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  • 特開-樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122357
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/06 20060101AFI20240902BHJP
   C08L 33/16 20060101ALI20240902BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20240902BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20240902BHJP
   C08K 5/02 20060101ALI20240902BHJP
   C08K 5/04 20060101ALI20240902BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240902BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C08L33/06
C08L33/16
C08L45/00
C08K3/32
C08K5/02
C08K5/04
C08K3/22
C08F8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029861
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000108030
【氏名又は名称】AGCセイミケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】酒井 規光
(72)【発明者】
【氏名】堀川 敦
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BG031
4J002BG081
4J002BK001
4J002DE096
4J002DE286
4J002DH006
4J002EA007
4J002EB067
4J002ED017
4J002EE017
4J002EE027
4J002EH017
4J002FD028
4J002FD030
4J002FD090
4J002FD100
4J002FD130
4J002FD206
4J002GQ00
4J002HA06
4J100AA01P
4J100AA01Q
4J100AR09P
4J100AR09Q
4J100AR11P
4J100AR11Q
4J100CA03
4J100HA42
4J100HA45
4J100HA61
4J100HC30
4J100HC36
4J100HC42
4J100HC78
4J100HD08
4J100HE05
4J100HE14
4J100JA01
4J100JA43
(57)【要約】      (修正有)
【課題】膜にしたときの、耐マイグレーション性、耐屈曲性に優れる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】特定のフッ素置換アルキル基及び/又は特定のアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体から導かれる構成単位を含む(メタ)アクリル系ポリマー、並びに、特定のノルボルネン環構造を含む構成単位と置換又は無置換オレフィン構成単位とを含むシクロオレフィンポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマーと、イオン捕捉剤と、溶剤とを含有する、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)及び/又は式(2)で表される単量体から導かれる構成単位を含む(メタ)アクリル系ポリマー、並びに、式(3)及び/又は式(4)で表される構成単位と式(5)で表される構成単位とを含むシクロオレフィンポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマーと、
イオン捕捉剤と、
溶剤とを含有する、樹脂組成物。
【化1】
式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、mは1~4の整数であり、nは1~14の整数であり、Xは水素原子又はフッ素原子である。
【化2】
式(2)中、Rは水素原子又はメチル基であり、mは1~22の整数である。
【化3】
式(3)中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は1価の有機基である。
【化4】
式(4)中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は1価の有機基である。
【化5】
式(5)中、Rは水素原子又は1価の有機基である。
【請求項2】
式(1)において、mが1~2の整数であり、nが1~6の整数である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
式(2)において、mが4~18の整数である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記シクロオレフィンポリマーが、前記シクロオレフィンポリマーを式(6)で表される化合物B及び/又は式(7)で表される化合物Cで変性した変性シクロオレフィンポリマーを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化6】
式(6)中、Qは-O-又は-NH-である。
【化7】
式(7)中、Rはそれぞれ独立してメチル基又はエチル基である。
【請求項5】
前記ポリマーにおいて、多官能モノマーから導かれる構成単位の含有量が、前記ポリマー中の0質量%以上10質量%未満である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記イオン捕捉剤が、リン酸ジルコニウム系化合物及び/又はハイドロタルサイト化合物を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
電子基板の表面を被覆するための、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路基板等の表面に、イオンマイグレーション耐性を有する硬化物を形成することが可能な光硬化性組成物が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/009640号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが、特許文献1に開示されている光硬化性組成物について検討したところ、上記のような光硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物は、イオンマイグレーション耐性(以下、耐マイグレーション性とも言う)は優れるものの、上記硬化物の耐屈曲性が悪い場合があることを知見した。
【0005】
そこで、本発明は、膜にしたときの、耐マイグレーション性、耐屈曲性に優れる樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により課題を解決できることを見出した。
【0007】
[1]
後述する式(1)及び/又は後述する式(2)で表される単量体から導かれる構成単位を含む(メタ)アクリル系ポリマー、並びに、後述する式(3)及び/又は後述する式(4)で表される構成単位と後述する式(5)で表される構成単位とを含むシクロオレフィンポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマーと、
イオン捕捉剤と、
溶剤とを含有する、樹脂組成物。
[2]
式(1)において、mが1~2の整数であり、nが1~6の整数である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
式(2)において、mが4~18の整数である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
上記シクロオレフィンポリマーが、上記シクロオレフィンポリマーを後述する化合物B及び/又は後述する化合物Cで変性した変性シクロオレフィンポリマーを含む、[1]~[3]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[5]
上記ポリマーにおいて、多官能モノマーから導かれる構成単位の含有量が、上記ポリマー中の0質量%以上10質量%未満である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[6]
上記イオン捕捉剤が、リン酸ジルコニウム系化合物及び/又はハイドロタルサイト化合物を含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[7]
電子基板の表面を被覆するための、[1]~[6]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、膜にしたときの、耐マイグレーション性、耐屈曲性に優れる樹脂組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明におけるウォータードロップ試験に使用された回路を模式的に表す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳述する。なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
また、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方又はどちらか一方を意味する。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りがない限り、各成分はそれぞれ単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用することができる。
本明細書において、ある成分が2種以上で存在する場合、その成分の「含有量」は、それら2種以上の成分の合計含有量を意味する。
本明細書において、ある成分の製造方法は特に断りがない限り制限されない。例えば、従来公知の方法が挙げられる。
以下、本発明の樹脂組成物について説明する。
【0011】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、
式(1)及び/又は式(2)で表される単量体から導かれる構成単位を含む(メタ)アクリル系ポリマー、並びに、式(3)及び/又は式(4)で表される構成単位と式(5)で表される構成単位とを含むシクロオレフィンポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマーと、
イオン捕捉剤と、
溶剤とを含有する、樹脂組成物である。
【化1】
式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、mは1~4の整数であり、nは1~14の整数であり、Xは水素原子又はフッ素原子である。
【化2】
式(2)中、Rは水素原子又はメチル基であり、mは1~22の整数である。
【化3】
式(3)中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は1価の有機基である。
【化4】
式(4)中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は1価の有機基である。
【化5】
式(5)中、Rは水素原子又は1価の有機基である。
【0012】
本発明の樹脂組成物が本発明の課題を解決できる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のとおり推測する。なお、下記推測により、本発明における、効果が得られる機序が制限されるものではない。換言すれば、下記以外の機序により効果が得られる場合でも、本発明の範囲に含まれる。
本発明の樹脂組成物から得られる膜はイオン捕捉剤を含むので、上記膜中のイオン捕捉剤が、電子基板において電極等から生じうる金属イオンを捕捉することによって、本発明の樹脂組成物は、膜にしたときの耐マイグレーション性に優れると推測される。耐マイグレーション性に優れることによって、電子基板の短絡を防ぎやすくなる。
また、本発明の樹脂組成物は特定のポリマーを含有するので、本発明の樹脂組成物から得られる膜は柔軟性が高く、本発明の樹脂組成物は、膜にしたときの、耐屈曲性に優れると推測される。
以下、本明細書において、耐マイグレーション性及び耐屈曲性のうちの少なくとも1つがより優れることを、「本発明の効果がより優れる」ともいう。
【0013】
[ポリマー]
本発明の樹脂組成物は、式(1)及び/又は式(2)で表される単量体から導かれる構成単位を含む(メタ)アクリル系ポリマー、並びに、式(3)及び/又は式(4)で表される構成単位と式(5)で表される構成単位とを含むシクロオレフィンポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマー(特定のポリマー)を含む。
なお、本明細書において、式(1)で表される単量体を「単量体(1)」とも称する。また、式(1)で表される単量体から導かれる構成単位を「構成単位(1)」とも称する。式(2)についても同様である。
本明細書において、式(3)で表される構成単位を「構成単位(3)」とも称する。式(3)で表される構成単位を構成しうる単量体を「単量体(3)」とも称する。式(4)、式(5)についても同様である。
【0014】
(ポリマーの含有量)
本発明の樹脂組成物は、上記(メタ)アクリル系ポリマー、並びに、上記シクロオレフィンポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1つの上記ポリマー(特定のポリマー)を、本発明の効果がより優れるという観点から、本発明の樹脂組成物全量中の1~30質量%で含有することが好ましい。本発明の樹脂組成物が上記ポリマー(特定のポリマー)を複数種で含有する場合、上記複数種のポリマーの合計含有量が、上記と同様の理由で、本発明の樹脂組成物全量中の1~30質量%であることが好ましい。
【0015】
((メタ)アクリル系ポリマー)
本発明において、上記ポリマー(特定のポリマー)として、式(1)及び/又は式(2)で表される単量体から導かれる構成単位を含む(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられる。
本発明の樹脂組成物が上記ポリマーとして上記(メタ)アクリル系ポリマーを含む場合、膜にしたときの耐屈曲性がより優れる。
本発明の樹脂組成物が上記ポリマー(特定のポリマー)として上記(メタ)アクリル系ポリマーを含み、上記(メタ)アクリル系ポリマーが構成単位(1)を含む場合、膜にしたときの、耐マイグレーション性及び耐屈曲性がより優れ、得られる膜の撥水性が優れる。
本発明の樹脂組成物が上記ポリマー(特定のポリマー)として上記(メタ)アクリル系ポリマーを含み、上記(メタ)アクリル系ポリマーが構成単位(2)を含む場合、膜にしたときの耐屈曲性がより優れ、得られる膜の滑水性が優れる。
【0016】
(式(1)で表される単量体から導かれる構成単位)
式(1)で表される単量体は以下のとおりである。式(1)で表される単量体から導かれる構成単位は、式(1)中の二重結合が開裂した構造となる。
【化6】
式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、mは1~4の整数であり、nは1~14の整数であり、Xは水素原子又はフッ素原子である。
なお、式(1)中の-(CH)m-、-(CF)n-は、それぞれ直鎖状である。
【0017】
式(1)において、本発明の効果がより優れるという観点から、Rがメチル基であることが好ましい。
式(1)において、本発明の効果がより優れるという観点から、mが1~2の整数であることが好ましい。
式(1)において、本発明の効果がより優れるという観点から、nが1~6の整数であることが好ましい。
式(1)において、本発明の効果がより優れるという観点から、Xがフッ素原子であることが好ましい。
【0018】
構成単位(1)は、本発明の効果がより優れるという観点から、式(1)において、mが1~2の整数であり、nが1~6の整数である単量体から導かれる構成単位を含むことが好ましく、式(1)において、Rがメチル基であり、mが1~2の整数であり、nが1~6の整数であり、Xがフッ素原子である単量体から導かれる構成単位を含むことがより好ましい。
【0019】
(式(2)で表される単量体から導かれる構成単位)
式(2)で表される単量体は以下のとおりである。式(2)で表される単量体から導かれる構成単位は、式(2)中の二重結合が開裂した構造となる。
【化7】
式(2)中、Rは水素原子又はメチル基であり、mは1~22の整数である。
式(2)中のC2m+1は、直鎖状のアルキル基及び分岐状のアルキル基のうちのいずれであってもよい。
【0020】
式(2)において、本発明の効果がより優れるという観点から、Rはメチル基であることが好ましい。
式(2)において、本発明の効果がより優れるという観点から、mが4~18の整数であることが好ましい。
【0021】
式(2)で表される単量体としては、例えば、n-ブチル-(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートのような、C2m+1が直鎖状のアルキル基である(メタ)アクリレート;
tert-ブチル-(メタ)アクリレート、エチルヘキシル-(メタ)アクリレート、イソデシル-(メタ)アクリレートのような、C2m+1が分岐状のアルキル基である(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0022】
構成単位(2)は、本発明の効果がより優れるという観点から、式(2)において、mが4~18の整数である単量体から導かれる構成単位を含むことが好ましく、式(2)において、Rがメチル基であり、mが4~18の整数である単量体から導かれる構成単位を含むことがより好ましい。
【0023】
・構成単位(1)及び/又は構成単位(2)の含有量
構成単位(1)若しくは構成単位(2)の含有量、又は、構成単位(1)と構成単位(2)との合計含有量は、上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成する構成単位全量中の50~100質量%であることが好ましい。
なお、上記(メタ)アクリル系ポリマーが構成単位(1)及び構成単位(2)以外の構成単位(その他の構成単位)を更に有する場合、構成単位(1)若しくは構成単位(2)の含有量、又は、構成単位(1)と構成単位(2)との合計含有量は、上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成する構成単位全量中の70~99質量%とすることができる。
【0024】
・式(1)、式(2)で表される単量体から導かれる構成単位以外の構成単位
本発明において、上記ポリマーとして挙げられる(メタ)アクリル系ポリマーは、式(1)、式(2)で表される単量体から導かれる構成単位以外の構成単位(その他の構成単位)を更に含むことができる。
その他の構成単位は、単量体(1)又は単量体(2)と共重合可能な単量体から構成されうる。
上記(メタ)アクリル系ポリマーが更に含むことができるその他の構成単位としては、例えば、後述する、単位(b)及び単位(c)が挙げられる。
【0025】
・・単位(b)
単位(b)は、式(b)で表される単量体(以下「単量体(b)」ともいう。)に基づく構成単位である。
CH=C(R)-Q-W (b)
式(b)において、R、Q及びWは、それぞれ、以下の意味である。
は、水素原子又はメチル基である。
は、単結合又は2価の連結基である。上記2価の連結基としては、例えば、-COO-、-O-、2価の炭化水素基(上記2価の炭化水素基はヒドロキシ基を有する2価の炭化水素基であってもよい)、これらの組合せが挙げられる。
Wは、アルコキシシリル基、ヒドロキシ基又はカルボキシ基である。上記カルボキシ基は、塩の形でもよい。
【0026】
Wとしては、本発明の樹脂組成物から得られた膜の基材(例えば電気基板)の表面に対する密着性(密着性について以下同様)が向上することから、カルボキシ基又はアルコキシシリル基が好ましい。
【0027】
・・・Wがアルコキシシリル基である場合
単量体(b)は、Wがアルコキシシリル基である場合、式(b1)で表される化合物(以下「化合物(b1)」ともいう。)が好ましい。
CH=C(R)-COO-Q21-Si(OAk (b1)
式(b1)において、R、Q21及びAkは、それぞれ、以下の意味である。
は、水素原子又はメチル基である。
21は、直鎖状又は分岐状のアルキレン基(置換基を有していてもよい)である。
Akは、炭素数1~3の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。
【0028】
化合物(b1)の例としては、式(b11)~式(b16)のいずれか1つで表される化合物が挙げられる。
CH=C(CH)-COO-(CH-Si(OCH (b11)
CH=C(CH)-COO-(CH-Si(OCHCH (b12)
CH=C(CH)-COO-(CH-Si(OCH(CH (b13)
CH=CH-COO-(CH-Si(OCH (b14)
CH=CH-COO-(CH-Si(OCHCH (b15)
CH=CH-COO-(CH-Si(OCH(CH (b16)
【0029】
・・・Wがヒドロキシ基である場合
単量体(b)は、Wがヒドロキシ基である場合、式(b2)で表される化合物を含むことが好ましい。
CH=C(R)-COO-Q22-OH (b2)
式(b2)において、R及びQ22は、それぞれ、以下の意味である。
は、水素原子又はメチル基である。
22は、-X-又は-X-X-である。ただし、Xは、炭素数が1~10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基(水素原子がヒドロキシ基で置換されていてもよい)、フェニレン基又はシクロヘキシレン基であり、Xは、-(CO)-又は-(CO)-(nは1~30の整数である)である。
【0030】
化合物(b2)の例としては、式(b21)~式(b28)のいずれか1つで表される化合物が挙げられる。ただし、式(b21)~式(b26)において、aは、式毎にそれぞれ独立に、1~10の整数である。
CH=CH-COO-(CH-OH (b21)
CH=C(CH)-COO-(CH-OH (b22)
CH=CH-COO-(CO)-H (b23)
CH=C(CH)-COO-(CO)-H (b24)
CH=CH-COO-(CO)-H (b25)
CH=C(CH)-COO-(CO)-H (b26)
CH=CH-COO-CHCH(OH)CH-OH (b27)
CH=C(CH)-COO-CHCH(OH)CH-OH (b28)
上記ポリマーとして挙げられる(メタ)アクリル系ポリマーがその他の構成単位として更に単位(b)を有する場合、上記単位(b)を構成しうる単量体(b)は、例えば、式(b21)及び/又は式(b22)で表される化合物(各式中のaは例えば2~8の整数)を含むことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0031】
・・・Wがカルボキシ基である場合
単量体(b)は、Wがカルボキシ基である場合、式(b3)で表される化合物が好ましい。
CH=C(R)-Q23-COOH (b3)
式(b3)において、R及びQ23は、それぞれ、以下の意味である。
は、水素原子又はメチル基である。
23は、単結合、炭素数が1~10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基、-(CO)-若しくは-(CO)-(nは1~30の整数である)、又は-Z-X-若しくは-Z-X-Z-X-で表される2価の連結基である。ただし、Zは、-COO-であり、Xは、炭素数が1~10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、フェニレン基、シクロへキシレン基又は-(CO)-若しくは-(CO)-(nは1~30の整数である)であり、Xは、-(CO)-又は-(CO)-(nは1~30の整数である)であり、Zは、-CO-であり、Xは、炭素数が1~10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。
【0032】
化合物(b3)の例としては、式(b31)~式(b40)のいずれか1つで表される化合物が挙げられる。ただし、式(b31)~式(b36)において、a及びbは、式毎にそれぞれ独立に1~10の整数である。
CH=CH-COOH (b31)
CH=C(CH)-COOH (b32)
CH=CH-COO-(CH-COOH (b33)
CH=C(CH)-COO-(CH-COOH (b34)
CH=CH-COO-(CO)-CO-(CH-COOH (b35)
CH=C(CH)-COO-(CO)-CO-(CH-COOH (b36)
【0033】
【化8】
【0034】
上記(メタ)アクリル系ポリマーが更に単位(b)を含む場合、本発明の樹脂組成物は、得られる膜の密着性が優れる傾向がある。
上記(メタ)アクリル系ポリマーが更に単位(b)を含む場合、上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成する全ての構成単位に対する単位(b)の割合(質量%)は、特に限定されないが、0質量%超、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0035】
・・単位(c)
単位(c)は、単量体(1)又は単量体(2)と共重合しうる化合物(以下「単量体(c)」ともいう。)に基づく構成単位である。
単量体(c)は、炭化水素基等の疎水性の基と重合性不飽和結合を有するものが好ましい。単量体(c)の例として、例えば、シクロヘキシル基、フェニル基、イソボルニル基又はノルボルニル基等の環状炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0036】
・・その他の構成単位の含有量
その他の構成単位の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成する構成単位全量中の0~50質量%であることが好ましい。
上記(メタ)アクリル系ポリマーが構成単位(1)及び構成単位(2)以外の構成単位(その他の構成単位)を更に有する場合、上記のその他の構成単位の含有量は、上記(メタ)アクリル系ポリマーを構成する構成単位全量中の1~30質量%とすることができる。
【0037】
・・構成単位の組合せ
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、本発明の効果がより優れ、撥水性が優れるという観点から、上記(メタ)アクリル系ポリマーが構成単位(1)を含む場合が好ましい。また、上記の場合、上記(メタ)アクリル系ポリマーは、更に単位(b)及び/又は単位(c)を含むことができる。
なお、上記(メタ)アクリル系ポリマーが構成単位(1)を含む場合、上記(メタ)アクリル系ポリマーは、構成単位として更に構成単位(2)を含まない態様とすることができる。
上記ポリマー(特定のポリマー)は、上記ポリマー(特定のポリマー)が有するフッ素が多い程、得られる膜の耐溶剤性が良好になる傾向がある。上記フッ素は、例えば、構成単位(1)に由来することができる。
【0038】
(シクロオレフィンポリマー)
本発明において、上記ポリマー(特定のポリマー)として、式(3)及び/又は式(4)で表される構成単位と式(5)で表される構成単位とを含むシクロオレフィンポリマー(COP)が挙げられる。
本発明の樹脂組成物が上記ポリマー(特定のポリマー)として上記COPを含む場合、本発明の樹脂組成物は、得られる膜の耐マイグレーション性がより優れる。
本発明の樹脂組成物が上記ポリマー(特定のポリマー)として上記COPを含み、上記COPが式(3)及び式(5)で表される構成単位を含む場合が、好ましい態様の1つとして挙げられる。
また、上記ポリマー(特定のポリマー)としてのCOPが、式(3)及び/又は式(4)で表される構成単位と式(5)で表される構成単位とを含むシクロオレフィンポリマーを、式(6)で表される化合物B及び/又は式(7)で表される化合物Cで変性した変性シクロオレフィンポリマーを含む場合、本発明の効果(特に耐マイグレーション性)がより優れ、得られる膜の密着性が優れる。
【0039】
(式(3)で表される構成単位)
式(3)で表される構成単位は以下のとおりである。
【化9】
式(3)中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は1価の有機基である。
【0040】
・1価の有機基
上記の1価の有機基の具体的な例は、炭素数1~6の直鎖状もしくは炭素数3~6の分岐状の飽和炭化水素基、塩素原子、フッ素原子、又は、ハロゲン原子が塩素原子もしくはフッ素原子であるトリハロメチル基が挙げられる。上記飽和炭化水素基としては直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましい。
なお、式(3)においてR及びRが上記の飽和炭化水素基である場合、R及びRが互いに結合して環状構造を形成してもよい。ただし、式(3)におけるR及びRが互いに結合して環状構造を形成した場合から、後述する式(4)で表される構成単位は除かれる。
また、上記COPが構成単位(3)を含む場合、上記COPは複数種の構成単位(3)を含んでもよい。
【0041】
上記COPは、本発明の効果がより優れるという観点から、構成単位(3)として、R及びRが水素原子である構成単位を含むことが好ましい。
【0042】
(式(4)で表される構成単位)
式(4)で表される構成単位は以下のとおりである。
【化10】
式(4)中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は1価の有機基である。
上記の1価の有機基の具体的な例は、式(3)における1価の有機基と同様である。
なお、式(4)においてR及びRが上記の飽和炭化水素基である場合、R及びRが互いに結合して環状構造を形成してもよい。上記環状構造は特に制限されない。
また、上記COPが構成単位(4)を含む場合、上記COPは複数種の構成単位(4)を含んでもよい。
【0043】
(式(5)で表される構成単位)
式(5)で表される構成単位は以下のとおりである。
【化11】
式(5)中、Rは水素原子又は1価の有機基である。
上記の1価の有機基の具体的な例は、式(3)における1価の有機基と同様である。
は水素原子であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
なお、上記COPは複数種の構成単位(5)を含んでもよい。
【0044】
上記COP(例えば、無変性のCOP)は、例えば、単量体(3)及び/又は単量体(4)と単量体(5)とを、メタロセン触媒の存在下で共重合することによって製造することができる。
上記COP(例えば、無変性のCOP)としては、具体的には例えば、三井化学株式会社製APEL(アペル)、ポリプラスチック株式会社製TOPAS(トパス)が挙げられる。
【0045】
(変性シクロオレフィンポリマー)
上記シクロオレフィンポリマーは、本発明の効果(特に耐マイグレーション性)がより優れ、得られる膜の密着性が優れるという観点から、上述のとおり、上記シクロオレフィンポリマー(例えば、ポリプラスチックス社製TOPASのような無変性のCOP)を式(6)で表される化合物B及び/又は式(7)で表される化合物Cで変性した変性シクロオレフィンポリマーを含むことが好ましい。
上記化合物B、Cはそれぞれ上記シクロオレフィンポリマー(例えばポリプラスチックス社製TOPASのような、無変性のCOP)を変性する際の変性剤として機能することができる。
なお、上記COPを化合物Bで変性する場合、複数種の化合物Bを使用してもよい。化合物Cについても同様である。
【0046】
化合物Bは下記式(6)で表される化合物である。
【化12】
式(6)中、Qは-O-又は-NH-である。
【0047】
本明細書において、化合物Bによって上記COPに導入されうる変性基を変性基Bとも称する。
化合物Bによって上記COPに導入されうる変性基Bは、例えば、下記式(6-1)で表すことができる。式(6-1)中のQは式(6)のQと同様である。式(6-1)中の*は結合点を表す。
【化13】
上記COP(原料)における変性基Bの導入位置は特に制限されない。変性基Bは上記COP(原料)と直接又は有機基を介して結合することができる。上記有機基は特に制限されない。
【0048】
化合物Cは下記式(7)で表される化合物である。
【化14】
式(7)中、Rはそれぞれ独立してメチル基又はエチル基である。式(7)中、3つのRは同じであっても、異なってもよい。
【0049】
本明細書において、化合物Cによって上記COPに導入されうる変性基を変性基Cとも称する。
化合物Cによって上記COPに導入されうる変性基Cは、例えば、下記式(7-1)で表すことができる。式(7-1)中のRは式(7)のRと同様である。式(7-1)中の*は結合点を表す。
【化15】
上記COP(原料)における変性基Cの導入位置は特に制限されない。変性基Cは上記COP(原料)と直接又は有機基を介して結合することができる。上記有機基は特に制限されない。
【0050】
・変性シクロオレフィンポリマーの含有量
上記ポリマー(特定のポリマー)が上記COPを含み、上記COPが変性シクロオレフィンポリマーを含む場合、変性シクロオレフィンポリマーの含有量は、本発明の効果(特に耐マイグレーション性)がより優れ、密着性が優れるという観点から、上記COP中の50~100質量%であることが好ましい。
【0051】
上記COPを化合物B及び/又は化合物Cで変性する際に使用される化合物B及び/又は化合物Cの量(化合物B、Cを併用する場合はこれらの合計量)は、上記COP(原料としてのCOP。例えば、無変性のCOP)100質量部に対して0.1~20質量部であることが好ましく、1~5質量部がより好ましい。
【0052】
・多官能モノマーから導かれる構成単位の含有量
上記ポリマー(特定のポリマー)において、多官能モノマーから導かれる構成単位の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、上記ポリマー(特定のポリマー)中の0質量%以上10質量%未満であることが好ましく、0質量%以上2質量%未満であることがより好ましい。
上記の多官能モノマーは、エチレン性不飽和結合を1分子当たり複数有し、単量体(1)~(5)のいずれかと共重合可能なモノマーを意味する。エチレン性不飽和結合としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロキシ基が挙げられる。
上記の多官能モノマーは特に制限されないが、具体的には例えば、ポリオキシアルキレンジオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのジ、トリ又はテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのジ又はトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0053】
[イオン捕捉剤]
本発明の樹脂組成物は、イオン捕捉剤を含有する。
イオン捕捉剤は、イオンを捕捉する機能を有する化合物である。
イオン捕捉剤は、カチオン又はアニオンを捕捉することができる。イオン捕捉剤は、少なくともカチオン(具体的には例えば、銅イオン、銀イオン、アルミニウムイオン)を捕捉することが好ましい態様として挙げられる。
【0054】
上記イオン捕捉剤は、本発明の効果(特に耐マイグレーション性)がより優れるという観点から、リン酸ジルコニウム系化合物及び/又はハイドロタルサイト化合物を含むことが好ましい。
【0055】
(リン酸ジルコニウム系化合物)
本発明の樹脂組成物がイオン捕捉剤として含有しうるリン酸ジルコニウム系化合物は、ジルコニウムのリン酸塩である。
リン酸ジルコニウム系化合物は、カチオンを捕捉することができる。
リン酸ジルコニウム系化合物は、層状であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
リン酸ジルコニウム系化合物としては、例えば、下記式〔1〕で表される化合物が挙げられる。
Zr1-xHf(PO・nHO 〔1〕
式〔1〕において、aおよびbは3b-a=4を満たす正数であり、bは2<b≦2.1であり、xは0<x<1の正数であり、nは0≦n≦2の正数である。
上記xは、0<x≦0.2であってもよい。
【0056】
リン酸ジルコニウム系化合物の好ましい具体例として、以下のものがある。
Zr0.99Hf0.012.03(PO2.01・0.05H
Zr0.99Hf0.012.06(PO2.02・0.05H
Zr0.99Hf0.012.12(PO2.04・0.05H
Zr0.99Hf0.012.24(PO2.08・0.05H
Zr0.98Hf0.022.03(PO2.01・0.05H
Zr0.98Hf0.022.06(PO2.02・0.05H
Zr0.98Hf0.022.12(PO2.04・0.05H
Zr0.98Hf0.022.24(PO2.08・0.05H
Zr0.97Hf0.032.03(PO2.01・0.05H
Zr0.94Hf0.062.03(PO2.01・0.05H
Zr0.9Hf0.12.03(PO2.01・0.05H
【0057】
(ハイドロタルサイト化合物)
本発明の樹脂組成物がイオン捕捉剤として含有しうるハイドロタルサイト化合物は特に制限されない。例えば従来公知のハイドロタルサイト化合物が挙げられる。
ハイドロタルサイト化合物は、アニオンを捕捉することができる。
【0058】
ハイドロタルサイト化合物としては、粉末X線回折パターンにおいてハイドロタルサイト化合物のピーク、つまり、格子面[0 0 6]、[0 0 12]、[0 2 4]、[0 2 10]、[1 2 5]面に相当する反射ピークを有するハイドロタルサイト化合物が挙げられる。
上記ハイドロタルサイト化合物は、粉末X線回折パターンにおいてハイドロタルサイト化合物のピークを有し、2θ=11.4°~11.7°におけるピーク強度が3,500cps以上で、かつ、BET比表面積が30m/gを超えることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0059】
また、ハイドロタルサイト化合物としては、例えば、下記式(1)で表されるハイドロタルサイト化合物が挙げられる。
MgAl(OH)(CO・nHO (1)
式(1)において、a、b、c、およびdは正数であり、2a+3b-c-2d=0を満たす。また、nは水和の数を示し、0または正数である。
【0060】
ハイドロタルサイト化合物としては、例えば、下記式のものが挙げられる。
Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、MgAl1.5(OH)12.5CO・3.5H
MgAl(OH)16CO・4HO、Mg4.2Al(OH)12.4CO・3.5H
Mg4.3Al(OH)12.6CO・3.5H
Mg2.5ZnAl(OH)13CO・3.5H
Mg4.2Al(OH)12.4CO・2.5H
Mg4.2Al(OH)12.4CO・H
MgAl(OH)12CO・3.5H
【0061】
(イオン捕捉剤の含有量)
本発明の樹脂組成物は、イオン捕捉剤を、本発明の効果がより優れるという観点から、本発明の樹脂組成物全量中の0.01~10質量%で含有することが好ましく、0.1~5.0質量%で含有することがより好ましい。
【0062】
[溶剤]
本発明の樹脂組成物は、溶剤を含有する。
本発明の樹脂組成物が含有する溶剤は、上記ポリマー(特定のポリマー)及びイオン捕捉剤を溶解及び/又は分散させうるものであれば特に制限されない。
溶剤としては、例えば、フッ素系溶剤;炭化水素系有機溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類が挙げられる。
【0063】
フッ素系溶剤としては、ハイドロフルオロカーボン(HFC)またはハイドロフルオロエーテル(HFE)が挙げられる。使用可能なフッ素系溶剤の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0064】
m-キシレンヘキサフルオリド
p-キシレンヘキサフルオリド
CFCHCFCH
CFCHCF
13OCH
13OC
13CHCH
OCH
OC
13
CFHCFCHOCFCF
CFCFHCFHCFCH
CF(OCFCF(OCFOCF
17OCH
15OCH
13OCH
OCH
OC
CHCH
CFCHOCFCFCF
CFCF(CHCF)CF(OCH)CFCF
CFHCFOCHCF
(上記例示中、添字mおよびnは、それぞれ独立に、1~20の整数を表す。)
およびこれらの混合物
混合物としては、例えば、COCHCH(エチルノナフルオロブチルエーテル)の異性体である、CF(CFOCと(CFCFCFOCとの混合物が挙げられる。
【0065】
炭化水素系有機溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の鎖状の脂肪族炭化水素が挙げられる。
【0066】
(溶剤の含有量)
溶剤の含有量は、本発明の樹脂組成物から、上記ポリマー(特定のポリマー)及びイオン捕捉剤の含有量を除いた量とすることができる。溶剤の含有量は、例えば、本発明の樹脂組成物全量中の60~98.99質量%とすることができる。
なお、上記溶剤は、上記ポリマー(特定のポリマー)を製造する際に使用された重合溶媒を含んでもよい。上記重合溶媒としては、上記溶剤と同様のものが挙げられる。
【0067】
(添加剤)
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、pH調整剤、防錆剤、染料、染料の安定剤、難燃剤、消泡剤、帯電防止剤が挙げられる。
【0068】
本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂(エポキシ基を2個以上有する化合物)を含まないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0069】
(製造方法)
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に制限されない。例えば、上記の必須成分、及び更に含有してもよい添加剤を混合することによって、本発明の樹脂組成物を製造する方法が挙げられる。
上記のようにして上記ポリマー(特定のポリマー)等を樹脂として含有する本発明の樹脂組成物を製造することができる。
【0070】
(用途)
本発明の樹脂組成物は、例えば、電子基板の表面を被覆するためのコーティング剤として使用することができる。
上記電子基板としては、例えば、銅、銀及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、配線又は電極を有するものが挙げられる。
【0071】
(使用方法)
本発明の樹脂組成物の使用方法としては例えば、電子基板の表面に本発明の樹脂組成物を塗布し、溶剤を乾燥させることによって、本発明の樹脂組成物から膜を形成することができる。上記膜には少なくとも上記ポリマー(特定のポリマー)及びイオン捕捉剤が含まれる。上記塗布又は上記乾燥の手段は特に制限されない。例えば従来公知の方法が挙げられる。上記塗布の方法としては、例えば、浸漬、スピンコート、ジェットディスペンサーを用いた方法が挙げられる。本発明の樹脂組成物を乾燥する際の温度としては、例えば、20~200℃とすることができる。
【実施例0072】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
以下、「wt%」は「質量%」を意味する。
【0073】
[実施例1]
密閉容器に、単量体として2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートを20.0wt%、重合溶剤としてエチルノナフルオロブチルエーテル(異性体含む)を79.8wt%、重合開始剤としてジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオナート)を0.2wt%加え、窒素バブリングを1分間行って、重合溶液を準備した。その後、振とう恒温槽に入れ、70℃で18時間以上、振とう数120~130min-1の条件で重合させた。
第1表の配合組成(質量%)欄に示すように、得られた重合体溶液の重合体濃度が樹脂組成物中の10.0wt%、イオン捕捉剤濃度が樹脂組成物中の3.0wt%になるように、濃度調製用溶剤としてエチルノナフルオロブチルエーテル(異性体含む)を、イオン捕捉剤としてIXEPLAS-A1(リン酸ジルコニウム及びハイドロタルサイトの混合物。東亞合成社製。以下同様)をそれぞれ加え、樹脂組成物1を調製した。
得られた樹脂組成物1を、バーコートを用いて、Line/Space=318μm/318μmのJIS II型櫛形基板(Cu電極を有する。以下同様)にWet膜厚150μmに塗布し、120℃で5分間加熱乾燥させた。同様の塗布操作を再度行い、被膜付き基板1を作製した。
【0074】
[実施例2]
単量体としてノルマルブチルメタクリレート、重合溶剤及び濃度調製用溶剤として酢酸ブチルに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物2を調製し、被膜付き基板2を作製した。
【0075】
[実施例3]
還流管付きフラスコに、エチレン-ノルボルネン共重合体としてTOPAS5013S-04(ポリプラスチック社製)を19.9wt%、溶剤としてエチルシクロヘキサンを79.4wt%加えた後、攪拌により、完全に溶解させた。その後、有機過酸化物としてジ-tert-ブチルパーオキシドを0.4wt%、変性剤として無水マレイン酸を0.3wt%を加え、120℃で6時間以上反応させた。
第1表の配合組成(質量%)欄に示すように、得られた重合体溶液の重合体濃度が樹脂組成物中の10.0wt%、イオン捕捉剤濃度が樹脂組成物中の3.0wt%になるように、濃度調製用溶剤としてエチルシクロヘキサンを、イオン捕捉剤としてIXEPLAS-A1をそれぞれ加え、樹脂組成物3を調製した。
得られた樹脂組成物3を、バーコートを用いて、Line/Space=318μm/318μmのJIS II型櫛形基板にWet膜厚150μmに塗布し、150℃で5分間加熱乾燥させた。同様の塗布操作を再度行い、被膜付き基板3を作製した。
【0076】
[実施例4]
イオン捕捉剤濃度を樹脂組成物中の5.0wt%に変更し、濃度調製用溶剤としてエチルシクロヘキサンの添加量を樹脂組成物中の85.0wt%に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物4を調製し、被膜付き基板4を作製した。
【0077】
[比較例1]
IXEPLAS-A1(東亞合成社製)を加えなかったこと以外は、実施例1と同様の方法により比較樹脂組成物1を調製し、比較被膜付き基板1を作製した。
【0078】
[比較例2]
IXEPLAS-A1(東亞合成社製)を加えなかったこと以外は、実施例2と同様の方法により比較樹脂組成物2を調製し、比較被膜付き基板2を作製した。
【0079】
[比較例3]
IXEPLAS-A1(東亞合成社製)を加えなかったこと以外は、実施例3と同様の方法により比較樹脂組成物3を調製し、比較被膜付き基板3を作製した。
【0080】
[比較例4]
容器に、第1表の配合組成(質量%)欄に示すように、単官能単量体としてジシクロペンタニルアクリレートを20.7wt%、ジシクロペンタニルメタクリレートを4.8wt%、イソボルニルアクリレートを31.8wt%、シクロヘキシルメタクリレートを4.8wt%、二官能単量体としてライトアクリレート9EG-A(下記構造。共栄社化学社製)を15.9wt%、多官能単量体としてアロニックスM-306(下記構造。東亞合成社製)を9.5wt%、Omnirad 379EG(光重合開始剤。BASF社製)を9.5wt%、イオン捕捉剤としてIXEPLAS-A1(東亞合成社製)を3.0wt%加え、光硬化性表面処理組成物(比較)を調製した。
得られた光硬化性表面処理組成物(比較)を、バーコートを用いて、Line/Space=318μm/318μmのJIS II櫛形基板にWet膜厚15μmに塗布し、UV硬化装置MDH2501-01(マリオネットワーク社製)で、波長250~450nmの紫外線を2分間照射し、硬化させた。その後、150℃で60分間加熱乾燥させ、比較被膜付き基板4を作製した。
【0081】
ライトアクリレート9EG-Aの構造式は以下のとおりである。
【化16】
【0082】
アロニックスM-306の構造式は以下のとおりである。
【化17】
【0083】
[評価]
上記のとおり作製した各被膜付き基板について以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
[ウォータードロップ試験(耐マイグレーション性)]
図1は、本発明におけるウォータードロップ試験に使用された回路を模式的に表す回路図である。
図1に示すように、直流電源、被膜付き基板2(なお上記の被膜付き基板2の「2」は図1における符号を表す。)、金属皮膜抵抗3(100kΩ)、電圧計4(GL7000、グラフテック社製)を接続して回路1を作製し、100Vの直流電圧を印加した。その後、被膜付き基板2上に1wt%NaCl水溶液を200μL滴下し、上記滴下をした時から90V(1×10Ω相当)以下に電圧降下するまでの時間を計測した。
次の基準により、耐マイグレーション性を評価した。
◎・・・90V以下に電圧降下するまでの時間が2時間を超える
○・・・90V以下に電圧降下するまでの時間が1時間を超え、2時間以下である
×・・・90V以下に電圧降下するまでの時間が1時間以下である
本発明において、上記のとおり測定された、90V以下に電圧降下するまでの時間が1時間を超えた場合、耐マイグレーション性が優れると評価した。
一方、90V以下に電圧降下するまでの時間が1時間以下であった場合、耐マイグレーション性が悪いと評価した。
【0084】
[屈曲性試験(耐屈曲性)]
JIS K5600-5-1(円筒形マンドレル法)に基づいて、屈曲性試験を評価した。JIS II型櫛形基板を、厚さ0.5mmの銅板(C1100P)に変更したこと以外は、各実施例及び比較例と同様の方法により、被膜付き銅板(屈曲性試験用)を作製し、上記の被膜付き銅板(屈曲性試験用)を屈曲性試験に用いた。
次の基準により、耐屈曲性を評価した。
◎・・・2mmのマンドレル径で被膜の割れ及び剥がれが生じない
○・・・3mmのマンドレル径で被膜の割れ及び剥がれが生じないが、2mmのマンドレル径で被膜の割れ及び/又は剥がれが生じる
×・・・3mm以上のマンドレル径で被膜の割れ及び/又は剥がれが生じる
本発明において、3mmのマンドレル径で被膜の割れ及び剥がれが生じなかった場合、耐屈曲性が優れると評価した。
一方、3mm以上のマンドレル径で被膜の割れ及び/又は剥がれが生じた場合、耐屈曲性が悪いと評価した。
【0085】
・水接触角測定(撥水性)
JIS II櫛形基板を、ガラス板に変更したこと以外は、各実施例及び比較例と同様の方法により、被膜付きガラス板を作製した。上記の被膜付きガラス板に水(4μL)を着滴させ、自動接触角測定装置DMo-501(協和界面科学社製)を用いて、水接触角(単位:度)を測定した。
本発明において、水接触角が70度以上であった場合、樹脂組成物から得られる膜の撥水性に実用上の問題がないものとする。水接触角が70度より大きい程、撥水性が優れ好ましい。
【0086】
・水転落角測定(滑水性)
JIS II櫛形基板を、ガラス板に変更したこと以外は、各実施例及び比較例と同様の方法により、被膜付きガラス板を作製した。上記の被膜付きガラス板に水(20μL)を着滴させ、自動接触角測定装置DMo-501(協和界面科学社製)を用いて、滑落角(単位:度)を測定した。滑落角を測定する際の傾斜速度は約1.5°/秒とし、水の液滴が移動を始めた際の角度を転落角(度)とした。
本発明において、水転落角は特に制限されないが、転落角が小さい程、樹脂組成物から得られる膜の滑水性が優れる。
なお、「-」は水転落角が測定されなかったことを示す。
【0087】
【表1】
【0088】
第1表の結果から、イオン捕捉剤を含有しない比較例1~3は耐マイグレーション性が悪かった。
特定のポリマーを含有しない比較例4は耐屈曲性が悪かった。
【0089】
一方、本発明の樹脂組成物は、所望の効果を示すことが確認された。
【0090】
また、本明細書では、本発明の樹脂組成物から得られる膜について、以下のとおり、密着性も評価された。密着性の評価方法、評価基準、及び評価結果は以下のとおりである。
【0091】
・クロスカット法(密着性)
JIS K5600-5-6(クロスカット法)に基づいて、密着性試験を評価した。JIS II型櫛形基板を、厚さ0.5mmの銅板(C1100P)に変更したこと以外は、上述の実施例1~3と同様の方法により、被膜付き基板(クロスカット評価用)を作製した。次の基準により、クロスカットの評価結果をもとに密着性を評価した。
・・クロスカットの評価基準
分類0:カットの縁が完全に滑らかで,どの格子の目にもはがれがない。
分類1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは,明確に5%を上回ることはない。
分類2:塗膜がカットの縁に沿って,及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
分類3:塗膜がカットの縁に沿って,部分的又は全面的に大はがれを生じており,及び/又は目のいろいろな部分が,部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは,明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
分類4:塗膜がカットの縁に沿って,部分的又は全面的に大はがれを生じており,及び/又は数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは,明確に65%を上回ることはない。
分類5:全面がはがれる。
分類6:クロスカット時にはがれる。
・・密着性の評価基準
本発明において、クロスカット法による評価結果が分類0~4であった場合、得られる膜の密着性が優れると評価した。なかでも、上記分類が分類0~1であった場合、得られる膜の密着性が非常に優れる。
一方、クロスカット法による評価結果が分類5又は6であった場合、得られる膜の密着性が悪いと評価した。
・・密着性の評価結果
上記クロスカット法による評価の結果、実施例3は、クロスカット法の評価が分類0であり、密着性が非常に優れた。
実施例1、2は、クロスカットの評価が分類4であり、密着性が優れた。
【符号の説明】
【0092】
1 回路
2 被膜付き基板
3 金属皮膜抵抗
4 電圧計
図1