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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122373
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 5/30 20060101AFI20240902BHJP
   H04N 1/21 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B41J5/30 Z
H04N1/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029885
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】大橋 雅司
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】次村 浩一
(72)【発明者】
【氏名】疇地 悠
(72)【発明者】
【氏名】中村 直行
(72)【発明者】
【氏名】中野 靖大
【テーマコード(参考)】
2C187
【Fターム(参考)】
2C187AC06
2C187AC08
2C187AE07
2C187BF14
2C187BG03
2C187BG05
2C187BG17
2C187BG20
2C187BH08
2C187BH27
2C187BH30
2C187FA02
2C187FA06
2C187FB12
(57)【要約】
【課題】複数種類の解析処理に対応可能でありながら、作業領域として使用される記憶部の記憶領域が圧迫されにくい。
【解決手段】プリンタのROMには、複数種類のPDLに対応した複数種類の解析プログラムが格納されている。解析プログラム転送部204は、PDL画像データが示すPDLの種類に応じた解析プログラムを上記ROMからプリンタのRAMに転送する。画像データ解析部203は、RAMに転送された解析プログラムに基づいてPDL画像データに解析処理を施す。画像形成制御部202は、画像データ解析部203による解析処理の結果として生成された解析済みデータに基づいて画像形成処理を実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して画像を形成する画像形成部と、
解析処理の対象となる解析対象データと、前記解析処理の種類を示す種類データとを含む前記画像形成部による画像形成用のデータである画像データを取得する画像データ取得部と、
前記解析処理及び前記画像形成部による画像形成の実行時に作業用の領域として使用される記憶領域を有する第1記憶部と、
第2記憶部に記憶された複数種類の前記解析処理用のプログラムデータのうち前記種類データが示す種類に応じた前記プログラムデータを含む一部のデータを前記第1記憶部に転送するプログラムデータ転送部と、
前記第1記憶部に記憶された解析処理用のプログラムデータに基づいて前記解析対象データに対する前記解析処理を実行する画像データ解析部と、
前記画像データ解析部による前記解析処理の結果として生成された解析済みデータに基づいて前記画像形成部に画像を形成させる画像形成処理を実行する画像形成制御部とを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成処理及び前記解析処理の少なくともいずれかにおける作業領域として使用される前記第1記憶部の記憶領域を確保する領域確保部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記領域確保部が、
前記第1記憶部内の使用可能な記憶領域の大きさが所定の閾値を超えている場合に、所定の大きさの記憶領域を前記第1記憶部内に確保する第1確保処理を実行し、
前記第1記憶部内の使用可能な記憶領域の大きさが所定の閾値を超えている場合に、前記解析済みデータ及び前記プログラムデータの種類の少なくともいずれかに応じた大きさであって前記所定の大きさ以下の大きさの記憶領域を前記第1記憶部内に確保する第2確保処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記解析処理には第1段階と第2段階とがあり、
前記第2確保処理が、
前記画像データ解析部による前記第1段階の解析処理の結果として生成された前記解析済みデータである1次解析済みデータに基づいて、前記画像形成処理及び前記第2段階の解析処理の少なくともいずれかにおける作業用の記憶領域の大きさを取得する取得処理と、
前記取得処理により取得された大きさの記憶領域を前記第1記憶部内に確保する取得領域確保処理とを含んでおり、
前記画像形成処理及び前記第2段階の解析処理の少なくともいずれかにおいて、前記取得領域確保処理により確保された前記第1記憶部の記憶領域が作業用の記憶領域として使用され、
前記画像形成処理が、前記画像データ解析部による前記第2段階の解析処理の結果として生成された前記解析済みデータである2次解析済みデータに基づいて実行されることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記領域確保部が、前記プログラムデータの種類に基づく大きさの記憶領域を前記第1記憶部内に確保することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記プログラムデータに関する少なくともいずれか2種類において、前記画像データが表現可能な色の数が互いに異なっていることを特徴とする請求項3又は5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記解析処理には第1段階と第2段階とがあり、
前記領域確保部が、
前記画像データ解析部による前記第1段階の解析処理の結果として生成された前記解析済みデータである1次解析済みデータに基づいて、前記画像形成処理及び前記第2段階の解析処理の少なくともいずれかにおける作業用の記憶領域の大きさを取得する取得処理と、
前記取得処理により取得された大きさの記憶領域を前記第1記憶部内に確保する取得領域確保処理とを実行し、
前記画像形成処理及び前記第2段階の解析処理の少なくともいずれかにおいて、前記取得領域確保処理により確保された前記第1記憶部の記憶領域が作業用の記憶領域として使用され、
前記画像形成処理が、前記画像データ解析部による前記第2段階の解析処理の結果として生成された前記解析済みデータである2次解析済みデータに基づいて実行されることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記1次解析済みデータが、前記画像形成に使用される媒体のサイズ及び解像度の少なくともいずれかを示すデータを含んでいることを特徴とする請求項4又は7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記領域確保部が、確保するべき記憶領域の大きさを前記プログラムデータの種類、前記媒体のサイズ及び前記解像度と関連付けて記憶する確保領域記憶部を含んでいることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に対して画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ページ記述言語(PDL;page description language)によって記述されたPDLデータ等の解析処理が必要なデータに基づいて媒体上に画像を形成する画像形成装置がある。特許文献1の画像形成装置はその一例である。この画像形成装置の記憶部には、外部の端末から受け取ったPDLデータを解析し、その解析結果として解析済みのデータ(ラスターデータ)を生成する解析処理用のプログラムデータが格納されている。そして、この画像形成装置の画像形成部は、生成された解析済みのデータに基づいて媒体上に画像を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2024-127923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような画像形成装置において、画像形成を実行するためのプログラムデータはROM(Read Only Memory)等の長期的な記憶用の記憶部に格納されている。このプログラムデータは、通常、装置の電源オン時等、画像形成の実行に先立つタイミングでRAM等の一時作業用の記憶領域に一斉に転送される。このようなプログラムデータには上記解析処理用のプログラムデータも含まれる。そして、画像形成の実行時、上記一時作業用の記憶部において、プログラムデータが転送された記憶領域以外の領域が作業領域として使用されることになる。
【0005】
一方で、上記のような解析処理には複数種類の処理が存在する場合がある。例えば、PDLにはPCL(Printer Control Language)やPostScript等があり、これらに応じた複数種類の解析処理が存在する。したがって、画像形成装置を複数種類の解析処理に対応可能とする場合、長期的な記憶用の記憶部に複数種類の解析処理用のプログラムデータを用意しておく必要がある。この場合、上記のように画像形成用のプログラムデータが画像形成に先立って一時作業用の記憶部に一斉に転送されると、転送されたデータ中の複数種類の解析処理用のプログラムデータが作業用の記憶領域を圧迫しやすい。
【0006】
本発明の目的は、複数種類の解析処理に対応可能でありながら、作業領域として使用される記憶部の記憶領域が圧迫されにくい画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像形成装置は、媒体に対して画像を形成する画像形成部と、解析処理の対象となる解析対象データと、前記解析処理の種類を示す種類データとを含む前記画像形成部による画像形成用のデータである画像データを取得する画像データ取得部と、前記解析処理及び前記画像形成部による画像形成の実行時に作業用の領域として使用される記憶領域を有する第1記憶部と、第2記憶部に記憶された複数種類の前記解析処理用のプログラムデータのうち前記種類データが示す種類に応じた前記プログラムデータを含む一部のデータを前記第1記憶部に転送するプログラムデータ転送部と、前記第1記憶部に記憶された解析処理用のプログラムデータに基づいて前記解析対象データに対する前記解析処理を実行する画像データ解析部と、前記画像データ解析部による前記解析処理の結果として生成された解析済みデータに基づいて前記画像形成部に画像を形成させる画像形成処理を実行する画像形成制御部とを備えている。
【0008】
なお、第2記憶部は、ROMのように装置内に配置される記憶部であっても、装置に接続されたUSBメモリのように装置外に配置される記憶部であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
画像データの取得後に、複数種類の解析処理用のプログラムデータ全体のうち、画像データが示す種類に応じたプログラムデータを含む一部のデータが第2記憶部から第1記憶部の記憶領域に転送される。したがって、複数種類の解析処理に対応可能であると共に、複数種類の解析処理用のプログラムデータ全体があらかじめ第1記憶部に転送される場合と比べて、第1記憶部の作業用の記憶領域が圧迫されにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るプリンタの構成を示すブロック図である。
図2図1のプリンタが取得する画像データのデータ構造を示す概念図である。
図3図1のプリンタのROMに格納されるデータ及びRAMにおいて確保される記憶領域を示す概念図である。
図4図1のプリンタの制御部に含まれる機能部の構成を示すブロック図である。
図5図1のプリンタの制御部が実行する一連の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好適な一実施形態に係るプリンタ1について図1図5を参照しつつ、以下に説明する。プリンタ1は、図1に示すように、画像形成部10及び制御部20を有している。画像形成部10は、互いにサイズの異なる複数種類の印刷用紙を収容している。この用紙サイズには、例えばA4、B4、A3等、複数のサイズがある。画像形成部10は、いずれかのサイズの印刷用紙にインクを付着させることにより、画像データが示す画像を印刷用紙上に形成する画像形成動作を実行する。
【0012】
画像データには、図2に示すデータ構造を有するPDL画像データとラスター画像データとがある。PDL画像データは、PDLの種類(以下、PDL種類とする)を示すデータ(本発明の「種類データ」に相当する)及びPDLデータを含んでいる。PDLデータ(本発明の「解析対象データ」に相当する)は、ページ記述言語(PDL;page description language)によって記述されたデータである。PDLは、プリンタ等の印刷装置による印刷内容を表現するためのプログラミング言語である。PDLには、PCL(Printer Control Language)やPostScript、PDF(Portable Document Format)等、複数種類がある。本実施形態では、3種類のPDLが用いられるものとする。以下、これら3種類のPDLをPDL_A、PDL_B及びPDL_Bとの表す。PDL_AはRGBの3色で画像が表現されており、PDL_B及びPDL_CはCMYKの4色で画像が表現されている。PDL画像データが示すPDL種類は、当該PDL画像データに使用されているPDLがPDL_A~PDL_Cのうちいずれに該当するかを示している。PDLデータは、画像形成に使用される用紙サイズ、解像度及び画像描画命令をPDLで記述したデータを含んでいる。
【0013】
PDL画像データに基づく画像形成に当たっては、PDL種類に対応した解析プログラムによる解析処理が必要である。この解析処理には第1段階及び第2段階がある。PDL画像データ中のPDLデータに第1段階の解析処理が施されることで、PDLデータ中の用紙サイズ及び解像度の各値並びに画像描画命令が取得される。なお、このように第1段階の解析処理の結果として取得された用紙サイズ及び解像度の各値並びに画像描画命令を示すデータが本発明の「1次解析済みデータ」に相当する。第2段階の解析処理において、第1段階の解析処理により取得された画像描画命令が実行されることにより、印刷用紙に形成するべき画像を示すラスター画像データが取得される。なお、このように第2段階の解析処理の結果として取得されたラスター画像データが本発明の「2次解析済みデータ」に相当する。そして、これらの解析処理により取得された用紙サイズ、解像度及びラスター画像データに基づくことで、画像形成部10による画像形成が可能となる。
【0014】
制御部20は、図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアを備えている。
【0015】
ROM22は、不揮発性メモリからなり、長期的なデータ記憶用の記憶部(本発明の「第2記憶部」に相当する)として使用される。ROM22には、主に、CPU21及びASICが実行するプログラムデータ等が格納されている。具体的には、図3に示すように、解析プログラムA~C、その他のプログラム等のデータ及び後述の必要領域テーブルを示すデータが格納されている。解析プログラムA~Cは、PDL_Aに関する解析処理、PDL_Bに関する解析処理及びPDL_Cに関する解析処理をそれぞれ施すプログラムである。解析プログラムA~Cのいずれも、第1段階の解析処理を行うプログラム部分である解析部1と、第2段階の解析処理を行うプログラム部分である解析部2とを含んでいる。図3に示すその他のプログラム等に係るデータは、プリンタ1の電源起動時の処理や画像形成処理等、解析処理以外の処理に使用されるプログラム等のデータである。
【0016】
RAM23は、揮発性メモリからなり、一時作業用の記憶部(本発明の「第1記憶部」に相当する)として使用される。RAM23は、主に、CPU21がプログラムを実行する際に用いるデータを記憶する。ハードウェアであるCPU21は、ROM22及びRAM23に格納されたソフトウェアであるプログラムデータその他のデータに従って各種の処理を実行する。RAM23には、各種処理に当たって使用される記憶領域が確保される。まず、ROM22に格納されたプログラムデータのうち、解析プログラムA~Cを含む一部のプログラムに係るデータが転送されるプログラムデータ用の記憶領域が確保される。また、解析プログラムA~CによるPDLデータの解析処理用の作業領域が確保される。さらに、画像形成部10に画像形成を行わせる画像形成処理用の作業領域が確保される。これらの作業領域が確保された場合、残りの領域がその他の作業領域として使用されることになる。この作業領域には、外部から取得される画像データが格納される。
【0017】
制御部20を構成するCPU21を含むハードウェアは、RAM23のプログラムデータ用の記憶領域に転送されたプログラムデータに基づいて各種の処理を実行する。これにより、各種の処理を実行する各種の機能部が図4に示すように制御部20内に構築される。例えば、RAM23に転送された画像形成処理用のプログラムに基づく機能部として画像形成制御部202が構築される。RAM23に転送された解析プログラムA~Cのプログラムに基づく機能部として画像データ解析部203が構築される。なお、解析プログラムA~Cのそれぞれにおいては、解析部1及び解析部2のいずれか一方のみがRAM23に転送されると共に、転送された一方が他方と独立に実行されることが可能である。RAM23に転送されたその他のプログラムデータに基づく機能部として画像データ取得部201、解析プログラム転送部204(本発明の「プログラムデータ転送部」に相当する)及び領域確保部205が構築される。これらの各機能部による具体的な処理については後述する。
【0018】
ところで、プリンタ1の電源オン時、プリンタ1を各種の処理を実行可能な状態にするため、ROM22に格納されたプログラムデータのうち、画像形成処理用のプログラムを含む一連のプログラムが、RAM23に一斉に転送される。仮に、これら一連のプログラムと同様に、解析プログラムA~Cの3種類の解析プログラムも電源オン時にROM22からRAM23に一斉転送されるとすると、複数の解析プログラムのデータによって記憶領域が占有されるため、RAM23のその他作業用の記憶領域が過剰に圧迫されるおそれがある。
【0019】
また、画像データの内容によらず、解析処理や画像形成処理のための作業領域がRAM23に一律の大きさで確保される構成が採用されると、あらゆる画像データに対応できるように最大の大きさで作業領域の確保がなされる必要が生じる。よって、上記同様、RAM23のその他作業用の記憶領域が過剰に圧迫されるおそれがある。
【0020】
そこで、本実施形態においては、RAM23の記憶領域が過剰に圧迫されるのを抑制するため、プリンタ1の電源オン時にはROM22の解析プログラムA~CのいずれもRAM23に転送しない構成が採用されている。そして、画像形成の内容に応じた必要な大きさの作業領域をRAM23に確保するように、制御部20又は制御部20内の各種機能部が以下の処理を実行する。
【0021】
図5に示すように、まず、画像データ取得部201が、プリンタ1と各種の通信ネットワークやインタフェースを通じて接続された外部のコンピュータやUSBメモリ等の外部記憶デバイスから送信された画像データを取得する(S1)。画像データ取得部201は、取得した画像データをRAM23の作業領域に格納する。
【0022】
次に、制御部20は、S1で取得された画像データがPDL画像データであるかラスター画像データであるかを判定する(S2)。この判定は、画像データのヘッダ情報を照会した結果、ヘッダ情報が示すデータの種類がPDLであるかラスターであるかに基づいてなされる。画像データがラスター画像データであると判定すると(S2、ラスター)、画像形成制御部202は、S1で取得されたラスター画像データに基づく画像形成を画像形成部10に行わせる(S9)。
【0023】
一方、画像データがPDL画像データであると判定すると(S2、PDL)、制御部20は、RAM23の空き領域の大きさが所定の閾値を超えているか否かを判定する(S3)。この処理では、RAM23において、使用可能な記憶領域の大きさ、つまり、作業領域として確保済みの領域を除いた残りの領域の大きさが所定の閾値を超えているか否かが判定される。所定の閾値は、例えば、後述の必要領域テーブルにおいて、第2段階の解析処理に必要な記憶領域と画像形成処理に必要な記憶領域との合計の記憶領域の大きさに関する最大値(後述の表1では、網掛けされたセルにおける140+220=360)に設定される。
【0024】
RAM23の空き領域の大きさが所定の閾値未満であると判定すると(S3、No)、解析プログラム転送部204は、解析プログラムA~Cのうち、PDL画像データ中のPDL種類に対応する解析プログラムの解析部1をROM22からRAM23に転送する(S4)。次に、画像データ解析部203が、RAM23に転送された解析部1のプログラムに従って第1段階の解析処理をPDL画像データに施す(S5)。これにより、PDL画像データ中のPDLデータが示す用紙サイズ及び解像度並びに画像描画命令が取得される。
【0025】
次に、領域確保部205が、S5で取得された用紙サイズ及び解像度に応じて、第2段階の解析処理及び画像形成処理用にRAM23の記憶領域内に確保されるべき記憶領域の大きさを取得する(S6)。この処理(本発明の「取得処理」に相当する)は、ROM22に格納された必要領域テーブルに基づいて行われる。必要領域テーブルは、表1に一例を示すように、用紙サイズ及び解像度並びにPDLの種類と、第2段階の解析処理及び画像形成処理のそれぞれに必要な作業領域の大きさとを関連付けるテーブルである。なお、ROM22が必要領域テーブルを記憶する機能が本発明の「確保領域記憶部」の機能に相当する。
【0026】
【表1】
【0027】
表1において、イ、ロ及びハは用紙サイズを示し、イのサイズが最も大きく、ロのサイズが2番目に大きく、ハのサイズが最も小さい。低、中及び高は解像度の高さを示す。「第2解析」の行の数値は、各用紙サイズ及び各解像度において第2段階の解析処理に必要な記憶領域の大きさを示す。この記憶領域は、第2段階の解析処理を行う解析プログラムの解析部2を格納する記憶領域と、第2段階の解析処理において作業領域として使用される記憶領域との両方を含んでいる。「画像形成」の行の数値は、各用紙サイズ及び各解像度において画像形成処理に必要な作業領域の大きさを示す。表2に示すように、「第2解析」及び「画像形成」のいずれにおいても、用紙サイズが大きいほど必要な記憶領域が大きい。「第2解析」においては解像度が違っても必要な記憶領域に違いはない一方で、「画像形成」においては解像度が高いほど必要な作業領域が大きい。「画像形成」において、PDL_AとPDL_B又はPDL_Cとの間に必要な記憶領域の大きさの違いがあるのは、PDL_AとPDL_B又はPDL_Cとの間に上記の通り表現可能な色の数の違いがあるためである。つまり、表現可能な色の数に違いがあると、ラスター画像データの大きさに違いが生じること等による。
【0028】
次に、領域確保部205は、第1段階の解析処理が完了したため不要となった解析プログラムの解析部1が格納されたRAM23の記憶領域を解放する(S7)。次に、領域確保部205は、S6で取得した記憶領域の大きさに応じたRAM23の記憶領域を確保する(S8)。つまり、領域確保部205は、必要領域テーブルに基づいて取得した大きさに対応する第2段階の解析処理用及び画像形成処理用の記憶領域をRAM23の記憶領域内にそれぞれ確保する。なお、この処理が本発明の「第2確保処理」に相当する。次に、解析プログラム転送部204は、解析プログラムA~Cのうち、PDL画像データ中のPDL種類に対応する解析プログラムの解析部2をROM22から、S8(又は、後述のS13)で確保されたRAM23の記憶領域に転送する(S9)。次に、画像データ解析部203が、RAM23に転送された解析部2のプログラムに従って、S5(又は、後述のS15)で取得された画像描画命令に基づく第2段階の解析処理を行う(S10)。この処理において、S8(又は、後述のS13)で確保されたRAM23の記憶領域が作業領域として使用される。これにより、印刷用紙に形成するべき画像の内容を示すラスター画像データが取得される。
【0029】
次に、領域確保部205は、第2段階の解析処理が完了したため不要となった解析プログラムの解析部2が格納されたRAM23の記憶領域を解放する(S11)。次に、画像形成制御部202は、S10で取得されたラスター画像データに基づく画像形成処理を行う(S12)。この処理において、S8(又は、後述のS13)で確保されたRAM23の記憶領域が作業領域として使用される。そして、一連の処理が終了する。
【0030】
一方、S3において、RAM23の空き領域の大きさが所定の閾値を超えていると判定した場合(S3、Yes)、領域確保部205は、第2段階の解析処理及び画像形成処理用の記憶領域として所定の大きさの記憶領域をRAM23の記憶領域内に確保する(S13)。ここで、所定の大きさは、例えば、上記必要領域テーブルにおいて、第2段階の解析処理に必要な記憶領域と画像形成処理に必要な記憶領域との合計の記憶領域の大きさに関する最大値(後述の表1では、網掛けされたセルにおける140+220=360)に設定される。なお、この処理が本発明の「第1の確保処理」に相当する。次に、解析プログラム転送部204は、解析プログラムA~Cのうち、PDL画像データ中のPDL種類に対応する解析プログラムの解析部1をROM22からRAM23に転送する(S14)。次に、画像データ解析部203が、RAM23に転送された解析部1のプログラムに従って第1段階の解析処理をPDL画像データに施す(S15)。次に、領域確保部205は、解析処理が完了したため不要となった解析プログラムの解析部1が格納されたRAM23の記憶領域を解放する(S16)。次に、S9からの処理が実行される。
【0031】
以上説明した本実施形態によると、PDL画像データの取得後に、解析プログラムA~Cのうち、PDL画像データ中のPDL種類に応じたものがROM22からRAM23の記憶領域に転送される。したがって、PDL_A~PDL_Cの3種類の解析処理に対応可能であると共に、解析プログラムA~Cの全てがあらかじめRAM23に転送される場合と比べて、RAM23のその他の作業領域が圧迫されにくくなる。
【0032】
また、上述の実施形態によると、RAM23における使用可能な記憶領域に余裕がある(所定の閾値を超えている)場合には所定の大きさの記憶領域が速やかに確保される。一方、RAM23における使用可能な記憶領域に余裕がない(所定の閾値以下である)場合には、用紙サイズ及び解像度並びにPDL種類に応じた必要な大きさの記憶領域が適切に確保される。したがって、使用可能な領域の大きさに応じた適切な記憶領域の確保がなされる。
【0033】
また、上述の実施形態によると、画像形成処理及び第2段階の解析処理で使用される記憶領域の大きさが第1段階の解析処理の結果取得される用紙サイズ及び解像度に応じて適切に取得されると共に、その取得結果に基づいて必要な記憶領域が適切に確保される。この処理が、記憶領域に余裕がない場合に対応する図5のS8においてなされるので、このような場合にも解析処理が適切に実行可能となりやすい。
【0034】
また、上述の実施形態によると、解析プログラムが、解析部1と解析部2とに分けて段階的にRAM23に転送され、各段階の解析処理が完了するとプログラムの記憶領域がその都度、解放される(図5のS4、S7、S9、S11、S14及びS16)。このため、解析部1及び解析部2を含む解析プログラム全体が一度に転送される場合と比べてRAM23のその他の作業領域が圧迫されにくい。
【0035】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0036】
例えば、上述の実施形態では、制御部20のROM22に解析プログラムA~Cのデータが格納されている。これに対し、プリンタ1に接続されたUSBメモリ等の外部記憶装置に解析プログラムA~Cのデータが格納されており、外部記憶装置からこれらのプログラムのデータがRAM23に転送されてもよい。
【0037】
また、上述の実施形態においては、RAM23の空き領域に余裕があるか否かがまず判定され、余裕がない場合に限り、用紙サイズ、解像度及びPDL種類に応じた大きさの記憶領域が確保される処理が採用されている。これに対し、RAM23の空き領域に余裕があるか否かに関わらず、用紙サイズ、解像度及びPDL種類の少なくともいずれかに応じた大きさの記憶領域が確保される処理が採用されてもよい。
【0038】
また、上述の実施形態においては、解析プログラムが、解析部1と解析部2とに分けて段階的にRAM23に転送されている。これに対し、解析部1及び解析部2を含んだ解析プログラム全体が一度にRAM23に転送されてもよい。
【0039】
加えて、上述の各実施形態においては、プリンタ1に対して本発明を適用する場合について説明したが、これには限定されない。本発明は、ヘッドからインクを吐出するインクジェット式のその他の画像形成装置、例えば、複合機やコピー機等又はこれらの画像形成装置を有するシステムに適用されてもよい。また、インクジェット方式でインクを印刷用紙に付着させる代わりに、トナーを印刷用紙に付着させることで画像記録処理を実行するレーザー式の画像形成装置に適用されてもよい。この場合、画像形成装置にはトナーを収容するトナーカートリッジが着脱可能に装着される。
【符号の説明】
【0040】
1 プリンタ
10 画像形成部
20 制御部
22 ROM
23 RAM
201 画像データ取得部
202 画像形成制御部
203 画像データ解析部
204 解析プログラム転送部
205 領域確保部
A~C 解析プログラム
図1
図2
図3
図4
図5