IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOTO株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-壁掛式の水洗大便器 図1
  • 特開-壁掛式の水洗大便器 図2
  • 特開-壁掛式の水洗大便器 図3
  • 特開-壁掛式の水洗大便器 図4
  • 特開-壁掛式の水洗大便器 図5
  • 特開-壁掛式の水洗大便器 図6
  • 特開-壁掛式の水洗大便器 図7
  • 特開-壁掛式の水洗大便器 図8
  • 特開-壁掛式の水洗大便器 図9
  • 特開-壁掛式の水洗大便器 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122383
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】壁掛式の水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/02 20060101AFI20240902BHJP
   E03D 11/13 20060101ALI20240902BHJP
   E03D 9/00 20060101ALI20240902BHJP
   A47K 17/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
E03D11/13
E03D9/00 Z
A47K17/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029899
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】篠原 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博
(72)【発明者】
【氏名】三宅 優哉
【テーマコード(参考)】
2D037
2D038
2D039
【Fターム(参考)】
2D037EA03
2D038ZA00
2D039AA02
2D039AD00
2D039AD04
2D039CA01
2D039CD03
(57)【要約】
【課題】照明装置から照射される光を便器本体の真下や排水トラップ部の最下端部よりも後方の所定の床面領域に照射することができる壁掛式の水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の壁掛式の水洗大便器1は、ボウル部8と、このボウル部の下方に入口部10aが接続されてボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部10と、ボウル部及び排水トラップ部のそれぞれの外郭を側方から覆うスカート部12と、このスカート部の後方に形成されて壁Wに対して固定される後方壁部2aと、を備え、床面Fから上方に離間して配置されている便器本体2と、この便器本体に固定されて光を床面に照射する照明装置14と、を有し、この照明装置は、排水トラップ部の最下端部よりも後方に設けられ且つスカート部の下端よりも上方の便器本体の内部空間S内に設けられている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁に固定される壁掛式の水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部と、このボウル部の下方に入口部が接続されて上記ボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、上記ボウル部及び上記排水トラップ部のそれぞれの外郭を側方から覆うスカート部と、このスカート部の後方に形成されて上記壁に対して固定される後方壁部と、を備え、床面から上方に離間して配置されている便器本体と、
この便器本体に固定されて光を床面に照射する照明装置と、を有し、
上記排水トラップ部は、上記入口部の後方且つ下方の最下端部まで下降した後にその後方且つ上方の頂部まで上昇する屈曲管路を形成すると共に、上記屈曲管路の頂部から後方且つ下方に下降する下降管路を形成しており、
上記照明装置は、上記排水トラップ部の上記最下端部よりも後方に設けられ且つ上記スカート部の下端よりも上方の上記便器本体の内部空間内に設けられていることを特徴とする壁掛式の水洗大便器。
【請求項2】
上記照明装置は、上記排水トラップ部の上昇する上記屈曲管路よりも後方且つ上記下降管路よりも下方の上記便器本体の内部空間内に設けられている請求項1記載の壁掛式の水洗大便器。
【請求項3】
上記照明装置は、照射される最大照度の光の中心が上記後方壁部よりも前方に位置するように配置されている請求項1記載の壁掛式の水洗大便器。
【請求項4】
上記照明装置は、照射された光が上記排水トラップ部の上記最下端部と重なることなく上記最下端部よりも前方に照射されるように配置されている請求項1記載の壁掛式の水洗大便器。
【請求項5】
上記照明装置は、照射される最大照度の光の中心が上記排水トラップ部の上記最下端部よりも後方に位置するように配置されている請求項4記載の壁掛式の水洗大便器。
【請求項6】
上記便器本体は、上記照明装置が設けられる上記内部空間を形成する壁面を備えており、この壁面の少なくとも一部の表面には、釉薬が塗布されている請求項4記載の壁掛式の水洗大便器。
【請求項7】
上記照明装置は、上記後方壁部の前方側に固定されている請求項1記載の壁掛式の水洗大便器。
【請求項8】
上記照明装置は、上記後方壁部の後方側から締結部材により固定されている請求項1記載の壁掛式の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、壁に固定される壁掛式の水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、壁に固定される水洗大便器(いわゆる、「壁掛式の水洗大便器」)として、例えば、特許文献1に記載されているように、便器本体に照明装置が設けられているものが知られている。
このような特許文献1に記載されている従来の壁掛式の水洗大便器においては、照明装置が便器本体の下面かつ排水トラップ部の最下端部よりも前方に設けられており、照明装置の光源の照射範囲が、平面視で便器本体の前方及び左右にはみ出る範囲になるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-147889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の壁掛式の水洗大便器においては、照明装置が便器本体の下面かつ排水トラップ部の最下端部よりも前方に設けられているため、便器本体の真下や排水トラップ部の最下端部よりも後方側の床面領域に対して照射することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、照明装置から照射される光を便器本体の真下や排水トラップ部の最下端部よりも後方の所定の床面領域に照射することができる壁掛式の水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、壁に固定される壁掛式の水洗大便器であって、汚物を受けるボウル部と、このボウル部の下方に入口部が接続されて上記ボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、上記ボウル部及び上記排水トラップ部のそれぞれの外郭を側方から覆うスカート部と、このスカート部の後方に形成されて上記壁に対して固定される後方壁部と、を備え、床面から上方に離間して配置されている便器本体と、この便器本体に固定されて光を床面に照射する照明装置と、を有し、上記排水トラップ部は、上記入口部の後方且つ下方の最下端部まで下降した後にその後方且つ上方の頂部まで上昇する屈曲管路を形成すると共に、上記屈曲管路の頂部から後方且つ下方に下降する下降管路を形成しており、上記照明装置は、上記排水トラップ部の上記最下端部よりも後方に設けられ且つ上記スカート部の下端よりも上方の上記便器本体の内部空間内に設けられていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、便器本体に固定されて光を床面に照射する照明装置が便器本体の排水トラップ部の最下端部よりも後方に設けられ且つスカート部の下端よりも上方の便器本体の内部空間内に設けられていることにより、照明装置を使用者側から見えないように便器本体内に隠蔽することができるため、水洗大便器の外観の意匠性を向上させることができる。
また、床面から上方に離間して配置されている便器本体の内部空間に設けられた照明装置から光が床面に向けて照射された際、光が遮断されることなく、便器本体の真下や排水トラップ部の最下端部よりも後方の所定の床面領域に照射され、この所定の床面領域を最も明るくすることができる。
さらに、この所定の床面領域に照射された光について、その照射領域の中心からグラデーション状に広がらせることができるため、使用者から見た水洗大便器の外観性やその周囲の美観性を向上させることができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記照明装置は、上記排水トラップ部の上昇する上記屈曲管路よりも後方且つ上記下降管路よりも下方の上記便器本体の内部空間内に設けられている。
このように構成された本発明においては、照明装置が排水トラップ部の上昇する屈曲管路よりも後方且つ下降管路よりも下方の便器本体の内部空間内に設けられているため、照明装置により排水トラップ部の上昇する屈曲管路よりも後方且つ下降管路の下方から便器本体の真下の所定の床面領域に対して光を鮮明に照射させることができる。
したがって、照明装置から所定の床面領域に照射された光のグラデーションを鮮明にすることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記照明装置は、照射される最大照度の光の中心が上記後方壁部よりも前方に位置するように配置されている。
このように構成された本発明においては、照射される最大照度の光の中心が便器本体の後方壁部よりも前方に位置するように配置されている照明装置により、便器本体の真下の所定の床面領域に対して光のグラデーションを確実に形成することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記照明装置は、照射された光が上記排水トラップ部の上記最下端部と重なることなく上記最下端部よりも前方に照射されるように配置されている。
このように構成された本発明においては、照射された光が排水トラップ部の最下端部と重なることなく、この最下端部よりも前方に照射されるように配置されている照明装置により、照射された光が排水トラップ部により遮断されることなく、便器本体の真下の所定の床面領域に対して光のグラデーションを確実に形成することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記照明装置は、照射される最大照度の光の中心が上記排水トラップ部の上記最下端部よりも後方に位置するように配置されている。
このように構成された本発明においては、照射される最大強度の光の中心が排水トラップ部の最下端部よりも後方に位置するように配置されている照明装置により、便器本体の中央付近を中心に便器本体の真下の所定の床面領域に対して光のグラデーションを形成することができるため、使用者に対して便器本体全体を床面から浮いたように見せる演出を際立たせることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記便器本体は、上記照明装置が設けられる上記内部空間を形成する壁面を備えており、この壁面の少なくとも一部の表面には、釉薬が塗布されている。
このように構成された本発明においては、照明装置が設けられる便器本体の内部空間を形成する壁面の少なくとも一部の表面には、釉薬が塗布されていることにより、照明装置から照射される光の一部が便器本体の内部空間を形成する壁面の釉薬により反射されるため、その反射光が照明装置から照射される光と共に便器本体の真下の所定の床面領域をより鮮明に照らすことができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記照明装置は、上記後方壁部の前方側に固定されている。
このように構成された本発明においては、照明装置が便器本体の後方壁部の前方側に固定されていることにより、照明装置を便器本体の左右方向の中央側に設置し易くすることができるため、光の照射領域の中心を便器本体の真下の所定の床面領域内に配置し易くすることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上記照明装置は、上記後方壁部の後方側から締結部材により固定されている。
このように構成された本発明においては、照明装置が便器本体の後方壁部の後方側から締結部材により固定されていることにより、照明装置が締結部材により固定される便器本体の後方壁部の後方側の固定箇所や締結部材を使用者側から見えないように隠蔽することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の壁掛式の水洗大便器によれば、照明装置から照射される光を便器本体の真下や排水トラップ部の最下端部よりも後方の所定の床面領域に照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態による壁掛式の水洗大便器が壁に固定されている状態を示す分解斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による壁掛式の水洗大便器が壁に固定されている状態を示す中央側面断面図である。
図3】本発明の一実施形態による壁掛式の水洗大便器の底面図である。
図4】本発明の一実施形態による壁掛式の水洗大便器の背面図である。
図5図3のV-V線に沿った断面図である。
図6】本発明の一実施形態による壁掛式の水洗大便器の照明装置を斜め下方から見た斜視図である。
図7】本発明の一実施形態による壁掛式の水洗大便器の照明装置の分解斜視図である。
図8】本発明の一実施形態による壁掛式の水洗大便器の便器本体に対して固定された状態の照明装置の中央側面断面図である。
図9】本発明の一実施形態による壁掛式の水洗大便器の概略中央側面断面図であり、照明装置が光を床面に照射している状態を示す。
図10】本発明の一実施形態による壁掛式の水洗大便器の概略斜視図であり、照明装置が光を床面に照射している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1図10を参照して、本発明の一実施形態による壁掛式の水洗大便器について説明する。
まず、図1及び図2のそれぞれは、本発明の一実施形態による壁掛式の水洗大便器が壁に固定されている状態を示す分解斜視図、及び、中央側面断面図をそれぞれ示す。
図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態による壁掛式の水洗大便器1は、その便器本体2の後端部(後方壁部2a)が、トイレ室T内の背面側の壁Wに固定されていると共に、便器本体2の下端部が床面Fから上方に離間するように配置されたものである。
また、図1に示すように、本実施形態の壁掛式の水洗大便器1は、より具体的には、壁Wの背面側(壁裏側)に設けられた固定ユニットUによって便器本体2が壁裏側から固定された構造となっている。
さらに、固定ユニットU側には、水洗大便器1の便器本体2に洗浄水を供給する給水源である洗浄水供給装置4や、この洗浄水供給装置4を操作する洗浄操作装置6等が設けられており、これらの装置4,6が壁Wの裏側に隠蔽されている構造となっている。
なお、本実施形態の水洗大便器1においては、その便器本体2に洗浄水を供給する給水源である洗浄水供給装置4として、貯水タンク4a内に貯水された洗浄水を重力作用により便器本体2に供給する、いわゆる、「重力給水式」の貯水タンク4aを採用した形態について説明しているが、他の形態の給水源として、水道から給水圧を利用して洗浄水を直接的に便器本体2に供給する、いわゆる、「水道直圧式」の給水装置を採用してもよい。
その他、「フラッシュバルブ式」の給水装置や、貯水タンク内に貯水された洗浄水をポンプの補圧を利用して洗浄水を供給する「ポンプ式」の給水装置等を採用してもよい。
【0017】
つぎに、図1及び図2に示すように、本実施形態の水洗大便器1の便器本体2は、陶器で形成された陶器製の便器本体2である。
また、この陶器製の便器本体2は、汚物を受けるボウル部8と、このボウル部8の下方に入口部10aが接続されてボウル部8内の汚物を排出する排水トラップ部10とを備えている。
さらに、陶器製の便器本体2は、ボウル部8及び排水トラップ部10のそれぞれの外郭を側方から覆うスカート部12と、このスカート部12の後方に形成されて壁Wに対して固定される後端部(後方壁部2a)とを備えている。
ここで、図2に示すように、便器本体2の排水トラップ部10は、その入口部10aの後方且つ下方の最下端部10bまで下降した後にその後方且つ上方の頂部10cまで上昇する屈曲管路10dを形成すると共に、この屈曲管路10dの頂部10cから後方且つ下方に下降する下降管路10eを形成している。
【0018】
また、図3は、本発明の一実施形態による壁掛式の水洗大便器の底面図である。
図2及び図3に示すように、排水トラップ部10の最下端部10bよりも後方かつスカート部12の下端12aよりも上方の便器本体2の内部空間S内には、詳細は後述する照明装置14が設けられている。
この照明装置14は、便器本体2の後方壁部2aに対して固定されており、便器本体2の下方の床面Fに対して光を照射することができるようになっている。
【0019】
つぎに、図4は、本発明の一実施形態による壁掛式の水洗大便器の背面図であり、図5は、図3のV-V線に沿った断面図である。
図1図2図4及び図5に示すように、陶器製の便器本体2が固定ユニットUにより壁Wに固定された状態の便器本体2においては、そのボウル部8の上流側に形成される主導水路16の上流端(後端)である入口部16aが、洗浄水供給装置4の貯水タンク4aから下流側に延びる給水管18に接続されている。
一方、陶器製の便器本体2が固定ユニットUにより壁Wに固定された状態の便器本体2においては、その排水トラップ部10の下流端(後端)である出口部10fが、壁Wの裏側の床面Fから上方に延びた後に前方に屈曲して延びる排水管20に接続されている。
ここで、本実施形態の壁掛式の水洗大便器1については、その便器本体2内のボウル部8の高さ方向の落差によりボウル部8内の汚物を洗い落す、いわゆる、「洗い落とし式」の水洗大便器であってもよいし、サイホン作用を利用してボウル部8内の汚物を吸い込んで排水トラップ部10から外部に排出する、いわゆる、「サイホン式」の水洗大便器の形態等、他の水洗大便器の形態であってもよい。
【0020】
つぎに、図2図9を参照して、本実施形態による壁掛式の水洗大便器1の照明装置14の詳細について説明する。
図6は、本実施形態による壁掛式の水洗大便器1の照明装置14を斜め下方から見た斜視図である。また、図7は、本実施形態による壁掛式の水洗大便器1の照明装置14の分解斜視図である。さらに、図8は、本実施形態による壁掛式の水洗大便器1の便器本体2に対して固定された状態の照明装置14の中央側面断面図である。また、図9は、本発明の一実施形態による壁掛式の水洗大便器1の概略中央側面断面図であり、照明装置14が光を床面Fに照射している状態を示す。
【0021】
まず、図2図3図5図6図8及び図9に示すように、照明装置14は、便器本体2の排水トラップ部10の下降管路10eよりも下方の便器本体2の内部空間S内に設けられている。
ここで、図9においては、照明装置14から照射される光Lの全体が照射される所定の床面領域を「照射領域A」としている。この照射領域Aの平面視の外形は、ほぼ円形となって、床面Fに照射された光Lの拡散範囲Aとなっている。
また、この照射領域A(拡散範囲A)の中心O1に照射される光を「拡散範囲Aの中心O1の光L1」としている。
さらに、図9に示す照明装置14から床面Fの照射領域A(拡散範囲A)に照射される光Lの全体のうち、最大照度となる光Lを「最大照度の光L2」とし、この最大照度の光L2が照射される照射領域A内の点O2を「光Lの中心O2」としている。
つぎに、図9に示すように、照明装置14は、照射される最大照度の光L2の中心O2が便器本体2の後方壁部2aよりも前方に位置するように配置されている。
また、図9に示すように、照明装置14は、最も前方側に照射された光L3が便器本体2の排水トラップ部10の最下端部10bと重なることなく、この最下端部10bよりも前方に照射されるように配置されている。
さらに、図9に示すように、照明装置14は、照射される最大照度の光L2の中心O2が便器本体2の排水トラップ部10の最下端部10bよりも後方に位置するように配置されている。
また、図3図5図6図8、及び、図9に示すように、照明装置14が設けられる便器本体2の内部空間Sを形成する壁面S1を備えており、この壁面S1の少なくとも一部の表面には、釉薬Gが塗布されている。
【0022】
つぎに、図3図9に示すように、照明装置14は、その各部の構成や内部構造等の詳細については後述するが、便器本体2の後方壁部2aの前方側に固定されている。
また、この便器本体2の後方壁部2aに対する照明装置14の固定については、後方壁部2aの後方側から一対の締結部材(タッピンねじ22,22、ワッシャ24,24)により固定されている。
【0023】
つぎに、図5図8を参照して、照明装置14の各部の構成と内部構造等の詳細について説明する。
まず、図6図8に示すように、照明装置14の各構成については、後方側から前方側に向かって、一対のタッピンねじ22,22、一対のワッシャ24,24、陶器側止水パッキン26、複数(4つ)の本体固定用ねじ28,28,28,28、筐体30、給電用ハーネス32、LED基板34、複数(2つ)の基板固定用ねじ36,36、本体側止水パッキン38、及び、透光性カバー40から構成されている。
筐体30は、全体が遮光性材料(光を通し難い材料)からなり、その後方側に設けられた固定部30aが一対の締結部材(タッピンねじ22,22、ワッシャ24,24)により後方側から固定されるようになっている。
これにより、筐体30の固定部30aは、その後方側が陶器側止水パッキン26を介して便器本体2の後方壁部2aの前方側に固定されるようになっている。
また、筐体30は、後端部から前方に突出する支持受部30bを備えている。この支持受部30bの側壁30cは、その内部の空間を取り囲むように平面視で概ね矩形状に形成されている。
さらに、筐体30の支持受部30bにおける側壁30cの上端部には、LED基板34が取り付けられている。このLED基板34は、複数(2つ)の基板固定用ねじ36,36によって支持受部30bに対して固定されている。
ここで、LED基板34は、その下面において左右方向に配列された複数(4つ)の光源(LED素子34a,34a,34a,34a)を含む発光部となっている。
また、給電用ハーネス32は、その一端側がLED基板34の一部に電気的に接続され、他端側が水洗大便器1の機能部(図示せず)に電力を供給する給電ケーブル(図示せず)にコネクタ(図示せず)を介して電気的に接続されている。
【0024】
つぎに、図5図8に示すように、透光性カバー40は、透光性材料で形成され、筐体30の支持受部30b及びLED基板34に対して上下、左右側方、及び前方から覆うように取り付けられている。
また、透光性カバー40の後方側は、筐体30の固定部30aの後方側から取り付けられた複数(4つ)の本体固定用ねじ28,28,28,28によって、本体側止水パッキン38を介して筐体30の固定部30aの前面に対して固定されている。
また、透光性カバー40は、その露出された表面部分が切れ目なく一体的に形成された単一部材からなる。
さらに、透光性カバー40は、その照射側の面40a(下面40a)がほぼ平坦に形成されている。
【0025】
さらに、図6図8に示すように、LED基板34は、その下面に複数(4つ)の光源(LED素子34a,34a,34a,34a)が左右方向に配列された薄板状の基板部材34bを備えている。
この基板部材34bは、複数(4つ)の光源(LED素子34a,34a,34a,34a)を透光性カバー40内に固定する固定部材であると共に、各光源34a,34a,34a,34aから発光される光Lが上方に拡散しないように、各光源34a,34a,34a,34aの上方を遮蔽する遮蔽部材として機能するようになっている。
より具体的には、筐体30自体は上方に開口しているため、LED基板34の基板部材34b自体が上方への光を遮断するようになっており、LED基板34の周りを回って上方に漏れる光については、光を通し難い材料でできている筐体30自体が遮断するようになっている。
【0026】
つぎに、筐体30は、その支持受部30bの下端に設けられた遮光部30dを備えている。
また、この遮光部30dにおいて、各光源34a,34a,34a,34aの下方に設けられている開口部30eは、各光源34a,34a,34a,34aから発光される光Lが透光可能に遮光部30dを上下方向に貫くように形成されている。
【0027】
さらに、筐体30は、LED基板34(各光源34a,34a,34a,34a)を透光性カバー40の内部に固定する固定部材ともなっている。
また、本体側止水パッキン38は、このような固定部材である筐体30の固定部30aの前面と、この前面と前後方向に対向する透光性カバー40内の後方側の段部(後方側段部40b)との間(隙間)を水密可能にすると共に、各光源34a,34a,34a,34aから発光された光Lが、筐体30の固定部30aの前面と透光性カバー40内の後方側段部40bとの間(隙間)から照出しないように遮光を補助する遮光補助部材として機能するようにもなっている。
【0028】
つぎに、図1図10を参照して、本発明の一実施形態による壁掛式の水洗大便器1の作用について説明する。
図10は、本実施形態による壁掛式の水洗大便器1の概略斜視図であり、照明装置14が光を床面Fに照射している状態を示す。
上述した本実施形態による壁掛式の水洗大便器1によれば、便器本体2に固定されて光Lを床面Fに照射する照明装置14が便器本体2の排水トラップ部10の最下端部10bよりも後方に設けられ、かつ、スカート部12の下端12aよりも上方の便器本体2の内部空間S内に設けられている。
これにより、照明装置14を使用者側から見えないように便器本体2内に隠蔽することができるため、水洗大便器1の外観の意匠性を向上させることができる。
また、床面Fから上方に離間して配置されている便器本体2の内部空間Sに設けられた照明装置14から光Lが床面Fに向けて照射された際、光Lが遮断されることなく、便器本体2の真下や排水トラップ部10の最下端部10bよりも後方の所定の床面領域Aに照射され、この所定の床面領域Aを最も明るくすることができる。
さらに、この所定の床面領域Aに照射された光Lについて、その照射領域Aにおける最大照度の光L2の中心O2からグラデーション状に広がらせることができるため、使用者から見た水洗大便器1の外観性やその周囲の美観性を向上させることができる。
【0029】
また、本実施形態による壁掛式の水洗大便器1によれば、照明装置14が便器本体2の排水トラップ部10の上昇する屈曲管路10dよりも後方且つ下降管路10eよりも下方の内部空間S内に設けられている。
したがって、照明装置14により便器本体2の排水トラップ部10の下降管路10eの下方から便器本体2の真下の所定の床面領域Aに対して光を鮮明に照射させることができる。
よって、照明装置14から所定の床面領域Aに照射された光LのグラデーションLGを鮮明にすることができる。
【0030】
さらに、本実施形態による壁掛式の水洗大便器1によれば、照明装置14が、照射される最大照度の光L2の中心O2が便器本体2の後方壁部2aよりも前方に位置するように配置されている。
これにより、便器本体2の真下の所定の床面領域Aに対して光LのグラデーションLGを確実に形成することができる。
【0031】
また、本実施形態による壁掛式の水洗大便器1によれば、照明装置14が、最も前方側に照射された光L2が便器本体2の排水トラップ部10の最下端部10bと重なることなく、この最下端部10bよりも前方に照射されるように配置されている。
これにより、照射された光Lが便器本体2の排水トラップ部10により遮断されることなく、便器本体2の真下の所定の床面領域Aに対して光LのグラデーションLGを確実に形成することができる。
【0032】
さらに、本実施形態による壁掛式の水洗大便器1によれば、照明装置14が、照射される最大照度の光L2の中心O2が便器本体2の排水トラップ部10の最下端部10bよりも後方に位置するように配置されている。
これにより、図10に示すように、便器本体2の中央付近を中心に便器本体2の真下の所定の床面領域Aに対して光LのグラデーションLGを形成することができるため、使用者に対して便器本体2の全体を床面Fから浮いたように見せる演出を際立たせることができる。
【0033】
また、本実施形態による壁掛式の水洗大便器1によれば、照明装置14が設けられる便器本体2の内部空間Sを形成する壁面S1の少なくとも一部の表面には、釉薬Gが塗布されている。
これにより、照明装置14から照射される光Lの一部が便器本体2の内部空間Sを形成する壁面S1の釉薬Gにより反射されるため、その反射光が照明装置14から照射されるLと共に便器本体2の真下の所定の床面領域Aをより鮮明に照らすことができる。
【0034】
さらに、本実施形態による壁掛式の水洗大便器1によれば、照明装置14が便器本体2の後方壁部2aの前方側に固定されている。
これにより、図3及び図5に示すように、照明装置14を便器本体2の左右方向の中央側に設置し易くすることができるため、光Lの照射領域Aにおける最大照度の光L2の中心O2を便器本体2の真下の所定の床面領域A内に配置し易くすることができる。
【0035】
また、本実施形態による壁掛式の水洗大便器1によれば、図4及び図8に示すように、照明装置14が便器本体2の後方壁部2aの後方側から一対の締結部材(タッピンねじ22,22、ワッシャ24,24)により固定されている。
これにより、照明装置14が締結部材(タッピンねじ22,22、ワッシャ24,24)により固定される便器本体2の後方壁部2aの後方側の固定箇所や締結部材(タッピンねじ22,22、ワッシャ24,24)を使用者側から見えないように隠蔽することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 壁掛式の水洗大便器
2 便器本体
2a 便器本体の後端部、後方壁部
4 洗浄水供給装置
4a 貯水タンク
6 洗浄操作装置
8 ボウル部
10 排水トラップ部
10a 排水トラップ部の入口部
10b 排水トラップ部の最下端部
10c 排水トラップ部の頂部
10d 排水トラップ部の屈曲管路
10e 排水トラップ部の下降管路
10f 排水トラップ部の出口部
12 スカート部
12a スカート部の下端
14 照明装置
16 主導水路
16a 主導水路の入口
18 給水管
20 排水管
22 タッピンねじ
24 ワッシャ
26 陶器側止水パッキン
28 本体固定用ねじ
30 筐体(照明装置の固定部、固定部材)
30a 筐体の固定部(照明装置の固定部)
30b 筐体の支持受部
30c 筐体の支持受部の側壁
30d 筐体の遮光部
30e 筐体の遮光部の開口部
32 給電用ハーネス
34 LED基板(発光部)
34a LED素子(光源)
34b 基板部材(固定部材)
36 基板固定用ねじ
38 本体側止水パッキン(遮光補助部材)
40 透光性カバー
40a 透光性カバーの下面(照射側の面)
40b 透光性カバー内の後方側段部
A 光が照射される所定の床面領域、床面における光の照射領域、光の拡散範囲
F トイレ室内及び壁裏側の床面
G 釉薬
L 照射される光
L1 照射領域(拡散範囲)の中心に照射される光
L2 最大照度の光
L3 最も前方側に照射された光
LG 光のグラデーション
O1 床面の照射領域の中心、光の拡散範囲の中心
O2 光の照射領域内における最大照度の光が照射される点(光の中心)
S 便器本体の内部空間
S1 便器本体の内部空間を形成する壁面
T トイレ室
U 固定ユニット
W 壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10