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特開2024-122364情報処理装置、オペレーション支援方法及びオペレーション支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122364
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】情報処理装置、オペレーション支援方法及びオペレーション支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
G05B23/02 302Y
G05B23/02 302R
G05B23/02 301Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029871
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新堂 陽平
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223AA05
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB07
3C223FF02
3C223FF03
3C223FF04
3C223FF12
3C223FF13
3C223FF42
3C223FF45
3C223FF52
3C223FF53
3C223GG01
3C223HH02
3C223HH04
3C223HH17
3C223HH29
(57)【要約】
【課題】熟練オペレータと同等の結果を得られるオペレーションの実行を支援することを課題とする。
【解決手段】情報処理装置10は、プラントで発生する逸脱事象ごとにOODAループに含まれる要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報が定義された技能データを記憶する記憶部と、逸脱事象が検知された場合、技能データのうち、検知された逸脱事象に対応付けられた要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報をオペレータ端末に提供する提供部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントで発生する逸脱事象ごとにOODA(Observe Orient Decide Act)ループに含まれる要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報が定義された技能データを記憶する記憶部と、
逸脱事象が検知された場合、前記技能データのうち、検知された逸脱事象に対応付けられた要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報をオペレータ端末に提供する提供部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記技能データは、前記OODAループに含まれる逸脱検知のステップの技能情報をさらに含み、
前記提供部は、前記技能データのうち、検知された逸脱事象に対応付けられた逸脱検知、要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報をオペレータ端末に提供する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記提供部は、前記逸脱検知、前記要因特定、前記対策決定および前記対策実行の各ステップの技能情報を前記各ステップに対応するインタフェイスを介して提供する、
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記逸脱事象ごとにOODAループに含まれる要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報の定義を受け付ける受付部をさらに有する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記受付部は、前記要因特定のステップの技能情報として、前記逸脱事象の要因を特定するFTA(Fault Tree Analysis)の定義を受け付ける、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記受付部は、前記要因特定のステップの技能情報として、前記逸脱事象の要因ごとに前記プラントにおけるプロセスを制御する制御システムにおける故障モードの定義を受け付ける、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記受付部は、前記対策決定のステップの技能情報として、前記プラントにおけるプロセスを制御する制御システムにおける故障モードごとに前記故障モードの回復に用いるSOP(Standard Operating Procedure)の定義を受け付ける、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記受付部は、前記対策決定のステップの技能情報として、前記SOPの個数の絞り込みに用いるデシジョンサポートのノウハウの定義を受け付ける、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項9】
逸脱事象が検知された場合、プラントで発生する逸脱事象ごとにOODA(Observe Orient Decide Act)ループに含まれる要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報が定義された技能データを記憶する記憶部に記憶された技能データのうち、検知された逸脱事象に対応付けられた要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報をオペレータ端末に提供する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とするオペレーション支援方法。
【請求項10】
逸脱事象が検知された場合、プラントで発生する逸脱事象ごとにOODA(Observe Orient Decide Act)ループに含まれる要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報が定義された技能データを記憶する記憶部に記憶された技能データのうち、検知された逸脱事象に対応付けられた要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報をオペレータ端末に提供する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするオペレーション支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、オペレーション支援方法及びオペレーション支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントでは、プロセスデータを用いた運転制御が行われている。例えば、DCS(Distributed Control Systems)やPLC(Programmable Logic Controller)などの制御システムにより、プロセスの計測値を設定値に近付けるPID(Proportional Integral Differential)が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-201024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のPID制御では、4M(Machine Method Man Material)の変化に起因する逸脱事象により変動する最適値に設定値を追従させることが難しい。それ故、プラントの製造結果に対応するPQCDS(Products Quality Cost Delivery Safety)の悪化を抑制することは難しい側面がある。
【0005】
このため、上記の逸脱事象には、プラントを運転するオペレータがプラントの挙動、例えばリアルタイムトレンドグラフを目視で追いかけながら、自身の経験と照らし合わせることで、プラントの運転に関するオペレーションを行っている現状がある。
【0006】
このような経験は、オペレータ固有のもの、すなわち、属人的なノウハウであるので、未熟なオペレータに精密に伝えることが難しい。それ故、オペレータの誰しもが熟練オペレータと同じ結果を得られるオペレーションを実行できるとは限らない。この結果、PQCDSの悪化を抑制できないばかりか、PQCDSがバラつくことを抑制することも困難な側面がある。
【0007】
本発明は、熟練オペレータと同等の結果を得られるオペレーションの実行を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面にかかる情報処理装置は、プラントで発生する逸脱事象ごとにOODA(Observe Orient Decide Act)ループに含まれる要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報が定義された技能データを記憶する記憶部と、逸脱事象が検知された場合、前記技能データのうち、検知された逸脱事象に対応付けられた要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報をオペレータ端末に提供する提供部と、を有する。
【0009】
本発明の一側面にかかるオペレーション支援方法では、逸脱事象が検知された場合、プラントで発生する逸脱事象ごとにOODA(Observe Orient Decide Act)ループに含まれる要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報が定義された技能データを記憶する記憶部に記憶された技能データのうち、検知された逸脱事象に対応付けられた要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報をオペレータ端末に提供する、処理をコンピュータが実行する。
【0010】
本発明の一側面にかかるオペレーション支援プログラムは、逸脱事象が検知された場合、プラントで発生する逸脱事象ごとにOODA(Observe Orient Decide Act)ループに含まれる要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報が定義された技能データを記憶する記憶部に記憶された技能データのうち、検知された逸脱事象に対応付けられた要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報をオペレータ端末に提供する、処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
一実施形態によれば、熟練オペレータと同等の結果を得られるオペレーションの実行を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】情報処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2】4M事象の一例を示す図である。
図3】オペレーション支援機能のロールの一例を示す図である。
図4】Observeの処理手順を示すフローチャートである。
図5】Orientの処理手順を示すフローチャートである。
図6】Decideの処理手順を示すフローチャートである。
図7】Actの処理手順を示すフローチャートである。
図8】支援情報のインタフェイスの一例を示す図である。
図9】支援情報のインタフェイスの一例を示す図である。
図10】支援情報のインタフェイスの一例を示す図である。
図11】支援情報のインタフェイスの一例を示す図である。
図12】支援情報のインタフェイスの一例を示す図である。
図13】ハードウェア構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本願に係る情報処理装置、オペレーション支援方法及びオペレーション支援プログラムの実施形態について説明する。各実施形態には、1つの例や側面を示すに過ぎず、このような例示により数値や機能の範囲、利用シーンなどは限定されない。そして、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0014】
<全体構成>
図1は、情報処理装置10の機能構成例を示すブロック図である。図1に示す情報処理装置10は、逸脱事象に対応するオペレーションの属人性を解消する側面から、熟練オペレータと同等の結果を得られるオペレーションの実行を支援するオペレーション支援機能を提供するものである。
【0015】
このようなオペレーション支援機能の一環として、熟練オペレータが持つ属人的なノウハウを整理する整理機能、ノウハウを利活用する利活用機能、利活用を支援する利活用支援機能などが提供され得る。
【0016】
図1に示すように、情報処理装置10は、各種システム2と、スタッフ端末30およびオペレータ端末50と通信可能に接続され得る。例えば、情報処理装置10および各種システム2の間では、専用に構築された制御バスを介して、工業用無線規格に対応する通信が実施されてよい。また、情報処理装置10と、スタッフ端末30やオペレータ端末50との間では、LAN(Local Area Network)などの通信網を介して、有線または無線の通信が実施されてよい。
【0017】
各種システム2は、プラント1から4M情報を取得するデータ取得対象のシステムの例であり、プラント1に関する任意のシステムであってよい。例えば、図1には、データ取得対象のシステムの1つとして、4MのうちMethodに対応するデータ取得が可能であるプロセス制御システム3を例示する。プロセス制御システム3は、プラント1における生産工程、いわゆるプロセスを制御するシステムである。一例として、プロセス制御システム3は、DCS(Distributed Control Systems)やPLC(Programmable Logic Controller)として構築され得る。DCSを例に挙げれば、プラント1のフィールドには、センサなどの測定機器やアクチュエータなどの操作機器などがフィールド機器(不図示)として設置される。このようなフィールド機器を制御するコントローラがプロセスの制御単位である制御ループ、例えば測定、制御演算および操作などのループごとに分散して配置される。なお、図1には、プロセス制御システム3を例示したが、Method以外の残りの3Mについても各種システム2に含まれる別のシステムからデータ取得が可能である。
【0018】
スタッフ端末30およびオペレータ端末50は、プロセス制御システム3等との間でHMI(Human Machine Interface)として機能するコンピュータにより実現される。これらスタッフ端末30およびオペレータ端末50の各々は、スタッフ、あるいはオペレータにより使用される。ここで言う「スタッフ」とは、プラント1の運転設計などを担当する人員を指す。また、「オペレータ」とは、プラント1の運転に関するオペレーションを担当する人員を指す。
【0019】
なお、図1には、スタッフ端末30およびオペレータ端末50の各々が個別のコンピュータとして実現される例を挙げるが、スタッフおよびオペレータに提供するHMI機能が1つのコンピュータにより実現されてもよい。この場合、HMI機能は、スタッフおよびオペレータの各々のアカウントを用いてログインが可能であるマルチユーザ対応のコンピュータにより実現されてよい。さらに、図1には、上記のHMI機能が情報処理装置10とは別のコンピュータにより提供される例を挙げたが、情報処理装置10が有するユーザインタフェイスにより上記のHMI機能が実現されてもよい。
【0020】
<情報処理装置10の構成>
次に、本実施形態に係る情報処理装置10の機能構成例について説明する。図1には、情報処理装置10が有するオペレーション支援機能に関連するブロックが模式化されている。図1に示すように、情報処理装置10は、通信制御部11と、記憶部13と、制御部14とを有する。なお、図1には、上記のオペレーション支援機能に関連する機能部が抜粋して示されているに過ぎず、図示以外の機能部が情報処理装置10に備わることとしてもよい。
【0021】
通信制御部11は、プロセス制御システム3やスタッフ端末30、オペレータ端末50などの他の装置との間の通信を制御する機能部である。一例として、通信制御部11は、ネットワークインタフェイスカードにより実現され得る。1つの側面として、通信制御部11は、プロセス制御システム3から4M情報の一例としてプロセスデータを受け付けたり、あるいはオペレーションに対応するコマンドを出力したりすることができる。他の側面として、通信制御部11は、スタッフ端末30から熟練オペレータの逸脱回復ノウハウに関する情報を受け付けたり、あるいは逸脱事象の検知から回復までのオペレーションの実行を支援するインタフェイスをオペレータ端末50に提供したりする。
【0022】
記憶部13は、各種のデータを記憶する機能部である。一例として、記憶部13は、情報処理装置10の内部、外部または補助のストレージにより実現される。例えば、記憶部13は、技能データ13Aと、フレームワーク13Bとを記憶する。なお、技能データ13Aおよびフレームワーク13Bの説明は、参照、生成または登録が実行される場面で併せて説明することとする。
【0023】
制御部14は、情報処理装置10の全体制御を行う機能部である。例えば、制御部14は、ハードウェアプロセッサにより実現され得る。図1に示すように、制御部14は、受付部15と、開発支援部16と、提供部17とを有する。なお、制御部14は、ハードワイヤードロジックなどにより実現されてもよい。
【0024】
受付部15は、各種の情報を受け付ける処理部である。1つの側面として、受付部15は、逸脱事象ごとに、スタッフ端末30から熟練オペレータによる逸脱の検知から回復までのノウハウを受け付ける。
【0025】
ここで言う「逸脱事象」とは、4Mの変化をきっかけとした、PQCDSへの望ましくない影響を与える現象の全般を指す。このような逸脱事象のきっかけとなる4M事象の例として、図2に示す分類例を挙げる。
【0026】
図2は、4M事象の一例を示す図である。図2に示すように、製造中の逸脱事象は、原料逸脱、設備逸脱、工程逸脱、人逸脱およびE/U(End User)逸脱に分類され得る。このうち、原料逸脱は、原料品質のバラつきおよび原料品質の偏りにさらに分類され得る。また、設備逸脱は、設備の稼働停止、設備のパフォーマンス低下および設備の効率の低下にさらに分類され得る。さらに、工程逸脱は、工程のパフォーマンス低下、工程の効率低下、工程の副作用および工程のバランス乱れにさらに分類され得る。ここで言う「パフォーマンス」には、調合、反応、分離、成型および搬送などが含まれ得る。また、「効率」には、反応および分離などが含まれ得る。さらに、「副作用」には、反応および搬送が含まれ得る。また、「バランス」には、調合、反応、分離、成型および搬送などが含まれ得る。また、人逸脱は、自部署および他部署にさらに分類され得る。さらに、E/U逸脱には、想定通りの需給ギャップおよび想定外の需給ギャップにさらに分類され得る。これら製造中の逸脱に対し、適切な対処(回復操作)が実施されない場合、製造結果に対応するPQCDSの悪化を招くことになる。
【0027】
ここで、上記のノウハウは、熟練オペレータのノウハウを利活用可能な形態に整理する側面から、OODA(Observe Orient Decide Act)ループのステップ単位で分割して各ステップに対応する処理で参照される技能情報が定義される。
【0028】
図3は、オペレーション支援機能のロールの一例を示す図である。図3には、スタッフおよびオペレータの視点におけるオペレーション支援機能のロールが示されている。図3に示すように、受付部15は、逸脱事象ごとに、スタッフ端末30から熟練オペレータの逸脱回復ノウハウの定義を受け付ける。ここで挙げる「逸脱回復ノウハウ」は、技能情報の一例である。このような逸脱回復ノウハウは、一例として、(1)~(8)の全8種類に分けられるとともに、(1)~(8)の8種類の各々が利用シーンも含めて定義される。
【0029】
(1)および(2)の逸脱回復ノウハウは、OODAループのObserveのステップに対応する。例えば、(1)の逸脱回復ノウハウでは、検知方法として、プロセスデータの監視項目、監視項目に対応するプロセス値やそのトレンドから算出されるKPI(Key Performance Indicator)、さらには、KPIと比較する上限値や下限値などの閾値が定義され得る。さらに、(2)の逸脱回復ノウハウでは、逸脱事象が放置されたときのPQCDSへの影響が定義される。
【0030】
(3)および(4)の逸脱回復ノウハウは、OODAループのOrientのステップに対応する。例えば、(3)の逸脱回復ノウハウでは、逸脱事象の要因を特定するFTA(Fault Tree Analysis)、いわゆる故障の木解析が定義され得る。さらに、(4)の逸脱回復ノウハウでは、逸脱事象の要因ごとに故障モードが定義される。
【0031】
(5)および(6)の逸脱回復ノウハウは、OODAループのDecideのステップに対応する。例えば、(5)の逸脱回復ノウハウでは、故障モードごとに当該故障モードの回復に用いるSOP(Standard Operating Procedure)、いわゆる標準操作手順書が定義され得る。さらに、(6)の逸脱回復ノウハウでは、複数の回復用のSOP候補の中から1つに絞り込む際に参照されるデシジョンサポートのロジックチャートなどが定義され得る。
【0032】
(7)および(8)の逸脱回復ノウハウは、OODAループのActのステップに対応する。例えば、(7)の逸脱回復ノウハウでは、回復用のSOPの実行前のSOP補正のロジックチャートが定義され得る。さらに、(8)の逸脱回復ノウハウでは、回復用のSOPの実行中のSOP補正のロジックチャートが定義され得る。
【0033】
このように逸脱事象ごとに定義を受け付けた(1)~(8)の逸脱回復ノウハウは、受付部15により技能データ13Aとして記憶部13へ保存される。これら(1)~(8)の逸脱回復ノウハウの定義により、(1)~(8)のような逸脱回復運転の支援をオペレータに提供する。例えば、OODAループのObserveのステップ(PQCDS悪化兆候の捕捉)では、(1)逸脱事象の検知を支援し、(2)逸脱事象を放置したときのPQCDSへの影響を情報提供する。また、OODAループのOrientのステップ(逸脱事象の分析支援)では、(3)逸脱事象の要因特定を支援し、(4)逸脱事象の故障モードの抽出を支援する。さらに、OODAループのDecideのステップ(逸脱回復策の絞り込み支援)では、(5)逸脱からの回復用のSOPの候補の抽出を支援し、(6)回復用のSOPの候補からの絞り込みを支援する。また、OODAループのActのステップ(逸脱回復策の調整・実行支援)では、(7)回復策実行前のSOP補正を支援し、(8)回復策実行中のSOP支援を補正する。
【0034】
なお、ここでは、OODAループのステップごとに逸脱回復ノウハウの定義を受け付ける例を挙げたが、必ずしもOODAループの4つ全てのステップの逸脱回復ノウハウが定義されずともよい。すなわち、受付部15は、OODAループの4つのステップのうち1つまたは2つ以上の任意の組合せに対応する逸脱回復ノウハウの定義を受け付けることができる。
【0035】
開発支援部16は、逸脱事象を回復するオペレーションに関する提案を実行するソフトウェアの開発を支援する処理部である。以下、逸脱事象を回復するオペレーションに関する提案を実行するソフトウェアのことを「OPS提案ソフト」と記載する場合がある。一例として、開発支援部16は、OODAループのObserve、Orient、DecideおよびActのステップごとに当該ステップに対応する処理の手順が記述されたOPS提案ソフトのフレームワークの作成および登録を受け付ける。これにより、OPS提案ソフトのフレームワークがフレームワーク13Bとして記憶部13に保存される。
【0036】
提供部17は、逸脱事象ごとにOODAループの各ステップでプラント1のオペレーションに関する技能情報を提供する処理部である。図1に示すように、提供部17は、逸脱事象ごとに上記のOPS提案ソフトを並列して実行するソフト実行部18を有する。
【0037】
ソフト実行部18は、逸脱事象ごとに次のような処理を実行する。すなわち、ソフト実行部18は、記憶部13に記憶されたフレームワーク13Bを取得する。そして、ソフト実行部18は、記憶部13に記憶された技能データ13Aのうち、ターゲットとする逸脱事象に対応する逸脱回復ノウハウを取得する。その上で、ソフト実行部18は、フレームワークに含まれるOODAループのObserve、Orient、DecideおよびActの各ステップのうち、テンプレート部分以外の機能部品、例えばライブラリ、モジュール、あるいはAPIが参照するパラメータの部分に、逸脱回復ノウハウとして定義されたパラメータ項目およびパラメータ値を設定することにより、当該逸脱事象に対応するOPS提案ソフトを生成する。
【0038】
このように逸脱事象ごとに生成されたOPS提案ソフトが並列して実行されることにより、OODAループのObserve、Orient、DecideおよびActの各ステップに対応する処理として、図4図7に示す処理が実行される。
【0039】
図4は、Observeの処理手順を示すフローチャートである。図4に示すように、ソフト実行部18は、実行中のSOP通りの運転を継続する場合という仮定の下、QMM(Quality Management Maturity)を守ることができるか否かにより、逸脱事象が発生しているか否かを監視する(ステップS101)。より具体的には、逸脱事象ごとに設定されたKPIをプロセス制御システム3から取得したプロセスデータに基づいてリアルタイムで計算し、計算されたKPIが逸脱事象ごとに設定された閾値の範囲内であるか否かが判定される。
【0040】
このとき、逸脱事象が発生している場合(ステップS101Yes)、ソフト実行部18は、当該逸脱事象に関するアラームをオペレータ端末50に発報する(ステップS102)。このような警報により、アラームドリブンで逸脱回復対応の開始をオペレータに促すことができる。
【0041】
続いて、ソフト実行部18は、発生中の逸脱事象に対応するアラームの情報を収集してオペレータ端末50に提供する(ステップS103)。このようなステップS103では、現在の状況確認を支援する側面から、アラームの発生場所やステータスなどが出力される。さらに、過去から現在への状況確認を支援する側面から、逸脱事象ごとに定義された項目のプロセス値やKPIのトレンドなどが出力される。
【0042】
そして、ソフト実行部18は、発生中の逸脱事象による影響をオペレータ端末50に提供する(ステップS104)。このようなステップS104では、未来の状況把握を支援する側面から、技能データ13Aのうち発生中の逸脱事象に対応する(2)の逸脱回復ノウハウに定義されたPQCDSへの影響が取得される。
【0043】
ここで、オペレータは、ステップS103およびステップS104で提供された情報と、対処の必要性と、複数のアラーム出力時の優先度とに基づいてステップS102で出力されたアラームを解除するか否かを判断する。
【0044】
この結果、アラームが解除されない場合(ステップS105No)、Orientの処理に移行する。なお、アラームが解除された場合(ステップS105Yes)、ステップS101の処理へ移行する。
【0045】
図5は、Orientの処理手順を示すフローチャートである。図5に示すように、ソフト実行部18は、ObserveのステップS101で発生が検知された逸脱事象に対応するFTAを抽出する(ステップS201)。このようなステップS201では、技能データ13Aのうち発生中の逸脱事象に対応する(3)の逸脱回復ノウハウに定義されたFTAが取得される。続いて、ソフト実行部18は、ステップS201で抽出されたFTAに沿って逸脱事象の要因を分析する(ステップS202)。
【0046】
ここで、逸脱事象の要因が特定できた場合(ステップS203Yes)、ソフト実行部18は、ステップS202で特定された逸脱事象の要因に対応する故障モードを選択し(ステップS204)、Decideの処理へ移行する。このようなステップS204では、技能データ13Aのうち発生中の逸脱事象に対応する(4)の逸脱回復ノウハウで発生中の逸脱事象に対応付けられた故障モードが選択される。
【0047】
また、逸脱事象の要因が特定できない場合(ステップS203No)、オペレータによる対処療法が実施されたり、当該逸脱事象への対応をオペレータからスタッフへ引き継ぐエスカレーションが実施されたりする。
【0048】
図6は、Decideの処理手順を示すフローチャートである。図6に示すように、ソフト実行部18は、過去に発生した逸脱事象の履歴から同一または類似の逸脱事象を検索する(ステップS301)。
【0049】
続いて、ソフト実行部18は、OrientのステップS204で選択された故障モードに対応付けられたSOPのうち、ステップS301でヒットした同一または類似の逸脱事象で実行されたSOPであり、かつ回復に成功したSOPを抽出する(ステップS302)。このようなステップS302では、技能データ13Aのうち発生中の逸脱事象に対応する(5)の逸脱回復ノウハウで発生中の故障モードに対応付けられた回復用のSOPが取得される。
【0050】
そして、ソフト実行部18は、ステップS302で抽出されたSOPの候補のうち、現況で実行可能なSOPを抽出する(ステップS303)。このようなステップS303では、一例として、技能データ13Aのうち発生中の逸脱事象に対応する(6)の逸脱回復ノウハウで定義されたロジックチャートにしたがってSOPの抽出が実行される。
【0051】
その後、ソフト実行部18は、ステップS303で抽出されたSOPの候補の中から1つのSOPの選択をオペレータ端末50を介して受け付ける(ステップS304)。このとき、ソフト実行部18は、過去の逸脱事象の対策の履歴のうち閾値以上の頻度で用いられるSOPを提示したり、SOPごとに発生中の逸脱事象に対応する(6)の逸脱回復ノウハウで定義されたロジックチャートを提示したりすることができる。
【0052】
そして、ソフト実行部18は、ステップS304で選択されたSOPの製造条件と、現時点で適用中のSOPの製造条件とを比較可能にオペレータ端末50へ表示する(ステップS305)。
【0053】
ここで、ステップS305では、オペレータ端末50からSOPの実行前にSOPの補正を受け付けることができる。このとき、ソフト実行部18は、技能データ13Aのうち発生中の逸脱事象に対応する(7)の逸脱回復ノウハウで定義されたSOP補正のロジックチャートを提示することができる。この他、ソフト実行部18は、過去の逸脱事象の対策の履歴のうち逸脱事象からの回復に成功した対策の履歴で実行されたSOPの補正量を提示したり、当該当該SOPの補正量にしたがってステップS304で選択されたSOPを自動的に補正したりすることができる。
【0054】
このようにステップS305の処理が実行されることにより、回復用のSOPが確定された後、Actの処理へ移行する。
【0055】
図7は、Actの処理手順を示すフローチャートである。図7に示すように、ソフト実行部18は、DecideのステップS305で確定された回復用のSOPの実行をプロセス制御システム3へ指示する(ステップS401)。
【0056】
その後、SOPが完了するまで(ステップS402No)、下記のステップS403から下記のステップS405までの処理が実行される。すなわち、ソフト実行部18は、プロセス制御システム3からステップS401におけるSOP実行の指示後に測定されたプロセス値のトレンドの実測値を取得する(ステップS403)。例えば、ソフト実行部18は、ステップS403の処理が実行される時点からステップS401でSOPの実行が指示された時点まで遡った期間に測定されたプロセス値のトレンドを取得できる。
【0057】
続いて、ソフト実行部18は、ステップS403で取得されたプロセス値のトレンドの実測値と、ステップS401におけるSOP実行時に予測されたプロセス値のトレンドの予測値とを比較可能に表示する(ステップS404)。
【0058】
ここで、オペレータは、ステップS404の表示に基づいて、ステップS401で実行が指示されたSOPの実行を継続するか、あるいはステップS401で実行が指示されたSOPを補正するかを判断することができる。このとき、ソフト実行部18は、技能データ13Aのうち発生中の逸脱事象に対応する(8)の逸脱回復ノウハウで定義された実行中のSOP補正のロジックチャート、例えば実測値および予測値のギャップを補正する際のロジックチャートなどを提示することができる。なお、ここでは、SOPの補正がオペレータの判断により決定される例を挙げたが、ソフト実行部18は、実測値および予測値のギャップが閾値を超える場合、ステップS401で実行が指示されたSOPを実測値および予測値のギャップに基づいて自動的に補正することもできる。
【0059】
このようなオペレータによる判断の結果、SOPが補正された場合(ステップS405Yes)、ステップS401へ移行する。この場合、ソフト実行部18は、補正後のSOPの実行をプロセス制御システム3へ指示する。なお、SOPが補正されない場合(ステップS405No)、ステップS402へ移行する。
【0060】
その後、SOPが完了すると(ステップS402Yes)、ソフト実行部18は、逸脱事象から回復したか否かを判定する(ステップS406)。このとき、逸脱事象から回復した場合(ステップS406Yes)、Actの処理を終了する。なお、逸脱事象から未回復である場合(ステップS406No)、オペレータによる対処療法が実施されたり、当該逸脱事象への対応をオペレータからスタッフへ引き継ぐエスカレーションが実施されたりする。
【0061】
次に、図8図12を用いて、OODAループのObserve、Orient、DecideおよびActの各ステップで支援情報が提供される際のインタフェイスの具体例について説明する。
【0062】
図8図12は、支援情報のインタフェイスの一例を示す図である。図8図12には、上記のOPS支援ソフトを用いて逸脱事象の検知から回復までの支援情報を提供するシナリオの例として、反応工程の逸脱事象が発生する場合を挙げる。
【0063】
例えば、ObserveのステップS101で逸脱事象の発生が検知されると、ObserveのステップS102で図8に示すアラーム画面がオペレータ端末50に表示される。図8に示すように、アラーム画面では、反応工程の逸脱に関するアラームが発報される。このようなアラームの発報により、反応工程で逸脱が起きたこと、並びに、逸脱を回復する対策の実施が要求されることをオペレータに把握させることができる。
【0064】
さらに、ObserveのステップS103では、図9に示すシステム画面がオペレータ端末50に表示される。図9に示すように、状況確認画面では、メッセージ「反応抑制の遅れが発生」が表示される。これにより、反応終了後に温度を下げて反応抑制を行うが、反応抑制がいつもより遅れているという現在の状況確認を支援できる。さらに、状況確認画面では、メッセージ「QMM範囲に入らず、品質悪化および工程遅延が生じる可能性があります」が表示される。これにより、反応工程の逸脱に対処しないと、PQCDSのうちQとDに悪影響が出るので、反応工程の逸脱を放置できないという未来の状況把握を支援できる。
【0065】
また、Orientのステップでは、図10に示すシステム画面がオペレータ端末50に表示される。図10には、左側から順に、OrientのステップS201で抽出されたFTAおよびステップS202で分析された逸脱事象の分析結果を含む要因分析画面と、ステップS204で選択された故障モードを含む故障モード確認画面とが例示されている。
【0066】
図10に示す要因分析画面では、反応逸脱に対応するFTAおよびFTAによる要因分析結果(図示の太枠部分)が表示される。このようなFTAおよび要因分析結果の表示により、逸脱事象の要因が反応器の汚れの蓄積であることをオペレータに把握させることができる。さらに、故障モード確認画面では、図5に示すOrientのステップS202で特定された逸脱事象の要因に対応する故障モードが表示される。この際、過去に発生した逸脱事象の履歴から同一または類似の逸脱事象の履歴を検索し、検索にヒットした同一または類似の逸脱事象の履歴のうち回復に成功した履歴が表示される。これにより、故障モードの抽出を支援できるとともに、当該故障モードに対応する過去の成功事例を提示できる。
【0067】
さらに、Decideのステップでは、図11に示すシステム画面がオペレータ端末50に表示される。図11には、左側から順に、DecideのステップS302で抽出されたSOPの候補が表示されるSOP候補画面と、ステップS303で実行可能なSOPの抽出に用いるロジックチャートが表示されるロジックチャート画面と、過去の対策の履歴の一覧が表示される対策履歴画面とが例示されている。
【0068】
図11に示すSOP候補画面では、故障モードに対応するSOPが候補として列挙された状態で表示される。このようにSOPを列挙する場合、技能データ13Aのうち発生中の逸脱事象に対応する(5)の逸脱回復ノウハウで発生中の故障モードに対応付けられた回復用のSOPを列挙することができる他、故障モードに対応付けられた回復用のSOPのうち、同一または類似の逸脱事象で実行されたSOPであり、かつ回復に成功したSOPを列挙することができる。このようなSOP候補画面の表示により、反応工程の逸脱への対策を提示できる。
【0069】
また、図11に示すロジックチャート画面では、現況で実行可能なSOPを抽出するロジックチャートとともに、当該ロジックチャートにおけるSOPの抽出結果、すなわち図示の太枠部分が表示される。このようなロジックチャート画面の表示により、SOP候補画面で表示されたSOPの候補のうち現況で実行可能であるSOP「水量UP」を提示するとともに、当該SOP「水量UP」が現況で実行可能である根拠「水量に余剰があること」を提示できる。
【0070】
さらに、図11に示す対策履歴画面では、過去の対策の履歴の一覧が日付順に表示されている。このような対策履歴画面の表示により、過去の履歴から3回連続でSOP「水量UP」が採用されていることを提示できる。さらに、前回の清掃の実施からの水量UP累計がSOP「清掃」の判断の目安「水量UP累計5m/h」を超えないことを提示するので、清掃を実施せずに、今回の反応工程の逸脱にもSOP「水量UP」を適用することで十分であることをオペレータに把握させることができる。さらに、対策履歴画面には、上記のOPS支援ソフトによるSOPの候補の絞り込み結果として、1番~6番の6つのSOPのうち1番、2番、3番および6番の4つのSOPの候補の中からの選択を推奨できる。
【0071】
また、Actのステップでは、図12に示すシステム画面がオペレータ端末50に表示される。図12には、左側から順に、SOPの実行前に表示される実行前SOP調整画面と、SOPの実行中に表示される実行中SOP調整画面とが例示されている。図12に示す実行前SOP調整画面の表示により、類似の故障モードから回復したSOPを選択したが、今回の逸脱事象と完全一致ではないので、実行前にSOPを補正しようとするモチベーションを与えることができる。さらに、実行前SOP調整画面では、過去の類似の逸脱事象で観測されたプロセス値のトレンドと、今回の逸脱事象で観測されるプロセス値のトレンドとがグラフ表示されるので、補正のノウハウを参考にして、水量0.9で実行しようといったサジェスチョンが可能となる。さらに、図12に示す実行中SOP調整画面の表示により、想定よりも温度がさがってきているので、補正のノウハウを参考にして、水量0.85に修正しようといったサジェスチョンが可能となる。
【0072】
<効果の一側面>
上述してきたように、本実施形態にかかる情報処理装置10は、逸脱事象が検知された場合、プラント1で発生する逸脱事象ごとにOODAループに含まれる逸脱検知、要因特定、対策決定および対策実行の各ステップに対応する技能情報が定義された技能データ13Aのうち、検知された逸脱事象に対応付けられた逸脱検知、要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報をオペレータ端末に提供する。したがって、本実施形態にかかる情報処理装置10によれば、熟練オペレータと同等の結果を得られるオペレーションの実行を支援できる。これにより、熟練オペレータと同等の結果を得られるオペレーションが実行されるので、オペレーションが試行錯誤される回数が低減される結果、プロセス制御システムの処理負荷を軽減できる。
【0073】
なお、上記の実施形態では、逸脱検知、要因特定、対策決定および対策実行の全てのステップの技能情報が技能データ13Aに定義されるとともに、全てのステップの技能情報を提供する例を挙げたが、これに限定されない。例えば、記憶部13に記憶される技能データ13Aには、4つのステップのうち1つまたは2つ以上の任意の組合せに対応するステップの技能情報だけが定義されてよく、また、提供部17は、1つまたは2つ以上の任意の組合せに対応するステップの技能情報だけを提供してもよい。
【0074】
<数値等>
上記実施形態で説明した事項、例えば4M事象の種類や数、さらには、逸脱回復ノウハウの種類や数などの具体例などは、一例であり、変更することができる。また、実施形態で説明したフローチャートも、矛盾のない範囲内で処理の順序を変更することができる。
【0075】
<システム>
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、受付部15、開発支援部16および提供部17のうちいずれか1つ以上の機能部は、別々の装置で構成されていてもよい。
【0076】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散および統合して構成することができる。なお、各構成は、物理的な構成であってもよい。
【0077】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0078】
<ハードウェア>
次に、実施形態で説明したコンピュータのハードウェア構成例を説明する。図13は、ハードウェア構成例を説明する図である。図13に示すように、情報処理装置10は、通信装置10a、HDD(Hard Disk Drive)10b、メモリ10c、プロセッサ10dを有する。また、図13に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0079】
通信装置10aは、ネットワークインタフェイスカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD10bは、図1に示す機能を動作させるプログラムやDBなどを記憶する。
【0080】
プロセッサ10dは、図1に示された処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD100b等から読み出してメモリ100cに展開することで、図1等で説明した機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、情報処理装置10が有する処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ10dは、受付部15、開発支援部16および提供部17等と同様の機能を有するプログラムをHDD10b等から読み出す。そして、プロセッサ10dは、受付部15、開発支援部16および提供部17等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0081】
このように、情報処理装置10は、プログラムを読み出して実行することでオペレーション支援方法を実行する情報処理装置として動作する。また、情報処理装置10は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施形態と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施形態でいうプログラムは、情報処理装置10によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0082】
上記のプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、上記のプログラムは、任意の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。例えば、記録媒体は、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などにより実現され得る。
【0083】
<その他>
開示される技術特徴の組合せのいくつかの例を以下に記載する。
【0084】
(1)プラントで発生する逸脱事象ごとにOODA(Observe Orient Decide Act)ループに含まれる要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報が定義された技能データを記憶する記憶部と、
逸脱事象が検知された場合、前記技能データのうち、検知された逸脱事象に対応付けられた要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報をオペレータ端末に提供する提供部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【0085】
(2)前記技能データは、前記OODAループに含まれる逸脱検知のステップの技能情報をさらに含み、
前記提供部は、前記技能データのうち、検知された逸脱事象に対応付けられた逸脱検知、要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報をオペレータ端末に提供する、
(1)に記載の情報処理装置。
【0086】
(3)前記提供部は、前記逸脱検知、前記要因特定、前記対策決定および前記対策実行の各ステップの技能情報を前記各ステップに対応するインタフェイスを介して提供する、
(1)または(2)に記載の情報処理装置。
【0087】
(4)前記逸脱事象ごとにOODAループに含まれる要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報の定義を受け付ける受付部をさらに有する、
(1)~(3)のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【0088】
(5)前記受付部は、前記要因特定のステップの技能情報として、前記逸脱事象の要因を特定するFTA(Fault Tree Analysis)の定義を受け付ける、
(4)に記載の情報処理装置。
【0089】
(6)前記受付部は、前記要因特定のステップの技能情報として、前記逸脱事象の要因ごとに前記プラントにおけるプロセスを制御する制御システムにおける故障モードの定義を受け付ける、
(4)または(5)に記載の情報処理装置。
【0090】
(7)前記受付部は、前記対策決定のステップの技能情報として、前記プラントにおけるプロセスを制御する制御システムにおける故障モードごとに前記故障モードの回復に用いるSOP(Standard Operating Procedure)の定義を受け付ける、
(4)、(5)または(6)に記載の情報処理装置。
【0091】
(8)前記受付部は、前記対策決定のステップの技能情報として、前記SOPの個数の絞り込みに用いるデシジョンサポートのノウハウの定義を受け付ける、
(4)~(7)のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【0092】
(9)逸脱事象が検知された場合、プラントで発生する逸脱事象ごとにOODA(Observe Orient Decide Act)ループに含まれる要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報が定義された技能データを記憶する記憶部に記憶された技能データのうち、検知された逸脱事象に対応付けられた要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報をオペレータ端末に提供する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とするオペレーション支援方法。
【0093】
(10)逸脱事象が検知された場合、プラントで発生する逸脱事象ごとにOODA(Observe Orient Decide Act)ループに含まれる要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報が定義された技能データを記憶する記憶部に記憶された技能データのうち、検知された逸脱事象に対応付けられた要因特定、対策決定および対策実行の各ステップの技能情報をオペレータ端末に提供する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするオペレーション支援プログラム。
【符号の説明】
【0094】
1 プラント
3 プロセス制御システム
10 情報処理装置
11 通信制御部
13 記憶部
13A 技能データ
13B フレームワーク
14 制御部
15 受付部
16 開発支援部
17 提供部
18 ソフト実行部
30 スタッフ端末
50 オペレータ端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13