IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本プラスト株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-空気吹き出し装置 図1
  • 特開-空気吹き出し装置 図2
  • 特開-空気吹き出し装置 図3
  • 特開-空気吹き出し装置 図4
  • 特開-空気吹き出し装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122390
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】空気吹き出し装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20240902BHJP
   F24F 13/14 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B60H1/34 631
F24F13/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029907
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和彦
【テーマコード(参考)】
3L081
3L211
【Fターム(参考)】
3L081AA03
3L081AB02
3L081FC02
3L211BA21
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】遮蔽体でケース体の通風路を閉じたときに、ケース体と遮蔽体との間から空気が漏れることを防止又は抑制することが可能な空気吹き出し装置を提供する。
【解決手段】本発明の空気吹き出し装置(1)は、ケース体(10)に回転可能に配される遮蔽体(30)を有し、遮蔽体(30)は、遮蔽本体部(31)に保持されるシール部材(50)を有し、シール部材(50)は、遮蔽本体部(31)の外周部から外側に延びるとともにケース体(10)に接触するシール接触部(52)を有し、遮蔽体(30)の周縁部分は、シール接触部(52)が設けられるシール設置部(41)と、シール接触部(52)が設けられないシール非設置部(42)とを有し、ケース体(10)は、遮蔽体(30)が通風路(13)を閉鎖したときに遮蔽体(30)のシール非設置部(42)を当接させる当接部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空気を流通させる通風路を備えるケース体と、前記ケース体に回転可能に配される遮蔽体とを有し、前記遮蔽体は、回転によって前記ケース体の前記通風路を開閉する空気吹き出し装置において、
前記遮蔽体は、板状の遮蔽本体部と、前記遮蔽本体部に保持されるシール部材とを有し、
前記シール部材は、前記遮蔽本体部の外周部から外側に延びるとともに、前記遮蔽体が前記通風路を閉鎖したときに前記ケース体の内周面に接触するシール接触部を有し、
前記遮蔽体の周縁部分は、前記シール接触部が設けられるシール設置部と、前記シール接触部が設けられずに前記遮蔽本体部により形成されるシール非設置部とを有し、
前記ケース体は、前記遮蔽体が前記通風路を閉鎖したときに前記遮蔽体の前記シール非設置部を当接させる当接部を有する
ことを特徴とする空気吹き出し装置。
【請求項2】
前記遮蔽本体部は、複数の角部と、前記角部間に配される複数の辺部とを備える多角形又は略多角形の形状を有し、
前記シール非設置部は、前記遮蔽本体部の前記角部を含む範囲に配されている
請求項1記載の空気吹き出し装置。
【請求項3】
前記ケース体は、前記空気の流通方向に対して交差する方向に沿った面が形成される段差部又は突出部を有し、
前記ケース体の前記当接部は、前記段差部又は突出部に配されている
請求項1又は2記載の空気吹き出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に設置される空気吹き出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、一般的に例えば空調装置等によって温度調節された空気を車室内に吹き出す空気吹き出し装置が設けられている。このような空気吹き出し装置は、例えば特開2000-108654号公報(特許文献1)に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載されている空気吹き出し装置は、空気調整装置のダクトに接続されるケース体と、ケース体の内部に回転自在に軸支されるシャッターバルブ(遮蔽体)と、ケース体の吹き出し口に配される吹き出し方向制御手段とを有する。シャッターバルブは、シャッターバルブがケース体に対して回転することにより、ケース体の内部に形成された空気の通風路を開閉可能に設けられている。また、シャッターバルブは、合成樹脂製のバルブ本体と、バルブ本体に保持されるシール部材(シール体)とを有する。
【0004】
シャッターバルブのシール部材は、長方形の枠状の形状を有しており、シール部材の内周縁部が、バルブ本体の外周部に設けた凹溝内に挿入されて保持されることにより、バルブ本体に取り付けられている。このシール部材は、バルブ本体の外周縁から外側に向けて延出するとともに、ケース体の内周面(内壁面)に接触するシール接触部を有する。また、シール部材のシール接触部は、バルブ本体の外周縁の全周に亘って配されている。
【0005】
特許文献1の空気吹き出し装置では、シャッターバルブをケース体の通風路を閉じる全閉位置に回転させて保持することにより、シャッターバルブに設けたシール接触部をケース体の内周面に接触(圧接)させる。これにより、ケース体の通風路がシャッターバルブによって閉じられて(塞がれて)、ケース体内での空気の流通が止められるため、空気吹き出し装置から車室内への空気の吹き出し停止させることができる。
【0006】
また、シャッターバルブを全閉位置から回転させて、シャッターバルブに設けたシール接触部をケース体の内周面から離間させることにより、シャッターバルブとケース体の内周面との間に空気が流通可能な空間部が形成されて、通風路を開くことができるため、空気調整装置から供給される空気を車室内に吹き出すことができる。
【0007】
また、特許文献1の空気吹き出し装置では、シール部材の内周縁部が、バルブ本体の凹溝内に波状に曲がりくねった形状で保持されている。これにより、シール部材の強度を増大させることができるため、例えばシャッターバルブを全閉位置、又は全閉位置に近い位置に保持したときに、ケース体内に供給された空気の圧力によってシール部材が振動することを防止又は抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-108654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1のように、バルブ本体の全周にシール部材のシール接触部が配されているシャッターバルブを有する従来の空気吹き出し装置では、シール接触部の外周縁部が内周縁部よりも長く、外周縁部の長さと内周縁部の長さとに差が生じている。このため、空気吹き出し装置のシャッターバルブを、ケース体を閉じる位置に回転させて、シャッターバルブのシール部材をケース体の内周面に接触させたときに、シール部材における長方形の4つの角部において、バルブ本体から延出するシール接触部にシワが生じることがあった。
【0010】
このようにシャッターバルブのシール接触部にシワが生じると、ケース体の内周面とシール接触部との間に隙間が形成されて、その隙間から空気が漏れることがあり、品質の低下を招くという欠点があった。また、上述の隙間から漏れる空気の量が多くなると、運転者等が隙間風を感じることや、風切り音等の異音が発生すること等の不具合が生じる虞もあった。
【0011】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、シール部材を有する遮蔽体でケース体の通風路を閉じたときに、ケース体と遮蔽体との間から空気が漏れることを防止又は抑制することが可能な空気吹き出し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明により提供される空気吹き出し装置は、内部に空気を流通させる通風路を備えるケース体と、前記ケース体に回転可能に配される遮蔽体とを有し、前記遮蔽体は、回転によって前記ケース体の前記通風路を開閉する空気吹き出し装置において、前記遮蔽体は、板状の遮蔽本体部と、前記遮蔽本体部に保持されるシール部材とを有し、前記シール部材は、前記遮蔽本体部の外周部から外側に延びるとともに、前記遮蔽体が前記通風路を閉鎖したときに前記ケース体の内周面に接触するシール接触部を有し、前記遮蔽体の周縁部分は、前記シール接触部が設けられるシール設置部と、前記シール接触部が設けられずに前記遮蔽本体部により形成される(少なくとも1つの)シール非設置部とを有し、前記ケース体は、前記遮蔽体が前記通風路を閉鎖したときに前記遮蔽体の前記シール非設置部を当接(面接触)させる当接部を有する空気吹き出し装置である。
【0013】
本発明の空気吹き出し装置において、前記遮蔽本体部は、複数の角部と、前記角部間に配される複数の辺部とを備える多角形又は略多角形の形状を有し、前記シール非設置部は、前記遮蔽本体部の前記角部を含む範囲に配されていることが好ましい。
また、前記ケース体は、前記空気の流通方向に対して交差する方向に沿った面が形成される段差部又は突出部を有し、前記ケース体の前記当接部は、前記段差部又は突出部に配されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の空気吹き出し装置によれば、遮蔽体でケース体の通風路を閉じたときに、ケース体と遮蔽体との間から空気が漏れることを防止又は抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係る空気吹き出し装置を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示した空気吹き出し装置を吹き出し口側から見た正面図である。
図3】空気吹き出し装置の遮蔽体のみを模式的に示す図である。
図4図2に示したIV-IV線に沿った空気吹き出し装置の断面を模式的に示す断面図である。
図5図2に示したV-V線に沿った空気吹き出し装置の断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施例の空気吹き出し装置を模式的に示す斜視図である。図2は、本実施例の空気吹き出し装置を吹き出し口側から見た正面図であり、図3は、空気吹き出し装置の遮蔽体のみを模式的に示す図である。図4及び図5は、それぞれ、図2に示したIV-IV線及びV-V線に沿った空気吹き出し装置の断面を模式的に示す断面図である。なお、図3は、遮蔽体を遮蔽体の一方の平面側から見たときの模式図である。
【0017】
本実施例の空気吹き出し装置1は、自動車の車室内に配されるインストルメントパネル部やセンターコンソール等の内装部材に設置される。空気吹き出し装置1は、自動車に備えられた図示しない空調装置に接続されることによって、その空調装置から供給される空気を、空気吹き出し装置1の空気吹出口12を介して車室内に吹き出すことができる。このような空気吹き出し装置1は、風向調整装置又はベンチレータ等と呼ばれることもある。
【0018】
ここで、空気吹き出し装置1に関して、前後方向とは、空気吹き出し装置1の遮蔽体30が後述する全開位置に保持されているときにケース体10内で空気が流れる方向に沿った方向である(図1を参照)。この場合、空気が流れる下流側の方向を前方とし、上流側の方向を後方とする。
【0019】
上下方向及び左右方向は、空気吹き出し装置1を空気吹出口12側(前方側)から見た正面視(図2)において、空気吹き出し装置1の垂直方向(高さ方向)及び水平方向(幅方向)である。この場合、垂直方向及び水平方向は、前後方向に対してそれぞれ直交している。また、垂直方向と水平方向とは、互いに直交している。
【0020】
本実施例の空気吹き出し装置1は、内部に空気を流通させる通風路13を備えるケース体10と、ケース体10の内部に回転(回動)可能に支持される遮蔽体30(シャッターバルブとも言う)と、遮蔽体30を回転させるときに操作される操作部(不図示)とを有する。また、遮蔽体30は、合成樹脂製の遮蔽本体部31と、遮蔽本体部31から左右方向に突出する左右一対の回転軸部35と、遮蔽本体部31に保持されるシール部材50とを有する。
【0021】
なお、本実施例において、空気吹き出し装置1の操作部は、遮蔽体30の回転操作を行うことが可能であれば、特に限定されるものではなく、例えば従来の空気吹き出し装置に設けられる一般的な操作部と同様に形成されていてもよい。また、本実施例の空気吹き出し装置1は、ケース体10の内部に、1つ又は複数のフィンが回転可能に配されていてもよい。この場合、フィンは、例えばケース体10の空気吹出口12側の端部(前端部)に配されており、フィンを回転させてフィンの向きを変えることによって、空気吹き出し装置1から吹き出す空気の流れを変更(調整)することが可能である。
【0022】
本実施例のケース体10は、前後方向に直交する断面が長方形に近い形状を有する中空の筒状に形成されている。ケース体10の後端縁には、空調装置(不図示)の吹き出し部であるダクトが接続されるダクト接続口11が設けられており、ケース体10の前端縁には、空気を車室内に吹き出す空気吹出口12が設けられている。また、ケース体10の内部には、ダクト接続口11と空気吹出口12とに連通する通風路13が形成されている。
【0023】
ケース体10は、上下方向に対して直交するように配される上壁部21及び下壁部22と、左右方向に対して直交するように配される左右の側壁部23とを有する。左右の側壁部23には、遮蔽体30の回転軸部35を挿通させて回転可能に保持する保持孔部がそれぞれ設けられている。また、ケース体10は、上壁部21と左右の側壁部23とを連結する左右の上側連結部24と、下壁部22と左右の側壁部23とを連結する左右の下側連結部25とを有する。
【0024】
本実施例において、ケース体10における左右の上側連結部24は、ケース体10の外側に向けて膨らむように湾曲する連結コーナー部26と、ケース体10の内側(通風路13側)に向けて溝状に窪むように湾曲する連結凹部27とを有する。また、左右の上側連結部24において、連結コーナー部26は、連結凹部27の前側に配されており、連結コーナー部26と連結凹部27との間には、上側段差部28が設けられている。
【0025】
左右の上側段差部28は、ケース体10の内周面側に配される平面状の上側段差面28aをそれぞれ有する。本実施例において、上側段差部28の内周面(内壁面)側に形成される上側段差面28aは、前方に向くように(言い換えると、ケース体10の前方側から見えるように)配されており、また、前後方向に対して交差するように傾斜して配されている。この場合、上側段差面28aは、前後方向に対して40°以上80°以下の傾斜角度で傾斜するように配されている。
【0026】
ケース体10における左右の下側連結部25は、ケース体10の外側に向けて膨らむように湾曲する連結コーナー部26と、ケース体10の内側に向けて溝状に窪むように湾曲する連結凹部27とを有する。また、左右の下側連結部25において、連結凹部27は、連結コーナー部26の前側に配されており、連結コーナー部26と連結凹部27との間には、下側段差部29が設けられている。
【0027】
左右の下側段差部29は、ケース体10の内側に配される平面状の下側段差面29aをそれぞれ有する。本実施例において、下側段差部29の内周面側に形成される下側段差面29aは、後方に向くように(言い換えると、ケース体10の後方側から見えるように)配されるとともに、前後方向に対して交差するように傾斜して配されている。また、下側段差面29aは、上述した上側段差面28aと平行に配され、且つ、上側段差面28aとは反対の方向を向いて配されている。
【0028】
本実施例のケース体10において、左右の上側段差面28aと左右の下側段差面29aとには、遮蔽体30を通風路13が閉鎖される閉鎖位置に回動させたときに、遮蔽体30の遮蔽本体部31により形成される後述のシール非設置部42を当接させて面接触させる当接部が設けられている(図4及び図5を参照)。
【0029】
本実施例の遮蔽体30は、空気吹き出し装置1の操作部(不図示)で操作されることによって、ケース体10内において、図4及び図5に示すように、遮蔽体30が前後方向に沿って配される遮蔽体30の全開位置と、遮蔽体30がケース体10の上述した左右の上側段差面28a及び左右の下側段差面29aに当接する閉鎖位置との間を、回転軸部35を中心にして上下方向に回転可能に配されている。
【0030】
本実施例の遮蔽体30において、遮蔽本体部31は、薄い平板状に形成されている。遮蔽本体部31は、遮蔽体30が閉鎖位置に保持されているときに前方側に向く第1面31aと、第1面31aの反対側に配される第2面31bと、第1面31aの外周縁及び第2面31bの外周縁間を連結する外周側面31cとを有する。
【0031】
遮蔽本体部31の第1面31aと第2面31bとは、それぞれ平坦面に形成されており、且つ、互いに平行に配されている。このため、遮蔽体30は、第1面31a及び第2面31b間の厚さを一定にして形成されている。本実施例において、遮蔽本体部31の外周側面31cとその近傍とを含む部分を、遮蔽本体部31の外周部と規定する。
【0032】
本実施例の遮蔽本体部31は、遮蔽本体部31を第1面31a側又は第2面31b側から見たときに(図3を参照)、4つの角部32と、互いに隣接する2つの角部32間に配される4つの直線状の辺部33とを備える略長方形(角丸長方形)の形状を有する。この場合、遮蔽本体部31のそれぞれの角部32は、隣接する直線状の辺部33間を滑らかに連結するように湾曲した丸い形状で形成されている。
【0033】
なお本発明において、遮蔽本体部の形状(遮蔽本体部を第1面側又は第2面側から見たときの形状)は、本実施例のような略長方形に限定されるものではなく、例えば長方形等の四角形、長方形以外の四角形に近い略四角形、六角形等の四角形以外の多角形又は略多角形等の形状であってもよく、また、真円又は楕円のような円形又は略円形等の形状であってもよい。
【0034】
遮蔽本体部31の第1面31aと第2面31bとの間には、シール部材50が固定されて保持されている。本実施例のシール部材50は、エラストマー又はゴム等の弾性変形可能な材料により形成されている。また、シール部材50は、遮蔽本体部31内に保持されるベース部51と、遮蔽本体部31の外周縁(外周側面31c)から延出する4つのシール接触部52とを有する。なお本発明において、シール部材50を遮蔽本体部31に保持(固定)する方法及び手段は特に限定されない。
【0035】
シール部材50の各シール接触部52は、遮蔽本体部31の外周部(外周側面31c)から遮蔽本体部31の第1面31a及び第2面31bと平行な方向に沿って延びて配されている。また、各シール接触部52は、遮蔽体30がケース体10の通風路13を閉じる閉鎖位置まで回転して閉鎖位置に保持されるときに、それぞれのシール接触部52に対向するケース体10の内周面に接触する大きさ(長さ)で設けられている。
【0036】
本実施例のシール接触部52は、遮蔽本体部31から上下方向の外側に延びる上下一対の第1シール接触部52aと、遮蔽本体部31から左右方向の外側に延びる左右一対の第2シール接触部52bとを有する。第1シール接触部52aは、上述したように略長方形に形成される遮蔽本体部31の長辺方向に細長い形状を有する。第2シール接触部52bは、遮蔽本体部31の短辺方向に細長い形状を有する。
【0037】
本実施例において、遮蔽体30の周縁部分は、シール接触部52が設けられる4つのシール設置部41と、シール接触部52が設けられずに遮蔽本体部31により形成される4つのシール非設置部42とを有する(図3を参照)。ここで、遮蔽体30の周縁部分とは、遮蔽体30を遮蔽本体部31の第1面31a又は第2面31b側から見たとき(図3)の遮蔽体30の周りの縁部及びその近傍を含む枠状の部分であり、また、この周縁部分は、遮蔽本体部31の外周部とシール部材50のシール接触部52とを少なくとも含み、且つ、遮蔽本体部31の外周部に沿って形成される部分と言うこともできる。
【0038】
遮蔽体30におけるシール設置部41は、遮蔽本体部31の直線状の辺部33内に設けられている。シール非設置部42は、遮蔽体30の4隅に、遮蔽本体部31の角部32をそれぞれ含むように設けられている。特に本実施例では、各シール非設置部42は、遮蔽本体部31の1つの角部32と、その角部32から延びる2つの辺部33の一部とを含む範囲に設けられている。
【0039】
次に、上述のようなケース体10、遮蔽体30、及び操作部(不図示)を有する本実施例の空気吹き出し装置1について、ケース体10の通風路13を遮蔽体30で開閉するときの動作について説明する。
【0040】
本実施例の空気吹き出し装置1において、例えば遮蔽体30が全開位置(前後方向に沿った位置)に保持されていてケース体10の通風路13が開いている状態から、ケース体10の通風路13を遮蔽体30で閉じる場合は、使用者(例えば、運転者)が空気吹き出し装置1の操作部(不図示)を操作することにより、遮蔽体30を図4及び図5に矢印で示すように回転させて、全開位置から閉鎖位置に移動させる。
【0041】
このように遮蔽体30を閉鎖位置に回転させることにより、遮蔽体30の周縁部分に設けたシール設置部41では、遮蔽体30におけるシール部材50のシール接触部52を、ケース体10の内周面に接触(圧接)させることができる。これにより、遮蔽体30のシール設置部41が設けられている範囲では、シール部材50とケース体10の内周面との接触によって、空気の流れを止めることができる。
【0042】
またこのとき、遮蔽体30の各シール設置部41では、シール接触部52が遮蔽本体部31の各辺部33に沿ってまっすぐに配されており、また、各シール接触部52では、シール接触部52の基端部(シール接触部52の遮蔽本体部31に隣接する部分)と先端部(シール接触部52の遮蔽本体部31から最も離れている部分)との間で、辺部33に沿った方向の寸法に差が生じていない。従って、シール接触部52をケース体10の内周面に接触させたときに、シール接触部52の上述した長さの差に起因してシワが発生することはないため、遮蔽体30のシール部材50とケース体10の内周面との間に、空気が漏れる隙間が形成されることを防止できる。
【0043】
一方、遮蔽本体部31の角部32を含んで設けられるシール非設置部42では、遮蔽体30を閉鎖位置に回転させたときに、各シール非設置部42内に配される遮蔽本体部31を、ケース体10に設けた上側段差面28aと下側段差面29aとに当接させて、遮蔽本体部31と上側段差面28a及び下側段差面29aとを互いに面接触させることができる。
【0044】
特にこのとき、遮蔽体30の上側に配される左右の角部32を含むシール非設置部42では、遮蔽本体部31をケース体10の上側段差面28aに対して前方側から近付けて、遮蔽本体部31の第2面31bを上側段差面28aに面接触させることができる。遮蔽体30の下側に配される左右の角部32を含むシール非設置部42では、遮蔽本体部31をケース体10の下側段差面29aに対して後方側から近付けて、遮蔽本体部31の第1面31aを下側段差面29aに面接触させることができる。更にこの場合、ケース体10のそれぞれの上側段差面28a及び下側段差面29aでは、シール非設置部42内の遮蔽本体部31を面接触させるだけでなく、シール設置部41の一部(具体的には、シール非設置部42に隣接する部分)の遮蔽本体部31も面接触させることができる。
【0045】
従って、遮蔽本体部31の角部32を含むシール非設置部42では、遮蔽本体部31とケース体10の上側段差面28a及び下側段差面29aとの面接触によって、空気の流れを止めることができる。更に、この面接触によって、遮蔽本体部31と上側段差面28a又は下側段差面29aとの間に、空気が漏れる隙間が形成されることも防止できる。
【0046】
このように、本実施例の空気吹き出し装置1においては、遮蔽体30を閉鎖位置に回転させることによって、シール設置部41及びシール非設置部42が設けられている遮蔽体30の全周において、空気の流れを止めることができ、また、遮蔽体30とケース体10との間に空気が漏れる隙間が形成されることを防止又は抑制できる。これによって、ケース体10の通風路13が、閉鎖位置に移動した遮蔽体30によって閉められるため、空気吹き出し装置1からの空気の吹き出しを停止させることができる。
【0047】
更に、例えば特許文献1のような従来の空気吹き出し装置では、シャッタ-バルブ(遮蔽体)の4つの隅部で前述したように空気漏れが生じ易いという欠点があったが、本実施例の空気吹き出し装置1では、遮蔽体30のシール設置部41だけでなく、遮蔽体30の隅部に設けられたシール非設置部42でも、遮蔽体30とケース体10との間からの空気漏れを防止又は抑制できる。このため、運転者等が隙間風を感じることや、風切り音等の異音が発生すること等の不具合を生じさせ難くして、空気吹き出し装置1の品質を向上させることができる。
【0048】
一方、本実施例の空気吹き出し装置1において、上述のように空気の吹き出しが停止している状態から、空気の吹き出しを再開させる場合には、使用者が空気吹き出し装置1の操作部(不図示)を操作して、閉鎖位置に保持されている遮蔽体30を全開位置に向けて回転させる。これによって、ケース体10の内周面と遮蔽体30との間に、空気を流通させることが可能な空間部が形成されるため、空調装置から供給される空気を、空気吹き出し装置1の空気吹出口12から車室内に安定して吹き出すことができる。
【0049】
なお、上述した実施例の空気吹き出し装置1において、シール部材50は、上述したように、エラストマー又はゴム等の弾性変形可能な材料により形成されている。しかし、本発明において、シール部材の材質は特に限定されない。本発明のシール部材は、上述した弾性変形可能な材料の他に、例えば可撓性を備える合成樹脂材料、又は繊維が圧縮されてシート状に形成されたフェルト等のような撓ませることが可能な材料によって形成されていてもよい。
【0050】
また、実施例の空気吹き出し装置1では、遮蔽体30の4隅にシール非設置部42が設けられているが、本発明において、遮蔽体のシール非設置部は、遮蔽体の周縁部分の少なくとも1箇所に設けられていればよい。
【0051】
更に、実施例の空気吹き出し装置1では、閉鎖位置で遮蔽体30の遮蔽本体部31を当接させて面接触させる当接部が、筒状のケース体10の内周面に設けた上側段差面28a及び下側段差面29aに配されている。しかし本発明では、筒状のケース体に対し、実施例のような上側段差部28及び下側段差部29を設ける代わりに、例えばケース体の内周面から内側に向けて突出する板状の突出部を、遮蔽体のシール非設置部に対応する位置に設けてもよい。
【0052】
この場合、ケース体の内周面から突出する板状突出部は、前方又は後方に向く平面(言い換えると、前後方向に対して交差する平面)を有しており、この板状突出部の平面に、遮蔽体30の閉鎖位置で遮蔽本体部31を当接させて面接触させる当接部が設けられる。このような突出部が設けられたケース体を有する空気吹き出し装置であっても、上述した実施例の空気吹き出し装置1と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 空気吹き出し装置
10 ケース体
11 ダクト接続口
12 空気吹出口
13 通風路
21 上壁部
22 下壁部
23 側壁部
24 上側連結部
25 下側連結部
26 連結コーナー部
27 連結凹部
28 上側段差部
28a 上側段差面
29 下側段差部
29a 下側段差面
30 遮蔽体
31 遮蔽本体部
31a 第1面
31b 第2面
31c 外周側面
32 角部
33 辺部
35 回転軸部
41 シール設置部
42 シール非設置部
50 シール部材
51 ベース部
52 シール接触部
52a 第1シール接触部
52b 第2シール接触部
図1
図2
図3
図4
図5