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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122408
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】障害事象推定装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/40 20240101AFI20240902BHJP
【FI】
G06Q50/30
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029933
(22)【出願日】2023-02-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 「鉄道業界向けAIさくらさん活用提案」のプレゼン資料。( 令和4年12月7日 新幹線メンテナンス東海株式会社(JR東海東京駅構内)にて特許を受ける権利を有する者がプレゼン資料として使用。 )
(71)【出願人】
【識別番号】500388176
【氏名又は名称】株式会社ティファナ ドットコム
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC41
5L050CC41
(57)【要約】
【課題】 施設の利用者に関する障害事象の発生を推定することができる障害事象推定装置、及びプログラムを提供する。
【解決手段】
1又は2以上の施設における利用者に関する障害事象の発生を推定する障害事象推定装置が、所定期間における利用者の動向に依存する情報及び/又は気象に依存する気象情報を含む施設環境情報と、障害が発生した施設における場所及び日時を含む障害情報を教師データとして機械学習により生成した推定モデルを用いて、指定された期間における日時の各々について障害事象発生率を推定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は二以上の施設における利用者に関する障害事象の発生を推定する障害事象推定装置であって、
前記施設の所定期間における前記利用者の動向に依存する動向情報、及び/又は、前記施設の気象に依存する気象情報、を含む施設環境情報と、前記障害事象が発生した前記施設における場所及び日時を含む障害事象情報と、を教師データとして、指定された日時における前記施設の障害事象発生率を推定する推定モデルを機械学習により生成する機械学習部と、
前記推定モデルを用いて、指定された期間における前記日時の各々について前記施設の障害事象発生率を推定する推定部と、
前記推定した障害事象発生率に基づいて、前記障害事象の発生が推定される前記施設及び/又は前記施設における場所を表示する、障害事象推定表示部と、
を備えることを特徴とする、障害事象推定装置。
【請求項2】
前記施設は鉄道駅であり、
前記障害事象推定表示部は、前記障害事象の発生が推定される前記鉄道駅を路線図上に表示する
ことを特徴とする、請求項1記載の障害事象推定装置。
【請求項3】
前記障害事象推定表示部は、さらに、前記障害事象の発生が推定される場所を前記鉄道駅の構内図上に表示する
ことを特徴とする、請求項2記載の障害事象推定装置。
【請求項4】
前記施設環境情報は、前記施設の前記所定期間における混雑度合いを示す情報であることを特徴とする、請求項1に記載の障害事象推定装置。
【請求項5】
前記施設環境情報は、前記所定の期間における、前記施設周辺の季節を示す情報、及び/又は、天気を示す情報、及び/又は、気象を示す情報を含む
ことを特徴とする、請求項1記載の障害事象推定装置。
【請求項6】
前記施設環境情報は、前記施設の所定位置における照度を示す情報を含む
ことを特徴とする、請求項1記載の障害事象推定装置。
【請求項7】
前記障害事象情報は、さらに、前記障害事象の種別を示す情報を含み、
前記障害事象推定表示部は、前記発生が推定される障害事象を前記種別とともに表示する
ことを特徴とする、請求項1記載の障害事象推定装置。
【請求項8】
前記障害事象推定装置が、さらに、
前記推定した障害事象発生率に基づいて、前記障害事象に対応する人員の配置を決定する対応人員決定部を備える
ことを特徴とする、請求項1記載の障害事象推定装置。
【請求項9】
コンピュータを請求項1乃至8の何れか一つに記載の障害事象推定装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設の利用者に関する障害事象の発生を推定することができる障害事象推定装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
施設や区域における混雑を情報処理技術によって予測する装置として、例えば特許文献1の混雑予測装置が知られている。特許文献1の技術は、対象エリアにおける人流に係る情報と、対象エリア近傍の施設における人流に係る情報に基づいて、対象エリアの人流を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-034358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
施設等の混雑は、施設内外に関する案内員や事故防止のための警備員等、人員によって対処することが求められる。従来技術は、混雑を予想することで必要とされる人員も事前に予想することができ、有用である。
【0005】
一方で、人員による対応が求められる事象としては、施設等の混雑の他、利用者間のトラブルや人身事故その他の利用者に関する障害事象が存在する。特に、鉄道その他の公共交通機関では安全・安定輸送の確保のため、人身事故や駅舎内の事故その他の障害に対して迅速な対処を行うための人員を確保することが求められており、利用者に関する障害事象の発生を推定することが求められていた。
【0006】
この発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、施設の利用者に関する障害事象の発生を推定することができる障害事象推定装置、及びプログラムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、請求項1の発明に係る障害事象推定装置は、一又は二以上の施設における利用者に関する障害事象の発生を推定する障害事象推定装置であって、前記施設の所定期間における前記利用者の動向に依存する動向情報、及び/又は、前記施設の気象に依存する気象情報、を含む施設環境情報と、前記障害事象が発生した前記施設における場所及び日時を含む障害事象情報と、を教師データとして、指定された日時における前記施設の障害事象発生率を推定する推定モデルを機械学習により生成する機械学習部と、前記推定モデルを用いて、指定された期間における前記日時の各々について前記施設の障害事象発生率を推定する推定部と、前記推定した障害事象発生率に基づいて、前記障害事象の発生が推定される前記施設及び/又は前記施設における場所を表示する、障害事象推定表示部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記施設は鉄道駅であり、前記障害事象推定表示部は、前記障害事象の発生が推定される前記鉄道駅を路線図上に表示することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記障害事象推定表示部は、さらに、前記障害事象の発生が推定される場所を前記鉄道駅の構内図上に表示することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、前記施設環境情報は、前記施設の前記所定期間における混雑度合いを示す情報であることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、前記施設環境情報は、前記所定の期間における、前記施設周辺の季節を示す情報、及び/又は、天気を示す情報、及び/又は、気象を示す情報を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1の発明において、前記施設環境情報は、前記施設の所定位置における照度を示す情報を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1の発明において、前記障害事象情報は、さらに、前記障害事象の種別を示す情報を含み、前記障害事象推定表示部は、前記発生が推定される障害事象を前記種別とともに表示することを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1の発明において、前記障害事象推定装置が、さらに、前記推定した障害事象発生率に基づいて、前記障害事象に対応する人員の配置を決定する対応人員決定部を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明は、コンピュータ読み取り可能なプログラムであって、コンピュータを請求項1乃至8の何れか一つに記載の障害事象推定装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構成によれば、所定の期間における、施設利用者の動向に依存する動向情報及び/又は施設の気象に依存する気象情報を含む施設環境情報と、障害事象が発生した施設における場所及び日時を含む障害事象情報に基づいて推定モデルを機械学習により生成するので、当該生成した推定モデルを用いて、指定した期間における施設の利用者に関する障害事象の発生を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る障害事象推定装置の構成を概念的に示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る推定モデル生成の流れを示すフロー図である。
図3】本発明の実施の形態に係る推定モデルの構成を概念的に示すブロック図である。
図4】本発明の実施の形態に係る障害事象推定の流れを示すフロー図である。
図5】本発明の実施の形態に係る路線図の構成を模式的に示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係る構内図の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る障害事象推定装置の構成を概念的に示す図である。図1で示すように、本実施の形態における障害事象推定装置1は、機械学習部11と、推定部12と、障害事象推定表示部13と、対応人員決定部14と、を備えており、1又は2以上の施設における利用者に関する障害事象を推定する装置である。本実施形態において、1又は2以上の施設は具体的には鉄道路線における鉄道駅であり、プラットホーム、駅舎その他の建造物により構成される施設である。
【0019】
また、本実施の形態における障害事象は、施設の利用者に関する障害事象である。前述のとおり、本実施の形態における施設は鉄道駅であり、本実施の形態における障害事象は、通路や階段等の動線における転倒、利用者間又は利用者と従業員間のトラブル、路線内への利用者の立ち入りや落下、列車との接触等の人身事故その他の障害事象が含まれる。
【0020】
本実施の形態における障害事象推定装置1は、利用者端末2とネットワーク3を介して通信可能に接続されている。障害事象推定装置1は、利用者端末2をクライアントとするサーバとして機能する装置である。本実施の形態において、障害事象推定装置1は周知のサーバ用コンピュータを用いて構成されており、サーバ用コンピュータのHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)その他のストレージ装置に予めサーバ用コンピュータを障害事象推定装置1として機能させるプログラムが記録されており、当該プログラムをサーバ用コンピュータのメモリにロードしてCPU(中央演算装置)が実行することにより、サーバ用コンピュータを障害事象推定装置1として機能させる。
【0021】
機械学習部11は、施設の所定期間における前記利用者の動向に依存する動向情報、及び/又は、前記施設の気象に依存する気象情報、を含む施設環境情報と、前記障害事象が発生した前記施設における場所及び日時を含む障害事象情報と、を教師データとして、指定された日時における前記施設の障害事象発生率を推定する推定モデルを機械学習により生成する。本実施の形態における推定モデルは、後述するように推定プログラムと学習済みパラメータから構成されており、機械学習部11が生成した推定モデルは障害事象推定装置1のストレージ装置(図示しない)の所定の領域に記録される。
【0022】
推定部12は、前述の機械学習部11が生成した推定モデルを用いて、指定された期間における前記日時の各々について前記施設の障害事象発生率を推定する。
【0023】
障害事象推定表示部13は、前述の推定部12が推定した障害事象発生率に基づいて、前記障害事象の発生が推定される前記施設及び/又は前記施設における場所を表示する。本実施の形態における施設は前述のように鉄道駅であり、障害事象推定表示部13は、1又は2以上の鉄道駅で構成される鉄道路線の路線図上に、障害事象の発生が推定される鉄道駅を表示する路線図画面と、鉄道駅の構内図上に、障害事象の発生が推定される場所を表示する構内図画面を選択的に利用者端末2に表示する。
【0024】
対応人員決定部14は、前述の推定部12が推定した障害事象発生率に基づいて、1又は2以上の施設において配置する人員を決定する。
【0025】
対応人員決定部14が配置を決定する人員は、障害事象の発生が推定される場所に対する、障害事象の発生を抑止し得る人員、例えば鉄道の駅に勤務する駅員や鉄道の乗務員、鉄道の駅や鉄道に配備される警備員等が挙げられる。
【0026】
対応人員決定部14は、配備される駅員や警備員の人数のみを決定してもよいし、配備される特定の駅員や特定の警備員を決定してもよい。なお、対応人員決定部14が、配備される特定の駅員や特定の警備員を決定する場合、対応人員決定部14は、配備の候補となる駅員や警備員の役職、勤続年数、過去に障害事象に対応した経歴、など、個々の駅員や個々の警備員を障害事象の発生し得る場所に配備する際の選定条件となる情報を記録していることが望ましい。
【0027】
なお、対応人員決定部14は、障害事象の発生が推定される日時や場所を推定した場合、推定した日時や場所に勤務予定の駅員や警備員が利用する利用者端末2に、障害事象の発生の可能性が高いことや、特定の利用者端末2の利用者が、障害事象の発生が推定される日時や場所に勤務すべき人員であることを示す情報を表示させる機能を持つこともできる。
【0028】
利用者端末2は、障害事象推定装置1を利用する利用者が操作する端末である。利用者端末2は、利用者の操作を受ける入力部21と、前述の障害事象推定表示部13により画面を表示する表示部22を備えている。利用者端末2はパーソナルコンピュータや、スマートフォン、タブレット型コンピュータその他の携帯型コンピュータを用いて構成してよく、入力部21、表示部22の具体的な構成は利用者端末2として用いるコンピュータに応じて任意に変更してよい。例えば、据置型のパーソナルコンピュータを用いて利用者端末2を構成する場合、当該パーソナルコンピュータが備えるキーボード及び/又はマウスを用いて入力部21とし、当該パーソナルコンピュータが備えるディスプレイを表示部22とするように構成してよい。また、タブレット型コンピュータを用いて利用者端末2を構成する場合は、当該タブレット型コンピュータが備えるタッチパネル式ディスプレイを入力部21及び表示部22とするように構成してよい。
【0029】
ネットワーク3は、障害事象推定装置1と利用者端末2を通信可能に接続する計算機ネットワークである。ネットワーク3は周知の計算機ネットワークを用いて構成してよく、例えばインターネットその他の広域ネットワークであってもよいし、LAN(Local Area Network)であってもよいし、広域ネットワークを用いて構築したVPN(Virtual Private Network)でもよい。また、ネットワーク3は有線ネットワークであってもよいし、無線ネットワークであってもよいし、有線ネットワークと無線ネットワークを組合わせてもよい。
【0030】
本実施の形態における障害事象推定装置1の構成は以上である。なお、本実施の形態における障害事象推定装置1はネットワーク3を介して利用者端末2と通信可能に接続され、障害事象推定装置1をサーバ、利用者端末2をクライアントとする情報処理システムを構成しているが、情報処理システムの構成は任意に変更してよく、例えば、障害事象推定装置1が単独で機能する、いわゆるスタンドアロンの情報処理システムとして構成してもよい。また、本実施の形態において障害事象推定装置1と利用者端末2はHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)によって通信する、いわゆるWEBアプリケーションとして構成されているが、通信の方法も任意に選択してよい。また、ハードウェア構成についても任意に変更してよく、例えば2台以上のコンピュータを用いて障害事象推定装置1を構成するようにしてもよい。
【0031】
次いで、本実施の形態における障害事象推定装置1による推定モデルの生成の流れについて説明する。図2は、本実施の形態における推定モデル生成の流れを示すフロー図であり、図3は、本実施の形態における推定モデルの構成を示す図である。図3で示すように、本実施の形態における推定モデル41は、教師データ44を用いて機械学習により生成される。
【0032】
図2で示すように、推定モデル41を生成するにあたって、本実施の形態では先ず、教師データ44を生成するための情報を取得する(ステップS11参照)。本実施の形態において、教師データ44は、施設環境情報45と、障害事象情報46から生成されるデータであり、ステップS11では、施設環境情報45と障害事象情報46を取得する。
【0033】
施設環境情報45は、1又は2以上の施設を示す情報である。本実施の形態において、施設環境情報45は、施設構成情報45aと、動向情報45bと、気象情報45cと、照度情報45dを含んでいる。
【0034】
施設構成情報45aは、施設の構成を示す情報である。本実施の形態における施設は具体的には鉄道駅であり、施設構成情報45aは、1又は2以上の鉄道駅の各々における場所として、プラットホーム、改札口、通路、商業区画その他の所定の区画を示す情報である。なお、情報の形式については教師データ或いは推定処理の入力データとして変換・加工等が可能であれば任意の形式を用いてよく、例えば、地理上の座標と駅舎の階層を組合わせた3次元の座標情報としてもよいし、或いは、当該座標情報に、更に当該座標が示す区画の種別を組合わせた情報としてもよい。
【0035】
動向情報45bは、施設である鉄道駅における利用者の動向に依存する情報である。本実施の形態において、動向情報45bは、前述の施設構成情報45aによって指定される鉄道駅の区画の各々について、所定の単位時間ごとの利用者の混雑度合いを数値化した情報である。なお、本実施の形態における所定の単位時間は30分であるが、単位時間は30分より長くても短くてもよい。
【0036】
動向情報45bの具体例としては、以下に例示するものが考えられる。例えば、具体例としては、特定の鉄道駅における曜日ごとや時間帯ごとの混雑率の統計情報や、特定の鉄道の曜日ごとや時間帯ごとや駅間ごとや車両ごとの混雑率や人流の発生の統計情報などが考えられる。また例えば、具体例としては、特定の鉄道駅の特定の場所について(複数のホームのそれぞれについて、特定のホームの中央部分や端部について、階段やエスカレータや連絡通路や売店やトイレなどの施設について)の混雑率や人流の発生の統計情報などが考えられる。
【0037】
気象情報45cは、季節を示す情報、及び/又は、天気を示す情報、及び/又は、気象を示す情報である。気象情報45cは、施設の気象に依存する情報である。本実施の形態において、気象情報45cは、例えば春夏秋冬の四季や二十四節気などを示す季節情報と、天気を示す天気情報と、多様な気象現象を示す気象情報とを含んでいる。
【0038】
気象情報45cを構成する天気情報は、前述の所定の単位時間の各々について、晴れ、曇り、雨、雪、雷、ひょう、その他の天候を示す天候情報と、気温を示す気温情報と、湿度を示す湿度情報を含んでいる。なお、気象情報45cは、例示したこれらの情報のうちの一つ乃至複数の情報によって構成されていてもよい。
【0039】
また、気象情報45cは、天候情報や気温情報や湿度情報や照度情報45dに含まれない多様な気象現象の情報、例えば、気圧情報や雲量情報や湿度情報や風向情報や風速情報や降水量・降雪量情報や大気安定度情報などを含んでいてもよい。
【0040】
なお、上述の天気情報に含まれる天候情報、気温情報、湿度情報は、特定の鉄道駅や特定の鉄道の周辺のみの狭小な範囲の情報でもよいし、特定の市町村や特定の都道府県などの広範な範囲の情報でもよい。また、たとえば1週間ごとや1か月ごとなど、複数の日を基準にした、統計的に晴れの日の多い期間、統計的に雨の日や雪の日の多い期間、統計的に10℃~12℃の平均気温が多い期間、統計的に50%~60%の平均湿度が多い期間、などの情報でもよい。また、一日の中で雨の降りやすい時間帯(例えば夏季の夕立ちの多い時間帯)や、一日の中で湿度の上がりやすい時間帯などの情報でもよい。さらに、1カ月ごとや3か月ごとなどの期間を基準とした、季節風の吹きやすい期間などの情報や、一日の中で強風の吹きやすい時間帯などの情報、また、乾燥した風や湿度の高い風の吹きやすい季節や時間帯の情報、などでもよい。
【0041】
照度情報45dは、気象を示す情報のひとつである。照度情報45dは、施設における前述の区画の各々について、前述の所定の単位時間ごとの照度を数値として示す情報である。照度情報45dには、日照量の情報や日照時間の情報などが含まれてもよい。
【0042】
この照度情報45dは、たとえば地域ごとや季節ごとの晴天の多い時期や時間帯、曇天や雨天や降雪の多い時期や時間帯、などに依存した統計情報が考えられる。また、例えば、高層建築や山岳などの日照を遮る障害物のある地域における、障害物と駅舎の位置関係に依存する日ごとや季節ごとの駅舎の日照時間の統計情報などが考えられる。
【0043】
障害事象情報46は、施設である鉄道駅において発生した、利用者に関する障害事象を示す情報である。本実施の形態において、障害事象情報46は、障害事象が発生した施設及び当該施設における前述の区画を示す発生場所情報46aと、障害事象が発生した日時を示す発生日時情報46bと、発生した障害事象の種別を示す種別情報46cと、を含んでいる。障害事象の種別は、列車との接触、利用者間のトラブル、利用者と従業員のトラブル、混雑に起因する転倒その他の事故等を、数値によって識別する情報である。
【0044】
ステップS11では、所定の期間における前述の施設環境情報45及び障害事象情報46を取得する。所定の期間は任意に設定してよく、例えば、推定モデル41を最初に生成する場合には、推定モデル41生成前日までの、前記情報を取得可能な全ての期間をもって所定の期間としてよいし、或いは、推定モデル41が既に生成されており、これを追加学習する場合には、前回の学習時に取得した情報の期間の翌日から、追加学習を行う前日までの期間を所定の期間としてよい。
【0045】
また、情報を取得する方法についても周知の方法を任意に選択してよい。例えば、施設環境情報45及び障害事象情報46を前述の所定の期間分収集したデータベースを障害事象推定装置1に構築して、当該構築したデータベースから情報を取得するようにしてもよいし、或いは、鉄道路線の運行情報を管理するデータベースや気象情報企業が提供する気象データベースその他の情報処理システムから施設環境情報45及び/又は障害事象情報46の一部又は全部の情報を取得できる場合には、所定の期間における情報を当該他の情報処理システムから取得するようにしてもよい。
【0046】
次いで、障害事象推定装置1は、前述のステップS11で取得した情報に基づいて、教師データ44の生成を行う(ステップS12参照)。本実施の形態では、前述のとおり、施設環境情報45が施設構成情報45a、動向情報45b、気象情報45c、照度情報45dを備えている。教師データ44は、施設環境情報45に含まれる情報を、当該情報の組合せごとに、対応する障害事象情報46と紐づけた情報である。教師データ44の具体的な構成、及び、ステップS11で取得した情報から教師データ44を生成する方法は、周知の機械学習用の教師データを生成する方法を任意に用いてよい。
【0047】
ステップS12による教師データ44の生成が完了すると、次いで、障害事象推定装置1は、教師データ44を用いて機械学習を行い(ステップS13参照)、推定モデル41を生成して所定の記録領域に記録する(ステップS14参照)。本実施の形態では、推定モデル41は具体的には推定プログラムと学習済みパラメータで構成されており、所定の記録領域として、障害事象推定装置1のストレージ装置の所定の領域に記録される。
【0048】
この推定モデルの生成により、従来は人間(例えば鉄道の運行管理者や鉄道乗務員や鉄道駅の駅長や駅員など)が経験や各種の暗黙知等に基づいて認識していた、日時や天候や事象などに依存する障害事象発生率の高低や、障害事象発生率に依存する障害事象の発生の推定を、障害事象推定装置1が行えるようになる。
【0049】
この、障害事象推定装置1による障害事象の発生の推定としては、たとえば下記(例1)~(例4)のようなものが考えられる。
【0050】
(例1)
利用者の動向に依存する動向情報に基づく障害発生の推定。
特定の期間や特定の時間帯における特定の場所における障害発生の推定。
例えば、「12月の御用納めまでの10日間である12月19日~12月28日、及び、3月の年度末の2週間である3月18日~3月31日は鉄道駅における利用者の飛び込み自殺の発生が多い。また、利用者の飛び込み自殺の発生は、朝のラッシュ時間帯、例えば鉄道駅であるAAA駅では7時~7時45分、BBB駅では7時15分~8時の時間帯が多い。また、利用者の飛び込み自殺の発生は、利用客の多いCCC駅やDDD駅、複数の鉄道の乗換駅であるEEE駅やFFF駅で多い。」などの推定が考えられる。
また例えば「鉄道駅構内での、利用客同士や利用客の駅員に対する暴行傷害事件は、朝と夕方のラッシュ時間帯における、人流の多い場所や人流の交錯の多い箇所、例えばGGG駅においては7時30分~8時15分、18時45分~19時30分の時間帯、HHH階段付近や駅地下道のJJJ交差点付近の場所において多い。」などの推定が考えられる。
また例えば、利用者の飛び込み自殺や暴行傷害事件の発生を、駅のホームや駅構内の混雑率との相関(例えば、特定のホームの混雑率の高さや特定の電車の混雑率の高さとの相関など。)に依存して所定の演算を行い、推定することなどが考えられる。
【0051】
(例2)
気象に依存する気象情報の推定。
例えば、「雨天の翌日の晴天日は鉄道駅での飛び込み自殺が多い。」「曇天又は雨天が連続3日以上続いた翌日の晴天日は鉄道駅での飛び込み自殺が多い。」「午前7時~8時の平均湿度が80%以上の日は鉄道駅構内での利用客同士や利用客の駅員に対する暴行傷害事件が多い。」「朝7時の気温25℃以上の日は鉄道駅構内での利用客の器物破損事件が多い。」などの推定が考えられる。
【0052】
(例3)
障害事象が発生した施設における場所及び日時を含む障害事象情報
例えば、「鉄道駅であるKKK駅では2012年から2022年までの10年間毎年、12月15日~28日までの間に、酔客同士の暴行傷害を含むトラブルが1件以上発生している。」「鉄道路線であるLLL線のMMM駅~NNN駅区間では、2015年~2020年までの5年間、7時10分~8時10分にMMM駅を出発する列車において痴漢事件の報告が6か月に1回以上ある。また、痴漢事件の報告は1号車と2号車に多い。」などの推定が考えられる。
【0053】
(例4)
上記(例1)~(例3)のうち、2つないし3つを組み合わせた推定。
【0054】
なお、上記(例1)~(例4)は推定の事例をいくつか示したにすぎず、実際の推定は、上記(例1)~(例4)のみに限らず、多様な情報や事象に基づいて行われる。そして、障害事象推定装置1による障害事象の発生の推定も、(例1)~(例4)以外の情報や事象に基づいて学習し、推定できるものとすることができる。
【0055】
以上が、本実施の形態における推定モデル生成の流れである。
【0056】
なお、本実施の形態では、推定モデル41の教師データ44を、施設環境情報45と障害事象情報46から生成しているが、教師データ44の構成は適宜変更してよい。例えば、施設環境情報45として用いる情報は、施設構成情報45aのみ、動向情報45bのみ、気象情報45cのみ、照度情報45dのみから構成してもよいし、それらの情報45a~45dから2つ以上を適宜組み合わせて構成してもよい。また、障害事象情報46として用いる情報は、発生場所情報46aのみ、発生日時情報46bのみ、種別情報46cのみから構成してもよいし、それらの情報46a~46cから2つを適宜組み合わせて構成してもよい。
【0057】
また、本実施の形態における障害事象推定装置1は、障害事象推定装置1を実施しながら起きた障害を逐次教師データ44に追加して、推定モデル41を逐次修正する構成としてもよい。また、障害事象推定装置1は、障害事象の推定結果と、現実の障害事象の発生の有無とを照合し、照合結果を教師データ44に追加して、推定モデル41を逐次修正する構成としてもよい。
【0058】
また、ステップS11~ステップS14の推定モデル41の生成処理を実行するタイミング及び実行方法についても、任意に選択してよい。例えば、利用者が任意のタイミングで利用者端末を操作して推定モデル41を生成するようにしてもよいし、或いは、例えば、障害事象推定装置1が月毎に自動的に推定モデル41の生成処理を実行するように予め設定しておき、当該実行のタイミングで、実行前1ヵ月の期間における教師データ44を生成して推定モデル41を追加学習するようにしてもよい。
【0059】
次いで、本実施の形態における、推定モデルを用いた障害事象推定の流れについて説明する。図4は、本実施の形態における障害事象推定の流れを示すフロー図である。図4で示すように、本実施の形態では、先ず、指定の期間における入力データを取得する(ステップS21参照)。なお、指定の期間は、利用者が任意のタイミングで利用者端末2を操作して指定するようにしてもよいし、予めステップS21~S24の推定処理を定期的に実行するように設定して、当該実行の間隔をもって指定の期間とするようにしてもよい。本実施の形態では、指定の期間を1ヵ月とし、1ヵ月毎に推定処理を定期的に実行するように予め障害事象推定装置1を構成している。
【0060】
本実施の形態における推定モデル41は、施設環境情報45として、施設を所定の区画に分割した施設構成情報45aと、利用者の混雑度合いを数値化した動向情報45bと、季節情報及び天気情報を含む気象情報45cと、照度情報45dを用いて機械学習された推定モデルである。本実施の形態における推定部12は、推定モデル41を用いて、指定の期間における日時の各々について出力データ43である障害事象発生率を推定するが、ステップS21では、推定モデル41の入力データ42となる、指定の期間に対応する施設環境情報45を取得する。
【0061】
前述のステップS11と同様に、ステップS21において、施設環境情報45に含まれる上記情報45a~45dを取得する方法は任意に選択してよい。
【0062】
例えば、動向情報45bは、同一の日時における過去の動向情報45bの平均値や中央値を取得してよいし、或いは、過去の動向情報45bから指定の日時における動向情報45bを推定する推定モデルを用いて、当該推定モデルにより指定の日時の動向情報45bを推定させるようにしてもよい。また、気象情報45cについて、気象情報企業等が提供する気象データベースその他の情報処システムから、指定期間における気象を予測した気象予測情報を気象情報45cとして用いるようにしてよい。
【0063】
また、ステップS21では、上記取得した情報は、前述の期間における日時の各々に紐づけられて、後述する推定モデル41による推定の入力データ42として用いられる。なお、本実施の形態では、日時の各々は前述の単位時間である30分で1日を分割した時間帯として扱う。
【0064】
ステップS21による入力データの収集が完了すると、障害事象推定装置1は、指定された期間における日時の各々について、前述の推定モデル41を用いて障害事象発生率を推定する(ステップS22参照)。
【0065】
前述の通り、本実施の形態では30分を所定の単位時間として扱っており、推定部12が推定する日時の各々における障害事象発生率は、当該単位時間で1日を区切った時間帯ごとに、前述の障害種別ごとの障害発生率として推定される。なお、入力データの構成や形式は任意に選択してよい。
【0066】
例えば、ステップS21で取得した施設環境情報45と、障害事象発生率を推定する日時を組み合わせて入力データ42を構成するようにしてもよいし、或いは、障害事象発生率を推定する日時における施設環境情報45に含まれる情報の組合せのパターンを入力データ42として、当該パターンから障害事象発生率を推定させるようにしてもよい。
【0067】
ステップS22による障害事象発生率の推定が完了すると、障害事象推定装置1は、障害事象推定表示部13により、当該推定した障害事象発生率に基づいて、障害事象の発生が推定される施設及び/又は施設における場所を表示する(ステップS23参照)。
【0068】
本実施の形態における施設は前述の通り鉄道駅であり、施設における場所は、前述の区画であり、障害事象推定表示部13は、利用者端末2の表示部22に、障害事象の発生が推定される鉄道駅を路線図上に表示する路線図画面と、障害事象の発生が推定される場所を鉄道駅の構内図上に表示する構内図画面を選択的に表示する。
【0069】
図5は、本実施の形態における、路線図画面の構成を模式的に示す図である。図5で示すように、本実施の形態における路線図画面W1は、路線選択フォームW11と、日付選択フォームW12と、路線図領域W13と、詳細情報領域W14を備えている。
【0070】
路線選択フォームW11は、路線図画面W1に表示する鉄道路線を選択する。前述の通り、本実施の形態における施設は具体的には鉄道駅であり、1又は2以上の鉄道駅は、当該鉄道駅を通る路線を構成する。路線選択フォームW11は、鉄道路線を選択することにより、当該鉄道路線に含まれる1又は2以上の鉄道駅に関する障害事象発生率を路線図と共に表示させるフォームである。
【0071】
日付選択フォームW12は、路線図画面W1に表示する推定結果の日付を選択する。日付選択フォームW12は、月選択フォームW12a及び日選択ボタンW12bから構成されており、月選択フォームW12aで選択した月における、日選択ボタンW12bで選択した日付についての障害事象発生率を表示する。
【0072】
路線図領域W13は、前述の路線選択フォームW11により選択した鉄道路線における、前述の日付選択フォームW12で選択した日付の障害事象発生率を路線図上に表示する。
【0073】
路線図領域W13は、1又は2以上の鉄道駅W13aから構成される鉄道路線W13bの一部又は全部を表示する領域である。選択された日付において、障害事象の発生が推定される鉄道駅W13aは、当該障害事象の障害事象発生率の高さを色の濃さ及び大きさで示す障害事象発生アイコンW13cが表示される。路線図領域W13において、利用者が利用者端末2を操作して一の鉄道駅W13aを選択した場合、当該選択した鉄道駅W13aに関する時間帯・区域ごとの障害発生率が詳細情報領域W14に表示される。
【0074】
詳細情報領域W14は、一の鉄道駅に関する障害事象発生率を、前述の所定の単位時間及び前述の所定の区画ごとに表示する。
【0075】
詳細情報領域W14は、選択した鉄道駅W14aと、時間帯W14bと、区画W14cと、障害発生率W14dから構成されており、前述の路線図領域W13において選択した鉄道駅W14aの、前述の日付選択フォームW12で選択した日付における障害事象発生率を、区画W14cを列、時間帯W14bを行とする表形式で表示する。なお、時間帯W14bは前述の所定の単位時間によって1日を分割した各時間帯であり、障害発生率W14dは、障害発生率の高さを色の濃淡として表示する。
【0076】
図6は、本実施の形態における、構内図画面の構成を模式的に示す図である。図6で示すように、本実施の形態における構内図画面W2は、日付選択フォームW21と、構内図選択フォームW22と、混雑情報W23と、気象情報W24と、時間帯領域W25と、障害情報領域W26と、構内図領域W27から構成されている。
【0077】
日付選択フォームW21は障害事象発生率を表示する日付を選択するフォームであり、構内図選択フォームW22は、表示する構内図を選択するフォームである。本実施の形態において、構内図選択フォームW22は、鉄道駅選択フォームW22aと、階層選択フォームW22bから構成されており、一の鉄道駅について階層ごとに路線図を表示する。
【0078】
時間帯領域W25は、選択された日付及び構内図における障害発生率を時間帯ごとに表示する領域である。時間帯領域W25は、時間帯W25aと、障害事象発生率W25bから構成されている。時間帯W25aは、前述の所定の単位時間によって1日を分割した各時間帯であり、障害事象発生率W25bは、該当する時間帯W25aにおける、構内図に含まれる前述の所定の区域における障害発生率の高さを色の濃淡によって表示する。
【0079】
障害情報領域W26は、選択された構内図に含まれる前記所定の区画において、選択された日付又は時間帯において発生が推定される障害を種別と共に表示する。
【0080】
構内図領域W27は、構内図W27a上に、障害事象の発生が推定される場所を示す障害発生推定アイコンW27bを表示する領域である。前述のとおり、本実施の形態において障害事象の発生率は施設における場所である所定の区画ごとに推定され、当該推定した発生率が0%より大きい区画を示す位置に、色の濃淡及び/又は大きさによって障害事象発生率の高さを示す障害発生推定アイコンW27bを表示する。
【0081】
本実施の形態では、ステップS23の推定結果表示に続いて、推定した障害事象に対応する人員の配置を決定する(ステップS24参照)。
【0082】
前述のとおり、ステップS22では、鉄道路線を構成する鉄道駅の各々について障害事象発生率を推定する。ステップS24において、対応人員決定部14は、ステップS22で推定した障害事象発生率と、障害の種別ごとに予め設定された対応人員数に基づいて、前述のステップS21で指定された期間内の日ごとに、各鉄道駅において必要となる対応人員数を算出する(対応人員決定部14が、障害の予防に適した経験や役職を有する特定の駅員や特定の警備員を選定する構成であってもよい。)。算出した対応人員数は、前述の路線図画面W1に表示される鉄道駅W13aのそれぞれについて、利用者の利用者端末2の操作により選択的に、各鉄道駅W13aにおいて発生が推定される障害に対応する人員の必要数を表示するようにしてもよい。
【0083】
具体的には、例えば、障害事象推定装置1が上記(例1)に示したような態様で、「AAA駅では朝7時~7時45分、BBB駅では7時15分~8時の時間帯が多い。」という推定を行った場合を考える。この場合、推定結果が時間帯領域W25、障害情報領域W26、構内図領域W27に表示される。利用者端末2を利用する鉄道関係者は、表示がされたAAA駅における朝7時~7時45分、BBB駅における7時15分~8時、表示された構内箇所に駅員や警備員を配備したり、配備数を増員したりという対策を講ずることができる。また、障害事象推定装置1の対応人員決定部14が上記の推定と共に人員を配備すべき場所や配備する人数や人員を推定し、その推定結果を利用者端末2に表示させた場合、利用者は、推定結果に基づいて、推定された日時、推定された場所に、駅員や警備員を配備したり配備数を増員したりという対策を講ずることができる。
【0084】
本実施の形態の説明は以上である。本実施の形態では、所定の期間における、施設利用者の動向に依存する動向情報45b及び/又は施設の気象に依存する気象情報45cを含む施設環境情報45と、障害事象が発生した施設における場所及び日時を含む障害事象情報46に基づいて推定モデル41を機械学習により生成するので、当該生成した推定モデル41を用いて、指定した期間における施設の利用者に関する障害事象の発生を推定することができる。
【0085】
なお、本発明の実施の形態は、上記実施の形態に限られるものではない。
【0086】
例えば、本実施の形態では、施設環境情報45が施設構成情報45aと、動向情報45bと、気象情報45cと、照度情報45dを含んでいるが、これに加えて、株価や景気その他の経済的な情報の動向を経済動向情報として含むようにしてもよい。
【0087】
例えば、上記実施の形態において、障害事象推定装置1が用いられる鉄道路線における鉄道駅であり、プラットホーム、駅舎その他の建造物により構成される施設としたが、これに限定されず、鉄道以外の交通機関、例えば乗合バスやタクシーや旅客機や客船など、及びそれらの利用者が乗降に用いる停留所、乗車所、空港、港湾の旅客施設などであってもよい。
【0088】
また、本実施形態の障害事象推定装置1は、交通機関以外の、不特定の利用者が利用する施設や機関での障害事象推定や障害事象対策に用いられるシステムであってもよい。具体的には、障害事象推定装置1は、例えば、市区町村の運営する公民館や集会場や体育館や公園、民間の野球場やサッカー場やイベントホール、チェーン店で店舗展開される居酒屋やレストランやコンビニエンスストアや各種量販店等での障害事象推定や障害事象対策に用いられるシステムであってもよい。
【0089】
その他の具体的な構成も本実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 障害事象推定装置
11 機械学習部
12 推定部
13 障害事象推定表示部
14 対応人員決定部
2 利用者端末
21 入力部
22 表示部
3 ネットワーク

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は二以上の施設における利用者に関する障害事象の発生を推定する障害事象推定装
置であって、
前記施設の所定期間における前記利用者の動向に依存する動向情報、及び/又は、前記
施設の気象に依存する気象情報、を含む施設環境情報と、前記障害事象が発生した前記施
設における場所及び日時を含む障害事象情報と、を教師データとして、指定された日時に
おける前記施設の障害事象発生率を推定する推定モデルを機械学習により生成する機械学
習部と、
前記推定モデルを用いて、指定された期間における前記日時の各々について前記施設の
障害事象発生率を推定する推定部と、
前記推定した障害事象発生率に基づいて、前記障害事象の発生が推定される前記施設及
び/又は前記施設における場所を特定する、障害事象推定部と、
前記推定部において前記推定された障害事象発生率に基づいた所定の演算を行うことで、前記施設、及び/又は、前記施設における所定の場所に、前記障害事象の発生を予防するために配備する人員、又は前記障害事象の発生を予防するために増員する人員を選任する対応人員決定部と、
を備え
前記対応人員決定部は、
前記配備、又は、前記増員の対象となる前記人員の情報と、
前記人員の有する、前記障害事象の発生を予防するために有用な経験の情報、及び/又は、前記人員の有する、前記障害事象の発生を予防するために有用な役職の情報と
を有し、
前記対応人員決定部は、
前記障害事象発生率と、前記経験の情報、及び/又は、前記役職の情報とを用いた前記所定の演算を行うことで、配置する人員を選任することを特徴とする、障害事象推定装置。
【請求項2】
前記施設は鉄道駅であり、
前記障害事象推定部は、前記障害事象の発生が推定される前記鉄道駅を路線図上に表示する
ことを特徴とする、請求項1に記載の障害事象推定装置。
【請求項3】
前記障害事象推定部は、さらに、前記障害事象の発生が推定される場所を前記鉄道駅の構内図上に表示する
ことを特徴とする、請求項2に記載の障害事象推定装置。
【請求項4】
前記施設環境情報は、前記施設の前記所定期間における混雑度合いを示す情報であることを特徴とする、請求項1に記載の障害事象推定装置。
【請求項5】
前記施設環境情報は、前記所定の期間における、前記施設周辺の季節を示す情報、及び/又は、天気を示す情報、及び/又は、気象を示す情報を含む
ことを特徴とする、請求項1記載の障害事象推定装置。
【請求項6】
前記施設環境情報は、前記施設の所定位置における照度を示す情報を含むことを特徴とする、請求項1に記載の障害事象推定装置。
【請求項7】
前記障害事象情報は、さらに、前記障害事象の種別を示す情報を含み、
前記障害事象推定部は、前記発生が推定される障害事象を前記種別とともに表示する
ことを特徴とする、請求項1に記載の障害事象推定装置。
【請求項8】
コンピュータを請求項1乃至の何れか一つに記載の障害事象推定装置として機能させるプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
かかる課題を解決するために、請求項1の発明に係る障害事象推定装置は、一又は二以上の施設における利用者に関する障害事象の発生を推定する障害事象推定装置であって、前記施設の所定期間における前記利用者の動向に依存する動向情報、及び/又は、前記施設の気象に依存する気象情報、を含む施設環境情報と、前記障害事象が発生した前記施設における場所及び日時を含む障害事象情報と、を教師データとして、指定された日時における前記施設の障害事象発生率を推定する推定モデルを機械学習により生成する機械学習部と、前記推定モデルを用いて、指定された期間における前記日時の各々について前記施設の障害事象発生率を推定する推定部と、前記推定した障害事象発生率に基づいて、前記障害事象の発生が推定される前記施設及び/又は前記施設における場所を特定する、障害事象推定部と、前記推定部において前記推定された障害事象発生率に基づいた所定の演算を行うことで、前記施設、及び/又は、前記施設における所定の場所に、前記障害事象の発生を予防するために配備する人員、又は前記障害事象の発生を予防するために増員する人員を選任する対応人員決定部と、を備え、前記対応人員決定部は、前記配備、又は、前記増員の対象となる前記人員の情報と、前記人員の有する、前記障害事象の発生を予防するために有用な経験の情報、及び/又は、前記人員の有する、前記障害事象の発生を予防するために有用な役職の情報とを有し、前記対応人員決定部は、前記障害事象発生率と、前記経験の情報、及び/又は、前記役職の情報とを用いた前記所定の演算を行うことで、配置する人員を選任することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記施設は鉄道駅であり、前記障害事象推定部は、前記障害事象の発生が推定される前記鉄道駅を路線図上に表示することを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記障害事象推定部は、さらに、前記障害事象の発生が推定される場所を前記鉄道駅の構内図上に表示することを特徴とする
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
請求項7の発明は、請求項1の発明において、前記障害事象情報は、さらに、前記障害事象の種別を示す情報を含み、前記障害事象推定部は、前記発生が推定される障害事象を前記種別とともに表示することを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
請求項の発明は、コンピュータ読み取り可能なプログラムであって、コンピュータを請求項1乃至の何れか一つに記載の障害事象推定装置として機能させることを特徴とする。