(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122372
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】スロットアレイアンテナ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/06 20060101AFI20240902BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20240902BHJP
H01Q 13/10 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01Q21/06
H01P11/00
H01Q13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029884
(22)【出願日】2023-02-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.ウェブサイトにて公開 ウェブサイトの掲載年月日:令和4年3月1日 ウェブサイトのアドレス:https://www.ieice-taikai.jp/2022general/jpn/pdfdownload.html ウェブサイトの掲載年月日:令和4年9月7日 ウェブサイトのアドレス:https://ken.ieice.org/ken/program/index.php?tgs_regid=3384c7d29fc4f000622c8d3636bcf5cf774cdfc2c994eb8a3e88416eb6bb67d0&tgid=IEICE-AP&charset=UTF-8 ウェブサイトの掲載年月日:令和4年10月31日 ウェブサイトのアドレス:https://isap2022.org/delegate_proceedings/ 2.集会にて公開 開催日:令和4年3月15日 集会名:2022年電子情報通信学会総合大会 開催日:令和4年9月14日 集会名:2022年電子情報通信学会アンテナ伝搬研究会大会 開催日:令和4年11月2日 集会名:ISAP2022
(71)【出願人】
【識別番号】322003802
【氏名又は名称】パナソニックインダストリー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】林 琳
(72)【発明者】
【氏名】北井 佑季
(72)【発明者】
【氏名】寒川 潮
(72)【発明者】
【氏名】戸村 崇
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J021AA09
5J021AB05
5J021JA02
5J021JA07
5J045AA02
5J045AA05
5J045AB01
5J045AB05
5J045AB06
5J045DA06
5J045EA08
5J045LA03
5J045MA07
(57)【要約】
【課題】製造が容易であり、高利得、高効率、広帯域のスロットアレイアンテナ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】信号電力が給電される複数の給電スロットを有する給電部と、前記給電部に対向して配置され、前記複数の給電スロットから給電されて生じる電磁波を放射するための複数の放射スロットを有する放射部と、前記放射部と前記給電部との間に形成され、前記放射部と前記給電部との間に定在波を発生させるキャビティ部と、を備え、前記給電部、前記放射部、及び前記キャビティ部は、それぞれポスト壁導波路と誘電体とを有し、前記キャビティ部の誘電体の比誘電率が、前記給電部及び前記放射部の誘電体の比誘電率よりも大きい、スロットアレイアンテナの提供。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号電力が給電される複数の給電スロットを有する給電部と、
前記給電部に対向して配置され、前記複数の給電スロットから給電されて生じる電磁波を放射するための複数の放射スロットを有する放射部と、
前記放射部と前記給電部との間に形成され、前記放射部と前記給電部との間に定在波を発生させるキャビティ部と、を備え、
前記給電部、前記放射部、及び前記キャビティ部は、それぞれポスト壁導波路と誘電体とを有し、
前記キャビティ部の誘電体の比誘電率が、前記給電部及び前記放射部の誘電体の比誘電率よりも大きい、スロットアレイアンテナ。
【請求項2】
前記キャビティ部はTM410モードの定在波を発生させる、請求項1に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項3】
信号電力が給電される複数の給電スロットを有する給電部と、前記給電部に対向して配置され、前記複数の給電スロットから給電されて生じる電磁波を放射するための複数の放射スロットを有する放射部と、前記放射部と前記給電部との間に形成され、前記放射部と前記給電部との間に定在波を発生させるキャビティ部とを備えたスロットアレイアンテナの製造方法であって、
前記給電部、前記放射部、及び前記キャビティ部を、誘電体層と金属層を有する誘電体基板を用いてそれぞれ形成する工程、及び、
前記給電部、前記キャビティ部、前記放射部をこの順で積層する工程を備え、
前記給電部、前記放射部、及び前記キャビティ部を誘電体層と金属層を有する誘電体基板を用いてそれぞれ形成する工程が、
前記誘電体層にポスト壁導波路を形成する工程及び、
前記金属層にスロットを形成する工程を備え、
前記キャビティ部の誘電体層の誘電体の比誘電率が、前記給電部及び前記放射部の誘電体層の誘電体の比誘電率よりも大きい、スロットアレイアンテナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットアレイアンテナ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波帯の電波を利用した超高速無線通信技術の研究開発が進められている。指向性の高いミリ波を放射するアンテナとして、アンテナ素子が平面上に多数配列されたアレイアンテナが用いられる。例えば、特許文献1には、信号電力を分配する給電回路と、分配された信号電力が給電される給電スロットと、給電スロットからの電力を励振するキャビティと、キャビティで励振された電磁波から偏波を放射する放射スロットとを有するスロットアレイアンテナが記載されている。このスロットアレイアンテナにおいて上記の各構成は金属導体板の積層により形成されている。このスロットアレイアンテナでは、それぞれの金属導体板が互いに拡散接合を用いて接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスロットアレイアンテナの製造過程で用いられる拡散接合は、製造時において時間を要するため生産性が悪化する。また、拡散接合を用いないでスロットアレイアンテナを構成しようとすると、意図しない電磁ノイズが発生するという問題やスロットアレイアンテナの所望の特性を得られていないという問題が生じる。
【0005】
また、高速通信、大容量通信の需要の増加により、さらに広帯域での使用可能なアンテナの需要が高まっている。
【0006】
このような課題に鑑み、本発明は、製造が容易であり、広帯域のスロットアレイアンテナ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るスロットアレイアンテナは、信号電力が給電される複数の給電スロットを有する給電部と、前記給電部に対向して配置され、前記複数の給電スロットから給電されて生じる電磁波を放射するための複数の放射スロットを有する放射部と、前記放射部と前記給電部との間に形成され、前記放射部と前記給電部との間に定在波を発生させるキャビティ部と、を備え、前記給電部、前記放射部、及び前記キャビティ部は、それぞれポスト壁導波路と誘電体とを有し、前記キャビティ部の誘電体の比誘電率が、前記給電部及び前記放射部の誘電体の比誘電率よりも大きい。
【0008】
また、前記キャビティ部はTM410モードの定在波を発生させることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係るスロットアレイアンテナの製造方法は、信号電力が給電される複数の給電スロットを有する給電部と、前記給電部に対向して配置され、前記複数の給電スロットから給電されて生じる電磁波を放射するための複数の放射スロットを有する放射部と、前記放射部と前記給電部との間に形成され、前記放射部と前記給電部との間に定在波を発生させるキャビティ部とを備えたスロットアレイアンテナの製造方法であって、前記給電部、前記放射部、及び前記キャビティ部を、誘電体層と金属層を有する誘電体基板を用いてそれぞれ形成する工程、及び、前記給電部、前記キャビティ部、前記放射部をこの順で積層する工程を備え、前記給電部、前記放射部、及び前記キャビティ部を誘電体層と金属層を有する誘電体基板を用いてそれぞれ形成する工程が、前記誘電体層にポスト壁導波路を形成する工程及び、前記金属層にスロットを形成する工程を備え、前記キャビティ部の誘電体層の誘電体の比誘電率が、前記給電部及び前記放射部の誘電体層の誘電体の比誘電率よりも大きい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造が容易であり、広帯域のスロットアレイアンテナ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るスロットアレイアンテナの一例を示すカットモデル図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るスロットアレイアンテナの一例を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るスロットアレイアンテナの一例を示す概略分解図である。
【
図4】
図4(A)は、本発明の実施形態に係る給電部及び放射部のポスト壁導波路の一例を示す概略図であり、
図4(B)は、本発明の実施形態に係るキャビティ部のポスト壁導波路の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る給電部の全体構造の一例を示す概略図である。
【
図6】
図6(A)は、本発明の実施形態に係るキャビティ部内でTM210モードの定在波が発生する際の磁界分布を示した概略図であり、
図6(B)は、本発明の実施形態に係るキャビティ部内でTM410モードの定在波が発生する際の磁界分布を示した概略図である。
【
図7】
図7は、実施例1におけるスロットアレイアンテナの各パーツの位置関係を示す概略図である。
【
図8】
図8は、実施例1のスロットアレイアンテナにおける反射の周波特性についてのシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図9】
図9は、比較例1におけるスロットアレイアンテナの各パーツの位置関係を示す概略図である。
【
図10】
図10は、比較例1のスロットアレイアンテナにおける反射の周波特性についてのシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図11】
図11は、比較例2におけるスロットアレイアンテナの各パーツの位置関係を示す概略図である。
【
図12】
図12は、比較例2のスロットアレイアンテナにおける反射の周波特性についてのシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図13】
図13は、実施例2におけるスロットアレイアンテナの各パーツの位置関係を示す概略図である。
【
図14】
図14は、実施例2のスロットアレイアンテナにおける反射の周波特性についてのシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図15】
図15は、実施例3におけるスロットアレイアンテナの各パーツの位置関係を示す概略図である。
【
図16】
図16は、実施例3のスロットアレイアンテナにおける反射の周波特性についてのシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図17】
図17は、実施例3のスロットアレイアンテナにおける利得についてのシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るスロットアレイアンテナについて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態におけるスロットアレイアンテナの一例のカットモデル図である。本実施形態におけるスロットアレイアンテナは、2
n×2
mのアンテナ素子がマトリクス状に配置された平面アンテナである。なお、n、mは任意の自然数である。
図1には、16×16のアンテナ素子がマトリクス状に配置された平面アンテナである、スロットアレイアンテナ1のカットモデル図を示す。
【0014】
[アンテナ構造]
図1に示すように、スロットアレイアンテナ1は、信号電力を給電するための給電部2と、給電部2から給電された信号電力を放射するための放射部3と、給電部2と放射部3との間に設けられ、給電部2と放射部3との間に定在波を発生させるキャビティ部4とを有する。給電部2、放射部3、及びキャビティ部4は、それぞれポスト壁導波路と誘電体とを有し、キャビティ部4の誘電体の比誘電率が、給電部2及び放射部3の誘電体の比誘電率よりも大きくなっている。このような構成によって、製造が容易であり、高利得、高効率、広帯域のスロットアレイアンテナを得ることができる。
【0015】
また、
図2には、
図1に示すスロットアレイアンテナ1の断面図の一例を示す。
図2において、キャビティ部4の誘電体の比誘電率は、給電部2及び放射部3の誘電体の比誘電率よりも大きい。このような構成によって、高利得、高効率、広帯域のスロットアレイアンテナを得ることができる。給電部2及び放射部3の誘電体の比誘電率は、特に限定されないが、1.0以上4.0以下であることが好ましく、1.0以上3.0以下であることがより好ましく、1.5以上2.0以下であることがさらに好ましい。キャビティ部4の誘電体の比誘電率は、例えば1.0以上4.0以下であることが好ましく、1.5以上3.5以下であることがより好ましく、2.0超3.5以下であることがさらに好ましい。
【0016】
なお、給電部2の誘電体の比誘電率と放射部3の誘電体の比誘電率とは、互いに異なる比誘電率であってもよいし、同じ比誘電率であってもよい。また、給電部2、放射部3、及びキャビティ部4の各誘電体は、それぞれ1種類の材料で形成されていてもよいし、異なる比誘電率の複数の誘電体が組み合わされて形成されていてもよい。
【0017】
給電部2、放射部3、及びキャビティ部4を構成する誘電体として用いられる樹脂組成物は、アンテナ設計上は損失(誘電体のDk、誘電正接)が少ないものが好ましく、キャビティ部4の誘電体の比誘電率が、給電部2及び放射部3の誘電体の比誘電率よりも大きくなるものであれば特に限定されないが、前記樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。
【0018】
本実施形態で使用する熱硬化性樹脂は、特に限定されないが、電子回路のプリント基板材料として使用できる熱硬化性の樹脂であることが好ましく、例えば、ポリフェニレンエーテル化合物、炭化水素系樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド化合物、フェノール樹脂、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、液晶ポリマー、及び、重合可能な不飽和基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0019】
これらの中でも、低誘電率・低誘電正接、高耐熱性の得られる樹脂を使用することがより好ましい。具体的には、マレイミド化合物、重合可能な不飽和基を有するポリフェニレンエーテル化合物及び反応部位を有する炭化水素系樹脂等が好ましく例示される。
【0020】
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂成分以外に、他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0021】
例えば、本実施形態に係る樹脂組成物は、さらに充填材を含有してもよい。充填材としては、樹脂組成物の硬化物の、耐熱性や難燃性を高めるために添加するもの等が挙げられ、特に限定されない。また、充填材を含有させることによって、耐熱性や難燃性等をさらに高めることができる。充填材としては、具体的には、有機/無機中空フィラー、有機コアシェル、さらに有機マイクロカプセル、球状シリカ等のシリカ、アルミナ、酸化チタン、及びマイカ等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、タルク、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、及び炭酸カルシウム等が挙げられる。また、充填材としては、この中でも、シリカ、マイカ、及びタルクが好ましく、球状シリカがより好ましい。また、充填材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、充填材としては、そのまま用いてもよいが、エポキシシランタイプ、ビニルシランタイプ、メタクリルシランタイプ、又はアミノシランタイプのシランカップリング剤で表面処理したものを用いてもよい。このシランカップリング剤としては、充填材に予め表面処理する方法でなく、インテグラルブレンド法で添加して用いてもよい。
【0022】
また、充填材を含有する場合、その含有量は、樹脂成分(前記熱硬化性樹脂と、必要に応じて含まれる硬化剤等)の合計100質量部に対して、1~300質量部であることが好ましく、50~200質量部であることがより好ましい。
【0023】
さらに本実施形態の樹脂組成物には難燃剤が含まれていてもよく、難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤等が挙げられる。ハロゲン系難燃剤の具体例としては、例えば、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン等の臭素系難燃剤や、塩素化パラフィン等の塩素系難燃剤等が挙げられる。また、リン系難燃剤の具体例としては、例えば、縮合リン酸エステル、環状リン酸エステル等のリン酸エステル、環状ホスファゼン化合物等のホスファゼン化合物、ジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩等のホスフィン酸金属塩等のホスフィン酸塩系難燃剤、リン酸メラミン、及びポリリン酸メラミン等のメラミン系難燃剤、ジフェニルホスフィンオキサイド基を有するホスフィンオキサイド化合物等が挙げられる。難燃剤としては、例示した各難燃剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
さらに、本実施形態に係る樹脂組成物には、上記以外にも各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤及びアクリル酸エステル系消泡剤等の消泡剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料や顔料、滑剤、湿潤分散剤等の分散剤等が挙げられる。
【0025】
また、
図2に示すように、給電部2、放射部3、及びキャビティ部4はそれぞれポスト壁導波路9、15、21を有している。ポスト壁導波路とは、ポスト壁に囲まれた領域を電磁波が伝播する導波路であり、ポスト壁導波路には、先行文献1に記載されるような従来の導波管と比べて軽量化、低背化、低コスト化が容易であるという利点がある。さらに、給電部2、放射部3、及びキャビティ部4がそれぞれポスト壁導波路9、15、21を有することによって、スロットアレイアンテナの製造が容易になる。
【0026】
次に、給電部2、放射部3、キャビティ部4の構造について、
図3、
図4などを用いて詳細に説明する。
図3は、
図1のスロットアレイアンテナ1における2×2のアンテナ素子の要素(□で囲んだ部分)を切り出し、分解した図である。つまり、
図3には16×16のアンテナ素子を有するスロットアレイアンテナ1の1/64の部分が示されている。この1/64の部分をつなぎ合わせるとスロットアレイアンテナ1が構成される。なお、
図3では給電部2とキャビティ部4、キャビティ部4と放射部3との間がそれぞれ離間して示されているが、実際には隙間なく積層されている。また、
図4(A)は、給電部2及び放射部3におけるポスト壁導波路9、15の一例を示す概略図であり、
図4(B)はキャビティ部4におけるポスト壁導波路21の一例を示す概略図である。
【0027】
(給電部)
給電部2について
図3、4などを参照して説明する。給電部2は、矩形の板状の誘電体基板5からなり、誘電体基板5は誘電体層6と金属層7、8とを有する。誘電体層6はポスト壁導波路9と誘電体10とを有している。金属層7、8の厚さは、例えば、10~30μm程度である。誘電体層6の厚さbは、例えば、0.05λ
e~0.45λ
e程度である。なお、λ
eは誘電体内の波長であり、下記式(1)によって定義される値である。
【0028】
【0029】
上記式(1)において、λ0は自由空間での波長で、λ0=c/f、cは光速、fは周波数、εrは比誘電率である。
【0030】
また、給電部2のポスト壁導波路9は、
図4(A)に示すように、導体ポスト24の中央にランドとしての金属箔ストリップ25が管軸方向に設けられていてもよい。給電部2のポスト壁導波路9について、
図4(A)に示すような構成とすることによって、導体ポスト24の直径を小さくすることができるという利点がある。なお、金属箔ストリップ25の端と導体ポスト24の端は50μm以上離し、導体ポスト24の直径は0.05mm~0.3λ
eとし、導体ポスト24同士の中心間間隔は直径の1.1~2.5倍とすることが好ましい。
【0031】
また、金属層8には、電磁波が給電される複数の給電スロット11が設けられている。給電スロット11は、例えば、矩形の貫通孔であり、金属層8の平面にマトリクス状に配置されている。複数の給電スロット11は、16×16のアンテナ素子を有するスロットアレイアンテナ1において、8×8の配置で計64個設けられており、2次元の2方向(x軸、y軸方向)にそれぞれ等間隔で配置されている。2方向の間隔は、特に限定されないが、1自由空間波長(λ0)以上2自由空間波長(2λ0)未満の長さの範囲で調整されている。なお、給電スロット11の形状、配置、数は給電する電磁波の特性に合わせて適宜変更される。
【0032】
図5は給電部2の全体構造の一例を示す図である。アンテナ背部の導波管から給電され並列給電回路で等分配された電磁波は、給電スロット11を介して各キャビティ部4に給電される。並列給電回路は例えば、Eベント27、T分岐28、H分岐29から構成されていてもよい。Eベントを利用することにより、アンテナに給電する導波管等の回路をアンテナ背面に配置することができるという利点がある。また、T分岐、H分岐を利用することにより、構造が左右または上下対象になるため、広帯域にわたって電力を等分配することができるという利点がある。
【0033】
(放射部)
放射部3は、給電部2の上方(+z方向)に対向して平行に配置されており、放射部3は、16×16のアンテナ素子を有するスロットアレイアンテナ1において、2×2素子サブアレイを計64個有する。放射部3は、矩形の板状の誘電体基板12からなり、誘電体基板12は、誘電体層13と金属層14とを有する。金属層14の厚さは、例えば、10~30μm程度である。誘電体層13はポスト壁導波路15と誘電体16とを有している。誘電体層13の厚さtsは、例えば、0.1λe~0.5λe程度である。なお、λeは上記式(1)と同様にして定義される値である。
【0034】
また、放射部3のポスト壁導波路15は、給電部2のポスト壁導波路9と同様に、
図4(A)に示すような、導体ポスト24の中央にランドとしての金属箔ストリップ25が管軸方向に設けられていてもよい。放射部3のポスト壁導波路15について、
図4(A)に示すような構成とすることによって、導体ポスト24の直径を小さくすることができるという利点がある。
【0035】
また、金属層14には、電磁波を放射する複数の放射スロット17が設けられている。複数の放射スロット17は、複数の給電スロット11から給電されて励振された電磁波を放射するアンテナ素子である。放射スロット17は、例えば、矩形の貫通孔であり、金属層14の平面にマトリクス状に配置され、2次元の2方向(x軸、y軸方向)にそれぞれ等間隔で配置されている。
【0036】
これらの2方向の隣接する2個の放射スロット17の相互の間隔は、特に限定されないが、隣接する2個の給電スロット11の相互の間隔の半分になっている。すなわち、隣接する放射スロット17の相互の間隔は、0.5自由空間波長(0.5λ0)以上1自由空間波長(λ0)未満である。z軸方向から見て2×2で配置された4個の放射スロット17の中心に1個の給電スロット11が位置するように複数の放射スロット17が配置されている。なお、放射スロット17の形状、配置、数は放射する電磁波の特性に合わせて適宜変更される。
【0037】
(キャビティ部)
キャビティ部4は、給電部2と放射部3との間に設けられ、矩形の板状の誘電体基板18からなり、誘電体層19と金属層20とを有する。誘電体層19はポスト壁導波路21と誘電体22とを有している。金属層20の厚さは、例えば、10~30μm程度である。誘電体層19の厚さtcは、例えば、0.05λe~0.45λe程度である。なお、λeは上記式(1)と同様にして定義される値である。
【0038】
キャビティ部4のポスト壁導波路21は、
図4(B)に示すように、導体ポスト26を複数並べてポスト壁と呼ばれる導波路を形成する通常のポスト壁導波路で構成されてもよい。
【0039】
金属層20には、複数の励振スロット23が設けられている。励振スロット23は、例えば、矩形の貫通孔であり、金属層20の平面にマトリクス状に配置されている。複数の励振スロット23は、16×16のアンテナ素子を有するスロットアレイアンテナ1において、16×16の配置で計256個設けられており、2次元の2方向(x軸、y軸方向)にそれぞれ等間隔で配置されている。
【0040】
これらの2方向の隣接する2個の励振スロット23の相互の間隔は、特に限定されないが、隣接する2個の給電スロット11の相互の間隔の半分になっている。すなわち、隣接する励振スロット23の相互の間隔は、0.5自由空間波長(0.5λ0)以上1自由空間波長(λ0)未満である。z軸方向から見て2×2で配置された4個の励振スロット23の中心に1個の給電スロット11が位置するように複数の励振スロット23が配置されている。なお、励振スロット23の形状、配置、数は励振する電磁波の特性に合わせて適宜変更される。
【0041】
[動作原理]
次に、スロットアレイアンテナ1の動作原理について説明する。
【0042】
給電部2から入射された電磁波は、導波され並列給電回路の略中心で分岐され、その後、導波、分岐を繰り返し、並列給電回路の各終端まで電磁波が導波される。並列給電回路の各終端にそれぞれ複数の給電スロット11が接続されている。
【0043】
各終端まで導波された電磁波は、各給電スロット11を介して各キャビティ部4に放射される。各キャビティ部4内に放射された電磁波は各キャビティ部4内で励振され、励振スロット23を介して放射スロット17より放射される。
【0044】
ここで、キャビティ部4では、複数の放射スロット17に同時に同振幅かつ同位相で電磁波を給電して偏波を励振するために、放射部3と給電部2との平行平板の間に定在波を発生させる。
【0045】
図3に示すような、励振スロット23の位置l
e、w
e、キャビティ部4におけるd
x、d
y、l
c、及びw
c、並びに、キャビティ部4の誘電体22の比誘電率の各条件を調整することによって、広帯域な特性を実現できる。
【0046】
[製造方法]
本実施形態に係るスロットアレイアンテナの製造方法としては、上述のスロットアレイアンテナを得ることができれば、特に限定されないが、例えば、信号電力が給電される複数の給電スロットを有する給電部と、前記給電部に対向して配置され、前記複数の給電スロットから給電されて生じる電磁波を放射するための複数の放射スロットを有する放射部と、前記放射部と前記給電部との間に形成され、前記放射部と前記給電部との間に定在波を発生させるキャビティ部とを備えたスロットアレイアンテナの製造方法であって、前記給電部、前記放射部、及び前記キャビティ部を、誘電体層と金属層を有する誘電体基板を用いてそれぞれ形成する工程、及び、前記給電部、前記キャビティ部、前記放射部をこの順で積層する工程を備え、前記給電部、前記放射部、及び前記キャビティ部を誘電体層と金属層を有する誘電体基板を用いてそれぞれ形成する工程が、前記誘電体層にポスト壁導波路を形成する工程及び、前記金属層にスロットを形成する工程を備え、前記キャビティ部の誘電体層の誘電体の比誘電率が、前記給電部及び前記放射部の誘電体層の誘電体の比誘電率よりも大きい、スロットアレイアンテナの製造方法を例示することができる。
【0047】
上述した製造方法によれば、前記誘電体基板として例えば電子回路のプリント基板を用いることができるため、従来のプリント基板加工技術を用いて前記誘電体基板を加工することによって、スロットアレイアンテナを容易に製造することができる。また、前記キャビティ部の誘電体層の誘電体の比誘電率が、前記給電部及び前記放射部の誘電体層の誘電体の比誘電率よりも大きいため、高利得、高効率、広帯域のスロットアレイアンテナを製造することができる。
【0048】
以下に、より具体的に、前記スロットアレイアンテナを製造する方法について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、前記スロットアレイアンテナが備える前記給電部、前記放射部、及び前記キャビティ部についての説明は、上記[アンテナ構造]における前記給電部、前記放射部及び前記キャビティ部の説明と同様の説明をすることができる。また、前記給電部、前記放射部及び前記キャビティ部の誘電体層の誘電体についても、上記[アンテナ構造]における前記給電部、前記放射部及び前記キャビティ部の誘電体の説明と同様の説明をすることができる。
【0049】
前記給電部、前記放射部、及び前記キャビティ部を、誘電体層と金属層を有する誘電体基板を用いてそれぞれ形成する工程は、前記誘電体層にポスト壁導波路を形成する工程及び、前記金属層にスロットを形成する工程を備えている。前記誘電体層にポスト壁導波路を形成する方法の一例としては、前記誘電体基板に対して、スルーホールまたはビアホールと呼ばれるプリント基板加工技術を用いてポスト壁導波路に対応する位置にドリル等によって貫通孔を開け、全面導電メッキすることによって前記誘電体層にポスト壁導波路を形成する方法を例示することができる。前記給電部においては、例えば、上述したようなEベント、T分岐、H分岐などから構成される並列給電回路をポスト壁導波路によって形成することができる。
【0050】
また、前記金属層にスロットを形成する方法の一例としては、前記金属層に対して、エッチング加工等により所望のスロット(回路パターン)を形成する方法を例示することができる。
【0051】
また、前記給電部、前記キャビティ部、前記放射部をこの順で積層する工程において、前記給電部、前記キャビティ部、前記放射部がこの順で積層されていれば、積層する方法については特に限定されない。
【0052】
さらに、上述した各工程を行う順番については特に限定されない。例えば、給電部、放射部、及びキャビティ部をそれぞれ形成した後に、それらを積層してスロットアレイアンテナを製造してもよく、誘電体基板を積層した後に、当該誘電体基板を加工して給電部、放射部、及びキャビティ部をそれぞれ形成し、スロットアレイアンテナを製造してもよい。
【0053】
以下には、
図3を参照して、スロットアレイアンテナ1の製造方法の一実施形態についてさらに具体的に説明する。
【0054】
(1)まず、誘電体層19と誘電体層19の両面に金属層8、20を有する誘電体基板に対して、スルーホールまたはビアホールと呼ばれるプリント基板加工技術を用いて、ポスト壁導波路21に対応する位置にドリル等によって貫通孔を開け、全面導電メッキを施す。これによってポスト壁導波路21が形成され、両面に金属層8、20を有する誘電体基板が形成される。
【0055】
(2)(1)の工程で得られた誘電体基板の金属層8、20に対して、エッチング加工により所望のスロット(回路パターン)を形成する。
【0056】
(3)前記貫通孔中に、細かな樹脂粉や銀粒子を封入して穴埋めした後、導電メッキ加工で貫通孔の開口を塞ぐ。この工程により、貫通孔中への空気の残留や、貫通孔の開口直上・直下の基板の陥没を防ぐことができる。
【0057】
(4)次に、(1)~(3)の工程によって得られた誘電体基板の両面にさらに誘電体層6、13を積層し、誘電体層6、13のそれぞれの表層を導電メッキして金属層7、14を形成する。誘電体層6と金属層7とを有する誘電体基板、及び、誘電体層13と金属層14を有する誘電体基板に対して、それぞれポスト壁導波路9、15に対応する位置にドリル等によって貫通孔を開け、全面導電メッキを施す。
【0058】
(5)金属層7、14に対して、エッチング加工により所望のスロット(回路パターン)を形成することによってスロットアレイアンテナ1を得ることができる。
【0059】
なお、本実施形態に係るスロットアレイアンテナの製造方法は、上述した製造方法に限らず、例えば、さまざまな加工上の制約を考慮して、金属層をさらに設けることもできる。具体的には、給電部2のポスト壁導波路9、及び、放射部3のポスト壁導波路15は、
図4(A)に示すように、導体ポスト24の中央にランドとしての金属箔ストリップ25が管軸方向に設けられていてもよい。このように導体ポスト24の中央にランドとしての金属箔ストリップ25を形成するために、上記(5)において、金属層7、14に金属箔ストリップを形成し、(3)~(5)を2回繰り返してもよい。なお、さらに金属箔ストリップを形成する場合には、(3)~(5)を2回以上繰り返してもよい。
【0060】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るスロットアレイアンテナにおいて、以下に具体的に説明するが、これに限定されない。第2実施形態に係るスロットアレイアンテナは、基本的に第1実施形態に係るスロットアレイアンテナと同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、第1実施形態と相違する構成についてのみ説明する。
【0061】
第2実施形態に係るスロットアレイアンテナにおいて、キャビティ部はTM410モードの定在波を発生させる。このような構成により、製造が容易であり、高利得、高効率、広帯域のスロットアレイアンテナをより確実に得ることができる。
【0062】
ここで、300GHz以上の高い周波数用のスロットアレイアンテナを製造する場合、製造上の制約を考慮すると、
図6(A)に示すような、キャビティ部4内でTM210モードが発生する際には、励振スロット23の位置とキャビティ部4のポスト壁との間隔が狭いため、製造上の制約条件を満たすことが難しい。
【0063】
一方、
図6(B)に示すように、キャビティ部4の幅d
xを
図6(A)よりも約2倍大きくして高次モードのTM410モードを励振させると、製造上の制約条件をより確実に満たすことができる。また、TM410モードを励振させると、高利得、高効率、広帯域のスロットアレイアンテナをより確実に得られることもわかった。
【0064】
したがって、キャビティ部がTM410モードの定在波を発生させることにより、製造が容易で、より確実に高利得、高効率、広帯域のスロットアレイアンテナを得ることができる。
【0065】
キャビティ部4内でTM410モードを発生させるためには、
図3に示すd
x、d
yが0の場合、下記式(2)の関係式からl
c、w
c及びキャビティ部4の誘電体22の比誘電率ε
rの各条件を調整する。下記式(2)において、cは光速、fは周波数、ε
rは比誘電率である。
【0066】
【0067】
図3に示すd
x、d
yが0より大きい場合には、それに応じてl
c、w
cの値を大きくすることによって、キャビティ部4内でTM410モードが発生するように調整することができる。
【0068】
なお、上述したように、
図3に示すd
x、d
yが0の場合、上記式(2)の関係式が成り立つため、300GHz以上の高い周波数用のスロットアレイアンテナにおいて、キャビティ部4がTM410モードの定在波を発生させる際には、給電部2、放射部3、キャビティ部4の誘電体の比誘電率を特に限定しなくてもよい場合がある。すなわち、キャビティ部4がTM410モードの定在波を発生させることによって、給電部2、放射部3、キャビティ部4の誘電体の比誘電率を特に限定しない場合であっても、製造が容易であり、高利得、高効率、広帯域のスロットアレイアンテナを得ることができる。
【実施例0069】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0070】
[試験例1]
図3に示すような2×2素子サブアレイを有するスロットアレイアンテナにおいて、誘電体10、16、22の比誘電率を変化させて、シミュレーション解析によるアンテナ特性を評価した。
【0071】
(実施例1)
図3に示すような2×2素子サブアレイを有するスロットアレイアンテナであって、給電部2及び放射部3の誘電体10、16の比誘電率が1.81、キャビティ部4の誘電体22の比誘電率が2.98である、スロットアレイアンテナについて遺伝的アルゴリズム(GA)で広帯域設計した。解析には有限要素法ハイブリッド法(解析ソフト:Ansys Electronics HFSS)を用いた。設計周波数は280~400GHzである。
【0072】
最適化変数である設計パラメータを表1に示す。
図3に対応する各パーツの長さと幅、放射スロットとキャビティ部の厚さ、キャビティ部の内部の壁のそれぞれの幅と中心間までの距離、給電部の縦と横の長さ、p、qはポスト壁と結合スロット端のx方向、y方向の距離とし、これらを設計パラメータとした。また、w
rの値は、w
sと、製造制約(ポスト直径、ランド幅)によって決定され、w
r=w
s+ポスト直径+ランド幅である。ポスト直径は105μmであり、ランド幅は50μmである。素子間隔はs
x=s
y=0.7mm=0.8λ
0に固定した。
【0073】
GAの目的関数の定義は下記の数式(3)であり、xは設計パラメータ、fは設計周波数280~400GHz、fcは設計周波数近傍の330、340、350GHzであり、関数S11は与えられた周波数における反射の値をdBで返し、関数BW(n;m)はnがm以下となる反射の比帯域を返す関数である。
【0074】
【0075】
この目的関数Fが最小となるように最適化した。第一項はfcにおいて反射が-30dB以下になるように、第二項はfにおいてVSWR1.5以下の帯域が10%以上となるように働く。初期値として60GHz帯で設計されたアンテナを用いた。
【0076】
最適化で得られたパラメータを表1に、各パーツの位置関係を
図7に、反射の周波特性を
図8に示す。なお、
図1や
図3のように、放射スロット17はx方向、y方向に周期的に配列される。この周期(隣り合う放射スロット17の中心間間隔)はアンテナ特性に影響する重要なパラメ―タである。
図7におけるPBWとは周期境界壁・周期境界条件のことで、隣に同じ形状の放射素子が無限に並んでいる影響を含めることができる。後述する
図9、11、13、15におけるPBWについても同様である。
【0077】
中心周波数340GHzにおいては反射が-21.6dB以下に抑圧されており、反射-14dB以下の比帯域が21.2%となった。
【0078】
【0079】
(比較例1)
図3に示すような2×2素子サブアレイを有するスロットアレイアンテナであって、給電部2、放射部3及びキャビティ部4の誘電体のいずれもが比誘電率1.81の誘電体である、スロットアレイアンテナについて遺伝的アルゴリズム(GA)で広帯域設計した。解析には有限要素法ハイブリッド法(解析ソフト:Ansys Electronics HFSS)を用いた。設計周波数は280~400GHzである。
【0080】
図3に対応する設計パラメータを表2に示す。また、w
rの値は、w
sと、製造制約(ポスト直径、ランド幅)によって決定され、w
r=w
s+ポスト直径+ランド幅である。ポスト直径は105μmであり、ランド幅は50μmである。素子間隔はs
x=s
y=0.7mm=0.81λ
0に固定し、その他のパラメータは実施例1と同様にして最適化によって得られた。さらに、各パーツの位置関係を
図9に示す。また、最適化によって得られた反射の周波特性を
図10に示す。中心周波数340GHzにおいては反射が-20.9dB以下に抑圧されており、反射-14dB以下の比帯域が14.7%となった。
【0081】
【0082】
(比較例2)
図3に示すような2×2素子サブアレイを有するスロットアレイアンテナであって、給電部2、放射部3及びキャビティ部4の誘電体のいずれもが比誘電率2.98の誘電体である、スロットアレイアンテナについて遺伝的アルゴリズム(GA)で広帯域設計した。解析には有限要素法ハイブリッド法(解析ソフト:Ansys Electronics HFSS)を用いた。設計周波数は280~400GHzである。
【0083】
図3に対応する設計パラメータを表2に示す。また、w
rの値は、w
sと、製造制約(ポスト直径、ランド幅)によって決定され、w
r=w
s+ポスト直径+ランド幅である。ポスト直径は105μmであり、ランド幅は50μmである。素子間隔はs
x=s
y=0.61mm=0.70λ
0に固定し、その他のパラメータは実施例1と同様にして最適化によって得られた。さらに、各パーツの位置関係を
図11に示す。また、最適化によって得られた反射の周波特性を
図12に示す。中心周波数340GHzにおいては反射が-17.9dB以下に抑圧されており、反射-14dB以下の比帯域が10.6%となった。
【0084】
【0085】
(考察)
キャビティ部4の誘電体の比誘電率が、給電部2及び放射部3の誘電体の比誘電率よりも大きい実施例1では、給電部2、放射部3及びキャビティ部4の誘電体の比誘電率が全て同じである比較例1、2に比べて反射-14dB以下の比帯域が高く、300GHz帯において広帯域であった。
【0086】
また、比較例2においては誘電体の比誘電率が高く、素子間隔を実施例1や比較例1における素子間隔よりも狭める必要があり、アンテナ利得が約1dB低下した。
【0087】
[試験例2]
図3に示すような2×2素子サブアレイを有するスロットアレイアンテナにおいて、キャビティ部4がTM210モードの定在波を発生させる場合と、TM410モードの定在波を発生させる場合のそれぞれの条件における、スロットアレイアンテナの特性をシミュレーション解析によって評価した。
【0088】
(実施例2)
図3に示すような2×2素子サブアレイを有するスロットアレイアンテナであって、給電部2及び放射部3の誘電体の比誘電率が1.81、キャビティ部4の誘電体の比誘電率が2.98であり、キャビティ部4がTM210モードの定在波を発生させるように、スロットアレイアンテナについて遺伝的アルゴリズム(GA)で広帯域設計した。解析には有限要素法ハイブリッド法(解析ソフト:Ansys Electronics HFSS)を用いた。設計周波数は280~400GHzである。
【0089】
図3に対応する設計パラメータを表5に示す。また、w
rの値は、w
sと、製造制約(ポスト直径、ランド幅)によって決定され、w
r=w
s+ポスト直径+ランド幅である。ポスト直径は105μmであり、ランド幅は50μmである。素子間隔はs
x=s
y=0.7mm=0.81λ
0に固定し、その他のパラメータは実施例1と同様にして最適化によって得られた。さらに、キャビティ部4内でTM210モードの定在波が発生する際の各パーツの位置関係を
図13に示す。また、最適化によって得られた反射の周波特性を
図14に示す。中心周波数340GHzにおいては反射が-19.2dB以下に抑圧されており、反射-14dB以下の比帯域が8.2%となった。
【0090】
【0091】
(実施例3)
図3に示すような2×2素子サブアレイを有するスロットアレイアンテナであって、給電部2及び放射部3の誘電体の比誘電率が1.81、キャビティ部4の誘電体の比誘電率が2.98であり、キャビティ部4がTM410モードの定在波を発生させるために実施例2と比べてキャビティ部4の幅d
xを約2倍に大きくした。このスロットアレイアンテナについて遺伝的アルゴリズム(GA)で広帯域設計した。解析には有限要素法ハイブリッド法(解析ソフト:Ansys Electronics HFSS)を用いた。設計周波数は280~400GHzである。
【0092】
図3に対応する設計パラメータを表5に示す。また、w
rの値は、w
sと、製造制約(ポスト直径、ランド幅)によって決定され、w
r=w
s+ポスト直径+ランド幅である。ポスト直径は105μmであり、ランド幅は50μmである。素子間隔はs
x=s
y=0.7mm=0.81λ
0に固定し、その他のパラメータは実施例1と同様にして最適化によって得られた。さらに、キャビティ部4内でTM410モードの定在波が発生する際の各パーツの位置関係を
図15に示す。また、最適化によって得られた反射の周波特性を
図16に、利得データを
図17に示す。中心周波数340GHzにおいては反射が-22.1dB以下に抑圧されており、反射-14dB以下の比帯域が13.5%となった。また、340GHzで利得が24.6dBiであった。
【0093】
【0094】
(考察)
キャビティ部内でTM410モードが励振するようにパラメータを設定した実施例3では、キャビティ部内でTM210モードが励振するようにパラメータを設定した実施例2よりも、広帯域な特性を得ることができた。