(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122379
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】インバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240902BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029895
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴義
(72)【発明者】
【氏名】杉原 裕宣
(72)【発明者】
【氏名】並木 一茂
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA24
5H770AA28
5H770BA01
5H770CA06
5H770QA28
5H770QA37
5H770QA38
(57)【要約】
【課題】工場出荷後においても、異物の混入や強電端子の破損を抑止できるインバータを提供すること。
【解決手段】本発明のインバータは、筐体内に、強電端子とヒューズとが配置された電源領域と、回路領域とを備え、それぞれの領域がカバーで覆われている。
そして、上記電源領域のカバーが、上記電源領域を覆う蓋部と、該蓋部から垂下して上記電源領域と上記回路領域とを仕切る縦壁部とを有し、
上記縦壁部が、切り欠き部又は開口部を有し、
上記電源領域のカバーを、上記蓋部と上記縦壁部との連結部を中心に回転させたとき、
上記電源領域は、上記ヒューズの部分が上記縦壁部の切り欠き部又は開口部で開放され、他の部分が上記縦壁部で覆われることとしたため、工場出荷後においても異物の混入や強電端子の破損を抑止できるインバータを提供することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に電源領域と回路領域とを備え、それぞれの領域がカバーで覆われたインバータであって、
上記電源領域に強電端子とヒューズとが配置され、
上記電源領域のカバーが、上記電源領域を覆う蓋部と、該蓋部から垂下して上記電源領域と上記回路領域とを仕切る縦壁部とを有し、
上記縦壁部が、切り欠き部又は開口部を有し、
上記電源領域のカバーを、上記蓋部と上記縦壁部との連結部を中心に回転させたとき、
上記電源領域は、上記ヒューズの部分が上記縦壁部の切り欠き部又は開口部で開放され、他の部分が上記縦壁部で覆われることを特徴とするインバータ。
【請求項2】
上記蓋部が上記回路領域側に突出した突出部を有し、
上記回路領域のカバーが、その上面に凹部を有し、
上記溝又は凹部が、上記電源領域のカバーを上記蓋部と上記縦壁部との連結部を中心に回転させたとき、上記突出部が嵌合する位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインバータ。
【請求項3】
上記縦壁部の下端に、上記筐体の底に当接する弾性シール部材を有することを特徴とする請求項2に記載のインバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータに係り、更に詳細には、筐体内部に収められた基板や電子部品等がカバーで覆われたインバータに関する。
【背景技術】
【0002】
インバータの電子部品などは、筐体内に収められ、それらを覆うカバーと筐体との間には、シール部材が設けられて密封される。
【0003】
特許文献1には、インバータのカバー構造を、開口部を有するカバーに、さらに該開口部を覆うカバーを設けた2重構造とすることで、上記開口部から強電端子やヒューズにアクセスを可能にし、金属粉など導電性の異物が内部に混入することを抑制できるインバータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記インバータの強電端子とヒューズとではアクセス頻度が異なる。すなわち、工場出荷後においては、強電端子へのアクセスはほとんど不要である一方で、ヒューズ切れなど、ヒューズにはアクセスが必要になる場合がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のインバータにあっては、カバーの開口部が強電端子とヒューズとの両方を露出させるため、工場出荷後において、ヒューズ交換作業時等に異物が混入するおそれや、強電端子にドライバーなどのツールが接触して傷つけてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、工場出荷後においても、異物の混入や強電端子の破損を抑止できるインバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、工場出荷後、ヒューズにアクセスする際、電源領域と回路領域との間を仕切る縦壁部をカバーとして利用することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明のインバータは、筐体内に、強電端子とヒューズとが配置された電源領域と、回路領域とを備え、それぞれの領域がカバーで覆われている。
そして、上記電源領域のカバーが、上記電源領域を覆う蓋部と、該蓋部から垂下して上記電源領域と上記回路領域とを仕切る縦壁部とを有し、
上記縦壁部が、切り欠き部又は開口部を有し、
上記電源領域のカバーを、上記蓋部と上記縦壁部との連結部を中心に回転させたとき、
上記電源領域は、上記ヒューズの部分が上記縦壁部の切り欠き部又は開口部で開放され、他の部分が上記縦壁部で覆われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、切り欠き部又は開口部を有する縦壁部を、電源領域を覆うカバーとして利用可能にすることとしたため、工場出荷後においても異物の混入や強電端子の破損を抑止できるインバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】カバーを外した状態の一例を示すインバータの平面図である。
【
図3】回路領域のカバーを設置し、電源領域のカバーを設置していない状態を示す平面図(上図)と、回路領域のカバーと電源領域のカバーとを設置した状態を示す平面図(下図)である。
【
図5】電源領域のカバーを回転させた状態を示す断面図である。
【
図6】電源領域のカバーを回転させた状態を示す平面図である。
【
図7】電源領域のカバーを回転させた状態の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のインバータについて詳細に説明する。
本発明のインバータは、
図1に示すように、壁によって仕切られた電源領域と回路領域とを備える。
【0013】
上記電源領域は、駆動バッテリに接続したDC強電端子、補機バッテリに接続した補機強電端子及びヒューズを有する。また、回路領域は、キャパシタ、パワーモジュール、制御基板及び駆動モータに接続したAC強電端子を有する。
図2にインバータの回路図を示す。
【0014】
電源領域と回路領域とを収めた筐体は、その開口部が2つのカバーによって覆われており、一方のカバーが電源領域を覆い、他方のカバーが回路領域を覆っている。これらのカバーと筐体との間や、上記2つのカバーの間には、ガスケットなどのシール部材が設けられて筐体内部を密封している。
【0015】
電源領域を覆う電源領域のカバーと、回路領域を覆う回路領域のカバーとは、それぞれ筐体に直接固定されてもよく、また、
図3に示すように、回路領域のカバーに設けられた開口部を覆う電源領域のカバーを回路領域のカバーに固定し、この回路領域のカバーを筐体に固定する2重構造であってもよい。
【0016】
電源領域のカバーは、
図4に示すように、上記電源領域を覆う蓋部と、該蓋部から垂下して下端が筐体の底に当接して、上記電源領域と上記回路領域とを仕切る縦壁部とを有する。この縦壁部によって、電源領域と回路領域との間におけるインバータ作動中の熱干渉を抑制する。
【0017】
また、上記縦壁部は、切り欠き部又は開口部を有する。ヒューズ交換の際は、この切り欠き部又は開口部からヒューズ交換を行う。
【0018】
つまり、ヒューズを交換するときは、
図5の上に示すように、電源領域のカバーを持ち上げ、上記蓋部と上記縦壁部との連結部を軸中心に90°回転させ、回路領域のカバーの上に載置する。
【0019】
このとき、上記切り欠き部又は開口部は、
図5の下に示すように、その直下にヒューズが来るように配置されており、ヒューズ部分は上記縦壁部の切り欠き部又は開口部によって開放されるのでヒューズ交換が可能であり、強電端子部分など、電源領域の他の部分は縦壁部によって覆われる。
【0020】
したがって、ヒューズ交換の際、
図6に示すように、電源領域のすべての領域が露出することがなく、ヒューズ交換に必要な部分のみを露出させるので、最低限の露出で済むため、異物の混入を抑制できると共に、ヒューズの交換作業時に強電端子を傷つけることを防止することができる。
【0021】
なお、電源領域のカバーに、さらにヒューズ交換のための小さな開口部を設け、3重構造のカバーとすることによってもヒューズ交換の際の異物の混入を抑制できる。
【0022】
しかし、このような方法では、部品点数が増加すると共に、シール部位が増加して締結箇所が増加して生産効率が低下してしまう。
【0023】
本発明の上記電源領域のカバーによれば、生産効率を低下させることなく、異物混入の抑制が可能である。
【0024】
また、上記2つのカバーは、
図4、5に示すように、上記電源領域のカバーの蓋部が、上記回路領域側に突出した突出部を有し、かつ、上記回路領域のカバーが、上記電源領域のカバーを上記蓋部と上記縦壁部との連結部を中心に回転させたとき、上記突出部が嵌合する凹部を、その上面に有することが好ましい。
【0025】
上記縦壁部よりも回路領域側に突出した上記突出部を上記回路領域の凹部に嵌合させることで、ヒューズ交換の際、上記電源領域のカバーの位置ズレが防止され、交換作業が容易である。
【0026】
さらに、縦壁部の高さと蓋部が覆う電源領域の開口幅とを揃えると、電源領域のカバーを回転させる際、電源領域のカバーを上に持ち上げる必要がなくなり、そのまま回転させることができるので、異物の混入をさらに抑制できる。
【0027】
加えて、上記電源領域のカバーは、縦壁部の下端に、上記筐体の底に当接する弾性シール部材を有することが好ましい。
【0028】
図7に示すように、縦壁部の高さと蓋部が覆う電源領域の開口幅とを揃えて、回転させた電源領域のカバーの上記突出部を回路領域の凹部に嵌合させ、上記縦壁部の下端に設けた弾性シール部材を、回路領域のカバーの開口端面や筐体の側面に押し付ける。
【0029】
すると、弾性シール部材の反力によって、突出部が凹部の縁に押し付けられるので、電源領域のカバーをしっかりと固定することができる。
【0030】
縦壁部の高さは、
図7に示すように、筐体の底面に、上記蓋部と上記縦壁部との連結部の延在方向に延びる畝を設けることでの調整が可能であり、回転させたときの電源領域のカバーの縦壁部の位置(高さ)は、縦壁部を屈曲させることで調整することができる。
【0031】
上記のように、筐体の底面に畝を設けると、縦壁部の高さを低くできるので、電源領域のカバーを上に持ち上げずにそのまま回転させても、縦壁部がヒューズに当たることがなく、仮に当たったとしても弾性シール部材が変形し衝撃を吸収するので、これらの破損を防止することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 電源領域のカバー
11 蓋部
111 突出部
12 縦壁部(仕切り板)
121 開口部(切り欠き部)
122 弾性シール部材
2 回路領域のカバー
21 凹部
3 筐体
31 畝
4 ヒューズ
5 強電端子
6 電子部品(キャパシタ)
7 制御基板
P 電源領域
C 回路領域