(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122374
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】減衰バルブおよび緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/34 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
F16F9/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029886
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】514241869
【氏名又は名称】カヤバモーターサイクルサスペンション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】牧野 公昭
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA54
3J069CC13
3J069EE28
3J069EE35
(57)【要約】
【課題】車両における乗心地を向上できる減衰バルブ減衰バルブおよび緩衝器を提供する。
【解決手段】減衰バルブV1は、ポート5bと、ポート5bの開口端の外周から立ち上がりポート5bを取り囲む弁座5dとを有する軟磁性体で形成された弁座部材5と、環状であって弁座部材5に重ねられて、全体が弁座部材5に対して遠近可能であって弁座5dに離着座可能な軟磁性体で形成された弁体13と、弁体13と弁座5dとを吸着させる磁力を発生する磁力発生手段14とを備え、弁体13がポート5bからの圧力の作用によって弁座5dから離間する際の開弁圧を磁力発生手段14の磁力によって設定している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポートと、前記ポートの開口端の外周から立ち上がり前記ポートを取り囲む弁座とを有する軟磁性体で形成された弁座部材と、
環状であって前記弁座部材に重ねられて、全体が前記弁座部材に対して遠近可能であって前記弁座に離着座可能な軟磁性体で形成された弁体と、
前記弁体と前記弁座とを吸着させる磁力を発生する磁力発生手段とを備え、
前記弁体が前記ポートからの圧力の作用によって前記弁座から離間する際の開弁圧を前記磁力発生手段の磁力によって設定される
ことを特徴とする減衰バルブ。
【請求項2】
前記弁座部材から立ち上がる非磁性体で形成されたガイド軸と、
軟磁性体で形成されて、前記ガイド軸の外周に摺動自在に装着されて前記ガイド軸に対して軸方向へ移動可能であって、前記弁体の反弁座部材側に積層される環状のガイド部材とを備え、
前記ガイド部材は、前記ガイド軸の外周に摺接する筒部と、前記筒部の弁座部材側の外周から径方向へ突出するフランジ部とを有し、
前記磁力発生手段は、前記筒部の外周に装着される
請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項3】
前記弁座部材から立ち上がる非磁性体で形成されたガイド軸と、
軟磁性体で形成されて、前記ガイド軸の外周に摺動自在に装着されて前記ガイド軸に対して軸方向へ移動可能であって、前記弁体の反弁座部材側に積層される環状のガイド部材と、
前記ガイド部材を前記弁体とともに前記弁座部材へ向かう方向へ付勢するばねとを備え、
前記弁体は、1枚以上の環状板で形成されており、
前記ガイド部材は、前記弁体が前記弁座部材から所定距離だけ離間すると前記弁座部材からの離間が規制されて前記弁体の内周を支持する
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項4】
前記弁体は、環状であって前記弁座部材から全体が離間するまでは撓まない撓み剛性を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項5】
前記弁座部材から立ち上がるガイド軸を備え、
前記弁体は、前記ガイド軸の外周に摺動自在に装着されて前記ガイド軸に対して軸方向へ移動可能なガイド筒と、前記ガイド筒の弁座部材側の外周から径方向へ突出して前記弁座に離着座可能なフランジ状の弁部とを有し、
前記弁体の前記ガイド軸に摺接する軸方向の摺接長さは、前記ガイド軸の外径の2分の1の長さよりも長いことを特徴とする
請求項1に記載の減衰バルブ。
【請求項6】
前記磁力発生手段は、永久磁石或いはコイルである
ことを特徴とする請求項1から5に記載の減衰バルブ。
【請求項7】
アウターシェルと、前記アウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドと、前記アウターシェルに対する前記ロッドの移動によって液体が行き来する少なくとも2つの作動室とを有する緩衝器本体と、
前記作動室間に設けられた請求項6に記載の減衰バルブとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰バルブおよび緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、減衰バルブにあっては、たとえば、車両用の緩衝器のピストン部等に用いられており、ピストン部に設けたポートの出口端に環状のリーフバルブを積層し、このリーフバルブでポートを開閉するものが知られている。
【0003】
このように、リーフバルブの内周を固定支持し外周側を撓ませることによりポートをリーフバルブで開閉する減衰バルブでは、ピストン速度が中高速領域における減衰力が大きくなりすぎて車両における乗り心地を損なう場合がある。そこで、リーフバルブの内周側を固定的に支持せずに、リーフバルブの内周をピストンロッドもしくはピストンをピストンロッドに固定する筒状のピストンナットの外周に摺接させ、コイルばねでメインバルブを介してリーフバルブの背面を付勢した減衰バルブが開発されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
この減衰バルブにあっては、ピストンが上方へ移動する際のピストン速度が低速領域にあるときにはリーフバルブが開弁せずに、弁座に打刻した図示しないオリフィスのみで減衰力を発生するので、内周が固定的に支持される減衰バルブと略同様の減衰特性を発揮する。また、減衰バルブは、ピストン速度が高速領域に達すると、ポートを通過する作動油の圧力がリーフバルブに作用し、リーフバルブを撓ませて開弁するとともに、コイルばねの付勢力に抗してリーフバルブがメインバルブとともにピストンから軸方向にリフトして後退するので、内周が固定的に支持される減衰バルブ構造に比較して流路面積を大きくして、減衰力が過大となること抑制して、車両における乗り心地を向上させ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-291961号公報(
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、緩衝器が低速で伸縮する場合、緩衝器の動き始めにしっかりとした比較的大きな減衰力を発生するとともに、緩衝器が動き始めた後は減衰力を極小さくすることによって、車両の乗心地を向上できることが判ってきた。
【0007】
ところが、前述した従来の減衰バルブでは、コイルばねによってリーフバルブを付勢する構成となっているため、リーフバルブのピストンからのリフト量の増加に伴ってコイルばねの付勢力が大きくなるため、ピストン速度の増加に伴って減衰力が大きくなる。よって、従来の減衰バルブでは、緩衝器の動き始めの減衰力を大きくし、動き始めた後の減衰力を極小さくするという特性を実現できない。
【0008】
そこで、本発明は、車両における乗心地を向上できる減衰バルブの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の減衰バルブは、ポートと、ポートの開口端の外周から立ち上がりポートを取り囲む弁座とを有する軟磁性体で形成された弁座部材と、環状であって弁座部材に重ねられて全体が弁座部材に対して遠近可能であって弁座に離着座可能な軟磁性体で形成された弁体と、弁体と弁座とを吸着させる磁力を発生する磁力発生手段とを備え、弁体がポートからの圧力の作用によって弁座から離間する際の開弁圧を磁力発生手段の磁力によって設定される。
【0010】
このように構成された減衰バルブによれば、磁力発生手段の磁力によって弁体と弁座とが吸着されて、開弁圧が磁力によって設定されているので、緩衝器の動き始めに大きな減衰力を発揮させるとともに、緩衝器が低速で収縮する際には弁体を弁座から離間させて液体の流れに与える抵抗を極小さくして減衰力を極小さくできる。
【0011】
また、減衰バルブは、弁座部材から立ち上がる非磁性体で形成されたガイド軸と、軟磁性体で形成されてガイド軸の外周に摺動自在に装着されてガイド軸に対して軸方向へ移動可能であって弁体の反弁座部材側に積層される環状のガイド部材とを備え、ガイド部材は、ガイド軸の外周に摺接する筒部と、筒部の弁座部材側の外周から径方向へ突出するフランジ部とを有し、磁力発生手段は、筒部の外周に装着されてもよい。
【0012】
このように構成された減衰バルブによれば、永久磁石を設置しても減衰バルブの軸方向長さに影響を与えることが無く、フランジ部によって(弁体が永久磁石に干渉するのを防止して永久磁石を保護できる。
【0013】
また、減衰バルブは、弁座部材から立ち上がる非磁性体で形成されたガイド軸と、軟磁性体で形成されてガイド軸の外周に摺動自在に装着されてガイド軸に対して軸方向へ移動可能であって弁体の反弁座部材側に積層される環状のガイド部材と、ガイド部材を弁体とともに弁座部材へ向かう方向へ付勢するばねとを備え、弁体は、1枚以上の環状板で形成されており、ガイド部材は、弁体が弁座部材から所定距離だけ離間すると弁座部材からの離間が規制されて弁体の内周を支持してもよい。
【0014】
このように構成された減衰バルブによれば、緩衝器の動き始めにしっかりとした比較的大きな減衰力を発生するとともに、緩衝器が動き始めた後は減衰力を極小さくすることができるだけでなく、緩衝器が高速で収縮する場合には、ガイド部材の弁座部材からの移動が規制されて弁体によってポートを通過する液体の流れに抵抗を与えるようになって緩衝器の減衰力を再び高くして車体の振動を抑制できるから、より一層車両における乗心地を向上できる。
【0015】
さらに、減衰バルブにおける弁体は、環状であって弁座部材から全体が離間するまでは撓まない撓み剛性を有していてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、弁体が弁座部材から離間する際にはポートの開口全体を一気に開放することができるので、緩衝器が動き始めた後に速やかに減衰力を低下させることができる。
【0016】
また、減衰バルブは、弁座部材から立ち上がるガイド軸を備え、弁体は、ガイド軸の外周に摺動自在に装着されてガイド軸に対して軸方向へ移動可能なガイド筒と、ガイド筒の弁座部材側の外周から径方向へ突出して弁座に離着座可能なフランジ状の弁部とを有し、弁体のガイド軸に摺接する軸方向長さは、ガイド軸の外径の2分の1の長さよりも長くてもよい。このように構成された減衰バルブによれば、開弁時に弁体が弁座部材に対して傾いてガイド軸の外周でスティックスリップするのを防止でき、緩衝器が動き始めた後に減衰力を滑らかに減少させ得る。
【0017】
さらに、磁力発生手段は、永久磁石或いはコイルとされてもよい。
【0018】
また、緩衝器は、アウターシェルとアウターシェル内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッドとアウターシェルに対するロッドの移動によって液体が行き来する2つの作動室を有する緩衝器本体と、作動室間に設けられた減衰バルブとを備えている。このように構成された緩衝器によれば、減衰バルブを備えているので、緩衝器の動き始めにしっかりとした比較的大きな減衰力を発生するとともに、緩衝器が動き始めた後は減衰力を極小さくすることができ、車両の乗心地を向上できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のバルブおよび緩衝器によれば、車両における乗心地を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施の形態の減衰バルブを備えた緩衝器の断面図である。
【
図2】第1の実施の形態の減衰バルブが適用された緩衝器のピストン部の拡大断面図である。
【
図3】第1の実施の形態の減衰バルブを備えた緩衝器の減衰力特性を示した図である。
【
図4】第1の実施の形態の第1変形例の減衰バルブが適用された緩衝器のピストン部の拡大断面図である。
【
図5】第1の実施の形態の第2変形例の減衰バルブが適用された緩衝器のピストン部の拡大断面図である。
【
図6】第1の実施の形態の第3変形例の減衰バルブが適用された緩衝器のピストン部の拡大断面図である。
【
図7】第2の実施の形態の減衰バルブが適用された緩衝器のピストン部の拡大断面図である。
【
図8】第2の実施の形態の減衰バルブを備えた緩衝器の減衰力特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のバルブおよび緩衝器を図に基づいて説明する。各実施の形態における減衰バルブは、緩衝器Dのピストン部の減衰バルブとして利用されている。各実施の形態の減衰バルブの説明において、共通する部材については説明が重複するので、一の実施の形態の減衰バルブにおいて詳細に説明した部材であって他の実施の形態の減衰バルブにおいて共通する部材については他の減衰バルブの説明では同じ符号を付して詳しい説明を省略することとする。以下、減衰バルブおよび緩衝器Dの各部について詳細に説明する。
【0022】
<第1の実施の形態>
本実施の形態の緩衝器Dは、
図1に示すように、アウターシェル2とアウターシェル2内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド3とを備えた緩衝器本体1と、緩衝器本体1内に形成された2つの作動室としての伸側室R1と圧側室R2との間に設けられた減衰バルブV1とを備えている。
【0023】
緩衝器本体1は、シリンダ4と、シリンダ4内に移動自在に挿入されるとともにシリンダ4内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン5と、シリンダ4内に挿入されてピストン5に連結されるロッド3と、シリンダ4を覆ってシリンダ4との間にリザーバ室Rを形成するアウターシェル2とを備えている。
【0024】
シリンダ4は、筒状であって内部には、前述したようにピストン5が移動自在に挿入されており、ピストン5の
図1中上方に伸側室R1が、
図1中下方には圧側室R2がそれぞれ区画されている。伸側室R1と圧側室R2内には、液体として、具体的にはたとえば、作動油が充填されている。なお、液体としては、作動油の他にも、水、水溶液等を充填してもよい。
【0025】
また、シリンダ4は、外周側に配置される有底筒状のアウターシェル2内に収容されており、シリンダ4とアウターシェル2との間の環状隙間でリザーバ室Rが形成されている。このリザーバ室R内は、この場合、作動油と気体とが充填されており、液体を作動油とする場合、作動油の劣化を防止するため気体を窒素等といった不活性ガスとするとよい。
【0026】
そして、シリンダ4の
図1中下端には、バルブケース6が嵌合されて設けられており、バルブケース6によって圧側室R2とリザーバ室Rとが仕切られており、また、シリンダ4の
図1中上端には、ロッド3を摺動自在に軸支するロッドガイド8が嵌合されている。このロッドガイド8は、アウターシェル2の内周に嵌合され、アウターシェル2の上端を加締めることで、ロッドガイド8の
図1中上方に積層されてアウターシェル2に固定される。このようにロッドガイド8をアウターシェル2に固定するとシリンダ4は、アウターシェル2の底部に載置されたバルブケース6とロッドガイド8とで挟持され、シリンダ4もバルブケース6とともにアウターシェル2内で固定される。なお、アウターシェル2の上端開口端を加締める代わりに、上端開口部にキャップを螺着して、このキャップとアウターシェル2の底部とで、ロッドガイド8、シリンダ4およびバルブケース6を挟持して、これら部材をアウターシェル2内で固定してもよい。
【0027】
ロッド3は、
図1中で下端に外径が上方よりも小径な小径部3aと、小径部3aの最下端の外周に設けられた螺子部3bと、小径部3aと小径部3aよりも上方側の大径部位との間に形成される段部3cとを備えている。
【0028】
ロッド3の小径部3aの外周には、
図1および
図2に示すように、筒状のガイド軸としてのカラー11と、カラー11の外周に軸方向へ移動可能に装着されるガイド部材12と、環状板を複数枚積層して構成されてカラー11の外周に軸方向へ移動可能に装着される弁体としてのリーフバルブ13と、ガイド部材12の外周に装着された環状の永久磁石14と、弁座部材としてのピストン5と、リーフバルブとしての伸側リーフバルブ15と、環状の間座16とが装着されている。そして、カラー11、ピストン5、伸側リーフバルブ15および間座16は、小径部3aの螺子部3bに螺着されたピストンナット17とロッド3における段部3cとで挟持されて小径部3aに固定されている。
【0029】
ガイド軸としてのカラー11は、筒状であって非磁性体で形成されており、内径がロッド3の小径部3aに嵌合する径とされるとともに外径がピストン5の内径よりも大径とされていて、ロッド3の小径部3aの外周に嵌合され、ロッド3の段部3cとピストン5とで挟持されてロッド3に対して不動に固定されている。
【0030】
弁座部材としてのピストン5は、軟磁性体で形成されており、内径がロッド3の小径部3aに嵌合する径とされており、外周をシリンダ4の内周に摺接されてシリンダ4内を伸側室R1と圧側室R2との区画している。また、ピストン5は、
図2中上端から下端へ貫通して伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側ポート5aと圧側ポート5bとを備えるとともに、圧側室側の端部から圧側室側へ向けて突出して伸側ポート5aの出口端を取り囲む伸側弁座5cと、伸側室側の端部から伸側室側へ向けて突出して圧側ポート5bの出口端を取り囲む圧側弁座5dとを備えている。
【0031】
カラー11の外周には、ガイド部材12が軸方向へ移動可能に装着されている。ガイド部材12は、軟磁性体で形成されており、筒部12aと、筒部12aの
図2中下端側となるピストン側の外周から径方向へ向けて突出する環状のフランジ部12bとを備えている。ガイド部材12の内周におけるカラー11に摺接する摺接長さLは、カラー11の外径dの2分の1よりも長く、L>0.5dが成立するようにガイド部材12の長さとカラー11の外径とが設定されている。このようにL>0.5dが成立するようにガイド部材12の長さとカラー11の外径とが設定されているので、ガイド部材12は、カラー11に対して軸方向となる
図2中上下方向へ移動する際にカラー11に対して傾くことが抑制されて、軸方向へ円滑に移動できる。
【0032】
また、カラー11の外周であって、ガイド部材12よりもピストン側となる
図2中下方には、弁体としてのリーフバルブ13が軸方向へ移動可能に装着されている。リーフバルブ13は、軟磁性体で形成された複数枚の環状板を積層して構成されている。
【0033】
本実施の形態では、リーフバルブ13を構成する環状板のうち、ピストン5に当接する
図2中最下方の環状板は、ピストン5に当接すると圧側弁座5dに着座して圧側ポート5bを閉塞することができる外径を備えている。また、本実施の形態では、リーフバルブ13を構成する環状板のうち、ピストン5に当接する
図2中最下方の環状板の反ピストン側に積層される環状板の外径は、反ピストン側へ向かうほど外径が小さくなっているが、これらの環状板の外径については任意に設定できる。また、ガイド部材12は、リーフバルブ13の
図2中最上方に積層されている環状板に対向しており、リーフバルブ13の上端に当接可能となっている。そして、カラー11の軸方向の全長は、ガイド部材12の軸方向の長さとリーフバルブ13の軸方向長さとを足し合わせた長さより長いため、ガイド部材12とリーフバルブ13は、ガイド部材12が段部3cに当接する状態からリーフバルブ13がピストン5に当接する状態となるまで
図2中上下方向へ移動できる。
【0034】
なお、リーフバルブ13を構成する環状板の内径は、カラー11の外周に摺接可能な径とされており、リーフバルブ13は、カラー11の外周をカラー11によって案内されながら軸方向となる
図2中上下方向へ移動できる。また、ピストン5における圧側弁座5dは、伸側ポート5aの入口端を内周側に避けて圧側ポート5bのみを取り囲んでおり、リーフバルブ13が圧側弁座5dに着座しても伸側ポート5aを閉塞することはない。
【0035】
つづいて、ガイド部材12の筒部12aの外周には、環状の永久磁石14が装着されている。また、永久磁石14の
図2中下端となるピストン側端は、フランジ部12bに当接している。ガイド部材12がリーフバルブ13に当接した状態で、リーフバルブ13がピストン5の圧側弁座5dに当接すると、永久磁石14の磁力線がガイド部材12、リーフバルブ13およびピストン5を通って、リーフバルブ13とピストン5とを磁化させて互いに吸着させることができる。リーフバルブ13の正面となるピストン側面には、ピストン5の圧側ポート5bを介して圧側室R2の圧力が作用し、リーフバルブ13の背面となる反ピストン側面には、伸側室R1の圧力が作用する。緩衝器Dの収縮作動時において、圧側室R2の圧力の作用によってリーフバルブ13を
図2中上方となるピストン5から離間させる方向へ向けて押圧する力が、伸側室R1の圧力の作用によってリーフバルブ13を
図2中下方となるピストン5へ接近させる方向へ向けて押圧する力と、永久磁石14の磁力によってリーフバルブ13とピストン5とを吸着させる力との合力を上回ると、リーフバルブ13がピストン5の圧側弁座5dから離座して圧側ポート5bを開放する。このように、リーフバルブ13がピストン5の圧側弁座5dから離座して圧側ポート5bを開放する際の開弁圧は、永久磁石14の磁力によって設定される。なお、弁体としてのリーフバルブ13は、本実施の形態では、弁座部材としてのピストン5から全体が離間するまでは撓まない撓み剛性を備えており、圧側ポート5bを開放する際には全体をピストン5から離間させる。また、本実施の形態の弁体は、複数枚の環状板を積層したリーフバルブ13とされているが、一枚のリーフバルブで構成されてもよい。緩衝器Dが収縮してリーフバルブ13が開弁してピストン5から軸方向へ離間しても、永久磁石14の磁力によってリーフバルブ13がピストン5側へ向けて付勢されるので、緩衝器Dが収縮後に伸長作動に転じるとリーフバルブ13は圧側弁座5dに着座する位置に復帰できる。なお、ガイド部材12とともにリーフバルブ13をピストン5側へ向けて付勢する極弱い力を発するばねを設けて、緩衝器Dが収縮後に伸長作動に転じる際に、リーフバルブ13を圧側弁座5dに着座する位置に復帰させるようにしてもよい。
【0036】
ピストン5の圧側室側には、複数枚の環状板を積層して構成された伸側リーフバルブ15が重ねられている。また、伸側リーフバルブ15の反ピストン側には、外径が伸側リーフバルブ15の
図2中最下方に積層された環状板の外径よりも小径な間座16が積層されている。
【0037】
このように、伸側リーフバルブ15は、積層リーフバルブとされており、内周がロッド3の外周に固定されて、間座16の外周縁を支点として外周側の撓みが許容されている。そして、伸側リーフバルブ15は、ピストン5の圧側室側に重ねられると伸側弁座5cに着座して伸側ポート5aを閉塞し、伸側ポート5aを介して伸側室R1の圧力の作用で外周を撓ませて伸側弁座5cから離間すると伸側ポート5aを開放する。なお、伸側リーフバルブ15を構成する環状板の枚数は、所望する減衰力に応じて任意に設定できる。
【0038】
そして、減衰バルブV1は、ポートとしての圧側ポート5bと、圧側ポート5bの開口端の外周から立ち上がり圧側ポート5bを取り囲む弁座としての圧側弁座5dを有する弁座部材としてのピストン5と、環状であってピストン5に重ねられて全体がピストン5に対して遠近可能であって圧側弁座5dに離着座可能な弁体としてのリーフバルブ13と、リーフバルブ13と圧側弁座5dとを吸着させる磁力を発生する磁力発生手段としての永久磁石14とを備えて構成されている。また、本実施の形態の減衰バルブV1は、さらに、弁座部材としてのピストン5から立ち上がるガイド軸としてのカラー11と、カラー11の外周に摺動自在に装着されてカラー11に対して軸方向へ移動可能であってリーフバルブ13の反弁座部材側に積層される環状のガイド部材12とを備えて構成されている。
【0039】
つづいて、バルブケース6は、シリンダ4の下端に嵌合されてシリンダ4内の圧側室R2と、シリンダ4とアウターシェル2との間に形成されたリザーバ室Rとを区画している。バルブケース6は、圧側室R2とリザーバ室Rとを連通する圧側減衰通路6aおよび吸込通路6bを備えている。また、バルブケース6の
図1中下端となるリザーバ室側端には、圧側減衰通路6aを開閉するとともに圧側減衰通路6aを通過する作動油の流れに抵抗を与える圧側バルブ23が設けられており、バルブケース6の
図1中上端となる圧側室側端には、吸込通路6bを開閉して吸込通路6bをリザーバ室Rから圧側室R2へ向かう作動油の流れのみを許容するチェックバルブ24が設けられている。
【0040】
緩衝器Dは、以上のように構成され、以下、緩衝器Dの作動について説明する。まず、シリンダ4に対してロッド3が
図1中上方へ移動して緩衝器Dが伸長作動する場合、ピストン5もロッド3とともにシリンダ4に対して上方へ移動して、伸側室R1が圧縮されるとともに圧側室R2が拡大される。伸側室R1の圧縮に伴って伸側室R1内の圧力が上昇して、伸側リーフバルブ15は、外周側を撓ませて伸側ポート5aを開放して、伸側ポート5aを通過する作動油の流れに抵抗を与える。このように緩衝器Dの伸長作動時には、作動油の流れに対して伸側リーフバルブ15が抵抗を与えるため、伸側室R1の圧力が圧側室R2の圧力よりも高くなり、緩衝器Dは伸長作動を抑制する減衰力を発生する。なお、緩衝器Dの伸長作動時では、リーフバルブ13が伸側室R1の圧力と永久磁石14の磁力によって圧側弁座5dに着座する状態に維持されるため、圧側ポート5bが遮断されて作動油が圧側ポート5bを通過することはない。
【0041】
また、緩衝器Dの伸長時には、ロッド3がシリンダ4内から退出するため、シリンダ4内でロッド3が退出する体積分の作動油が不足するが、この不足分の作動油は、バルブケース6に設けたチェックバルブ24が開弁してリザーバ室Rからシリンダ4内に供給される。チェックバルブ24の開弁圧はごく低く設定してあり、シリンダ4内の圧力が大気圧以下になることがないように配慮されている。
【0042】
つづいて、シリンダ4に対してロッド3が
図1中下方へ移動して緩衝器Dが収縮作動する場合、ピストン5もロッド3とともにシリンダ4に対して下方へ移動して、圧側室R2が圧縮されるとともに伸側室R1が拡大される。圧側室R2の圧縮に伴って圧側室R2内の圧力が上昇し、リーフバルブ13は、圧側ポート5bを介して圧側室R2の圧力を受けてピストン5から離間させる方向へ付勢される。緩衝器Dが収縮しようとピストン5が動き始める場合、圧側室R2の圧力によるリーフバルブ13を
図2中上方へ押し上げる力は、永久磁石14の磁力によってリーフバルブ13とピストン5とを吸着させる力と伸側室R1の圧力によってリーフバルブ13をピストン5へ押し付ける力との合力に打ち勝てずリーフバルブ13はピストン5から離間できず圧側ポート5bを閉塞したままとなる。よって、緩衝器Dの収縮時のピストン速度が0近傍である場合、
図3に示すように、減衰バルブV1における減衰力特性は緩衝器Dの動き始めで大きな減衰力が出力される特性となる。
【0043】
つづいて、緩衝器Dの収縮時におけるピストン速度が上昇すると、圧側室R2の圧力によるリーフバルブ13を
図2中上方へ押し上げる力は、永久磁石14の磁力によってリーフバルブ13とピストン5とを吸着させる力と伸側室R1の圧力によってリーフバルブ13をピストン5へ押し付ける力との合力に打ち勝ってリーフバルブ13をピストン5から離間させて圧側ポート5bが開放される。永久磁石14によってリーフバルブ13とピストン5とを吸着させる力は、リーフバルブ13とピストン5との間の距離の二乗に反比例するので、リーフバルブ13がピストン5から離間すると急激に減少する。よって、減衰バルブV1における減衰力特性は、
図3に示すように、収縮時のピストン速度の上昇に伴って減衰力が急激に低下する特性となる。
【0044】
また、緩衝器Dの収縮作動時では、ロッド3がシリンダ4内に侵入する体積分の作動油がシリンダ4内で過剰となるため、過剰分の作動油は、圧側減衰通路6aおよび圧側バルブ23を介してリザーバ室Rへ移動する。このように緩衝器Dの収縮作動時には、作動油の流れに対して減衰バルブV1および圧側バルブ23が抵抗を与えるため、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力よりも高くなり、緩衝器Dは伸長作動を抑制する減衰力を発生する。なお、緩衝器Dの収縮作動時では、伸側リーフバルブ15が圧側室R2の圧力を受けて伸側弁座5cに着座する状態に維持されるため、伸側ポート5aが遮断されて作動油が伸側ポート5aを通過することはない。
【0045】
よって、緩衝器Dの収縮作動時には、緩衝器Dの動き始めでは減衰バルブV1が閉弁状態に維持されて緩衝器Dの収縮を妨げる方向に比較的大きな減衰力が発揮され、ピストン5が動き始めてピストン速度が極低速域にあると減衰力が急激に低下し、その後、ピストン速度が上昇すると、減衰バルブV1は圧側ポート5bを最大開放して伸側室R1と圧側室R2とを連通させる一方でシリンダ4内からリザーバ室Rへ向かう作動油の流量が増加して圧側バルブ23が作動油の流れに与える抵抗が大きくなるので減少に転じた減衰力がピストン速度の上昇とともに増加するようになって、ピストン速度が極低速域を超えて高くなると緩衝器Dは圧側バルブ23によって収縮を妨げる減衰力を発生する。なお、緩衝器Dが圧側バルブ23を備えていない単筒型緩衝器であって、緩衝器Dの収縮作動時に減衰バルブV1のみで減衰力を発生する場合には、緩衝器Dの収縮時であってピストン速度が極低速域を超える状況では減衰バルブV1はリーフバルブ13をピストン5から最大限に離間させてリーフバルブ13によっては殆ど作動油の流れに抵抗を与えず、圧側ポート5bによって作動油の流れに抵抗を与えられる状態となる。よって、このように単筒型緩衝器のピストン5の圧側のバルブに減衰バルブV1を適用すると、収縮時のピストン速度が極低速域を超えると、単筒型緩衝器の減衰力特性は、ピストン速度の上昇によって減衰力が高くなるものの圧側バルブ23を備えた緩衝器Dが発生する減衰力よりは低くなる特性(
図3中破線)となる。
【0046】
以上、減衰バルブV1は、圧側ポート(ポート)5bと、圧側ポート(ポート)5bの開口端の外周から立ち上がり、圧側ポート(ポート)5bを取り囲む圧側弁座(弁座)5dとを有する軟磁性体で形成されたピストン(弁座部材)5と、環状であってピストン(弁座部材)5に重ねられて、全体がピストン(弁座部材)5に対して遠近可能であって圧側弁座(弁座)5dに離着座可能な軟磁性体で形成されたリーフバルブ(弁体)13と、リーフバルブ(弁体)13と圧側弁座(弁座)5dとを吸着させる磁力を発生する永久磁石(磁力発生手段)14とを備え、リーフバルブ(弁体)13が圧側ポート(ポート)5bからの圧力の作用によって圧側弁座(弁座)5dから離間する際の開弁圧を永久磁石(磁力発生手段)14の磁力によって設定している。
【0047】
このように構成された減衰バルブV1によれば、永久磁石(磁力発生手段)14の磁力によってリーフバルブ(弁体)13と圧側弁座(弁座)5dとが吸着されて、開弁圧が前記磁力によって設定されているので、緩衝器Dの動き始めに大きな減衰力を発揮させるとともに、緩衝器Dが低速で収縮する際にはリーフバルブ(弁体)13を圧側弁座(弁座)5dから離間させて作動油の流れに与える抵抗を極小さくして減衰力を極小さくできる。よって、本実施の形態における減衰バルブV1によれば、緩衝器Dの動き始めにしっかりとした比較的大きな減衰力を発生するとともに、緩衝器Dが動き始めた後は減衰力を極小さくすることができ、車両の乗心地を向上できる。
【0048】
また、本実施の形態の減衰バルブV1は、ピストン(弁座部材)5から立ち上がる非磁性体で形成されたカラー(ガイド軸)11と、軟磁性体で形成されてカラー(ガイド軸)11の外周に摺動自在に装着されてカラー(ガイド軸)11に対して軸方向へ移動可能であって、リーフバルブ(弁体)13の反弁座部材側に積層される環状のガイド部材12とを備え、リーフバルブ(弁体)13は、環状であってカラー(ガイド軸)11の外周に軸方向へ移動可能に装着されており、ガイド部材12のカラー(ガイド軸)11に摺接する軸方向長さは、カラー(ガイド軸)11の外径の2分の1の長さよりも長くなっている。
【0049】
このように構成された減衰バルブV1によれば、ガイド部材12の内周におけるカラー(ガイド軸)11に摺接する摺接長さLがカラー(ガイド軸)11の外径dの2分の1より長いので、ガイド部材12がカラー(ガイド軸)11に対して軸方向へ移動する際にカラー(ガイド軸)11に対して傾くことが抑制されて、軸方向へ円滑に移動できるので、ガイド部材12に当接するリーフバルブ(弁体)13もカラー(ガイド軸)11に対して傾くことなくピストン(弁体)5に対して遠近できる。よって、本実施の形態の減衰バルブV1によれば、開弁時にリーフバルブ(弁体)13がピストン(弁座部材)5に対して傾いてカラー(ガイド軸)11の外周でスティックスリップするのを防止でき、緩衝器Dが動き始めた後に減衰力を滑らかに減少させ得る。なお、リーフバルブ(弁体)13のスティックスリップの心配が無ければ、ガイド部材12の摺接長さLをカラー(ガイド軸)11の外径dの2分の1以上に設定しなくてもよい。
【0050】
また、本実施の形態の減衰バルブV1では、ガイド部材12は、カラー(ガイド軸)11の外周に摺接する筒部12aと、前記筒部の弁座部材側の外周から径方向へ突出するフランジ部12bとを備え、永久磁石(磁力発生手段)14が筒部12aの外周に装着されている。このように構成された減衰バルブV1によれば、永久磁石(磁力発生手段)14を設置しても減衰バルブV1の軸方向長さに影響を与えることが無く、フランジ部12bによってリーフバルブ(弁体)13が永久磁石(磁力発生手段)14に干渉するのを防止して永久磁石(磁力発生手段)14を保護できる。このように、ガイド部材12を設けると、永久磁石(磁力発生手段)14をガイド部材12の筒部12aに装着することによって永久磁石(磁力発生手段)14を保護できるが、減衰バルブV1では、ガイド部材12を省略して、カラー(ガイド軸)11の外周に永久磁石14を軸方向移動可能に装着する構造の採用も可能である。
【0051】
なお、弁体が圧側弁座(弁座)5dよりも外径が大径な1枚あるいは複数枚の環状板で構成されている場合、ガイド部材12のフランジ部12bの外径を少なくとも圧側弁座(弁座)5dよりも大径として、永久磁石(磁力発生手段)14の軸方向の端面をフランジ部12bに当接させるようにし、ガイド部材12、弁体および圧側弁座(弁座)5dとが積層された状態で、フランジ部12bと永久磁石(磁力発生手段)14との間、フランジ部12bと弁体との間、弁体と圧側弁座(弁座)5dとの間に磁気ギャップを生じないようにすれば、永久磁石(磁力発生手段)14の磁力線の通り道である磁路の長さ(磁路長)が短くなるので効率的に弁体と弁座部材としてのピストン5とを吸着させうる。よって、この場合、磁力が低い磁力発生手段を選択できるという利点がある。
【0052】
また、本実施の形態の減衰バルブV1では、リーフバルブ(弁体)13が、環状であってピストン(弁座部材)5から全体が離間するまでは撓まない撓み剛性を有しているので、リーフバルブ(弁体)13がピストン(弁座部材)5から離間する際には圧側ポート(ポート)5bの開口全体を一気に開放することができるので、緩衝器Dが動き始めた後に速やかに減衰力を低下させることができる。
【0053】
また、緩衝器Dは、アウターシェル2とアウターシェル2内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド3とアウターシェル2に対するロッド3の移動によって作動油(液体)が行き来する伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2とを有する緩衝器本体1と、伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2との間に設けられた減衰バルブV1とを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、減衰バルブV1を備えているので、緩衝器Dの動き始めにしっかりとした比較的大きな減衰力を発生するとともに、緩衝器Dが動き始めた後は減衰力を極小さくすることができ、車両の乗心地を向上できる。
【0054】
なお、本実施の形態では、弁座部材をピストン5として、緩衝器Dのピストン部に減衰バルブV1を設置しているが、緩衝器Dのバルブケース6を弁座部材として、2つの作動室として圧側室R2とリザーバ室Rとの間に減衰バルブV1を設置してもよい。つまり、緩衝器Dのベースバルブ部に減衰バルブV1を設置してもよい。このように、減衰バルブV1は、緩衝器D内に形成される2つの作動室間に設けられることで緩衝器Dにおける減衰力発生源として機能でき、減衰力の調整を行い得る。
【0055】
なお、緩衝器Dは、アウターシェル2の内方にシリンダ4を備えて、シリンダ4内をピストン5によって伸側室R1と圧側室R2とに区画するとともに、シリンダ4とアウターシェル2との間にリザーバ室Rを備えた複筒型の緩衝器とされているが、シリンダ4を廃止してアウターシェル2の内周にロッド3が連結されたピストンが摺動自在に挿入され、バルブケース6、圧側バルブ23およびチェックバルブ24の代わりにアウターシェル2内に気室を区画するフリーピストンやダイヤフラムを設けた単筒型の緩衝器であってもよい。このように単筒型に設定される緩衝器Dは、作動室が伸側室と圧側室の2つとなるので、減衰バルブV1を緩衝器Dのピストン部に設ければよい。また、緩衝器Dの構成によって減衰バルブの設置箇所は変化するが、減衰バルブV1は緩衝器Dの構成に応じて最適な箇所に設置されればよい。さらに、減衰バルブV1は、鞍乗車両の前輪を懸架するフロントフォーク内に内蔵される緩衝器に利用されてもよいことは無論である。
【0056】
また、磁力発生手段は、永久磁石14とされているが、コイルとされてもよい。磁力発生手段は、ガイド部材12の筒部12aの外周に装着されているが、弁体と弁座部材としてのピストン5とを吸着させうる限りにおいて、ピストン5に埋設されてもよいし、ロッド3の小径部3aの外周に凹部を設けて当該凹部に装着されてもよい。磁力発生手段をコイルとする場合、ロッド3の小径部3aの外周に設けた環状凹部内或いはピストン5の内周に設けた環状凹部内に前記コイルを設置するとともに、ロッド3を筒状としてロッド3内を介して前記コイルに接続される配線を緩衝器D外の図示しない電源に接続すると、緩衝器Dが伸縮しても配線が緩衝器D内で移動することが無く無理なくコイルへ通電できる。また、磁力発生手段をコイルとする場合、コイルに流れる電流量を大小調節することによって、ピストン5とリーフバルブ13との吸着力を変化させ得るので、リーフバルブ13がピストン5から離間する開弁圧を変更できる。
【0057】
さらに、本実施の形態の減衰バルブV1では、ガイド部材12の筒部12aの外周に磁力発生手段を設けているが、
図4に示した第一変形例の減衰バルブV1aのように、ガイド部材12そのものを永久磁石で形成してガイド部材12を磁力発生手段として利用してもよい。この場合、ガイド部材12の形状は、リーフバルブ(弁体)13と弁座部材としてのピストン5とを吸着させ得る限りにおいて、どのような形状であってもよく、たとえば、図示したフランジ付き円筒形状に代えて円筒形その他の形状とされてよい。ガイド部材12を磁力発生手段とする場合であっても、ガイド部材12の内周におけるカラー(ガイド軸)11に摺接する摺接長さLをカラー(ガイド軸)11の外径dの2分の1よりも長くすることでガイド部材12とリーフバルブ(弁体)13とのカラー(ガイド軸)11に対する傾きを防止でき、減衰バルブV1aの開弁時にリーフバルブ(弁体)13がカラー(ガイド軸)11の外周でスティックスリップして減衰力が滑らかに減少しなくなるのを防止できる。
【0058】
なお、
図5に示した第二変形例の減衰バルブV1bのように、弁体18をガイド軸としてのカラー11の外周に軸方向移動可能に装着して、弁座部材としてのピストン5を永久磁石で形成して磁力発生手段として用い、ピストン5に弁体18を吸着させてもよい。このように構成された減衰バルブV1bでも弁体18とピストン5とを吸着させてピストン5の磁力によって弁体18が圧側弁座(弁座)5dから離間する際の開弁圧を設定できるので、減衰バルブV1と同様に緩衝器Dの動き始めにしっかりとした比較的大きな減衰力を発生するとともに、緩衝器Dが動き始めた後は減衰力を極小さくすることができ、車両の乗心地を向上できる。なお、弁体18の形状は、弁座部材としてのピストン5に離着座可能であって圧側ポート5bを開閉できる限りにおいて任意に設計変更できるが、本実施の形態では、弁体18は、ガイド軸としてのカラー11の外周に摺動自在に装着されてカラー11に対して軸方向へ移動可能なガイド筒18aと、ガイド筒18aの弁座部材側となる
図5中下方の外周から径方向へ突出して圧側弁座(弁座)5dに離着座可能なフランジ状の弁部18bとを備えていて、弁体18のガイド軸としてカラー11に摺接する軸方向の摺接長さをカラー11の外径の2分の1の長さよりも長くしてあり、弁体18の弁座部材としてのピストン5に対する傾きを防止している。このように構成された減衰バルブV1bによれば、開弁時に弁体18がピストン(弁座部材)5に対して傾いてロッド3の外周でスティックスリップするのを防止でき、緩衝器Dが動き始めた後に減衰力を滑らかに減少させ得る。なお、磁力発生手段を弁座部材としてのピストン5ではなく弁体18を永久磁石で形成して、ピストン5に弁体18を吸着させてもよいし、ピストン5と弁体18との双方を永久磁石としたり、弁体18を永久磁石としてピストン5にコイルを設けたりしてピストン5と弁体18とを吸着させてもよい。このように、本実施の形態における減衰バルブV1においては、弁体は、リーフバルブ13に限られない。なお、第二変形例の減衰バルブV1bのように磁力発生手段をピストン5とするかピストン5に磁力発生手段を設ける場合、減衰バルブV1と同様に、リーフバルブ13を弁体として用いてガイド部材12でリーフバルブ13の傾きを防止してもよいし、リーフバルブ13を弁体として用いてガイド部材12を廃止する構造も採用できる。
【0059】
また、
図6に示した第三変形例の減衰バルブV1cのように、ロッド3を非磁性体で形成して、ロッド3の小径部3aの中間にピストン5の上端内周に当接する段差3a1を設けて、当該段差3a1より上方部分3a2の外径を段差3a1より下方部分3a3の外径よりも大径にし、前記上方部分3a2をガイド軸として利用してもよい。この場合、上方部分3a2の外周に弁体としてリーフバルブ13とガイド部材12とを軸方向へ移動可能に装着するとともに、下方部分3a3の外周に弁座部材としてのピストン5と伸側リーフバルブ15および間座16を装着して、ピストン5、伸側リーフバルブ15および間座16を下方部分3a3の下端に形成された螺子部3bに螺着されたピストンナット17と段差3a1とで挟持してロッド3に固定している。このように構成された減衰バルブV1cでは、上方部分3a2をガイド軸として利用している点で減衰バルブV1と異なるのみであって減衰バルブV1と同様の作用効果を奏することができる。なお、ガイド部材12の内周における上方部分3a2に摺接する摺接長さを上方部分3a2の外径の2分の1よりも長くすれば、開弁時にリーフバルブ(弁体)13がピストン(弁座部材)5に対して傾いて上方部分3a2の外周でスティックスリップするのを防止でき、緩衝器Dが動き始めた後に減衰力を滑らかに減少させ得る。
【0060】
<第2の実施の形態>
本実施の形態の緩衝器D1は、
図7に示すように、アウターシェル2とアウターシェル2内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド3とを備えた緩衝器本体1と、緩衝器本体1内に形成された2つの作動室としての伸側室R1と圧側室R2との間に設けられた減衰バルブV2とを備えている。緩衝器D1は、減衰バルブV1の代わりに減衰バルブV2を備えている点でのみ緩衝器Dと異なっている。以下、緩衝器D1が緩衝器Dと構成を異にしている減衰バルブV2について詳細に説明する。
【0061】
減衰バルブV2は、
図7に示すように、緩衝器D1のピストン部に設けられており、ポートとしての圧側ポート5bと、圧側ポート5bの開口端の外周から立ち上がり圧側ポート5bを取り囲む弁座としての圧側弁座5dを有する弁座部材としてのピストン5と、ピストン5から立ち上がるガイド軸としてのカラー11と、環状であってカラー11の外周に軸方向へ移動可能に装着されるとともにピストン5に重ねられて全体がピストン5に対して遠近可能であって圧側弁座5dに離着座可能な弁体としてのリーフバルブ13と、軟磁性体で形成されてカラー11の外周に摺動自在に装着されてカラー11に対して軸方向へ移動可能であってリーフバルブ13の反弁座部材側となる
図7中上方側に積層される環状のガイド部材12と、リーフバルブ13およびガイド部材12をピストン5へ向けて付勢するばね20と、リーフバルブ13と圧側弁座5dとを吸着させる磁力を発生する磁力発生手段としてのコイル21とを備えて構成されている。
【0062】
減衰バルブV2は、ばね20を備えるとともに、永久磁石14の代わりにピストン5に装着されたコイル21を備える点で、減衰バルブV1と異なっている。ばね20は、ロッド3の小径部3aより上方側の外周に設けた段差で形成されるばね受3dとガイド部材12のフランジ部12bとの間に介装されており、ガイド部材12とともにリーフバルブ13をピストン5に向けて付勢している。ばね20は、リーフバルブ13がピストン5の圧側弁座5dに着座し、ガイド部材12がリーフバルブ13の反ピストン側端に当接した状態で、フランジ部12bとばね受3dとの間で圧縮されていてリーフバルブ13をピストン5側へ向けて付勢している。
【0063】
そして、リーフバルブ13は、前述した通り、複数の環状板を積層して構成されており、リーフバルブ13における環状板の外径は、弁座部材としてのピストン5側に向かうほど大径となっている。よって、ガイド部材12は、リーフバルブ13の環状板のうち外径が最も小径の環状板に当接してリーフバルブ13の内周を支持するようになっている。そして、リーフバルブ13は、ピストン5から離間する際には撓まずに全体がピストン5から
図7中上方へ移動して圧側弁座5dから離座して圧側ポート5bを開放する。また、リーフバルブ13の後退によってガイド部材12の
図7中上端が段部3cに当接すると、ガイド部材12によって支持されるリーフバルブ13の内周のピストン5からの後退が制限されるため、リーフバルブ13の外周が圧側ポート5b側からの圧力の作用で撓むようになる。このように、本実施の形態では、ロッド3における段部3cは、ガイド部材12およびリーフバルブ13のピストン5からの離間を制限するストッパとして機能して、リーフバルブ13のピストン5からの後退距離が所定距離に達するとガイド部材12がピストン5から軸方向へ離間する方向への移動を規制する。なお、ロッド3の段部3cをストッパとして用いているが、リーフバルブ13のピストン5からの後退距離が所定距離に達するとガイド部材12の移動を規制するストッパをカラー11に設けてもよいし、ばね20のばね受をカラー11に設けてもよい。なお、ガイド部材12を設けることによって、リーフバルブ13のカラー11に対する傾きの防止と、ばね20の付勢力によってリーフバルブ13の外周の撓みに影響を与えないようにしている。また、本実施の形態では、ガイド部材12がストッパによって移動が規制された際に、リーフバルブ13の外周の撓みを許容できるように設定されればよく、その限りにおいてリーフバルブ13を構成する環状板の外径の大きさについて設計変更可能である。よって、リーフバルブ13は、同一径の環状板を積層して構成されてもよいが、この場合、ガイド部材12の移動をストッパで規制する際に、リーフバルブ13の外周の撓みを許容できるようにガイド部材12のフランジ部12bの外径をリーフバルブ13の外径よりも小径に設定しておけばよい。
【0064】
また、本実施の形態では、緩衝器D1が収縮作動してリーフバルブ13がピストン5から離間した後、緩衝器D1の伸縮方向が逆転して緩衝器D1が伸長作動に切り換わると、ばね20の付勢力によってリーフバルブ13を速やかにピストン5における圧側弁座5dに着座させる位置に速やかに復帰させるので、緩衝器D1が収縮作動から伸長作動に切り換わる際に、リーフバルブ13で圧側ポート5bを速やかに閉塞できるから、圧側ポート5bが開放されたままとなって作動油が圧側ポート5bを通過するのを阻止でき、緩衝器D1が収縮作動から伸長作動へ転ずるときに減衰力発生が遅れてしまうのを防止できる。
【0065】
コイル21は、ピストン5の内周に設けられた環状凹部5e内に収容されており、図外の電源に接続されて筒状のロッド3内に収容される配線22を介して電力の供給を受けることができる。ピストン5は軟磁性体であるので、コイル21に通電するとピストン5とピストン5に当接する軟磁性体であるリーフバルブ13が磁化されて、ピストン5とリーフバルブ13とが互いに吸着する。このように、コイル21は、通電によって磁界を発生して、ピストン5とリーフバルブ13とを互いに吸着させる磁力を付与できる磁力発生手段として機能する。なお、コイル21は、ピストン5の外周に装着されてもよいし、ロッド3が軟磁性体であればロッド3の小径部3aの外周に設けられた環状凹部に装着されてもよい。
【0066】
このように構成された減衰バルブV2では、コイル21に流れる電流量を大小調節することによって、ピストン5とリーフバルブ13との吸着力を変化させ得るので、リーフバルブ13がピストン5から離間する開弁圧を変更可能である。
【0067】
緩衝器D1は、以上のように構成され、以下、緩衝器D1の作動について説明する。緩衝器D1の伸長作動時の作動は、減衰バルブV2が圧側ポート5bを閉塞して、伸側リーフバルブ15によって減衰力を発生するため、緩衝器Dと同様の作動を呈して緩衝器D1の伸長を妨げる減衰力を発生する。
【0068】
他方、シリンダ4に対してロッド3が
図7中下方へ移動して緩衝器D1が収縮作動する場合、ピストン5もロッド3とともにシリンダ4に対して下方へ移動して、圧側室R2が圧縮されるとともに伸側室R1が拡大される。圧側室R2の圧縮に伴って圧側室R2内の圧力が上昇し、リーフバルブ13は、圧側ポート5bを介して圧側室R2の圧力を受けてピストン5から離間させる方向へ付勢される。緩衝器D1が収縮しようとピストン5が動き始める場合、圧側室R2の圧力によるリーフバルブ13を
図7中上方へ押し上げる力は、コイル21への通電によって生じる磁力によってリーフバルブ13とピストン5とを吸着させる力と、ばね20の付勢力と伸側室R1の圧力によってリーフバルブ13をピストン5へ押し付ける力との合力に打ち勝てずリーフバルブ13はピストン5から離間できず圧側ポート5bを閉塞したままとなる。よって、緩衝器D1の収縮時のピストン速度が0近傍である場合、
図8に示すように、減衰バルブV2における減衰力特性は緩衝器D1の動き始めで大きな減衰力が出力される特性となる。なお、
図8における減衰力特性中で、緩衝器D1の動き始めの減衰力の大きさ、つまり、ピストン速度が0の時の減衰力の大きさは、コイル21に流れる電流量の調節によって高低調節できる。よって、コイル21の電流量を大きくすれば緩衝器D1の動き始めの減衰力を大きくでき、コイル21の電流量を小さくすれば緩衝器D1の動き始めの減衰力を小さくできる。
【0069】
つづいて、緩衝器D1の収縮時におけるピストン速度が上昇すると、圧側室R2の圧力によるリーフバルブ13を
図7中上方へ押し上げる力は、コイル21の磁力によってリーフバルブ13とピストン5とを吸着させる力と、ばね20の付勢力と伸側室R1の圧力によってリーフバルブ13をピストン5へ押し付ける力との合力に打ち勝ってリーフバルブ13をピストン5から離間させて圧側ポート5bが開放される。コイル21によってリーフバルブ13とピストン5とを吸着させる力は、リーフバルブ13とピストン5との間の距離の二乗に反比例するので、リーフバルブ13がピストン5から離間すると急激に減少する。よって、減衰バルブV2における減衰力特性は、
図8に示すように、収縮時のピストン速度の上昇に伴って減衰力が急激に低下する特性となる。
【0070】
その後、緩衝器D1の収縮速度が増加してリーフバルブ13のピストン5から後退量が増えると、減衰バルブV2は減衰バルブV1と異なり、ガイド部材12がピストン5の段部3cに当接してガイド部材12のピストン5からの軸方向への離間を規制する。すると、リーフバルブ13は、ガイド部材12によって内周側のピストン5からの後退が制限されて外周側を撓ませて圧側弁座5dとの間の隙間を大きくする一方で、作動油の流れに抵抗を与えるようになる。よって、減衰バルブV2における減衰力特性は、
図8に示すように、減衰力が低下したのち、ピストン速度の増加に伴って減衰力が減衰バルブV1より高くなる特性となる。
【0071】
また、緩衝器D1の収縮作動時では、ロッド3がシリンダ4内に侵入する体積分の作動油がシリンダ4内で過剰となるため、過剰分の作動油は、圧側減衰通路6aおよび圧側バルブ23を介してリザーバ室Rへ移動する。このように緩衝器Dの収縮作動時には、作動油の流れに対して減衰バルブV2および圧側バルブ23が抵抗を与えるため、圧側室R2の圧力が伸側室R1の圧力よりも高くなり、緩衝器Dは伸長作動を抑制する減衰力を発生する。なお、緩衝器D1の収縮作動時では、伸側リーフバルブ15が圧側室R2の圧力を受けて伸側弁座5cに着座する状態に維持されるため、伸側ポート5aが遮断されて作動油が伸側ポート5aを通過することはない。
【0072】
よって、緩衝器D1の収縮作動時には、緩衝器D1の動き始めでは減衰バルブV2が閉弁状態に維持されて緩衝器Dの収縮を妨げる方向に比較的大きな減衰力が発揮され、ピストン5が動き始めてピストン速度が極低速域にあると減衰力が急激に低下し、その後、ピストン速度が上昇すると、減衰バルブV2は圧側ポート5bを通過する作動油の流れに対してリーフバルブ13によって抵抗を与えるようになり、さらにシリンダ4内からリザーバ室Rへ向かう作動油の流量が増加して圧側バルブ23が作動油の流れに与える抵抗が大きくなる。よって、緩衝器D1では、収縮作動時のピストン速度が極低速域にあって減衰力が減少した後、ピストン速度が上昇すると、減衰バルブV1を利用した緩衝器Dよりもピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇割合が増えてより高い減衰力を発揮するようになる。このように、ピストン速度が極低速域を超えて高くなると緩衝器D1は圧側バルブ23と減衰バルブV2とによって収縮を妨げる減衰力を発生する。なお、緩衝器Dが圧側バルブ23を備えていない単筒型緩衝器であって、緩衝器Dの収縮作動時に減衰バルブV2のみで減衰力を発生する場合には、緩衝器Dの収縮時であってピストン速度が極低速域を超える状況では減衰バルブV2におけるガイド部材12の後退が制限されてリーフバルブ13によって作動油の流れに抵抗を与えるようになる。よって、このように単筒型緩衝器のピストン5の圧側のバルブに減衰バルブV2を適用すると、収縮時のピストン速度が極低速域を超えると、単筒型緩衝器の減衰力特性は、圧側バルブ23を備えなくてもピストン速度の上昇によって減衰力が高くなっていく特性(
図8中破線)となる。
【0073】
以上、減衰バルブV2は、圧側ポート(ポート)5bと、圧側ポート(ポート)5bの開口端の外周から立ち上がり前記ポートを取り囲む圧側弁座(弁座)5dとを有する軟磁性体で形成されたピストン(弁座部材)5と、ピストン(弁座部材)5から立ち上がるカラー(ガイド軸)11と、一枚以上の環状板で形成されておりカラー(ガイド軸)11の外周に軸方向へ移動可能に装着されるとともにピストン(弁座部材)5に重ねられて全体がピストン5に対して遠近可能であって圧側弁座(弁座)5dに離着座可能なリーフバルブ(弁体)13と、軟磁性体で形成されてカラー(ガイド軸)11の外周に摺動自在に装着されてカラー(ガイド軸)11に対して軸方向へ移動可能であってリーフバルブ(弁体)13の反弁座部材側に積層される環状のガイド部材12と、リーフバルブ(弁体)13およびガイド部材12をピストン(弁座部材)5へ向けて付勢するばね20と、リーフバルブ(弁体)13と圧側弁座(弁座)5dとを吸着させる磁力を発生するコイル(磁力発生手段)21とを備え、ガイド部材12は、リーフバルブ(弁体)13がピストン(弁座部材)5から所定距離だけ離間するとピストン(弁座部材)5からの離間が規制されてリーフバルブ(弁体)13の内周を支持する。
【0074】
このように構成された減衰バルブV2によれば、コイル(磁力発生手段)21の磁力によってリーフバルブ(弁体)13と圧側弁座(弁座)5dとが吸着されて、開弁圧が前記磁力によって設定されているので、緩衝器D1の動き始めに大きな減衰力を発揮させるとともに、緩衝器D1が低速で収縮する際にはリーフバルブ(弁体)13を圧側弁座(弁座)5dから離間させて作動油に与える抵抗を極小さくして減衰力を極小さくできる。よって、本実施の形態における減衰バルブV2によれば、緩衝器D1の動き始めにしっかりとした比較的大きな減衰力を発生するとともに、緩衝器D1が動き始めた後は減衰力を極小さくすることができ、車両の乗心地を向上できる。また、本実施の形態の減衰バルブV2では、緩衝器D1が高速で収縮する場合には、ガイド部材12のピストン(弁座部材)5からの移動が規制されてリーフバルブ(弁体)13によって圧側ポート5bを通過する作動油の流れに抵抗を与えるようになって緩衝器D1の減衰力を再び高くして車体の振動を抑制できるから、より一層車両における乗心地を向上できる。
【0075】
なお、本実施の形態では磁力発生手段をコイル21としているが、磁力発生手段を減衰バルブV1と同様に永久磁石14としてもよいし、弁体としてリーフバルブ13と弁座部材としてのピストン5とを吸着させて開弁圧の設定が可能である限りにおいて、磁力発生手段の設置位置については任意に設計変更できる。
【0076】
また、本実施の形態では、カラー11をガイド軸としてロッド3の小径部3aの外周に設けているが、カラー11を廃止して、ロッド3をガイド軸として利用して、弁体としてのリーフバルブ13とガイド部材12とをロッド3の外周に軸方向へ移動可能に装着する構成を採用してもよい。
【0077】
さらに、緩衝器D1は、アウターシェル2とアウターシェル2内に軸方向へ移動可能に挿入されるロッド3とアウターシェル2に対するロッド3の移動によって作動油(液体)が行き来する伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2とを有する緩衝器本体1と、伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2との間に設けられた減衰バルブV2とを備えている。このように構成された緩衝器D1によれば、減衰バルブV2を備えているので、緩衝器D1の動き始めにしっかりとした比較的大きな減衰力を発生するとともに、緩衝器D1が動き始めた後は減衰力を極小さくすることができ、車両の乗心地を向上できる。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1・・・緩衝器本体、2・・・アウターシェル、3・・・ロッド、3a2・・・ロッドの小径部における上方部分(ガイド軸)、5・・・ピストン(弁座部材)、5b・・・圧側ポート(ポート)、5d・・・圧側弁座(弁座)、11・・・カラー(ガイド軸)、12・・・ガイド部材、12a・・・筒部、12b・・・フランジ部、13・・・リーフバルブ(弁体)、14・・・永久磁石(磁力発生手段)、18・・・弁体、18a・・・ガイド筒、18b・・・弁部、20・・・ばね、21・・・コイル(磁力発生手段)、D,D1・・・緩衝器、R1・・・伸側室(作動室)、R2・・・圧側室(作動室)、V1,V2・・・減衰バルブ