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特開2024-122387医療用ゴム製品の包装体、および、その滅菌処理方法
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  • 特開-医療用ゴム製品の包装体、および、その滅菌処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122387
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】医療用ゴム製品の包装体、および、その滅菌処理方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/20 20060101AFI20240902BHJP
   B65D 81/26 20060101ALI20240902BHJP
   B65B 55/08 20060101ALI20240902BHJP
   B65B 55/02 20060101ALI20240902BHJP
   A61J 1/14 20230101ALI20240902BHJP
   A61J 1/18 20230101ALI20240902BHJP
【FI】
B65D81/20 F
B65D81/20 K
B65D81/26 S
B65B55/08 B
B65B55/02 A
A61J1/14 520
A61J1/14 500
A61J1/18
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029903
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】山清 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】近藤 俊一
(72)【発明者】
【氏名】紀田 擁軍
【テーマコード(参考)】
3E067
4C047
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB83
3E067AC03
3E067BA12B
3E067BA12C
3E067BB14B
3E067BB14C
3E067CA06
3E067CA24
3E067EA09
3E067EC14
3E067EC33
3E067EE25
3E067EE29
3E067EE47
3E067FA02
3E067FB12
3E067FC01
3E067GA19
3E067GC03
3E067GD07
4C047AA05
4C047AA31
4C047DD01
4C047FF06
4C047GG14
4C047GG15
4C047GG16
(57)【要約】
【課題】医療用ゴム製品が収容された包装体について、包装体中の酸素を所定濃度以下に保持できる新規な包装体を提供する。包装体中の酸素濃度を目視で確認できるようにし、滅菌処理による品質保証を容易にすることをさらなる課題とする。
【解決手段】本発明は、医療用ゴム製品が密封されている包装体であって、前記包装体は、酸素非透過性の包材からなり、医療用ゴム製品が収容されている第1空間部と、酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤が収容されている第2空間部とを有し、第1空間部と第2空間部とが、酸素透過可能な仕切によって区画されていることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用ゴム製品が密封されている包装体であって、前記包装体は、酸素非透過性の包材からなり、
医療用ゴム製品が収容されている第1空間部と、
酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤が収容されている第2空間部とを有し、第1空間部と第2空間部とが、酸素透過可能な仕切によって区画されていることを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記仕切は、前記医療用ゴム製品と酸素検知剤とが通過できない通気孔を有し、前記通気孔により、第1空間部と第2空間部とが酸素透過可能に構成されている請求項1記載の包装体。
【請求項3】
前記第1空間部と第2空間部との仕切が、前記包材を非連続に熱溶着することにより、通気孔を有するように形成されている請求項2記載の包装体。
【請求項4】
前記第1空間部の上縁シール部と前記第2空間部の上縁シール部とが隣接している請求項1記載の包装体。
【請求項5】
前記第1空間部の上縁シール部と前記第2空間部の上縁シール部が、それぞれ熱溶着によって封止されている請求項4記載の包装体。
【請求項6】
前記包装体の内部空間に、窒素が充填されている請求項1記載の包装体。
【請求項7】
前記第2空間部に、前記酸素検知剤とともに脱酸素剤が収容されている請求項1記載の包装体。
【請求項8】
医療用ゴム製品が密封されている1次包装体が収容されている2次包装体であって、
前記1次包装体は、酸素非透過性の包材からなり、
医療用ゴム製品が収容されている第1空間部と、
酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤が収容されている第2空間部と、
脱酸素剤及び/又は酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤が収容されている第3空間部とを有し、
第1空間部と第2空間部とが、酸素透過可能な仕切によって区画され、
第1空間部と第3空間部とが、酸素非透過な仕切によって区画され、
前記第1次包装体には、前記第3空間部と前記2次包装体の内部空間とを連通する通気孔が形成されていることを特徴とする包装体。
【請求項9】
第1空間部と第2空間部との仕切は、前記医療用ゴム製品と酸素検知剤とが通過できない通気孔を有し、前記通気孔により、第1空間部と第2空間部とが酸素透過可能に構成されている請求項8に記載の包装体。
【請求項10】
前記第1空間部と第2空間部との仕切が、前記包材を非連続に熱溶着することにより、通気孔を有するように形成されている請求項9記載の包装体。
【請求項11】
前記第1空間部の上縁シール部が、前記第2空間部の上縁シール部および前記第3空間部の上縁シール部に隣接している請求項8記載の包装体。
【請求項12】
前記第1空間部、前記第2空間部および前記第3空間部の上縁シール部が熱溶着によって封止されている請求項11記載の包装体。
【請求項13】
前記1次包材の内部空間及び前記2次包材の内部空間に、窒素が充填されている請求項8記載の包装体。
【請求項14】
請求項1に記載の包装体にガンマ線を照射することを特徴とする医療用ゴム製品の滅菌方法。
【請求項15】
前記第2空間部に酸素検知剤が収容された包装体であって、前記酸素検知剤により検知される酸素濃度が所定値よりも低い状態である包装体にガンマ線を照射する請求項14に記載の医療用ゴム製品の滅菌方法。
【請求項16】
請求項8に記載の包装体にガンマ線を照射することを特徴とする医療用ゴム製品の滅菌方法。
【請求項17】
前記第2空間部に酸素検知剤が収容された包装体であって、前記酸素検知剤により検知される酸素濃度が所定値よりも低い状態である包装体にガンマ線を照射する請求項16に記載の医療用ゴム製品の滅菌方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ゴム製品の滅菌処理に関するものであり、より詳細には、医療用ゴム製品の包装体、および、その滅菌処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジ、バイアル瓶などの開口部を密封する医療用ゴム栓には、非溶出性、高清浄性、耐薬品性、耐針刺性、自己密封性、高摺動性など多くの項目が必須とされている。医療用ゴム栓に要求される品質特性は、その用途上、第17改正日本薬局方の輸液用ゴム栓試験に準拠すべきである。
【0003】
医療用製品(シリンジ用ガスケットやバイアル栓など)を滅菌保証した状態で納入するレディトウユース(RTU:READY TO USE)の要求が高まっている。滅菌保証方法として、高圧蒸気滅菌、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌、放射線滅菌がある。
【0004】
医療用ゴム製品をEOG滅菌処理すると、EOGの残留物が懸念されるために、EOGを除去する作業が発生する。医療用ゴム製品を高圧蒸気滅菌処理する際には、蒸気の乾燥時間が必要となる。放射線滅菌の一種であるガンマ線滅菌は、医療用ゴム製品を包装したまま滅菌できるので、包装を開封せずに納入できるメリットがある。そのため、医療用ゴム製品について、ガンマ線滅菌へ切り替わる傾向がある。
【0005】
放射線滅菌処理に関する技術として、例えば、特許文献1,2が挙げられる。
【0006】
特許文献1には、プラスチックを含む物品を脱酸素剤と共に実質的に非通気性の袋又は容器に密封し脱酸素後に放射線又は電子線を照射することを特徴とする放射線又は電子線照射によるプラスチックを含む物品の殺菌方法が開示されている。
【0007】
特許文献2には、臭気吸着層を有する積層体からなる放射線滅菌処理用包装材料であって、該臭気吸着層は、無機多孔体上に化学吸着剤を担持させてなる臭気吸着剤を含有する樹脂組成物からなることを特徴とする、上記放射線滅菌処理用包装材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8-89561号公報
【特許文献2】特開2014-233408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
医療用ゴム製品にガンマ線を照射して滅菌すると、医療用ゴム製品を構成するポリマーの切断と架橋が同時に起こる。過剰のガンマ線を吸収すると、医療用ゴム製品を構成するポリマー主鎖の切断が促進されて、低分子成分が生成する。そのため、ガンマ線滅菌後の医療用ゴム製品の溶出性能が悪化する。また、切断した低分子成分がゴム製品表面にブリードアウトし、医療用ゴム製品同士が密着することによって、医療用品の製造工程で用いられるバーツフィーダ詰まりのトラブルが発生する。
【0010】
過剰のガンマ線を吸収することに備えて、医療用ゴム製品に酸化防止剤を配合することも考えられるが、酸化防止剤の添加は、溶出特性の低下、薬剤への悪影響が懸念される。
【0011】
本願出願人は、上記問題に鑑み、医療用ゴム製品が収容された包装体の酸素濃度を低下して、ガンマ線滅菌処理をすれば、非溶出性能が維持された医療用ゴム製品が得られることを見出し、特許出願している(特願2021-208609号、特願2022-169472号)。しかしながら、滅菌処理前の包装体および出荷前の包装体中の酸素が、所定濃度以下になっているかを包装体毎に確認することは困難であり、品質保証上の問題があった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、包装体中の酸素濃度を目視で確認できるようにして、滅菌処理による品質保証を容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の包装体は、医療用ゴム製品が密封されている包装体であって、前記包装体は、酸素非透過性の包材からなり、医療用ゴム製品が収容されている第1空間部と、酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤が収容されている第2空間部とを有し、第1空間部と第2空間部とが、酸素透過可能な仕切によって区画されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の包装体は、医療用ゴム製品が密封されている1次包装体が収容されている2次包装体であって、前記1次包装体は、酸素非透過性の包材からなり、医療用ゴム製品が収容されている第1空間部と、酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤が収容されている第2空間部と、脱酸素剤及び/又は酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤が収容されている第3空間部とを有し、第1空間部と第2空間部とが、酸素透過可能な仕切によって区画され、第1空間部と第3空間部とが、酸素非透過な仕切によって区画され、前記第1次包装体には、前記第3空間部と前記2次包装体の内部空間とを連通する通気孔が形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明には、本発明の包装体の滅菌方法が含まれる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、包装体中の酸素濃度を目視で確認でき、滅菌処理による品質保証を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の医療用ゴム製品の包装態様の一例を模式的に示す説明図。
図2】本発明の医療用ゴム製品の包装態様の別の一例を模式的に示す説明図。
図3】本発明の医療用ゴム製品の包装態様の別の一例を模式的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<包装体>
本発明の包装体は、医療用ゴム製品が密封されている包装体であって、前記包装体は、酸素非透過性の包材からなり、医療用ゴム製品が収容されている第1空間部と、酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤が収容されている第2空間部とを有し、第1空間部と第2空間部とが、酸素透過可能な仕切によって区画されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の包装体は、フィルム状の包材が互いに重ね合わされており、かつ、その周縁が密封されて、その内部を収容部としているものである。包装体の形態としては、例えば、四方シール型、および、三方シール型を挙げることができる。
【0020】
四方シール型の包装体は、同形同大の2枚のフィルム状の包材を重ね、周囲三辺に周縁シール部を設けてなるもので、残る一辺を開口部として、ここから内容物を充填収容した後、この開口部をシールして密封する。
【0021】
三方シール型の包装体は、1枚のフィルム状の包材を折り曲げ線で二つ折して、こうして折り曲げ線で区画された領域をそれぞれ表裏のフィルムとし、二辺に周縁シール部を設けてなるものである。そして、残る一辺を開口部としてここから内容物を充填収容した後、この開口部をシールして密封する。
【0022】
本発明の包装体の平面視の形状は、特に限定されないが、略矩形であることが好ましく、長方形であることがより好ましい。前記略矩形の一辺の長さは、17cm以上であることが好ましく、20cm以上であることがより好ましく、75cm以下であることが好ましく、52cm以下であることがより好ましい。
【0023】
本発明の包装体は、医療用ゴム製品が収容されている第1空間部と、酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤が収容されている第2空間部とを有している。第1空間部と第2空間部とは、酸素透過可能な仕切によって区画されている。
【0024】
本発明の包装体は、上下方向と上下方向に直行する幅方向とを有している。包装体の上側とは、医療用ゴム製品、脱酸素剤および/または酸素検知剤などを入れる開口が設けられていた側であり、これらの内容物を包装体内に収容した後に、密封される側である。
【0025】
本発明の包装体は、少なくとも上縁シール部と側縁シール部とを有していることが好ましく、上縁シール部と、側縁シール部と、下縁シール部とを有していてもよい。包装体の周縁のシール部は、熱溶着(ヒートシール)により形成されていることが好ましい。
【0026】
包装体の周縁シール部は、包装体の周縁に沿って線状に設けられることが好ましく、直線状に設けられることがより好ましい。包装体の周縁シール部のシール幅は、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.5mm以上がさらに好ましく、5.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましく、1.0mm以下がさらに好ましい。包装体の周縁シール部の幅を0.05mm以上とすることにより、包装体の気密性が高まる。包装体の周縁シール部の幅を5.0mm以下とすることにより、包装体内の収容空間を大きくすることができる。
【0027】
第1空間部と第2空間部の仕切は、包装体の上縁シール部から、一方の側縁シール部に渡るように設けられていることが好ましい。第1空間部と第2空間部の仕切の形状は、特に限定されないが、線状であることが好ましく、曲線状または折れ線状であることがより好ましい。第1空間部の上縁シール部と第2空間部の上縁シール部とは幅方向に隣接して、包装体の上縁シール部を形成していることが好ましい。第1空間部の側縁シール部と第2空間部の側縁シール部とは、上下方向に隣接して、一方の側縁シール部を形成していることが好ましい。
【0028】
第2空間部は、上縁シール部と側縁シール部と仕切により区画され、酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤を収容する空間を形成している。
【0029】
第1空間部は、上縁シール部と側縁シール部と、包装体の下縁と仕切により区画され、医療用ゴム製品を収容する空間を形成している。
【0030】
第1空間部と第2空間部の仕切は、前記医療用ゴム製品と酸素検知剤とが通過できない通気孔を有し、前記通気孔により、第1空間部と第2空間部とが酸素透過可能に構成されていることが好ましい。
【0031】
第1空間部と第2空間部の仕切は、酸素非透過性の包材を非連続的に熱溶着(ヒートシール)することにより、通気孔が設けられていることが好ましい。第1空間部と第2空間部とは、この通気孔により連通している。第1空間部と第2空間部との仕切を形成するシール部の幅は、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1.0mm以上がさらに好ましく、3.0mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましく、2.0mm以下がさらに好ましい。
【0032】
第1空間部と第2空間部の仕切に設けられる通気孔の数は、特に限定されないが、1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、10以下であることが好ましく、5以下であることが好ましい。1つの通気孔の幅は、1mm以上であることが好ましく、3.0mm以上であることが好ましく、15mm以下であることが好ましく、10mm以下であることが好ましい。通気孔の数および幅を前記のようにすることにより、第1空間部と第2空間部の通気性が良好になる。また、通気孔の幅を前記範囲内にしておくことにより、第2空間部に収容されている酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤が、第1空間部に移動することを防止できる。
【0033】
第2空間部に酸素検知剤が収容されている態様では、第1空間部と第2空間部とが連通しているため、酸素検知剤が第1空間部の酸素濃度を検知する。酸素検知剤は、酸素濃度に応じて色調が変化するので、包装体の第1空間部の酸素濃度を視覚により認識することができる。
【0034】
第2空間部には、酸素検知剤と共に脱酸素剤が収容されてもよく、この態様では、脱酸素剤により、第1空間部および第2空間部の酸素濃度を低下させることができる。例えば、内部空間に不活性ガスが充填されて密封された包装体内において、内部空間に残留している酸素を取り除くことや、包装体の外部から第1空間部内へ透過した酸素を取り除くことが出来る。
【0035】
本発明の包装体は、さらに、脱酸素剤および/または酸素検知剤を収容する第3空間部を有していることが好ましい。
【0036】
第1空間部と第3空間部との仕切は、第1空間部と第2空間部との仕切とは異なり、通気孔を設けず、酸素を透過しないように設けられていることが好ましい。第1空間部と第3空間部との仕切は、酸素非透過性の包材を連続的に熱溶着(ヒートシール)することにより形成されるシール部であることが好ましい。
【0037】
第1空間部と第3空間部との仕切は、上縁シール部から、一方の側縁シール部に渡るように設けられている。第1空間部と第3空間部の仕切の形状は、特に限定されないが、線状であることが好ましく、曲線状または折れ線状であることがより好ましい。
【0038】
第3空間部は、上縁シール部と側縁シール部と仕切により区画され、脱酸素剤及び/又は酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤を収容する空間を形成している。
【0039】
第1空間部と第3空間部との仕切を形成するシール部の幅は、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1.0mm以上がさらに好ましく、3.0mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましく、2.0mm以下がさらに好ましい。仕切のシール部の幅を0.3mm以上とすることにより、第3空間部の気密性が高まる。仕切のシール部の幅を3.0mm以下とすることにより、第3空間部の収容空間を大きくすることができる。
【0040】
第1空間部の上縁シール部は、第2空間部の上縁シール部と第3空間部の上縁シール部との間に位置する。第1空間部の上縁シール部と、第2空間部の上縁シール部と第3空間部の上縁シール部とが幅方向に隣接して、包装体の上縁シール部を形成している。第3空間部の側縁シール部と第1空間部の側縁シール部とが上下方向に隣接して、一方の側縁シール部を形成している。
【0041】
第3空間部には、包装体の外部に連通する通気孔が設けられていてもよい。通気孔は、脱酸素剤及び/又は酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤が、はみ出ることができないような大きさに設けられていることが好ましい。前記通気孔は、第3空間部の側縁シール部に設けられていることが好ましい。
【0042】
本発明の包装体が第2空間部および第3空間部を有する態様としては、例えば、第2空間部に酸素検知剤が収容され、第3空間部に脱酸素剤が収容される第1態様、第2空間部に酸素検知剤が収容され、第3空間部に脱酸素剤と酸素検知剤とが収容される第2態様、第2空間部に酸素検知剤と脱酸素剤が収容され、第3空間部に脱酸素剤が収容される第3態様、第2空間部に酸素検知剤と脱酸素剤が収容され、第3空間部に脱酸素剤と酸素検知剤とが収容される第4態様を挙げることができる。
【0043】
本発明の包装体の内部空間の酸素濃度は、1.0容量%以下であることが好ましく、0.5容量%以下であることがより好ましく、0.1容量%以下であることがさらに好ましい。包装体内の酸素濃度が1.0容量%以下であれば、ガンマ線照射によるゴムの劣化が抑制され、ガンマ線滅菌処理後の医療用ゴム製品の非溶出特性が良好になるからである。
【0044】
本発明の包装体の内部空間は、不活性ガスが充填されていることが好ましい。不活性ガスが充填されることにより、包装体内の酸素濃度が低下する。そのため、使用する脱酸素剤の量を削減する、或いは、脱酸素剤を使用しなくとも所望の酸素濃度を実現することができる。また脱酸素剤を使用する場合においても、脱酸素剤の酸素吸収によって包装体の内部圧力の低下量を小さくすることができ、内部圧力低下に起因する製品間の密着を防止することができる。不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガス、或いは、窒素ガスなどを挙げることができる。本発明の包装体の内部空間は、窒素が充填されていることが好ましい。
【0045】
<2次包装体>
本発明には、医療用ゴム製品が密封されている1次包装体が収容されている2次包装体であって、前記1次包装体は、酸素非透過性の包材からなり、医療用ゴム製品が収容されている第1空間部と、酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤が収容されている第2空間部と、脱酸素剤及び/又は酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤が収容されている第3空間部とを有し、第1空間部と第2空間部とが、酸素透過可能な仕切によって区画され、第1空間部と第3空間部とが、酸素非透過な仕切によって区画され、前記第1次包装体には、前記第3空間部と前記2次包装体の内部空間とを連通する通気孔が形成されていることを特徴とする包装体が含まれる。
【0046】
本発明の2次包装体に収容される1次包装体の詳細については、上述した通りであり説明を省略する。
【0047】
2次包装体は、酸素非透過性の包材から形成されたものであれば、特に限定されない。
前記2次包装体としては、1次包装体を構成する包材と同一の包材から形成されていてもよく、異なる包材から形成されていてもよい。
【0048】
2次包装体は、フィルム状の包材を製袋することにより得られるものが好ましい。前記2次包装体は、フィルム状の包材が互いに重ね合わされており、かつ、その周縁が密封されて、その内部を収容部としているものである。包装体の形態としては、例えば、四方シール型、および、三方シール型を挙げることができる。
【0049】
2次包装体の平面視の形状は、特に限定されないが、略矩形であることが好ましく、長方形であることがより好ましい。また、1次包装体を複数個収容する観点から、2次包装体の略矩形の一辺の長さは、30cm以上であることが好ましく、50cm以上であることがより好ましく、100cm以下であることが好ましく、85cm以下であることがより好ましい。
【0050】
本発明の2次包装体が収容する1次包装体が第2空間部および第3空間部を有する態様としては、例えば、第2空間部に酸素検知剤が収容され、第3空間部に脱酸素剤が収容される第1態様、第2空間部に酸素検知剤が収容され、第3空間部に脱酸素剤と酸素検知剤とが収容される第2態様、第2空間部に酸素検知剤と脱酸素剤が収容され、第3空間部に脱酸素剤が収容される第3態様、第2空間部に酸素検知剤と脱酸素剤が収容され、第3空間部に脱酸素剤と酸素検知剤とが収容される第4態様を挙げることができる。
【0051】
本発明の2次包装体は、前記の態様のうち、1種のみの態様の包装体を収容してもよいし、前記の態様の任意の組み合わせの1次包装体を収容することができる。また、2次包装体に収容される1次包装体の個数は、1個以上であれば特に限定されず、2個以上がより好ましく、10個以下が好ましく、4個以下がより好ましい。
【0052】
本発明の2次包装体の内部空間は、不活性ガスで充填されていることが好ましい。
不活性ガスが充填されることにより、2次包装体内の酸素濃度が低下する。そのため、使用する脱酸素剤の量を削減することができる。不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガス、或いは、窒素ガスなどを挙げることができる。本発明の包装体の内部空間は、窒素が充填されていることが好ましい。
【0053】
本発明の2次包装体の内部空間は、1次包装体の内部空間の酸素濃度が所定値以下(好ましくは1.0容量%以下)に制御されているかぎり、空気が充填されていてもよい。1次包装体の内部空間の酸素濃度が所定値以下(好ましくは1.0容量%以下)に制御されていれば、ガンマ線滅菌処理による医療用ゴム製品の非溶出特性の低下を抑制できるからである。また、2次包装体内を不活性ガスで充填する必要がなく、生産効率が向上するからである。
【0054】
1次包装体の第3空間部に酸素検知剤が収容される態様では、第3空間部と2次包装体の内部空間とが連通しているため、酸素検知剤が2次包装体の内部空間の酸素濃度を検知する。酸素検知剤は、酸素濃度に応じて色調が変化するので、2次包装体の内部空間の酸素濃度を視覚により認識することができる。
【0055】
1次包装体の第3空間部に脱酸素剤が収容される態様では、第3空間部と2次包装体の内部空間とが連通しているため、脱酸素剤が2次包装体の内部空間の酸素を吸収する。この態様では、脱酸素剤により、2次包装体の内部空間の酸素濃度を低下させることができる。例えば、2次包装体の内部空間に空気が充填されて密封される場合には、脱酸素剤により2次包装体の内部空間の酸素濃度を低下させることにより、2次包装体の内部空間から1次包装体の第1空間部への酸素の透過を防止することが出来る。また、2次包装体の内部空間に不活性ガスが充填されて密封される場合においては、2次包装体の内部空間に残留している酸素を取り除くことで、2次包装体の内部空間から1次包装体の第1空間部への酸素の透過を確実に防止することが出来る。
【0056】
本発明の2次包装体をさらに包装体(例えば、3次包装体~5次包装体など)に収容することも好ましい。3次包装体~5次包装体としては、ガンマ線を照射することができるものであれば、特に限定されない。3次包装体~5次包装体としては、袋、箱などの形状を挙げることができる。包装袋としては、例えば、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂フィルムまたはアルミニウムから形成された包装袋を挙げることができる。包装袋は、密閉できるものが好ましい。包装箱としては、特に限定されないが、紙箱、段ボール箱などを挙げることができる。
【0057】
<包装体を構成する材料>
本発明の包装体は、酸素非透過性の包材から形成される。本発明で使用する酸素非透過性の包材は、20℃、90%RHにおける包材の酸素透過濃度(ml/(m・24h・atm))が1次包装体は10000ml/(m・24h・atm)以下であることが好ましく、1000ml/(m・24h・atm)以下であることがより好ましく、20ml/(m・24h・atm)以下であることがさらに好ましい。2次包装体は1000ml/(m・24h・atm)以下であることが好ましく、200ml/(m・24h・atm)以下であることがより好ましく、20ml/(m・24h・atm)以下であることがさらに好ましい。酸素透過性が前記範囲の包材を使用することにより、包装体内の酸素濃度を制御することができるからである。
【0058】
本発明で使用する酸素非透過性の包材は、熱溶着(ヒートシール)ができるものが好ましい。熱溶着(ヒートシール)により、包材を容易に製袋できるからである。また、包材は、酸素検知剤の色調の変化を確認できるように、透明もしくは半透明の材料であることが好ましい。
【0059】
本発明で使用する酸素非透過性の包材は、積層フィルムであることが好ましい。前記積層フィルムとしては、例えば、基材層、バリヤ層、シーラント層などを有するものが好ましい。
【0060】
基材層としては、樹脂フィルムを挙げることができる。前記樹脂フィルムの樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、フッ素系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、各種のナイロン等のポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアリールフタレート、シリコーン樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等を挙げることができる。
【0061】
基材層としては、例えば、未延伸ナイロンフィルム、延伸ナイロンフィルム、PETフィルム、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム、低密度ポリエチレンフィルムが好ましい。
【0062】
基材層は、上記から選択される1種または2種以上の樹脂を用いたフィルムを含有することが好ましく、1層で構成されていても、同一組成または異なる組成の2層以上で構成されていてもよい。
【0063】
前記基材層は、押出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の製膜化法を用いて単層、又は多層製膜したものを用いることができる。また、基材層の厚みは、当業者が適宜に決定することができるが、6μm以上が好ましく、9μm以上がより好ましく、150μm以下が好ましく、130μm以下がより好ましい。
【0064】
バリヤ層は、外部から包装体の内部への水蒸気や酸素の侵入を防止するための層である。
【0065】
バリヤ層は、例えば、金属箔、透明ガスバリアフィルム等であってよい。金属箔は、例えば、純アルミニウム、アルミニウム合金等から成る箔を挙げることができる。透明ガスバリアフィルムは、ポリオレフィン、ビニル系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド等の樹脂フィルムに、無機物蒸着膜または有機物コーティング膜を備えたフィルムを挙げることができる。無機物蒸着膜としては、アルミニウム蒸着膜、シリカ蒸着膜、アルミナ蒸着膜、または、シリカ・アルミナ二元蒸着膜等を挙げることができる。有機物コーティング膜としては、ポリ塩化ビニリデンコーティング膜、または、ポリフッ化ビニリデンコーティング膜等を挙げることができる。
【0066】
バリヤ層の厚みは、包装体に適度の強度を与え、ヒートシール等の加工性を確保するため、例えば、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、30μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0067】
シーラント層は、包材に熱溶着(ヒートシール)性を付与するための層である。シーラント層の材質としては、熱可塑性樹脂のうちポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。また、シクロオレフィンポリマー(COP)、あるいはシクロオレフィンコポリマー(COC)を使用することも可能である。
【0068】
本発明で使用する包材としては、基材層、バリヤ層、シーラント層などの各層間に、接着層を設けて積層することも可能である。前記接着層としては、EC(エクストルージョンコート)層、ドライラミネート用接着剤、ノンソルベントラミネート用接着剤等からなる層を挙げることができる。
【0069】
接着層を、エクストルージョンコートを用いてラミネートする場合は、特に限定されないが、接着層または接着剤組成物を、接着対象層フィルム上にエクストルージョンコーティングすることにより形成することができる。エクストルージョンコーティングにおいては、まず、接着剤または接着剤組成物を加熱し溶融させて、Tダイスで必要な幅方向に拡大伸張させてカーテン状に押出し、該溶融物を接着対象層フィルム上へ流下させて、ゴムロールと冷却した金属ロールとで挟持することで、接着層の形成と接着対象層フィルムへの接着と積層を同時に行う。
【0070】
接着層としてドライラミネート用接着剤を用いる場合は、溶媒へ分散または溶解した接着剤を一方のフィルム上に塗布し乾燥させて、もう一方のフィルムを重ねて積層した後に、30℃~120℃で数時間~数日間エージングすることで、接着剤を硬化させて積層する。
【0071】
ノンソルベントラミネート用接着剤を用いる場合は、溶媒へ分散または溶解せずに接着
剤自身をフィルム上に塗布し乾燥させて、もう一方のフィルムを重ねて積層した後に、30℃~120℃で数時間~数日間エージングすることで、接着剤を硬化させて積層する。
【0072】
これらの接着剤は、熱硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型等であってよい。このような接着剤としては、ポリ酢酸ビニルや酢酸ビニル-エチレン共重合体等のポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸とポリスチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル等との共重合体からなるポリアクリル酸系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体からなるエ
チレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、尿素樹脂又はメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等からなるエラストマー系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等が挙げられる。
【0073】
また、上記接着剤は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの形態でもよく、また、その性状は、フィルム/シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよい。
【0074】
接着層は、上記接着剤を、例えばロールコート、グラビアロールコート、キスコート等で施すことにより形成され、そのコーティング量としては、0.1g/m~10g/m(乾燥状態)位が望ましい。接着剤のコーティング量を上記範囲とすることで、良好な接着性が得られる。
【0075】
本発明で使用する酸素非透過性の包材の厚みは、特に限定されないが、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、40μm以上がさらに好ましく、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。包材の厚みが前記範囲内であれば、包装材の強度、袋詰め作業の作業性が損なわれないからである。
【0076】
<酸素検知剤>
本発明で使用する酸素検知剤は、酸素濃度に応じて色調が変化する。酸素検知剤の色調が酸素濃度に応じて変化することにより、包装体内の酸素濃度を目視で確認できるからである。
【0077】
本発明で使用する酸素検知剤は、包装体の酸素濃度が1.0容量%以下であることを検知できるものが好ましく、0.5容量%以下であることを検知できるものが好ましく、0.1容量%以下であることを検知できるものが好ましい。検知できる濃度が低いほど、滅菌処理後の医療用ゴム製品の品質を保証しやすい。
【0078】
酸素検知剤としては、例えば、酸化還元色素、還元剤、親水基と疎水基を合わせもつ樹脂からなる結合剤、及び溶媒を含む酸素インジケータ用インキ組成物を支持体に塗布して形成されるものを挙げることができる。
【0079】
酸化還元色素にはメチレンブルーのほか、ニューメチレンブルー、ニュートラルレッド、インジゴカルミン、サフラニンT、フェノサフラニン、カプリブルー、ナイルブルー、ジフェニルアミン、キシレンシアノール、ニトロジフェニルアミン、フェロイン、N-フェニルアントラニル酸等が使用できる。
【0080】
還元剤としては、アスコルビン酸の他にエリソルビン酸やその塩、アスコルビン酸塩、D-アラビノース、D-エリスロース、D-ガラクトース、D-キシロース、D-グルコース、D-マンノース、D-フラクトース、D-ラクトースなどの還元糖、第一スズ塩、第一鉄塩等の金属塩等が使用できる。
【0081】
酸化還元色素の色相の変化で周辺雰囲気にある酸素の濃度を検知するだけでなく、他の色の色素との混色による色相の変化で周辺雰囲気にある酸素の濃度を検知することもできる。このような目的で、酸素インジケータ用インキ組成物には、着色剤を添加することができる。
【0082】
添加する着色剤としては、例えば食用赤色2号(アマランス)、食用赤色3号(エリスロシン)、食用赤色40号(アルラレッドAC)、食用赤色102号(ニューコクシン)、食用赤色104号(フロキシン)、食用赤色106号(アシッドレッド)、及び天然系コチニール色素等の赤色着色剤、食用黄色4号(タートラジン)、食用黄色5号(サンセットイエローFCF)、及び天然系紅花黄色素等の黄色着色剤、食用青色1号(ブリリアントブルーFCF)、及び食用青色2号(インジゴカルミン)等の青色着色剤が挙げられる。
【0083】
結合剤は、酸化還元色素、還元剤、着色剤を支持体上に固着するために用いられ、親水基と疎水基を合わせ持つ樹脂が好ましい。具体的にはポリビニルアセタール樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、親水基を導入したポリエステル樹脂等が挙げられるが、特にポリビニルアセタール樹脂が好ましい。
【0084】
溶媒としては、酸化還元色素、還元剤、着色剤、特に結合剤を均一かつ安定に溶解または分散できる物が望ましい。具体的には芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル類、アルコール類、水などが用いられる。
【0085】
支持体は、酸素インジケータ用インキ組成物と反応せず、しかも酸化還元色素の呈色性を阻害しない物である事が望ましい。具体的には、紙、合成紙、不織布、または合成樹脂フィルム等が用いられる。
【0086】
酸素検知剤の具体例としては、エージレスアイ(登録商標)(三菱ガス化学社製)が挙げられる。前記エージレスアイは、例えば、酸素濃度が0.5容量%以上では、青色であり、酸素濃度が0.10容量%以下では、ピンク色になる。
【0087】
<脱酸素剤>
本発明で使用する脱酸素剤は、酸素吸収性を有するものであれば特に限定されない。脱酸素剤としては、公知の脱酸素剤が使用でき、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、亜二チオン酸塩、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ピロガロール、没食子酸、ロンガリット、アスコルビン酸及び/またはその塩、イソアスコルビン酸及び/またはその塩、ソルボース、グルコース、リグニン、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、第一鉄塩、鉄粉等の金属粉等を酸素吸収主剤とする脱酸素剤が挙げられ、目的に応じて適宜選ばれる。
【0088】
また、金属粉主剤の脱酸素剤には、酸化触媒として、必要に応じ、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化鉄、臭化ニッケル、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化鉄等の金属ハロゲン化物等の1種または2種以上を加えても良い。
【0089】
脱酸素剤には、必要に応じ、水分を含有させたり水分供与剤を加えたりしても良く、また、脱臭、消臭剤、その他のフィラーを加えることができる。また、脱酸素剤の形状は特に限定されず、例えば、粉状、粒状、塊状、シート状等のいずれでもよく、また、各種の酸素吸収剤組成物を熱可塑性樹脂に分散させたシート状またはフィルム状脱酸素剤であってもよい。
【0090】
本発明で使用する脱酸素剤の具体例としては、エージレス(登録商標)(三菱ガス化学社製)が挙げられる。
【0091】
<包装体の製造方法>
本発明の包装体は、包材を製袋することにより得られる。具体的には、以下のようにして作製する。
【0092】
包材のシーラント層(ヒートシール面)が対向するように、1枚の包材を折り曲げるか、または、2枚の包材を重ね合せ、その周縁部を熱溶着(ヒートシール)する。この際、周縁部のうち上縁側は熱溶着(ヒートシール)せずに、医療用ゴム製品などを収容するための開口が形成された袋体を作製する。
【0093】
第1空間部と第2空間部の仕切を形成する区画線の部分を熱溶着(ヒートシール)する。第1空間部と第2空間部の仕切は、所望の仕切の形状に応じて、非連続的に熱溶着(ヒートシール)を行って通気孔を形成する。熱溶着(ヒートシール)されていない箇所が通気孔を形成する。なお、第1空間部と第2空間部の仕切を形成する熱溶着(ヒートシール)は、包装体の周縁部を熱溶着(ヒートシール)する工程と同時に行ってもよい。
【0094】
包装体に第3空間部を作製する場合、第1空間部と第3空間部との仕切は、所望の仕切形状に応じて、連続的に熱溶着(ヒートシール)を行い、第1空間部と第3空間部が連通しないように形成する。第1空間部と第3空間部の仕切を形成する熱溶着(ヒートシール)は、包装体の周縁部を熱溶着(ヒートシール)する工程と同時に行ってもよい。
【0095】
熱溶着(ヒートシール)の条件は、使用する包材に応じて適宜変更することができるが、例えば、以下のような条件を採用することが好ましい。
温度:130℃~160℃が好ましく、140℃~150℃がより好ましい。
時間:1秒~10秒が好ましく、2秒~5秒が好ましい。
【0096】
次に、袋体の第1空間部に医療用ゴム製品を収容し、袋体の第2空間部に酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤を収容する。
【0097】
包装体に第3空間部を作製する場合、袋体の第3空間部に脱酸素剤及び/又は酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤を収容する。
【0098】
医療用ゴム製品が収容された袋体をヒートシーラーにセットし、袋体内を不活性雰囲気に置換する。具体的には、袋体内の酸素を吸引し、不活性ガスを充填する。前記不活性ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガス、或いは、窒素ガスなどを挙げることができる。
【0099】
次いで、袋体の上縁をヒートシールして、袋体の開口を密封することにより、医療用製品が密封された本発明の包装体を得る。
【0100】
本発明においては、ヒートシールの方法としては、例えばバーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知方法を適用することができる。
【0101】
[医療用ゴム製品]
本発明で包装される医療用ゴム製品としては、例えば、液剤、粉末製剤、凍結乾燥製剤等の各種薬剤用の容器(例えば、バイアル瓶)のゴム栓やシール部材、真空採血管用ゴム栓、プレフィルドシリンジ用のプランジャストッパー、あるいはノズルキャップなどの摺動もしくはシール部品等が挙げられる。
【0102】
前記医療用ゴム製品は、(a)ゴム成分を含有する医療用ゴム組成物から形成されることが好ましい。(a)前記ゴム成分としては、耐薬品性・耐ガス透過性の点で、ブチルゴムが好ましく、ハロゲン化ブチルゴムがより好ましい。ハロゲン化ブチルゴムとしては、例えば、塩素化ブチルゴム、および、臭素化ブチルゴム、イソブチレンとp-メチルスチレンの共重合体の臭素化物などが挙げられる。前記ハロゲン化ブチルゴムとしては、塩素化ブチルゴムまたは臭素化ブチルゴムが好ましい。前記塩素化ブチルゴムまたは臭素化ブチルゴムは、例えば、ブチルゴム中のイソプレン構造部分、具体的には二重結合および/または二重結合に隣接する炭素原子に塩素または臭素を付加または置換反応させたものである。なお、ブチルゴムは、イソブチレンと少量のイソプレンとを重合して得られる共重合体である。
【0103】
(a)前記ゴム成分は、ブチルゴム以外のゴム成分を含有してもよい。他のゴム成分としては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムなどのニトリル系ゴム、水素化ニトリル系ゴム、ノルボルネンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、アクリルゴム、エチレン・アクリレートゴム、フッ素ゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、フォスファンゼンゴムまたは1,2-ポリブタジエンゴム等が挙げられる。これらは1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて用いてよい。
【0104】
他のゴム成分を使用する場合、(a)ゴム成分中のブチルゴムの含有率は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましい。また、(a)ゴム成分がハロゲン化ブチルゴムのみからなることも好ましい態様である。
【0105】
前記医療用ゴム組成物は、(b)架橋剤を含有することが好ましい。(b)架橋剤は、(a)ゴム成分を架橋させるために配合される。(c)前記架橋剤としては、ゴムを架橋させることが可能な架橋剤であれば特に限定されない。(c)前記架橋剤としては、例えば、硫黄、金属酸化物、樹脂架橋剤、有機過酸化物、トリアジン誘導体などを挙げることができ、これらは単独で、あるいは2種以上併用して用いることができる。
【0106】
前記医療用ゴム組成物中の(b)前記架橋剤の含有量は、(a)ゴム成分100質量部に対して、0.2質量部以上であることが好ましく、0.4質量部以上であることがより好ましく、0.6質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。(b)架橋剤の含有量が、前記範囲内であれば、良好なゴム物性(硬度、引張、Cset)と加工性(ヤケの少ない)の良いゴムを得ることができるからである。
【0107】
前記医療用ゴム組成物は、加硫促進剤を含まないことが好ましい。最終製品のゴム製品中に加硫促進剤が残存して、バイアル瓶中の薬液へ溶出する場合があるからである。前記加硫促進剤としては、例えば、グアニジン系促進剤(例:ジフェニルグアニジン)、チウラム系促進剤(例:テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド)、ジチオカルバミン酸塩系促進剤(例:ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛)、チアゾール系促進剤(例:2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド)、スルフェンアミド系促進剤(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド)が挙げられる。
【0108】
前記医療用ゴム組成物は、(c)ハイドロタルサイトを含有してもよい。(c)ハイドロタルサイトは、ハロゲン化ブチルゴムの架橋時にスコーチ防止剤として、また、医療用ゴム製品の圧縮永久ひずみが大きくなるのを防止するためにも機能する。さらにハイドロタルサイトは受酸剤として、ハロゲン化ブチルゴムの架橋時に発生する塩素系ガスや臭素系ガスを吸収して、これらのガスによる架橋阻害等の発生を防止するためにも機能する。なお、先述した酸化マグネシウムも受酸剤として機能しうる。
【0109】
ハイドロタルサイトとしては、例えば、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.5Al(OH)13CO、MgAl(OH)12CO・3.5HO、MgAl(OH)16CO・4HO、MgAl(OH)14CO・4HO、MgAl(OH)10CO・1.7HO等のMg-Al系ハイドロタルサイト等の1種または2種以上が挙げられる。
【0110】
前記医療用ゴム組成物には、さらに(d)充填剤を配合してもよい。前記(d)充填剤としては、例えば、クレー、タルクなどの無機充填剤、オレフィン系樹脂、スチレン系エラストマー、または超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の樹脂粉末が挙げられる。これらの中でも、前記充填剤としては、無機充填剤が好ましく、クレーまたはタルクがさらに好ましい。前記充填剤は、医療用ゴム製品のゴム硬さを調整するために機能するとともに、増量材として医療用ゴム製品の生産コストを低減させるためにも機能する。
【0111】
前記医療用ゴム組成物中の(d)充填剤の含有量は、目的とする医療用ゴム製品のゴム硬さ等に応じて適宜設定することが好ましい。前記医療用ゴム組成物中の(d)充填剤の含有量は、例えば、(a)ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましく、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらに好ましい。
【0112】
前記医療用ゴム組成物には、さらに、酸化チタンやカーボンブラックなどの着色剤、ステアリン酸、低密度ポリエチレン(LDPE)の滑剤、加工助剤や、架橋活性剤としてのポリエチレングリコール、可塑剤(例えば、パラフィンオイル)等を適宜の割合で配合してもよい。
【0113】
[滅菌方法]
本発明の医療用ゴム製品が密封されている包装体は、放射線照射により滅菌されることが好ましく、ガンマ線または電子線照射により滅菌されることがより好ましい。前記滅菌方法は、医療用ゴム製品が複数個収容されている医療用ゴム製品の包装体に放射線を照射することが好ましい。
【0114】
滅菌処理に使用する放射線としては、α線(ヘリウムの原子核)、β線(電子線)及びγ線(ガンマ線)が挙げられる。β線(電子線)は、その線量率が極めて高いので(γ線の数万倍)、滅菌処理時間は短いが、粒子線である為に透過力が小さい。一方、ガンマ線は、透過力は大きいが、線量率が電子線に較べて小さいので、処理時間が長くなる。本発明では、医療用ゴム製品が複数個収容されている医療用ゴム製品の包装体を滅菌処理する観点から、ガンマ線を用いて滅菌処理することが好ましい。
【0115】
ガンマ線としては、例えば、コバルト60やセシウム137などから放射されるガンマ線を挙げることができ、コバルト60から放射されるガンマ線が好適である。
【0116】
ガンマ線照射は、医療用ゴム製品のガンマ線の吸収線量が実際の滅菌バリデーション手順で確立される。通常の医療機器では15kGyを最小吸収線量として運用している場合は多い。包装体内の全ての医療用ゴム製品のガンマ線の吸収線量が15kGy以上となるようにするためのガンマ線の照射線量は、包装体内の医療用ゴム製品の個数及び入り方等によって変動することになるが、一般的には15kGyの1.4倍以上、2.0倍以下の範囲の線量で照射される。同様に、20kGyを最小吸収線量とする場合には、20kGyの1.4倍以上、2.0倍以下の範囲の線量で照射され、25kGyを最小吸収線量とする場合には、25kGyの1.4倍以上、2.0倍以下の範囲の線量で照射される。なお、ガンマ線の吸収線量は、被照射体に、線量測定計を取り付けることにより確認することができる。
【0117】
本発明の医療用ゴム製品の滅菌方法は、包装体の第2空間部に酸素検知剤が収容された包装体であって、前記酸素検知剤により検知される酸素濃度が所定値よりも低い状態である包装体にガンマ線を照射することが好ましい。ガンマ線照射前の医療用ゴム製品を収容する包装体は、包装体内の酸素が所定濃度以下にされていることが好ましい。包装体内の酸素濃度は、5容量%以下であることが好ましく、3容量%以下であることがより好ましく、1容量%以下であることがさらに好ましい。包装体中の酸素濃度を5容量%以下とすることにより、ガンマ線照射による医療用ゴム製品の劣化を抑制することができるからである。
【0118】
包装体中の酸素濃度を5容量%以下にする方法としては、包装体中の空気を不活性ガスで置換する方法、包装体に脱酸素剤を収容する方法を挙げることができる。
【0119】
前記不活性ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガス、或いは、窒素ガスなどを挙げることができる。
【0120】
本発明の医療用ゴム製品を収容する包装体(1次包装体、2次包装体)をさらに、包装体に収容してガンマ線を照射してもよい。包装体としては、袋、箱などの形状を挙げることができる。包装袋としては、例えば、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂フィルムまたはアルミニウムから形成された包装袋を挙げることができる。包装袋は、密閉できるものが好ましい。包装箱としては、特に限定されないが、紙箱、段ボール箱などを挙げることができる。
【0121】
前記包装体としては、通気性を有する包装体と、非通気性(ガス密封性)を有する包装体とを挙げることができ、これらを組み合わせて使用することも好ましい。
【0122】
なお、ガンマ線照射に際しては、複数個の医療用ゴム製品が収容されている包装体は、例えば、アルミ合金製の収納容器に収納された状態で、ガンマ線を照射することが好ましい。
【0123】
本発明の滅菌処理された医療用ゴム製品は、バイオバーデン測定試験での生菌数(cfu:colony forming unit:培養すると出現する集落数)が、0であることが好ましい。
【0124】
以下、図面を参照しながら、本発明についてさらに説明するが、本発明は図面に示された態様に限定されない。図1は、本発明の包装体の一実施態様を説明する平面図である。包装体1は、上下方向Aと上下方向に直行する幅方向Bとを有している。
【0125】
包装体1の平面視は、略矩形である。包装体1は、四方シール型の形態であり、酸素非透過性の包材を2枚積層し、その周縁が、熱溶着(ヒートシール)されることにより密封されている。包装体1は、上縁シール部13,側縁シール部15、下縁シール部17を有している。
【0126】
包装体1は、医療用ゴム製品3が収容されている第1空間部5と、酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤8が収容されている第2空間部9とを有している。第1空間部5と第2空間部9とが、酸素透過可能な仕切11によって区画されている。
【0127】
第2空間部9は、上縁シール部13aと側縁シール部15aと仕切11により区画され、酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤8を収容する空間を形成している。
【0128】
第1空間部5は、上縁シール部13bと側縁シール部15,15bと、下縁シール部17と仕切11により区画され、医療用ゴム製品を収容する空間を形成している。
【0129】
第1空間部5と第2空間部9との仕切11は、上縁シール部13から、一方の側縁シール部15を渡るように曲線状に設けられている。
【0130】
第1空間部の上縁シール部13bと第2空間部9の上縁シール部13aとが幅方向に隣接して、包装体1の上縁シール部13を形成している。第2空間部の側縁シール部15aと第1空間部の側縁シール部15bとが上下方向に隣接して、包装体の一方の側縁シール部15を形成している。
【0131】
第1空間部5と第2空間部9との仕切11には、酸素非透過性の包材を非連続的に熱溶着(ヒートシール)することにより、幅が10.0mmの通気孔12が複数設けられている。第1空間部5と第2空間部9とは、通気孔12により連通している。
【0132】
第2空間部9に酸素検知剤8が収容されている態様では、第1空間部5と第2空間部9とが連通しているため、酸素検知剤8が第1空間部5の酸素濃度を検知する。酸素検知剤は、酸素濃度に応じて色調が変化するので、包装体1の第1空間部5の酸素濃度を視覚により認識することができる。
【0133】
第2空間部9に、酸素検知剤8に加えて脱酸素剤7が収容されている態様では、第1空間部5と第2空間部9とが連通しているため、脱酸素剤7により、第1空間部5および第2空間部9の酸素濃度を低下させることができる。
【0134】
包装体1の内部空間には、窒素が充填されている。
【0135】
三方シール型の包装体は、図1の包装体において、下縁シール部17を有していない点を除いて、同一の構成となるため説明を省略する。
【0136】
図2は、本発明の包装体の別の実施態様を説明する平面図である。包装体1は、医療用ゴム製品3を収容する第1空間部5と、酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤8が収容されている第2空間部9と、脱酸素剤7が収容されている第3空間部19とを有している。
【0137】
第1空間部5と第2空間部9とが、酸素透過可能な仕切11によって区画されている。
【0138】
第2空間部9は、上縁シール部13aと側縁シール部15aと仕切11により区画され、酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤8を収容する空間を形成している。
【0139】
第1空間部5と第2空間部9との仕切11は、上縁シール部13から、一方の側縁シール部15を渡るように曲線状に設けられている。
【0140】
第1空間部5と第2空間部9との仕切11には、酸素非透過性の包材を非連続的に熱溶着(ヒートシール)することにより、幅10mmの通気孔12が複数設けられている。第1空間部5と第2空間部9とは、通気孔12により連通している。
【0141】
第2空間部9には、酸素検知剤8が収容されている。第1空間部5と第2空間部9とが連通しているため、酸素検知剤8が第1空間部5の酸素濃度を検知する。酸素検知剤8は、酸素濃度に応じて色調が変化するので、包装体1の第1空間部5の酸素濃度を視覚により認識することができる。
【0142】
第1空間部5と第3空間部19とが、仕切21によって区画されている。第1空間部5と第3空間部19との仕切21は、第1空間部5と第2空間部9との仕切11とは異なり、通気孔を設けず、酸素を透過しないように設けられている。前記仕切21は、酸素非透過性の包材を連続的に熱溶着(ヒートシール)することにより形成されることが好ましい。
【0143】
第3空間部19は、上縁シール部13cと側縁シール部15cと仕切21により区画され、脱酸素剤及び/又は酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤を収容する空間を形成している。
【0144】
第1空間部5は、上縁シール部13bと側縁シール部15b,15bと、下縁シール部17と仕切11、21により区画され、医療用ゴム製品を収容する空間を形成している。
【0145】
第1空間部5と第3空間部19との仕切21は、上縁シール部13から、一方の側縁シール部15に渡るように曲線状に設けられている。
【0146】
第1空間部5の上縁シール部13bは、第2空間部9の上縁シール部13aと第3空間部19の上縁シール部13cとの間に位置する。第1空間部5の上縁シール部13bと第2空間部9の上縁シール部13aと、第3空間部19の上縁シール部13cが幅方向に隣接して、包装体1の上縁シール部13を形成している。第2空間部9の側縁シール部15aと第1空間部5の側縁シール部15bとが上下方向に隣接して、一方の側縁シール部15を形成している。第3空間部19の側縁シール部15cと第1空間部5の側縁シール部15bとが上下方向に隣接して、他方の側縁シール部15を形成している。
【0147】
第3空間部19の側縁シール部15cには、通気孔23が設けられている。通気孔23は、脱酸素剤及び/又は酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤が、はみ出ることができないような大きさに設けられていることが好ましい。
【0148】
図3は、図2の態様の包装体1を1次包装体として複数個、2次包装体2に収容した態様を説明する説明図である。
【0149】
本発明の2次包装体2の平面視は、略矩形である。2次包装体2は、四方シール型の形態であり、酸素非透過性の包材を2枚積層し、その周縁が、熱溶着(ヒートシール)されることにより密封されている。2次包装体2は、上縁シール部23,側縁シール部25、下縁シール部27を有している。2次包装体2の周縁シール部は、2次包装体の周縁に沿って直線状に設けられている。
【0150】
1次包装体1の第3空間部19には、脱酸素剤7が収容されている。1次包装体1の第3空間部19の側縁シール部15cに通気孔23を設けておくことにより、1次包装体1を2次包装体2に収容した際に、1次包装体1の外側であって、2次包装体2の内部空間の酸素濃度を低下させることができる。
【0151】
図3では、1次包装体1の第2空間部9に酸素検知剤8が収容され、第3空間部19に脱酸素剤7が収容されている態様が示されているが、第3空間部19に酸素検知剤8を収容してもよい。この態様では、1次包装体1の第3空間部19に収容された酸素検知剤8が、2次包装体2の内部空間の酸素濃度を検知することができる。
【実施例0152】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0153】
[医療用ゴム製品の包装体の作製]
(実施例1)
包材として、長さ20cm×幅17cmの旭化成のフィルム(商品名:サンテックLD 酸素透過度:7900ml/(m・24h・atm))を折り曲げ、側縁部を熱溶着(ヒートシール)して、上縁が開口した袋体を作製した。側縁部のヒートシールと同時に、第1空間部と第2空間部との仕切、および、第1空間部と第3空間部との仕切を熱溶着(ヒートシール)により形成した。第1空間部と第2空間部との仕切には、熱溶着(ヒートシール)を非連続的に行うことにより、幅10mmの通気孔を1個形成した。第1空間部と第3空間部との仕切は、熱溶着(ヒートシール)を連続的に行うことにより、通気孔を形成せず、酸素非透過性の仕切を作製した。
【0154】
第1空間部には、医療用ゴム製品としてバイアル用のゴム栓を収容し、第2空間部には、酸素検知剤として、三菱ガス化学社製エージレスアイを収容し、第3空間部には、脱酸素剤として、三菱ガス化学社製エージレスを収容した。バイアル用のゴム栓としては、フランジ径:19.0mm、全高:13.0mm、脚部径7.20mm、フランジ穿刺部の厚み:2.5mmの凍結乾燥注射剤のバイアル用のゴム栓を用いた。
【0155】
医療用ゴム製品、酸素検知剤および脱酸素剤が収容された袋体をヒートシーラーにセットした。袋体内の酸素を吸引するとともに窒素を充填し、袋体の上縁を熱溶着(ヒートシール)して、袋体を密封して、1次包装体を作製した。なお、袋体内の窒素の充填は、袋体内に脱気用パイプと窒素充填用パイプとを挿入し、脱気し次に窒素充填するサイクルを3回繰り返し行った。
【0156】
1次包装体の第3空間部の側縁シール部を切断して、第3空間部と外部とが連通する通気孔を作製した。
【0157】
2次包装体の包材としては、長さ50cm×幅40cmのクリロン化成社の積層フィルム(商品名:NJK、酸素透過度:49ml/(m・24h・atm))を使用した。この包材を折り曲げて、シーラント層が対向するように重ね合わせて、側縁部をヒートシールして、上縁が開口した袋体を作製した。1個の1次包装体を、前記上縁が開口した袋体に収容し、ヒートシーラーにセットした。その袋体の上縁を熱溶着(ヒートシール)して密封した。なお、袋体内を窒素置換することなく、1次包装体を収容したので、収容直後の2次包装体内で1次包装体外には空気が存在している。
【0158】
医療用ゴム製品のガンマ線の吸収線量が25kGyとなるように、得られた2次包装体にガンマ線を照射して、滅菌処理を行った。
【0159】
(実施例1の評価結果)
実施例1の1次包装体は、第2空間部と第3空間部とを有し、第2空間部には酸素検知剤が収容され、第3空間部には脱酸素剤が収容されている。2次包装体の内部の空気中の酸素が、第3空間部の脱酸素剤に吸収された。ガンマ線滅菌処理前の1次包装体の第2空間部の酸素検知剤の色調が、ピンク色であり、1次包装体内の酸素濃度が0.1容量%以下であることを確認することができた。
【0160】
ガンマ線滅菌処理後、1次包装体から医療用ゴム製品を取り出し、溶出物試験を行った結果は、良好であった。
(実施例2)
上記の実施例1において、2次包装体内を空気充填することに替えて、脱気用パイプと窒素充填用パイプとを2次包装体用の袋体内へ挿入し、脱気後に窒素充填するサイクルを3回繰り返し行った。その後、医療用ゴム製品のガンマ線の吸収線量が25kGyとなるように、得られた2次包装体にガンマ線を照射して、滅菌処理を行った。実施例2においても、ガンマ線滅菌処理前の1次包装体の第2空間部の酸素検知剤の色調が、ピンク色であり、1次包装体内の酸素濃度が0.1容量%以下であることを確認することができた。またガンマ線滅菌処理後、1次包装体から医療用ゴム製品を取り出し、溶出物試験を行った結果は、良好であった。
【0161】
(実施例3)
包材として、長さ20cm×幅17cmの旭化成のフィルム(商品名:サンテックLD 酸素透過度:7900ml/(m・24h・atm))を折り曲げ、側縁部を熱溶着(ヒートシール)して、上縁が開口した袋体を作製した。側縁部のヒートシールと同時に、第1空間部と第2空間部との仕切を熱溶着(ヒートシール)により形成した。第1空間部と第2空間部との仕切には、熱溶着(ヒートシール)を非連続的に行うことにより、幅10mmの通気孔を1個形成した。
【0162】
第1空間部には、医療用ゴム製品としてバイアル用のゴム栓を収容し、第2空間部には、酸素検知剤として、三菱ガス化学社製エージレスアイを収容した。バイアル用のゴム栓としては、フランジ径:19.0mm、全高:13.0mm、脚部径7.20mm、フランジ穿刺部の厚み:2.5mmの凍結乾燥注射剤のバイアル用のゴム栓を用いた。
【0163】
医療用ゴム製品、酸素検知剤が収容された袋体をヒートシーラーにセットした。袋体内の酸素を吸引するとともに窒素を充填し、袋体の上縁を熱溶着(ヒートシール)して、袋体を密封して、1次包装体を作製した。なお、袋体内の窒素の充填は、袋体内に脱気用パイプと窒素充填用パイプとを挿入し、脱気し次に窒素充填するサイクルを3回繰り返し行った。
【0164】
2次包装体の包材としては、長さ50cm×幅40cmのクリロン化成社の積層フィルム(商品名:NJK、酸素透過度:49ml/(m・24h・atm))を使用した。この包材を折り曲げて、シーラント層が対向するように重ね合わせて、側縁部をヒートシールして、上縁が開口した袋体を作製した。1個の1次包装体を、前記上縁が開口した袋体に収容し、ヒートシーラーにセットした。その袋体内の酸素を吸引するとともに窒素を充填し、袋体の上縁を熱溶着(ヒートシール)して密封した。なお、袋体内の窒素の充填は、袋体内に脱気用パイプと窒素充填用パイプとを挿入し、脱気し次に窒素充填するサイクルを3回繰り返し行った。
【0165】
医療用ゴム製品のガンマ線の吸収線量が25kGyとなるように、得られた2次包装体にガンマ線を照射して、滅菌処理を行った。
【0166】
(実施例3の評価結果)
実施例3の1次包装体は、第2空間部を有し、第2空間部には酸素検知剤が収容されている。ガンマ線滅菌処理前の第2空間部の酸素検知剤の色調が、ピンク色であり、1次包装体内の酸素濃度が0.1容量%以下であることを確認することができた。
【0167】
ガンマ線処理後、1次包装体から医療用ゴム製品を取り出し、溶出物試験を行った結果は、良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明によれば、包装体中の酸素濃度を目視で確認できるようにして、滅菌処理による品質保証を容易にすることができる。
【0169】
本発明の好ましい態様(1)は、医療用ゴム製品が密封されている包装体であって、前記包装体は、酸素非透過性の包材からなり、
医療用ゴム製品が収容されている第1空間部と、
酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤が収容されている第2空間部とを有し、第1空間部と第2空間部とが、酸素透過可能な仕切によって区画されていることを特徴とする包装体である。
【0170】
本発明の好ましい態様(2)は、前記仕切は、前記医療用ゴム製品と酸素検知剤とが通過できない通気孔を有し、前記通気孔により、第1空間部と第2空間部とが酸素透過可能に構成されている態様(1)の包装体である。
【0171】
本発明の好ましい態様(3)は、前記第1空間部と第2空間部との仕切が、前記包材を非連続に熱溶着することにより、通気孔を有するように形成されている態様(1)または(2)の包装体である。
【0172】
本発明の好ましい態様(4)は、前記第1空間部の上縁シール部と前記第2空間部の上縁シール部とが隣接している態様(1)~(3)のいずれか一つの包装体である。
【0173】
本発明の好ましい態様(5)は、前記第1空間部の上縁シール部と前記第2空間部の上縁シール部が、それぞれ熱溶着によって封止されている態様(4)の包装体である。
【0174】
本発明の好ましい態様(6)は、前記包装体の内部空間に、窒素が充填されている態様(1)~(5)のいずれか一つの包装体である。
【0175】
本発明の好ましい態様(7)は、前記第2空間部に、前記酸素検知剤とともに脱酸素剤が収容されている態様(1)~(6)のいずれか一つの包装体である。
【0176】
本発明の好ましい態様(8)は、医療用ゴム製品が密封されている1次包装体が収容されている2次包装体であって、
前記1次包装体は、酸素非透過性の包材からなり、
医療用ゴム製品が収容されている第1空間部と、
酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤が収容されている第2空間部と、
脱酸素剤及び/又は酸素濃度に応じて色調が変化する酸素検知剤が収容されている第3空間部とを有し、
第1空間部と第2空間部とが、酸素透過可能な仕切によって区画され、
第1空間部と第3空間部とが、酸素非透過な仕切によって区画され、
前記第1次包装体には、前記第3空間部と前記2次包装体の内部空間とを連通する通気孔が形成されていることを特徴とする包装体である。
【0177】
本発明の好ましい態様(9)は、第1空間部と第2空間部との仕切は、前記医療用ゴム製品と酸素検知剤とが通過できない通気孔を有し、前記通気孔により、第1空間部と第2空間部とが酸素透過可能に構成されている態様(8)の包装体である。
【0178】
本発明の好ましい態様(10)は、前記第1空間部と第2空間部との仕切が、前記包材を非連続に熱溶着することにより、通気孔を有するように形成されている態様(8)または(9)の包装体である。
【0179】
本発明の好ましい態様(11)は、前記第1空間部の上縁シール部が、前記第2空間部の上縁シール部および前記第3空間部の上縁シール部に隣接している態様(8)~(9)のいずれか一つの包装体である。
【0180】
本発明の好ましい態様(12)は、前記第1空間部、前記第2空間部および前記第3空間部の上縁シール部が熱溶着によって封止されている態様(8)~(11)のいずれか一つの包装体である。
【0181】
本発明の好ましい態様(13)は、前記1次包材の内部空間及び前記2次包材の内部空間に、窒素が充填されている態様(8)~(12)のいずれか一つの包装体である。
【0182】
本発明の好ましい態様(14)は、態様(1)~(7)のいずれか一つの包装体にガンマ線を照射することを特徴とする医療用ゴム製品の滅菌方法である。
【0183】
本発明の好ましい態様(15)は、前記第2空間部に酸素検知剤が収容された包装体であって、前記酸素検知剤により検知される酸素濃度が所定値よりも低い状態である包装体にガンマ線を照射する態様(14)の医療用ゴム製品の滅菌方法である。
【0184】
本発明の好ましい態様(16)は、態様(8)~(13)のいずれか一つの包装体にガンマ線を照射することを特徴とする医療用ゴム製品の滅菌方法である。
【0185】
本発明の好ましい態様(17)は、前記第2空間部に酸素検知剤が収容された包装体であって、前記酸素検知剤により検知される酸素濃度が所定値よりも低い状態である包装体にガンマ線を照射する態様(16)の医療用ゴム製品の滅菌方法である。
【符号の説明】
【0186】
1:包装体(1次包装体)、2:2次包装体、3:医療用ゴム製品、5:第1空間部、7:脱酸素剤、8:酸素検知剤、9:第2空間部、11:仕切、13:上縁シール部、15:側縁シール部、17:下縁シール部、19:第3空間部、21:仕切


図1
図2
図3