に関する。詳しくは、接触分解反応過程において、流動接触分解触媒の被毒元素の一つであるバナジウム等の金属を捕捉固定化することができ、その耐摩耗性をより安定して向上させた金属捕捉剤及び金属捕捉剤の製造方法、並びに流動接触分解触媒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
製油所での残油処理比率の増加を背景とし、残油処理用流動接触分解触媒(RFCC)に関する触媒開発や改良が急務となっている。RFCCでの問題点の一つは、原油(又は残油)中に含まれる触媒被毒金属(Ni、V)の濃度が高く、触媒へのダメージが大きいことにある。この影響を緩和する対策として、この被毒金属と親和性の良い元素(被毒金属捕捉剤)を流動接触分解触媒(FCC)中に添加することや、親和性のよい元素を高濃度に含む助触媒(添加剤)を一定量FCC触媒にブレンドする方法がある。これらの対策は被毒金属をある一定の結晶相として捕捉し、触媒活性への悪影響を緩和するという考えのもとで採られている方法である。
【0003】
例えば、原料油中に不純物として存するバナジウムは、流動接触分解触媒を再生する再生塔内の雰囲気においてはバナジン酸を形成し、流動接触分解触媒中のゼオライトの結晶破壊や活性低下を引き起こすことが知られている。このため、流動接触分解触媒中にバナジウムの捕捉能を有する構成物を組み込む手法や、前記構成物を添加剤として母体触媒と混合する手法が採用されている。
【0004】
特許文献1には、流動接触分解触媒に添加しバナジウムを不動態化する添加剤として、遊離酸化マグネシウム及びその場で生成したケイ酸マグネシウムセメントバインダーを含んでなる添加剤及びその製造方法が開示されている。この添加剤は、低い表面積を有し、最小の分解活性を有している。
【0005】
また特許文献2には、流動接触分解の間の金属不動態化に使われる金属捕捉粒子として、カオリン、酸化マグネシウム又はマグネシウム水酸化物及びカルシウム炭酸塩からなる乾燥粒子で、少なくとも10wt%の酸化マグネシウムを含む粒子が開示されている。
【0006】
また特許文献3には、珪素酸化物を主として含むバインダー、アルミナ成分及び粘土鉱物から選ばれた1種又は2種、第1の金属成分である第2族元素の化合物とからなり、かつ、耐摩耗性指数CAIが所定の範囲にある金属捕捉剤が開示されている。更にこの金属捕捉剤は、X線回折分析において、前記第1の金属成分の珪酸塩のピークが検出されない特徴を有している。
【0007】
更に、特許文献4には、珪素酸化物バインダー及びアルミナ成分に第2族元素からなる酸化物を分散させることにより、耐摩耗性が高く、流動接触分解触媒の劣化を抑えた金属捕捉剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平08-504397号公報
【特許文献2】特表2013-506548号公報
【特許文献3】国際公開第2020/129455号
【特許文献4】特開2022-188594号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】触媒化成技報 Vol.13、No.1、P65、1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明者らは、特許文献3に開示した金属捕捉剤を開発し、該金属捕捉剤を含む流動接触分解触媒を開発したが、更に、流動接触分解触媒の劣化を抑えることができると共に、耐摩耗性に優れた金属捕捉剤が求められていた。その結果、発明者らは、特許文献4に記載された金属捕捉剤を開発するに至った。しかしながら、特許文献4に記載された金属捕捉剤は、その耐摩耗性指標(CAI)が2.0~6.0に留まるものであり、安定してきわめて良好な耐摩耗性を満たしていない。このため、特許文献4に記載された金属捕捉剤を流動接触分解装置(FCC装置)に使用しても、使用の過程で当該金属捕捉剤が飛散し、金属捕捉剤としての効果を十分に得ることができない。
【0011】
そこで、本発明の目的は、炭化水素油の接触分解反応過程で用いられる流動接触分解触媒の被毒元素の一つであるバナジウムを捕捉固定化し、流動接触分解触媒の劣化を抑えることができると共に、安定してきわめて良好な耐摩耗性を満たしており、更に高い触媒活性を維持できる金属捕捉剤及びその製造方法を提供することにある。更に本発明の他の目的は、その金属捕捉剤を含む流動接触分解触媒組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような技術的背景のもと、発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、シリカ成分とアルミナ成分と金属成分とを含む金属捕捉剤の比表面積と細孔容積を所定の範囲に設定することにより、安定して良好な耐摩耗性を有し、更に流動接触分解触媒の劣化を抑えた金属捕捉剤が得られることを知見し、本発明を開発するに至った。
【0013】
前記課題を解決し上記の目的を実現するため開発した本発明は、下記のとおりのものである。すなわち、本発明は、第一に、シリカ成分と、アルミナ成分と、金属成分と、を含む金属捕捉剤であって、金属捕捉剤の比表面積が160~300m/g、水銀圧入法で測定される細孔径が10~150nmの細孔容積(PV)が0.12ml/g以下にあることを特徴とする金属捕捉剤を提供する。
【0014】
この金属捕捉剤は、次の(a)~(d)を満足する。
(a)シリカ成分の含有量が金属捕捉剤に対して、酸化物換算で15~30質量%
(b)アルミナ成分の含有量が金属捕捉剤に対して、酸化物換算で10~30質量%
(c)金属成分の含有量が金属捕捉剤に対して、酸化物換算で40~70質量%
(d)金属成分はマグネシウムとカルシウムとを含み、このマグネシウムとカルシウムとの質量比(Mg/Ca)は、酸化物換算で1.2~3.0である。
【0015】
なお、本発明に係る金属捕捉剤は、
(1)耐摩耗性指標(CAI)が4.0以下であること、
(2)金属捕捉剤に、更にアルカリ金属Mが含まれ、前記アルカリ金属Mの含有量が前記金属捕捉剤に対して、酸化物MO換算で0.5質量%以下であること、などがより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
【0016】
また、本発明は、第二に金属捕捉剤の製造方法を提供する。すなわち、本発明に係る金属捕捉剤の製造方法は、前述の金属捕捉剤の製造方法であって、シリカ成分を含むシリカゾルと、pHが9.0~12.0のスラリー状のアルミナ成分と、金属成分とを混合して得られた混合スラリーを噴霧乾燥することにより、金属捕捉剤前駆体を得る第一工程と、この金属捕捉剤前駆体を洗浄して、噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを得る第二工程と、この噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを加熱することにより金属捕捉剤を得る第三工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、第三に、上記いずれかの金属捕捉剤と、流動接触分解触媒と、を含むことを特徴とする流動接触分解触媒組成物を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、安定的に良好な耐摩耗性を有する金属捕捉剤を得ることができる。更に、本発明に係る金属捕捉剤を流動接触分解触媒に混合することにより、耐メタル性(Coke選択性)に優れた触媒機能を有する流動接触分解触媒組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の金属捕捉剤の製造方法の各製造工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
[金属捕捉剤]
本発明は、安定的に良好な耐摩耗性を有する金属捕捉剤についてである。本発明に係る金属捕捉剤は、シリカ成分とアルミナ成分と金属成分とを含んでいる。すなわち、この金属捕捉剤は、シリカ成分を含むバインダーにアルミナ成分を加え、金属成分として、バナジウムの捕捉機能を有するマグネシウム及びカルシウムを分散させて構成されている。
【0021】
更に、本発明に係る金属捕捉剤は、バナジウムの捕捉機能を有する化合物との相互作用が強く、金属捕捉剤表面に金属成分を容易に分散させやすいという利点がある。そして、本発明に係る金属捕捉剤は、シリカ成分とアルミナ成分と金属成分とを含む金属捕捉剤の比表面積と細孔容積を所定の範囲に設定することにより、安定して良好な耐摩耗性を有している。
【0022】
シリカ成分は、シリカ粒子を含んでいることが好ましい。シリカ粒子の平均粒子径は、5~12nmにあることが好ましい。シリカ粒子の平均粒子径が5nm以上であれば、シリカ成分が粒子として存在することができるので好ましい。一方、シリカ粒子の平均粒子径が12nm以下であれば、金属捕捉剤としての強度を保持することができるので好ましい。このような観点から、シリカ粒子の平均粒子径は、より好ましくは5~10nmであり、更に好ましくは5~9nmである。
【0023】
なお、シリカ粒子の平均粒子径は、例えば、下記の方法で求めることができる。BET(Brunauer-Emmett-Teller)法により、シリカ粒子の比表面積SA(m/g)を測定し、次式で平均粒子径を算出することができる。
平均粒子径(nm)=6000/{SA(m/g)×ρ(g/cm)}
ここで、ρは、シリカ粒子の密度、2.2g/cmである。
【0024】
シリカ成分の含有量は、金属捕捉剤に対して、酸化物(SiO)換算で15~30質量%である。シリカ成分の含有量が15質量%以上であれば、金属捕捉剤としての強度を保持できる。一方、シリカ成分の含有量が30質量%以下であれば、バインダーがマグネシウム又はカルシウムの酸化物やこれらの炭酸塩の表面を被覆し、金属捕捉剤としての捕捉性能の低下や拡散性の低下のおそれがない。このような観点から、好ましくは、金属捕捉剤に含まれるシリカ成分の含有量は、金属捕捉剤に対して、SiO換算で10~25質量%である。なお、金属捕捉剤に含まれるシリカ成分の含有量は、定法に従って測定することができ、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分法、蛍光X線分析法等によって測定される。
【0025】
<アルミナ成分>
アルミナ成分としては、アルミナや、本発明の金属捕捉剤の製造工程において、アルミナを生成するアルミナ成分の前駆体である水酸化アルミニウムや擬ベーマイト(ベーマイトゾル)、塩基性塩化アルミニウムが用いられる。好適にはアルミナ成分として、擬ベーマイト(ベーマイトゾル)が選択される。アルミナ成分の含有量は、金属捕捉剤に対して、酸化物(Al)換算で10~30質量%である。アルミナ成分の含有量がこの範囲にあれば、金属捕捉剤の形状、耐摩耗性の維持、その細孔構造を維持する機能を発揮することができる。アルミナ成分の含有量は、好ましくは15~25質量%である。なお、金属捕捉剤に含まれるアルミナ成分の含有量は、定法に従って測定することができ、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分法、蛍光X線分析法等によって測定される。
【0026】
<金属成分>
金属捕捉剤は、金属成分を含む。金属成分は、その成分としてマグネシウムとカルシウムとを含む。マグネシウムとカルシウムは、それぞれ酸化マグネシウム、酸化カルシウムとして含まれていてもよい。金属成分は、シリカ成分にアルミナ成分を加えた後に形成されるこれらの成分中に直接添加されてもよい。マグネシウムとカルシウムは、例えば、マグネシウム及びカルシウムの水酸化物や炭酸塩、シュウ酸塩、又はその前駆物質として添加されてもよい。シリカ成分にアルミナ成分を加えた後に形成されるこれらの成分に前駆物質が添加される場合には、熱処理を行うことで、前駆物質がマグネシウム及びカルシウムの酸化物となる。
【0027】
この金属成分の含有量は、金属捕捉剤に対して、酸化物換算として40~70質量%である。金属捕捉剤中の金属成分の含有量が酸化物換算で40質量%より過度に小さいと、流動接触分解触媒の被毒元素の一つであるバナジウムとの反応に必要な金属捕捉能が確保できないおそれがある。一方、金属捕捉剤中の金属成分の含有量が酸化物換算で70質量%より過度に大きいと、金属成分が凝集しやすくなり、その分散性を阻害するおそれがある。なお、金属捕捉剤に含まれる金属成分の含有量は、定法に従って測定することができ、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分法、蛍光X線分析法等によって測定される。
【0028】
金属成分に含まれるマグネシウムとカルシウムとの質量比(Mg/Ca)は、酸化物換算で1.2~3.0である。マグネシウムとカルシウムとの質量比(Mg/Ca)が酸化物換算で1.2以上であれば良好な耐摩耗性が得られる。マグネシウムとカルシウムとの質量比(Mg/Ca)が酸化物換算で3.0以下であれば、金属捕捉剤として良好な機能が得られる。ここで、マグネシウムとカルシウムとの質量比(Mg/Ca)が酸化物換算で1.2~3.0である時、金属成分に含まれるマグネシウムの含有量が酸化物(MgO)として15~60質量%、カルシウムが酸化物(CaO)として5~20質量%にあることが好ましい。
【0029】
更に、金属成分として用いるマグネシウム、カルシウムは、その酸化物である酸化マグネシウム、酸化カルシウムを用いてもよい。具体的に金属成分として用いるマグネシウム、カルシウムは、無機、有機物質にかかわらず、特に限定するものではない。
【0030】
金属成分として用いるマグネシウムを酸化マグネシウム(MgO)とした場合には、酸化マグネシウム(MgO)の比表面積は、20~40m/gであることが好ましい。
酸化マグネシウム(MgO)の比表面積が20m/g以上であれば、金属捕捉剤としての機能が低下しないため好ましい。また、酸化マグネシウム(MgO)の比表面積が40m/g以下であれば、シリカ成分とアルミナ成分と金属成分とを含む金属捕捉剤の原料を混合した混合スラリーの粘度が上昇しすぎることなく噴霧乾燥出来るため好ましい。
【0031】
<アルカリ金属>
金属捕捉剤には、ナトリウムやリチウムなどのアルカリ金属Mが更に含まれていてもよい。金属捕捉剤に含まれるアルカリ金属Mの含有量は、ゼオライトの被毒を緩和する観点から、前記金属捕捉剤に対して、MO酸化物換算で0.5質量%以下であることが好ましい。すなわち、金属捕捉剤に含まれるアルカリ金属Mの含有量は、0.05~0.5質量%であることが好ましい。すなわち、主触媒には一般にゼオライト成分が含まれており、金属捕捉剤のアルカリ金属Mの含有量を0.05~0.5質量%に制御することで、ゼオライトに対するアルカリ金属の影響(ゼオライトの被毒等)を緩和することが可能となる。このような観点から、アルカリ金属Mの含有量は、より好ましくは、前記金属捕捉剤に対して、MO酸化物換算で0.1質量%以下である。
【0032】
<金属捕捉剤の物性>
(耐摩耗性指数(CCIC Attrition Index、CAI)
耐摩耗性(Attrition Resistance)は、非特許文献1に記載された方法により測定される。ここで、金属捕捉剤のCAIは、4.0以下であることが好ましい。CAIが4.0を超えると、当該金属捕捉剤を流動接触分解装置に採用しても、金属捕捉剤が使用時に粉化して飛散することにより、流動接触分解装置のトラブルや、製品への粉体の混入等のおそれがあるため好ましくない。このような観点から、CAIは、より好ましくは2.0以下である。なお、金属捕捉剤のCAIは、流動接触分解装置の稼働条件によって異なる値を取り得るが0.1以上であることが好ましい。CAIが0.1以上であれば、金属捕捉剤を流動接触分解装置に使用する際にエロージョン等による当該流動接触分解装置の不具合を低減することができるため好ましい。
【0033】
(平均粒子径)
金属捕捉剤の平均粒子径は、40~100μmにあることが好ましい。なお、平均粒子径の評価は、乾式マイクロメッシュシーブ法により測定し、50質量%値(D50)を平均粒子径とすることができる。その平均粒子径が40μm以上であれば、流動接触分解装置での飛散が抑制できるため好ましい。一方、その平均粒子径が100μm以下であれば、流動接触分解装置での流動性を損なわず、金属捕捉剤の耐摩耗性や強度が低下するおそれがないため好ましい。このような観点から、金属捕捉剤の平均粒子径は、より好ましくは50~90μmである。
【0034】
(比表面積(SA))
金属捕捉剤のBET法で測定した比表面積(SA)は、160~300m/gにあることが好ましい。SAが160m/g以上であれば、バナジウムと、マグネシウム及びカルシウムとが凝集しやすくなり、金属捕捉効率が高いため好ましい。一方、SAが300m/g以下であれば、金属捕捉剤として物理的強度を有し、金属捕捉剤としての形状保持性が低下するおそれがないため好ましい。このような観点から、金属捕捉剤のSAは、より好ましくは100~200m/gである。
【0035】
(細孔容積(PV))
金属捕捉剤は、水銀圧入法で測定される細孔径が10~150nmの範囲において、細孔容積(PV)が0.12ml/g以下であることが好ましい。この金属捕捉剤は、所定範囲の大きさを有する細孔径と、当該所定範囲の大きさを有する細孔径のPVとを特定することによって、CAIを4.0以下とすることができ、安定して耐摩耗性を満たすことができる点に技術的意義を有している。
【0036】
(嵩密度(ABD))
金属捕捉剤の嵩密度(ABD)は、0.70g/ml以上とすることが好ましい。金属捕捉剤の嵩密度の測定方法は、25mlのシリンダーを用いて、金属捕捉剤の重量を測定し、単位体積当たりの重量から嵩密度を計算することができる。嵩密度が0.70g/mlより低い場合は、安定して良好な耐摩耗性を得ることが困難となり、耐摩耗性が不十分となるおそれがある。このため、嵩密度が0.70g/mlより低い金属捕捉剤を流動接触分解触媒と混合して使用した場合、金属捕捉剤は容易に粉化して、飛散する要因となり、実用的使用に向かないおそれがある。なお、嵩密度の上限は、組成から定まる密度となる。
【0037】
(強熱減量(LOI))
金属捕捉剤の強熱減量(LOI)は、15~35%にあることが好ましい。更にLOIは、1000℃に保持した電気炉にて11時間保持した時の重量減少量を測定し、重量減少率として算出することができる。LOIは、より好ましくは20~30%である。
【0038】
[金属捕捉剤の製造方法]
本発明に係る金属捕捉剤の製造方法の各製造工程を示すフロー図(図1)である。この製造方法は、シリカ成分を含むシリカゾルと、pHが9.0~12.0のスラリー状のアルミナ成分と、金属成分とを混合して得られた混合スラリーを噴霧乾燥することにより、金属捕捉剤前駆体を得る第一工程と、この金属捕捉剤前駆体を洗浄して、噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを得る第二工程と、この噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを加熱することにより金属捕捉剤を得る第三工程と、を含むことを特徴とする。
以下、この製造方法に含まれる各工程について詳細に説明する。
【0039】
<第一工程:金属捕捉剤前駆体を得る工程>
第一工程において、シリカ成分を含むシリカゾルと、スラリー状のアルミナ成分と、金属成分とを混合して混合スラリーを得る。第一工程において、混合スラリーを得るために必要な各成分の添加順については、特に制限されるものではなく、各成分の添加順を変更してもよい。本発明においては、シリカ成分とアルミナ成分を調合した調合スラリーを調製した後で金属成分を添加する方法で説明を行う。また、すべての成分を同時に添加する方法であってもよい。
【0040】
まず、シリカ成分を含むシリカゾルとアルミナ成分との調合スラリーを調製する。シリカ成分を含むシリカゾルとアルミナ成分との調合スラリーは、たとえば、シリカ成分としてシリカ粒子を含むシリカゾルと、スラリー状のアルミナ成分とを含んでいてもよい。シリカゾルは、ケイ酸塩の水溶液をイオン交換樹脂に通して陽イオンを除去したものを用いることができる。ここで、シリカゾルのpHは、9.0~12.0であることが好ましい。シリカゾルのpHが9.0~12.0であれば、当該シリカゾルを、アルミナ成分を含むスラリーに混合して調製される調合スラリーの粘度上昇を抑制できるため好ましい。シリカゾルは、シリカ成分として、珪素酸化物からなるシリカ粒子を含む。このシリカ粒子の平均粒子径は、5~12nmであることが好ましく、特に、4nm以上が好ましい。ここで、シリカ粒子の平均粒子径4nmの値は、シリカ成分がシリカゾルとして存在し得る最小値である。また、シリカ系粒子の平均粒子径は、12nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以下であり、更に好ましくは8nm以下である。シリカゾルは、上記のような方法で得られる珪素酸化物の水和物あるいは珪素酸化物スラリーの総称である。
【0041】
シリカゾルに含まれるシリカ成分の含有量は、金属捕捉剤に対して酸化物換算で15~30質量%であることが好ましい。シリカ成分は、その含有量が上記範囲であれば、シリカゾルの調製時に加えてもよい。
【0042】
アルミナ成分は、スラリー状であり、アルミナを含む。アルミナ成分は、加熱処理等によりアルミナを生成することができるアルミニウム化合物を含んでいてもよい。
すなわち、アルミナ成分は、アルミナ成分前駆体を含んでいてもよい。アルミナ成分としては、たとえば、擬ベーマイトを純水に分散させて擬ベーマイトスラリーであってもよい。更に、アルミナ成分としては、ベーマイトアルミナ、擬ベーマイトのほか、水酸化アルミニウムや塩基性塩化アルミニウムなどが使用できる。
【0043】
アルミナ成分の比表面積は、80~320m/gであることが好ましい。アルミナ成分の比表面積が80m/g以上であれば、金属捕捉剤の耐摩耗性を高めるため好ましい。アルミナ成分の比表面積が320m/g以下であれば、混合スラリーの粘度上昇を抑制できるため好ましい。アルミナ成分を含むスラリーのpHは、9.0~12.0であることが好ましい。アルミナ成分を含むスラリーのpHが9.0以上であれば、混合スラリーの粘度上昇を抑制できるため好ましい。アルミナ成分のpHが12.0以下であれば、他の添加成分に影響を及ぼさないため好ましい。
【0044】
上記工程で得られた調合スラリーに、金属成分を溶解して得られる水溶液又は金属成分を同時に加えた混合スラリーを得る。撹拌混合における混合条件は、上記調合スラリーを20~90℃、好ましくは25~80℃に加温して保持し、この調合スラリーの温度の±5℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃に加温した金属成分を含む水溶液を、pHが10.0~13.0、好ましくは10.5~11.5、より好ましくは10.6~11.3になるように、通常5~20分、好ましくは7~15分の間に連続添加して、金属捕捉剤前駆体を含んだ混合スラリーを得る。
【0045】
金属成分は、カルシウムとマグネシウムとを含む。カルシウム及びマグネシウムは、それぞれの酸化物であってもよい。すなわち、金属成分には、酸化マグネシウム(MgO)及び酸化カルシウム(CaO)の両方が含まれていてもよい。ここで、酸化マグネシウム及び酸化カルシウムは、カルシウム又はマグネシウムのシュウ酸塩、水酸化物、炭酸塩などの化合物をその原料として用いることができる。これらの化合物としては、焼成等により、酸化マグネシウム又は酸化カルシウムを生成する炭酸マグネシウム又は炭酸カルシウムを用いてもよい。
【0046】
これら金属成分に含まれるカルシウム及びマグネシウムが酸化物である場合には、その平均粒子径が100μm以下であることが好ましい。酸化カルシウム及び酸化マグネシウムの平均粒子径が100μm以下であれば、金属捕捉剤中に広く分散し、バナジウム等の金属との接触性が向上することによって、より金属を捕捉することができるため好ましい。ここで、酸化マグネシウムの比表面積は、20~40m/gにあることが好ましい。酸化マグネシウムの比表面積が20m/g以上であれば、調製した金属捕捉剤の比表面積が向上し、その性能が向上し、かつ物理性状が良好となるため好ましい。酸化マグネシウムの比表面積が40m/g以下であれば、混合スラリーの粘度の上昇を抑制出来、安定した金属捕捉剤の製造が可能となるため好ましい。
【0047】
更に、第一工程において、金属捕捉剤前駆体を含んだ混合スラリーを噴霧乾燥して噴霧乾燥粒子を得る。すなわち、第一工程で得られた金属捕捉剤前駆体を含む混合スラリーを100~600℃、好ましくは110~600℃、更に好ましくは400~600℃の温度で乾燥処理する。そして、第一工程で得られた金属捕捉剤前駆体を含む混合スラリーを乾燥処理する時間は、0.5~10時間、好ましくは1.0~8.0時間である。
【0048】
金属捕捉剤前駆体の乾燥は、噴霧乾燥機による噴霧乾燥であってもよい。噴霧乾燥の方がより実用的である。このため、噴霧乾燥条件は、例えば、下記条件内で行うことが好ましい。より詳細には、噴霧乾燥は、第一工程で得られた金属捕捉剤前駆体を含む混合スラリーを噴霧乾燥機のスラリー貯槽に充填し、120~450℃の範囲、例えば、230℃に調整された気流(例えば、空気)が流れる乾燥チャンバー内に混合スラリーを噴霧することにより行う。噴霧乾燥により、噴霧乾燥粒子が得られる。金属捕捉剤前駆体を含む混合スラリーの噴霧乾燥によって、上記気流の温度は低下するが、乾燥チャンバーの出口の初期乾燥温度は、ヒーターなどを用いて50~300℃の範囲、例えば120℃に維持される。乾燥速度は、初期乾燥温度120℃から450℃への昇温を1.0~2.0℃/分に設定することができる。
【0049】
このように、金属捕捉剤の製造方法は、第一工程において、混合スラリー溶液の初期乾燥温度を下げ、昇温速度を制御して、乾燥速度をマイルドな条件で行うことによって、耐久摩耗性に優れた金属捕捉剤を得ることができる。
なお、噴霧乾燥粒子は、下記洗浄を行う前に予備乾燥を行ってもよい。予備乾燥は、100~300℃程度の温度範囲で0.5~5.0時間以内で行ってもよい。このように予備乾燥を行うことで、後段の洗浄による構成成分の溶出や、金属捕捉剤の崩壊を防止することができる。
【0050】
<第二工程:噴霧乾燥粒子を洗浄して噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを得る工程>
第一工程で得られた噴霧乾燥粒子は、副生成物を含んでいる。このため、噴霧乾燥粒子から副生成物を除去するために噴霧乾燥粒子を洗浄処理することが好ましい。噴霧乾燥粒子を洗浄処理することにより、副生成物が除去された噴霧乾燥粒子を含んだ噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを得る。
【0051】
噴霧乾燥粒子の洗浄処理を行う場合は、詳細には温水(40~80℃)を用い、噴霧乾燥粒子と温水との比(固液比)が1:3から1:50に設定することが好ましい。噴霧乾燥粒子と温水との撹拌は、攪拌時間として3~30分程度に設定して洗浄することが好ましい。洗浄処理により、金属捕捉剤に含まれるアルカリ金属Mの含有量を低下させることができる。このアルカリ金属Mの含有量は、当該金属捕捉剤に対しMO酸化物換算で、好ましくは0.50質量%以下、更に好ましくは、0.25質量%以下である。アルカリ金属Mの含有量を制御することで、主触媒に含まれているゼオライトに対するMO酸化物の影響(ゼオライトの被毒等)を緩和することが可能となる。ここで、アルカリ金属Mとしては、NaやLi、Kなどが挙げられる。
【0052】
また、金属捕捉剤の製造方法において、既に洗浄が行われた噴霧乾燥粒子洗浄ケーキに対して、更に温水に懸濁し、脱水し、掛水を行う洗浄を少なくとも1回繰り返すことにより得られるものであってもよい。このように、金属捕捉剤の製造方法において、噴霧乾燥粒子洗浄ケーキの洗浄工程を繰返して噴霧乾燥粒子(金属捕捉剤前駆体)に含まれる副生成物を除去することによって、金属捕捉剤の比表面積を向上させることができる。更に、この製造方法において、噴霧乾燥粒子洗浄ケーキの洗浄時間を延ばしてもよい。
【0053】
更に、噴霧乾燥粒子を洗浄する際に、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属化合物を水に溶解したアルカリ金属水溶液を加え、懸濁スラリーを得て、懸濁スラリーのpHを10.0~12.0に調整することが好ましい。このアルカリ金属水溶液は、pHを10.5~11.7に調整することがより好ましい。このアルカリ金属水溶液のpHが10.0以上であれば、バナジウム捕捉成分であるMgやCaが金属捕捉剤から溶出せず、金属捕捉剤の耐摩耗性が低下しないため好ましい。このアルカリ金属水溶液のpHが12.0以下であれば、金属捕捉剤に含まれるシリカ成分がその外部に溶出せず、金属捕捉剤の耐摩耗性が低下しないため好ましい。その後、イオン交換水等で噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを再懸濁し、次いで、脱水、掛水洗浄を行うことが好ましい。懸濁時のスラリー温度は、40~80℃、掛水温度は40~80℃が好ましい。また、この工程を繰返すことでアルカリ金属Mの含有量を低減することができる。
【0054】
<第三工程:噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを加熱することにより金属捕捉剤を得る工程>
第二工程で得られた洗浄した後の噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを、好ましくは80~200℃、より好ましくは80~175℃、更に好ましくは80~150℃の温度で、好ましくは0.1~10時間、より好ましくは0.2~8.0時間の乾燥及び/又は焼成加熱処理することにより、本発明の金属捕捉剤を得る。洗浄した後の噴霧乾燥粒子洗浄ケーキの乾燥は、箱型乾燥機、ロータリードライヤー等を用いて、従来公知の方法により行うことができる。
【0055】
更に、この製造方法において、第三工程で得られた金属捕捉剤に対して、更に温水に懸濁し、脱水し、掛水を行う洗浄を少なくとも1回繰り返すことにより噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを得たのちに、当該噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを第二工程において得られる噴霧乾燥粒子洗浄ケーキとしてもよい。すなわち、本製造方法において、噴霧乾燥粒子洗浄ケーキの洗浄工程を繰返して噴霧乾燥粒子に含まれる副生成物を除去した後、当該噴霧乾燥粒子を加熱して得られる金属捕捉剤を更に洗浄し、噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを得る。
そして、この製造方法において、第三工程で得られた金属捕捉剤を更に洗浄して得られた噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを加熱することによって、耐摩耗性指標(CAI)が4.0以下であり、安定して良好な耐摩耗性を有する金属捕捉剤を得ることができる。
つまり、本製造方法は、第三工程で得られた金属捕捉剤を更に温水に懸濁し、脱水し、掛水を行い洗浄することにより、当該金属捕捉剤を含む噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを得る第四工程と、当該噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを加熱する第五工程を含んでいてもよい。
更に、第四工程で得られた金属捕捉剤を含む噴霧乾燥粒子洗浄ケーキの洗浄を複数回繰り返して得られた噴霧乾燥粒子洗浄ケーキを加熱してもよい。
【0056】
[流動接触分解触媒組成物について]
本発明に係る流動接触分解触媒組成物は、流動接触分解触媒と本発明に係る金属捕捉剤をブレンドしたものを意味する。この流動接触分解触媒組成物(以下、「本発明触媒組成物」という)には、少なくとも上記金属捕捉剤やゼオライト成分、バインダー成分(シリカ系バインダーあるいはアルミナ系バインダー)、粘土鉱物成分が含まれる。流動接触分解触媒組成物を使用した残油の流動接触分解処理は、FCC装置内で触媒組成物を流動させて行なわれる。本発明に係る流動接触分解触媒組成物に含まれる流動接触分解触媒としては、従来公知の流動接触分解触媒(日揮触媒化成(株)より提供される一般的なCVZシリーズの流動接触分解触媒)を用いることができる。
【0057】
<金属捕捉剤>
流動接触分解触媒組成物には、本発明に係る金属捕捉剤が0.5~10質量%含まれることが好ましい。金属捕捉剤が、0.5質量%より少ないと、バナジウム、ニッケル等の金属を捕捉して流動接触分解触媒の被毒を抑える効果が十分ではないおそれがあるため好ましくない。一方、金属捕捉剤が、10質量%を超えると流動接触分解触媒組成物中のゼオライト比率が低下し、触媒活性面で悪影響を及ぼすとともに、過剰の活性金属成分がゼオライトの被毒等の活性面への悪影響の要因ともなるので好ましくない。
【0058】
<比表面積(SA)>
流動接触分解触媒組成物のBET法で測定した比表面積(SA)は、30~150m/gであることが好ましい。SAが30m/gよりも小さいと、流動接触分解プロセスなどにおいて短い接触時間で接触分解反応を十分に進行させることができないおそれがある。一方、SAが150m/gより大きいと流動接触分解触媒として、十分な強度が得られないおそれがある。
【0059】
<流動接触分解触媒組成物の平均粒子径>
流動接触分解触媒組成物の平均粒子径は、40~100μmであることが好ましい。流動接触分解触媒組成物の平均粒子径の測定は、粒度分布の測定用の試料を準備し、堀場製作所(株)製レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA-950V2)にて行うことができる。具体的には、光線透過率が70~95%となるように試料を溶媒(水)に投入し、循環速度を2.8L/min、超音波を3min、反復回数を30で測定した。メディアン径(D50)を平均粒子径として採用した。平均粒子径は、より好ましくは50~90μmである。
【0060】
<細孔容積(PV)>
流動接触分解触媒組成物の水のポアフィリング法により測定される全細孔径範囲の細孔容積(PV)は、0.05~0.50ml/gであることが好ましい。流動接触分解触媒組成物を流動接触分解触媒として使用した場合、細孔容積が0.05ml/gを下回ると、十分な接触分解活性が得られないおそれがある。一方で、細孔容積が0.50ml/gを超えるものは、流動接触分解触媒組成物としての強度が低下するおそれがある。細孔容積(PV)は、より好ましくは0.10~0.45ml/gである。
【0061】
<嵩密度(ABD)>
流動接触分解触媒組成物の嵩密度は、嵩密度は0.70g/mlを下限とすることが好ましい。嵩密度が0.70g/mlより低い場合は、耐摩耗性が不十分となり、流動接触分解触媒として使用した場合、容易に粉化して流動接触分解触媒組成物の成分が飛散する要因となるおそれがある。流動接触分解触媒組成物の嵩密度の測定方法は、金属捕捉剤の嵩密度と同様の方法で求めることができる。
【0062】
<強熱減量(LOI)>
流動接触分解触媒組成物の強熱減量(LOI)は、8~15%にあることが好ましい。更にLOIは、金属捕捉剤のLOIと同様の方法で求めることができる。LOIは、より好ましくは10~13%である。
【実施例0063】
<実施例1>
水酸化ナトリウム水溶液にpHを11.5に調整した固形分濃度として9.8質量%のベーマイトアルミナ(比表面積105m/g)スラリー204gと、固形分濃度として97.0質量%の酸化マグネシウム(比表面積27m/g)41.2gと、固形分濃度(酸化カルシウム換算)として43.1質量%の炭酸カルシウム34.8gとをイオン交換水230.4gに混合した。更に、固形分濃度として20.1質量%、シリカゾルを構成するシリカ粒子の粒子径5nmのシリカゾル124.2gを添加して、撹拌混合することにより、混合スラリーを得た。
【0064】
次に、得られた混合スラリーを液滴として、入口温度が240℃、出口温度が150℃となるように噴霧乾燥機(大川原化工機(株)製 ODT-27)で噴霧乾燥を行い、平均粒子径が78μmの噴霧乾燥粒子を得た。なお、噴霧乾燥粒子の平均粒径は、メッシュシーブを用いた重量法により測定した。
【0065】
得られた噴霧乾燥粒子をイオン交換水に固形分濃度10質量%となるように懸濁した後、濾別を行い、更に、固形分量に対して15倍量のイオン交換水を掛水洗浄し、脱水することで洗浄ケーキ(1)を得た。この洗浄ケーキを送風式箱型乾燥機(ヤマト科学(株)製 DKN602)に入れ120℃で12時間保持することで、MTR-1前駆体を得た。得られたMTR-1前駆体をイオン交換水に固形分濃度10質量%となるように懸濁したのち、濾別を行い、更に、固形分に対して10倍量のイオン交換水を掛水洗浄し、脱水することで洗浄ケーキ(2)を得た。
【0066】
得られた洗浄ケーキ(2)をバットに移し、送風式箱型乾燥機に入れ120℃で12時間保持することで、金属捕捉剤(MTR-1)を得た。得られたMTR-1を600℃にて2時間保持した後、MTR-1の比表面積及びCAIを測定した。その結果、比表面積は220m/g、CAIは、2.0であった。
【0067】
<実施例2>
使用したベーマイトアルミナの比表面積が265m/gであること、及びシリカゾルを構成するシリカ粒子の粒子径が9.6nmであること以外は実施例1と同様にして、金属捕捉剤(MTR-2)を得た。得られたMTR-2を600℃にて2時間保持した後、MTR-2の比表面積及びCAIを測定した。その結果、比表面積は247m/g、CAIは、2.0であった。
【0068】
<実施例3>
水酸化ナトリウム水溶液にpHを10.5に調整した固形分濃度として9.8質量%のベーマイトアルミナ(比表面積265m/g)スラリー153gと、固形分濃度として97.0質量%の酸化マグネシウム(比表面積27m/g)46.4gと、固形分濃度(酸化カルシウム換算)として43.1質量%の炭酸カルシウム46.4gとをイオン交換水109.2gに混合し、更に、固形分濃度として20.1質量%、シリカゾルを構成するシリカ粒子の粒子径が9.6nmのシリカゾル99.5gを添加して、撹拌混合することで混合スラリーを得た。
【0069】
得られた混合スラリーを実施例1と同様に噴霧乾燥を行い、平均粒子径が77μmの噴霧乾燥粒子を得た。得られた噴霧乾燥粒子をイオン交換水に固形分濃度10質量%となるように懸濁した後、濾別を行い、更に、固形分量に対して15倍量のイオン交換水を掛水洗浄し、脱水することで洗浄ケーキを得た。
【0070】
得られた洗浄ケーキをバットに移し、送風式箱型乾燥機に入れ120℃で12時間保持することで、金属捕捉剤(MTR-3)を得た。得られたMTR-3につき、実施例1と同様に、比表面積及びCAIを測定した。その結果、比表面積は、184m/g、CAIは、3.0であった。
【0071】
<実施例4>
水酸化ナトリウム水溶液にpHを10.2に調整した固形分濃度として9.8質量%のベーマイトアルミナ(比表面積105m/g)スラリー153gと、固形分濃度として97.0質量%の酸化マグネシウム(比表面積27m/g)41.2gと、固形分濃度(酸化カルシウム換算)として43.1質量%の炭酸カルシウム58.0gをイオン交換水102.7gに混合し、更に、固形分濃度として20.1質量%、シリカゾルを構成するシリカ粒子の粒子径が5nmのシリカゾル99.5gを添加して、撹拌混合することで混合スラリーを得た。
【0072】
得られた混合スラリーを実施例1と同様に噴霧乾燥を行い、平均粒子径が78μmの噴霧乾燥粒子を得た。得られた噴霧乾燥粒子をイオン交換水に固形分濃度10質量%となるように懸濁した後、濾別を行い、更に、固形分量に対して15倍量のイオン交換水を掛水洗浄し、脱水することで洗浄ケーキを得た。
【0073】
得られた洗浄ケーキをバットに移し、送風式箱型乾燥機に入れ120℃で12時間保持することで、金属捕捉剤(MTR-4)を得た。得られたMTR-4につき、実施例1と同様に、比表面積及びCAIを測定した。その結果、比表面積は、175m/g、CAIは、3.0であった。
【0074】
<実施例5>
使用したベーマイトアルミナの比表面積が265m/gであること以外は実施例1と同様にして、混合スラリーを得た。
【0075】
得られた混合スラリーを実施例1と同様に噴霧乾燥を行い、平均粒子径が78μmの噴霧乾燥粒子を得た。得られた噴霧乾燥粒子をイオン交換水に固形分濃度10質量%となるように懸濁した後、濾別を行い、更に、固形分量に対して15倍量のイオン交換水を掛水洗浄し、脱水することで洗浄ケーキを得た。
【0076】
得られた洗浄ケーキをバットに移し、送風式箱型乾燥機に入れ120℃で12時間保持することで、金属捕捉剤(MTR-5)を得た。得られたMTR-5につき、実施例1と同様に、比表面積及びCAIを測定した。その結果、比表面積は、268m/g、CAIは、1.0であった。
【0077】
<比較例1>
固形分濃度として84.2質量%の結晶性ベーマイト(比表面積105m/g)17.8gと、固形分濃度として97.0質量%の酸化マグネシウム(比表面積27m/g)41.2gと、固形分濃度(酸化カルシウム換算)として43.1質量%の炭酸カルシウム58gをイオン交換水238gに混合し、更に、固形分濃度として20.1質量%、シリカゾルを構成するシリカ粒子の粒子径が5nmのシリカゾル99.5gを添加して、撹拌混合することで調合スラリーとして混合スラリーを得た。得られた混合スラリーを実施例1と同様に噴霧乾燥を行い、平均粒子径が73μmの噴霧乾燥粒子を得た。得られた噴霧乾燥粒子をイオン交換水に固形分濃度10質量%となるように懸濁した後、濾別を行い、更に、固形分量に対して15倍量のイオン交換水を掛水洗浄し、脱水することで洗浄ケーキを得た。
【0078】
得られた洗浄ケーキをバットに移し、送風式箱型乾燥機に入れ120℃で12時間保持することで、MTR-R1を得た。得られたMTR-R1につき、実施例1と同様に、比表面積及びCAIを測定した。その結果、比表面積は、180m/g、CAIは、5.0であった。
【0079】
<比較例2>
固形分濃度として84.2質量%の結晶性ベーマイト(比表面積105m/g)23.8gと、固形分濃度として97.0質量%の酸化マグネシウム(比表面積27m/g)41.2gと、固形分濃度(酸化カルシウム換算)として43.1質量%の炭酸カルシウム34.8gをイオン交換水255.5gに混合し、更に、固形分濃度として25.2質量%、シリカゾルを構成するシリカ粒子の粒子径が15nmのシリカゾル99.2gを添加して、撹拌混合することで混合スラリーを得た。
【0080】
得られた混合スラリーを実施例1と同様に噴霧乾燥を行い、平均粒子径が72μmの噴霧乾燥粒子を得た。得られた噴霧乾燥粒子をイオン交換水に固形分濃度10%となるように懸濁した後、濾別を行い、更に、固形分量に対して15倍量のイオン交換水を掛水洗浄し、脱水することで洗浄ケーキを得た。
【0081】
得られた洗浄ケーキをバットに移し、送風式箱型乾燥機に入れ120℃で12時間保持することで、MTR-R2を得た。得られたMTR-R2は、実施例1と同様に、比表面積及びCAIを測定した。その結果、比表面積は、150m/g、CAIは、7.0であった。
【0082】
実施例1~5及び比較例1、2で得られた金属捕捉剤の試料条件及び性能評価試験の結果を表1に示す。なお、表1中、付加工程とは、得られた噴霧乾燥粒子を再度懸濁して、混合スラリーとし、当該混合スラリーを洗浄後、乾燥する工程をいう。
【0083】
【表1】
【0084】
[金属捕捉剤の耐摩耗性(Attrition Resistance)評価結果]
表1に示すように、発明例の金属捕捉剤MTR-1~MTR-5は、耐摩耗性指数(CAI)が1.0~3.0にあることが判明した。すなわち、発明例のCAIは、いずれも4.0以下であり、安定して良好な耐摩耗性を満たしていることが明らかとなった。つまり、本発明に係る金属捕捉剤の製造方法により製造された金属捕捉剤は、CAIの値が一定範囲にあり、ばらつきがなく、安定した良好な耐摩耗性を備えていることが判明した。一方、MTR-R1及びMTR-R2のCAIは、それぞれ5.0、7.0であり、十分な耐摩耗性を満足しないことが明らかとなった。
【0085】
[金属捕捉剤を含む流動接触分解触媒組成物の性能評価]
本発明に係る金属捕捉剤の添加効果を確認するために、日揮触媒化成(株)より提供される一般的なCVZシリーズの流動接触分解触媒に上記で製造した金属捕捉剤MTR-1~MTR-5を所定量添加し、性能評価用の流動接触分解触媒組成物を得た。
【0086】
シリカバインダーを用いた流動接触分解触媒組成物に対して、本発明に係る金属捕捉剤の製造方法により製造した金属捕捉剤MTR-1~MTR-5を質量比で5%ブレンドして評価用の流動接触分解触媒を調製し、性能評価を行った(性能評価試験No.1~5)。併せて、シリカバインダーを用いた流動接触分解触媒組成物に対して、本発明に係る金属捕捉剤の製造方法により製造した金属捕捉剤MTR-3をそれぞれ質量比で10質量%、1質量%の割合にてブレンドして評価用の流動接触分解触媒を調製し、性能評価を行った(性能評価試験No.6~7)。
なお、流動接触分解触媒組成物の性能評価に用いた流動接触分解触媒は、シリカバインダーを17質量%、ゼオライトを30質量%、活性アルミナを20質量%、及び、カオリンを33質量%で構成され、比表面積は275m/g、細孔容積は、0.30ml/gである。
【0087】
[流動接触分解触媒組成物の性能評価試験]
上記のようにして得た流動接触分解触媒に各金属捕捉剤をブレンドした流動接触分解触媒組成物を調製し、ACE-MAT(Advanced Cracking Evaluation-Micro Activity Test)を用い、同一原油、同一反応条件下で触媒組成物の性能評価試験を行った。各流動接触分解触媒組成物の性能評価試験の結果を表2に示す。各収率は、C/O=5.0のときの各生成物の質量を質量%とした。
【0088】
ただし、これらの性能評価試験を行う前に、各触媒の表面に、予めニッケル及びバナジウムをそれぞれ1000質量ppm(ニッケルの質量を触媒の質量で除算している)及び2000質量ppm(バナジウムの質量を触媒の質量で除算している)沈着させ、次いでスチーミングして擬平衡化処理を行った。具体的には、各触媒を予め600℃で2時間焼成した後、所定量のナフテン酸ニッケル、及びナフテン酸バナジウムのトルエン溶液を吸収させ、次いで110℃で乾燥後、600℃で1.5時間焼成し、次いで780℃で13時間スチーム処理を行った。
【0089】
性能評価試験における運転条件は、以下の通りである。
原料油:原油の脱硫常圧残渣油(DSAR)+脱硫減圧軽油(DSVGO)(50+50)
触媒/通油量の質量比(C/O):5.0
反応温度:520℃
1)転化率=100-(LCO+HCO+CLO) (質量%)
2)収率:C/O=5.0のときの各生成物の質量を質量%とした。
3)ガソリンの沸点範囲:30~216℃ (Gasoline)
4)LCOの沸点範囲:216~343℃(LCO:Light Cycle Oil)
5)HCO及びCLOの沸点範囲:343℃+(HCO:Heavy Cycle Oil、CLO:Clarified Oil)
6)LPG(液化石油ガス)
7)Dry Gas:メタン、エタン及びエチレン
【0090】
【表2】
【0091】
[流動接触分解触媒組成物の活性評価結果]
表2に示した触媒組成物の活性評価結果によれば、実施例1~5にて調製した金属捕捉剤MTR-1~MTR5を5.0質量%含む触媒組成物(発明例)、実施例3にて調製した金属捕捉剤MTR3をそれぞれ10.0質量%、1.0質量%含む触媒組成物(発明例)での性能評価結果(収率:C/O=5.0)は、金属捕捉剤を含まない母体触媒100質量%の場合(性能評価試験No.8:基準)に比べて、H、Dry Gas及びCoke収率の低下並びにガソリン収率の増加が明らかである。また、金属捕捉剤MTR-3を10.0質量%添加した触媒組成物(性能評価試験No.6)は、金属捕捉剤MTR-3を1.0質量%添加した触媒組成物(性能評価試験No.7)より、特にH、Coke、Dry Gas収率の改善は高いものの、転化率が低下している。また、MTR-3をそれぞれ15.0質量%添加した場合(性能評価試験No.9)、0.3質量%添加した場合(性能評価試験No.10)、いずれの収率に対しても明らかな改善は観られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上説明したように、本発明に係る金属捕捉剤は、金属捕捉能が高く、安定して良好な耐摩耗性を有しているので、流動接触分解触媒に添加して、ニッケルやバナジウムを含有する炭化水素油の分解に使用して、触媒の機能を長期にわたり安定に維持でき、好適である。上記例では、アルミナバインダーを用いた流動接触分解触媒としたが、それ以外のバインダーや他の添加物とも好適に組み合わせることができる。このように、本発明は、残油処理用流動接触分解にきわめて有用であり、石油精製、石油化学工業等の産業上利用可能である。
図1