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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012237
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】歯車ケースのブリーザ装置及び作業機
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/027 20120101AFI20240123BHJP
   E01H 5/09 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
F16H57/027
E01H5/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114430
(22)【出願日】2022-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】太田 能司
(72)【発明者】
【氏名】諸井 篤
【テーマコード(参考)】
2D026
3J063
【Fターム(参考)】
2D026CB03
2D026CG02
2D026CH00
3J063AA12
3J063AB01
3J063BA13
3J063XG22
3J063XG31
3J063XG53
(57)【要約】
【課題】歯車ケースのオイルがブリーザ装置の呼吸孔から外部に漏出することを抑制すること。
【解決手段】歯車室83を画定する歯車ケース82のブリーザ装置14であって、歯車ケース82に画定されたブリーザ室146と、ブリーザ146室の上部を外部に連通する呼吸孔152と、ブリーザ室146の下部と歯車室83とを連通する前部連通孔148及び後部連通孔150と、呼吸孔152と前部連通孔148及び後部連通孔150との間を横切る方向に延在する仕切壁154とを有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車室を画定する歯車ケースのブリーザ装置であって、
前記歯車ケースに画定されたブリーザ室と、
前記ブリーザ室の上部を外部に連通する呼吸孔と、
前記ブリーザ室の下部と前記歯車室とを連通する連通孔と、
前記呼吸孔と前記連通孔との間を横切る方向に延在する仕切壁とを有する歯車ケースのブリーザ装置。
【請求項2】
前記ブリーザ室は前後方向に延在しており、
前記仕切壁は前記呼吸孔の後方位置において上下に延在する第1部分及び前記第1部分の下端から前方に延出する第2部分とを含み、前記第2部分の前端と前記ブリーザ室の前壁との間に前記呼吸孔と前記連通孔とを連通させる間隙を有する請求項1に記載の歯車ケースのブリーザ装置。
【請求項3】
前記連通孔は前記ブリーザ室の前部に設けられている請求項1又は2に記載の歯車ケースのブリーザ装置。
【請求項4】
前記連通孔は、前記ブリーザ室の前部及び後部に設けられている請求項1に記載の歯車ケースのブリーザ装置。
【請求項5】
前記連通孔は、後部のものが前部のものよりも開口面積が大きい請求項4に記載の歯車ケースのブリーザ装置。
【請求項6】
前記ブリーザ室は前記歯車ケースの上部に画定され、
前記呼吸孔は前記ブリーザ室を画定する上壁の近傍に形成されている請求項1又は2に記載の歯車ケースのブリーザ装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の歯車ケースのブリーザ装置を有する作業機であって
前記作業機は走行部を備える走行フレーム及び前記走行フレームに対して相対的に変位し、高さ調整可能な作業部を有する本体フレームを備え、
前記本体フレームに前記歯車ケースのブリーザ装置が設けられている作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯車ケースのブリーザ装置及び作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて除雪機に関する研究開発を通して交通の安全性や移動や生活の利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
【0003】
除雪機としては、除雪具(オーガ)の地上高さを電動式に調節できるものが知られている(例えば、特許文献1)。除雪具の地上高さ装置に設けられる電動モータに接続された歯車ケースは、温度変化による歯車ケースの内圧変化を回避するために、特許文献2に示されているような、歯車ケースに形成された空気呼吸孔を含むブリーザ装置を有することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-115305号公報
【特許文献2】特許第3697597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歯車ケースのブリーザ装置では、歯車ケースに充填されたオイルが空気呼吸孔から外部に漏出することが少ないことが要求される。
【0006】
しかし、従来の歯車ケースのブリーザ装置は、歯車ケースのオイルが空気呼吸孔から外部に漏出することを十分に抑制することが難しい。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑み、歯車ケースのオイルがブリーザ装置の呼吸孔から外部に漏出することが抑制することを課題とする。そして、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【0008】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、歯車室(83)を画定する歯車ケース(82)のブリーザ装置(140)であって、前記歯車ケースに画定されたブリーザ室(146)と、前記ブリーザ室の上部を外部に連通する呼吸孔(152)と、前記ブリーザ室の下部と前記歯車室とを連通する連通孔(148、150)と、前記呼吸孔と前記連通孔との間を横切る方向に延在する仕切壁(154)とを有する。
【0009】
この態様によれば、歯車ケースのオイルが呼吸孔から外部に漏出することが抑制される。
【0010】
上記の態様において、好ましくは、前記ブリーザ室は前後方向に延在しており、前記仕切壁は前記呼吸孔の後方位置において上下に延在する第1部分(154A)及び前記第1部分の下端から前方に延出する第2部分(154B)を含み、前記第2部分の前端と前記ブリーザ室の前壁との間に前記呼吸孔と前記連通孔とを連通させる間隙(156)を有する。
【0011】
この態様によれば、後傾時に、オイルが呼吸孔に向かうことが仕切壁によって的確に抑制される。
【0012】
上記の態様において、前記連通孔は前記ブリーザ室の前部に設けられていてもよい。
【0013】
この態様によれば、ブリーザ室に浸入したオイルの歯車室に対する戻しが前傾時に良好に行われる。
【0014】
上記の態様において、前記連通孔は、前記ブリーザ室の前部及び後部に設けられていてもよい。
【0015】
この態様によれば、ブリーザ室に浸入したオイルの歯車室に対する戻しが前傾時及び後傾時のいずれにおいても良好に行われる。
【0016】
上記の態様において、前記連通孔は、後部のものが前部のものよりも開口面積が大きくてもよい。
【0017】
この態様によれば、後傾時のオイル戻しが良好に行われる。
【0018】
上記の態様において、前記ブリーザ室は前記歯車ケースの上部に画定され、前記呼吸孔は前記ブリーザ室を画定する上壁(146A)の近傍に形成されていてもよい。
【0019】
この態様によれば、歯車ケースのオイルが呼吸孔から外部に漏出することが的確に抑制される。
【0020】
上記の態様において、上述の態様の歯車ケース(82)のブリーザ装置(140)を有する作業機(10)であって、前記作業機は走行部(32)を備える走行フレーム(12)及び前記走行フレームに対して相対的に変位し、高さ調整可能な作業部(56)を有する本体フレーム(14)を備え、前記本体フレームに前記歯車ケースのブリーザ装置(140)が設けられている。
【0021】
この態様によれば、作業部の高さ調整により、本体フレームが走行フレームに対して相対的に変位しても、本体フレームに設けられた歯車ケースのオイルがブリーザ装置の呼吸孔から外部に漏出することが抑制される。
【発明の効果】
【0022】
以上の態様によれば、歯車ケースのオイルがブリーザ装置の呼吸孔から外部に漏出することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による歯車ケースのブリーザ装置を適用される除雪機の側面図
図2】除雪機の走行装置及び回動装置を示す斜視図
図3】本実施形態によるモータケースブリーザ装置の要部を示す断面図
図4】本実施形態によるモータケースと歯車ケースとの連結部の部分断面斜視図
図5】本実施形態による歯車ケースの斜視図
図6】本実施形態による歯車ケースのブリーザ装置を拡大して示す斜視図
図7】本実施形態による除雪機における歯車ケースの傾斜及びオイルの液面を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態では、本発明が除雪機10に適用されている。以下、前後、左右、上下等の方向を示す用語は、除雪機10を操作する作業者から見た方向を基準として用いる。
【0025】
まず、図1及び図2を参照しつつ、除雪機10の全体の構成について説明する。除雪機10は、その後方において作業者が歩行しながら除雪作業を行う歩行型除雪機である。
【0026】
除雪機10は、下部機体12と、下部機体12に設けられた後述する前部軸24に回動可能に取り付けられた上部機体14とを有する。下部機体12には走行装置16及びハンドル装置18が取り付けられている。上部機体14には除雪用のオーガ装置20及びブロア装置22が取り付けられている。
【0027】
走行装置16は、下部機体12に各々左右方向に水平に延在すべく回転可能に設けられた前部軸24及び後部軸26と、前部軸24の左右両端に取り付けられた駆動輪28と、後部軸26の左右両端に取り付けられた従動輪30と、左右の駆動輪28及び従動輪30との間に掛け渡された左右のクローラ(無端走行ベルト)32と、下部機体12に取り付けられ、前部軸24を介して駆動輪28を回転駆動する電動モータを含む走行駆動装置34とを有する。尚、図2は左側のクローラ32が駆動輪28及び従動輪30から取り外された状態を示す。
【0028】
ハンドル装置18は下部機体12の後部から後上方へ向けて延びる左右のアーム36と、アーム36の上端部に取り付けられた左右のグリップ38及び入力装置40とを有する。グリップ38は作業者によって把持される。
【0029】
入力装置40は、作業者による入力操作を受け付ける装置であり、例えば、除雪機10の走行操作を受け付ける走行レバー42と、オーガ装置20及びブロア装置22による除雪作業の操作を受け付ける除雪スイッチ44と、後述の上部機体14の回動操作(高さ調節操作)を受け付ける高さ調節スイッチ46と、後述のデッドマンクラッチ72の操作を受け付けるクラッチレバー48とを有する。
【0030】
オーガ装置20は、後述のブロアハウジング58を介して上部機体14に取り付けられたオーガハウジング50と、オーガハウジング50に取り付けられたねじ歯車ケース52と、ねじ歯車ケース52からオーガハウジング50内を左右方向に水平に延在するオーガ回転軸54と、オーガ回転軸54に取り付けられたオーガ爪56とを有する。
【0031】
ブロア装置22は、上部機体14に取り付けられたブロアハウジング58と、ブロアハウジング58と、ブロアハウジング58内に回転可能に設けられたブロア60と、ブロアハウジング58の上部に取り付けられたシュータ62とを有する。
【0032】
除雪は、除雪機10の走行のもとにオーガ爪56の回転によって除雪機10の前方の雪が粉砕され、オーガハウジング50内に回収されることにより行われる。オーガハウジング50内に回収された雪は、ブロア60の回転によってブロアハウジング58内に導かれ、シュータ62から外方に放出される。
【0033】
オーガハウジング50及びブロアハウジング58内にはねじ歯車ケース52から後方に向けて水平に延在する回転軸64が設けられている。回転軸64はねじ歯車ケース52内のねじ歯車(不図示)及びオーガ回転軸54を介してオーガ爪56を回転駆動する。回転軸64は、ブロア60を支持しており、ブロア60を回転駆動する。
【0034】
回転軸64の後端は上部機体14内に延出している。この回転軸64の後端には大径の従動プーリ66が取り付けられている。上部機体14の上部には内燃エンジン68が取り付けられている。内燃エンジン68の出力軸70にはデッドマンクラッチ72を介して小径の駆動プーリ74が取り付けられている。駆動プーリ74と従動プーリ66との間には無端ベルト76が掛け渡されている。
【0035】
これにより、内燃エンジン68の出力軸70の回転が、デッドマンクラッチ72、駆動プーリ74、無端ベルト76及び従動プーリ66を介して回転軸64に伝達され、オーガ爪56とブロア60とが同期駆動される。
【0036】
つぎに、下部機体12に対する上部機体14の回動操作、換言すると、オーガ爪56の地上高さ操作について説明する。オーガ爪56の地上高さ調節は、回動装置80により、上部機体14が下部機体12に対して前部軸24の中心軸線周りに回動することによって行われる。
【0037】
回動装置80は、上部機体14に固定された歯車ケース82と、歯車ケース82の後部にフランジ接続によって固定された電動モータ84とを有する。
【0038】
歯車ケース82は歯車室83(図3参照)を画定している。歯車ケース82は電動モータ84の出力軸86に連結された略前後方向に延在するウォーム88を歯車室83内において回転自在に支持している。歯車ケース82は歯車室83を左右方向に水平に延在する中間軸90及び出力軸92を回転自在に支持している。中間軸90にはウォーム88に噛合したホイール歯車94及びピニオン(不図示)が固定されている。出力軸92にはピニオン(不図示)に噛合するセクタ歯車96が固定されている。この歯車列97によって電動モータ84の出力軸86の回転が減速されて歯車ケース82の出力軸92に伝達される。
【0039】
歯車室83には歯車列97の潤滑のためにオイルが充填されている。歯車室83に充填されるオイル量は、オイルの液面Xが、図7の(A)に示されている水平姿勢時、(B)に示されている最大前傾時、(C)に示されている最大後傾時の何れにおいても、歯車列97において上位に位置するウォーム88とホイール歯車94との噛合部よりも上位に保たれるように設定される。
【0040】
出力軸92は歯車ケース82外に延出した端部を含む。この出力軸92の端部にはリンク(アーム)98の一端が固定されている。リンク98はもう一つのリンク100の一端を枢軸101によって枢動可能に連結された他端を含む。下部機体12の後部にはブラケット104が固定されている。ブラケット104には枢軸105によってリンク100の他端が枢動可能に連結されている。
【0041】
つまり、上部機体14側の歯車ケース82の出力軸92がリンク98及びリンク100によるリンク機構により下部機体12に連結されている。
【0042】
電動モータ84による出力軸92の回転により、リンク98とリンク100とが山形に折曲する折曲角度が変化し、上部機体14が前部軸24を回動中心として下部機体12に対して略上下方向に傾動し、オーガ爪56の地上高さが調節される。
【0043】
電動モータ84の回転子(不図示)等を収容したモータケース102は歯車ケース82の後部に連結されている。
【0044】
つぎに、モータケース102のブリーザ装置132を、図3図5を参照して説明する。尚、電動モータ84の出力軸86は、図2に示されているように、除雪機10が水平姿勢にある時(図2及び図7(A)参照)には前傾するが、これを含んで出力軸86は略水平方向に延在するものであるとする。
【0045】
モータケース102は円筒形状の主部102A及び主部102Aの前端に形成されたフランジ部102Bを有する。主部102Aは固定子及び回転子(不図示)等を収容する内部室103(図3参照)を画定している。フランジ部102Bには3箇所にボルト通し孔102Cが形成されている。歯車ケース82は、前述の歯車列97を収容する箱形状の主部82A、主部82Aの後部に設けられた端壁82B、端壁82Bより後方に延出した円筒部82C及び円筒部82Cの後端に形成さけたフランジ部82Dを有する。フランジ部82Dには3箇所にねじ孔82Eが形成されている。
【0046】
各ボルト通し孔102Cにはカラー部材(不図示)を介してボルト107(図4参照)が挿入されている。各ボルト107は対応するねじ孔82Eにねじ係合している。これにより、歯車ケース82の後部にモータケース102が連結される。
【0047】
モータケース102は前部に円形の端壁102Dを有する。端壁102Dの中心部には電動モータ84の出力軸86が貫通するモータ軸貫通孔102Eが形成されている。端壁102Dは、図4に示されているように、フランジ部102Bよりも歯車ケース82側に向けて突出し、その外周部が歯車ケース82の円筒部82Cに画定された対応凹部82Fに補完的に嵌合している。
【0048】
歯車ケース82の端壁82Bには、図3に示されているように、ウォーム88の後部軸88Aが貫通する貫通孔82Gが形成されている。歯車ケース82は貫通孔82Gにおいて転がり軸受106によってウォーム88の後部軸88Aを回転自在に支持している。貫通孔82Gの内周面と後部軸88Aの外周面との間には円環状の保持具108に保持されたOリング110及びオイルシール112が設けられている。
【0049】
歯車室83には歯車列97の潤滑のためにオイルが充填されている。歯車室83に充填されるオイル量は、オイルの液面Xが、図7の(A)に示されている水平姿勢時、(B)に示されている最大前傾時、(C)に示されている最大後傾時の何れにおいても、歯車列97において上位に位置するウォーム88とホイール歯車94との噛合部よりも上位に保たれるように設定される。
【0050】
後部軸88Aは、歯車列97の入力軸であり、電動モータ84の出力軸86と同軸配置されている。出力軸86は、前端に、端壁102Dよりも前方に突出した2面取り部86Aを有する。2面取り部86Aは、直方体形状をしており、後部軸88Aの後端に形成された係合溝88Bに係合している。この係合により、電動モータ84の出力軸86と歯車列97の入力軸をなす後部軸88Aとが動力伝達関係で接続され、電動モータ84の出力軸86の回転が歯車列97に伝達される。
【0051】
モータケース102の端壁102Dの外周部が歯車ケース82の円筒部82Cの対応凹部82Fに補完的に嵌合していることにより、電動モータ84の出力軸86と歯車列97の後部軸88Aとの同軸性(同心性)が容易且つ確実に設定される。
【0052】
モータケース102の端壁102Dの前端面102Fと歯車ケース82の端壁82Bの後端面82Hとは軸線方向に空隙をおいて互いに対向している。この互いに対向する前端面102Fと後端面82Hとの間には外周を歯車ケース82の円筒部82Cによって閉じられた円筒状空間によるブリーザ室120が画定されている。
【0053】
モータケース102の端壁102Dにはブリーザ室120とモータケース102の内部室103とを連通するモータ連通孔(空気呼吸孔)122が貫通形成されている。モータ連通孔122は出力軸86が貫通するモータ軸貫通孔102Eの斜め上方位置に設けられている。
【0054】
歯車ケース82の端壁82B及びフランジ部82Dとモータケース102の端壁102D及びフランジ部102Bとは互いに協働して外部連通孔124を画定している。外部連通孔124はブリーザ室120を外部に開放する。
【0055】
歯車ケース82の端壁82Bには端壁82Bからモータケース102の端壁102Dに向けて突出する仕切部128が形成されている。仕切部128は、端壁102Dとの間に絞り部をなす間隙130(図3参照)をおいて、モータ軸貫通孔102E及び外部連通孔124の間を横切る方向に延在している。
【0056】
歯車ケース82には、図5及び図6に示されているように、ブリーザ装置140が設けられている。ブリーザ装置140は歯車ケース82の主部82Aの上部に画定されたブリーザ室146を含む。ブリーザ室146は、上壁146A、下壁146B、前壁146C、後壁146D及び側壁146Eを含み、側壁146Eとは反対の側が開口146Fになっている。ブリーザ室146は、上下方向の長さに比して前後方向の長さが大きく、前後方向に略水平に延在している。開口146Fはボルト144によって主部82Aに取り付けられたカバー板142によって閉じられている。
【0057】
側壁146Eにはブリーザ室146の上部を外部に連通する呼吸孔152が形成されている。呼吸孔152は、歯車ケース82が図7の(A)に示されている水平姿勢にある時、(B)に示されている最大前傾姿勢にある時の何れにおいても、液面Xよりも上方に位置するように、前後方向で見て後壁146Dに近い位置にあり、且つ上下方向で見て上壁146Aの近傍の位置に設けられている。図7の(C)に示されている最大後傾姿勢にある時には、液面Xが呼吸孔152よりも上方に位置するが、呼吸孔152へのオイルの浸入は、仕切壁154によって阻止される。
【0058】
下壁146Bの前部位置には前部連通孔148が形成されている。下壁146Bの後部位置には後部連通孔150が形成されている。前部連通孔148及び後部連通孔150は、下壁146Bを貫通し、ブリーザ室146の下部と歯車室83(図7参照)とを連通する。後部連通孔150の開口面積は前部連通孔148の開口面積よりも大きい。
【0059】
主部82Aには、ブリーザ室146の上部を外部に連通する呼吸孔152と、ブリーザ室146の下部と歯車室83(図3参照)とを連通する前部連通孔148及び後部連通孔150と、呼吸孔152と前部連通孔148及び後部連通孔150との間を横切る方向に延在する仕切壁154とが形成されている。
【0060】
側壁146Eには呼吸孔152と前部連通孔148及び後部連通孔150との間を横切る方向に延在する仕切壁154が形成されている。仕切壁154は、側壁146Eから開口146Fに向けて突出しており、呼吸孔152の後方位置において上下に延在する第1部分154A及び第1部分154Aの下端から前方に延出する第2部分154Bを含む。
【0061】
第2部分154Bの前端と前壁146Cとの間には呼吸孔152と前部連通孔148及び後部連通孔150とを連通させる間隙156が設けられている。
【0062】
つぎに、図1を参照して除雪機10の作用について説明する。作業者が入力装置40の走行レバー42に対して除雪機10の走行操作を行うと、走行駆動装置34が駆動され、前部軸24を介して駆動輪28が回転駆動される。これにより、クローラ32が周回し、除雪機10が走行する。
【0063】
作業者が入力装置40の除雪スイッチ44に対してブロア60及びオーガ爪56の稼働操作を行うと、内燃エンジン68の出力軸70が回転する。出力軸70の回転は、デッドマンクラッチ72、駆動プーリ74、無端ベルト76及び従動プーリ66を介して回転軸64に伝達され、ブロア60及びオーガ爪56が回転する。オーガ爪56の回転により除雪機10破砕され、オーガハウジング50の左右方向中央に集められる。この集められた雪は、ブロアハウジング58に導入され、ブロア60の回転によりシュータ62から所望の方向に投出される。
【0064】
この除雪作業において、作業者により高さ調節スイッチ46が操作されると、電動モータ84が回転駆動され、電動モータ84の回転が歯車ケース82内の歯車列97を介して出力軸92に伝達される。これにより、上部機体14が前部軸24を回動中心として下部機体12に対して略上下方向に回動し、オーガ爪56の地上高さが調節される。
【0065】
歯車列97の回転による発熱により、歯車室83の内圧が上昇すると、歯車室83の空気が、前部連通孔148及び後部連通孔150からブリーザ室146に入り、呼吸孔152から外部に放出される。歯車室83の内圧が降下すると、上述の内圧上昇時とは逆の空気の流れが生じる。これにより、歯車室83の内圧が所定値に保たれる。
【0066】
振動等によって歯車室83のオイルの液面Xが揺れると、歯車室83のオイルが前部連通孔148或いは後部連通孔150からブリーザ室146に浸入することがある。このブリーザ室146に対するオイルの浸入は、図7(B)に示されている最大前傾時及び図7(C)に示されている最大後傾時に起き易い。
【0067】
しかし、歯車室83のオイルがブリーザ室146に浸入しても、仕切壁154があることにより、オイルが呼吸孔152に到達し難い。これにより、歯車室83のオイルが呼吸孔152から外部に漏出し難くなる。
【0068】
呼吸孔152はブリーザ室146を画定する上壁146Aの近傍に形成されているから、これが下方に設けられている場合よりも、歯車室83のオイルが呼吸孔152から外部に漏出し難くなる。
【0069】
特に、仕切壁154が呼吸孔152の後方位置において上下に延在する第1部分154A及び第1部分154Aの下端から前方に延出する第2部分154Bを含むことにより、図7(C)に示されているような後傾時に、オイルが呼吸孔152に向かうことが仕切壁154によって的確に抑制される。
【0070】
ブリーザ室146に浸入したオイルは、前傾時に前部連通孔148から歯車室83に戻り、後傾時に後部連通孔150から歯車室83に戻る。これにより、ブリーザ室146に多くのオイルが溜まることがない。後部連通孔150の開口面積が前部連通孔148よりも大きいことにより、後傾時にオイルが後部連通孔150から歯車室83に戻ること(オイル戻し)が円滑に行われる。
【0071】
ブリーザ室146に浸入したオイルが仕切壁154の呼吸孔152の側に浸入しても、前傾時に、このオイルは、間隙156を通って下壁146Bに戻り、前部連通孔148から歯車室83に戻る。これにより、仕切壁154の呼吸孔152の側にオイルが溜まることがない。
【0072】
このようなことからも、歯車室83のオイルが呼吸孔152から外部に漏出し難くなる。
【0073】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、後部連通孔150が省略されて前部連通孔148のみであってもよい。間隙156は必須ではなく、呼吸孔152と連通孔148、150との連通は、仕切壁154に穿設された孔等により行われてもよい。
【0074】
本実施形態のモータケースブリーザ装置132は、除雪機10に限られることなく、歯車ケース82に連結された電動モータ84を有する各種の作業機等に適用することができる。
【0075】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
10 :除雪機
12 :下部機体(走行フレーム)
14 :上部機体(本体フレーム)
16 :走行装置
18 :ハンドル装置
20 :オーガ装置
22 :ブロア装置
24 :前部軸
26 :後部軸
28 :駆動輪
30 :従動輪
32 :クローラ(走行部)
34 :走行駆動装置
36 :アーム
38 :グリップ
40 :入力装置
42 :走行レバー
44 :除雪スイッチ
46 :高さ調節スイッチ
48 :クラッチレバー
50 :オーガハウジング
52 :ねじ歯車ケース
54 :オーガ回転軸
56 :オーガ爪(作業部)
58 :ブロアハウジング
60 :ブロア
62 :シュータ
64 :回転軸
66 :従動プーリ
68 :内燃エンジン
70 :出力軸
72 :デッドマンクラッチ
74 :駆動プーリ
76 :無端ベルト
80 :回動装置
82 :歯車ケース
82A :主部
82B :端壁
82C :円筒部
82D :フランジ部
82E :ねじ孔
82F :対応凹部
82G :貫通孔
82H :後端面
83 :歯車室
84 :電動モータ
86 :出力軸
86A :2面取り部
88 :ウォーム
88A :後部軸
88B :係合溝
90 :中間軸
92 :出力軸
94 :ホイール歯車
96 :セクタ歯車
97 :歯車列
98 :リンク
100 :リンク
101 :枢軸
102 :モータケース
102A :主部
102B :フランジ部
102C :ボルト通し孔
102D :端壁
102E :モータ軸貫通孔
102F :前端面
103 :内部室
104 :ブラケット
105 :枢軸
106 :転がり軸受
107 :ボルト
108 :保持具
110 :Oリング
112 :オイルシール
120 :ブリーザ室
122 :モータ連通孔
124 :外部連通孔
128 :仕切部
130 :間隙
132 :モータケースブリーザ装置
140 :ブリーザ装置
142 :カバー板
144 :ボルト
146 :ブリーザ室
146A :上壁
146B :下壁
146C :前壁
146D :後壁
146E :側壁
146F :開口
148 :前部連通孔
150 :後部連通孔
152 :呼吸孔
154 :仕切壁
154A :第1部分
154B :第2部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7