(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122405
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】太陽電池ストリングの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/05 20140101AFI20240902BHJP
【FI】
H01L31/04 570
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029929
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入川 淳平
(72)【発明者】
【氏名】橋本 治寿
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA02
5F251AA05
5F251AA08
5F251BA14
5F251EA19
5F251FA02
5F251FA14
5F251FA15
5F251GA04
5F251JA02
5F251JA06
(57)【要約】
【課題】生産性を向上させた太陽電池ストリングの製造方法を提供する。
【解決手段】本開示の一態様である太陽電池ストリングの製造方法は、第1位置にて、50℃以下の温度において、接着剤22を介して配線材21を太陽電池セル20上に配置し、配線材21と、太陽電池セル20とを仮固定する、仮固定工程と、仮固定工程後、接着剤22の粘着力によって、配線材21と太陽電池セル20とが仮固定された状態を維持したまま、第2位置まで移動させる搬送工程と、第2位置にて、配線材21を加圧しながら、接着剤22を接着剤22の硬化温度以上の温度で加熱することにより、接着剤22を硬化させる圧着工程と、を備える。そして、30℃、せん断速度0.01/秒における硬化前の接着剤22の粘度は、50Pa・s以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対を向いた第1面および第2面を有する第1太陽電池セルと、互いに反対を向いた第1面および第2面を有し、前記第1太陽電池セルに隣接して配置される第2太陽電池セルと、を含む太陽電池セルと、
前記第1太陽電池セルの第1面と前記第2太陽電池セルの第2面とを接続する配線材と、
を備える太陽電池ストリングの製造方法であって、
第1位置にて、50℃以下の温度において、接着剤を介して前記配線材を前記太陽電池セル上に配置し、前記配線材と、前記太陽電池セルとを仮固定する、仮固定工程と、
前記仮固定工程後、前記接着剤の粘着力によって、前記配線材と前記太陽電池セルとが仮固定された状態を維持したまま、第2位置まで移動させる搬送工程と、
前記第2位置にて、前記配線材を加圧しながら、前記接着剤を前記接着剤の硬化温度以上の温度で加熱することにより、前記接着剤を硬化させる圧着工程と、
を備え、
30℃、せん断速度0.01/秒における硬化前の前記接着剤の粘度は、50Pa・s以上である、太陽電池ストリングの製造方法。
【請求項2】
前記仮固定工程後は、50℃以下の温度を維持したまま前記搬送工程を行い、その後前記圧着工程を行う、請求項1に記載の太陽電池ストリングの製造方法。
【請求項3】
前記仮固定工程において、前記配線材に前記配線材の長さ方向の張力を加え、前記配線材の湾曲を矯正した後に、前記配線材を前記太陽電池セル上に配置する、請求項1に記載の太陽電池ストリングの製造方法。
【請求項4】
前記仮固定工程において、前記配線材に前記配線材の長さ方向の張力を加えながら、前記配線材を前記太陽電池セル上に配置する、請求項1に記載の太陽電池ストリングの製造方法。
【請求項5】
前記仮固定工程において、前記接着剤を介して前記配線材を前記太陽電池セル上に配置し、10Pa以上の圧力をかけることにより、前記配線材と、前記太陽電池セルとを仮固定する、請求項1に記載の太陽電池ストリングの製造方法。
【請求項6】
前記搬送工程において、前記仮固定工程後、前記接着剤の粘着力によって、前記配線材と前記太陽電池セルとが仮固定された状態を維持したまま、前記配線材を加圧せずに、前記第2位置まで移動させる、請求項1に記載の太陽電池ストリングの製造方法。
【請求項7】
前記搬送工程において、前記仮固定工程後、前記接着剤の粘着力によって、前記配線材と前記太陽電池セルとが仮固定された状態を維持したまま、前記配線材の長さ方向にのみ移動する、請求項1に記載の太陽電池ストリングの製造方法。
【請求項8】
前記圧着工程において、複数の前記太陽電池セルを一括して熱圧着することにより、前記接着剤を硬化させる、請求項1に記載の太陽電池ストリングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽電池ストリングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の太陽電池セルが配線材によって電気的に接続された太陽電池ストリングを備える太陽電池モジュールが知られている(特許文献1参照)。一般に、太陽電池セルと配線材との接続には、半田接合が用いられるが、プロセスの低温化や太陽電池モジュールの高信頼性化の観点から熱硬化性樹脂からなる接着剤が用いられる場合がある。この場合、太陽電池ストリングは、太陽電池セルの電極上に接着剤を介して配線材を配置した状態で、太陽電池セルおよび配線材を接着剤の硬化温度以上の温度で加熱し、接着剤を硬化させることにより製造される。
【0003】
ここで、太陽電池セルの電極上に配線材を配置した後、接着剤を硬化させるまでの間に、太陽電池セルおよび配線材のハンドリングを正確に行わないと、配線材の位置ずれが生じる可能性がある。配線材の位置ずれが生じると、電極間の短絡および電極と配線材との接続不良および信頼性の低下が生じる虞がある。
【0004】
特許文献1には、太陽電池セルの電極上に樹脂接着剤を介して配線材を配置した後、樹脂接着剤の硬化温度よりも低い温度で加熱することで、電極と配線材とを仮接着させる太陽電池ストリングの製造方法が開示されている。電極と配線材とを仮接着させることで、接着剤を硬化させるまでの間の配線材の位置ずれを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示された太陽電池ストリングの製造方法のように、樹脂接着剤の硬化温度よりも低い温度で加熱することにより、太陽電池セルの電極上に配線材を仮接着する方法では、太陽電池ストリングの製造装置に付着した接着剤が加熱により固着し、製造装置が汚れることがある。その結果、製造装置を清掃するために製造装置の稼働を停止しなければならず、生産性が低下し易いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様である太陽電池ストリングの製造方法は、互いに反対を向いた第1面および第2面を有する第1太陽電池セルと、互いに反対を向いた第1面および第2面を有し、第1太陽電池セルに隣接して配置される第2太陽電池セルと、を含む太陽電池セルと、第1太陽電池セルの第1面と第2太陽電池セルの第2面とを接続する配線材とを備える太陽電池ストリングの製造方法であって、第1位置にて、50℃以下の温度において、接着剤を介して配線材を太陽電池セル上に配置し、配線材と、太陽電池セルとを仮固定する、仮固定工程と、仮固定工程後、接着剤の粘着力によって、配線材と太陽電池セルとが仮固定された状態を維持したまま、第2位置まで移動させる搬送工程と、第2位置にて、配線材を加圧しながら、接着剤を接着剤の硬化温度以上の温度で加熱することにより、接着剤を硬化させる圧着工程と、を備えることを特徴とする。そして、30℃、せん断速度0.01/秒における硬化前の接着剤の粘度は、50Pa・s以上である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、生産性を向上させた太陽電池ストリングの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の一例である太陽電池モジュールの断面図である。
【
図2】実施形態の一例である太陽電池セルを第1面側から見た平面図である。
【
図3】実施形態の一例である太陽電池ストリングの製造方法を示すフローチャートである。
【
図4A】実施形態の一例である太陽電池ストリングの製造方法の仮固定工程を示す図である。
【
図4B】実施形態の一例である太陽電池ストリングの製造方法の仮固定工程を示す図である。
【
図4C】実施形態の一例である太陽電池ストリングの製造方法の仮固定工程を示す図である。
【
図4D】実施形態の一例である太陽電池ストリングの製造方法の仮固定工程を示す図である。
【
図4E】実施形態の一例である太陽電池ストリングの製造方法の仮固定工程を示す図である。
【
図4F】実施形態の一例である太陽電池ストリングの製造方法の仮固定工程を示す図である。
【
図5】実施形態の一例である太陽電池ストリングの製造方法の仮固定工程を示す図である。
【
図6】実施形態の一例である太陽電池ストリングの製造方法の仮固定工程を示す図である。
【
図7】実施形態の一例である太陽電池ストリングの製造方法の圧着工程を示す図である。
【
図8】実施形態の一例である太陽電池ストリングの製造方法の圧着工程で用いる圧着装置を模式的に示す斜視図である。
【
図9A】実施形態の他の一例である太陽電池ストリングの製造方法の仮固定工程を示す図である。
【
図9B】実施形態の他の一例である太陽電池ストリングの製造方法の仮固定工程を示す図である。
【
図9C】実施形態の他の一例である太陽電池ストリングの製造方法の仮固定工程を示す図である。
【
図10A】実施形態の他の一例である太陽電池ストリングの製造方法の仮固定工程を示す図である。
【
図10B】実施形態の他の一例である太陽電池ストリングの製造方法の仮固定工程を示す図である。
【
図10C】実施形態の他の一例である太陽電池ストリングの製造方法の仮固定工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る太陽電池モジュールの実施形態について詳細に説明する。実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであるから、図面に描画された構成要素の寸法比率などは以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0011】
図1を参照しながら、第1実施形態に係る太陽電池モジュール1の構成について説明する。
図1は第1実施形態に係る太陽電池モジュール1の断面図である。
【0012】
図1に示すように、太陽電池モジュール1は、複数の太陽電池セル20を含む太陽電池ストリング10と、第1保護部材11と、第2保護部材12とを備える。第1保護部材11は、太陽電池ストリング10の第1面側に設けられ、第2保護部材12は、太陽電池ストリング10の第2面側に設けられる。本実施形態では、第1面が受光面となり、第2面側が裏面となる。第1保護部材11は、セルの第1面側を保護する部材であり、第2保護部材12は、セルの第2面側を保護する部材である。また、太陽電池モジュール1は、第1保護部材11と第2保護部材12との間に設けられ、太陽電池ストリング10を封止する封止層13を備える。
【0013】
ここで、太陽電池ストリング10の「受光面」とは光が主に入射する面を意味し、「裏面」とは受光面と反対側の面を意味する。太陽電池ストリング10に入射する光のうち、50%を超える光、例えば80%以上または90%以上の光が受光面側から入射する。
【0014】
詳しくは後述するが、太陽電池ストリング10は、複数の太陽電池セル20と、配線材21と、接着剤22とを含む。太陽電池ストリング10は、配列方向に沿って配列された複数の太陽電池セル20を配線材21によって互いに接続することにより構成される。
【0015】
第1保護部材11には、例えば、透光性を有するガラス基板、樹脂基板等が用いられる。第1保護部材11は、一般的に平坦であるが、湾曲していてもよい。第2保護部材12には、第1保護部材11と同じ透明な部材を用いてもよいし、不透明な部材を用いてもよい。第2保護部材12には、例えば、第1保護部材11よりも厚みが薄い樹脂シートを用いることができる。
【0016】
第1保護部材11および第2保護部材12に適用される樹脂基板は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)から選択される少なくとも1種で構成される。
【0017】
封止層13は、第1保護部材11と第2保護部材12との間に設けられ、各太陽電池セル20を封止する樹脂層である。封止層13は、太陽電池セル20に密着してセルの移動を拘束し、太陽電池セル20が酸素、水蒸気等に曝されないように封止する。
図2に例示する形態では、封止層13が各保護部材および各太陽電池セル20と直接接触している。太陽電池モジュール1は、第1面側から、第1保護部材11、封止層13、太陽電池ストリング10、封止層13、および第2保護部材12が順に積層された積層構造を有する。なお、本実施形態では、全ての太陽電池セル20が封止層13によって封止されているが、例えば少なくとも1つの太陽電池セル20の一部が封止層13からはみ出た構成としてもよい。封止層13は、例えば、ポリエチレンあるいはポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料で形成される。
【0018】
封止層13は、第1保護部材11と太陽電池セル20との間に設けられる第1封止層13Aと、第2保護部材12と太陽電池セル20との間に設けられる第2封止層13Bとで構成される。封止層13は、第1封止層13Aを構成する樹脂部材と、第2封止層13Bを構成する樹脂部材とを用いて、後述のラミネート工程により形成されることが好ましい。第1封止層13Aおよび第2封止層13Bには、同じ樹脂部材を用いてもよく、異なる樹脂部材を用いてもよい。また、各樹脂部材の組成が同じである場合、各封止層の界面は確認できない場合がある。
【0019】
次に、
図2をさらに参照しながら、本実施形態に係る太陽電池ストリング10の構成について説明する。
図2は、
図1の太陽電池ストリング10を構成する太陽電池セル20を第1面側から見た平面図である。
【0020】
太陽電池ストリング10は、上記の通り、複数の太陽電池セル20と、配線材21と、接着剤22とを含む。太陽電池ストリング10は、配列方向に沿って配列された複数の太陽電池セル20を配線材21によって互いに接続することにより構成される。
【0021】
太陽電池セル20は、太陽光を受光することでキャリアを生成する光電変換部と、光電変換部上に設けられ、キャリアを収集する集電極とをそれぞれ有する。
【0022】
光電変換部の一例としては、結晶系シリコン(Si)、ガリウム砒素(GaAs)、インジウム燐(InP)等の半導体基板と、半導体基板上に形成された非晶質半導体層と、非晶質半導体層上に形成された透明導電層とを有するものが挙げられる。具体的には、n型単結晶シリコン基板の一方の面にi型非晶質シリコン層、p型非晶質シリコン層、および透明導電層が順に形成され、他方の面にi型非晶質シリコン層、n型非晶質シリコン層、および透明導電層が順に形成された構造が例示できる。
【0023】
集電極は、光電変換部の第1面上に形成された第1面電極(受光面電極)と、光電変換部の第2面上に形成された第2面電極(裏面電極)とで構成される。この場合、第1面電極および第2面電極の一方がn側電極となり、他方がp側電極となる。
【0024】
図2に示すように、集電極は、複数のフィンガー電極23を含むことが好ましい。但し、第2面電極については、光電変換部の第2面の略全域を覆う電極としてもよい。複数のフィンガー電極23は、互いに略平行に形成された細線状の電極である。
【0025】
集電極は、フィンガー電極23よりも幅が太く、各フィンガー電極と略直交するバスバー電極24を含んでいてもよい。バスバー電極24には、配線材21が取り付けられる。集電極は、例えば、バインダ樹脂中に銀(Ag)等の導電性フィラーが分散した構造を有する。当該構造の集電極は、例えばスクリーン印刷により形成できる。なお、光電変換部の構造は、上記のヘテロ接合型の構造の他に、TOPCON(Tunnel Oxide Passivated Contact cell)型、PERC(Passivated Emitter and Rear Cell)型等であってもよく、基板および第1面の極性はn型に限定されない。集電極は、Agの他に、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等を主成分とする金属で構成されていてもよい。
【0026】
配線材21は、例えば、径方向断面が略真円形状の線材であって、Cu、Al等の金属を主成分として構成される。配線材21は、Ag、ニッケル(Ni)、または半田として使用される低融点金属などを主成分とするめっき層を有していてもよい。例えば、配線材21の直径は、例えば、0.2mm~0.4mmである。配線材21は、太陽電池セル20の第1面および第2面に対して、複数取り付けられることが好ましい。なお、本実施形態では、12本の配線材21を設けているが、配線材21の本数はこれに限定されず、12本未満であってもよいし、13本以上でもよい。また、配線材21の断面形状は略真円形状に限定されず、略長方形形状でもよい。配線材21の断面形状が略長方形形状を有する場合、当該配線材21の厚みは、例えば0.2~0.3mmであり、幅は、例えば0.6mm~2.0mmである。
【0027】
配線材21は、太陽電池ストリング10の長手方向に沿って配置され、隣り合う太陽電池セル20のうち、一方の太陽電池セル20の一方側端部から、他方の太陽電池セル20の他方側端部にわたって設けられている。配線材21の長さは、太陽電池セル20の2枚分の長さとセル間距離とを足した長さよりもやや短い。配線材21は、隣り合う太陽電池セル20の間でモジュールの厚み方向に曲がり、一方の太陽電池セル20の第1面と他方の太陽電池セル20の第2面とに、後述する接着剤22を用いてそれぞれ接合される。そして、配線材21は太陽電池セル20の集電極と電気的に接続される。
図2においては、12本のバスバー電極24に、12本の配線材21が接続される場合を図示している。
【0028】
接着剤22は、太陽電池セル20と配線材21との間に配置される。換言すると、配線材21は、接着剤22を介して太陽電池セル20に接合される。接着剤22は、熱硬化性接着剤であることが好ましい。熱硬化性接着剤としては、例えば、ユリア系接着剤、レゾルシノール系接着剤、メラミン系接着剤、フェノール系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリイミド系接着剤、アクリル系接着剤等が例示できる。
【0029】
接着剤22の硬化温度は、220℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。また、硬化前の接着剤22は、液状である。ここで、「液状」とは、30℃において流動性を有する状態であって、ペースト状と呼ばれる状態を含む意図である。
【0030】
ここで、硬化前の接着剤22の粘度は、50Pa・s以上であり、75Pa・s以上であることが好ましく、100Pa・s以上であることがより好ましく、125Pa・s以上であることがさらに好ましい。この場合、後述する仮固定工程において、容易に配線材21を太陽電池セル20上に仮固定できる。なお、上記の粘度は、JIS K7117-2:1999「プラスチック-液状、乳濁状又は分散状の樹脂-回転円時計による定せん断速度での粘度の測定方法」に準拠し、30℃、せん断速度0.01/秒の条件下において、コーンプレート型回転粘度計(治具半径24mm、角度1.34°)(東機産業(株)製のTV25型粘度計)を用いて測定した値である。
【0031】
接着剤22には、Ag粒子等の導電性フィラーが含有されていてもよいが、製造コスト削減や遮光ロス低減等の観点から、導電性フィラーを含有しない非導電性の熱硬化性接着剤を用いることが好ましい。非導電性の接着剤22を用いる場合、配線材21または太陽電池セル20の集電極のいずれか一方、または双方を凹凸化させ、配線材21と太陽電池セル20の集電極との間から絶縁性の接着剤22を排除することで、太陽電池セル20と配線材21とを電気的に接続できる。
【0032】
次に、
図3~
図7を参照しながら、本実施形態に係る太陽電池ストリング10の製造方法について説明する。
図3は、本実施形態に係る太陽電池ストリング10の製造方法を示すフローチャートである。
【0033】
図3に示すように、本実施形態の製造方法は、太陽電池セル準備工程S1、接着剤塗布工程S2、仮固定工程S3、搬送工程S4、および圧着工程S5を含む。
【0034】
太陽電池セル準備工程S1は、太陽電池ストリング10を形成する複数の太陽電池セル20を準備する工程である。接着剤塗布工程S2は、配線材21の配置位置に沿うように、太陽電池セル20の第1面および第2面に、接着剤22(
図1参照)を塗布する工程である。
【0035】
接着剤塗布工程S2においては、接着剤22を太陽電池セル20の第1面および第2面に交互に塗布してもよいし、第1面および第2面に同時に塗布してもよい。また、太陽電池セル20の第1面および第2面に塗布される接着剤22のパターンは、第1面と第2面とで同一でもよいし、互いに異なっていてもよい。塗布方法はスクリーン印刷、ディスペンス、ダイコートなどを用いてもよいが、その他の方法を用いてもよい。第1面および第2面に交互に塗布する際は、片面塗布後に反転して印刷部に該当する箇所に溝の入った台を用いてもよい。また、太陽電池セル20の第1面のうち、後述する仮固定工程S3において、配線材引出部112(
図4D参照)と接触する領域に塗布される接着剤22の量は、他の領域に塗布される接着剤22の量よりも少なくてもよい。これにより、配線材引出部112が接着剤22により汚染されることを抑制できる。
【0036】
以下、
図4を参照しながら、仮固定工程S3について詳説する。
図4は、仮固定工程S3を示す図であり、太陽電池セル20を第1面側から見た平面図である。仮固定工程S3は、太陽電池セル20の第1面および第2面に、接着剤22(
図1参照)を介して配線材21を仮固定する工程である。なお、本明細書において、「仮固定」とは、太陽電池セル20と、配線材21とが接着剤22を介して合わせられたままの状態で、かつ太陽電池セル20と配線材21とが接着剤22の粘着力により、互いに離れることを許容する程度に固定され、まだ加熱処理が行われていない状態を意味する。
【0037】
まず、
図4Aに示すように、ボビン等に配線材21が巻かれた配線材巻回部111から配線材引出部112により配線材21を所定の長さだけ引き出す。この時、配線材引出部112により、配線材21に配線材21の長さ方向の張力を加えることで、配線材21の湾曲が矯正され、配線材21の直進性を向上させることができる。次に、配線材引出部112により引き出された配線材21を、搬送機能を有するステージ(図示せず)上に配置し、配線材固定部113により配線材21をステージ上に固定する。
【0038】
なお、配線材固定部113の構成は、配線材21をステージ上に固定可能であれば特に限定されない。配線材固定部113は、例えば、ステージ上に設けられた外気を吸引する吸引孔であってもよい。
【0039】
次に
図4Bに示すように、配線材引出部112を配線材21から一旦離し、配線材引出部112を所定の位置に移動させ、配線材21を保持する。その後、配線材切断部114により、配線材21が所定の長さとなるように配線材21を切断する。これにより、所定の長さを有する配線材21が、ステージ上に固定された状態で配置される。
【0040】
次に、
図4Cに示すように、ステージ上に固定されている配線材21上に太陽電池セル20Aを配置する。この時、太陽電池セル20Aの第2面に塗布された接着剤22と、ステージ上に固定された配線材21とが重なるように配置する。これにより、太陽電池セル20Aの第2面に形成された集電極と配線材21とが、接着剤22を介して仮固定される。
【0041】
また、太陽電池セル20Aを配線材21上に配置する際、太陽電池セル20Aの第1面側から太陽電池セル20Aを押し付け機構115(
図5参照)で押圧し、太陽電池セル20Aの第2面を配線材21に押し付けてもよい。この際、太陽電池セル20Aの第1面に塗布された接着剤22が押し付け機構115に付着しないように、押し付け機構115の太陽電池セル20Aの第1面と接する面には、押し付け時に接着剤22と対向する位置に溝116が形成されていてもよい。
図5に示すように、本実施形態では、押し付け機構115の太陽電池セル20Aと接する面には、配線材21の長さ方向に沿って、均一な幅を有する溝116が形成されている。これにより、太陽電池セル20Aの第1面に塗布された接着剤22が押し付け機構115に付着することが抑制され、配線材21を太陽電池セル20Aの第2面により強固に仮固定できる。その結果、配線材21の位置ずれ、および脱落を抑制できる。また、押し付け機構115の太陽電池セル20Aと接する部分の硬度は、D40以下であることが好ましい。上記の硬度は、JIS K6253-3:2012に記載された方法に準拠して、タイプDデュロメータを用いて測定した値である。
【0042】
次に、
図4Dに示すように、太陽電池セル20Aを1セル分だけ
図4Dの左方向移動させた後、配線材巻回部111から、配線材引出部112により配線材21を所定の長さだけ引き出し、配線材引出部112を所定の位置まで移動させる。そして、配線材固定部113により配線材21をステージに固定させた後、配線材21を太陽電池セル20Aの第1面側に押し付ける。この際、配線材21を太陽電池セル20Aに押し付けるのは配線材引出部112を用いてもよいし、太陽電池セル20Aの第2面と配線材21とを押し付ける際に、押し付け機構115の先端の硬度をD40以上としたものを先端と配線材21の位置が合うようにした機構を用いてもよいし、平板状の機構を用いてもよい。これにより、太陽電池セル20Aの第1面に形成された集電極と配線材21とが、接着剤22を介して仮固定される。
【0043】
配線材21を太陽電池セル20Aの第1面に押し付ける際の圧力は、10Pa以上であることが好ましい。この場合、配線材21が太陽電池セル20Aの第1面により強固に仮固定され、配線材21の位置ずれ、および脱落を抑制できる。また、配線材21を太陽電池セル20Aの第1面に押し付ける際、配線材引出部112は、配線材21に配線材21の長さ方向の張力を加えながら太陽電池セル20Aの第1面側を押し付けてもよい。これにより、配線材21の湾曲がさらに矯正され、配線材21の直進性をより向上させることができる。配線材21を太陽電池セル20Aの第1面に仮固定した後、配線材21を配線材引出部112から離す。
【0044】
次に、
図4Eに示すように、配線材引出部112を配線材21から一旦離し、配線材引出部112を所定の位置に移動させ、配線材21を保持する。その後、配線材切断部114により、配線材21が所定の長さとなるように配線材21を切断する。
【0045】
そして、
図4Fに示すように、ステージ上に固定されている配線材21のうち、太陽電池セル20Aと仮固定されていない領域に、他の太陽電池セル20Bを配置する。この時、太陽電池セル20Bの第2面に塗布された接着剤22と、ステージ上に固定された配線材21とが重なるように配置する。これにより、太陽電池セル20Bの第2面に形成された集電極と配線材21とが、接着剤22を介して仮固定される。
【0046】
なお、太陽電池セル20Bを配線材21上に配置する前後に、配線材21の位置を調整してもよい。配線材21の位置を調整する方法としては、例えば、
図6に示すように、配線材21の適正位置に切り欠け118が形成され、表面が樹脂製の部材を含む位置調整機構117を用意し、位置調整機構117を配線材21の長さ方向にスライドさせる方法がある。これにより、ステージ上の配線材21が適正位置に案内される。
【0047】
また、太陽電池セル20Bの第2面に形成された集電極と配線材21とを仮固定した後、太陽電池セル20Bが、移動前の太陽電池セル20Aの位置に来るように、ステージを
図4Dの左方向へ移動させる際に、ステージの移動に合わせて、配線材21の位置を調整してもよい。
【0048】
そして、上記の
図4D~
図4Fに示す工程を所定の回数繰り返し実施することで、複数の太陽電池セル20が仮固定された仮固定体30(
図7参照)を作製できる。また、上記の通り、仮固定工程S3において、太陽電池セル20、配線材21、および接着剤22は加熱されず、50℃以下の温度、好ましくは30℃以下の温度において処理される。これにより、接着剤22を構成する樹脂等の飛散が生じず、太陽電池ストリング10の製造装置が汚れることを抑制できる。また、動作不具合等により製造装置に接着剤22が付着してしまった場合であっても、加熱処理を行っていないため、接着剤22が製造装置に固着せず、接着剤22を容易に拭き取ることができる。
【0049】
搬送工程S4は、仮固定工程S3で作製された仮固定体30を、圧着工程S5で用いる圧着装置120(
図7参照)へ搬送する工程である。本実施形態では、コンベア装置を用いて仮固定体30の搬送を行う。また、搬送工程S4においては、仮固定体30を加圧および加熱せず、50℃以下の温度、好ましくは30℃以下の温度において搬送する。これにより、仮固定工程S3と同様に、接着剤22を構成する樹脂等の飛散が生じず、太陽電池ストリング10の製造装置が汚れることを抑制できる。また、製造装置に接着剤22が付着してしまった場合であっても、加熱処理を行っていないため、接着剤22が製造装置に固着せず、接着剤22を容易に拭き取ることができる。搬送工程S4において、仮固定体30は、配線材21の長さ方向に搬送されることが好ましい。これにより、配線材21の位置ずれ、および脱落を抑制できる。
【0050】
以下、
図7および
図8を参照しながら、圧着工程S5について詳説する、
図7は、圧着工程S5に用いる圧着装置120を模式的に示す側面図であり、
図8は、圧着装置120を模式図に示す斜視図である。圧着工程S5は、仮固定体30の接着剤22(
図1参照)を完全に硬化させることにより、太陽電池セル20の集電極と、配線材21とを接着させ、太陽電池ストリング10を製造する工程である。圧着工程S5は、複数の仮固定体30を同時に圧着してもよく、その場合、搬送工程S4では、複数のセルストリング列を並行に搬送してもよい。
図8には、4つの仮固定体30が同時に圧着される場合が図示されている。
【0051】
図7および
図8に示すように、圧着工程S5に用いられる圧着装置120は、太陽電池セル20の第1面側に設けられる上側押圧部材121と、太陽電池セル20の第2面側に設けられる下側押圧部材122とを含む。また、圧着装置120は、太陽電池セル20の第1面側に設けられる上側シート配置機構123と、太陽電池セル20の第2面側に設けられる下側シート配置機構124をさらに含む。なお、
図7および
図8においては、それぞれの構成が分かりやすいように、上側押圧部材121と下側押圧部材122の間隔を実際よりも大きく離して図示してある。また、
図8では、それぞれの構成が分かりやすいように、後述するシートロール125,126,128,129の図示を省略している。
【0052】
上側押圧部材121は、ヒータを内蔵し、上下に移動する機構を有する。上側押圧部材121を所定の圧力で押圧し、配線材21を太陽電池セル20に押し付ける。そして、上側押圧部材121の温度を接着剤22の硬化温度以上の温度に加熱することで、接着剤22が完全に硬化され、太陽電池セル20と配線材21とが接着される。
【0053】
上側押圧部材121を用いて配線材21を太陽電池セル20に押し付ける際の圧力は、例えば、2000Pa以上、50000Pa以下である。また、押圧時の上側押圧部材121の温度は、例えば、150℃以上、260℃以下である。
【0054】
下側押圧部材122は、上側押圧部材121と同様に、上下に移動する機構を有していてもよい。下側押圧部材122は、ヒータを内蔵していてもよいが、本実施形態では、ヒータを内蔵していない。なお、下側押圧部材122にヒータを内蔵する場合、押圧時の下側押圧部材122の温度は、押圧時の上側押圧部材121の温度よりも低いことが好ましい。
【0055】
また、本実施形態では、上側押圧部材121および下側押圧部材122は、それぞれ1つの部材で構成されているが、複数の部材で構成されていてもよい。例えば、上側押圧部材121および下側押圧部材122は、仮固定体30を構成する太陽電池セル20の個数と同じ数の部材でそれぞれ構成されてもよい。
【0056】
上側シート配置機構123は、適度な滑り性を有する第1シート材140を、上側押圧部材121と太陽電池セル20の第1面との間に配置する機構である。上側シート配置機構123は2つのシートロール125,126を含む。2つのシートロール125,126は、上側押圧部材121を覆うように第1シート材140を配置しながら、第1シート材140の巻き取りを繰り返す。
【0057】
上側シート配置機構123には、第1シート材140の表面に付着した汚れを除去する機構が設けられていることが好ましい。本実施形態では、シートロール126の外側にブラシ127が設けられている。これにより、シートロール126により第1シート材140が巻き取られた際、第1シート材140の表面にブラシ127が接触し、第1シート材140表面の汚れが除去される。
【0058】
下側シート配置機構124は、適度な滑り性を有する第1シート材140を下側押圧部材122と太陽電池セル20の第2面との間に配置する機構である。下側シート配置機構124は、2つのシートロール128,129を含む。2つのシートロール128,129は、下側押圧部材122を覆うように第1シート材140を配置しながら、第1シート材140の巻き取りを繰り返す。
【0059】
下側シート配置機構124には、上側シート配置機構123と同様に、第1シート材140の表面に付着した汚れを除去する機構が設けられていることが好ましい。本実施形態では、シートロール129の外側に、第1シート材140表面の汚れを除去するブラシ130が設けられている。これにより、シートロール129により第1シート材140が巻き取られた際、第1シート材140の表面にブラシ130が接触し、第1シート材140表面の汚れが除去される。
【0060】
ここで、第1シート材140の動摩擦係数は、0.3以下であり、硬度はD40以上である。仮固定体30の上下を第1シート材140で挟んだ状態で圧着することで、押圧時に第1シート材140と配線材21が適度に滑り、配線材21の伸びが緩和される。これにより、配線材21による太陽電池セル20への応力が緩和され、太陽電池セル20の割れの発生が抑制される。なお、上記の動摩擦係数は、JIS K7125:1999「プラスチック-フィルム及びシート-摩擦係数試験方法」に記載された方法に準拠して測定した値である。また、上記の硬度は、JIS K6253-3:2012に記載された方法に準拠して、タイプDデュロメータを用いて測定した値である。
【0061】
第1シート材140の動摩擦係数は、0.25以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましく、0.15以下であることがさらに好ましい。この場合、圧着時の配線材21の伸びが緩和され、太陽電池セル20の割れの発生をより抑制できる。また、第1シート材140の硬度は、D45以上であることが好ましく、D50以上であることがより好ましい。
【0062】
また、第1シート材140の熱膨張係数は5×10-5/K以下であることが好ましく、4×10-5/K以下であることがとり好ましく、3×10-5/K以下であることがさらに好ましい。この場合、圧着時の配線材21の伸びがより緩和され、太陽電池セル20の割れの発生をより抑制できる。
【0063】
第1シート材140としては、例えば、フッ素樹脂コートしたガラスクロスが挙げられる。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が挙げられる。
【0064】
第1シート材140の厚みは、0.05mm以上、2.0mm以下であることが好ましく、0.1mm以上、1.0mm以下であることがより好ましい。この場合、圧着時の配線材21の伸びがより緩和され、太陽電池セル20の割れの発生をより抑制できる。
【0065】
図7および
図8に示すように、下側シート配置機構124と下側押圧部材122との間には、クッション性を有する第2シート材150が配置されている。第2シート材150を配置することで、第2シート材150が太陽電池セル20および配線材21の凹凸の影響を吸収する。これにより、押圧時の圧力の均一化が図られ、配線材21の位置ずれ、および太陽電池セル20の割れが抑制される。第2シート材150の硬度は、D40未満であることが好ましく、D35以下であることがより好ましく、D30以下であることがさらに好ましい。また、第2シート材150の熱膨張係数は特に限定されないが、例えば、第1シート材140の熱膨張係数よりも大きくてもよい。
【0066】
第2シート材150としては、例えば、シリコーンシートまたはシリコーンスポンジが挙げられる。
【0067】
第2シート材150の厚みは、0.01mm以上、20mm以下であることが好ましく、0.1mm以上、10mm以下であることがより好ましい。この場合、押圧時の圧力の均一化がより図られ、配線材21の位置ずれ、および太陽電池セル20の割れの抑制効果が顕著である。
【0068】
なお、本実施形態では、第2シート材150は、下側シート配置機構124の第1シート材140と下側押圧部材122との間に配置されているが、下側シート配置機構124に含まれていてもよい。つまり、下側シート配置機構124は、第1シート材140と第2シート材150とを積層したシート材を、下側押圧部材122と太陽電池セル20の第2面との間に配置する機構であってもよい。第2シート材150が下側シート配置機構124に含まれることで、第2シート材150と下側押圧部材122との間に隙間が生じる。これにより、第2シート材150と下側押圧部材122との接触を押圧時のみに限定でき、第2シート材150が熱により劣化することを抑制できる。また、下側シート配置機構124と下側押圧部材122との間に他のシート配置機構を設け、当該シート配置機構を用いて下側シート配置機構124と下側押圧部材122との間に第2シート材150を配置してもよい。この場合、第2シート材150と、第1シート材140および下側押圧部材122との間に隙間が生じる。
【0069】
圧着装置120は、圧着後に、第1シート材140と太陽電池ストリング10(
図1参照)との張り付きを防止する機構を含むことが好ましい。張り付きを防止する機構としては、例えば、上側シート配置機構123または下側シート配置機構124に、一時的に第1シート材140を弛める機能を設けることにより構成してもよい。また、例えば、上側シート配置機構123または下側シート配置機構124に、上下に移動可能で、圧着後に第1シート材140を突き上げるピンを設けることにより構成してもよい。
【0070】
また、圧着装置120は、圧着前後において、仮固定体30および太陽電池ストリング10の位置を検出する機構を有していてもよい。これにより、圧着前後での位置ずれ量を特定できる。仮固定体30および太陽電池ストリング10の位置を検出する方法としては、例えば、光学センサを用いて、仮固定体30および太陽電池ストリング10に設けられたアライメントマークの位置を検知する方法がある。また、圧着装置120は、圧着後に太陽電池ストリング10の位置を調整する機構を有していてもよく、アーム等を用いて太陽電池ストリング10を太陽電池ストリング10の長手方向とは別の方向に移動させる機構を有していてもよい。また、下側シート配置機構124は、太陽電池ストリング10の搬送機能を有していてもよい。
【0071】
上記の太陽電池ストリング10の製造方法で作製した太陽電池ストリング10を、第1保護部材11、第2保護部材12、および封止層13を構成する樹脂シートを用いてラミネートすることにより、太陽電池モジュール1を製造できる。ラミネート装置では、ヒータ上に、第1保護部材11、封止層13を構成する第1の樹脂シート、太陽電池ストリング10、封止層13を構成する第2の樹脂シート、第2保護部材12が順に積層される。この積層体は、例えば、真空状態で封止層13を構成する樹脂シートが軟化する温度に加熱される。その後、大気圧下でヒータ側に各構成部材を押し付けながら加熱を継続して各部材をラミネートすることにより、太陽電池モジュール1が得られる。
【0072】
以上のように、本実施形態の太陽電池ストリング10の製造方法は、太陽電池セル準備工程S1、接着剤塗布工程S2、仮固定工程S3、搬送工程S4、および圧着工程S5と、を備える。仮固定工程S3は、接着剤22を介して太陽電池セル20の集電極と配線材21とを加熱せずに仮固定する工程である。また、搬送工程S4は、仮固定工程S3後、接着剤22の粘着力によって、配線材21と集電極とが仮固定された状態を維持したまま、配線材21を加圧および加熱せずに、圧着装置120へ移動させる工程である。また、圧着工程S5は、圧着装置120により接着剤22を接着剤22の硬化温度以上の温度で加熱し、接着剤22を硬化させることにより、太陽電池セル20の集電極と、配線材21とを接着させる工程である。
【0073】
上記のように、本実施形態の太陽電池ストリング10の製造方法は、仮固定工程S3および搬送工程S4において、加熱処理を行わず、接着剤22の粘着力によって、配線材21と集電極とが仮固定された状態を維持したまま処理を行う。そのため、接着剤22を構成する樹脂等の飛散が生じず、太陽電池ストリング10の製造装置が汚れることを抑制できる。また、追加の加熱工程が不要であるため、製造コストを削減することも可能である。
【0074】
以下、
図9を参照しながら、第2実施形態の太陽電池モジュール1について説明する。
図9は、仮固定工程S3を示す図であり、太陽電池セル20を第1面側から見た平面図である。第1実施形態では、仮固定工程S3において、第1面および第2面に接着剤22が塗布された太陽電池セル20を順に配置することで仮固定体30を作製した。一方、第2実施形態では、第1面および第2面に接着剤22が塗布され、かつ少なくとも第1面に配線材21が仮固定された太陽電池セル20を順に配置することで仮固定体30を作製する。以下、第2実施形態の太陽電池モジュール1の詳細を説明する。
【0075】
まず、
図9Aに示すように、第1面および第2面に接着剤22が塗布され、かつ第1面および第2面に接着剤22を介して配線材21が仮固定されている太陽電池セル20Xを作製する。なお、太陽電池セル20Xは、第1実施形態と同様の製造方法で作製できる。また、
図9Aに示すように、第1面および第2面に接着剤22が塗布され、かつ第1面のみに接着剤22を介して配線材21が仮固定されている太陽電池セル20Yを作製する。なお、太陽電池セル20Yは、例えば、第1実施形態の
図4A~
図4Cに示す工程を経て仮固定体30を作製し、太陽電池セル20X,20Yおよび配線材21を保持しながら当該仮固定体30を裏返すことで作製できる。この際、配線材21の長さ方向と垂直で太陽電池セル20X,20Yの長辺と平行な方向を回転軸とし、慣性と遠心力が配線材21をセル側に押し付ける方向が好適であり、配線材21の一部を支えながら裏返しても良い。また、太陽電池セル20Yは、例えば、太陽電池セル20Yの第2面側に塗布された接着剤22の位置に隙間を設けたステージ上に太陽電池セル20Yを配置し、第1実施形態の
図4D、
図4Eに示す工程を経て作製できる。
【0076】
次に、
図9Bに示すように、太陽電池セル20Xをステージ(図示せず)上に配置する。そして、配線材固定部113により、太陽電池セル20Xの第1面側に仮固定されている配線材21のうち、太陽電池セル20Xと仮固定されていない領域の一部をステージに固定する。この時、第1実施形態と同様に、配線材21が適正位置に配置されるように調整してもよい。
【0077】
次に、
図9Cに示すように、太陽電池セル20Xに仮固定されている配線材21のうち、太陽電池セル20Xと仮固定されていない領域に、太陽電池セル20Yを配置する。この時、太陽電池セル20Yの第2面に塗布された接着剤22と、ステージ上に固定された配線材21とが重なるように配置する。これにより、太陽電池セル20Yの第2面に形成された集電極と配線材21とが、接着剤22を介して仮固定される。なお、太陽電池セル20Yを配置した後、上記の
図6に示す場合と同様に、配線材21が適正位置に配置されるように調整してもよい。
【0078】
そして、太陽電池セル20Yの第2面に形成された集電極と配線材21とを仮固定させた後、太陽電池セル20Yが移動前の太陽電池セル20Xの位置に来るように、ステージを
図9Cの左方向へ移動させる。この際、ステージの移動に合わせて、配線材21の位置を調整してもよい。そして、上記の
図9B、
図9Cに示す工程を所定の回数繰り返し実施することで、複数の太陽電池セル20が仮固定された仮固定体30を作製できる。
【0079】
なお、第2実施形態においては、太陽電池セル20X,20Yと配線材21の表裏の位置関係が逆のものを用いてもよい。この場合、太陽電池セル20X,20Yは、
図4A~
図4Dまでの工程を経て作製可能であるが、仮固定体30の作製時に、表裏の位置関係が
図4A~
図4Dに示す場合と逆の太陽電池セル20Xの上に配置される配線材21を持ち上げる工程と、表裏の位置関係が
図4A~
図4Dに示す場合と逆の太陽電池セル20Yを持ち上げて移動させる工程とが必要になる。配線材21のみ持ち上げる工程については配線材引出部112および配線材固定部113と同じ仕組みを用いてもよいし、滑り性の高い平板状の物体を配線材21の下に滑らせて持ち上げる機構を用いてもよい。また、太陽電池セル20Yと配線材21の表裏の位置関係が逆のものを持ち上げて移動させる工程については滑り性の高い平板状の物体を配線材21の下に滑らせて持ち上げる機構を用いてもよいし、ワーク等を持ち上げて一定距離移動させる送り機構を用いてもよい。
【0080】
以下、
図10を参照しながら、第3実施形態の太陽電池モジュール1について説明する。
図10は、仮固定工程S3を示す図であり、太陽電池セル20を第1面側から見た平面図である。第3実施形態では、接着剤塗布工程S2において、太陽電池セル20の第1面側にのみ接着剤22を塗布する。つまり、第3実施形態の太陽電池モジュール1は、接着剤塗布工程S2において、太陽電池セル20の第2面側に接着剤22を塗布しない点で、第1実施形態および第2実施形態の太陽電池モジュール1と異なる。
【0081】
図10Aに示すように、第1面のみに接着剤22が塗布され、かつ第1面のみに接着剤22を介して配線材21が仮固定されている太陽電池セル20Zを作製する。なお、太陽電池セル20Zは、第1実施形態と同様の製造方法で作製できる。
【0082】
次に、
図10Bに示すように、太陽電池セル20Zをステージ(図示せず)上に配置する。そして、太陽電池セル20Zに仮固定されている配線材21のうち、太陽電池セル20Zと仮固定されていない領域の一部に接着剤22を塗布する。なお、接着剤22を塗布する方法としては、例えば、ディスペンス、シートを用いた転写、ローラーや刷毛を用いた印刷などが挙げられる。また、
図10Bにおいて、接着剤22が塗布される領域をハッチングして示している。
【0083】
そして、
図10Cに示すように、太陽電池セル20Zの第1面側に仮固定されている配線材21のうち、太陽電池セル20Zと仮固定されておらず、かつ接着剤22が塗布された領域に、別の太陽電池セル20Zを配置する。これにより、太陽電池セル20Zの第2面に形成された集電極と配線材21とが、接着剤22を介して仮固定される。そして、ステージを
図10Cの左方向へ移動させながら、上記の
図10B、
図10Cに示す工程を所定の回数繰り返し実施することで、複数の太陽電池セル20が仮固定された仮固定体30を作製できる。この際、接着剤22の塗布時に配線材21をステージに固定していてもよい。また、接着剤22を塗布した後や別の20Z配置後に、配線材21の位置を調整してもよい。
【0084】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0085】
1 太陽電池モジュール、10 太陽電池ストリング、11 第1保護部材、12 第2保護部材、13 封止層、13A 第1封止層、13B 第2封止層、20,20A,20B,20X,20Y,20Z 太陽電池セル、21 配線材、22 接着剤、23 フィンガー電極、24 バスバー電極、30 仮固定体、111 配線材巻回部、112 配線材引出部、113 配線材固定部、114 配線材切断部、115 押し付け機構、116 溝、117 位置調整機構、118 切り欠け、120 圧着装置、121 上側押圧部材、122 下側押圧部材、123 上側シート配置機構、124 下側シート配置機構、125,126,128,129 シートロール、127,130 ブラシ、140 第1シート材、150 第2シート材