(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122400
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】冷媒回収システムおよび冷媒回収方法
(51)【国際特許分類】
F25B 45/00 20060101AFI20240902BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240902BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20240902BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
F25B45/00 A
F25B1/00 396A
B01D53/22
B01D53/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029922
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堂岸 善宏
(72)【発明者】
【氏名】大上 明徳
(72)【発明者】
【氏名】野村 亜加音
(72)【発明者】
【氏名】太田 幸治
【テーマコード(参考)】
4D006
4D012
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA22
4D006JA65Z
4D006KA01
4D006KA64
4D006KA71
4D006KB12
4D006KB30
4D006MA02
4D006MC03
4D006PA01
4D006PB20
4D006PB62
4D006PB63
4D006PB65
4D006PB70
4D006PC80
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA20
4D012CB05
4D012CE01
4D012CE02
4D012CF03
4D012CG05
4D012CH08
4D012CK10
(57)【要約】
【課題】回収ボンベ、冷媒回収装置および冷凍空調機器の接続を維持したまま、回収ボンベ内の非凝縮性ガスを低減することができる冷媒回収システムおよび冷媒回収方法を提供する。
【解決手段】第1のガス分離モジュール68Aは、圧縮凝縮冷媒を回収した回収ボンベ16の内部に含まれる空調用冷媒のガス成分と非凝縮性ガスとからなる第1の混合ガスを空調用冷媒の第1のガス成分と、空調用冷媒の第2のガス成分および非凝縮性ガスとからなる第2の混合ガスとに分離する分離膜92Aを含む。第2のガス分離モジュール68Bは、第1のガス分離モジュール68Aによって分離された第2の混合ガスのうち、空調用冷媒の第2のガス成分を吸着する吸着剤を含む吸着部315を含む。再送配管58Aは、第1のガス分離モジュール装置68Aが分離した空調用冷媒の第1のガス成分を冷媒回路30と冷媒回収装置14との間に再送させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍空調機器の冷媒回路から空調用冷媒を回収する冷媒回収システムであって、
前記空調用冷媒を圧縮凝縮することによって、圧縮凝縮冷媒を生成する冷媒回収装置と、
前記冷媒回収装置が生成した前記圧縮凝縮冷媒を回収する回収ボンベと、
前記圧縮凝縮冷媒を回収した前記回収ボンベの内部に含まれる前記空調用冷媒のガス成分と非凝縮性ガスとからなる第1の混合ガスを前記空調用冷媒の第1のガス成分と、前記空調用冷媒の第2のガス成分および前記非凝縮性ガスとからなる第2の混合ガスとに分離する分離膜を含む第1のガス分離モジュールと、
前記第1のガス分離モジュールによって分離された前記第2の混合ガスのうち、前記空調用冷媒の前記第2のガス成分を吸着する吸着剤を含む吸着部を含む第2のガス分離モジュールと、
前記第1のガス分離モジュールが分離した前記空調用冷媒の前記第1のガス成分を前記冷媒回路と前記冷媒回収装置との間に再送させる再送配管と、を備えた、冷媒回収システム。
【請求項2】
前記第2のガス分離モジュールは、前記第2の混合ガスのうち前記吸着部に吸着されなかった前記非凝縮性ガスを大気に放出する放出口を含む、請求項1記載の冷媒回収システム。
【請求項3】
前記吸着部は、
前記吸着剤が装填された第1の吸着ユニットと、
前記第1の吸着ユニットと並列して配置され、前記吸着剤が装填された第2の吸着ユニットと、
前記第2の混合ガスの流出先を前記第1の吸着ユニット、または前記第2の吸着ユニットに切替る切替弁と、を有する、請求項1記載の冷媒回収システム。
【請求項4】
前記第1の吸着ユニットに充填される前記吸着剤の量は、前記第2の吸着ユニットに充填される前記吸着剤の量よりも少なく、
前記回収ボンベ内の圧力が第1の閾値圧力以下のときに、前記切替弁における前記第2の混合ガスの流出先を前記第1の吸着ユニットに切替させ、前記回収ボンベ内の圧力が前記第1の閾値圧力を超えるときに、前記切替弁における前記第2の混合ガスの流出先を前記第2の吸着ユニットに切替させる吸着制御部を、さらに備える請求項3記載の冷媒回収システム。
【請求項5】
前記第1の吸着ユニットは、第1の配管および第2の配管と接続し、
装填されている前記吸着剤の第1の端面と、前記第1の配管の端面との間に配置される第1のフィルタと、
装填されている前記吸着剤の第2の端面と、前記第2の配管の端面との間に配置される第2のフィルタと、を含み、
前記第2の吸着ユニットは、第3の配管および第4の配管と接続し、
装填されている前記吸着剤の第1の端面と、前記第3の配管の端面との間に配置される第3のフィルタと、
装填されている前記吸着剤の第2の端面と、前記第4の配管の端面との間に配置される第4のフィルタと、を含む、請求項3記載の冷媒回収システム。
【請求項6】
前記第1のフィルタは、前記第1の配管の前記端面を覆い、
前記第2のフィルタは、前記第2の配管の前記端面を覆い、
前記第3のフィルタは、前記第3の配管の前記端面を覆い、
前記第4のフィルタは、前記第4の配管の前記端面を覆う、請求項5記載の冷媒回収システム。
【請求項7】
前記吸着部は、さらに、
前記第1の吸着ユニットおよび前記第2の吸着ユニットの後段に配置され、前記吸着剤が装填された第3の吸着ユニットを含む、請求項3記載の冷媒回収システム。
【請求項8】
前記吸着部は、さらに、
前記第1の吸着ユニットおよび前記第2の吸着ユニットの後段に配置され、前記空調用冷媒を検知する冷媒検知センサと、
前記冷媒検知センサが前記空調用冷媒を検知したときに、前記切替弁における前記第2の混合ガスの流出先を切替させる吸着制御部と、を含む、請求項3記載の冷媒回収システム。
【請求項9】
前記第3の吸着ユニットは、第5の配管および第6の配管と接続し、
装填されている前記吸着剤の第1の端面と、前記第5の配管の端面との間に配置される第5のフィルタと、
装填されている前記吸着剤の第2の端面と、前記第6の配管の端面との間に配置される第6のフィルタと、を含む、請求項7記載の冷媒回収システム。
【請求項10】
前記第5のフィルタは、前記第5の配管の前記端面を覆い、
前記第6のフィルタは、前記第6の配管の前記端面を覆う、請求項9記載の冷媒回収システム。
【請求項11】
前記冷媒回収システムは、
前記分離膜の内外差圧を調整するための第1圧力調整器と、
前記第1圧力調整器を制御して、前記分離膜の内外差圧を調整する第1圧力制御器と、をさらに備える、請求項1記載の冷媒回収システム。
【請求項12】
前記分離膜の入力側の圧力は、前記分離膜の透過側の圧力よりも低い、請求項1記載の冷媒回収システム。
【請求項13】
前記冷媒回収システムは、
前記吸着部の吸着時圧力を調整するための第2圧力調整器と、
前記第2圧力調整器を制御して、前記吸着部の吸着時圧力を調整する第2圧力制御器と、をさらに備える、請求項1記載の冷媒回収システム。
【請求項14】
前記空調用冷媒の前記第2のガス成分は、R-32である、請求項1記載の冷媒回収システム。
【請求項15】
前記冷媒回収システムは、
前記分離膜を透過したガスが流入し、前記ガスの流出先が切替可能な方向切替弁と、
前記空調用冷媒がR-32を含む場合に、前記方向切替弁を制御することによって、前記分離膜を透過したガスを、前記第2のガス分離モジュールに流入させ、前記空調用冷媒がR-32を含まない場合に、前記方向切替弁を制御することによって、前記分離膜を透過したガスを、前記第2のガス分離モジュールに流入させないバイパス制御器と、をさらに備える請求項1に記載の冷媒回収システム。
【請求項16】
前記冷媒回路と前記冷媒回収装置の間に配置された三方弁と、
前記三方弁を制御する三方弁制御部と、をさらに備え、
前記三方弁は、第1、2及び3ポートを含み、前記三方弁の前記第1ポートは前記冷媒回路に接続されており、前記三方弁の前記第2ポートは前記冷媒回収装置に接続されており、前記三方弁の前記第3ポートは前記再送配管に接続されており、
前記三方弁制御部は、第1のモードにおいて、前記三方弁の前記第1ポートと前記第3ポートが連通状態になるように前記三方弁を制御し、第2のモードにおいて、前記三方弁の前記第2ポートと前記第3ポートが連通状態になるように前記三方弁を制御する、請求項1記載の冷媒回収システム。
【請求項17】
前記回収ボンベ内の圧力を検出する圧力検出器をさらに備え、
前記三方弁制御部は、前記回収ボンベ内の圧力が第2の閾値圧力以下の場合には、前記三方弁の前記第1ポートと前記第3ポートが連通状態になるように前記三方弁を制御し、前記回収ボンベ内の圧力が前記第2の閾値圧力を超える場合には、前記三方弁の前記第2ポートと前記第3ポートが連通状態になるように前記三方弁を制御する、請求項16記載の冷媒回収システム。
【請求項18】
冷凍空調機器の冷媒回路から空調用冷媒を回収する冷媒回収システムであって、
前記空調用冷媒を圧縮凝縮することによって、圧縮凝縮冷媒を生成する冷媒回収装置と、
前記冷媒回収装置が生成した前記圧縮凝縮冷媒を回収する回収ボンベと、
前記圧縮凝縮冷媒を回収した前記回収ボンベの内部に含まれる前記空調用冷媒のガス成分と非凝縮性ガスとからなる混合ガスのうち、前記空調用冷媒のガス成分を吸着する吸着剤を含む吸着部を含むガス分離モジュールとを備える、冷媒回収システム。
【請求項19】
冷凍空調機器の冷媒回路から空調用冷媒を回収する冷媒回収方法であって、
冷媒回収装置が、前記空調用冷媒を圧縮凝縮して、圧縮凝縮冷媒を生成するステップと、
回収ボンベが、前記冷媒回収装置が生成した前記圧縮凝縮冷媒を回収するステップと、
第1のガス分離モジュールの分離膜が、前記圧縮凝縮冷媒を回収した前記回収ボンベの内部に含まれる前記空調用冷媒のガス成分と非凝縮性ガスとからなる第1の混合ガスを前記空調用冷媒の第1のガス成分と、前記空調用冷媒の第2のガス成分および前記非凝縮性ガスとからなる第2の混合ガスとに分離するステップと、
第2のガス分離モジュールが、前記第1のガス分離モジュールの分離膜によって分離された前記第2の混合ガスのうち、前記空調用冷媒の前記第2のガス成分を吸着部に吸着させるステップと、
再送配管が、前記第1のガス分離モジュールの分離膜が分離した前記空調用冷媒の前記第1のガス成分を前記冷媒回路と前記冷媒回収装置との間に再送させるステップと、を備えた冷媒回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒回収システムおよび冷媒回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍機およびエアコンなどの冷凍空調機器(冷媒使用機器)は、熱エネルギーを運搬する冷媒の循環経路上に、当該冷媒が気化したガス冷媒を圧縮して高温高圧化する空調用圧縮機と、空調用圧縮機で高温高圧化したガス冷媒を外気等で冷却して液化する空調用凝縮器と、空調用凝縮器で液化した冷媒(液冷媒)を膨張させて気体化する膨張弁と、膨張弁で気化した冷媒(ガス冷媒)を液体化する冷媒回収用凝縮器と、冷媒回収用凝縮器で液化した冷媒(液冷媒)を貯蔵するアキュムレータとを備える。冷媒は熱エネルギーを運搬する役割を担っており、空調用凝縮器において外部に熱を放出する一方、膨張弁を通過後に外気等から熱を受け取る。
【0003】
冷凍空調機器に使用される各種冷媒は、地球温暖化係数およびオゾン層破壊係数が大きいため、大気中への排出が規制されている。したがって、特に、冷媒を交換する際又は冷凍空調機器を廃棄する際には、大気への冷媒の漏洩を極力抑制し、冷凍空調機器に充填されている冷媒を回収することが義務付けられている。同時に、環境負荷の小さな冷媒への転換も推進されており、近年では、代替フロンとしてHFC(Hydrofluorocarbons)等の使用が主流となっている。HFCとしては、例えば、単体冷媒としてはR134AまたはR32、混合冷媒としてはR410AまたはR407Cがある。
【0004】
冷媒の回収には、冷媒回収装置が使用される。冷媒回収装置においては、冷凍空調機器のアキュムレータにある冷媒を気化した後、ガス冷媒を冷媒回収装置内の圧縮機によって吸引し、断熱圧縮する。断熱圧縮されたガス冷媒を冷媒回収装置内の凝縮器によって液化し、液冷媒として回収ボンベに回収する。回収した冷媒の量は、重量計により測定される。
【0005】
特許文献1には、冷媒使用機器内の冷媒を冷媒回収装置により回収容器(回収ボンベ)に回収する際に、回収系統に空気等の非凝縮性ガスが混入すると、非凝縮性ガスも回収容器に回収されてしまうことが指摘されている(同文献の段落[0056]を参照)。非凝縮性ガスは、回収容器内で凝縮せず、圧縮ガスとして存在するため、回収容器内の液冷媒の量が増えて気相の体積が少なくなるにつれて、回収容器内の圧力および温度が上昇する。そのため、同文献では、回収容器内の温度が所定値に達した段階で、回収容器と、冷媒回収装置および冷媒使用機器との連結を解除し、回収容器にガス分離装置を接続して、ガス分離装置により回収容器内の非凝縮性ガスを除去する技術を開示している。具体的には、回収容器内のガス冷媒と非凝縮性ガスの混合ガスを、ガス分離装置に送って分離し、非凝縮性ガスを大気中に排出すると共に、ガス冷媒を回収容器内に戻している。そして、回収容器内の非凝縮性ガスを除去した後、再度、回収容器に、冷媒回収装置および冷媒使用機器を接続し、回収容器への冷媒の回収作業を再開している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、冷凍空調機器の冷媒回路からの冷媒回収では、冷媒回収装置が、冷媒を気化した後、断熱圧縮し、その後、液化して冷媒を回収する。そうした中、窒素(N2)、酸素(O2)などの空気を主成分とする非凝縮性ガスが冷媒に混入した場合、非凝縮性ガスは、冷媒回収装置で凝縮されず、ガスのままで回収ボンベに充填されることになる。その結果、回収ボンベの内圧が上昇し、液体冷媒が充填され難くなり、回収ボンベへの冷媒回収速度が低下することになる。よって、冷媒を全回収するまでに多くの時間を費やすことになる。
【0008】
この問題に対して、特許文献1では、ガス分離装置により回収容器内の非凝縮性ガスを除去しているが、冷媒回収の途中で、回収容器(回収ボンベ)と、冷媒回収装置および冷媒使用機器との連結を解除して、回収容器をガス分離装置に接続する必要がある。また、非凝縮性ガスの除去処理が完了した際には、再度、回収容器と、冷媒回収装置および冷媒使用機器とを接続する必要がある。よって、多くの手間がかかる。また、ガス分離装置から冷媒を、ガス冷媒(気相)の状態で回収容器に戻している(注入している)ので、冷媒を液化して注入する場合に比べて、回収容器の冷媒充填量が低下してしまう問題もある。
【0009】
回収ボンベ、冷媒回収装置および冷凍空調機器の接続を維持したまま、回収ボンベ内の非凝縮性ガスを低減できる改良された技術が必要である。
【0010】
それゆえに、本開示の目的は、冷凍空調機器から冷媒を回収する際に、回収ボンベ、冷媒回収装置および冷凍空調機器の接続を維持したまま、回収ボンベ内の非凝縮性ガスを低減することができる冷媒回収システムおよび冷媒回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の冷凍空調機器の冷媒回路から空調用冷媒を回収する冷媒回収システムは、空調用冷媒を圧縮凝縮することによって、圧縮凝縮冷媒を生成する冷媒回収装置と、冷媒回収装置が生成した圧縮凝縮冷媒を回収する回収ボンベと、圧縮凝縮冷媒を回収した回収ボンベの内部に含まれる空調用冷媒のガス成分と非凝縮性ガスとからなる第1の混合ガスを空調用冷媒の第1のガス成分と、空調用冷媒の第2のガス成分および非凝縮性ガスとからなる第2の混合ガスとに分離する分離膜を含む第1のガス分離モジュールと、第1のガス分離モジュールによって分離された第2の混合ガスのうち、空調用冷媒の第2のガス成分を吸着する吸着剤を含む吸着部を含む第2のガス分離モジュールと、第1のガス分離モジュールが分離した空調用冷媒の第1のガス成分を冷媒回路と冷媒回収装置との間に再送させる再送配管と、を備える。
【0012】
本開示の冷凍空調機器の冷媒回路から空調用冷媒を回収する冷媒回収方法は、冷媒回収装置が、空調用冷媒を圧縮凝縮して、圧縮凝縮冷媒を生成するステップと、回収ボンベが、冷媒回収装置が生成した圧縮凝縮冷媒を回収するステップと、第1のガス分離モジュールの分離膜が、圧縮凝縮冷媒を回収した回収ボンベの内部に含まれる空調用冷媒のガス成分と非凝縮性ガスとからなる第1の混合ガスを空調用冷媒の第1のガス成分と、空調用冷媒の第2のガス成分および非凝縮性ガスとからなる第2の混合ガスとに分離するステップと、第2のガス分離モジュールが、第1のガス分離モジュールの分離膜によって分離された第2の混合ガスのうち、空調用冷媒の第2のガス成分を吸着部に吸着させるステップと、再送配管が、第1のガス分離モジュールの分離膜が分離した空調用冷媒の第1のガス成分を冷媒回路と冷媒回収装置との間に再送させるステップと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、冷凍空調機器から冷媒を回収する際に、回収ボンベ、冷媒回収装置および冷凍空調機器の接続を維持したまま、回収ボンベ内の非凝縮性ガスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1に係る冷媒回収システム10の概略図である。
【
図6】分離膜92Aの内外差圧の設定圧力PAを説明するための図である。
【
図7】無機系分離膜によって構成された分離膜92Aの分子ふるいの原理を模式的に示す図である。
【
図8】第1の吸着ユニット321、第2の吸着ユニット322、および第3の吸着ユニット323の詳細を表わす図である。
【
図9】吸着剤350に冷媒が吸着される一例を表わす図である。
【
図10】吸着剤350に冷媒が吸着される別の例を表わす図である。
【
図11】実施の形態1における冷媒回収システム10を用いた具体的な冷媒回収方法を示すフローチャートである。
【
図12】第1三方弁制御を示すフローチャートである。
【
図13】第2三方弁制御を示すフローチャートである。
【
図14】実施の形態2に係る冷媒回収システム10Aの概略図である。
【
図15】実施の形態2の圧力制御器97Aの構成を表わす図である。
【
図16】実施の形態3に係る冷媒回収システム10Bの概略図である。
【
図17】フィルタFL1,FL2の配置例を表わす図である。
【
図18】実施の形態4に係る冷媒回収システム10Cの概略図である。
【
図19】実施の形態4における冷媒回収システム10Cを用いた具体的な冷媒回収方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下で述べる構成は、説明のための例示であって、システム、装置等の仕様に合わせて適宜変更が可能である。また、以下において複数の実施形態または変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。全ての図面において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る冷媒回収システム10の概略図である。
【0017】
図中、太い実線は流体が流れる配管を示し、一点鎖線は各制御器に入出力する制御線を示す。冷媒回収システム10は、冷凍空調機器から空調用冷媒を回収して、回収ボンベ16に充填するためのシステムである。以下では、冷凍空調機器としての空調装置12から空調用冷媒を回収する例について説明するが、冷媒回収システム10は、冷媒を使用する機器全般の冷媒回収に適用可能である。空調用冷媒とは、冷凍空調機器の運転時に、熱エネルギーを運搬すると共に液相と気相の間で相変化することで、冷凍空調機器における空気等の冷却機能と加熱機能の少なくとも一方を実現させる。
【0018】
冷媒回収システム10は、冷媒回収装置14と、回収ボンベ16と、ガス分離モジュール装置68と、再送配管58Aと、三方弁40と、を備える。
【0019】
冷媒回収装置14は、空調装置12の冷媒回路30から空調用冷媒を吸引して断熱圧縮し、圧縮された冷媒を凝縮して液体化して圧縮凝縮冷媒を生成する。
【0020】
回収ボンベ16は、冷媒回収装置14が生成した圧縮凝縮冷媒を回収する。
【0021】
ガス分離モジュール装置68は、圧縮凝縮冷媒を回収した回収ボンベ16の内部に含まれる空調用冷媒のガス成分と非凝縮性ガスとからなる混合ガス22(第1の混合ガス)を複数の成分に分離する。ガス分離モジュール装置68は、第1のガス分離モジュール68Aと、第2のガス分離モジュール68Bとを備える。
【0022】
第1のガス分離モジュール68Aおよび第2のガス分離モジュール68Bの2つを用いるのは、1つのガス分離モジュールだけによって、空調用冷媒と非凝縮性ガスとが完全に分離されないからである。
【0023】
再送配管58Aは、ガス分離モジュール装置68によって分離されたガス成分を冷媒回路30と冷媒回収装置14との間に再送させる。気化促進モードにおいて、ガス分離モジュール装置68によって分離されたガス成分が冷媒回路30に送られる。これによって、冷媒回路30内の冷媒の温度が上昇するので、冷媒の気化が促進され、冷媒回収を再開した際に、冷媒回収速度を向上させることができる。循環モードにおいて、ガス分離モジュール装置68によって分離されたガス成分が冷媒回収装置14に送られる。これによって、ガス分離モジュール装置68によって分離された空調用冷媒のガス成分の回収処理が再度実行される。
【0024】
三方弁40は、冷媒回路30と冷媒回収装置14の間に配置される。
【0025】
空調装置12は、冷媒回路30に繋がるサービスポート34を含む。
【0026】
冷媒回路30は、液冷媒が貯蔵されたアキュムレータ32を含む。冷媒回収装置14は、アキュムレータ32内の液冷媒を気化したガス冷媒をサービスポート34を介して吸引する。
【0027】
冷媒回収装置14は、圧縮機と凝縮器とを含み、広く市販されているフロン回収機によって実現することができる。冷媒回収装置14は、冷媒回路30からの空調用冷媒を取り込む入口36(取り込み口)と、圧縮凝縮冷媒を排出する出口38と、入口36における空調用冷媒の圧力を検出する圧力検出器37とを含む。
【0028】
回収ボンベ16は、冷媒回収装置14からの圧縮凝縮冷媒を回収ボンベ16内に入れる液出入口46と、回収ボンベ16内の混合ガス22を出すガス出入口48とを含む。回収ボンベ16のヘッドスペース部に、混合ガス22が滞留する。
【0029】
三方弁40は、第1ポート41、第2ポート42および第3ポート43を含む。空調装置12のサービスポート34と、三方弁40の第1ポート41とが接続配管50により接続される。三方弁40の第2ポート42と、冷媒回収装置14の入口36とが前配管52により接続される。三方弁40の第3ポート43と、再送配管58Aとが接続される。
【0030】
冷媒回収装置14の出口38と、回収ボンベ16の液出入口46とが後配管54により接続される。一般的な冷媒回収を行う際には、三方弁40の第1ポート41と第2ポート42を連通状態にする(通常モード)。
【0031】
バルブの不良時、配管等の腐食時、冷媒の分解時、および冷媒の修理時における空気侵入等により、空調装置12の空調用冷媒(以下、単に冷媒とも言う)には、空気(窒素、酸素等)を主成分とする非凝縮性ガスが混入することがある。冷媒回収において、冷媒と一緒に非凝縮性ガスが冷媒回収装置14に吸引された際には、非凝縮性ガスは、冷媒回収装置14で凝縮されず、ガスのままで回収ボンベ16に充填される。その結果、回収ボンベ16の内圧が上昇し、液冷媒が充填され難くなって、回収ボンベ16への冷媒回収速度が低下する。それに対処するため、冷媒回収システム10は、回収ボンベ16内の非凝縮性ガスを除去するための分離装置18を備える。回収ボンベ16内では、液冷媒の一部が再気化した空調用冷媒のガス成分と、非凝縮性ガスとが混合した混合ガス22(第1の混合ガス)とが生じる。
【0032】
分離装置18は、ガス流入口60と、発送配管56と、ガス分離モジュール装置68と、再送配管58Aとを備える。
【0033】
ガス流入口60は、回収ボンベ16のガス出入口48と接続される。ガス流入口60は、回収ボンベ16のヘッドスペース部に滞留する混合ガス22を取り出す。
【0034】
発送配管56には、ガス流入口60から取り込まれた混合ガス22が流れる。
【0035】
ガス分離モジュール装置68は、圧縮凝縮冷媒を回収した回収ボンベ16の内部から空調用冷媒をガス成分として分離させる。ガス分離モジュール装置68には、発送配管56内の混合ガス22が送り込まれる。ガス分離モジュール装置68は、混合ガス22を複数の成分に分離する。
【0036】
再送配管58Aは、ガス分離モジュール装置68に接続される。再送配管58Aは、ガス分離モジュール装置68が分離した空調用冷媒の第1のガス成分23を冷媒回収装置14と冷媒回路30との間に再送させる。
【0037】
ガス分離モジュール装置68は、前段に配置される第1のガス分離モジュール68Aと、後段に配置される第2のガス分離モジュール68Bとを含む。
【0038】
第1のガス分離モジュール68Aは、入口90Aと、分離膜92Aと、放出口94Aと、出口96Aと、を含む。
【0039】
入口90Aは、混合ガス22を取り入れる。
【0040】
分離膜92Aは、混合ガス22を空調用冷媒の第1のガス成分23と、空調用冷媒の第2のガス成分25および非凝縮性ガス26とからなる混合ガス24(第2の混合ガス)とに分離する。大量の非凝縮性ガスを含む混合ガスが分離膜92Aに流れてくると、非凝縮性ガス26は、放出口94Aの方だけでなく、出口96Aの方にも流れる。分離を繰り返しているうちに、非凝縮性ガス26は、放出口94Aの方に流れる量が多くなり、出口96Aに流れる量が少なくなる。
【0041】
放出口94Aは、分離膜92Aを透過した混合ガス24を配管59に放出する。出口96Aは、分離膜92Aを透過しなかった空調用冷媒の第1のガス成分23を排出する。
【0042】
発送配管56の第1端がガス流入口60である。発送配管56の第2端は、第1のガス分離モジュール68Aの入口90Aに接続される。
【0043】
再送配管58Aの第1端は、第1のガス分離モジュール68Aの出口96Aに接続される。再送配管58Aの第2端は、ガス流出口74として、三方弁40の第3ポート43に接続される。
【0044】
第2のガス分離モジュール68Bは、入口90Bと、放出口94Bと、吸着部315とを備える。
【0045】
入口90Bは、混合ガス24を取り入れる。
【0046】
吸着部315は、混合ガス24のうち、空調用冷媒の第2のガス成分25を吸着剤に吸着させる。
【0047】
放出口94は、吸着部315によって吸着されなかった非凝縮性ガス26を大気に放出する。
【0048】
配管59の第1端が第1のガス分離モジュール68Aの放出口94Aに接続される。配管59の第2端は、第2のガス分離モジュール68Bの入口90Bに接続される。
【0049】
分離装置18は、さらに、第1圧力調整器98Aと、第1逆止弁99Aとを備える。
【0050】
第1圧力調整器98Aは、第1のガス分離モジュール68Aの分離膜92Aの内外差圧を調整する。第1圧力調整器98Aは、第1のガス分離モジュール68Aの後段に配置され、第1圧力調整器98Aの1次側の圧力を調整する第1背圧弁を含む。
【0051】
第1逆止弁99Aは、第1圧力調整器98Aと、ガス流出口74との間に配置される。第1逆止弁99Aは、分離膜92Aから流出したガスが、分離膜92Aに流入するのを防止する。
【0052】
以降説明するように、発送配管56と再送配管58Aには検出器または弁等が配置されるが、それらのいくつかを省略して冷媒回収システムを構成することもできる。このような構成も含めた、冷媒回収システムの基本となる冷媒回収方法は次の(1)~(4)のステップを備える。
【0053】
(1)三方弁40の第1ポート41と第2ポート42とを連通状態とし(以下、通常モードと言う)、冷媒回路30の空調用冷媒を、接続配管50と前配管52とを通じて冷媒回収装置14に導き、冷媒回収装置14を用いて空調用冷媒を圧縮凝縮して、圧縮凝縮冷媒を生成する生成ステップ。
【0054】
(2)冷媒回収装置14が生成した圧縮凝縮冷媒を後配管54を通じて回収ボンベ16に回収する回収ステップ。
【0055】
(3)回収ボンベ16の内部に含まれる混合ガス22を発送配管56を通じてガス分離モジュール装置68に導き、ガス分離モジュール装置68を用いて、混合ガス22(第1の混合ガス)を、複数の成分に分離する分離ステップ。
【0056】
(4)三方弁40の第2ポート42と、第3ポート43とを連通状態とし(以下、循環モードと言う)、分離膜92Aを透過しなかった空調用冷媒の第1のガス成分を、再送配管58Aと前配管52を通じて、冷媒回収装置14と冷媒回路30との間に再送させる再送ステップ。
【0057】
上記(3)の分離ステップは、以下の2つのステップを含む。
【0058】
(3A)第1のガス分離モジュール68Aの分離膜92Aによって、混合ガス22(第1の混合ガス)を空調用冷媒の第1のガス成分23と、空調用冷媒の第2のガス成分25および非凝縮性ガス26とからなる混合ガス24(第2の混合ガス)とに分離する第1分離ステップ。
【0059】
(3B)第2のガス分離モジュール68Bによって、第1のガス分離モジュール68Aの分離膜92Aによって分離された混合ガス24(第2の混合ガス)のうち、空調用冷媒の第2のガス成分25を吸着部315に吸着させ、混合ガス24(第2の混合ガス)のうち吸着部315に吸着されなかった非凝縮性ガス26を放出口94Bから大気に放出させる第2分離ステップ。
【0060】
図1の冷媒回収システム10の説明を続ける。分離装置18は、さらに、発送配管56に配置された圧力検出器61、温度検出器62、制御弁64および減圧弁66を備える。
【0061】
発送配管56上の圧力検出器61および温度検出器62は、制御弁64よりも回収ボンベ16側に位置し、回収ボンベ16内の圧力および温度を検出する。
【0062】
分離装置18は、さらに、再送配管58Aに配置された圧力検出器70および圧力調整器72を備える。
【0063】
再送配管58A上の圧力検出器70は、圧力調整器72よりも上流側(ガス分離モジュール装置68側)の再送配管58A内の圧力を検出する。圧力調整器72は、圧力調整器72よりも下流側(ガス流出口74側)の再送配管58A内の圧力を調整する。
【0064】
分離装置18は、さらに、発送制御器76と、再送制御器78と、三方弁制御器80と、圧力制御器97とを備える。
【0065】
発送制御器76、再送制御器78、三方弁制御器80、および圧力制御器97は、コントローラであり、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、および入出力ポート等を備えたマイクロコンピュータである。これらの制御器は、共通の1つのマイクロコンピュータにより実現されてもよい。また、これらの制御器は、マイクロコンピュータに代えて、または、それと共にASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を含んでもよい。
【0066】
発送制御器76は、圧力検出器61の検出値DPおよび温度検出器62の検出値DTに基づいて、回収ボンベ16内から非凝縮性ガスを除去する必要があるか否かを判断する。発送制御器76は、除去の必要ありと判断した際には制御弁64を開状態とし、除去の必要なしと判断した際には制御弁64を閉状態とする。
【0067】
三方弁制御器80は、制御弁64が閉状態の場合には、三方弁40を制御して、第1ポート41と第2ポート42とを連通状態(通常モード)に設定する。
【0068】
三方弁制御器80は、制御弁64が開状態の場合には、三方弁40を制御して、第2ポート42と第3ポート43とを連通状態(循環モード)か、あるいは、第1ポート41と第3ポート43とを導連状態とする(以下、気化促進モードと言う)。このように、
図1の実施形態では、基本となる冷媒回収方法に対して、気化促進モードが付加されている。
【0069】
通常モードは、空調装置12から回収ボンベ16に冷媒回収を行うモードである。循環モードは、分離装置18、冷媒回収装置14、および回収ボンベ16によって循環ループを形成して、繰り返し、回収ボンベ16内の混合ガス22をガス分離モジュール装置68に送り込んで、回収ボンベ16内の非凝縮性ガスを除去するモードである。気化促進モードは、空調装置12の冷媒回路30内の冷媒が低温凝縮する可能性がある場合に、回収ボンベ16内の混合ガス22の一部を、分離装置18から冷媒回路30内に送り込み、冷媒回路30内の冷媒の温度を上昇させ、冷媒の気化を促進させるモードである。冷媒回収装置14を通過したガス冷媒は、断熱圧縮されるため、冷媒回路30内、すなわち冷媒回収装置14に流入する時よりも温度が高くなる。そのため、冷媒回収装置14から回収ボンベ16に入る冷媒は、温度が高くなっている。
【0070】
圧力制御器97は、第1圧力調整器98Aを制御して、分離膜92Aの内外差圧を調整する。
【0071】
図2は、発送制御器76のブロック図である。発送制御器76は、参照圧力取得器104と、減圧弁制御器106と、判定器108とを備える。分離装置18は、キーパッドまたはバーコードリーダ等の入力部100と、フラッシュメモリ等の記憶部102とを備える。発送制御器76は、入力部100および記憶部102と電気的に接続されている。発送制御器76内にあるメモリを、記憶部102として使用してもよい。
【0072】
冷媒回収の前に、入力部100から回収する冷媒(以下、回収冷媒とも言う)の種類を示す回収冷媒情報110が入力され、記憶部102に格納される。例えば、空調装置12の筐体の表面に付された、空調装置12で使用している冷媒の種類を示すバーコードを、入力部100としてのバーコードリーダで読み取ることで、回収冷媒情報110が記憶部102に格納される。記憶部102には、さらに、複数種類の冷媒毎に、温度に対する飽和蒸気圧の特性(以下、圧力特性112と言う)が予め格納されている。
【0073】
図3は、各冷媒の圧力特性の例を表わす図である。
図3には、A、B、C、およびDの各冷媒の圧力特性が示されている。
【0074】
参照圧力取得器104には、発送配管56上の温度検出器62の検出温度DT(回収ボンベ16内の温度)が入力される。参照圧力取得器104は、回収冷媒情報110が示す回収冷媒に対応する圧力特性112を記憶部102から読み出して、
図3のように、検出温度DT(回収ボンベ16内の温度)における回収冷媒(
図3の例では冷媒A)の飽和蒸気圧を、参照圧力RPとして取得する。そして、参照圧力取得器104は、参照圧力RPを判定器108に出力する。
【0075】
判定器108には、参照圧力RPと、発送配管56上の圧力検出器61の検出圧力DP(回収ボンベ16内の圧力)とが入力される。ここで、
図3に示すように参照圧力RP(回収冷媒の飽和蒸気圧)よりも検出圧力DPが高い場合には、回収ボンベ16内に非凝縮性ガスが混入していることが示される。そこで、判定器108は、検出圧力DPが参照圧力RPよりも高い状態(以下、高圧状態とも言う)の場合には、制御弁64を開状態に制御し、回収ボンベ16内の混合ガス22をガス分離モジュール装置68に送る。一方、判定器108は、高圧状態ではない場合には、制御弁64を閉状態のままとする。判定器108は、非凝縮性ガスの除去を行っている状態か否かを示す除去信号を出力する。除去信号は、制御弁64が閉状態の場合にLowとなり、制御弁64が開状態の場合にHighとなる信号である。
【0076】
減圧弁制御器106には、発送配管56上の圧力検出器61の検出圧力DP(回収ボンベ16内の圧力)が入力される。減圧弁制御器106は、制御弁64が開状態となり、回収ボンベ16内の混合ガス22がガス分離モジュール装置68に送り込まれた際に、ガス分離モジュール装置68の分離膜92Aが回収ボンベ16内の圧力により損傷しないように、検出圧力DPに基づいて減圧弁66を制御する。減圧弁66の制御により、減圧弁66よりも下流側(ガス分離モジュール装置68側)の配管内圧力が調整される。
【0077】
図4は、三方弁制御器80のブロック図である。三方弁制御器80は、判定器118を備える。三方弁制御器80は、キーパッド等の入力部100、およびフラッシュメモリ等の記憶部102と電気的に接続されている。三方弁制御器80内にあるメモリを、記憶部102として使用してもよい。
【0078】
冷媒回収の前に、入力部100から、気化促進モードへの遷移条件としての圧力閾値120と、気化促進モードの継続時間122とが入力され、記憶部102に格納される。判定器118には、除去信号と、冷媒回収装置14の圧力検出器37の検出圧力DPS(冷媒回収装置14の入口36における圧力)と、記憶部102にある圧力閾値120および継続時間122とが入力される。ここで、検出圧力DPSは、通常モードにおいて空調装置12の冷媒回路30の圧力を示す。
【0079】
判定器118は、除去信号がLowの場合には、三方弁40の第1ポート41と第2ポート42とが連通状態(通常モード)となるように三方弁40を制御する。
【0080】
判定器118は、除去信号がLowからHighに変わった際には、検出圧力DPS(冷媒回路30の圧力)と圧力閾値120との比較結果に基づいて、循環モードと気化促進モードとのうち、どちらに三方弁40を制御するかを決める。具体的には、判定器118は、検出圧力DPSが圧力閾値120より高い場合には、冷媒回路30内の冷媒が低温凝縮する可能性が低いと推定し、三方弁40の第2ポート42と第3ポート43とが連通状態(循環モード)となるように三方弁40を制御する。一方、判定器118は、検出圧力DPSが圧力閾値120以下の場合には、冷媒回路30内の冷媒が低温凝縮する可能性があると推定し、三方弁40の第1ポート41と第3ポート43とが連通状態(気化促進モード)となるように三方弁40を制御する。
【0081】
判定器118は、気化促進モードに遷移させてから、継続時間122だけ時間が経過した際には、気化促進モードから循環モードに三方弁40を制御する。
【0082】
判定器118は、現在、通常モード、循環モード、または気化促進モードのいずれの状態であるかを示す三方弁信号を出力する。
【0083】
図1に示すように、再送制御器78には、三方弁信号と、再送配管58A上の圧力検出器70の検出圧力DPR(再送配管58内の圧力)と、冷媒回収装置14の圧力検出器37の検出圧力DPS(冷媒回収装置14の入口36における圧力)とが入力される。再送制御器78は、三方弁信号が循環モードを示す場合には、検出圧力DPR、DPSに基づいて、冷媒回収装置14の入口36における圧力よりも、圧力調整器72の下流側(ガス流出口74側)の再送配管58A内の圧力が高くなるように圧力調整器72を制御する。これにより、前配管52から再送配管58Aに向かって冷媒が逆流することを防止することができる。再送制御器78は、三方弁信号が気化促進モードを示す場合には、圧力調整器72の下流側(ガス流出口74側)の再送配管58A内の圧力が、空調装置12の冷媒回路30内にガスを送り込むことができる予め定められた圧力となるように圧力調整器72を制御する。
【0084】
図5は、圧力制御器97のブロック図である。圧力制御器97は、圧力取得器211と、第1圧力制御器212と、を備える。圧力制御器97は、フラッシュメモリ等の記憶部102と電気的に接続されている。圧力制御器97内にあるメモリを、記憶部102として使用してもよい。
【0085】
記憶部102は、第1圧力情報214を記憶する。第1圧力情報214は、第1圧力調整器98Aによって設定される分離膜92Aの内外差圧P1oを表わす。
【0086】
圧力取得器211は、冷媒回収の前に、記憶部102から第1圧力情報214を取得して、第1圧力制御器212に送る。第1圧力制御器212は、第1圧力調整器98Aを制御して、分離膜92Aの内外差圧P1oをPAに設定する。
【0087】
次に、分離膜92Aの内外差圧の設定圧力PAについて説明する。
【0088】
図6は、分離膜92Aの内外差圧の設定圧力PAを説明するための図である。
【0089】
透過できる流量以上の非凝縮性ガス26を含む混合ガスが分離膜92Aに流れてくると、非凝縮性ガス26は、放出口94Aの方だけでなく、出口96Aの方にも流れる可能性がある。これを防止するために、分離膜92Aへの混合ガス22の流入量を調節する必要がある。
【0090】
もし、大量の非凝縮性ガス26が分離膜92Aに流れた場合でも、非凝縮性ガス26は出口96A、および冷媒回収装置14を通り、回収ボンベ16に返送される。そして、非凝縮性ガス26は、再度分離装置18に流入し、分離工程を経る。非凝縮性ガス26は、繰り返し、分離装置18に流入することによって、非凝縮性ガス26の量を低減できる。
【0091】
分離膜92Aの内外差圧の設定圧力PAは、第1の閾値TH1未満の値に設定される。これによって、空調用冷媒の第2のガス成分25および非凝縮性ガス26は、分離膜92Aを透過しやすく、空調用冷媒の第1のガス成分23は、分離膜92Aを透過しにくくすることができる。
【0092】
設定圧力PAについて、上記の条件を満たし、かつより適切な値に設定する方法について説明する。
【0093】
図1に示すように、分離膜92Aの内外差圧をP1o、分離膜92Aの内部の圧力(つまり、分離膜92Aの入力側の圧力)をP1i、分離膜92Aの透過側の圧力をP1tとする。第2のガス分離モジュール68Bの入力側の圧力をP2iとすると、以下の式が成り立つ。
【0094】
P1t=P2i・・・(1)
P1t=P1i-P1o・・・(2)
分離膜92Aにガスが逆流しないようにするには、以下の条件が必要となる。
【0095】
P1i>P1t=P2i・・・(3)
発送制御器76による減圧弁66の制御によって、式(3)を満たすように、圧力P1iを制御することができる。
【0096】
圧力制御器97は、式(4)を満たすように、第1圧力調整器の98Aを制御することによる第1のガス分離モジュール68Aの分離膜92Aの内外差圧P1oを制御する。
【0097】
P1o=PA<TH1・・・(4)
次に、第1のガス分離モジュール68Aについて説明する。
【0098】
第1のガス分離モジュール68Aには、混合ガス22が流入する。
【0099】
図1に示すように、第1のガス分離モジュール68Aは、筒状の筐体88Aと、筐体88Aの中に配置された筒状の分離膜92Aと含む。筐体88Aは、混合ガス22を取り入れる入口90Aと、入口90Aと対向して配置され、空調用冷媒の第1のガス成分23(再送ガス冷媒)を排出する出口96Aと、非凝縮性ガス26および空調用冷媒の第2のガス成分25(R32)からなる混合ガス24を放出する放出口94Aとを含む。
【0100】
空調用冷媒の第2のガス成分25は、分離膜92Aを透過しやすい。非凝縮性ガス26は、分離膜92Aを透過しやすい。空調用冷媒の第1のガス成分23は、分離膜92Aを透過しにくい。
【0101】
分離膜92Aの第1端は、筐体88Aの入口90Aに接続される。分離膜92Aの第2端は、筐体88Aの出口96Aに接続される。混合ガス22は、入口90Aから分離膜92Aの内部に入り、出口96Aに向かって進み、その間に、非凝縮性ガス26および空調用冷媒の第2のガス成分25(R32)の大部分が、分離膜92Aを透過して、分離膜92Aの外に出ていき、やがて、筐体88Aの放出口94Aから配管59に放たれる。また、混合ガス22のうち、分離膜92Aを透過しなかった空調用冷媒の第1のガス成分23(再送ガス冷媒)は、筐体88Aの出口96Aから再送配管58A内に排出される。
【0102】
分離膜92Aとしては、例えば、無機系材料により構成された膜(以下、無機系分離膜と言う)または有機系材料により構成された膜(以下、有機系分離膜と言う)を使用することができる。無機系分離膜の材料としては、例えばセラミック、ゼオライト等を使用することができる。分離膜92Aは、非凝縮性ガス(N2、O2)などの分離径の小さなガスを分離できる膜である。分離膜92Aの分子径は、3.8Å程度である。分離膜92Aは、極性を有する。
【0103】
図7は、無機系分離膜によって構成された分離膜92Aの分子ふるいの原理を模式的に示す図である。
図7に示すように、無機系分子膜は、微細な孔(細孔)を有し、基本的に分子ふるいの原理を利用してガス分離を行う。無機系分子膜の細孔径に対して、分子径が小さな空気(非凝縮性ガス26)、水28、また、冷媒の中での分子径の小さなR-32(第2のガス成分25)は、細孔を通って、分離膜の外に出ていく。R-32の分子径は、無機系分離膜の細孔径に近い値であるため、透過量としては、空気(非凝縮性ガス26)に比べて小さくなる。
【0104】
次に、第2のガス分離モジュール68Bについて説明する。
【0105】
第2のガス分離モジュール68Bには、分離膜92Aを透過した混合ガス24(第2の混合ガス)が流入する。
【0106】
吸着部315は、切替弁320と、第1の吸着ユニット321と、第1の吸着ユニット321と並列して配置される第2の吸着ユニット322と、第1の吸着ユニット321オよび第2の吸着ユニット322の後段に配置される第3の吸着ユニット323と、冷媒検知センサ324とを備える。
【0107】
切替弁320は、混合ガス24を第1の吸着ユニット321に送るか、または第2の吸着ユニット322に送るかを切り替える。切替弁320は、吸着制御部330によって制御される。
【0108】
第1の吸着ユニット321と、第2の吸着ユニット322と、第3の吸着ユニット323には、多数の吸着剤が装填される。吸着剤の表面積が大きいほど、吸着剤の吸着性能は高い。小さな吸着剤は配管に流れてしまう可能性がある。よって、吸着剤の粒子の大きさは、0.1~10mm程度が望ましい。吸着剤として、たとえば、ゼオライト、活性炭、シリカアルミナ、活性アルミナ、合成ゼオライトを用いることができる。
【0109】
図8は、第1の吸着ユニット321、第2の吸着ユニット322、および第3の吸着ユニット323の詳細を表わす図である。
【0110】
各吸着ユニット321,322,322には、吸着剤350が装填される。空調用冷媒の第2のガス成分25は、吸着剤350に吸着可能である。
【0111】
図9は、吸着剤350に冷媒が吸着される一例を表わす図である。
【0112】
吸着剤350の孔子(穴)の直径と、空調用冷媒の第2のガス成分25の直径とがほぼ等しい。
【0113】
空調用冷媒の第2のガス成分25は、吸着剤350の孔子(穴)に吸着しやすい。
【0114】
図10は、吸着剤350に冷媒が吸着される別の例を表わす図である。
【0115】
吸着剤350の大きな粒子内にさらに小さな穴および亀裂が存在する。そのような穴おおよび亀裂に空調用冷媒の第2のガス成分25が吸着しやすい。
【0116】
第2の吸着ユニット322に含まれる吸着剤の量は、第1の吸着ユニット321に含まれる吸着剤の量よりも多く、第2の吸着ユニット322の方が第1の吸着ユニット321よりも多くの冷媒を吸着させることができる。
【0117】
吸着制御部330には、第1の閾値圧力TPと、発送配管56上の圧力検出器61の検出圧力DP(回収ボンベ16内の圧力)とが入力される。
【0118】
吸着制御部330は、検出圧力DPが第1の閾値圧力TP以下の場合に、第1の吸着ユニット321および第2の吸着ユニット322のうち使用する吸着部315を第1の吸着ユニット321に設定する。なぜなら、冷媒ガスに混入した非凝縮性ガス26の量が少ないと、回収ボンベ16内の混合ガス22の体積は小さく、また検出圧力DPも小さくなり、吸着させる空調用冷媒の第2のガス成分25の量も少ないと想定することができるからである。吸着制御部330は、切替弁320の流出先を第1の吸着ユニット321の方向に切り替える。
【0119】
吸着制御部330は、検出圧力DPが第1の閾値圧力TPを超える場合に、第1の吸着ユニット321および第2の吸着ユニット322うち使用する吸着部315を第2の吸着ユニット322に設定する。なぜなら、冷媒ガスに混入した非凝縮性ガス26の量が多いと、回収ボンベ16内の混合ガス22の体積は大きく、また検出圧力DPも大きくなり、吸着させる空調用冷媒の第2のガス成分25の量も多いと想定することができるからである。吸着制御部330は、切替弁320の流出先を第2の吸着ユニット322の方向に切り替える。
【0120】
第1の吸着ユニット321および第2の吸着ユニット322のうち使用されている吸着部315には、混合ガス24が流入する。混合ガス24に含まれる空調用冷媒の第2のガス成分25の大部分は、使用されている吸着部315の吸着剤に吸着し、混合ガス24に含まれる非凝縮性ガス26の大部分は、使用されている吸着部315から流出する。
【0121】
第3の吸着ユニット323は、第1の吸着ユニット321および第2の吸着ユニット322の後段に配置される。第3の吸着ユニット323の吸着剤は、第1の吸着ユニット321および第2の吸着ユニット322のうち使用されている吸着部315から流失したガスに空調用冷媒の第2のガス成分25が含まれている場合に、それらを吸着させる。使用されている吸着部315から流失したガスに含まれる非凝縮性ガス26は、第3の吸着ユニット323から流出する。非凝縮性ガス26は、放出口94Bから大気に放出される。
【0122】
冷媒検知センサ324は、第1の吸着ユニット321および第2の吸着ユニット322のうち使用されている吸着部315から流失したガスに冷媒が含まれているか否かを検出する。冷媒検知センサ324は、たとえば、赤外線センサなどによって構成される。
【0123】
吸着制御部330は、冷媒検知センサ324が冷媒を検出したときには、第1の吸着ユニット321および第2の吸着ユニット322のうち使用している吸着部315が破かした(吸着部315が冷媒を吸着できない状態)と判断し、使用していない吸着部315を使用する吸着部315に切り替える。吸着制御部330は、切替弁320の流出先を新たに使用する吸着部315の方向に切り替える。
【0124】
次に、冷媒回収システム10を用いた具体的な冷媒回収方法について説明する。
図11は、実施の形態1における冷媒回収システム10を用いた具体的な冷媒回収方法を示すフローチャートである。
図11において、S100~S104、S126およびS128は作業者が行うステップであり、その他のステップは冷媒回収システム10により自動的に行われるステップである。
【0125】
S100において、作業者は、冷媒回収装置14、回収ボンベ16、および分離装置18を準備する。
【0126】
S101において、作業者は、空調装置12の電源を遮断した後、
図1に示すように、空調装置12、冷媒回収装置14、回収ボンベ16、および分離装置18を互いに接続する。
【0127】
S102において、作業者は、分離装置18の電源をオンにする。この後、作業者は、回収冷媒情報110(
図2参照)と、気化促進モードに関する圧力閾値120および継続時間122(
図4参照)とを入力部100から入力する。分離装置18の電源がオンにされると、三方弁制御器80は、三方弁40を第1ポート41と第2ポート42とが連通する通常モードに制御する。
【0128】
S103において、作業者は、冷媒回収装置14を駆動させる。これにより、空調装置12からの冷媒回収が開始される。
【0129】
S104~S122は、冷媒回収システム10による自動制御である。
【0130】
S104において、発送制御器76の参照圧力取得器104は、回収冷媒情報110が示す回収冷媒の圧力特性(
図3参照)に基づいて、温度検出器62の検出温度DT(回収ボンベ16内の温度)における回収冷媒の飽和蒸気圧を参照圧力RPとして取得する。発送制御器76の判定器108は、参照圧力RPよりも、圧力検出器61の検出圧力DP(回収ボンベ内の圧力)が高いか否かを確認する。なお、S104に示すように、判定器108は、参照圧力RPに予め定められた圧力Aを加算した圧力(RP+α、以下、基準圧力と言う)よりも、検出圧力DP(回収ボンベ内の圧力)が高いか否かを確認してもよい。
【0131】
判定器108は、検出圧力DPが基準圧力(RP+α)以下の場合(S104:NO)には、回収ボンベ16内の非凝縮性ガスの除去は不要と判断して、冷媒回収を継続する(S105)。
【0132】
一方、判定器108は、検出圧力DPが基準圧力(RP+α)よりも高い場合(S104:YES)には、回収ボンベ16内の非凝縮性ガスの除去が必要と判断して、除去信号をLowからHighに変更して、S106に進む。なお、このように基準圧力を用いて判定を行えば、回収ボンベ16内に非凝縮性ガスがある程度蓄積された後、非凝縮性ガスの除去を開始することができる。
【0133】
S106において、三方弁制御器80は、除去信号がLowからHighになったことを受けて、第1三方弁制御を実行する。
図12は、第1三方弁制御を示すフローチャートである。
【0134】
S200において、三方弁制御器80の判定器118は、冷媒回収装置14の圧力検出器37の検出圧力DPS(冷媒回路30の圧力)が、記憶部102にある圧力閾値120以下か否かを確認する。なお、圧力閾値120は、例えば0.1MPA程度である。
【0135】
S200がNOの場合には、判定器118は、空調装置12の冷媒回路30の冷媒が低温凝縮する可能性が低いと推定し、三方弁40を第2ポート42と第3ポート43とが連通する循環モードに制御し(S206)、気化促進フラグをオフにして(S208)、第1三方弁制御を終了する。
【0136】
一方、S200がYESの場合には、判定器118は、空調装置12の冷媒回路30の冷媒が低温凝縮する可能性が高いと推定し、三方弁40を第1ポート41と第3ポート43とが連通する気化促進モードに制御し(S202)、気化促進フラグをオンにして(S204)、第1三方弁制御を終了する。
【0137】
【0138】
吸着制御部330は、検出圧力DPが第1の閾値圧力TP以下の場合(S107:YES)には、使用する吸着部315を第1の吸着ユニット321に設定し、切替弁320の流出先を第1の吸着ユニット321の方向に切り替える。
【0139】
吸着制御部330は、検出圧力DPが第1の閾値圧力TPを越える場合(S107:NO)には、使用する吸着部315を第2の吸着ユニット322に設定し、切替弁320の流出先を第2の吸着ユニット322の方向に切り替える。
【0140】
S110において、圧力制御器97は、第1圧力調整器98Aを制御することによる第1のガス分離モジュール68Aの分離膜92Aの内外差圧P1oの設定圧力PAへの調整を開始する。
【0141】
S111において、発送制御器76の判定器108は、発送配管56上の制御弁64を開く。なお、除去信号をLowからHighにするタイミングと、S106(第1三方弁制御)の実行タイミングと、S111(制御弁64を開く動作)の実行タイミングとは、ほぼ同時である。また、制御弁64を開く前に、減圧弁制御器106により減圧弁66を調整しておく。制御弁64を開くことにより、回収ボンベ16内の混合ガス22がガス分離モジュール装置68に送られる。
【0142】
循環モードの場合には、分離装置18、冷媒回収装置14、および回収ボンベ16からなる循環ループが形成されて、回収ボンベ16内の混合ガス22は、繰り返しガス分離モジュール装置68に送り込まれる。非凝縮性ガスは大気に開放される。再送ガス冷媒は、冷媒回収装置14の前の前配管52に送り込まれて、冷媒回収装置14を通過し、液化された状態で回収ボンベ16に戻る。これにより、回収ボンベ16内の非凝縮性ガスは徐々に除去され、回収ボンベ16内の圧力は低下する。
【0143】
気化促進モードの場合には、回収ボンベ16内の混合ガス22の一部である再送ガス冷媒が、空調装置12の冷媒回路30内に送り込まれ、冷媒回路30内の冷媒の温度を上昇させる。これにより、冷媒の気化が促進され、冷媒回収を再開した際に、冷媒回収速度を向上させることができる。
【0144】
再送制御器78は、循環モードおよび気化促進モードにおいて圧力調整器72を制御して、圧力調整器72の下流側(ガス流出口74側)の再送配管58A内の圧力を調整する。
【0145】
S112において、発送制御器76の判定器108は、圧力検出器61の検出圧力DP(回収ボンベ16内の圧力)が、参照圧力RP以下になったか否かを確認する。S112がNOの場合には、非凝縮性ガスの除去を継続し(S113)、S114に進む。
【0146】
冷媒検知センサ324が冷媒を検出した場合(S114:YES)には、吸着制御部330は、切替弁320の流出先を切り替える。
【0147】
S116において、三方弁制御器80は、第2三方弁制御を実行する。
図13は、第2三方弁制御を示すフローチャートである。
【0148】
S300において、三方弁制御器80の判定器118は、気化促進フラグがオンであるか否かを確認する。S300がNOの場合(循環モードの場合)は、第2三方弁制御を終了する。一方、S300がYESの場合(気化促進モードの場合)にはS302に進む。
【0149】
S302において、判定器118は、気化促進モードに遷移させてから、記憶部102にある継続時間122(
図4参照)だけ時間が経過したかを確認する。S302がNOの場合には、判定器118は、気化促進モードを引き続き継続させる必要があると判断し、第2三方弁制御を終了する。一方、S302がYESの場合には、判定器118は、気化促進モードを終了してよいと判断し、三方弁40を第2ポート42と第3ポート43とが連通する循環モードに制御し(S304)、気化促進フラグをオフ(S306)にして、第2三方弁制御を終了する。
【0150】
【0151】
S112において、発送制御器76の判定器108は、圧力検出器61の検出圧力DP(回収ボンベ16内の圧力)が、参照圧力RP以下になった場合(S112:YES)には、回収ボンベ16内の非凝縮性ガスの除去が完了したと判断して、S117に進む。
【0152】
S117において、発送制御器76の判定器108は、発送配管56上の制御弁64を閉じ、除去信号をHighからLowにする。三方弁制御器80の判定器118は、除去信号がHighからLowになったことを受けて、三方弁40を第1ポート41と第2ポート42とが連通する通常モードに制御する。発送制御器76の減圧弁制御器106は、減圧弁66の制御を終了し、再送制御器78は、圧力調整器72の制御を終了する。
【0153】
S118において、圧力制御器97は、第1圧力調整器98Aを制御することによる第1のガス分離モジュール68Aの分離膜92Aの内外差圧P1oの設定圧力PAへの調整を終了する。
【0154】
S119において、冷媒回収装置14は、圧力検出器37の検出圧力DPS(冷媒回路30の圧力)が負圧になったか否かを確認する。S119がNOの場合には、冷媒回収装置14は冷媒回収を継続し(S120)、S119がYESの場合には、冷媒回収装置14は、ランプ、または音等により冷媒回収が終了したことを作業者に伝える。
【0155】
S121において、作業者は、冷媒回収装置14を停止する。
【0156】
S122において、作業者は、分離装置18の電源をオフにする。
【0157】
次に、以上説明した冷媒回収システム10の作用効果について説明する。
【0158】
冷媒回収システム10によれば、回収ボンベ16の内部の混合ガス22がガス分離モジュール装置68に送られることで、混合ガス22から非凝縮性ガスが分離されて大気に排出されると共に、混合ガス22に比べて非凝縮性ガスが低減された再送ガス冷媒が、ガス分離モジュール装置68から排出されて、空調装置12の冷媒回路30と冷媒回収装置14の間の配管内に送られる。再送ガス冷媒は、再度、冷媒回収装置14を通過し、液化された状態で回収ボンベ16に戻ることになる。
【0159】
このように、回収ボンベ16、冷媒回収装置14および空調装置12の接続を維持したまま、回収ボンベ16内の非凝縮性ガスを低減することができる。回収ボンベ16の内圧上昇を抑制することができ、回収ボンベ16への冷媒回収速度を向上することができると共に、回収ボンベ16の冷媒充填量を増やすことができる。再送ガス冷媒は、液化されて(体積が減少した状態で)回収ボンベ16に戻るので、回収ボンベ16の冷媒充填量をさらに増加させることができる。回収ボンベ16内の混合ガス22をガス分離モジュール装置68に送るために、回収ボンベ16、ガス分離モジュール装置68、冷媒回収装置14の順で配置される点に重要な意義がある。
【0160】
さらに、ガス分離モジュール装置68が分離した空調用冷媒の大部分が冷媒回路30と冷媒回収装置14との間に再送される。この分離された空調用冷媒は、冷媒回路30に送られるか、冷媒回収装置14に送られるかを三方弁40によって切り替えることができる。気化促進モードにおいて、ガス分離モジュール装置68が分離した空調用冷媒が冷媒回路30に送られることによって、冷媒回路30内の冷媒の温度を上昇させることができる。これによって、冷媒の気化が促進され、冷媒回収を再開した際に、冷媒回収速度を向上させることができる。循環モードにおいて、ガス分離モジュール装置68が分離した空調用冷媒が冷媒回収装置14に送られることによって、ガス分離モジュール装置68が分離した空調用冷媒の回収処理が再度実行される。
【0161】
ガス分離モジュール装置68は、回収ボンベ16の上部に取り付けられている。そのため、液冷媒や混入した水などの液成分は、回収ボンベ16内の底部に滞留し、ガス分離モジュール装置68の分離膜92Aおよび吸着剤350に液冷媒および多量の水が混入することがなく、分離膜92Aおよび吸着剤350のガス分離効果の低下を抑制することができる。空調用冷媒は、冷媒回収装置14で断熱圧縮され液化した状態で回収ボンベ16に充填される。そのため、回収ボンベ16内の空間部の体積分に飽和蒸気圧分のみの冷媒が気化しているだけで、ほとんどの冷媒は回収ボンベ16内では液化している。気化している冷媒(ガス冷媒)の割合が低いため、ガス分離モジュール装置68に送られるガス冷媒の量を少なくでき、ガス分離モジュール装置68における冷媒漏洩リスクを低減することもできる。
【0162】
分離装置18、冷媒回収装置14、および回収ボンベ16の循環ループが形成され、ガス分離モジュール装置68により、繰り返し非凝縮性ガスの分離が行われるので、効果的に、回収ボンベ16内の非凝縮性ガスの除去が実現される。
【0163】
回収ボンベ16内に非凝縮性ガスが混入している場合に限って、制御弁64を開状態にしてガス分離モジュール装置68で非凝縮性ガスを除去するので、回収ボンベ16内に非凝縮性ガスが無い又は少ない場合の不必要なガス分離モジュール装置68の使用を回避することができる。
【0164】
分離装置18の記憶部102には複数種類の冷媒の圧力特性112が記憶されているので、異なる種類の冷媒の回収において、共通の分離装置18を用いることができる。
【0165】
ガス分離モジュール装置68を使用する場合(制御弁64が開状態の場合)であって、冷媒回路30の圧力が予め定められた圧力より高い場合には、再送ガス冷媒を、再送配管58Aから冷媒回収装置14に的確に送り込むことができる。また、ガス分離モジュール装置68を使用する場合(制御弁64が開状態の場合)であって、冷媒回路30の圧力が予め定められた圧力以下の場合には、冷媒回収装置14で断熱圧縮され、冷媒回収装置14への流入時よりも温度が高くなった冷媒が入れられた回収ボンベ16内のガス冷媒の一部である再送ガス冷媒(冷媒回路30内よりも温度が高い)を、冷媒回路30に送り込むことができる。これにより、冷媒回路30内の冷媒の温度を上昇させ、冷媒のガス化を促進させることができ、冷媒回収を再開した際に、冷媒回収速度を向上させることができる。
【0166】
さらに、空調用冷媒がR32を含む場合には、1つのガス分離モジュールによって、非凝縮性ガス26と冷媒ガス23,25とを分離することができない。本実施の形態では、2つのガス分離モジュール68A,68Bを用いることによって、非凝縮性ガス26のみを大気に放出することができる。
【0167】
本実施の形態では、第2のガス分離モジュール68Bは、空調用冷媒の第2のガス成分25が吸着されやすい吸着剤350を含む吸着部315を備える。吸着剤350を用いることによって、第1のガス分離モジュール68Aの分離膜92Aで分離できなかった混合ガス24を分離できる。また、第2のガス分離モジュール68Bとして、第1のガス分離モジュール68Aの分離膜92Aとは異なる分離膜を用いずに、吸着剤を用いることによって、大気に放出しないガスの破棄および回収が容易となる。
【0168】
本実施の形態では、互いに相違する量の吸着剤が装填された第1の吸着ユニット321と第2の吸着ユニット322とを備え、吸着量に応じた吸着ユニットを使用することによって、破過した吸着剤のみを回収し、廃棄することができる。特に、R-32を吸着した吸着剤は、不可逆性であるため、廃棄および交換しなければならず、その効果は大きい。
【0169】
さらに、本実施の形態によれば、主要な吸着ユニットとなる第1の吸着ユニット321または第2の吸着ユニット322が万一吸着破過しても、第3の吸着ユニット323が存在するため、大気放出するガス中に冷媒が残存して、冷媒が大気に漏れ出ることを防止できる。
【0170】
さらに、第1の吸着ユニット321~第3の吸着ユニット323のいずれか、または全部を着脱式にしてもよい。吸着ユニットを着脱式にすることで、吸着ユニットが吸着破過した後、吸着剤を速やかに回収、廃棄、および交換することができる。
【0171】
第1の吸着ユニット321および第2の吸着ユニット322の後段に冷媒検知センサ324を配置することによって、使用している吸着ユニットが吸着破過しても、冷媒検知センサ324が冷媒を検出して、すばやく使用する吸着ユニットを切り替えることができる。また、冷媒検知センサ324の後段には第3の吸着ユニット323が存在するため、冷媒検知センサ324で冷媒を検知したとしてもそれらの冷媒は第3の吸着ユニット323で吸着され、大気放出されるガス中に冷媒が残存することはない。
【0172】
実施の形態2.
図14は、実施の形態2に係る冷媒回収システム10Aの概略図である。実施の形態2の冷媒回収システム10Aが実施の形態1の冷媒回収システム10と相違する点は、実施の形態2の冷媒回収システム10Aは、さらに、第2圧力調整器98Bを備え、実施の形態1と異なる圧力制御器97Aを備える点である。
【0173】
第2のガス分離モジュール68Bに含まれる第2圧力調整器98Bは、第2のガス分離モジュール68Bの吸着部315の吸着時圧力を調整する。第2圧力調整器98Bは、第2のガス分離モジュール68Bの後段に配置され、第2圧力調整器98Bの1次側の圧力を調整する第2背圧弁を含む。
【0174】
圧力制御器97Aは、第2圧力調整器98Bを制御して、吸着部315の吸着時圧力を調整する。
【0175】
図15は、実施の形態2の圧力制御器97Aの構成を表わす図である。
【0176】
実施の形態2の圧力制御器97Aが、実施の形態1の圧力制御器97と相違する点は、さらに、第2圧力制御器213とを備え、実施の形態1と異なる圧力取得器211Aを備える点である。
【0177】
圧力制御器97Aは、フラッシュメモリ等の記憶部102Aと電気的に接続されている。圧力制御器97A内にあるメモリを、記憶部102Aとして使用してもよい。
【0178】
記憶部102Aは、第1圧力情報214および第2圧力情報215を記憶する。第1圧力情報214は、第1圧力調整器98Aによって設定される分離膜92Aの内外差圧PAを表わす。第2圧力情報215は、第2圧力調整器98Bによって設定される吸着部315の吸着時圧力PBを表わす。
【0179】
圧力取得器211Aは、冷媒回収の前に、記憶部102Aから第1圧力情報214を取得して、第1圧力制御器212に送る。第1圧力制御器212は、第1圧力調整器98Aを制御して、分離膜92Aの内外差圧P1oをPAに設定する。
【0180】
圧力取得器211Aは、冷媒回収の前に、記憶部102Aから第2圧力情報215を取得して、第2圧力制御器213に送る。第2圧力制御器213は、第2圧力調整器98Bを制御して、吸着部315の吸着時圧力をPBに設定する。
【0181】
吸着部315の吸着時圧力PBが大きいと、冷媒は吸着剤350に吸着しやすくなり、吸着剤350の単位重量当たりの冷媒の吸着量が多くなる。よって、使用する吸着剤350の量を少なくすることができる。
【0182】
したがって、吸着制御部330は、吸着部315の吸着時圧力PBが基準値以上のときに、切替弁320の流出先を少量の吸着剤350が装填された第1の吸着ユニット321に切替え、吸着部315の吸着時圧力PBが基準値未満のときに、切替弁320の流出先を多量の吸着剤350が装填された第2の吸着ユニット322に切替えることとしてもよい。
【0183】
実施の形態3.
図16は、実施の形態3に係る冷媒回収システム10Bの概略図である。実施の形態3の冷媒回収システム10Bが実施の形態2の冷媒回収システム10Aと相違する点は、実施の形態3の冷媒回収システム10Bの第2のガス分離モジュール68Bは、さらに、フィルタFL1~FL6を備える点である。
【0184】
第1の吸着ユニット321は、第1の配管および第2の配管と接続する。
【0185】
フィルタFL1は、第1の吸着ユニット321に装填されている吸着剤の第1の端面と第1の配管の端面との間に配置される。フィルタFL2は、第1の吸着ユニット321に装填されている吸着剤の第2の端面と第2の配管の端面との間に配置される。フィルタFL1,FL2は、第1の吸着ユニット321で発生する微粒子(吸着剤のかけらなど)が配管に流れ出ないようにするために配置される。
【0186】
第2の吸着ユニット322は、第3の配管および第4の配管と接続する。
【0187】
フィルタFL3は、第2の吸着ユニット322に装着されている吸着剤の第1の端面と第3の配管の端面との間に配置される。フィルタFL4は、第2の吸着ユニット322に装着されている吸着剤の第2の端面と第4の配管の端面との間に配置される。フィルタFL3,FL4は、第2の吸着ユニット322で発生する微粒子(吸着剤のかけらなど)が配管に流れ出ないようにするために配置される。
【0188】
第3の吸着ユニット323は、第5の配管および第6の配管と接続する。
【0189】
フィルタFL5は、第3の吸着ユニット323に装着されている吸着剤の第1の端面と第5の配管の端面との間に配置される。フィルタFL6は、第3の吸着ユニット323に装着されている吸着剤の第2の端面と第6の配管の端面との間に配置される。フィルタFL5,FL6は、第3の吸着ユニット323で発生する微粒子(吸着剤のかけらなど)が配管に流れ出ないようにするために配置される。
【0190】
フィルタFL1~FL6は、金属または樹脂で構成される。フィルタFL1~FL6は、メッシュ系が吸着剤350よりも小さいメッシュ形状を有する。フィルタFL1~FL6の大きさは、接する配管の径よりも大きい。フィルタFL1は、第1の配管の端面を覆う。フィルタFL2は、第2の配管の端面を覆う。フィルタFL3は、第3の配管の端面を覆う。フィルタFL4は、第4の配管の端面を覆う。フィルタFL5は、第5の配管の端面を覆う。フィルタFL6は、第6の配管の端面を覆う。
【0191】
図17は、フィルタFL1,FL2の配置例を表わす図である。フィルタFL3~FL6も同様である。第1の吸着ユニット321の両端で流路が狭くなる。配管P1の端面と第1の吸着ユニット321の吸着剤の第1の端面との間にフィルタFL1が配置される。配管P2の端面と第1の吸着ユニット321の吸着剤の第2の端面との間にフィルタFL2が配置される。
【0192】
フィルタFL1~FL4を配置する代わりに、切替弁320の手前と、冷媒検知センサ324の手前とに、それぞれフィルタを配置してもよい。
【0193】
実施の形態4.
図18は、実施の形態4に係る冷媒回収システム10Cの概略図である。
【0194】
実施の形態4の冷媒回収システム10Cが、実施の形態1の冷媒回収システム10と相違する点は、実施の形態4の冷媒回収システム10Cが、方向切替弁251、バイパス配管252、センサ253、およびバイパス制御器254を備える。
【0195】
センサ253は、空調用冷媒がR32を含むか否かを検出し、検出信号をバイパス制御器254に出力する。センサ253は、接続配管50に配置されるものとしてもよい。
【0196】
方向切替弁251は、配管59と接続する。方向切替弁251には、配管59から混合ガス24が流入する。
【0197】
方向切替弁251は、流入した混合ガス24の流出先が切替可能である。第1の流出先は、分岐配管49である。分岐配管49の第1端は、方向切替弁251と接続する。分岐配管49の第2端は、第2のガス分離モジュール68Bの入口90Bと接続する。
【0198】
第2の流出先は、バイパス配管252である。バイパス配管252の第1端は、方向切替弁251と接続する。バイパス配管252の第2端は、放出口94Bと接続する。
【0199】
バイパス制御器254は、空調用冷媒がR32を含むか否かに応じて、方向切替弁251の流出先を切り替える。バイパス制御器254は、空調用冷媒がR32を含む場合には、方向切替弁251の流出先を分岐配管49に切替ることによって、分離膜92Aを透過したガス24を、第2のガス分離モジュール68Bに流入させる。バイパス制御器254は、空調用冷媒がR32を含まない場合に、方向切替弁251の流出先をバイパス配管252に切替ることによって、分離膜92Aを透過したガス24を、第2のガス分離モジュール68Bに流入させずに、大気に放出させる。
【0200】
図19は、実施の形態4における冷媒回収システム10Cを用いた具体的な冷媒回収方法を示すフローチャートである。
【0201】
実施の形態4のフローチャートが、実施の形態1のフローチャートと相違する点は、実施の形態4のフローチャートが、S106とS107との間に、S201~S203を備える点である。
【0202】
S201において、センサ253によって、空調用冷媒がR32を含むことが検出された場合に、処理がS202に進む。センサ253によって、空調用冷媒がR32を含まないことが検出された場合に、処理がS203に進む。
【0203】
S202において、バイパス制御器254は、方向切替弁251の流出先を分岐配管49に切替る。これによって、分離膜92Aを透過したガス24は、第2のガス分離モジュール68Bに流入する。
【0204】
S203において、バイパス制御器254は、方向切替弁251の流出先をバイパス配管252に切替る。これによって、分離膜92Aを透過したガス24は、第2のガス分離モジュール68Bに流入せずに、大気に放出する。
【0205】
変形例.
本開示は、上記の実施形態に限定されるものではなく、たとえば、以下のような変形例も含む。
【0206】
(1)R32
上記の実施形態では、分離膜を透過し、吸着剤に吸着される冷媒の例としてR32を用いたが、これに限定されるものではない。
【0207】
(2)ガス分離モジュール
上記の実施形態では、2段のガス分離モジュールを用いたが、N段(N≧2)のガス分離モジュールを用いてもよい。
【0208】
(3)並列配置される吸着ユニット
上記の実施形態では、前段に並列に配置される吸着ユニットの数を2個にしたが、3個以上にしてもよい。より多くの吸着ユニットを備えることによって、必要な吸着剤量に丁度合う吸着ユニットを使用することができるので、使用および廃棄する吸着剤量を必要最低限にすることができる。
【0209】
(4)センサ
実施の形態4では、センサ253が、空調用冷媒がR32を含むか否かを検出するものとしたが、これに限定されるものではない。入力部から空調用冷媒に含まれる冷媒の種類を示す回収冷媒情報が入力され、記憶部に格納され、バイパス制御部が、回収冷媒情報に基づいて、空調用冷媒がR32を含むか否かを判定するものとしてもよい。
【0210】
(5)ガス分離モジュール装置
上記の実施形態では、ガス分離モジュール装置装置は、第1のガス分離モジュール68Aと、第2のガス分離モジュール68Bとを備えるものとしたが、第2のガス分離モジュール68Bのみを備えるものとしてもよい。この場合、空調用冷媒のガス成分を再送する機構は省略することができる。第2のガス分離モジュール68Bにおいて、吸着剤350が、混合ガス22のうち空調用冷媒のすべてのガス成分を吸着させ、放出口94Bが、混合ガス22のうち非凝縮性ガスを大気に放出する。
【0211】
(6)吸着した冷媒
吸着剤350に吸着した冷媒は、人手、または機械的な手段で回収タンク20に回収されるものとしてもよい。
【0212】
[付記]
上述した実施形態は、以下の付記の具体例である。
【0213】
(付記1)
冷凍空調機器の冷媒回路から空調用冷媒を回収する冷媒回収システムであって、
前記空調用冷媒を圧縮凝縮することによって、圧縮凝縮冷媒を生成する冷媒回収装置と、
前記冷媒回収装置が生成した前記圧縮凝縮冷媒を回収する回収ボンベと、
前記圧縮凝縮冷媒を回収した前記回収ボンベの内部に含まれる前記空調用冷媒のガス成分と非凝縮性ガスとからなる第1の混合ガスを前記空調用冷媒の第1のガス成分と、前記空調用冷媒の第2のガス成分および前記非凝縮性ガスとからなる第2の混合ガスとに分離する分離膜を含む第1のガス分離モジュールと、
前記第1のガス分離モジュールによって分離された前記第2の混合ガスのうち、前記空調用冷媒の前記第2のガス成分を吸着する吸着剤を含む吸着部を含む第2のガス分離モジュールと、
前記第1のガス分離モジュール装置が分離した前記空調用冷媒の前記第1のガス成分を前記冷媒回路と前記冷媒回収装置との間に再送させる再送配管と、を備えた、冷媒回収システム。
【0214】
(付記2)
前記第2のガス分離モジュールは、前記第2の混合ガスのうち前記吸着部に吸着されなかった前記非凝縮性ガスを大気に放出する放出口を含む、付記1記載の冷媒回収システム。
【0215】
(付記3)
前記吸着部は、
前記吸着剤が装填された第1の吸着ユニットと、
前記第1の吸着ユニットと並列して配置され、前記吸着剤が装填された第2の吸着ユニットと、
前記第2の混合ガスの流出先を前記第1の吸着ユニット、または前記第2の吸着ユニットに切替る切替弁と、を有する、付記1または2記載の冷媒回収システム。
【0216】
(付記4)
前記第1の吸着ユニットに充填される前記吸着剤の量は、前記第2の吸着ユニットに充填される前記吸着剤の量よりも少なく、
前記回収ボンベ内の圧力が第1の閾値圧力以下のときに、前記切替弁における前記第2の混合ガスの流出先を前記第1の吸着ユニットに切替させ、前記回収ボンベ内の圧力が前記第1の閾値圧力を超えるときに、前記切替弁における前記第2の混合ガスの流出先を前記第2の吸着ユニットに切替させる吸着制御部を、さらに備える付記3記載の冷媒回収システム。
【0217】
(付記5)
前記第1の吸着ユニットは、第1の配管および第2の配管と接続し、
装填されている前記吸着剤の第1の端面と、前記第1の配管の端面との間に配置される第1のフィルタと、
装填されている前記吸着剤の第2の端面と、前記第2の配管の端面との間に配置される第2のフィルタと、を含み、
前記第2の吸着ユニットは、第3の配管および第4の配管と接続し、
装填されている前記吸着剤の第1の端面と、前記第3の配管の端面との間に配置される第3のフィルタと、
装填されている前記吸着剤の第2の端面と、前記第4の配管の端面との間に配置される第4のフィルタと、を含む、付記3または4記載の冷媒回収システム。
【0218】
(付記6)
前記第1のフィルタは、前記第1の配管の前記端面を覆い、
前記第2のフィルタは、前記第2の配管の前記端面を覆い、
前記第3のフィルタは、前記第3の配管の前記端面を覆い、
前記第4のフィルタは、前記第4の配管の前記端面を覆う、付記5記載の冷媒回収システム。
【0219】
(付記7)
前記吸着部は、さらに、
前記第1の吸着ユニットおよび前記第2の吸着ユニットの後段に配置され、前記吸着剤が装填された第3の吸着ユニットを含む、付記3~6のいずれか1項に記載の冷媒回収システム。
【0220】
(付記8)
前記吸着部は、さらに、
前記第1の吸着ユニットおよび前記第2の吸着ユニットの後段に配置され、前記空調用冷媒を検知する冷媒検知センサと、
前記冷媒検知センサが前記空調用冷媒を検知したときに、前記切替弁における前記第2の混合ガスの流出先を切替させる吸着制御部と、を含む、付記3~7のいずれか1項に記載の冷媒回収システム。
【0221】
(付記9)
前記第3の吸着ユニットは、第5の配管および第6の配管と接続し、
装填されている前記吸着剤の第1の端面と、前記第5の配管の端面との間に配置される第5のフィルタと、
装填されている前記吸着剤の第2の端面と、前記第6の配管の端面との間に配置される第6のフィルタと、を含む、付記7または8記載の冷媒回収システム。
【0222】
(付記10)
前記第5のフィルタは、前記第5の配管の前記端面を覆い、
前記第6のフィルタは、前記第6の配管の前記端面を覆う、付記9記載の冷媒回収システム。
【0223】
(付記11)
前記冷媒回収システムは、
前記分離膜の内外差圧を調整するための第1圧力調整器と、
前記第1圧力調整器を制御して、前記分離膜の内外差圧を調整する第1圧力制御器と、をさらに備える、付記1~10のいずれか1項に記載の冷媒回収システム。
【0224】
(付記12)
前記分離膜の入力側の圧力は、前記分離膜の透過側の圧力よりも低い、付記1~11のいずれか1項に記載の冷媒回収システム。
【0225】
(付記13)
前記冷媒回収システムは、
前記吸着部の吸着時圧力を調整するための第2圧力調整器と、
前記第2圧力調整器を制御して、前記吸着部の吸着時圧力を調整する第2圧力制御器と、をさらに備える、付記1~12のいずれか1項に記載の冷媒回収システム。
【0226】
(付記14)
前記空調用冷媒の前記第2のガス成分は、R-32である、付記1~13のいずれか1項に記載の冷媒回収システム。
【0227】
(付記15)
前記冷媒回収システムは、
前記分離膜を透過したガスが流入し、前記ガスの流出先が切替可能な方向切替弁と、
前記空調用冷媒がR-32を含む場合に、前記方向切替弁を制御することによって、前記分離膜を透過したガスを、前記第2のガス分離モジュールに流入させ、前記空調用冷媒がR-32を含まない場合に、前記方向切替弁を制御することによって、前記分離膜を透過したガスを、前記第2のガス分離モジュールに流入させないバイパス制御器と、をさらに備える付記1~14のいずれか1項に記載の冷媒回収システム。
【0228】
(付記16)
前記冷媒回路と前記冷媒回収装置の間に配置された三方弁と、
前記三方弁を制御する三方弁制御部と、をさらに備え、
前記三方弁は、第1、2及び3ポートを含み、前記三方弁の前記第1ポートは前記冷媒回路に接続されており、前記三方弁の前記第2ポートは前記冷媒回収装置に接続されており、前記三方弁の前記第3ポートは前記再送配管に接続されており、
前記三方弁制御部は、第1のモードにおいて、前記三方弁の前記第1ポートと前記第3ポートが連通状態になるように前記三方弁を制御し、第2のモードにおいて、前記三方弁の前記第2ポートと前記第3ポートが連通状態になるように前記三方弁を制御する、付記1~15のいずれか1項に記載の冷媒回収システム。
【0229】
(付記17)
前記回収ボンベ内の圧力を検出する圧力検出器をさらに備え、
前記三方弁制御部は、前記回収ボンベ内の圧力が第2の閾値圧力以下の場合には、前記三方弁の前記第1ポートと前記第3ポートが連通状態になるように前記三方弁を制御し、前記回収ボンベ内の圧力が前記第2の閾値圧力を超える場合には、前記三方弁の前記第2ポートと前記第3ポートが連通状態になるように前記三方弁を制御する、付記16記載の冷媒回収システム。
【0230】
(付記18)
冷凍空調機器の冷媒回路から空調用冷媒を回収する冷媒回収システムであって、
前記空調用冷媒を圧縮凝縮することによって、圧縮凝縮冷媒を生成する冷媒回収装置と、
前記冷媒回収装置が生成した前記圧縮凝縮冷媒を回収する回収ボンベと、
前記圧縮凝縮冷媒を回収した前記回収ボンベの内部に含まれる前記空調用冷媒のガス成分と非凝縮性ガスとからなる混合ガスのうち、前記空調用冷媒のガス成分を吸着する吸着剤を含む吸着部を含むガス分離モジュールとを備える、冷媒回収システム。
【0231】
(付記19)
冷凍空調機器の冷媒回路から空調用冷媒を回収する冷媒回収方法であって、
冷媒回収装置が、前記空調用冷媒を圧縮凝縮して、圧縮凝縮冷媒を生成するステップと、
回収ボンベが、前記冷媒回収装置が生成した前記圧縮凝縮冷媒を回収するステップと、
第1のガス分離モジュールの分離膜が、前記圧縮凝縮冷媒を回収した前記回収ボンベの内部に含まれる前記空調用冷媒のガス成分と非凝縮性ガスとからなる第1の混合ガスを前記空調用冷媒の第1のガス成分と、前記空調用冷媒の第2のガス成分および前記非凝縮性ガスとからなる第2の混合ガスとに分離するステップと、
第2のガス分離モジュールが、前記第1のガス分離モジュールの分離膜によって分離された前記第2の混合ガスのうち、前記空調用冷媒の前記第2のガス成分を吸着部に吸着させるステップと、
再送配管が、前記第1のガス分離モジュールの分離膜が分離した前記空調用冷媒の前記第1のガス成分を前記冷媒回路と前記冷媒回収装置との間に再送させるステップと、を備えた冷媒回収方法。
【0232】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0233】
10,10A,10B,10C 冷媒回収システム、12 空調装置、14 冷媒回収装置、16 回収ボンベ、18 分離装置、20 回収タンク、22,24 混合ガス、23 空調用冷媒の第1のガス成分、25 空調用冷媒の第2のガス成分、26 非凝縮性ガス、28 水、29 その他のガス成分、30 冷媒回路、32 アキュムレータ、34 サービスポート、36,90A,90B 入口、37,61,70 圧力検出器、38,96A 出口、40 三方弁、41 第1ポート、42 第2ポート、43 第3ポート、46 液出入口、48 ガス出入口、49 分岐配管、50 接続配管、52 前配管、54 後配管、56 発送配管、58A 再送配管、59,P1,P2 配管、60 ガス流入口、62 温度検出器、64 制御弁、66 減圧弁、68 ガス分離モジュール装置、68A 第1のガス分離モジュール、68B 第2のガス分離モジュール、72 圧力調整器、74 ガス流出口、76 発送制御器、78 再送制御器、80 三方弁制御器、88A 筐体、92A 分離膜、94,94A,94B 放出口、97,97A 圧力制御器、98A 第1圧力調整器、98B 第2圧力調整器、99A 第1逆止弁、100 入力部、102,102A 記憶部、104 参照圧力取得器、106 減圧弁制御器、108,118 判定器、110 回収冷媒情報、112 圧力特性、120 圧力閾値、122 継続時間、211,211A 圧力取得器、212 第1圧力制御器、213 第2圧力制御器、214 第1圧力情報、215 第2圧力情報、251 方向切替弁、252 バイパス配管、253 センサ、254 バイパス制御器、315 吸着部、320 切替弁、321 第1の吸着ユニット、322 第2の吸着ユニット、323 第3の吸着ユニット、324 冷媒検知センサ、330 吸着制御部、350 吸着剤、FL1,FL2,FL3,FL4,FL5,FL6 フィルタ。