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  • 特開-車両用フローティングコネクタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122382
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】車両用フローティングコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/91 20110101AFI20240902BHJP
   H01R 13/631 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01R12/91
H01R13/631
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029898
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 周平
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB02
5E021FB07
5E021FC06
5E021FC31
5E223AA21
5E223AB26
5E223BA01
5E223BA07
5E223BB01
5E223DA05
5E223DB25
5E223EA33
5E223EA36
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両走行時の突き上げなど、大きな振動が入力されたとしても、揺動ハウジングの移動を規制する部位の破損を防止できる車両用フローティングコネクタを提供すること。
【解決手段】車両用フローティングコネクタ1は、基板6間を電気的に接続するものであり、基板6に固定された固定ハウジング2と、ジャック32又はプラグを有する揺動ハウジング3とを備える。ジャック32又はプラグの端子に繋がる複数の導線6が、揺動ハウジング3の長手方向両側の側面に並んで、固定ハウジング2に揺動ハウジング3を吊架する。揺動ハウジング3が、長手方向の両端面に突出部31を有し、突出部31と間隔を開けて、変位抑制部材4が配置される。変位抑制部材4を弾性体で形成したので、変位抑制部材4と共に揺動ハウジング3の移動を規制する部位の破損を防止できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板間を電気的に接続する車両用フローティングコネクタであって、
上記基板に固定された固定ハウジングと、
上記固定ハウジングの内側に配置され、ジャック又はプラグを有する揺動ハウジングと、を備え、
上記ジャック又はプラグの端子に繋がる複数の導線が、上記揺動ハウジングの長手方向両側の側面に並んで、上記固定ハウジングに上記揺動ハウジングを吊架し、
上記揺動ハウジングが、その長手方向の両端面に、上記固定ハウジング向けて長手方向に突出した突出部を有し、
上記突出部と間隔を開けて、弾性体で形成された変位抑制部材が配置され、
上記変位抑制部材が、互いに直交する3軸方向への上記揺動ハウジングの変位を抑制することを特徴とする車両用フローティングコネクタ。
【請求項2】
上記変位抑制部材が、板バネで形成され、
上記板バネが、上記基板から立ち上がり、上記突出部の突出方向と直交する方向の両側の側面及び上面に対向する3つの面を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用フローティングコネクタ。
【請求項3】
上記揺動ハウジングの吊架方向を車両の上下方向、かつ上記揺動ハウジングの短手方向を車両の前後方向に向けて車両に搭載されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用フローティングコネクタ。
【請求項4】
上記突出部と上記変位抑制部材との間隔が、車両の前後方向よりも車両の上下方向が大きいことを特徴とする請求項3に記載の車両用フローティングコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フローティングコネクタに係り、更に詳細には、揺動ハウジングの自由な変位を抑制した車両用フローティングコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
フローティングコネクタは、基板に固定されたハウジングに対して揺動可能な揺動ハウジングにジャック又はプラグを設けたものであり、入力される振動を吸収して接点間の摺動磨耗を抑制することができる。(特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-249076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のフローティングコネクタを、大きな振動を受ける車両に用いた場合は、揺動ハウジングの移動を規制する固定用金具の強度を超える外力が加わり、破損する懸念がある。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両走行時の突き上げなど、大きな振動が入力されたとしても、揺動ハウジングの移動を規制する部位の破損を防止できる車両用フローティングコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、揺動ハウジングの移動を規制する変位抑制部材を弾性体で形成することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の車両用フローティングコネクタは、基板間を電気的に接続するものであり、上記基板に固定された固定ハウジングと、上記固定ハウジングの内側に配置され、ジャック又はプラグを有する揺動ハウジングと、を備える。
そして、上記ジャック又はプラグの端子に繋がる複数の導線が、上記揺動ハウジングの長手方向両側の側面に並んで、上記固定ハウジングに上記揺動ハウジングを吊架し、
上記揺動ハウジングが、その長手方向の両端面に、上記固定ハウジング向けて長手方向に突出した突出部を有し、
上記突出部と間隔を開けて、弾性体で形成された変位抑制部材が配置され、
上記変位抑制部材が、互いに直交する3軸方向への上記揺動ハウジングの変位を抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、揺動ハウジングの移動を規制する変位抑制部材を弾性体で形成することとしたため、上記変位抑制部材と共に揺動ハウジングの移動を規制する部位の破損を防止できる車両用フローティングコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両用フローティングコネクタが2つの基板を接続した状態の一例を示す図である。
図2】車両用フローティングコネクタの構造の一例を示す図である。
図3】車両用フローティングコネクタが揺動ハウジングの変位を抑制する状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の車両用フローティングコネクタについて詳細に説明する。
本発明の車両用フローティングコネクタは、例えば、図1に示すように平行に配置された2つの基板間を電気的に接続するものであり、一方の基板にジャックが設けられ、他方の基板にプラグが設けられて、これらのジャックとプラグとが嵌合することで2つの基板を電気的に接続する。
【0011】
上記ジャックとプラグの少なくともいずれか一方が、揺動可能に吊架された揺動ハウジングに設けられており、この揺動ハウジングが揺動することで、入力された振動を吸収し、ジャックの端子とプラグの端子との接点のズレを防止して上記端子の摺動磨耗を抑制する。
【0012】
上記ジャックと上記プラグとは、接続部の形状が異なる他は同様であるので、以下、揺動ハウジングにジャックが設けられている場合を例に説明する。
【0013】
図2に示すように、上記車両用フローティングコネクタ1は、はんだなどで基板に固定された固定ハウジング2と、揺動可能に吊架された揺動ハウジング3とを、備える。
【0014】
上記固定ハウジング2は、基板6と反対側が開放された矩形形状をしており、略直方体形状の揺動ハウジング3が固定ハウジングの内側に配置される。
【0015】
揺動ハウジング3は、、その上面にプラグを挿し込むジャック32を有し、上記ジャックの内側には、複数の端子が揺動ハウジングの長手方向に並んで配置されており、それぞれの端子には導線5が接続されている。
【0016】
上記複数の導線5は、それぞれ揺動ハウジング3の下側からその側面に沿って上方に向かって延びており、揺動ハウジング3の両側の側面に並んで配置される。
【0017】
この上方に向かった導線5の先が固定ハウジング2に固定されており、揺動ハウジング3は、上記複数の導線5によって基板から浮いた状態で吊架され、互いに直交する3軸方向(上下方向、左右方向、前後方向)に揺動する。
【0018】
上記揺動ハウジング3の自由な揺動を許容すると、揺動ハウジング3が固定ハウジング2にぶつかったり、開放されている上方に飛び出したりするので、所定の範囲内では自由に揺動させながら、揺動ハウジング3の揺動範囲を一定の範囲内に制限する必要がある。
【0019】
本発明の車両用フローティングコネクタ1は、揺動ハウジング3に形成された突出部31と、この突出部31と間隔を開けて配置された変位抑制部材4を有し、突出部31と変位抑制部材4とが衝突することで揺動ハウジング3の揺動範囲を規制している。
【0020】
具体的には、上記突出部31が、揺動ハウジング3の長手方向の両端面から固定ハウジング2に向けて突出しており、上記変位抑制部材4が上記突出部31を囲むように配置されている。
【0021】
本発明においては、上記変位抑制部材4が弾性体で形成されているので、大きな振動が入力されて、突出部31と変位抑制部材4とが強く衝突したとしても、上記変位抑制部材4が弾性変形し、衝突の衝撃を吸収するので、突出部31と変位抑制部材4との破損を防止することができる。
【0022】
上記弾性体としては、突出部31と変位抑制部材4とが衝突したときの衝撃を吸収できればよく、ゴムやバネを使用できるが、板バネであることが好ましい。
【0023】
上記板バネは、金属板を曲加工することで容易に作製でき、部品点数を大幅に増加させることなく実施できるのに加えて、省スペース化が可能である。
【0024】
上記板バネは、基板と平行な底面から屈曲して立ち上がり、この立ち上がった面からさらに屈曲した、上記突出部の突出方向と直交する方向の両側の側面及び上面に対向する3つの面を有する形状とすることができる。
【0025】
上記形状の板バネは、底面から屈曲して上方に立ち上がった面の突出部に対応する位置に、横H型の切れ目を入れ、突出部に向けて折り曲げて、上記両側の側面に対向する面を形成する。そして、上記横H型の切れ目の上辺から上側に上方に向かう2つの切れ目を入れ、同様に突出部に向けて折り曲げて上面に対向する面を形成することで作製できる。
【0026】
揺動ハウジングの長手方向両端と固定ハウジングとの間に上記板バネを配置して、その底面を基板に固定し、上記突出部の面と対向する板バネの3面で上記突出部を囲むことで、互いに直交する3軸方向への上記揺動ハウジングの変位を抑制できる。
【0027】
すなわち、図3に示すように、揺動ハウジングの上下方向の変位は、突出部の上面がそれと対向する板バネの面と衝突して変位量が抑制され、揺動ハウジングの短手方向の変位は、突出部の両側の側面がそれと対向する板バネの面と衝突して変位量が抑制される。
【0028】
また、揺動ハウジングの長手方向には、突出部の先端面に対向する板バネの面が配置されていないが、この方向への変位に対しては、揺動ハウジングの長手方向の両端面が、突出部側に折れ曲がった板バネの先端と衝突し、板バネの底面から屈曲して上方に立ち上がった面が傾くことで変位量が抑制される。
【0029】
上記フローティングコネクタを車両に搭載する際、車両からフローティングコネクタに入力される振動は、車両の走行に起因した振動が大きいので、この走行中に入力される振動特性を効率よく吸収できる方向に向けて搭載することが好ましい。
【0030】
つまり、車両の走行によって、突出部と変位抑制部材とが強く衝突する急激な変位は、路面の凹凸などにより車両が上下にバウンドすることなどに起因する上下方向への変位が、最も変位速度が速く、この変位の頻度が最も多い。
【0031】
また、車両の加減速による車両前後方向への変位速度が次に速く、発生頻度は上下方向よりも少ない。最後に、車両の幅方向(左右方向)への変位は、車両がカーブを曲がことによるときなどに生じ、このときの変位速度は、比較的ゆっくりとしたものであり、最も発生頻度が少ない。
【0032】
このような、車両特有の変位速度や発生頻度に対応し、本発明の車両用フローティングコネクタは、図3に示すように、揺動ハウジングの吊架方向(プラグの挿し込み方向)を車両の上下方向に向け、かつ揺動ハウジングの短手方向を車両の前後方向に向けて搭載することが好ましい。
【0033】
揺動ハウジングは、上記のように、揺動ハウジングの下側からその側面に沿って上方に向かって延びる複数の導線によって吊架されているので、上下方向への揺動が最も容易であり、次に前後方向への揺動が容易である。
【0034】
上記揺動ハウジングの揺動が容易な方向と、変位速度が速い方向や変位頻度が多い方向とを合わせることで、固定ハウジングを基板に固定しているはんだなどの接合部にかかるストレスを軽減できる。
【0035】
また、上記揺動ハウジングを自由に揺動させる範囲、すなわち、上記突出部と上記変位抑制部材との間隔は、車両の用途にもよるが、車両の前後方向よりも車両の上下方向が大きいことが好ましい。
【0036】
上記のように、路面の凹凸などによる上下方向への変位速度が最も速く、導線や端子の接点にかかる荷重が前後方向よりも大きいので、この方向に揺動ハウジングを所定の範囲内で自由に揺動させることで、接点間の摺動磨耗の抑制と、上記突出部や変位抑制部材の破損防止とを両立させることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 車両用フローティングコネクタ
2 固定ハウジング
3 揺動ハウジング
31 突出部
32 ジャック
4 変位抑制部材
5 導線
6 基板
図1
図2
図3