(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122366
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】印刷装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/21 20060101AFI20240902BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20240902BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/525
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029877
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 彰太
(72)【発明者】
【氏名】三輪 一十三
【テーマコード(参考)】
2C056
2C262
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA05
2C056EB58
2C056EC41
2C056EC42
2C056EC69
2C056EE18
2C056FA10
2C056FC02
2C056HA41
2C262AA02
2C262AA16
2C262AA18
2C262AB13
2C262BA14
2C262BA16
2C262BA19
2C262BB03
2C262BB15
2C262BC01
2C262DA06
(57)【要約】
【課題】下地層上の画像インクの滲みを低減することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置10は、下地インクを吐出する下地ヘッド20と、特色インクを含む画像インクを吐出する画像ヘッド21、22と、制御装置50と、を備え、前記制御装置50は、前記下地インクを前記下地ヘッド20から吐出して下地層Dを被印刷媒体A上に形成し、前記画像インクを前記画像ヘッド21、22から吐出して画像層Eを前記下地層D上に形成する印刷動作の印刷モードとして第1印刷モード及び第2印刷モードを有し、前記第2印刷モードで前記印刷動作を実行する場合、前記下地インクの吐出量、前記画像インクの吐出量、又は、前記下地インクの吐出量及び前記画像インクの吐出量を、前記第1印刷モードよりも少なくする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地インクを吐出する下地ヘッドと、
特色インクを含む画像インクを吐出する画像ヘッドと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記下地インクを前記下地ヘッドから吐出して下地層を被印刷媒体上に形成し、前記画像インクを前記画像ヘッドから吐出して画像層を前記下地層上に形成する印刷動作の印刷モードとして第1印刷モード及び第2印刷モードを有し、
前記第2印刷モードで前記印刷動作を実行する場合、前記下地インクの吐出量、前記画像インクの吐出量、又は、前記下地インクの吐出量及び前記画像インクの吐出量を、前記第1印刷モードよりも少なくする、
印刷装置。
【請求項2】
前記画像インクは第1画像インク及び第2画像インクを有し、
前記画像ヘッドは、前記第1画像インクを吐出する第1画像ヘッド、及び、前記第1画像ヘッドよりも前記下地ヘッドの近くに位置し且つ前記第2画像インクを吐出する第2画像ヘッドを有し、
前記画像層は、前記第2画像インクにより形成されずに前記第1画像インクにより形成される第1画像領域、及び、前記第2画像インクにより形成される第2画像領域を有し、
前記下地層は、前記第1画像領域に対応する第1下地領域、及び、前記第2画像領域に対応する第2下地領域を有し、
前記制御装置は、
前記第2印刷モードで前記印刷動作を実行する場合、前記第2下地領域を形成する前記下地インクの吐出量、前記第2画像領域を形成する前記第2画像インクの吐出量、又は、前記第2下地領域を形成する前記下地インクの吐出量及び前記第2画像領域を形成する前記第2画像インクの吐出量を、前記第1印刷モードよりも少なくする、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記画像インクは、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びブラックインクを含む基本色インク、及び、前記基本色インクとは異なる前記特色インクを有し、
前記画像ヘッドは、前記基本色インクを吐出する基本色ヘッド、及び、前記特色インクを吐出する特色ヘッドを有し、
前記画像層は、前記特色インクにより形成されずに前記基本色インクにより形成される第3画像領域、及び、前記特色インクにより形成される第4画像領域を有し、
前記下地層は、前記第3画像領域に対応する第3下地領域、及び、前記第4画像領域に対応する第4下地領域を有し、
前記制御装置は、
前記第2印刷モードで前記印刷動作を実行する場合、前記第4下地領域を形成する前記下地インクの吐出量、前記第4画像領域を形成する前記特色インクの吐出量、又は、前記第4下地領域を形成する前記下地インクの吐出量及び前記第4画像領域を形成する前記特色インクの吐出量を、前記第1印刷モードよりも少なくする、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第2印刷モードで前記印刷動作を実行する場合、
前記印刷動作の対象の画像の色相に応じた量の前記下地インクを前記下地ヘッドから吐出させる、
前記画像の色相に応じた量の前記画像インクを前記画像ヘッドから吐出させる、又は、
前記画像の色相に応じた量の前記下地インクを前記下地ヘッドから吐出させ、且つ、前記画像の色相に応じた量の前記画像インクを前記画像ヘッドから吐出させる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記画像層を形成する前記画像インクに含まれる前記特色インクの量を取得し、
前記第2印刷モードで前記印刷動作を実行する場合、
前記画像層における前記特色インクの量に応じた量の前記下地インクを前記下地ヘッドから吐出させる、
前記画像層における前記特色インクの量に応じた量の前記画像インクを前記画像ヘッドから吐出させる、又は、
前記画像層における前記特色インクの量に応じた量の前記下地インクを前記下地ヘッドから吐出させ、且つ、前記画像層における前記特色インクの量に応じた量の前記画像インクを前記画像ヘッドから吐出させる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第2印刷モードは彩度優先モード及び明度優先モードを有し、
前記制御装置は、
前記彩度優先モードで前記印刷動作を実行する場合は、前記下地インクの吐出量を前記第1印刷モードよりも少なくし、
前記明度優先モードで前記印刷動作を実行する場合は、前記画像インクの吐出量を前記第1印刷モードよりも少なくする、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記被印刷媒体の種類、前記下地インクの吐出前に前記被印刷媒体に施される前処理の種類、又は、前記下地層を前記被印刷媒体に定着させる方法の種類を含む印刷条件が所定条件であるか否かを判定し、
前記印刷条件が前記所定条件である場合には、前記第2印刷モードで前記印刷動作を実行する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記被印刷媒体に印刷される画像が所定条件であるか否かを判定し、
前記画像が前記所定条件である場合には、前記第2印刷モードで前記印刷動作を実行する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項9】
下地インクを吐出する下地ヘッドと、
特色インクを含む画像インクを吐出する画像ヘッドと、を備える印刷装置の制御方法であって、
前記下地インクを前記下地ヘッドから吐出して下地層を被印刷媒体上に形成し、前記画像インクを前記画像ヘッドから吐出して画像層を前記下地層上に形成する印刷動作の印刷モードとして第1印刷モード及び第2印刷モードを有し、
前記第2印刷モードで前記印刷動作を実行する場合、前記下地インクの吐出量、前記画像インクの吐出量、又は、前記下地インクの吐出量及び前記画像インクの吐出量を、前記第1印刷モードよりも少なくさせる、
印刷装置の制御方法。
【請求項10】
下地インクを吐出する下地ヘッドと、
特色インクを含む画像インクを吐出する画像ヘッドと、を備える印刷装置のコンピュータに、
前記下地インクを前記下地ヘッドから吐出して下地層を被印刷媒体上に形成し、前記画像インクを前記画像ヘッドから吐出して画像層を前記下地層上に形成する印刷動作の印刷モードとして第1印刷モード及び第2印刷モードを有し、
前記第2印刷モードで前記印刷動作を実行する場合、前記下地インクの吐出量、前記画像インクの吐出量、又は、前記下地インクの吐出量及び前記画像インクの吐出量を、前記第1印刷モードよりも少なくさせる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷装置として、例えば、下記特許文献1のプリンターが知られている。このプリンターは、インクを媒体に吐出するヘッドユニットを備えている。ヘッドユニットには、白インクを吐出する白ヘッド、並びに、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びブラックインクなどのカラーインクを吐出するカラーヘッドを備えている。これらの吐出されたインクによって画像が媒体に印刷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のプリンターは、白インクを白ヘッドから吐出させて、白インクによる画像である白画像を媒体に形成する。それから、プリンターは、カラーインクをカラーヘッドから吐出させて、カラーインクによる画像であるカラー画像を白画像上に形成する。この場合、白画像が乾かない間にカラーインクが吐出されると、カラーインクが白画像上において滲んでしまい、画質が低下する課題がある。
【0005】
そこで、本開示は、下地層上の画像インクの滲みを低減することができる印刷装置、その制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る印刷装置は、下地インクを吐出する下地ヘッドと、特色インクを含む画像インクを吐出する画像ヘッドと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記下地インクを前記下地ヘッドから吐出して下地層を被印刷媒体上に形成し、前記画像インクを前記画像ヘッドから吐出して画像層を前記下地層上に形成する印刷動作の印刷モードとして第1印刷モード及び第2印刷モードを有し、前記第2印刷モードで前記印刷動作を実行する場合、前記下地インクの吐出量、前記画像インクの吐出量、又は、前記下地インクの吐出量及び前記画像インクの吐出量を、前記第1印刷モードよりも少なくする。
【0007】
本開示に係る印刷装置の制御方法は、下地インクを吐出する下地ヘッドと、特色インクを含む画像インクを吐出する画像ヘッドと、を備える印刷装置の制御方法であって、前記下地インクを前記下地ヘッドから吐出して下地層を被印刷媒体上に形成し、前記画像インクを前記画像ヘッドから吐出して画像層を前記下地層上に形成する印刷動作の印刷モードとして第1印刷モード及び第2印刷モードを有し、前記第2印刷モードで前記印刷動作を実行する場合、前記下地インクの吐出量、前記画像インクの吐出量、又は、前記下地インクの吐出量及び前記画像インクの吐出量を、前記第1印刷モードよりも少なくさせる。
【0008】
本開示に係るプログラムは、下地インクを吐出する下地ヘッドと、特色インクを含む画像インクを吐出する画像ヘッドと、を備える印刷装置のコンピュータに、前記下地インクを前記下地ヘッドから吐出して下地層を被印刷媒体上に形成し、前記画像インクを前記画像ヘッドから吐出して画像層を前記下地層上に形成する印刷動作の印刷モードとして第1印刷モード及び第2印刷モードを有し、前記第2印刷モードで前記印刷動作を実行する場合、前記下地インクの吐出量、前記画像インクの吐出量、又は、前記下地インクの吐出量及び前記画像インクの吐出量を、前記第1印刷モードよりも少なくさせる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、下地インクの吐出量、画像インクの吐出量、又は、下地インクの吐出量及び画像インクの吐出量は、第1印刷モードよりも少ない。従って、下地インク上の画像インクの滲みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施の形態及び変形例に係る印刷装置を上から見た模式図である。
【
図2】
図2は、印刷装置に備えられたヘッドを下から見た模式図である。
【
図3】
図3は、印刷装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4Aは、第2印刷モードで下地インクの吐出量を第1印刷モードよりも少なくした場合の下地層及び画像層を示す模式図である。
図4Bは、第2印刷モードで画像インクの吐出量を第1印刷モードよりも少なくした場合の下地層及び画像層を示す模式図である。
図4Cは、第2印刷モードで画像インク及び下地インクの吐出量を第1印刷モードよりも少なくした場合の下地層及び画像層を示す模式図である。
【
図5】
図5は、印刷装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1下地LUTにおける第2印刷モードのWと画素の色相の角度との対応関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、別の例の第1下地LUTにおける第2印刷モードのWと画素の色相の角度との対応関係を示すグラフである。
【
図12】12は、第3下地LUTにおける第2印刷モードのWと色差との対応関係を示すグラフである。
【
図13】
図13は、変形例4に係る印刷装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では、全ての図面を通じて同一又は対応する要素には同一の参照符号を付している。
【0012】
<印刷装置>
本開示の実施の形態に係る印刷装置10は、
図1の例に示すように、例えば、シリアルヘッド方式のインクジェットプリンタである。印刷装置10は、下地インクを吐出する下地ヘッド20、及び、特色インクを含む画像インクを吐出する画像ヘッド21、22を備えている。画像ヘッド21、22は、第1画像インクを吐出する第1画像ヘッド21、及び、第2画像インクを吐出する第2画像ヘッド22を有している。なお、ヘッド20~22の詳細は後述する。また、印刷装置10は、シリアルヘッド方式に限定されずに、ラインヘッド方式のプリンターであってもよい。
【0013】
印刷装置10は、印刷データに基づいてヘッド20~22を移動させつつインクを吐出するパス処理と、被印刷媒体Aを搬送する搬送処理とを交互に繰り返して、画像を被印刷媒体Aに印刷する。以下では、ヘッド20~22の移動方向を左右方向と称し、被印刷媒体Aの搬送方向であって左右方向に交差(例えば、直交)する方向を前後方向と称する。また、左右方向及び前後方向の両方向に交差(例えば、直交)する方向を上下方向と称する。ただし、印刷装置10に関する方向はこれに限定されない。また、被印刷媒体Aには、例えば、紙及び布帛などが用いられる。
【0014】
印刷装置10は、ヘッド20~22の下面に対向して配置されたプラテン11を備えている。プラテン11はヘッド20~22の下方に所定距離を隔てて位置している。プラテン11の平坦な上面は、被印刷媒体Aを下方から支持する。
【0015】
印刷装置10は、ヘッド20~22を左右方向へ往復移動させる移動装置30を備えている。移動装置30は、キャリッジ31、2本のガイドレール32、無端ベルト33、及び、移動モータ34を有している。キャリッジ31は箱型の筐体であり、このキャリッジ31には複数のヘッド20~22が搭載されている。2本のガイドレール32は、プラテン11上において左右に延び、かつ、全てのヘッド20~22を間に挟むように前後に離れて配置されている。この2本のガイドレール32により、キャリッジ31は左右方向へ往復移動可能に支持されている。無端ベルト33は、一方のガイドレール32の左右両端近傍に設けられた2つのプーリー35に掛けられ、かつ、キャリッジ31に接続されると共に、プーリー35を介して移動モータ34に接続されている。これにより、移動装置30は、移動モータ34が回転駆動すると、無端ベルト33が走行し、ヘッド20~22を支持するキャリッジ31がガイドレール32に沿って左右方向へ移動する。
【0016】
印刷装置10は、被印刷媒体Aを前後方向へ搬送する搬送装置40を備えている。搬送装置40は、例えば搬送ローラ41、及び、搬送モータ42(
図3)を有している。搬送ローラ41は左右方向に延びる軸を有し、搬送モータ42は搬送ローラ41の軸に接続されている。搬送モータ42が回転駆動すると、搬送ローラ41はその軸を中心に回転し、プラテン11上において被印刷媒体Aを前後方向へ搬送する。
【0017】
印刷装置10は、インクをヘッド20~22に供給する下地タンク12及び画像タンク13、14を備えている。下地タンク12は、下地インクを貯留し、チューブ15により下地ヘッド20に接続され、下地インクを下地ヘッド20に供給する。下地インクは、例えばホワイトインクなどが用いられる。以下では、下地インクとしてホワイトインクを用いた場合について説明するが、下地インクはこれに限定されず、例えば色材が入ってない処理剤などの液体でもよい。
【0018】
画像タンク13、14は、1つ以上(
図1の例では4つ)の第1画像タンク13、及び、1つ以上(
図1の例では2つ)の第2画像タンク14を有している。第1画像タンク13は、第1画像インクを貯留し、チューブ15により第1画像ヘッド21に接続されて、第1画像インクを第1画像ヘッド21に供給する。第2画像タンク14は、第2画像インクを貯留し、チューブ15により第2画像ヘッド22に接続され、第2画像インクを第2画像ヘッド22に供給する。
【0019】
画像インクは、特色インクを含み、例えば第1画像インク及び第2画像インクを有している。第1画像インクは、予め定められた基本色のインクである。基本色のインクは、例えばシアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びブラックインクを含んでいる。第2画像インクは、下地インク及び第1画像インクとは異なる色のインクであって、例えば特色インクを含んでいる。なお、以下では基本色インクを第1画像インクとして説明し、特色インクを第2画像インクとして説明するが、第1画像インク及び第2画像インクはこれらに限定されない。例えば、第1画像インクが特色インクであり、第2画像インクが基本色インクであってもよい。
【0020】
また、第2画像インクは、後述の通り第1画像ヘッド21よりも下地ヘッド20に近い第2画像ヘッド22から吐出される画像インクである。以下では特色インクを第2画像インクとして説明するが、第2画像インクは、下地ヘッド20に近い第2画像ヘッド22から吐出される画像インクであれば、特色インクに限定されず、例えば、特色インク以外のインクであってもよい。特色インクは、基本色とは異なる色のインクであって、例えばオレンジインク、グリーンインク、蛍光色インク、パステルカラーインク及びペールカラーインクなどが用いられる。以下では、オレンジインク及びグリーンインクの特色インクを第2画像インクとして説明するが、第2画像インクはこれに限定されない。
【0021】
図2に示すように、キャリッジ31には、例えば下地ヘッド20、第1画像ヘッド21及び第2画像ヘッド22が搭載されている。下地ヘッド20、第2画像ヘッド22及び第1画像ヘッド21は、前後方向に並んで、後からこの順で並んでいる。このため、第2画像ヘッド22は第1画像ヘッド21よりも下地ヘッド20に近くに位置している。
【0022】
下地ヘッド20の下面には複数の下地ノズル23が開口している。複数の下地ノズル23は、前後方向に沿って並んで下地ノズル列を成している。例えば4本の下地ノズル列が下地ヘッド20において左右方向に間隔を空けながら並んでいる。例えば、4本の下地ノズル列のそれぞれの下地ノズル列の下地ノズル23から白インクが吐出される。
【0023】
第2画像ヘッド22の下面には複数の第2画像ノズル25が開口している。複数の第2画像ノズル25は、前後方向に沿って並んで第2画像ノズル列を成している。例えば2本の第2画像ノズル列が第2画像ヘッド22において左右方向に間隔を空けて並んでいる。例えば、2本の第2画像ノズル列のうち、右の第2画像ノズル列はグリーンノズル列であり、左の第2画像ノズル列はオレンジノズル列である。グリーンノズル列は、グリーンインクを吐出する第2画像ノズル25であるグリーンノズル25gを有している。オレンジノズル列は、オレンジインクを吐出する第2画像ノズル25であるオレンジノズル25oを有している。なお、第2画像ヘッド22には、第2画像インクを吐出する第2画像ノズル列に加えて、第2画像インクを吐出しない第2画像ノズル列が設けられていてもよい。例えば、
図2の例では、第2画像インクを吐出しない2本の第2画像ノズル列が、オレンジノズル列の左に配置されていてもよい。
【0024】
第1画像ヘッド21の下面には複数の第1画像ノズル24が開口している。複数の第1画像ノズル24は、前後方向に沿って並んで第1画像ノズル列を成している。例えば4本の第1画像ノズル列が第1画像ヘッド21において左右方向に間隔を空けながら並んでいる。例えば、4本の第1画像ノズル列は、シアンノズル列、マゼンタノズル列、イエローノズル列及びブラックノズル列を有し、これらの列はこの順に並んでいる。シアンノズル列は、シアンインクを吐出する第1画像ノズル24であるシアンノズル24cを有している。マゼンタノズル列は、マゼンタインクを吐出する第1画像ノズル24であるマゼンタノズル24mを有している。イエローノズル列は、イエローインクを吐出する第1画像ノズル24であるイエローノズル24yを有している。ブラックノズル列は、ブラックインクを吐出する第1画像ノズル24であるブラックノズル24kを有している。
【0025】
図3に示すように、下地ヘッド20には、下地ノズル23毎に下地駆動素子26が設けられている。第1画像ヘッド21には、第1画像ノズル24毎に第1画像駆動素子27が設けられている。第2画像ヘッド22には、第2画像ノズル25毎に第2画像駆動素子28が設けられている。下地駆動素子26、第1画像駆動素子27及び第2画像駆動素子28は、圧電素子、発熱素子、あるいは、静電式アクチュエータ等であって、駆動することにより対応するノズルからインクを吐出する圧力をヘッド20~22内のインクに付与する。これにより、ノズルからインクが吐出される。
【0026】
さらに、印刷装置10は、制御装置50、並びに、この制御装置50に接続された記憶装置51、通信インターフェース52、下地ヘッド駆動回路53、第1画像ヘッド駆動回路54、第2画像ヘッド駆動回路55、移動駆動回路56、搬送駆動回路57、表示装置16及び入力装置17を備えている。なお、印刷装置10は、単独の装置により構成されていてもよく、又は、複数の装置が分散配置されていて、それらが協働して印刷装置10の動作を行うよう構成されていてもよい。
【0027】
記憶装置51は、制御装置50からアクセス可能なメモリであって、例えばRAM及びROMなどを有している。この記憶装置51は、例えば、画像の画像データ、画像を印刷するために変換された画像データである印刷データ、印刷動作などの各種動作を実行するためのプログラム及びデータなどを記憶する。
【0028】
制御装置50は、例えばコンピュータにより構成されており、CPUのようなプロセッサ、及び、ASICのような集積回路などの回路を含む。制御装置50は、記憶装置51に記憶されたデータを参照しつつ、記憶装置51に記憶されたプログラムを実行することにおり、印刷装置10の各部の動作を制御する。なお、制御装置50は、単独の装置により構成されていてもよく、又は、複数の装置が分散配置されていて、それらが協働して制御装置50の動作を行うよう構成されていてもよい。
【0029】
通信インターフェース52は、有線通信又は無線通信によって外部機器Fに接続する接続装置である。印刷装置10は、この通信インターフェース52を介して、印刷装置10とは別個に存在する外部機器Fから、印刷する画像の画像データなどのデータを送受信する。外部機器Fとしては、他のコンピュータ、通信ネットワーク、記録媒体、ディスプレイ、及び、他の印刷装置などが挙げられる。
【0030】
下地ヘッド駆動回路53は、下地駆動素子26に接続されている。制御装置50は、下地駆動素子26を駆動する制御信号を印刷データに基づいて生成し、下地ヘッド駆動回路53は制御信号に基づいて下地駆動素子26の駆動信号を生成する。下地駆動素子26は駆動信号に基づいて駆動し、所定のタイミングで所定の吐出エネルギーを下地ヘッド20内の下地インクに付与する。これにより、下地インクが下地ノズル23から吐出されるタイミング及び量(インク滴の大きさ)が制御装置50により制御される。
【0031】
また、下地ヘッド駆動回路53と同様に、第1画像ヘッド駆動回路54は第1画像駆動素子27に接続され、第2画像ヘッド駆動回路55は第2画像駆動素子28に接続されている。これにより、下地駆動素子26と同様に、第1画像駆動素子27の駆動によって第1画像インクが第1画像ノズル24から吐出されるタイミング及び量が制御装置50により制御され、第2画像駆動素子28の駆動によって第2画像インクが第2画像ノズル25から吐出されるタイミング及び量が制御装置50により制御される。
【0032】
移動駆動回路56は、移動装置30の移動モータ34に接続されている。制御装置50は、移動モータ34を駆動する制御信号を印刷データに基づいて生成し、移動駆動回路56はこの制御信号に基づいて移動モータ34の駆動信号を生成する。そして、移動モータ34は駆動信号に基づいて駆動することにより、ヘッド20~22を支持するキャリッジ31を左右方向へ可変速度で移動させると共に、その可動範囲内の任意の位置にキャリッジ31を停止させる。
【0033】
搬送駆動回路57は、搬送装置40の搬送モータ42に接続されている。制御装置50は、搬送モータ42を駆動する制御信号を印刷データに基づいて生成し、搬送駆動回路57はこの制御信号に基づいて搬送モータ42の駆動信号を生成する。そして、搬送モータ42は駆動信号に基づいて駆動することにより、プラテン11上の被印刷媒体Aを前後方向へ間欠的又は連続的に搬送すると共に、プラテン11上の所定位置に被印刷媒体Aを停止させる。
【0034】
表示装置16は、ディスプレイなど、印刷動作に関する情報などの情報を表示する機器である。入力装置17は、例えばタッチパネル、物理スイッチ及び通信インターフェース52など、外部からの情報の入力を受け付ける機器である。入力装置17は、ユーザによる操作を受け付けて、受け付けた操作情報を制御装置50に入力する。
【0035】
<印刷動作>
制御装置50は、印刷動作にて、画像データから変換された印刷データに基づいて、ヘッド20~22を移動させながらインクをヘッド20~22から吐出するパス処理と、被印刷媒体Aを搬送する搬送処理とを交互に繰り返す。これにより、画像が被印刷媒体Aに印刷される。このパス処理では、
図4Aに示すように、制御装置50が下地インクを下地ヘッド20から吐出させて、下地インクにより下地層Dが被印刷媒体A上に形成される。それから、制御装置50が画像インクを画像ヘッド21、22から吐出させて、画像インクにより画像層Eが下地層D上に形成される。そして、この画像層Eによって印刷画像が表される。
【0036】
画像層Eは、第1画像領域E1及び第2画像領域E2を含んでいる。第1画像領域E1は、第2画像インクを含まない画像インクにより形成される領域であって、第2画像インクにより形成されずに第1画像インクにより形成される。この第1画像領域E1を形成する第1画像インクは、1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。例えば、第1画像領域E1は、シアンインクにより形成されるシアン色の領域、及び、シアンインク及びマゼンタインクにより形成される青色の領域などが挙げられる。
【0037】
第2画像領域E2は、第2画像インクを含む画像インクにより形成される領域であって、1種類以上の第2画像インクにより形成される、又は、1種類以上の第2画像インク及び1種類以上の第1画像インクにより形成される。例えば、第2画像領域E2は、第2画像インクの特色インクであるグリーンインクを含む画像インクにより形成されるグリーン画像領域E2g、及び、第2画像インクの特色インクであるオレンジインクを含む画像インクにより形成されるオレンジ画像領域E2oを有している。このグリーン画像領域E2g及びオレンジ画像領域E2oは、特色インクに加えて、この特色インク以外のインクにより形成されてもよい。
【0038】
下地層Dは、第1下地領域D1及び第2下地領域D2を含んでいる。第1下地領域D1及び第2下地領域D2は共に下地インクにより形成される。第1下地領域D1は、第1画像領域E1に対応する領域であって、その上に第1画像領域E1が積層される。第2下地領域D2は、第2画像領域E2に対応する領域であって、その上に第2画像領域E2が積層される。例えば、第2下地領域D2は、その上にグリーン画像領域E2gが積層されるグリーン下地領域D2g、及び、その上にオレンジ画像領域E2oが積層されるオレンジ下地領域D2oを有している。
【0039】
<印刷モード>
第2画像ヘッド22は、第1画像ヘッド21よりも下地ヘッド20に近くに位置している。これにより、下地ヘッド20、第2画像ヘッド22及び第1画像ヘッド21の順にインクが吐出される。このため、下地ヘッド20からの下地インクの吐出から、その下地インク上への第2画像ヘッド22からの第2画像インクの吐出までの時間は、下地ヘッド20からの下地インクの吐出から、その下地インク上への第1画像ヘッド21からの第1画像インクの吐出までの時間よりも短い。これにより、下地インクの着弾からその下地インク上における第2画像インクの着弾までの下地インクの乾燥時間は、下地インクの着弾からその下地インク上における第1画像インクの着弾までの下地インクの乾燥時間よりも短い。よって、下地インクの下地層D上に吐出された第2画像インクは、下地層D上に吐出された第1画像インクよりも滲み易い。
【0040】
そこで、印刷動作の印刷モードは、第1印刷モード、及び、第1印刷モードよりも画像インクの滲みの低減を図る第2印刷モードを有している。制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、下地層Dを形成する下地インクの吐出量を、第1印刷モードよりも少なくする。さらに、下地層Dの第1下地領域D1に対応する第1画像領域E1は第2画像インクにより形成されないが、第2下地領域D2に対応する第2画像領域E2は第2画像インクにより形成される。このため、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、下地層Dのうち第2下地領域D2を形成する下地インクの吐出量を、第1印刷モードよりも少なくする。
【0041】
例えば、第1印刷モードでは第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量を100%とする場合、第2印刷モードでは第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量は100%未満である。これにより、第1印刷モードよりも第2印刷モードで第2下地領域D2を形成する下地インクの量が少なく、第2下地領域D2が乾き易くなる。このため、第2下地領域D2上に第2画像インクが吐出されても、第2画像インクの滲みを低減することができる。
【0042】
図4Aに示すように、この第2印刷モードにおける第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量について、例えば第2下地領域D2のうちグリーン下地領域D2gに対する下地インクの吐出量はオレンジ下地領域D2oに対する下地インクの吐出量よりも少なくてもよい。すわなち、
図2の例では、第2画像ヘッド22において、グリーンインクを吐出するグリーンノズル25gは、オレンジインクをオレンジノズル25oよりも右に配置されている。印刷動作のパス処理にてこの第2画像ヘッド22が右に移動しながらインクを吐出する場合、オレンジノズル25oよりもグリーンノズル25gが第2画像ヘッド22の移動方向における下流に配置されている。このため、下地インクの吐出からその下地インク上へのグリーンインクの吐出までの時間は、下地インクの吐出からその下地インクへのオレンジインクの吐出までの時間よりも短い。これにより、下地インクの着弾からその下地インク上にグリーンインクが着弾するまでの下地インクの乾燥時間が、下地インクの着弾からその下地インク上にオレンジインクが着弾するまでの下地インクの乾燥時間よりも短い。よって、下地インクの第2下地領域D2上に吐出されるグリーンインクは、第2下地領域D2上に吐出されるオレンジインクよりも滲み易い。
【0043】
そこで、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第2下地領域D2のうち、その上にグリーンインクが吐出されるグリーン下地領域D2gに対する下地インクの吐出量を、その上にオレンジインクが吐出されるオレンジ下地領域D2oに対する下地インクの吐出量よりも少なくしてもよい。例えば、第1印刷モードでは第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量を100%とする場合、第2印刷モードでは第2下地領域D2のグリーン下地領域D2gに対する下地インクの吐出量は75%であり、第2下地領域D2のオレンジ下地領域D2oに対する下地インクの吐出量は90%である。これにより、第2下地領域D2における下地インクの減少に起因した画質の低下を抑制しつつ、第2下地領域D2における特色インクの滲みを低減することができる。
【0044】
また、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第1下地領域D1を形成する下地インクの吐出量を第1印刷モードと同量にしてもよい。なお、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第1下地領域D1を形成する下地インクの吐出量を第1印刷モードよりも少なくしてもよい。この第1印刷モードでの第1下地領域D1に対する下地インクの吐出量から第2印刷モードでの第1下地領域D1に対する下地インクの吐出量を引いた差は、第1印刷モードでの第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量から第2印刷モードでの第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量を引いた差よりも少ない。このように、第1印刷モードに対し第2印刷モードにおいて第1下地領域D1に対する下地インクの吐出量を減少させない又はその減少量を少なく抑えることにより、下地インクの吐出量の減少に起因した印刷画像の低下を抑制することができる。また、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第1下地領域D1を形成する下地インクの吐出量を第2下地領域D2を形成する下地インクの吐出量と同量としてもよい。この場合、第1下地領域D1の厚みが第2下地領域D2の厚みと同じであってもよい。
【0045】
また、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第1画像領域E1を形成する第1画像インクの吐出量、並びに、第2画像領域E2を形成する画像インクの吐出量(第2画像インクの吐出量、又は、第1画像インクの吐出量及び第2画像インクの吐出量)を第1印刷モードと同量にしてもよい。なお、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第1画像領域E1を形成する第1画像インクの吐出量を第1印刷モードよりも少なくてもよい。この第1印刷モードでの第1画像領域E1に対する画像インクの吐出量から第2印刷モードでの第1画像領域E1に対する画像インクの吐出量を引いた差は、第1印刷モードでの第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量から第2印刷モードでの第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量を引いた差よりも小さい。また、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第2画像領域E2を形成する画像インクの吐出量を第1印刷モードよりも少なくてもよい。この第1印刷モードでの第2画像領域E2に対する画像インクの吐出量から第2印刷モードでの第2画像領域E2に対する画像インクの吐出量を引いた差は、第1印刷モードでの第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量から第2印刷モードでの第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量を引いた差よりも小さい。このように、第1印刷モードに対し第2印刷モードにおいて第1画像領域E1及び第2画像領域E2を形成する画像インクの吐出量を減少させない又はその減少量を少なく抑えることにより、画像インクの吐出量の減少に起因した印刷画像の画質の低下を抑制することができる。
【0046】
<印刷装置の制御方法>
印刷装置10の制御方法は、
図5に示すフローチャートの一例に沿って制御装置50により実行される。まず、制御装置50は、被印刷媒体Aに印刷する画像の画像データを記憶装置51又は通信インターフェース52から取得する(ステップS1)。
【0047】
続いて、制御装置50は、印刷モードが第1印刷モードであるか否かを判定する(ステップS2)。ここで、例えば、制御装置50は、印刷モードの選択肢として第1印刷モード及び第2印刷モードを表示装置16に表示する。ユーザが入力装置17を用いて印刷モードを選択すると、選択された印刷モードが制御装置50に入力される。なお、ユーザは他のコンピュータなどの外部機器Fを用いて印刷モードを選択した場合、選択された印刷モードは外部機器Fから通信インターフェース52により制御装置50に入力されてもよい。この場合、通信インターフェース52が、ユーザによる情報を制御装置50に入力する入力装置17として機能する。
【0048】
この印刷モードが第1印刷モードであれば(ステップS2:YES)、制御装置50は、画像データに基づいて印刷データを生成する(ステップS3)。ここで、例えば、制御装置50は、所定の第1LUTを用いてRGBで規定される画像データに色変換処理などを実行してCMYKogWで規定される印刷データに変換する。この第1LUTは、例えばRGBとCMYKogWとを対応づけた色変換ルックアップテーブルであって、記憶装置51に予め記憶されている。RGBは、レッド、グリーン、ブルーのそれぞれについて、例えば、0~255の256階調の階調値で画像の画素毎に表される。
【0049】
CMYKogWは、印刷装置10に備えられるインクの色に対応し、例えば、0~100%の101階調の階調値で表される。CMYKは、第1画像領域E1及び第2画像領域E2のそれぞれの領域における第1画像インクの基本色であるシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの階調値である。oは第2画像領域E2における第2画像インクの特色であるオレンジの階調値であり、gは第2画像領域E2における第2画像インクの特色であるグリーンの階調値である。Wは、第1下地領域D1及び第2下地領域D2のそれぞれの領域における下地インクの色であるホワイトの階調値である。
【0050】
CMYKogWのそれぞれの階調値は、画像層E及び下地層Dのそれぞれの層における単位面積当たりに対するインクの吐出量に対応している。例えば、CMYKのそれぞれの階調値は、第1画像領域E1及び第2画像領域E2に吐出される第1画像インク(シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク)の量である。ogのそれぞれの階調値は、第2画像領域E2に吐出される第2画像インク(オレンジインク、グリーンインク)の量である。Wの階調値は、第1下地領域D1及び第2下地領域D2に吐出される下地インク(ホワイトインク)の量である。この第1画像領域E1及び第2画像領域E2は、画像層Eを所定面積毎に複数の領域に分割した場合の単位面積の領域であって、画像を構成する画素に対応する。第1下地領域D1及び第2下地領域D2は、下地層Dを所定面積毎に複数の領域に分割した場合の単位面積の領域である。
【0051】
制御装置50は、印刷データに基づいて第1印刷モードで印刷動作を実行する(ステップS4)。この印刷動作では、パス処理において、印刷データの階調値に対応する量のインクが吐出される。ここで、下地インクが被印刷媒体A上に吐出されて下地層Dが形成される。そして、この下地層Dのうち第1下地領域D1上に第1画像インクが吐出されて第1画像領域E1が形成され、下地層Dのうち第2下地領域D2上に第2画像インク、又は、第2画像インク及び第1画像インクが吐出されて第2画像領域E2が形成される。この第1下地領域D1に対する下地インクの吐出量と、第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量は、互いに等しい。これにより、下地層Dに対する下地インクの吐出量の差に起因した画質の低下を抑制することができる。
【0052】
また、ステップS2において、印刷モードが第2印刷モードであれば(ステップS2:NO)、制御装置50は、下地インクの吐出量が第1印刷モードよりも少なくなるように、画像データに基づいて印刷データを生成する(ステップS5)。ここで、例えば、制御装置50は、所定の第2LUTを用いてRGBで規定される画像データに色変換処理などを実行してCMYKogWで規定される印刷データに変換する。この第2LUTは、RGBとCMYKogWとを対応づけた色変換ルックアップテーブルであって、記憶装置51に予め記憶されている。
【0053】
第2LUTは、W以外は第1LUTと同様である。このため、第2LUTにおけるRGBに対するCMYKogは第1LUTと同じである。よって、後述のステップS6の印刷動作における第1画像領域E1及び第2画像領域E2に対する画像インクの吐出量は、第1LUT及び第2LUTのCMYKogに対応するため、第2印刷モードで第1印刷モードと同量になる。
【0054】
また、第1LUTにおいて第2印刷モードのWは、第1画像領域E1及び第2画像領域E2に対応する画素のRGBに対しては共に100%である。これに対し、第2LUTにおいて第2印刷モードのWは、第1画像領域E1に対応する画素のRGBに対して100%であるのに対し、第2画像領域E2に対応する画素のRGBに対して100%よりも小さい。例えば、第2画像領域E2のうちグリーン画像領域E2gに対応する画素のRGBに対して、第2印刷モードのWは75%である。第2画像領域E2のうちオレンジ画像領域E2oに対応する画素のRGBに対して、第2印刷モードのWは90%である。
【0055】
制御装置50は、印刷データに基づいて第2印刷モードで印刷動作を実行する(ステップS6)。この印刷動作では、パス処理において、印刷データに基づいた量のインクが吐出されて、下地層D及び画像層Eが順に被印刷媒体A上に形成される。例えば、この下地層Dのうち、第1下地領域D1は100%の吐出量の下地インクにより形成され、第2下地領域D2のグリーン下地領域D2gは75%の吐出量の下地インクにより形成され、第2下地領域D2のオレンジ下地領域D2oは90%の吐出量の下地インクにより形成される。
【0056】
このように、下地層Dの第2下地領域D2は、第1印刷モードでは100%の吐出量の下地インクにより形成されるのに対し、第2印刷モードでは90%又は75%の吐出量の下地インクにより形成される。この下地層Dに対する下地インクの吐出量を第1印刷モードよりも第2印刷モードで少なくすることにより、下地層Dが第1印刷モードよりも第2印刷モードで乾き易くなるため、第2印刷モードの印刷動作において下地層D上に吐出される画像インクの滲みを低減することができる。
【0057】
また、第2画像ヘッド22は第1画像ヘッド21よりも下地ヘッド20に近いため、第2画像ヘッド22から第2下地領域D2に吐出される第2画像インクが滲み易い。これに対し、第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量を第1印刷モードよりも第2印刷モードで少なくすることにより、第2下地領域D2が第1印刷モードよりも第2印刷モードで乾き易くなるため、第2印刷モードの印刷動作において第2下地領域D2上に吐出される第2画像インクの滲みを低減することができる。また、第1下地領域D1に対する下地インクの吐出量を第2印刷モードで第1印刷モードと同量にすることにより、第2印刷モードの印刷動作では下地層Dにおける下地インクの減少に起因した印刷画像の画質の低下を抑制することができる。
【0058】
さらに、オレンジノズル25oよりもグリーンノズル25gは、印刷動作でインクを吐出しながら移動する第2画像ヘッド22の移動方向における下流に配置されている。このため、下地インクの着弾からその下地インク上にグリーンインクが着弾するまでの下地インクの乾燥時間は、下地インクの着弾からその下地インク上にオレンジインクが着弾するまでの下地インクの乾燥時間よりも短く、グリーンインクはオレンジインクよりも第2下地領域D2上で滲み易い。これに対し、制御装置50は、第2印刷モードの印刷動作では、第2下地領域D2のうちオレンジ下地領域D2oよりもグリーン下地領域D2gに対する下地インクの吐出量を少なくする。このため、オレンジ下地領域D2oにおける下地インクの減少による画質の低下を抑制しつつ、グリーン下地領域D2g上のグリーンインクの滲みを低減することができる。
【0059】
なお、上記では、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、
図4Aに示すように下地インクの吐出量を、第1印刷モードよりも少なくした。但し、第2印刷モードにおけるインクの吐出量を第1印刷モードよりも少なくするのは下地インクに限定されない。例えば、
図4Bに示すように、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、画像インクの吐出量を、第1印刷モードよりも少なくしてもよい。また、
図4Cに示すように、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、下地インクの吐出量及び画像インクの吐出量を、第1印刷モードよりも少なくしてもよい。
【0060】
図4Bの例において、制御装置50は、第2画像インクがグリーンインクである場合、第1印刷モードにおける第2画像領域E2に対するグリーンインクの吐出量を100%としたとき、第2印刷モードにおける第2画像領域E2に対するグリーンインクの吐出量を75%とする。また、制御装置50は、第2画像インクがオレンジインクである場合、第1印刷モードにおける第2画像領域E2に対するオレンジインクの吐出量を100%としたとき、第2印刷モードにおける第2画像領域E2に対するオレンジインクの吐出量を90%とする。このように、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第2画像インクの吐出量を、第1印刷モードよりも少なくする。これにより、第2下地領域D2上に吐出される第2画像インクの量が減少するため、第2画像インクが広がり難くなり、第2下地領域D2上における第2画像インクの滲みを低減することができる。
【0061】
ここで、第2画像領域E2が第1画像インク及び第2画像インクにより形成される場合、第2印刷モードにおいて第2画像領域E2に対する第2画像インクの吐出量に加えて第1画像インクの吐出量も第1印刷モードより少なくしてもよい。例えば第2画像インクがグリーンインクである場合、制御装置50は、第2印刷モードにおいて、第2画像領域E2に対する第2インクの吐出量、及び、それと同じ第2画像領域E2に対する第1画像インクの吐出量を共に75%とする。このように、第2画像領域E2に対する画像インクの吐出量は第1印刷モードよりも第2印刷モードで少ない。これにより、第2画像領域E2において画像インクの減少に起因した色相の変化を抑制しながら、第2下地領域D2上における画像インクの特色インクの滲みを低減することができる。
【0062】
これに対し、
図4Cの例では、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量及び第2画像領域E2に対する画像インクの吐出量を第1印刷モードよりも少なくする。例えば第2画像インクがグリーンインクである場合、制御装置50は、第2印刷モードにおいて、第2画像領域E2に対する画像インクの吐出量(第2画像インクの吐出量、又は、第1画像インク及び第2画像インクの吐出量)、及び、その第2画像領域E2に対応する第2下地領域D2に対する下地インクを共に75%とする。これにより、画像インク及び下地インクが乾き易いため、さらに第2下地領域D2における画像インクの滲みを低減することができる。
【0063】
この
図4Bの例において、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第1下地領域D1に対する下地インクの吐出量、第1画像領域E1に対する第1画像インクの吐出量、及び、第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量を第1印刷モードと同量にする。なお、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第1下地領域D1に対する下地インクの吐出量、第1画像領域E1に対する第1画像インクの吐出量、及び、第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量の少なくともいずれか一つの吐出量を第1印刷モードよりも少なくしてもよい。この少なくする吐出量について第1印刷モードと第2印刷モードとでの差は、第2画像領域E2に対する画像インクの吐出量の第1印刷モードと第2印刷モードとでの差よりも小さい。このように、第1印刷モードに対し第2印刷モードにおいてインクの吐出量を減少させない又はその減少量を少なく抑えることにより、インクの減少に起因した印刷画像の画質の低下を抑制することができる。
【0064】
また、
図4Cの例において、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第1下地領域D1に対する下地インクの吐出量、及び、第1画像領域E1に対する第1画像インクの吐出量を第1印刷モードと同量にする。なお、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第1下地領域D1に対する下地インクの吐出量、及び、第1画像領域E1に対する第1画像インクの吐出量の少なくともいずれか一つの吐出量を第1印刷モードよりも少なくしてもよい。この少なくする吐出量について第1印刷モードと第2印刷モードとでの差は、第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量の第1印刷モードと第2印刷モードとでの差、及び、第2画像領域E2に対する画像インクの吐出量の第1印刷モードと第2印刷モードとでの差よりも小さい。このように、第1印刷モードに対し第2印刷モードにおいてインクの吐出量を減少させない又はその減少量を少なく抑えることにより、インクの減少に起因した印刷画像の画質の低下を抑制することができる。また、
図4Cにおいて、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第1下地領域D1を形成する下地インクの吐出量を第2下地領域D2を形成する下地インクの吐出量と同量としてもよい。この場合、第1下地領域D1の厚みが第2下地領域D2の厚みと同じであってもよい。
【0065】
なお、上記構成において、第1画像インクに、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク及びブラックインクを含む基本色インクが用いられ、第2画像インクに、基本色インクとは異なる特色インクが用いられる。この場合、第1画像ヘッド21は、基本色インクを吐出する基本色ヘッドに相当し、第2画像ヘッド22は、特色インクを吐出する特色ヘッドに相当する。
【0066】
この場合、
図4A~
図4Cに示すように、画像層Eの第1画像領域E1は、特色インクにより形成されずに基本色インクにより形成される第3画像領域E3に相当し、画像層Eの第2画像領域E2は、特色インクにより形成される第4画像領域E4に相当する。また、下地層Dの第1下地領域D1は、第3画像領域E3に対応する第3下地領域D3に相当し、下地層Dの第2下地領域D2は、第4画像領域E4に対応する第4下地領域D4に相当する。
【0067】
また、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第4下地領域D4を形成する下地インクの吐出量、第4画像領域E4を形成する特色インクの吐出量、又は、第4下地領域D4を形成する下地インクの吐出量及び第4画像領域E4を形成する特色インクの吐出量を、第1印刷モードよりも少なくする。これにより、上記と同様に、下地インク上における特色インクの滲みを低減することができる。つまり、下地ヘッド20、特色ヘッド及び基本色ヘッドの順にインクが吐出される。このため、下地ヘッド20からの下地インクの吐出から、その下地インク上への特色ヘッドからの特色インクの吐出までの時間は、下地ヘッド20からの下地インクの吐出から、その下地インク上への基本色ヘッドからの基本色インクの吐出までの時間よりも短い。これにより、下地インクの着弾からその下地インク上における特色インクの着弾までの下地インクの乾燥時間は、下地インクの着弾からその下地インク上における基本色インクの着弾までの下地インクの乾燥時間よりも短い。このため、下地インク上において特色インクが基本色インクよりも滲み易い。このような場合であっても、第4下地領域D4を形成する下地インクの吐出量の減少によって下地インクが乾燥し易く、また、第4画像領域E4を形成する特色インクの吐出量の減少によって特色インクが広がり難くなるため、下地インク上における特色インクの滲みを低減することができる。
【0068】
ここで、第4画像領域E4が特色インク及び基本色インクにより形成されている場合、第4画像領域E4を形成する特色インクの吐出量に加えて、基本色インクの吐出量も第1印刷モードよりも少なくしてもよい。これにより、上記と同様に、第4下地領域D4上における特色インクの滲みを低減しつつ、第4画像領域E4における色相の変化を抑制することができる。
【0069】
さらに、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第3下地領域D3を形成する下地インクの吐出量、及び、第3画像領域E3を形成する基本色インクの吐出量を、第1印刷モードと同量にしてもよい。また、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第4下地領域D4を形成する下地インクの吐出量を第1印刷モードよりも少なくする場合に第4画像領域E4を形成する画像インク(特色インクの吐出量、又は、特色インクの吐出量及び基本色インクの吐出量)を第1印刷モードと同量にしてもよい。また、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第4画像領域E4を形成する特色インクの吐出量を第1印刷モードよりも少なくする場合に第4下地領域D4を形成する下地インクの吐出量を第1印刷モードと同量にしてもよい。
【0070】
なお、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第3下地領域D3を形成する下地インクの吐出量、及び、第3画像領域E3を形成する基本色インクの吐出量の少なくともいずれか1つの吐出量を第1印刷モードよりも少なくしてもよい。
図4Aの例では、この少なくする吐出量について第1印刷モードと第2印刷モードとでの差は、第4下地領域D4に対する下地インクの吐出量の第1印刷モードと第2印刷モードとでの差よりも小さい。また、
図4Bの例では、この少なくする吐出量について第1印刷モードと第2印刷モードとでの差は、第4画像領域E4に対する画像インクの吐出量の第1印刷モードと第2印刷モードとでの差よりも小さい。さらに、
図4Cの例では、この少なくする吐出量について第1印刷モードと第2印刷モードとでの差は、第4下地領域D4に対する下地インクの吐出量の第1印刷モードと第2印刷モードとでの差、及び、第4画像領域E4に対する画像インクの吐出量の第1印刷モードと第2印刷モードとでの差よりも小さい。このように、第1印刷モードに対し第2印刷モードにおいてインクの吐出量を減少させない又はその減少量を少なく抑えることにより、インクの吐出量の減少に起因した印刷画像の低下を抑制することができる。また、
図4A及び
図4Cにおいて、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、第3下地領域D3を形成する下地インクの吐出量を第4下地領域D4を形成する下地インクの吐出量と同量としてもよい。この場合、第3下地領域D3の厚みが第4下地領域D4の厚みと同じであってもよい。
【0071】
<変形例1>
変形例1に係る印刷装置10では、上記実施の形態において、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、印刷動作の対象の画像の色相に応じた量の下地インクを下地ヘッド20から吐出させる。
【0072】
具体的には、
図5のステップS3及びS5において制御装置50が画像データに基づいて印刷データを生成する際に、所定のLUTを用いる。このLUTは、画像LUT及び第1下地LUTを有し、記憶装置51に予め記憶されている。画像LUTは、例えばRGBとCMYKogとを対応づけた色変換ルックアップテーブルであって、第1LUT及び第2LUTのうちW以外の部分と同様である。
【0073】
第1下地LUTは、例えば、
図6のテーブルの一例に示すように、RGB、色相、第1印刷モードのW、及び、第2印刷モードのWが対応付けられた色変換ルックアップテーブルである。第1印刷モードのWは、第1印刷モードにおけるホワイトの階調値であり、第1印刷モードで印刷動作が行われる場合の下地インクの吐出量に対応する。第2印刷モードのWは、第2印刷モードにおけるホワイトの階調値であり、第2印刷モードで印刷動作が行われる場合の下地インクの吐出量に対応する。
【0074】
色相は、印刷動作の対象の画像を構成する画素の色相であって、その画素のRGBにより例えば以下のように演算される。ここで、R、G及びBは画像データにより取得される。R、G及びBのうち最大値をMAXとし、最小値をMINとする。この場合、R、G及びBのうちRが最大である画像の色相Hは、H=60×{(G-B)÷(MAX-MIN)}により演算される。R、G及びBのうちGが最大である画像の色相Hは、H=60×{(G-B)÷(MAX-MIN)}+120により演算される。R、G及びBのうちBが最大である画像の色相Hは、H=60×{(G-B)÷(MAX-MIN)}+240により演算される。
【0075】
この第1下地LUTでは、(0、0、0)である(R、G、B)に対応するWは、印刷モードにかかわらず0%である。また、これ以外のWは、第1印刷モードでは画像の色相にかかわらずに100%であるのに対し、第2印刷モードでは画像の色相に応じて変化する。
【0076】
例えば、第2印刷モードのWは、例えば
図7の画素の色相の角度(度)に対して対応付けられている。色相の角度が60度、180度以上且つ300度未満の画素に対応する第1下地領域D1について、第2印刷モードのWは100%である。つまり、色相の角度が60度、180度以上且つ300度未満の画素の色は特色を含まないため、この画素に対応する画像領域は第1画像領域E1であって、第1画像インクにより形成される。この第1画像領域E1が積層される第1下地領域D1については、第2印刷モードの印刷動作で下地インクの吐出量が100%である。
【0077】
さらに、色相の角度が60度未満及び300度よりも大きい画素に対応する第2下地領域D2について、第2印刷モードのWは90%である。つまり、色相の角度が60度未満及び300度よりも大きい画素の色はオレンジを含むため、この画素に対応する画像領域は第2画像領域E2のオレンジ画像領域E2oであって、オレンジインクを含む画像インクにより形成される。このオレンジ画像領域E2oが積層される第2下地領域D2のオレンジ下地領域D2oについては、第2印刷モードの印刷動作で下地インクの吐出量が90%である。
【0078】
また、色相の角度が60度よりも大きく且つ180度よりも小さい画素に対応する第2下地領域D2について、第2印刷モードのWは75%である。つまり、色相の角度が60度よりも大きく且つ180度よりも小さい画素の色はグリーンを含むため、この画素に対応する画像領域は第2画像領域E2のグリーン画像領域E2gであって、グリーンインクを含む画像インクにより形成される。このグリーン画像領域E2gが積層される第2下地領域D2のグリーン下地領域D2gについては、第2印刷モードの印刷動作で下地インクの吐出量が75%である。
【0079】
このように、制御装置50は、第2印刷モードの印刷動作では画像の画素の色相に応じた量の下地インクが下地ヘッド20から吐出させる。例えば、第1印刷モードの印刷動作における第1下地領域D1及び第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量が100%である場合、第2印刷モードの印刷動作では、特色を含まない色相の第1画像領域E1に対応する第1下地領域D1に対して下地インクの吐出量が100%であり、特色を含む色相の第2画像領域E2に対応する第2下地領域D2に対して下地インクの吐出量が90%又は75%である。この場合、第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量が第1印刷モードよりも第2印刷モードで少なくなり、第2下地領域D2上における画像インクの滲みを低減することができる。ここで、第2下地領域D2のうちオレンジ下地領域D2oよりもグリーン下地領域D2gに対する下地インクの吐出量を少なくすることにより、第2下地領域D2における下地インクの減少に起因した画質の低下を抑制しつつ、第2下地領域D2における画像インクの滲みを低減することができる。
【0080】
さらに、第2印刷モードのWは、例えば、
図8の例に示す画像の色相の角度に対するグラフに基づいて取得されてもよい。すなわち、
図7のグラフでは、色相の角度に対して第2印刷モードのWが段階的に変化した。これに対し、
図8のグラフでは、色相の角度に対して第2印刷モードのWが連続的に変化する。
【0081】
例えば、
図7のグラフでは、色相の角度が60度及び180度にてWが100%であり、色相の角度が60度よりも大きく且つ180度よりも小さい範囲ではWが75%である。これに対し、
図8のグラフでは、色相の角度が60度及び180度にてWが100%であり、色相の角度が60度と180度との中間の120度にてWが75%である。そして、色相の角度が60度及び180度のそれぞれからこれらの中心の120度に近づくほど、Wが75%に近くなるように連続的に減少する。
【0082】
このように、第2印刷モードでのWが画素の色相の角度に応じて連続的に変化することにより、Wに対応する下地領域D2に対する下地インクの吐出量も連続的に変化する。これにより、下地インクの吐出量の変化に起因する画質の低下を抑制することができる。
【0083】
なお、上記では、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、画像の色相に応じた量の下地インクを下地ヘッド20から吐出させた。これに対して、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、画像の色相に応じた量の画像インクを画像ヘッド21、22から吐出させてもよい。また、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、画像の色相に応じた量の下地インクを下地ヘッド20から吐出させ、且つ、画像の色相に応じた量の画像インクを画像ヘッド21、22から吐出させてもよい。
【0084】
この場合、例えば、第1印刷モードの印刷動作における第1画像領域E1及び第2画像領域E2に対する画像インクの吐出量が100%である場合、第2印刷モードの印刷動作では、特色を含まない色相の画素に対応する第1画像領域E1に対して画像インクの吐出量が100%であり、特色を含む色相の画素に対応する第2画像領域E2に対して画像インクの吐出量が100%よりも少ない。この第2画像領域E2のうち、オレンジ画像領域E2oに対して画像インクの吐出量が90%であり、グリーン画像領域E2gに対して画像インクの吐出量が75%である。このように、第2印刷モードの印刷動作において画像インク、又は、画像インク及び下地インクの吐出量を色相に応じて変化させることにより、インクの減少に起因した画質の低下を抑制しつつ、下地層Dにおける画像インクの滲みを低減することができる。
【0085】
<変形例2>
変形例2に係る印刷装置10では、上記実施の形態において、制御装置50は、画像層Eを形成する画像インクに含まれる特色インクの量を取得する。制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、画像層Eにおける特色インクの量に応じた量の下地インクを下地ヘッド20から吐出させる。
【0086】
具体的には、
図5のステップS3及びS5において画像データに基づいて印刷データを生成する際に、所定のLUTが用いられる。このLUTは、画像LUT及び第2下地LUTを有し、記憶装置51に予め記憶されている。画像LUTは、例えばRGBとCMYKogとを対応づけた色変換ルックアップテーブルであって、第1LUT及び第2LUTのうちW以外の部分と同様である。
【0087】
第2下地LUTは、例えば、
図9のテーブルの一例に示すように、RGB、o、g、第1印刷モードのW、及び、第2印刷モードのWが対応付けられた色変換ルックアップテーブルである。第1印刷モードのWは、第1印刷モードにおけるホワイトの階調値であり、第1印刷モードで印刷される場合の下地インクの吐出量に対応する。第1印刷モードのWは、第1印刷モードにおけるホワイトの階調値であり、第1印刷モードで印刷される場合の下地インクの吐出量に対応する。
【0088】
この第2下地LUTにおいて、oは画像の画素のオレンジの階調値であって、gは画像の画素のグリーンの階調値である。(RGB)が(0、0、0)である画素に対しては、各印刷モードにおけるWは0%である。これに対し、これ以外の画素に対しては、o及びgにかかわらず、第1印刷モードにおけるWは100%である。これに対し、第2印刷モードにおけるWは、W=100-(0.1×o+0.25×g)、により表される。
【0089】
このように、画素においてオレンジの階調値o及びグリーンの階調値gが大きくなるほど、その画素に対応する下地領域について第2印刷モードのWは小さくなる。これにより、画素に対応する第2画像領域E2におけるオレンジインク及びグリーンインクの少なくともいずれか一方の特色インクが多くなるほど、その第2画像領域E2に対応する第2下地領域D2に対して下地インクの吐出量が少なくなる。これにより、第2下地領域D2が乾き易くなるため、第2下地領域D2上における画像インクの滲みを低減することができる。
【0090】
さらに、オレンジの階調値oよりもグリーンの階調値gが大きくなるほど、第2印刷モードにおけるWは小さくなる。これによって、第2画像領域E2におけるオレンジインクの量よりもグリーンインクの量が多くなるほど、第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量が少なくなる。このため、オレンジインクよりも滲み易いグリーンインクの第2下地領域D2上における滲みを低減することができる。
【0091】
なお、上記では、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、画像層Eにおける特色インクの量に応じた量の下地インクを下地ヘッド20から吐出させた。これに対し、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、画像層Eにおける特色インクの量に応じた量の画像インクを画像ヘッドから吐出させてもよい。また、制御装置50は、第2印刷モードで印刷動作を実行する場合、画像層Eにおける特色インクの量に応じた量の下地インクを下地ヘッド20から吐出させ、且つ、画像層Eにおける特色インクの量に応じた量の画像インクを画像ヘッドから吐出させてもよい。
【0092】
例えば、特色インクにより形成される第2画像領域E2に対して、第1印刷モードでは画像インクの吐出量を100%であるのに対し、第2印刷モードでは第2画像領域E2のオレンジの階調値o及びグリーンの階調値gに応じて画像インクの吐出量が変化する。例えば、第2印刷モードの印刷動作では、制御装置50は、第2画像領域E2のオレンジの階調値o及びグリーンの階調値gが大きいほど、その第2画像領域E2に対する画像インクの吐出量を少なくする。ここで、制御装置50は、その第2画像領域E2に対応する第1画像領域E1に対する下地インクの吐出量も少なくしてもよい。このように、滲み易い特色インクの量が多いほど、画像インク、又は、画像インク及び下地インクを少なくすることにより、第2下地領域D2上における画像インクの滲みを低減することができる。
【0093】
<変形例3>
変形例3に係る印刷装置10では、上記実施の形態において、制御装置50は、第1画像領域E1及び第2画像領域E2を形成する画像インクの滲み易さが大きいほど、第1下地領域D1及び第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量、第1画像領域E1及び第2画像領域E2に対する画像インクの吐出量、又は、第1下地領域D1及び第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量及び第1画像領域E1及び第2画像領域E2に対する画像インクの吐出量を第1印刷モードよりも第2印刷モードで少なくしてもよい。なお、以下では、画像インクの滲み易いほど下地インクの吐出量の減少する場合について説明するが、この場合と同様に、画像インクの吐出量、及び、下地インク及び画像インクの両方の吐出量を画像インクの滲み易いほど減少することができる。
【0094】
例えば、
図3に示すように、印刷装置10は測色装置58を備えており、測色装置58は制御装置50に接続されている。そして、印刷装置10は、
図10の例に示すように、互いに色が異なる複数の色パッチPを第1印刷モード及び第3印刷モードで印刷する。第3印刷モードは、第1印刷モードよりも画像インクの滲みを第1印刷モードよりも低減した印刷モードである。例えば、第3印刷モードでの印刷動作では、下地インクにより下地層Dを被印刷媒体A上に形成し乾燥した後に、画像インクにより色パッチPを下地層D上に形成することにより、下地層D上における画像インクの滲みが低減される。また、第3印刷モードでの印刷動作では、第1印刷モードよりも大きいサイズの色パッチPを印刷することにより、下地層D上における画像インクの滲みが低減される。
【0095】
そして、印刷装置10は、第1印刷モード及び第3印刷モードのそれぞれの印刷モードで下地インクにより下地層Dを被印刷媒体A上に形成し、画像インクにより色パッチPを構成する画像層Eを下地層D上に形成(印刷)して、色パッチPを測色装置58にて測色する。この色パッチPの測色では、例えば、制御装置50は、大きいサイズのアパーチャーの測色装置58を用いたり、色パッチPにおいて複数個所を測色したりすることにより、色パッチPにおける平均色値を取得する。それから、制御装置50は、第1印刷モードで印刷した色パッチPの平均色値と第3印刷モードで印刷した色パッチPの平均色値との差の絶対値である色差を演算する。この色差が大きいほど、下地層D上に画像インクが滲み易い。
【0096】
このため、
図11の第3下地LUTにおいて、RGB、色差、第1印刷モードのW及び第2印刷モードのWが対応付けられている。ここで、色パッチPのRGBと、その色パッチPについて取得された色差とが対応付けられている。また、第1印刷モードのWは色差に係わらず100%であるのに対し、第2印刷モードのWは色差に応じて変化する。この第2印刷モードのWは、
図12に示すように色差に対して対応付けられている。ここで、色差が所定値(例えば、1.5)以上では、色差が大きいほど、画像インクの滲み易さが大きいため、第2印刷モードのWが小さくなるように定められている。また、色パッチPの色差が所定値未満では第2印刷モードのWが100%である。
【0097】
図5のステップS3及びS5において画像データに基づいて印刷データを生成する際に、第3下地LUT及び画像LUTが用いられる。そして、印刷装置10はこの印刷データに基づいて第2印刷モードで印刷動作を実行することにより、下地インクが被印刷媒体Aに吐出されて下地層Dが形成され、画像インクが下地層D上に吐出されて画像層Eが形成される。この下地層Dにおいて、画像層Eの色差が大きい領域ほど、その領域に対応する領域に対して下地インクの吐出量が少なくなる。これにより、画像層Eの色差が大きく画像インクが滲み易い領域において、下地領域上の画像インクの滲みを低減することができる。
【0098】
<変形例4>
変形例4に係る印刷装置10では、上記実施の形態及び変形例1-3において、第2印刷モードは彩度優先モード及び明度優先モードを有している。制御装置50は、彩度優先モードで印刷動作を実行する場合は、下地インクの吐出量を第1印刷モードよりも少なくする。また、制御装置50は、明度優先モードで印刷動作を実行する場合は、画像インクの吐出量を第1印刷モードよりも少なくする。
【0099】
例えば、印刷装置10の制御方法は、
図13に示すフローチャートの一例に沿って制御装置50により実行される。この
図13のフローチャートでは、
図5のフローチャートにおけるステップS2とステップS5との間にステップS7の処理が実行され、ステップS7の後にステップS8及びステップS9の処理が実行される。
図13のフローチャートにおけるこれ以外の処理は、
図5のフローチャートと同様である。
【0100】
ステップS2において、印刷モードが第2印刷モードであれば(ステップS2:NO)、制御装置50は、第2印刷モードが彩度優先モードか否かを判定する(ステップS7)。ここで、例えば、制御装置50は、印刷モードの選択肢として第1印刷モード、第2印刷モードの彩度優先モード及び明度優先モードを表示装置16に表示する。ユーザが入力装置17を用いて印刷モードを選択すると、選択された印刷モードが制御装置50に入力される。
【0101】
第2印刷モードが彩度優先モードであれば(ステップS7:YES)、制御装置50は、下地インクの吐出量が第1印刷モードよりも少なくなるように、印刷データを生成する(ステップS5)。そして、制御装置50は、この印刷データに基づいて第2印刷モードの彩度優先モードで印刷動作を実行する(ステップS6)。
【0102】
この彩度優先モードの印刷動作では、下地層Dの第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量が第1印刷モードよりも少ない。このため、下地層Dが乾き易く、下地層D上に吐出される画像インクの滲みを低減することができる。また、彩度優先モードでは、第2画像領域E2に対する画像インクの吐出量が、明度優先印刷モードよりも多く、例えば、第1印刷モードと同量であるため、画像インクの減少に起因した第2画像領域E2の彩度の低下を抑制することができる。
【0103】
ステップS7において、第2印刷モードが明度優先モードであれば(ステップS7:NO)、制御装置50は、画像インクの吐出量が第1印刷モードよりも少なくなるように、印刷データを生成する(ステップS8)。そして、制御装置50は、この印刷データに基づいて第2印刷モードの明度優先モードで印刷動作を実行する(ステップS9)。
【0104】
この明度優先モードの印刷動作では、第2画像領域E2に対する画像インクの吐出量が第1印刷モードよりも少ない。このため、画像インクが広がり難く、下地層D上に吐出される画像インクの滲みを低減することができる。また、明度優先モードの印刷動作では、第2下地領域D2に対する下地インクの吐出量が、彩度優先印刷モードよりも多く、例えば、第1印刷モードと同量であるため、下地インクの減少に起因した第2画像領域E2の明度の低下を抑制することができる。
【0105】
<変形例5>
変形例5に係る印刷装置10では、上記実施の形態及び変形例1-4において、制御装置50は、被印刷媒体Aの種類、下地インクの吐出前に被印刷媒体Aに施される前処理の種類、又は、下地層Dを被印刷媒体Aに定着させる方法の種類を含む印刷条件が所定条件であるか否かを判定し、印刷条件が所定条件である場合には、第2印刷モードで印刷動作を実行する。
【0106】
例えば、
図5及び
図13のステップS2の印刷モードの判定において、制御装置50は、印刷条件が所定条件であるか否かを判定する。ここで、まず制御装置50は印刷条件を取得する。この印刷条件は、通信インターフェース52を介して外部機器Fから制御装置50に入力されていてもよいし、ユーザが入力装置17を操作することにより制御装置50に入力されてもよい。
【0107】
入力装置17により印刷条件を入力する場合、制御装置50は、印刷条件を表示装置16に表示する。これに対し、ユーザが入力装置17を用いて印刷条件を選択すると、選択された印刷条件が制御装置50に入力される。この印刷条件のうち、被印刷媒体Aの種類としては被印刷媒体Aのメーカ及び型番などが例示され、前処理の種類としては前処理液の成分及びメーカなどが例示され、定着方法の種類としてはオーブンを用いた定着、ヒートプレスを用いた定着、及び、オーブン及びヒートプレスの両方を用いた定着などが例示される。なお、この印刷条件は、被印刷媒体Aの種類、前処理の種類、定着方法の種類に限定されない。例えば、印刷条件は、入力装置17を用いてユーザによって追加されてもよいし、通信インターフェース52を介してメーカなどにより追加されてもよい。
【0108】
前処理では、下地インクが被印刷媒体Aに吐出される前に前処理液が被印刷媒体Aに塗布される。前処理液は、例えば、多価金属塩又は有機酸などを含む液体であって、さらに樹脂を含んでいてもよい。この前処理液は、印刷装置10とは別個に存在する塗布装置により塗布されてもよいし、印刷装置10により塗布されてもよい。この塗布装置又は印刷装置10は、スプレーノズルなど前処理液を塗布するノズルを有している。前処理液の塗布範囲は、印刷動作による画像の印刷範囲を含んでいる。このため、前処理液の塗布範囲上に印刷動作によるインクが着弾する。また、前処理液によって、被印刷媒体Aにおける繊維同士の間隙に膜が形成される。前処理液により、印刷画像の発色及び密着性が向上することができる。
【0109】
下地層Dの定着方法の処理は、例えば、印刷動作により被印刷媒体Aに下地層D及び画像層Eが形成された後に行われてもよい。この処理において、例えば、オーブンにより下地層D及び被印刷媒体Aが加熱されることにより、下地層Dが被印刷媒体Aに定着する。また、ヒートプレスにより、下地層D及び被印刷媒体Aが加熱されながら圧力が付与されることにより、下地層Dが被印刷媒体Aに定着されてもよい。
【0110】
そして、制御装置50は、入力された印刷条件と所定条件とを比較する。この所定条件として、被印刷媒体A、前処理及び定着方法のそれぞれの種類について特色インクなどのインクの滲み易い種類が記憶装置51に予め記憶されている。入力された印刷条件が所定条件においてインクが滲み易い条件と定められていない場合、制御装置50は印刷条件が所定条件でないため、印刷モードを第1印刷モードと判定して(ステップS2:YES)、ステップS3にて画像データに基づいて印刷データを生成し、ステップS4にてこの印刷データに基づいて第1印刷モードで印刷動作を実行する。
【0111】
一方、入力された印刷条件が所定条件においてインクが滲み易い条件と定められている場合、制御装置50は印刷モードを第2印刷モードであると判定して(ステップS2:NO)、ステップS5にて画像データに基づいて印刷データを生成し、ステップS6にてこの印刷データに基づいて第2印刷モードで印刷動作を実行する。このように、インクが滲み易い印刷条件では、第2印刷モードにて下地インクの吐出量を第1印刷モードよりも少なくすることにより、下地層D上における画像インクの滲みを抑制することができる。
【0112】
なお、ステップS5にて、制御装置50は、下地インクの吐出量に代えて、画像インクの吐出量、又は、下地インク及び画像インクの両方の吐出量を第1印刷モードよりも少なくなるように印刷データを生成してもよい。これにより、ステップS6の第2印刷モードでの印刷動作によって、画像インクの吐出量、又は、下地インク及び画像インクの両方の吐出量が少なくなり、下地層D上における画像インクの滲みを抑制することができる。
【0113】
<変形例6>
変形例6に係る印刷装置10では、上記実施の形態及び変形例1-4において、制御装置50は、被印刷媒体Aに印刷される画像が所定条件であるか否かを判定し、画像が所定条件である場合には、第2印刷モードで印刷動作を実行する。
【0114】
例えば、
図5及び
図13のステップS2の印刷モードの判定において、制御装置50は、被印刷媒体Aに印刷される画像が所定条件であるか否かを判定する。ここで、制御装置50は、例えば、画像データに基づいて被印刷媒体Aにおける画像の印刷サイズを取得する。そして、制御装置50は、その印刷サイズが、所定条件で予め定められているサイズ未満であるか否かを判定する。画像の印刷サイズが所定サイズ未満であれば、下地インクの吐出タイミングと画像インクの吐出タイミングとの差が所定値未満になり、画像インクが滲み易いとして、制御装置50は印刷画像が所定条件であり、印刷モードが第2印刷モードであると判定する(ステップS2:NO)。そして、制御装置50はステップS5にて印刷データを生成し、ステップS6にてその印刷データに基づいて第2印刷モードで印刷動作を実行する。この第2印刷モードの印刷動作にて下地インクの吐出量を第1印刷モードよりも少なくすることにより、下地層D上における画像インクの滲みを抑制することができる。
【0115】
一方、制御装置50は、画像の印刷サイズが所定サイズ以上であれば、画像インクが滲み難いとして、制御装置50は印刷画像が所定条件でなく、印刷モードが第1印刷モードであると判定する(ステップS2:NO)。そして、制御装置50はステップS3にて印刷データを生成し、ステップS4にてその印刷データに基づいて第1印刷モードで印刷動作を実行する。
【0116】
なお、所定条件は画像の印刷サイズに限定されない。例えば、所定条件は、画像における特色の密度であってもよい。この場合、制御装置50は、画像データに基づいて、画像の画素のRGBから画素の色相を取得し、画素の色相に基づいて画素が特色を含むか否かを判定し、特色を含む画素を取得する。そして、制御装置50は、画像を複数の領域に分割し、分割領域の画素数に対する、その分割領域における特色を含む画素の数の割合を特色密度として演算する。そして、その特色密度が所定密度以上の分割領域を画像が含むことを所定条件として予め定められている。
【0117】
特色密度が所定密度以上の分割領域を画像が含んでいる場合には、分割領域に対応する印刷領域において特色インクの割合が多く、画像インクが滲み易いとして、制御装置50は画像が所定条件であり、印刷モードは第2印刷モードであると判定する(ステップS2:NO)。そして、制御装置50はステップS5にて画像データに基づいて印刷データを生成し、ステップS6にてその印刷データに基づいて第2印刷モードで印刷動作を実行する。この第2印刷モードにて下地インクの吐出量を第1印刷モードよりも少なくすることにより、下地層D上における画像インクの滲みを抑制することができる。
【0118】
一方、制御装置50は、特色密度が所定密度以上の分割領域を画像が含まない場合には、画像インクが滲み難いとして、制御装置50は印刷画像が所定条件でなく、印刷モードは第1印刷モードである判定する(ステップS2:YES)。そして、制御装置50はステップS3にて画像データに基づいて印刷データを生成し、ステップS4にてその印刷データに基づいて第1印刷モードで印刷動作を実行する。
【0119】
さらに、所定条件は、例えば、画像におけるインクの滲み易さであってもよい。この場合、制御装置50は、例えば変形例3のように色パッチPの色差を取得し、色差に応じて画像インクの滲み易さを表す複数のレベルを取得し、色パッチPのRGBと滲み易さのレベルとを対応付けたテーブルを記憶装置51に記憶しておく。なお、この滲み易さテーブルは記憶装置51に予め記憶されていてもよい。
【0120】
そして、制御装置50は、滲み易さテーブルを参照して、画像データに基づいた画素のRGBから滲み易さレベルを取得する。そして、制御装置50は、画像を複数の領域に分割し、その分割領域における画素の滲み易さレベルの平均値を演算する。制御装置50は、このレベルの平均値が所定値以上である分割領域を画像が含むか否かを判定する。そして、制御装置50は、レベルの平均値が所定値以上である分割領域を画像が含む場合には、画像が所定条件であり、印刷モードは第2印刷モードであると判定する(ステップS2:NO)。そして、制御装置50はステップS5にて画像データに基づいて印刷データを生成し、ステップS6にてその印刷データに基づいて第2印刷モードで印刷動作を実行する。この第2印刷モードにて下地インクの吐出量を第1印刷モードよりも少なくすることにより、下地層D上における画像インクの滲みを抑制することができる。
【0121】
一方、制御装置50は、レベルの平均値が所定値以上である分割領域を画像が含まない場合には、制御装置50は印刷画像が所定条件でなく、印刷モードが第1印刷モードであると判定する(ステップS2:YES)。そして、制御装置50はステップS3にて画像データに基づいて印刷データを生成し、ステップS7にてその印刷データに基づいて第1印刷モードで印刷動作を実行する。
【0122】
なお、ステップS5にて、下地インクの吐出量に代えて、画像インクの吐出量、又は、下地インク及び画像インクの両方の吐出量を第1印刷モードよりも少なくなるように印刷データを生成してもよい。これにより、ステップS6の第2印刷モードでの印刷動作によって、画像インクの吐出量、又は、下地インク及び画像インクの両方の吐出量が少なくなり、下地層D上における画像インクの滲みを抑制することができる。
【0123】
なお、上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良及び他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更することができる。
【符号の説明】
【0124】
10 :印刷装置
20 :下地ヘッド
21 :第1画像ヘッド(画像ヘッド、基本色ヘッド)
22 :第2画像ヘッド(画像ヘッド、特色ヘッド)
50 :制御装置