(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012241
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】グラフェン同士を摩擦圧接したグラフェン接合体を回路基板として用い、該回路基板の表面に絶縁層を摩擦圧接し、さらに、該絶縁層の表面に導電層を摩擦圧接した回路部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/194 20170101AFI20240123BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C01B32/194
B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114436
(22)【出願日】2022-07-18
(71)【出願人】
【識別番号】512150358
【氏名又は名称】小林 博
(72)【発明者】
【氏名】小林 博
【テーマコード(参考)】
4F100
4G146
【Fターム(参考)】
4F100AA17B
4F100AA19B
4F100AA37A
4F100AB01C
4F100AB17C
4F100AD11A
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4F100GB41
4G146AA01
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4G146AD22
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4G146BA01
4G146CB03
4G146CB10
4G146CB19
4G146CB35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】安価な材料を用い、簡単な処理で、シンプルな構造からなる絶縁層と導電層とが回路基板に形成された回路部品を製造する方法を提供する。
【解決手段】1-ブタノール中で黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造し、グラフェンの集まりを容器に注入し、1-ブタノールを気化させてグラフェン同士を重ね合わせ、重なり合ったグラフェンの集まりを圧縮し、摩擦熱で接合したグラフェン接合体を製造する。金属酸化物のナノ粒子の集まりを容器に析出させ、ナノ粒子の集まりを圧縮し、ナノ粒子同士が摩擦圧接した絶縁層を、容器から取り出してグラフェン接合体に摩擦圧接する。金属のナノ粒子の集まりを容器に析出させ、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる導電層を、容器から取り出して絶縁層に摩擦圧接する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェン同士を摩擦圧接で接合したグラフェン接合体を回路基板として用い、絶縁性の金属酸化物からなる微粒子同士が摩擦圧接した該金属酸化物の微粒子の集まりからなる絶縁層を、前記回路基板の表面に摩擦圧接させ、さらに、導電性の金属微粒子同士が金属結合した該金属微粒子の集まりからなる導電層を、前記絶縁層の表面に摩擦圧接させ、前記回路基板の表面に、前記絶縁層と前記導電層とを摩擦圧接した回路部品を製造する方法は、
2枚の平行平板電極のうちの一方の平行平板電極の表面に、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりを平坦に引き詰め、該一方の平行平板電極を第一の容器に充填された1-ブタノール中に浸漬させ、さらに、他方の平行平板電極を前記一方の平行平板電極の上に重ね合わせ、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりを介して、前記2枚の平行平板電極を離間させ、該離間させた2枚の平行平板電極を前記1-ブタノール中に浸漬させる、この後、該2枚の平行平板電極の間隙に、予め決めた大きさからなる直流の電位差を印加する、これによって、該電位差の大きさを前記2枚の平行平板電極の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりに印加され、該鱗片状黒鉛粒子ないしは該塊状黒鉛粒子を形成する基底面の層間結合の全てが同時に破壊され、前記2枚の平行平板電極の間隙に、前記基底面に相当するグラフェンの集まりが析出する、この後、該2枚の平行平板電極の間隙を拡大し、さらに、該2枚の平行平板電極を前記1-ブタノール中で傾斜させ、さらに、前記第一の容器に左右、前後、上下の3方向の振動加速度を加え、前記グラフェンの集まりを、前記2枚の平行平板電極の間隙から、前記1-ブタノール中に移動させるとともに、該1-ブタノール中に前記グラフェンの集まりを分散させる、さらに、前記第一の容器から前記2枚の平行平板電極を取り出す、黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを容器内に製造する第一の工程と、
前記1-ブタノール中に分散したグラフェンの集まりの予め決めた一定の量を、前記第一の容器から、回路基板の形状を容器の底面形状として有する第二の容器に注入し、該第二の容器に、前記第一の工程で加えた振動加速度より大きな振動加速度として、前後、左右、上下の3方向の振動加速度を繰り返し加え、前記グラフェンの集まりが1-ブタノール中で平面状に並ぶとともに、該平面状に並んだグラフェンの集まりが1-ブタノールを介して重なり合って積層した該グラフェンの集まりを、前記第二の容器内に形成する、さらに、前記第二の容器を前記1-ブタノールの沸点に昇温し、前記グラフェンの集まりから該1-ブタノールを気化させ、前記平面状に並んだグラフェンの集まりが、重なり合って積層した該グラフェンの集まりが、前記第二の容器内に形成される、この後、前記グラフェンの集まりの表面の全体を覆う板材を該グラフェンの集まりに被せ、該板材の表面全体を均等に圧縮し、前記重なり合ったグラフェン同士が摩擦圧接し、該摩擦圧接で接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が回路基板として、前記第二の容器の底面に該底面の形状として形成される、この後、前記板材を前記第二の容器から取り出す、容器の底面に該底面の形状からなるグラフェン接合体を回路基板として形成する第二の工程と、
大気雰囲気での熱分解で絶縁性の金属酸化物を析出する第一の性質と、メタノールに分散する第二の性質を兼備する金属化合物を、メタノールに分散してメタノール分散液を作成し、該金属化合物のメタノール分散液の予め決めた一定の量を、絶縁層の形状を容器の底面形状として有する第三の容器に注入し、この後、該第三の容器をメタノールの沸点に昇温し、前記金属化合物のメタノール分散液から該金属化合物の微細結晶の集まりを析出させる、さらに、該第三の容器に、前記金属化合物の微細結晶の集まりの表面全体を覆う板材を被せ、前記第二の工程で板材に加えた圧縮力より小さい圧縮力として、該板材の表面全体を均等に圧縮し、前記金属化合物の微細結晶の集まりを破砕し、該微細結晶よりさらに微細な結晶の集まりを作成する、さらに、前記第三の容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温し、該金属化合物から絶縁性の金属酸化物の微粒子の集まりを析出させる、この後、前記金属化合物の微細結晶の集まりを破砕した際の圧縮力より大きな圧縮力を前記板材の表面全体に均等に加え、前記絶縁性の金属酸化物の微粒子同士を摩擦熱で接合させ、該絶縁性の金属酸化物の微粒子同士が接合した該微粒子の集まりからなる絶縁層を、前記第三の容器の底面に該底面の形状として形成する、この後、前記板材を前記第三の容器から取り出す、さらに、該第三の容器の底面に上下方向の衝撃加速度を繰り返し加え、前記絶縁層を前記第三の容器の底面から引き剥がす、絶縁性の金属酸化物の微粒子同士が摩擦接合した該微粒子の集まりからなる絶縁層を、容器の底面に該底面の形状として形成する第三の工程と、
大気雰囲気での熱分解で導電性の金属を析出する第一の性質と、メタノールに分散する第二の性質を兼備する金属化合物を、メタノールに分散してメタノール分散液を作成し、該金属化合物のメタノール分散液の予め決めた一定の量を、導電層の形状を容器の底面形状として有する第四の容器に注入し、この後、該第四の容器をメタノールの沸点に昇温し、前記金属化合物のメタノール分散液から該金属化合物の微細結晶の集まりを析出させ、さらに、前記第四の容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温する、これによって、導電性の金属の微粒子同士が接触して該金属の微粒子の集まりが一斉に析出し、該金属の微粒子同士が接触部で金属結合し、該金属結合で接合した金属の微粒子の集まりからなる導電層が、前記第四の容器の底面に該底面の形状とし形成される、この後、該第四の容器の底面に、前記第三の容器の底面に加えた衝撃加速度より小さい上下方向の衝撃加速度を繰り返し加え、前記導電層を前記第四の容器の底面から引き剥がす、導電性の金属の微粒子同士が金属結合した該金属微粒子の集まりからなる導電層を、容器の底面に該底面の形状として形成する第四の工程と、
前記第二の工程で形成した回路基板の予め決めた位置に、前記第三の工程で形成した絶縁層を重ね合わせ、該絶縁層の表面全体を覆う板材を被せ、前記第三の工程で絶縁性の金属酸化物の微粒子同士を摩擦熱で接合させる際に加えた圧縮力より小さい圧縮力で、該板材の表面全体を均等に圧縮し、前記回路基板と前記絶縁層との接触部を摩擦圧接し、該絶縁層を該回路基板に接合させる、この後、前記板材を前記第二の容器から取り出す、さらに、前記絶縁層の予め決めた位置に、前記第四の工程で形成した導電層を重ね合わせ、該導電層の表面全体を覆う新たな板材を被せ、前記回路基板に前記絶縁層を摩擦圧接させる際に加えた圧縮力より小さい圧縮力で、該新たな板材の表面全体を均等に圧縮し、前記導電層と前記絶縁層との接触部を摩擦圧接させ、該導電層を該絶縁層に接合させる、この後、前記新たな板材を前記第二の容器から取り出す、さらに、前記回路基板が形成された第二の容器の底面に、前記第三の容器の底面に加えた衝撃加速度より大きい上下方向の衝撃加速度を繰り返し加え、前記回路基板に前記絶縁層と前記導電層とが接合された回路部品を、前記第二の容器の底面から引き剥がす、回路基板に絶縁層と導電層とが摩擦圧接された回路部品を製造する第五の工程とからなり、
前記5つの工程からなる処理を連続して実施することで、グラフェン同士を摩擦圧接で接合したグラフェン接合体を回路基板とし、絶縁性の金属酸化物からなる微粒子同士が摩擦圧接した該金属酸化物の微粒子の集まりからなる絶縁層を、前記回路基板の表面に摩擦圧接し、さらに、導電性の金属微粒子同士が金属結合した該金属微粒子の集まりからなる導電層を、前記絶縁層の表面に摩擦圧接させ、前記回路基板の表面に、前記絶縁層と前記導電層とを摩擦圧接した回路部品を製造する方法。
【請求項2】
請求項1に記載した回路部品を製造する方法が、同一の構成からなる回路部品の複数を同時に製造する方法であり、該複数の回路部品を同時に製造する方法は、
請求項1の第二の工程に記載した第二の容器に、同じ形状からなる複数の溝を形成し、請求項1の第一の工程に記載した1-ブタノール中に分散されたグラフェンの集まりの同じ量を、前記複数の溝の各々の溝に注入し、さらに、前記第二の容器に3方向の振動加速度を繰り返し加え、前記グラフェンの集まりが1-ブタノール中で平面状に並ぶとともに、該平面状に並んだグラフェンの集まりが1-ブタノールを介して重なり合って積層した該グラフェンの集まりを、前記複数の溝の各々の溝内に形成する、この後、前記第二の容器を1-ブタノールの沸点に昇温し、前記複数の溝から1-ブタノールを気化させ、該複数の溝の各々の溝に、グラフェン同士が重なり合った該グラフェンの集まりを該溝の底面に形成する、さらに、請求項1の第二の工程に記載した板材が、複数の同一形状からなる突起を有し、該突起の側面が前記溝の側面と接触する形状で、該突起の長さが前記溝の深さより長い特徴を有する複数の突起であり、該複数の突起を形成した板材を用意し、該板材の前記複数の突起を有する面を、前記第二の容器の複数の溝を有する面に重ね合わせ、前記複数の突起を前記複数の溝に挿入する、この後、前記板材の前記複数の突起が形成された反対側の表面全体を均等に圧縮し、前記溝の底面に形成された前記重なり合ったグラフェン同士を摩擦圧接し、該摩擦圧接で接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が回路基板として、前記複数の溝の各々の溝の底面に該底面の形状として同時に形成される、この後、前記板材を前記第二の容器から取り出す、同じ形状からなる複数のグラフェン接合体を、複数の溝の各々の溝の底面に該底面の形状として同時に形成する第一の工程と、
請求項1の第三の工程に記載した第三の容器に、同じ形状からなる複数の溝を形成し、請求項1の第三の工程に記載した金属化合物のメタノール分散液の同じ量を、前記複数の溝の各々の溝に注入する、この後、前記第三の容器をメタノールの沸点に昇温し、前記複数の溝の各々の溝からメタノールを気化させ、前記金属化合物の微細結晶の集まりを前記複数の溝の各々の溝に析出させる、さらに、請求項1の第三の工程に記載した板材が、複数の同一形状からなる複数の突起を有し、該突起の側面が前記溝の側面と接触する形状で、該突起の長さが前記溝の深さより長い特徴を有する複数の突起であり、該複数の突起を有する板材を用意し、該板材の前記複数の突起を有する面を、前記第三の容器の複数の溝を有する面に重ね合わせ、前記複数の突起を前記複数の溝に挿入する、この後、前記第一の工程で板材に加えた圧縮力より小さい圧縮力として、前記板材の前記複数の突起が形成された反対側の表面全体を均等に圧縮し、前記複数の溝の各々の溝の底面に形成された前記金属化合物の微細結晶の集まりを破砕する、この後、前記第三の容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温し、絶縁性の金属酸化物のナノ粒子の集まりを析出させる、さらに、前記金属化合物の微細結晶の集まりを破砕した際の圧縮力より大きな圧縮力を前記板材の表面全体に均等に加え、前記複数の溝の各々溝に析出した前記絶縁性の金属酸化物のナノ粒子の集まりを圧縮し、前記絶縁性の金属酸化物の微粒子同士の接触部を摩擦圧接させ、該絶縁性の金属酸化物の微粒子同士が接合した該微粒子の集まりからなる絶縁層を、前記複数の溝の各々の溝の底面に該底面の形状として同時に形成する、この後、前記板材を前記第三の容器から取り出す、さらに、前記第三の容器の前記複数の溝が形成された部位に相当する該第三の容器の底面の複数個所に、上下方向の衝撃加速度を繰り返し加え、前記絶縁層を前記複数の溝の各々の溝の底面から同時に引き剥がす、同じ形状からなる複数の絶縁層を、複数の溝の各々の溝の底面に該底面の形状として同時に形成する第二の工程と、
請求項1の第四の工程に記載した第四の容器に、同じ形状からなる複数の溝を形成し、請求項1の第四の工程に記載した金属化合物のメタノール分散液の同じ量を、前記複数の溝の各々の溝に注入する、この後、前記第四の容器をメタノールの沸点に昇温し、前記複数の溝からメタノールを気化させ、前記金属化合物の微細結晶の集まりを前記複数の溝の各々の溝に析出させる、さらに、前記第四の容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温する、これによって、導電性の金属の微粒子同士が接触した該金属の微粒子の集まりが一斉に析出し、該金属の微粒子同士が接触部で金属結合し、該金属結合した金属の微粒子の集まりが、前記複数の溝の各々の溝の底面に導電層として同時に形成される、この後、前記第四の容器の前記複数の溝が形成された部位に相当する該第四の容器の底面の複数個所に、前記第三の容器の底面に加えた衝撃加速度より小さい上下方向の衝撃加速度を繰り返し加え、前記導電層を前記複数の溝の各々の溝の底面から同時に引き剥がす、同じ形状からなる複数の導電層を、複数の溝の各々の溝の底面に同時に形成する第三の工程と、
前記第一の工程で作成した複数の溝の各々の溝の底面に該底面の形状として形成されたグラフェン接合体の表面の予め決めた同じ位置に、前記第二の工程で作成した絶縁層を配置させる、さらに、請求項1の第五の工程に記載した板材が、複数の同一形状からなる突起を有し、該突起の先端の形状が前記絶縁層の形状を有し、該複数の突起が、前記複数の溝に配置された前記複数の絶縁層の表面と接触する位置に形成されるとともに、前記複数の絶縁層を圧縮する長さを持った特徴を有する複数の突起であり、該複数の突起を有する板材を用意し、該板材を、前記複数の突起の先端が前記複数の絶縁層と接触するように、前記複数の溝が形成された第二の容器に重ね合わせ、前記第二の工程で絶縁性の金属酸化物の微粒子同士を摩擦熱で接合させる際に加えた圧縮力より小さい圧縮力で、前記板材の前記複数の突起が形成された反対側の表面全体を均等に圧縮し、前記グラフェン接合体と前記絶縁層との接触部を摩擦圧接させ、該絶縁層を前記グラフェン接合体に接合させる、この後、前記板材を前記第二の容器から取り出す、さらに、前記複数の絶縁層の各々の絶縁層の予め決めた同じ位置に、第三の工程で作成した導電層を配置させる、また、請求項1の第五の工程に記載した新たな板材が、複数の同一形状からなる突起を有し、該突起の先端の形状が前記導電層の形状を有し、該複数の突起が、前記複数の溝に配置された前記複数の導電層の表面と接触する位置に形成されるとともに、前記複数の導電層を圧縮する長さを持った特徴を有する複数の突起であり、該複数の突起を有する板材を用意し、該板材を、前記複数の突起が前記複数の導電層の表面と接触するように、前記複数の溝が形成された第二の容器に重ね合わせ、前記グラフェン接合体に前記絶縁層を摩擦圧接させる際に加えた圧縮力より小さい圧縮力で、前記板材の前記複数の突起が形成された反対側の表面全体を均等に圧縮し、前記導電層と前記絶縁層との接触部を摩擦圧接させ、該導電層を該絶縁層に接合させる、この後、前記新たな板材を前記第二の容器から取り外す、さらに、前記第二の容器の前記複数の溝が形成された部位に相当する該第二の容器の底面の複数個所に、前記第三の容器の底面に加えた衝撃加速度より大きい上下方向の衝撃加速度を繰り返し加え、前記グラフェン接合体に前記絶縁層と前記導電層とが接合された複数の回路部品を、前記第二の容器の底面から同時に引き剥がす、グラフェン接合体に絶縁層と導電層とが接合された複数の回路部品を同時に製造する第四の工程とからなり、
前記4つの工程からなる処理を連続して実施することで、同一の構成からなる複数の回路部品が同時に製造される、複数の回路部品を同時に製造する方法。
【請求項3】
請求項1の第三の工程に記載した絶縁層を形成する処理方法は、請求項1の第三の工程に記載した熱分解で絶縁性の金属酸化物を析出する金属化合物が、熱分解で酸化アルミニウムを析出するカプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ないしは、ナフテン酸アルミニウムのいずれかのカルボン酸アルミニウム化合物であり、該カルボン酸アルミニウム化合物を、熱分解で酸化アルミニウムを析出する金属化合物として用い、請求項1の第三の工程に記載した処理方法に従って、絶縁性の酸化アルミニウムの微粒子同士が摩擦接合した該酸化アルミニウム微粒子の集まりからなる絶縁層を、第三の容器の底面に該底面の形状として形成する、請求項1の第三の工程に記載した絶縁層を形成する処理方法。
【請求項4】
請求項1の第四の工程に記載した導電層を形成する処理方法は、請求項1の第四の工程に記載した熱分解で導電性の金属を析出する金属化合物が、熱分解で銅を析出するオクチル酸銅、ラウリン酸銅、ないしは、ステアリン酸銅からなるいずれかのカルボン酸銅化合物であり、該カルボン酸銅化合物を、熱分解で銅を析出する金属化合物として用い、請求項1の第四の工程に記載した処理方法に従って、銅微粒子同士が金属結合した該銅微粒子の集まりからなる導電層を、第四の容器の底面に該底面の形状として形成する、請求項1の第四の工程に記載した導電層を形成する処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン同士を摩擦圧接で接合したグラフェン接合体を回路基板として用い、絶縁性の金属酸化物からなる微粒子同士が摩擦圧接した該金属酸化物の微粒子の集まりからなる絶縁層を、前記回路基板の表面に摩擦圧接させ、さらに、金属微粒子同士が金属結合した該金属微粒子の集まりからなる導電層を、前記絶縁層の表面に摩擦圧接させ、前記回路基板の表面に、前記絶縁層と前記導電層とを形成した回路部品を製造する方法に関わる。なお、本発明では、電子回路に用いる基板を回路基板と呼び、回路基板の表面に絶縁層と導電層とを形成したものを、回路部品と呼ぶ。
【0002】
ここで、グラフェンについて説明する。2004年に英国マンチェスター大学の物理学者が、セロハンテープを使用して、グラファイトから1枚の結晶子、すなわち、炭素原子が六角形からなる網目構造を二次元的に形成する黒鉛結晶の基底面を引きはがし、炭素原子の大きさを厚みとする平面状の物質を取り出すことに初めて成功した。この新たな物質をグラフェンと呼んだ。この研究成果に対して、2010年のノーベル物理学書が授与されている。
グラフェンは、厚みが炭素原子の大きさに相当する極めて薄い物質で、かつ、質量を殆ど持たない全く新しい炭素材料である。このため、従来の物質とは大きくかけ離れた物性を持ち、幅広い用途に応用できる材料として注目されている。
厚みが0.332nmからなる最も薄い材料である。また、単位質量当たりの表面積が3000m2/gである最も広い表面積を持つ。さらに、ヤング率が1020GPaと大きな値を持ち、最も伸長でき、折り曲げができる材料である。また、せん断弾性率が440GPaという大きな数値を持つ最も強靭な物質である。さらに、熱伝導率は19.5W/Cmで、金属の中で最も熱伝導率が高い銀の熱伝導率の4.5倍に相当する。また、電流密度は銅の1000倍を超える。さらに、電子移動度が15000cm2/ボルト・秒であり、シリコーンの移動度の1400cm2/ボルト・秒より一桁高い値を持つ。さらに、融点が3000℃を超える単結晶材料で、耐熱性が極めて高い材料である。
【背景技術】
【0003】
近年、急速に普及が進んでいる高速大容量の通信用電子機器や、大電流を流す回路基板や、パワーデバイスやLEDなどの発熱部品において、発熱の問題が深刻化している。また、電子機器の小型化、軽量化、薄型化が進み、電子機器内で発生した熱を如何に移動させ、外界に逃がすかが大きな課題になっている。さらに、電子部品の高密度実装や高集積化やハイパワー化によって、電子回路における熱の移動と共に、電子回路の機械的強度の増大と耐熱性の向上と電磁波のシールド性の向上との両立が、電子回路に要求されている。
【0004】
電子回路の放熱効率を上げ、機械的強度を増大させ、さらに、耐熱性を向上させることを両立させるため、回路基板として金属基板が現在使われている。金属基板は、アルミニウム板、銅板、鉄板、ケイ素鋼板、ステンレス板などからなる金属の板材の上に、合成樹脂の絶縁層を形成し、さらに、絶縁層の上に、銅箔を接着する、あるいは、銅箔をエッチングする、銅メッキを施す、金属のスパッタリング膜や蒸着膜を形成するなどの方法で導電層を形成している。
しかしながら、金属基板は次の点で課題を持つ。
第一に、絶縁層を形成する合成樹脂の熱伝導率が低く、例えば、エポキシ樹脂の熱伝導率は0.17-0.21W/mKで、銅の熱伝導率の372W/mKとの比率は、4.6-5.6×10-4と低い。さらに、合成樹脂の絶縁層の厚みが100ミクロンより厚い。このため、合成樹脂の絶縁層は、電子回路から発生する熱を、金属基板に伝えにくくしている。
第二に、合成樹脂の絶縁層の耐熱性が低く、例えば、エポキシ樹脂の連続使用の耐熱温度は100-250℃である。このため、電子回路の発熱時における絶縁層の耐電圧が低下する。
第三に、合成樹脂の絶縁層の機械的強度は低く、例えば、エポキシ樹脂の引張強度は27-89MPaである。このため、電子機器に大きな負荷が加わると絶縁層が剥離する。また、電子回路の発熱部位において、絶縁層が剥離しやすくなる。
第四に、金属基板に放熱性を持たせるため、金属基板は放熱に必要な面積を持つ。これによって、金属基板の重量がかさみ、電子機器の小型化、軽量化、薄型化を妨げる。
【0005】
こうした金属基板が持つ課題に対し様々な取り組みがなされている。
特許文献1に、LED素子を金属基板に実装する方法と実装する金属基板が記載されている。すなわち、金属基板の金属表面に直接LED素子を搭載して放熱を促し、LED素子の輝度と寿命とを向上させる。このため、金属基板を平面のままで配線と枠にて構成するか、逆台形断面の円錐台状の凹部を1個または複数個つくり、前記円錐台状凹部にLEDの素子を入れて固定・配線し、素子の上面を透明材料の全充填または凹部内側をガス充填し外側を透明材料叉はガラス板で封止する。いっぽう、金属基板へのLED素子の実装は、LED素子から凹部の側壁へ向かう発光光線を、凹部の側壁に露出した金属面または側壁の樹脂又はめっき箔上に成膜した、金属被膜面によって素子の正面方向に向かうように反射させる構成とした。さらに、透明材料としてガラスまたは有機透明樹脂を用いる。
しかしながら、LED素子を直接金属基板に実装するため、上記のようなLED素子の実装を複雑な構成にしなければならず、LED素子を直接金属基板に実装する費用が増大する。このため、本金属基板は汎用性がなく、高価である。いっぽう、電子回路に用いる基板は、汎用性が高く、かつ、安価であることが必須になる。
【0006】
特許文献2に、半導体部品用の金属基板及びその製造方法が記載されている。すなわち、耐熱性のある絶縁層を使用し、高電気伝導性、高放熱性を発現させ、更にSiに近い熱膨張係数を有す金属薄板を使用することによって高集積化への対応を可能とする。このため、孔のサイズが80μm以下の複数の貫通孔を有し、板厚が80μm以下で、介在物のサイズが30μm以下のFe-Ni系合金薄板表面に、気相成長法でSiO2、Al2O3、MgO、ZrO2のうちの少なくとも一種を主成分とする酸化物からなる0.1-1.0μmの膜厚の薄膜を形成する半導体部品用金属基板を製造する。
しかしながら、Fe-Ni系合金薄板は高価であり、さらに、気相成長法で金属酸化物の薄膜を形成することで、金属基板の製造費用がさらに高価になる。このため、本金属基板は汎用性がなく、高価である。いっぽう、電子回路に用いる回路基板は、汎用性が高く、かつ、安価であることが必須になる。
【0007】
ここで、電子回路を構成する次世代型の回路部品に係る課題を整理する。
回路部品を構成する回路基板が、第一に、熱伝導性に優れている。第二に、耐熱性に優れている。第三に、機械的強度に優れている。第四に、電磁波のシールド性に優れている。第五に、軽量である。次世代型の回路基板は、これら5つの性能を両立させる。
いっぽう、5つの性能を両立する回路基板は、回路基板の表面に導電層と絶縁層とを形成する必要がある。しかしながら、4段落で説明した金属基板の課題のように、合成樹脂で絶縁層を形成すると、回路基板の熱伝導性と耐熱性と耐電圧性と機械的強度とが低下する。従って、第六に、合成樹脂以外の材質で絶縁層を形成する必要がある。また、2件の特許文献で説明したように、特殊な材料を用い、特殊な製法で、特殊な構造からなる回路基板は、汎用性がなく、かつ、高価である。従って、第七に、安価な原料を用い、簡単な処理でシンプルな構造からなる回路基板を製造する。
これら7つの課題を解決できれば、次世代型の電子回路に用いる回路部品になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-158086号公報
【特許文献2】特開2004-342636号公報
【特許文献3】特許第6166860号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
7段落で記載したように、次世代型の電子回路に用いる回路部品の実現には7つの課題がある。このうち、回路基板に係る課題は、第六の課題を除く6つの課題からなる。これら6つの回路基板の課題のうち、第七の課題を除く5つの課題を解決する最も近い材料はアルミニウムである。すなわち、第一に、アルミニウムは、銀、銅、金に次いで優れた熱伝導率を持つ金属である。第二に、アルミニウムの融点は660℃で、回路基板としての耐熱性は十分に高い。第三に、純アルミニウムの引張強度は55MPaと低いが、マグネシウムとマンガンとを微量加えたアルミニウム合金の引張強度は345MPaであり、回路基板としての引張強度は高い。いっぽう、電磁波のシールド効果と材料の体積固有抵抗との間には相関関係があり、体積固有抵抗が1Ωcmでは約45dBのシールド効果が得られる。第四に、アルミニウムの体積固有抵抗は2.5μΩcmであり、銀、銅に次いで優れたシールド効果が得られる金属である。第五に、アルミニウムの密度は2.7g/cm3で、ガラスエポキシ基板(FR-4)の密度は1.8g/cm3であり、軽量な基板が構成できる。これら5つの性能をアルミニウムが両立するため、アルミニウムは銅と共に、金属基板に用いられている。
従って、次世代型の電子回路に用いる回路部品の課題は、次の3項目に集約できる。第一に、アルミニウムが持つ5つの性能より優れた性能を両立する回路基板である。第二に、回路基板に形成する絶縁層は、3段落に記載した3つの課題を持たない。従って、絶縁層は、新たな材質の絶縁材料によって、新たな製法で絶縁層を形成することが必要になる。第三に、安価な材料を用い、簡単な処理で、シンプルな構造からなる絶縁層と導電層とが形成された回路部品を製造する。これによって、安価で、シンプルな構造からなる汎用性を持つ次世代型の回路部品が製造される。
これらの課題の全てを解決する次世代型の回路部品の形成方法として、本発明者は、グラフェン接合体を回路基板として用いる特許を、特願2020-109143として出願した。
【0010】
すなわち、先行出願は、グラフェン同士を摩擦圧接で接合したグラフェン接合体を、容器の底面に該底面の形状として形成し、該グラフェン接合体を回路基板として用いる。また、熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物をメタノールに分散し、メタノールに溶解し、メタノールより粘度が高く、沸点が金属化合物の熱分解温度より高い有機化合物を、前記金属化合物のメタノール分散液に混合し、絶縁ペーストを作成する。さらに、熱分解で金属を析出する金属化合物をメタノールに分散し、メタノールに溶解し、メタノールより粘度が高く、沸点が金属化合物の熱分解温度より高い有機化合物を、前記金属化合物のメタノール分散液に混合し、導電ペーストを作成する。この後、容器の底面からグラフェン接合体を引き剥がし、該グラフェン接合体の表面に、前記絶縁ペーストを塗布し、該グラフェン接合体を熱処理装置に配置し、前記金属化合物を熱分解させ、絶縁性の金属酸化物からなる微粒子の集まりを析出させ、該グラフェン接合体を熱処理装置から取り出し、前記金属酸化物からなる微粒子の集まりを圧縮し、該金属酸化物からなる微粒子の集まりを、前記グラフェン接合体に摩擦圧接させ、絶縁層を形成する。さらに、該絶縁層の表面に、前記導電ペーストを塗布し、グラフェン接合体を熱処理装置に配置し、前記金属化合物を熱分解させ、導電性の金属からなる微粒子の集まりを析出させ、該グラフェン接合体を熱処理装置から取り出し、前記金属からなる微粒子の集まりを圧縮し、該金属からなる微粒子の集まりを、前記絶縁層に摩擦圧接させ、導電層を形成させる。
【0011】
いっぽう、回路基板に絶縁層と導電層とを形成した回路部品は、汎用的な部品であり、同一の大きさと同一の構成からなる回路部品が大量に、かつ、安価に製造される。また、回路部品の用途が極めて広いため、正方形の回路基板の大きさは、1cm四方から50cm四方にまで及び、長方形の回路基板の幅は1cmに満たないものがある。このように、回路基板は様々な大きさと形状からなる。
ところで、グラフェンが0.332nmからなる最も厚みが薄い物質で、例えば、グラフェン同士を20枚重ね合わせて摩擦圧接したグラフェン接合体の厚みは、僅かに6.64nmに過ぎず、殆ど質量を持たない。従って、グラフェン接合体を回路基板として用いる際に、グラフェン接合体の面積が小さいほど、また、長方形のグラフェン接合体の幅が小さいほど、グラフェン接合体のハンドリングが難しくなる。さらに、同一の大きさと同一の構成からなる回路部品を、大量に、かつ、安価に製造するため、回路部品の製造におけるグラフェン接合体のハンドリングが大きな課題になる。さらに、グラフェン接合体の表面に形成する絶縁層のパターンと、絶縁層の表面に形成する導電層のパターンは、回路基板としてのグラフェン接合体の面積が小さくなるほど、また、長方形の回路基板の幅が狭くなるほど、正確な絶縁層と導電層のパターンニングが難しくなる。
先行出願では、回路基板としてのグラフェン接合体を、容器の底面に形成し、該グラフェン接合体を容器の底面から剥ぎ取る。この後、グラフェン接合体の表面に絶縁層を形成するため、グラフェン接合体の表面に絶縁ペーストを塗布し、グラフェン接合体を熱処理装置に配置させ、絶縁ペーストの熱処理後に、グラフェン接合体を熱処理装置から取り出す。さらに、グラフェン接合体に導電層を形成するため、絶縁層の表面に導電ペーストを塗布し、グラフェン接合体を熱処理装置に配置させ、導電ペーストの熱処理後に、グラフェン接合体を熱処理装置から取り出す。このため、面積が小さく、また、細長いグラフェン接合体の幅が狭くなるほど、グラフェン接合体のハンドリングが厄介になる。
また、先行出願では、グラフェン接合体の表面に絶縁ペーストを塗布し、グラフェン接合体を熱処理し、グラフェン接合体の表面に絶縁層を形成する。さらに、グラフェン接合体の表面に形成された絶縁層の表面に導電ペーストを塗布し、グラフェン接合体を熱処理し、絶縁層の表面に導電層を形成する。このため、回路基板としてのグラフェン接合体の面積が小さくなるほど、また、長方形のグラフェン接合体の幅が狭くなるほど、正確な絶縁層と導電層とのパターンニングが困難になる。
【0012】
これに対し、本発明では、第一に、絶縁性の金属酸化物の微粒子の集まりからなる絶縁層を、回路基板であるグラフェン接合体とは切り離して別途作成し、作成した絶縁層を、グラフェン接合体に摩擦圧接させる。いっぽう、先行出願では、グラフェン接合体の表面に絶縁ペーストを塗布し、グラフェン接合体を熱処理し、グラフェン接合体の表面に絶縁層を形成した。第二に、導電性の金属の微粒子の集まりからなる導電層を、回路基板であるグラフェン接合体とは切り離して別途作成し、作成した導電層を、絶縁層に摩擦圧接させる。いっぽう、先行出願では、グラフェン接合体に形成された絶縁層の表面に導電ペーストを塗布し、グラフェン接合体を熱処理し、絶縁層の表面に導電層を形成した。
つまり、本発明では、回路基板としてのグラフェン接合体の製造と、絶縁性の金属酸化物の微粒子同士が接合した該微粒子の集まりからなる絶縁層の形成と、金属結合で接合した金属微粒子の集まりからなる導電層の形成とを切り離し、それぞれを個別に製造ないしは形成した。さらに、容器の底面に形成したグラフェン接合体の表面の予め決めた位置に、絶縁層を摩擦圧接させ、また、絶縁層の表面の予め決めた位置に、導電層を摩擦圧接させる。このため、グラフェン接合体に絶縁層と導電層とを形成した回路部品を、容器の底から剥ぎ取った後にのみ、グラフェン接合体を唯一ハンドリングする。従って、グラフェン接合体のハンドリングは、必要最低限の1回のみである。また、本発明における絶縁層と導電層の形成は、容器の底面に該底面の形状として形成するため、絶縁層と導電層との大きさが小さくても、また、幅が狭くても、容器の底面に絶縁層と導電層とが形成できる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
グラフェン同士を摩擦圧接で接合したグラフェン接合体を回路基板として用い、絶縁性の金属酸化物からなる微粒子同士が摩擦圧接した該金属酸化物の微粒子の集まりからなる絶縁層を、前記回路基板の表面に摩擦圧接させ、さらに、金属微粒子同士が金属結合した該金属微粒子の集まりからなる導電層を、前記絶縁層の表面に摩擦圧接させ、前記回路基板の表面に、前記絶縁層と前記導電層とを摩擦圧接した回路部品を製造する方法は、
2枚の平行平板電極のうちの一方の平行平板電極の表面に、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりを平坦に引き詰め、該一方の平行平板電極を第一の容器に充填された1-ブタノール中に浸漬させ、さらに、他方の平行平板電極を前記一方の平行平板電極の上に重ね合わせ、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりを介して、前記2枚の平行平板電極を離間させ、該離間させた2枚の平行平板電極を前記1-ブタノール中に浸漬させる、この後、該2枚の平行平板電極の間隙に、予め決めた大きさからなる直流の電位差を印加する、これによって、該電位差の大きさを前記2枚の平行平板電極の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりに印加され、該鱗片状黒鉛粒子ないしは該塊状黒鉛粒子を形成する基底面の層間結合の全てが同時に破壊され、前記2枚の平行平板電極の間隙に、前記基底面に相当するグラフェンの集まりが析出する、この後、該2枚の平行平板電極の間隙を拡大し、さらに、該2枚の平行平板電極を前記1-ブタノール中で傾斜させ、さらに、前記第一の容器に左右、前後、上下の3方向の振動加速度を加え、前記グラフェンの集まりを、前記2枚の平行平板電極の間隙から、前記1-ブタノール中に移動させるとともに、該1-ブタノール中に前記グラフェンの集まりを分散させる、さらに、前記第一の容器から前記2枚の平行平板電極を取り出す、黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを容器内に製造する第一の工程と、
前記1-ブタノール中に分散したグラフェンの集まりの予め決めた一定の量を、前記第一の容器から、回路基板の形状を容器の底面形状として有する第二の容器に注入し、該第二の容器に、前記第一の工程で加えた振動加速度より大きな振動加速度として、前後、左右、上下の3方向の振動加速度を繰り返し加え、前記グラフェンの集まりが1-ブタノール中で平面状に並ぶとともに、該平面状に並んだグラフェンの集まりが1-ブタノールを介して重なり合って積層した該グラフェンの集まりを、前記第二の容器内に形成する、さらに、前記第二の容器を前記1-ブタノールの沸点に昇温し、前記グラフェンの集まりから該1-ブタノールを気化させ、前記平面状に並んだグラフェンの集まりが、重なり合って積層した該グラフェンの集まりが、前記第二の容器内に形成される、この後、前記グラフェンの集まりの表面の全体を覆う板材を該グラフェンの集まりに被せ、該板材の表面全体を均等に圧縮し、前記重なり合ったグラフェン同士が摩擦圧接し、該摩擦圧接で接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が回路基板として、前記第二の容器の底面に該底面の形状として形成される、この後、前記板材を前記第二の容器から取り出す、容器の底面に該底面の形状からなるグラフェン接合体を回路基板として形成する第二の工程と、
大気雰囲気での熱分解で金属酸化物を析出する第一の性質と、メタノールに分散する第二の性質を兼備する金属化合物を、メタノールに分散してメタノール分散液を作成し、該金属化合物のメタノール分散液の予め決めた一定の量を、絶縁層の形状を容器の底面形状として有する第三の容器に注入し、この後、該第三の容器をメタノールの沸点に昇温し、前記金属化合物のメタノール分散液から該金属化合物の微細結晶の集まりを析出させる、さらに、該第三の容器に、前記金属化合物の微細結晶の集まりの表面全体を覆う板材を被せ、前記第二の工程で板材に加えた圧縮力より小さい圧縮力として、該板材の表面全体を均等に圧縮し、前記金属化合物の微細結晶の集まりを破砕し、該微細結晶よりさらに微細な結晶の集まりを作成する、さらに、前記第三の容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温し、該金属化合物から金属酸化物の微粒子の集まりを析出させる、この後、前記金属化合物の微細結晶の集まりを破砕した際の圧縮力より大きな圧縮力を前記板材の表面全体に均等に加え、前記金属酸化物の微粒子同士を摩擦熱で接合させ、該金属酸化物の微粒子同士が接合した該微粒子の集まりからなる絶縁層を、前記第三の容器の底面に該底面の形状として形成する、この後、前記板材を前記第三の容器から取り出す、さらに、該第三の容器の底面に上下方向の衝撃加速度を繰り返し加え、前記絶縁層を前記第三の容器の底面から引き剥がす、絶縁性の金属酸化物の微粒子同士が摩擦接合した該微粒子の集まりからなる絶縁層を、容器の底面に該底面の形状として形成する第三の工程と、
大気雰囲気での熱分解で金属を析出する第一の性質と、メタノールに分散する第二の性質を兼備する金属化合物を、メタノールに分散してメタノール分散液を作成し、該金属化合物のメタノール分散液の予め決めた一定の量を、導電層の形状を容器の底面形状として有する第四の容器に注入し、この後、該第四の容器をメタノールの沸点に昇温し、前記金属化合物のメタノール分散液から該金属化合物の微細結晶の集まりを析出させ、さらに、前記第四の容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温する、これによって、金属の微粒子同士が接触して該金属の微粒子の集まりが一斉に析出し、該金属の微粒子同士が接触部で金属結合し、該金属結合で接合した金属の微粒子の集まりからなる導電層が、前記第四の容器の底面に該底面の形状とし形成される、この後、該第四の容器の底面に、前記第三の容器の底面に加えた衝撃加速度より小さい上下方向の衝撃加速度を繰り返し加え、前記導電層を前記第四の容器の底面から引き剥がす、金属の微粒子同士が金属結合した該金属微粒子の集まりからなる導電層を、容器の底面に該底面の形状として形成する第四の工程と、
前記第二の工程で形成した回路基板の予め決めた位置に、前記第三の工程で形成した絶縁層を重ね合わせ、該絶縁層の表面全体を覆う板材を被せ、前記第三の工程で金属酸化物の微粒子同士を摩擦熱で接合させる際に加えた圧縮力より小さい圧縮力で、該板材の表面全体を均等に圧縮し、前記回路基板と前記絶縁層との接触部を摩擦圧接し、該絶縁層を該回路基板に接合させる、この後、前記板材を前記第二の容器から取り出す、さらに、前記絶縁層の予め決めた位置に、前記第四の工程で形成した導電層を重ね合わせ、該導電層の表面全体を覆う新たな板材を被せ、前記回路基板に前記絶縁層を摩擦圧接させる際に加えた圧縮力より小さい圧縮力で、該新たな板材の表面全体を均等に圧縮し、前記導電層と前記絶縁層との接触部を摩擦圧接させ、該導電層を該絶縁層に接合させる、この後、前記新たな板材を前記第二の容器から取り出す、さらに、前記回路基板が形成された第二の容器の底面に、前記第三の容器の底面に加えた衝撃加速度より大きい上下方向の衝撃加速度を繰り返し加え、前記回路基板に前記絶縁層と前記導電層とが接合された回路部品を、前記第二の容器の底面から引き剥がす、回路基板に絶縁層と導電層とが摩擦圧接された回路部品を製造する第五の工程とからなり、
前記5つの工程からなる処理を連続して実施することで、グラフェン同士を摩擦圧接で接合したグラフェン接合体を回路基板とし、絶縁性の金属酸化物からなる微粒子同士が摩擦圧接した該金属酸化物の微粒子の集まりからなる絶縁層を、前記回路基板の表面に摩擦圧接し、さらに、金属微粒子同士が金属結合した該金属微粒子の集まりからなる導電層を、前記絶縁層の表面に摩擦圧接させ、前記回路基板の表面に、前記絶縁層と前記導電層とを摩擦圧接した回路部品を製造する方法。
【0014】
本発明の5つの工程からなる各々の工程における処理を説明する。
第一の工程は、最初に、1-ブタノール中で黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造する。すなわち、2枚の平行平板電極対の間隙に引き詰められた鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりを、絶縁体である1-ブタノール中に浸漬させ、2枚の平行平板電極対に直流の電位差を印加させる。これによって、電位差を2枚の平行平板電極対の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりが存在する電極間隙に発生する。この電界は、前記した黒鉛粒子の全てに対し、黒鉛結晶からなる基底面の層間結合を破壊させるのに十分なクーロン力を、基底面の層間結合の担い手である全てのπ電子に同時に与える。これによって、π電子はπ軌道上の拘束から解放され、全てのπ電子がπ軌道から離れて自由電子となる。つまり、π電子に作用するクーロン力が、π軌道の相互作用より大きな力としてπ電子に与えられると、π電子はπ軌道の拘束から解放されて自由電子になる。この結果、基底面の層間結合の担い手である全てのπ電子が、π軌道上に存在しなくなり、黒鉛粒子の全てについて、黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の全てが同時に破壊される。この結果、2枚の平行平板電極対の間隙に、黒鉛結晶からなる基底面の集まり、すなわち、グラフェンの集まりが瞬時に製造される。2枚の平行平板電極対が1-ブタノール中に浸漬しているため、平行平板電極対の間隙に析出したグラフェンの集まりは飛散しない。
なお、1-ブタノールは、導電率が9.12×10-7S/mで、比誘電率が17.5からなる絶縁体である。このため、1-ブタノール中に浸漬した2枚の平行平板電極間に、電位差を印加させると、2枚の平行平板電極の間隙に電界が発生する。
次に、グラフェンの集まりを、2枚の平行平板電極の間隙から1-ブタノール中に移動させる。このため、2枚の平行平板電極の間隙を、1-ブタノール中で拡大させ、さらに、1-ブタノール中で傾斜させ、この後、1-ブタノールが注入された容器に3方向の振動加速度を、各々の方向の振動加速度を5秒間ずつ加える。これによって、グラフェンの集まりが、2枚の平行平板電極の間隙から1-ブタノール中に移動する。この後、2枚の平行平板電極を容器から取り出す。なお、容器に加える振動加速度の大きさは、容器の大きさに応じて、0.2-0.3Gからなる振動加速度を加える。
第二の工程は、最初に、第一の容器から、1-ブタノール中に分散したグラフェンの集まりの予め決めた一定の量を、回路基板の形状を容器の底面形状として有する第二の容器に注入する。つまり、回路基板は、様々な大きさと様々な形状からなるため、回路基板を容器の底面に形成する容器を、第一の容器とは異なる第二の容器として用いた。
次に、第二の容器に前後、左右、上下の3方向の振動加速度を、各々の方向の振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加える。この際に、1-ブタノール中に分散されたグラフェンの集まりは、1-ブタノール中でグラフェンの集まりが平面状に並ぶとともに、平面状に並んだグラフェンの集まりが1-ブタノールを介して重なり合って積層した該グラフェンの集まりが、第二の容器に形成される。なお、振動加速度の大きさは、第一の工程で第一の容器に加えた振動加速度より大きい振動加速度として、第二の容器の大きさに応じて、0.3-0.5Gからなる振動加速度を加える。つまり、第二の容器内で、全てのグラフェンは、低粘度で低密度の1-ブタノールで覆われ、1-ブタノール中に分散している。この第二の容器に、3方向の振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返して加えると、低粘度で低密度の1-ブタノールが、殆ど質量を持たないグラフェンを伴って振動加速度の方向に移動する。いっぽう、グラフェンのアスペクト比を、厚みに対する長径の比率とすると、アスペクト比は、3×103-9×106と極めて大きい。このため、グラフェンは、面を上にして、1-ブタノールと共に、振動加速度の方向に移動する。また、面を上にしてグラフェンが1-ブタノール中で再配列する動きが継続する。これによって、グラフェンの集まりが、1-ブタノール中で平面状に並び、平面状に並んだグラフェンが、1-ブタノールを介して重なり合って積層する現象が、1-ブタノール中で進む。この結果、グラフェンが1-ブタノール中で平面状に並び、平面状に並んだグラフェンが、1-ブタノールを介して重なり合って積層したグラフェンの集まりが、第二の容器に形成される。
さらに、第二の容器を1-ブタノールの沸点に昇温し、グラフェンの集まりから1-ブタノールを気化させる。1-ブタノールが気化する際に、黒鉛結晶から黒鉛粒子の集まりを精製する際に、鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子の表面に付着した水分が1-ブタノールとともに気化する。これによって、グラフェンが清浄化され、清浄化されたグラフェン同士が重なり合う。この後、グラフェンの集まりの全体を覆う板材を被せ、該板材の表面の全体を均等に圧縮する。これによって、清浄化されたグラフェンの集まりが、平面状に並んで重なり合って積層し、重なり合った面でグラフェン同士が摩擦圧接し、接合強度が高いグラフェン接合体が、第二の容器の底面に、該底面の形状として形成される。
第三の工程は、絶縁性の金属酸化物の微粒子同士が接合した該微粒子の集まりからなる絶縁層を形成する工程である。
最初に、熱分解で金属酸化物を析出する第一の性質と、メタノールに分散する第二の性質を兼備する金属化合物を、メタノールに分散してメタノール分散液を作成する。つまり、金属化合物のメタノール分散液からメタノールを気化させると、金属化合物の微細結晶の集まりが、100nmより小さい微粒子の集まりとして析出する。これに対し、金属化合物がメタノールに溶解すると、金属化合物を構成する金属が金属イオンとなってメタノール中に溶出し、溶解した金属化合物を、溶解前の金属化合物に戻すことができない。従って、金属化合物のメタノール溶解液からメタノールを気化させると、溶解前の金属化合物が析出しない。このため、熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物は、メタノールに溶解せず、メタノールに分散する金属化合物を用いる。
次に、金属化合物のメタノール分散液の予め決めた一定の量を、絶縁層の形状を容器の底面形状として有する第三の容器に注入する。つまり、絶縁層の大きさと厚みとを予め決め、これに基づき第三の容器の大きさを決める。この後、予め決めた大きさと厚みとからなる絶縁層を形成するために必要な金属化合物のメタノール分散液を明らかにする。この検討結果に基づき、金属化合物のメタノール分散液の必要な量を、第三の容器に注入する。
さらに、第三の容器をメタノールの沸点に昇温し、金属化合物のメタノール分散液から、金属化合物の微細結晶の集まりを析出させる。この際、金属化合物の微細結晶の集まりが、100nmより小さい微粒子の集まりとして析出する。なお、分子状態で分散していた金属化合物が微細結晶として析出したため、微細結晶は、金属化合物の単分子を形成する結晶が集積した結晶の集まりである。このため、微細結晶に応力が加わると、微細結晶は容易に破砕する。しかし、微細結晶が微細になるほど、微細結晶に応力が加わることが難しくなり、微細結晶の微細化には限界がある。
この後、第三の容器に、金属化合物の微細結晶の集まりの全体を覆う板材を被せ、板材の表面全体を均等に圧縮し、金属化合物の微細結晶の集まりを破砕し、前記の微細結晶よりさらに微細な結晶の集まりとする。この際、微細結晶の大きさが相対的に大きい結晶ほど粉砕されやすいため、相対的に大きい微細結晶が優先して粉砕され、圧縮応力が加えられている間は、微細結晶の粉砕が進む。いっぽう、微細結晶が破砕されると、新たな空隙が微細結晶の集まりに形成され、破砕されより微細になった結晶の集まりが空隙に移動して空隙を埋める。こうした微細結晶の破砕が進むに連れ、破砕されより微細になった結晶が高い密度で重なり合い、より微細になった結晶の集まりが高い密度で集積する。結晶の破砕が限界の大きさになると、板材に圧縮応力を加えても、微細結晶の粉砕が進まず、圧縮応力を加えた板材に動きがみられなくなり、板材からの反発力が増加する。この時点で板材の表面を圧縮する処理を停止する。この結果、微細結晶の大きさは、析出した時点の大きさに比べ、1/5に近い20nm前後の大きさまで微細化される。
さらに、第三の容器を金属化合物が熱分解する温度に昇温し、金属酸化物の微粒子の集まりを析出させる。最初に、水分や水酸基を持つ化合物からなる異物が、微細結晶に吸着していた場合は、これらの異物が優先して気化する。次に、金属化合物の微細結晶の熱分解が始まり、金属化合物が有機物の分子と金属酸化物の分子とに熱分解し、有機物の分子の気化が完了した際に、金属酸化物の分子が集まって、10nm前後の大きさからなる金属酸化物の粒状のナノ粒子を形成し、ナノ粒子が一斉に析出する。この際、粒状のナノ粒子が重なり合って析出し、ナノ粒子同士が接触して積層し、第三の容器に注入した金属化合物のメタノール分散液の量に応じて、ナノ粒子の集まりが、一定の厚みからなる絶縁層を形成する。なお、金属酸化物のナノ粒子は、不純物を一切含まず、真性な金属酸化物のナノ粒子として析出する。
この後、金属化合物の微細結晶の集まりを破砕した際の圧縮力より大きな圧縮力を板材の表面全体に均等に加え、10nm前後の大きさからなる金属酸化物の微粒子同士を摩擦熱で接合させる。つまり、前記したように、微細結晶をより微細な結晶に破砕した際に、20nm前後の大きさからなる結晶の集まりが高い密度で重なり合って集積した。この後、20nm前後の大きさからなる結晶を熱分解すると、10nm前後の大きさからなる金属酸化物のナノ粒子の集まりが、重なり合って一斉に析出し、ナノ粒子の集まりが重なり合って接触する。こうした金属酸化物のナノ粒子の集まりを圧縮すると、最初に、ナノ粒子が極わずか移動して、ナノ粒子の集まりにおける集積密度がさらに高まり、次に、ナノ粒子の移動が困難になると、ナノ粒子に圧縮応力が加わる。この際、ナノ粒子は限界の大きさに微細化されているため、ナノ粒子は破砕せず、ナノ粒子同士が接触した部位に過大な摩擦熱が短時間発生し、ナノ粒子同士が、接触部で摩擦圧接する。また、ナノ粒子が、第三の容器の底面に摩擦圧接する。この結果、金属酸化物のナノ粒子の集まりからなる絶縁層が、前第三の容器の底面に該底面の形状として形成される。なお、限界の大きさに微細化された金属酸化物のナノ粒子同士が、接触部で摩擦圧接されているため、金属酸化物のナノ粒子の集まりからなる絶縁層は、一定の機械的強度を持ち、破壊しにくく、変形しにくい。また、圧縮応力に対し変形しにくい。
この後、第三の容器の底面に、容器の大きさに応じて、0.3-0.5Gからなる衝撃加速度を5秒間断続的に加え、底面に形成された絶縁層を、底面から引き剥がす。なお、金属酸化物のナノ粒子の集まりからなる絶縁層も衝撃力を短い時間繰り返し受ける。しかし、絶縁層の第三の容器の底面と接触する反対の面は大気に解放され、拘束されていないため、絶縁層に衝撃力による圧縮応力は発生しない。また、絶縁層は、すでに圧縮力によって、ナノ粒子同士が摩擦圧接しているため、衝撃力によって絶縁層は破壊されず、変形もしない。
第四の工程は、金属結合で接合した金属の微粒子の集まりからなる導電層を形成する工程である。
最初に、大気雰囲気での熱分解で金属を析出する第一の性質と、メタノールに分散する第二の性質を兼備する金属化合物を、メタノールに分散してメタノール分散液を作成する。つまり、前記した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物と同様に、金属化合物のメタノール分散液からメタノールを気化させると、金属化合物の微細結晶の集まりが、100nmより小さい微粒子の集まりとして析出する。これに対し、金属化合物がメタノールに溶解すると、金属化合物を構成する金属が金属イオンとなってメタノール中に溶出し、溶解した金属化合物を、溶解前の金属化合物に戻すことができない。従って、金属化合物のメタノール溶解液からメタノールを気化させると、溶解前の金属化合物が析出しない。このため、熱分解で金属を析出する金属化合物は、メタノールに溶解せず、メタノールに分散する金属化合物を用いる。
次に、金属化合物のメタノール分散液の予め決めた一定の量を、導電層の形状を容器の底面形状として有する第四の容器に注入する。つまり、導電層の大きさと厚みとを予め決め、これに基づき、第四の容器の大きさを決める。この後、予め決めた大きさと厚みとからなる導電層を形成するために必要な金属化合物のメタノール分散液を明らかにする。この検討結果に基づき、金属化合物のメタノール分散液の必要な量を、第四の容器に注入する。
この後、第四の容器をメタノールの沸点に昇温し、金属化合物のメタノール分散液から金属化合物の微細結晶の集まりを析出させる。前記した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物と同様に、金属化合物のメタノール分散液からメタノールを気化させると、金属化合物の微細結晶の集まりが、100nmより小さい微粒子の集まりとして析出する。
さらに、第四の容器を金属化合物が熱分解する温度に昇温する。最初に、水分や水酸基を持つ化合物からなる異物が、微細結晶に吸着していた場合は、これらの異物が優先して気化する。次に、金属化合物の微細結晶の熱分解が始まり、金属化合物が、有機物の分子と金属の分子とに熱分解し、有機物の分子の気化が完了した際に、金属の分子が集まって、40-60nm前後の大きさからなる金属の粒状のナノ粒子を形成し、ナノ粒子の集まりが高い密度で一斉に析出する。この際、金属のナノ粒子は、不純物を一切含まず、真性な金属のナノ粒子として活性状態で析出するため、金属のナノ粒子同士が接触部位で金属結合し、金属結合で接合した金属のナノ粒子の集まりが、第四の容器の底面に導電層として形成される。
この後、第四の容器の底面に上下方向の衝撃加速度を繰り返し加え、導電層を第四の容器の底面から引き剥がす。なお、金属のナノ粒子の集まりからなる導電層も衝撃力を短時間繰り返し受けるが、導電層の第四の容器の底面と接触する反対の面は大気に解放され、拘束されていないため、導電層に衝撃力による圧縮応力は発生しない。また、導電層は、すでに金属結合で金属のナノ粒子同士が接合しているため、衝撃力によって導電層は破壊されず、また、変形しない。
第五の工程は、回路基板としてのグラフェン接合体の表面に、絶縁層を摩擦圧接させ、さらに、絶縁層の表面に、導電層を摩擦圧接させる工程である。
最初に、第二の工程で第二の容器の底面に摩擦圧接されたグラフェン接合体の予め決めた位置に、第三の工程で形成した絶縁層を重ね合わせ、絶縁層の全体を覆う板材を被せ、板材の表面全体を均等に圧縮し、グラフェン接合体と絶縁層との接触部を摩擦圧接する。すなわち、グラフェン接合体は、厚みが0.332nmからなるグラフェン同士が重なり合って摩擦圧接したため、グラフェン接合体の表面は完全な平面に近い。いっぽう、絶縁層は、10nm前後の大きさからなる金属酸化物のナノ粒子同士が、接触部で摩擦圧接したナノ粒子の集まりである。従って、絶縁層をグラフェン接合体の予め決めた位置に重ね合わせ、絶縁層の全体を均等に圧縮すると、絶縁層の最下層を形成するナノ粒子の集まりが、グラフェン接合体と接触する部位に、過大な摩擦熱が短時間発生し、金属酸化物のナノ粒子がグラフェン接合体に摩擦圧接する。いっぽう、前記第三の工程で金属酸化物のナノ粒子同士を摩擦熱で接合させる際に加えた圧縮力より小さい圧縮力で、絶縁層をグラフェン接合体に摩擦圧接させる。このため、絶縁層を形成する金属酸化物のナノ粒子の集まりは、すでにより大きな圧縮力で接触部において摩擦圧接しているため、絶縁層の全体を、グラフェン接合体の表面に均等に圧縮する際に、絶縁層を形成する金属酸化物のナノ粒子の集まりに変化はない。
次に、板材を絶縁層から取り外し、絶縁層の予め決めた位置に、第四の工程で形成した導電層を重ね合わせ、導電層の表面全体を覆う新たな板材を被せ、新たな板材の表面全体を均等に圧縮する。金属の硬度は金属酸化物の硬度より低いため、最初に、金属結合した金属のナノ粒子が僅かに塑性変形する。次に、導電層と絶縁層との接触部において、金属結合した金属のナノ粒子が僅かに塑性変形する。さらに、僅かに塑性変形した金属のナノ粒子が、金属酸化物のナノ粒子と接触する部位に、過大な摩擦熱が短時間発生し、金属のナノ粒子が金属酸化物のナノ粒子に摩擦圧接する。なお、金属のナノ粒子が塑性変形する際に、全てのナノ粒子同士が金属結合しているため、ナノ粒子同士の金属結合は破壊されず、金属結合したナノ粒子が塑性変形する。また、新たな板材に加える圧縮応力は、絶縁層をグラフェン接合体に摩擦圧接する際に、板材に加える圧縮応力より小さい。この理由は、金属酸化物の硬度が金属の硬度より高いため、金属酸化物のナノ粒子同士を摩擦圧接する際に、金属のナノ粒子同士を摩擦圧接する際より大きな圧縮応力が必要になるからである。従って、導電層を絶縁層に摩擦圧接する際に、金属酸化物のナノ粒子の集まりからなる絶縁層に変化はない。
この後、新たな板材を導電層から取り外し、グラフェン接合体が形成された第二の容器の反対側の底面に、前記第三の容器の底面に加えた衝撃加速度より大きい衝撃加速度を、上下方向の衝撃加速度として繰り返し加え、グラフェン接合体に絶縁層と導電層とが接合された回路部品を第二の容器の底面から引き剥がす。この際に、第二の容器の底面に摩擦圧接したグラフェン接合体に衝撃加速度が短時間繰り返し加わるが、グラフェン接合体に絶縁層と導電層とが接合された回路部品は、第二の容器の底面と反対側の面が、大気に解放されているため、拘束されない状態にあり、回路部品に圧縮力は発生せず、回路部品は破壊されず、また、変形もしない。つまり、グラフェン接合体は、グラフェン同士がすでに圧縮応力によって摩擦圧接されているため、圧縮応力が加わらないグラフェン接合体は、衝撃加速度によって破壊されず、また、変形もしない。同様に、絶縁層と導電層とについても、すでに圧縮応力によって摩擦圧接されているため、衝撃加速度によって、絶縁層と導電層は破壊されず、また、変形もしない。
なお、本発明における回路部品の製造は、第二の容器の底面に形成したグラフェン接合体の表面に、第三の工程で形成した絶縁層を摩擦圧接させ、さらに、絶縁層の表面に、第四の工程で形成した導電層を摩擦圧接させる。このため、絶縁層と導電層とを形成した回路部品を、容器の底から剥ぎ取った後にのみ、回路基板としてのグラフェン接合体を唯一ハンドリングする。従って、グラフェン接合体のハンドリングは、必要最低限の1回のみである。
【0015】
ここで、第一の工程において、2枚の平行平板電極対の間隙に印加した電界によって、2枚の平行平板電極対の間隙に引き詰められた黒鉛粒子において、黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の全てが、同時に破壊される現象を説明する。
黒鉛粒子における黒鉛結晶からなる基底面を形成する炭素原子は4つの価電子を持つ。このうちの3つの価電子は、黒鉛結晶からなる基底面、すなわち、グラフェンを形成するσ電子である。このσ電子は、基底面上で隣り合う3つの炭素原子が持つσ電子と互いに120度の角度をなして共有結合し、六角形の強固な網目構造を2次元的に形成する。残り一つの価電子はπ電子であり、基底面に垂直な方向に伸びるπ軌道上に存在する。このπ電子は、基底面に垂直な上下方向で隣り合う炭素原子が持つπ電子と弱い結合力で結合し、この弱い結合力に基づいて基底面同士が層状に積層される。つまり、基底面、すなわち、グラフェンは、弱い結合力であるπ軌道の相互作用によって互いに層状に結合されている。このため、黒鉛粒子は、黒鉛結晶からなる基底面で剥がれ易い性質、すなわち、機械的な異方性を持つ。この機械的な異方性は、黒鉛粒子の潤滑性として知られている。
こうした黒鉛粒子に電界を印加させると、全てのπ電子に電界によるクーロン力が作用する。π電子に作用するクーロン力が、π電子に作用しているπ軌道の相互作用より大きな力としてπ電子に作用すると、π電子はπ軌道上の拘束から解放される。この結果、全てのπ電子がπ軌道から離れて自由電子となる。これによって、黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の担い手である全てのπ電子がπ軌道上にいなくなるため、全ての基底面の層間結合は同時に破壊される。すなわち、π電子がクーロン力Fによって黒鉛結晶の層間距離bの距離を動く際に、π電子は仕事W(W=b・F)を行う。この仕事Wが、π電子に作用する1原子当たりのπ軌道の相互作用の大きさである35ミリエレクトロンボルト (エレクトロンボルトは電子が持つエネルギーの大きさを表す単位で、1エレクトロンボルトは1.62×10-19ジュールに相当する)を超えると、π電子はπ軌道の相互作用の拘束から解放されて自由電子になる。例えば、2枚の平行平板電極対の間隙を100μmで離間させ、この電極間に10.6キロボルト以上の直流の電位差を印加させると、黒鉛結晶からなる全ての基底面の層間結合が瞬時に破壊される。このように、安価な黒鉛粒子の集まりに電界を印加するという極めて簡単な手段によって、大量のグラフェンが安価に製造できる。また、全ての基底面の層間結合が同時に破壊するため、得られる微細な物質は、確実に黒鉛結晶からなる基底面、すなわち、グラフェンである。
なお、ここで言う黒鉛粒子の集まりとは、1gから100g程度の比較的少量の黒鉛粒子の集まりを言う。つまり、鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子は、嵩密度が0.2-0.5g/cm3で、粒子の大きさが1-300ミクロンの分布を持つ微細な粒子である。従って、黒鉛粒子の集まりを2枚の平行平板電極対の間隙に引き詰めることは容易で、2枚の平行平板電極対に電位差を印加することも容易である。2枚の平行平板電極対の間隙に電位差を印加すると、黒鉛粒子が引きつめられた全ての領域に電界が発生する。この電界が、π軌道の相互作用より大きなクーロン力としてπ電子に作用し、π電子はπ軌道上の拘束から解放され、自由電子になる。この結果、黒鉛粒子における黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の全てが同時に破壊され、2枚の平行平板電極対の間隙に、黒鉛結晶からなる基底面、すなわち、グラフェンの集まりが製造される。
ここで、グラフェンの数を算術で求める。ここでは、全ての黒鉛粒子が、直径が25ミクロンの球から構成されると仮定し、黒鉛の真密度が2.25×103kg/m3であるから、黒鉛粒子の1個の重さは僅かに1.84×10-8gになる。また、黒鉛粒子の厚みの平均値が10ミクロンと仮定すると、層間距離が3.354オングストロームであるので、10ミクロンの厚みを持つ鱗片状黒鉛粒子には297,265個の基底面、すなわち、グラフェンが積層されている。従って、黒鉛結晶からなる基底面の層間結合を全て破壊することで、僅か1個の球状の黒鉛粒子から297,265個のグラフェンの集まりが得られる。このため、球状の黒鉛粒子の僅か1gの集まりについて、基底面の層間結合の全てを破壊した際に、1.62×1013個からなるグラフェンの集まりが得られる。従って、僅かな量の黒鉛粒子の集まりから、莫大な数からなるグラフェンの集まりが得られる。なお、以上に説明した黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造する方法は、本発明者による特許文献3に記載されている。
【0016】
ここで、前記した4つの工程の各々の工程で製造ないしは形成した回路基板、絶縁層および導電層の作用効果を説明する。
第一の工程で、黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造した。グラフェンは、次の6つの性質を兼備する素材である。第一に、炭素原子が六角形からなる網目構造を二次元的に形成する炭素原子の集まりからなる単結晶材料で、厚みが炭素原子の大きさに相当する僅か0.332nmで、質量をほとんど持たない極めて軽量な素材である。第二に、熱伝導率が1880W/mKで、金属の中で最も熱伝導率が高い銀の熱伝導率の4.5倍に相当する熱伝導率を持つ。第三に、体積固有抵抗率は1.3μΩcmで、金属の中で最も体積固有抵抗率が小さい銀の体積固有抵抗率である1.6μΩcmよりさらに小さい。第四に、融点が3000℃を超える単結晶材料で、耐熱温度が3000℃を超える。第五に、破断強度が42N/mであり、鋼の100倍を超える強度を持ち、ヤング率が1020GPaと極めて大きい強靭な素材である。第六に、酸およびアルカリと反応しないない極めて安定した物質である。
第二の工程で、グラフェン同士を重ね合わせ、重なり合ったグラフェン同士を摩擦圧接で直接接合したグラフェン接合体を製造した。グラフェン接合体は、グラフェンのみで構成され、グラフェンに近い前記した6つの性質を持つ。従って、グラフェン接合体からなる回路基板は、9段落に記載したアルミニウムが持つ5つの性能の全てについて、アルミニウムより著しく優れる。このため、9段落に記載した第一の課題が解決される。
さらに、グラフェン接合体は、第一に、グラフェン同士を重ね合わせ、重なり合ったグラフェン同士を摩擦圧接で直接接合したため、グラフェン接合体はグラフェンのみで構成され、グラフェンに近い性質を持つ。例えば、グラフェンが20層を形成して重なり合って接合しても、厚みは僅かに6.6nmに過ぎない。従って、グラフェン接合体の重量は極めて小さい。このため、回路基板としての重量は極めて小さく、殆ど質量を持たない。
第二に、グラフェン接合体においては、グラフェンの熱伝導率の異方性によって、グラフェン同士が重なり合ったグラフェンの面の方向に熱が優先して伝わるため、グラフェン接合体の熱伝導率は、グラフェンの熱伝導率に近い。つまり、グラフェンの厚み方向の熱伝導率は極めて小さく、面方向に熱が優先して伝わる。従って、グラフェン接合体は、銀より優れた熱伝導性を持つ回路基板として作用する。
第三に、グラフェン接合体に照射された電磁波は、グラフェンに電磁波が照射され、あるいは、グラフェン接合体に伝わった電磁波は、グラフェンに電磁波が伝わり、グラフェンの体積固有抵抗率に応じた電磁波のシールド性を発揮する。このため、銀より優れた電磁波シールド性を持つ回路基板として作用する。
第四に、厚みに対する面積の比率であるアスペクト比が極めて大きいグラフェンが、グラフェン同士が重なり合った面で強固に接合するため、グラフェン接合体の機械的強度は、グラフェンの機械的強度に近い。グラフェンの破断強度が42N/mと大きく、鋼の100倍を超える強度を持つため、極めて高い破断強度を持つ回路基板として作用する。
第五に、摩擦圧接でグラフェン同士が接合したグラフェン接合体の耐熱性は、グラフェンの耐熱性に近い。このため、金属の融点を超える耐熱性を持つ回路基板として作用する。
第六に、グラフェン接合体の形状と面積は、第二の容器の形状に応じて自在に変えられる。従って、回路基板の形状と大きさに制約がない。
第七に、回路基板としてのグラフェン接合体は、極めて簡単な処理によって製造される。また、黒鉛粒子は、極めて安価な工業用の素材である。このため、安価な回路基板が製造される。
第三の工程で、絶縁性の金属酸化物のナノ粒子の集まりからなる絶縁層を形成した。ナノ粒子は、10nm前後と極めて小さいため、比表面積が極めて大きい。従って、絶縁性の金属酸化物のナノ粒子の絶縁抵抗は、絶縁性の金属酸化物のバルク材に比べて、金属酸化物の体積固有抵抗率に基づく絶縁抵抗より著しく大きくなる。さらに、ナノ粒子の集まりからなる絶縁層は、厚み方向に積み重なったナノ粒子の集まりが形成する抵抗は、ナノ粒子同士が直列接続した抵抗値になる。これに対し、面方向に接続したナノ粒子の集まりが形成する抵抗は、ナノ粒子の集まりが並列接続した抵抗値になる。絶縁層を形成するナノ粒子の集まりは、面方向に接続したナノ粒子の集まりの数の方が、厚み方向に積み重なったナノ粒子の集まりの数より、圧倒的に多数であるため、ナノ粒子の集まりからなる絶縁層は、絶縁層の厚みが薄くなるほど、絶縁抵抗が増える。従って、絶縁層の厚みが薄い絶縁層は、絶縁層の厚みが薄くなるほど絶縁抵抗が高くなるが、回路基板に熱を伝えやすくなる。例えば、絶縁層の厚みを、ナノ粒子が10個前後積み重なった絶縁層とすると、4段落に記載した合成樹脂の絶縁層の厚みの1/1000より薄い絶縁層になる。これによって、従来の合成樹脂の絶縁層より、著しく絶縁抵抗が大きく、著しく熱伝導に優れる絶縁層を形成する。また、絶縁性の金属酸化物の融点は、金属の融点より高いため、金属より耐熱性に優れる。さらに、絶縁層が、金属酸化物のナノ粒子同士が摩擦圧接した該金属酸化物のナノ粒子の集まりであり、例えば、100nm程度の厚みで積層した極めて厚みが薄い膜であり、さらに、金属酸化物のナノ粒子の集まりが、回路基板に摩擦圧接され、回路基板と一体化されている。さらに、絶縁層の回路基板に接続した反対側の面は、大気に解放され、拘束されないため、回路基板から応力を受けず、回路基板に機械的応力と熱的応力が加わっても、絶縁層は剥離しない。いっぽう、回路基板は、極めて機械的強度が高く、極めて熱伝導性に優れるグラフェン同士が摩擦圧接されたグラフェン接合体である。従って、回路部品にどのような機械的応力と熱的応力が加わっても、回路基板は全く損傷を受けない。このため、回路基板と一体化された絶縁層も、全く損傷を受けない。これによって、9段落に記載した第二の課題が解決される。さらに、絶縁層の大きさと形状は、第三の容器の形状で決まるため、第三の容器が加工できる2-3mm以上の大きさであれば、絶縁層の大きさと形状との制約はない。また、金属化合物のメタノール分散液の粘度が、メタノールに近いため、直径が2-3mmの溝に、金属化合物のメタノール分散液が注入できる。さらに、熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物は、汎用的な工業用の薬品である。さらに、絶縁層の形成は、いずれも簡単な処理によって形成される。これによって、9段落に記載した第三の課題が解決される。
第四の工程で、導電性の金属のナノ粒子の集まりからなる導電層を形成した。導電層に流れる電流の大きさに応じて、導電層の厚みを増やす必要があるが、第四の容器に注入する金属化合物のメタノール分散液の量によって、導電層の厚みが自在に変えられる。さらに、導電層の大きさと形状は、第四の容器の形状で決まるため、第四の容器が加工できる2-3mm以上の大きさであれば、導電層の大きさと形状との制約はない。また、金属化合物のメタノール分散液の粘度が、メタノールに近いため、直径が2-3mmの溝に、金属化合物のメタノール分散液が注入できる。また、熱分解で金属を析出する金属化合物は、汎用的な工業用の薬品である。さらに、導電層の形成は、いずれも簡単な処理によって形成される。これによって、9段落に記載した第三の課題が解決される。
以上に説明したように、本発明における回路基板、絶縁層および導電層は、多くの作用効果をもたらす。
【0017】
13段落に記載した回路部品を製造する方法が、同一の構成からなる回路部品の複数を同時に製造する方法であり、該複数の回路部品を同時に製造する方法は、
13段落の第二の工程に記載した第二の容器に、同じ形状からなる複数の溝を形成し、13段落の第一の工程に記載した1-ブタノール中に分散されたグラフェンの集まりの同じ量を、前記複数の溝の各々の溝に注入し、さらに、前記第二の容器に3方向の振動加速度を繰り返し加え、前記グラフェンの集まりが1-ブタノール中で平面状に並ぶとともに、該平面状に並んだグラフェンの集まりが1-ブタノールを介して重なり合って積層した該グラフェンの集まりを、前記複数の溝の各々の溝内に形成する、この後、前記第二の容器を1-ブタノールの沸点に昇温し、前記複数の溝から1-ブタノールを気化させ、該複数の溝の各々の溝に、グラフェン同士が重なり合った該グラフェンの集まりを該溝の底面に形成する、さらに、13段落の第二の工程に記載した板材が、複数の同一形状からなる突起を有し、該突起の側面が前記溝の側面と接触する形状で、該突起の長さが前記溝の深さより長い特徴を有する複数の突起であり、該複数の突起を形成した板材を用意し、該板材の前記複数の突起を有する面を、前記第二の容器の複数の溝を有する面に重ね合わせ、前記複数の突起を前記複数の溝に挿入する、この後、前記板材の前記複数の突起が形成された反対側の表面全体を均等に圧縮し、前記溝の底面に形成された前記重なり合ったグラフェン同士を摩擦圧接し、該摩擦圧接で接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が回路基板として、前記複数の溝の各々の溝の底面に該底面の形状として同時に形成される、この後、前記板材を前記第二の容器から取り出す、同じ形状からなる複数のグラフェン接合体を、複数の溝の各々の溝の底面に該底面の形状として同時に形成する第一の工程と、
13段落の第三の工程に記載した第三の容器に、同じ形状からなる複数の溝を形成し、13段落の第三の工程に記載した金属化合物のメタノール分散液の同じ量を、前記複数の溝の各々の溝に注入する、この後、前記第三の容器をメタノールの沸点に昇温し、前記複数の溝の各々の溝からメタノールを気化させ、前記金属化合物の微細結晶の集まりを前記複数の溝の各々の溝に析出させる、さらに、13段落の第三の工程に記載した板材が、複数の同一形状からなる複数の突起を有し、該突起の側面が前記溝の側面と接触する形状で、該突起の長さが前記溝の深さより長い特徴を有する複数の突起であり、該複数の突起を有する板材を用意し、該板材の前記複数の突起を有する面を、前記第三の容器の複数の溝を有する面に重ね合わせ、前記複数の突起を前記複数の溝に挿入する、この後、前記第一の工程で板材に加えた圧縮力より小さい圧縮力として、前記板材の前記複数の突起が形成された反対側の表面全体を均等に圧縮し、前記複数の溝の各々の溝の底面に形成された前記金属化合物の微細結晶の集まりを破砕する、この後、前記第三の容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温し、絶縁性の金属酸化物のナノ粒子の集まりを析出させる、さらに、前記金属化合物の微細結晶の集まりを破砕した際の圧縮力より大きな圧縮力を前記板材の表面全体に均等に加え、前記複数の溝の各々溝に析出した前記金属酸化物のナノ粒子の集まりを圧縮し、前記金属酸化物の微粒子同士の接触部を摩擦圧接させ、該金属酸化物の微粒子同士が接合した該微粒子の集まりからなる絶縁層を、前記複数の溝の各々の溝の底面に該底面の形状として同時に形成する、この後、前記板材を前記第三の容器から取り出す、さらに、前記第三の容器の前記複数の溝が形成された部位に相当する該第三の容器の底面の複数個所に、上下方向の衝撃加速度を繰り返し加え、前記絶縁層を前記複数の溝の各々の溝の底面から同時に引き剥がす、同じ形状からなる複数の絶縁層を、複数の溝の各々の溝の底面に該底面の形状として同時に形成する第二の工程と、
13段落の第四の工程に記載した第四の容器に、同じ形状からなる複数の溝を形成し、13段落の第四の工程に記載した金属化合物のメタノール分散液の同じ量を、前記複数の溝の各々の溝に注入する、この後、前記第四の容器をメタノールの沸点に昇温し、前記複数の溝からメタノールを気化させ、前記金属化合物の微細結晶の集まりを前記複数の溝の各々の溝に析出させる、さらに、前記第四の容器を前記金属化合物が熱分解する温度に昇温する、これによって、金属の微粒子同士が接触した該金属の微粒子の集まりが一斉に析出し、該金属の微粒子同士が接触部で金属結合し、該金属結合した金属の微粒子の集まりが、前記複数の溝の各々の溝の底面に導電層として同時に形成される、この後、前記第四の容器の前記複数の溝が形成された部位に相当する該第四の容器の底面の複数個所に、前記第三の容器の底面に加えた衝撃加速度より小さい上下方向の衝撃加速度を繰り返し加え、前記導電層を前記複数の溝の各々の溝の底面から同時に引き剥がす、同じ形状からなる複数の導電層を、複数の溝の各々の溝の底面に同時に形成する第三の工程と、
前記第一の工程で作成した複数の溝の各々の溝の底面に該底面の形状として形成されたグラフェン接合体の表面の予め決めた同じ位置に、前記第二の工程で作成した絶縁層を配置させる、また、13段落の第五の工程に記載した板材が、複数の同一形状からなる突起を有し、該突起の先端の形状が前記絶縁層の形状を有し、該複数の突起が、前記複数の溝に配置された前記複数の絶縁層の表面と接触する位置に形成されるとともに、前記複数の絶縁層を圧縮する長さを持った特徴を有する複数の突起であり、該複数の突起を有する板材を用意し、該板材を、前記複数の突起の先端が前記複数の絶縁層と接触するように、前記複数の溝が形成された第二の容器に重ね合わせ、前記第二の工程で金属酸化物の微粒子同士を摩擦熱で接合させる際に加えた圧縮力より小さい圧縮力で、前記板材の前記複数の突起が形成された反対側の表面全体を均等に圧縮し、前記グラフェン接合体と前記絶縁層との接触部を摩擦圧接させ、該絶縁層を前記グラフェン接合体に接合させる、この後、前記板材を前記第二の容器から取り出す、さらに、前記複数の絶縁層の各々の絶縁層の予め決めた同じ位置に、第三の工程で作成した導電層を配置させる、また、13段落の第五の工程に記載した新たな板材が、複数の同一形状からなる突起を有し、該突起の先端の形状が前記導電層の形状を有し、該複数の突起が、前記複数の溝に配置された前記複数の導電層の表面と接触する位置に形成されるとともに、前記複数の導電層を圧縮する長さを持った特徴を有する複数の突起であり、該複数の突起を有する板材を用意し、該板材を、前記複数の突起が前記複数の導電層の表面と接触するように、前記複数の溝が形成された第二の容器に重ね合わせ、前記グラフェン接合体に前記絶縁層を摩擦圧接させる際に加えた圧縮力より小さい圧縮力で、前記板材の前記複数の突起が形成された反対側の表面全体を均等に圧縮し、前記導電層と前記絶縁層との接触部を摩擦圧接させ、該導電層を該絶縁層に接合させる、この後、前記新たな板材を前記第二の容器から取り外す、さらに、前記第二の容器の前記複数の溝が形成された部位に相当する該第二の容器の底面の複数個所に、前記第三の容器の底面に加えた衝撃加速度より大きい上下方向の衝撃加速度を繰り返し加え、前記グラフェン接合体に前記絶縁層と前記導電層とが接合された複数の回路部品を、前記第二の容器の底面から同時に引き剥がす、グラフェン接合体に絶縁層と導電層とが接合された複数の回路部品を同時に製造する第四の工程とからなり、
前記4つの工程からなる処理を連続して実施することで、同一の構成からなる複数の回路部品が同時に製造される、複数の回路部品を同時に製造する方法。
【0018】
本発明の4つの工程からなる各々の工程における処理を説明する。
第一の工程は、最初に、13段落の第二の工程に記載した第二の容器に対し、同じ形状からなる複数の溝を形成した容器を用意する。つまり、複数の溝の各々の溝の底面に、同じ形状からなるグラフェン接合体を回路基板として形成するためである。
次に、13段落の第一の工程に記載した1-ブタノール中に分散されたグラフェンの集まりの同じ量を、複数の溝の各々の溝に注入した。
さらに、前記第二の容器に3方向の振動加速度を、各々の方向の振動加速度を5秒間ずつ3回繰り返し加える。この際に、1-ブタノール中に分散されたグラフェンの集まりは、1-ブタノール中でグラフェンの集まりが平面状に並ぶとともに、平面状に並んだグラフェンの集まりが1-ブタノールを介して重なり合って積層した該グラフェンの集まりが、複数の溝の各々の溝に形成される。なお、振動加速度の大きさは、13段落に記載した第一の工程で、第一の容器に加えた振動加速度より大きい振動加速度として、第二の容器の大きさに応じて、0.3-0.5Gからなる振動加速度を加える。つまり、複数の溝の各々の溝に、3方向の振動加速度を繰り返して加えると、低粘度で低密度の1-ブタノールが、殆ど質量を持たないグラフェンを伴って振動加速度の方向に移動する。いっぽう、グラフェンのアスペクト比を、厚みに対する長径の比率とすると、アスペクト比は、3×103-9×106と極めて大きい。このため、グラフェンは、面を上にして、1-ブタノールと共に、振動加速度の方向に移動する。また、面を上にしてグラフェンが1-ブタノール中で再配列する動きが継続する。これによって、グラフェンの集まりが、1-ブタノール中で平面状に並び、平面状に並んだグラフェンが、1-ブタノールを介して重なり合って積層する現象が、1-ブタノール中で進む。この結果、グラフェンが1-ブタノール中で平面状に並び、平面状に並んだグラフェンが、1-ブタノールを介して重なり合って積層したグラフェンの集まりが、複数の溝の各々の溝に形成される。
さらに、第二の容器を1-ブタノールの沸点に昇温し、複数の溝から1-ブタノールを気化させ、複数の溝の各々の溝に、グラフェン同士が重なり合った該グラフェンの集まりを溝の底面に形成する。1-ブタノールが気化する際に、黒鉛結晶から黒鉛粒子の集まりを精製する際に、鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子の表面に付着した水分が1-ブタノールとともに気化する。これによって、グラフェンが清浄化され、清浄化されたグラフェン同士が重なり合う。
次に、13段落の第二の工程に記載した板材が、複数の同一形状からなる突起を有する板材であり、突起の側面が前記した溝の側面と接触する形状で、突起の長さが前記した溝の深さより長い特徴を有する複数の突起であり、複数の突起を形成した板材を用意する。
この板材の複数の突起を有する面を、第二の容器の複数の溝を有する面に重ね合わせ、複数の突起を複数の溝に挿入する。
この後、板材の複数の突起が形成された反対側の表面全体を均等に圧縮する。これによって、清浄化されたグラフェンの集まりが、平面状に並んで重なり合って積層し、重なり合った面でグラフェン同士が摩擦圧接し、接合強度が高いグラフェン接合体が、第二の容器の底面に、該底面の形状として形成される。
第二の工程は、最初に、13段落の第三の工程に記載した第三の容器に対し、同じ形状からなる複数の溝を形成した容器を用意する。また、複数の溝の各々の溝は、絶縁層の形状を溝の底面形状として有する。つまり、複数の溝の各々の溝の底面に該底面の形状として絶縁層を形成するためでる。さらに、13段落の第三の工程に記載した金属化合物のメタノール分散液の同じ量を、複数の溝の各々の溝に注入する。つまり、絶縁層の大きさと厚みとを予め決め、これに基づき溝の大きさを決める。この後、予め決めた大きさと厚みとからなる絶縁層を形成するために必要な金属化合物のメタノール分散液を明らかにする。この検討結果に基づき、金属化合物のメタノール分散液の必要な量を、複数の溝の各々の溝に注入する。
この後、第三の容器をメタノールの沸点に昇温し、複数の溝の各々の溝からメタノールを気化させ、金属化合物の微細結晶の集まりを複数の溝の各々の溝に析出させる。この際に、金属化合物の微細結晶の集まりが、100nmより小さい微粒子の集まりとして析出する。なお、分子状態で分散していた金属化合物が微細結晶として析出したため、微細結晶は、金属化合物の単分子を形成する結晶が集積した結晶の集まりである。このため、微細結晶に応力が加わると、微細結晶は容易に破砕する。しかし、微細結晶が微細になるほど、微細結晶に応力が加わることが難しくなり、微細結晶の微細化には限界がある。
さらに、13段落の第三の工程に記載した板材に対し、複数の同一形状からなる複数の突起を有し、該突起の側面が前記した溝の側面と接触する形状で、該突起の長さが前記した溝の深さより長い特徴を有する複数の突起を形成した板材を用意する。板材の複数の突起を有する面を、第三の容器の複数の溝を有する面に重ね合わせ、複数の突起を複数の溝に挿入する。
さらに、第一の工程で板材に加えた圧縮力より小さい圧縮力として、前記した板材の複数の突起が形成された反対側の表面全体を均等に圧縮し、前記した複数の溝の各々の溝の底面に形成された金属化合物の微細結晶の集まりを破砕する。この際、微細結晶の大きさが相対的に大きい結晶ほど粉砕されやすいため、相対的に大きい微細結晶が優先して粉砕され、圧縮応力が加えられている間は、微細結晶の粉砕が進む。いっぽう、微細結晶が破砕されると、新たな空隙が微細結晶の集まりに形成され、破砕されより微細になった結晶の集まりが空隙に移動して空隙を埋める。こうした微細結晶の破砕が進むに連れ、破砕されより微細になった結晶が高い密度で重なり合い、より微細になった結晶の集まりが高い密度で集積する。結晶の破砕が限界の大きさになると、板材に圧縮応力を加えても、微細結晶の粉砕が進まず、圧縮応力を加えた板材に動きがみられなくなり、板材からの反発力が増加する。この時点で板材の表面を圧縮する処理を停止する。この結果、微細結晶の大きさは、析出した時点の大きさに比べ、1/5に近い20nm前後の大きさまで微細化される。
この後、第三の容器を金属化合物が熱分解する温度に昇温し、絶縁性の金属酸化物のナノ粒子の集まりを析出させる。最初に、水分や水酸基を持つ化合物からなる異物が、微細結晶に吸着していた場合は、これらの異物が優先して気化する。次に、金属化合物の微細結晶の熱分解が始まり、金属化合物が有機物の分子と金属酸化物の分子とに熱分解し、有機物の分子の気化が完了した際に、金属酸化物の分子が集まって、10nm前後の大きさからなる金属酸化物の粒状のナノ粒子を形成し、ナノ粒子が一斉に析出する。この際、粒状のナノ粒子が重なり合って析出し、ナノ粒子同士が接触して積層し、第三の容器に注入した金属化合物のメタノール分散液の量に応じて、ナノ粒子の集まりが、一定の厚みからなる絶縁層を形成する。なお、金属酸化物のナノ粒子は、不純物を一切含まず、真性な金属酸化物のナノ粒子として析出する。
さらに、金属化合物の微細結晶の集まりを破砕した際の圧縮力より大きな圧縮力を、前記した板材の表面全体に均等に加え、前記した複数の溝の各々溝に析出した金属酸化物のナノ粒子の集まりを圧縮し、金属酸化物の微粒子同士を摩擦熱で接合させ、金属酸化物の微粒子同士が接合した該微粒子の集まりからなる絶縁層を、複数の溝の各々の溝の底面に該底面の形状として形成する。つまり、微細結晶をより微細な結晶に破砕した際に、20nm前後の大きさからなる結晶の集まりが高い密度で重なり合って集積した。この後、20nm前後の大きさからなる結晶を熱分解すると、10nm前後の大きさからなる金属酸化物のナノ粒子の集まりが、重なり合って一斉に析出し、ナノ粒子の集まりが重なり合って接触する。こうした金属酸化物のナノ粒子の集まりを圧縮すると、最初に、ナノ粒子が極わずか移動して、ナノ粒子の集まりにおける集積密度がさらに高まり、次に、ナノ粒子の移動が困難になると、ナノ粒子に圧縮応力が加わる。この際、ナノ粒子は限界の大きさに微細化されているため、ナノ粒子は破砕せず、ナノ粒子同士が接触した部位に過大な摩擦熱が短時間発生し、ナノ粒子同士が、接触部で摩擦圧接する。また、ナノ粒子が、第三の容器の底面に摩擦圧接する。この結果、金属酸化物のナノ粒子の集まりからなる絶縁層が、前記した複数の溝の各々の溝の底面に該底面の形状として形成される。
この後、第三の容器の前記した複数の溝が形成された部位に相当する該第三の容器の底面の複数個所に、容器の大きさに応じて、0.3-0.5Gからなる上下方向の衝撃加速度を繰り返し加え、絶縁層を複数の溝の各々の溝の底面から同時に引き剥がす。なお、金属酸化物のナノ粒子の集まりからなる絶縁層も衝撃力を短い時間繰り返し受ける。しかし、絶縁層が溝の底面と接触する反対の面は大気に解放されているため拘束されず、絶縁層に衝撃力による圧縮応力は発生しない。また、絶縁層は、すでに圧縮力によって、ナノ粒子同士が摩擦圧接しているため、衝撃力によって絶縁層は破壊されず、変形もしない。
第三の工程は、最初に、13段落の第四の工程に記載した第四の容器に対し、同じ形状からなる複数の溝を形成した容器を用意する。なお、溝の底面の形状は、導電層の形状を有する。つまり、導電層の大きさと厚みとを予め決め、これに基づき、溝の大きさを決める。この後、予め決めた大きさと厚みとからなる導電層を形成するために必要な金属化合物のメタノール分散液を明らかにする。この検討結果に基づき、金属化合物のメタノール分散液の必要な量を、複数の溝の各々の溝に同一の量として注入する。
次に、第四の容器をメタノールの沸点に昇温し、複数の溝からメタノールを気化させ、金属化合物の微細結晶の集まりを、100nmより小さい微粒子の集まりとして、複数の溝の各々の溝に析出させる。さらに、第四の容器を金属化合物が熱分解する温度に昇温する。最初に、水分や水酸基を持つ化合物からなる異物が、微細結晶に吸着していた場合は、これらの異物が優先して気化する。次に、金属化合物の微細結晶の熱分解が始まり、金属化合物が、有機物の分子と金属の分子とに熱分解し、有機物の分子の気化が完了した際に、金属の分子が集まって、40-60nm前後の大きさからなる金属の粒状のナノ粒子を形成し、ナノ粒子の集まりが高い密度で一斉に析出する。この際、金属のナノ粒子は、不純物を一切含まず、真性な金属のナノ粒子として活性状態で析出するため、金属のナノ粒子同士が接触部位で金属結合し、金属結合で接合した金属のナノ粒子の集まりが、複数の溝の各々の溝の底面に導電層として形成される。
この後、第四の容器の複数の溝が形成された部位に相当する該第四の容器の底面の複数個所に、第三の容器の底面に加えた衝撃加速度より小さい上下方向の衝撃加速度を繰り返し加え、導電層を複数の溝の各々の溝の底面から同時に引き剥がす。なお、金属のナノ粒子の集まりからなる導電層も衝撃力を短時間繰り返し受けるが、導電層が溝の底面と接触する反対の面は大気に解放され、拘束されていないため、導電層に衝撃力による圧縮応力は発生しない。また、導電層は、すでに金属結合で金属のナノ粒子同士が接合しているため、衝撃力によって導電層は破壊されず、また、変形しない。
第四の工程は、最初に、第一の工程で作成した複数の溝の各々の溝の底面に形成されたグラフェン接合体の表面の予め決めた位置に、第二の工程で作成した絶縁層を配置させる。次に、13段落の第五の工程に記載した板材に対し、複数の同一形状からなる突起を有し、該突起の先端の形状が前記した絶縁層の形状を有し、該複数の突起が、前記した複数の絶縁層の表面と接触する位置に形成されるとともに、複数の絶縁層を圧縮する長さを持った複数の突起を板材に形成し、該板材を用意する。
さらに、板材を、複数の突起が複数の絶縁層と接触するように、複数の溝が形成された第二の容器に重ね合わせ、第二の工程で金属酸化物の微粒子同士を摩擦熱で接合させる際に加えた圧縮力より小さい圧縮力で、板材の複数の突起が形成された反対側の表面全体を均等に圧縮する。すなわち、グラフェン接合体は、厚みが0.332nmからなるグラフェン同士が重なり合って摩擦圧接したため、グラフェン接合体の表面は完全な平面に近い。いっぽう、絶縁層は、10nm前後の大きさからなる金属酸化物のナノ粒子同士が、接触部で摩擦圧接したナノ粒子の集まりである。従って、絶縁層をグラフェン接合体の予め決めた位置に重ね合わせ、絶縁層の全体を均等に圧縮すると、絶縁層の最下層を形成するナノ粒子の集まりが、グラフェン接合体と接触する部位に、過大な摩擦熱が短時間発生し、金属酸化物のナノ粒子がグラフェン接合体に摩擦圧接する。いっぽう、前記した第三の工程で金属酸化物の微粒子同士を摩擦熱で接合させる際に加えた圧縮力より小さい圧縮力で、絶縁層をグラフェン接合体に摩擦圧接させるため、絶縁層を形成する金属酸化物のナノ粒子同士は、すでにより大きな圧縮力で接触部において摩擦圧接しているため、絶縁層の全体を、グラフェン接合体の表面に均等に圧縮する際に、絶縁層を形成する金属酸化物のナノ粒子の集まりに変化はない。この後、板材を取り除く。
さらに、複数の絶縁層の各々の絶縁層の予め決めた位置に、第三の工程で作成した導電層を配置させる。また、13段落の第五の工程に記載した新たな板材に対し、複数の同一形状からなる突起を有し、該突起の先端の形状が前記導電層の形状を有し、該複数の突起が、前記した複数の溝に配置された複数の導電層の表面と接触する位置に形成されるとともに、複数の導電層を圧縮する長さを持った特徴を有する複数の突起であり、該複数の突起を板材に形成し、該板材を用意する。
この後、板材を、複数の突起が複数の導電層の表面と接触するように、複数の溝が形成された第二の容器に重ね合わせ、前記したグラフェン接合体に絶縁層を摩擦圧接させる際に加えた圧縮力より小さい圧縮力で、板材の複数の突起が形成された反対側の表面全体を均等に圧縮し、複数の導電層と複数の絶縁層との接触部を摩擦圧接させ、導電層を絶縁層に接合させる。
なお、金属の硬度は金属酸化物の硬度より低いため、最初に、金属結合した金属のナノ粒子が僅かに塑性変形する。次に、導電層と絶縁層との接触部において、金属結合した金属のナノ粒子が僅かに塑性変形する。さらに、僅かに塑性変形した金属のナノ粒子が、金属酸化物のナノ粒子と接触する部位に、過大な摩擦熱が短時間発生し、金属のナノ粒子が金属酸化物のナノ粒子に摩擦圧接する。なお、金属のナノ粒子が塑性変形する際に、全てのナノ粒子同士が金属結合しているため、ナノ粒子同士の金属結合は破壊されず、金属結合したナノ粒子が僅かに塑性変形する。いっぽう、新たな板材に加える圧縮応力は、絶縁層をグラフェン接合体に摩擦圧接する際に、板材に加える圧縮応力より小さい。この理由は、金属酸化物の硬度が金属の硬度より高いため、金属酸化物のナノ粒子同士を摩擦圧接する際に、金属のナノ粒子同士を摩擦圧接する際より大きな圧縮応力が必要になるからである。従って、導電層を絶縁層に摩擦圧接する際に、金属酸化物のナノ粒子の集まりからなる絶縁層に変化はない。この後、新たな板材を導電層から取り外す。
さらに、第二の容器の複数の溝が形成された部位に相当する該第二の容器の底面の複数個所に、第三の容器の底面に加えた衝撃加速度より大きい上下方向の衝撃加速度を繰り返し加え、グラフェン接合体に絶縁層と導電層とが接合された複数の回路部品を、第二の容器の底面から同時に引き剥がす。この際に、第二の容器の底面に摩擦圧接したグラフェン接合体に衝撃加速度が短時間繰り返し加わるが、グラフェン接合体に絶縁層と導電層とが接合された回路部品は、第二の容器の底面と反対側の面が、拘束されず大気に解放された状態にあるため、回路部品に圧縮力は発生せず、回路部品は破壊されず、また、変形もしない。つまり、グラフェン接合体は、グラフェン同士がすでに圧縮応力によって摩擦圧接されているため、圧縮応力が加わらないグラフェン接合体は、衝撃加速度によって破壊されず、また、変形もしない。同様に、絶縁層と導電層とについても、すでに圧縮応力によって摩擦圧接されているため、衝撃加速度によって、絶縁層と導電層は破壊されず、また、変形もしない。
この結果、グラフェン接合体に絶縁層と導電層とが接合された複数の回路部品が、同時に製造される。従って、13段落に記載した単一の回路部品を製造する方法に比べ、回路分品がより安価に製造できる。
なお、本発明における回路部品の製造は、13段落に記載した回路部品の製造と同様に、第二の容器の底面に形成したグラフェン接合体の表面に、絶縁層を摩擦圧接させ、さらに、絶縁層の表面に、導電層を摩擦圧接させる。このため、絶縁層と導電層とを形成した回路部品を、容器の底から剥ぎ取った後にのみ、回路基板としてのグラフェン接合体を唯一ハンドリングする。従って、グラフェン接合体のハンドリングは、必要最低限の1回のみである。
【0019】
ここで、前記した3つの工程の各々の工程で製造ないしは形成した回路基板、絶縁層および導電層の作用効果を説明する。
第一の工程で、複数の溝の各々の溝の底面に、グラフェン同士を重ね合わせ、重なり合ったグラフェン同士を摩擦圧接で直接接合した同一の形状と厚みからなるグラフェン接合体を同時に製造した。グラフェン接合体は、グラフェンのみで構成され、16段落に記載した6つの性質を持つ。従って、グラフェン接合体からなる回路基板は、9段落に記載したアルミニウムが持つ5つの性能の全てについて、アルミニウムより著しく優れる。このため、9段落に記載した第一の課題が解決される。また、グラフェン接合体の製造方法は、13段落に記載した方法と同じであるため、グラフェン接合体は、16段落に記載した7つの性質を兼備する。
第二の工程で、複数の溝の各々の溝の底面に、絶縁性の金属酸化物のナノ粒子の集まりからなる絶縁層を同時に形成した。絶縁層の形成方法は、13段落に記載した方法と同じであるため、絶縁層は、16段落に記載した様々な性質を兼備する。このため、9段落に記載した第二と第三の課題が解決される。
第三の工程で、複数の溝の各々の溝の底面に、導電性の金属のナノ粒子の集まりからなる導電層を同時に形成した。導電層の形成方法は、13段落に記載した方法と同じであるため、導電層は、16段落に記載した様々な性質を兼備する。このため、9段落に記載した第三の課題が解決される。
【0020】
13段落の第三の工程に記載した絶縁層を形成する処理方法は、13段落の第三の工程に記載した熱分解で金属酸化物を析出する金属化合物が、熱分解で酸化アルミニウムを析出するカプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ないしは、ナフテン酸アルミニウムのいずれかのカルボン酸アルミニウム化合物であり、該カルボン酸アルミニウム化合物を、熱分解で酸化アルミニウムを析出する金属化合物として用い、13段落の第三の工程に記載した処理方法に従って、絶縁性の酸化アルミニウムの微粒子同士が摩擦接合した該酸化アルミニウム微粒子の集まりからなる絶縁層を、第三の容器の底面に該底面の形状として形成する、13段落の第三の工程に記載した絶縁層を形成する処理方法。
【0021】
つまり、カルボン酸が電離して生じるアニオンであるカルボキシラートイオンに、アルミニウムイオンが配位結合したカルボン酸アルミニウム化合物は、大気雰囲気での熱分解で絶縁性の酸化アルミニウムを析出する。また、このカルボン酸アルミニウム化合物は、メタノールに10重量%近く分散する。従って、このカルボン酸アルミニウム化合物は、13段落に記載した第三の工程において、2つの性質を兼備する金属化合物になる。このため、カルボン酸アルミニウム化合物は、酸化アルミニウムの微粒子の集まりからなる絶縁層を形成する原料になる。こうしたカルボン酸アルミニウム化合物に、カプリル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、ないしは、ナフテン酸アルミニウムがある。
また、カルボン酸アルミニウム化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、汎用的なカルボン酸であるカプリル酸、安息香酸、ないしは、ナフテン酸を、強アルカリと反応させると、これらのカルボン酸からなるカルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機アルミニウム化合物と反応させると、カルボン酸アルミニウム化合物が合成される。
すなわち、カルボン酸アルミニウム化合物は、カルボン酸が電離して生じるアニオンであるカルボキシラートイオンに、アルミニウムイオンが配位結合したアルミニウム化合物である。つまり、カルボン酸アルミニウム化合物は、最も大きいイオンであるアルミニウムイオンにカルボキシラートイオンが近づいて配位結合するため、アルミニウムイオンと、カルボキシラートイオンを構成する酸素イオンとの距離は短くなる。これによって、酸素イオンがアルミニウムイオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸アルミニウム化合物は、カルボン酸の沸点を超えると、酸素イオンがアルミニウムイオンの反対側で共有結合するイオンとの結合部が分断され、アルミニウムイオンと酸素イオンとの化合物である酸化アルミニウムとカルボン酸とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した直後に、40-60nmの大きさからなる粒状の酸化アルミニウムの微粒子が析出する。この結果、カルボン酸の沸点に応じて、大気雰囲気の300-330℃の温度領域で酸化アルミニウムが析出する。なお、酢酸アルミニウムも、カルボキシラートイオンに、アルミニウムイオンが配位結合したカルボン酸アルミニウム化合物であるが、熱分解でアモルファス化した酸化アルミニウムを析出する。アモルファス化した酸化アルミニウムの組成は、Al2O3の組成からずれ、抵抗率は1014Ωcmより著しく低いため、絶縁層を形成する原料として望ましくない。
ところで、酸化アルミニウムは、モース硬度が9で極めて硬く、圧縮強度が2350MPaで破壊されにくい物質である。従って、絶縁層を形成する際に、10nm前後の大きさからなる酸化アルミニウムの微粒子に過大な応力が加わっても、酸化アルミニウムの微粒子は破壊されない。つまり、13段落に記載した第三の工程において、カルボン酸アルミニウム化合物のメタノール分散液からメタノールを気化すると、カルボン酸アルミニウム化合物の100nmより小さい微細結晶の集まりが析出する。この微細結晶の集まりを破砕すると、20nm前後の大きさからなる結晶の集まりが高い密度で重なり合って集積した。この後、20nm前後の大きさからなる結晶を熱分解すると、10nm前後の大きさからなる酸化アルミニウムのナノ粒子の集まりが、重なり合って一斉に析出し、ナノ粒子の集まりが重なり合って接触する。こうした酸化アルミニウムのナノ粒子の集まりを圧縮すると、最初に、ナノ粒子が極わずか移動して、ナノ粒子の集まりにおける集積密度がさらに高まり、次に、ナノ粒子の移動が困難になると、ナノ粒子に圧縮応力が加わる。この際、ナノ粒子は限界の大きさに微細化されているため、ナノ粒子は破砕せず、ナノ粒子同士が接触した部位に過大な摩擦熱が短時間発生し、ナノ粒子同士が、接触部で摩擦圧接する。また、ナノ粒子が、第三の容器の底面に摩擦圧接する。この結果、酸化アルミニウムのナノ粒子の集まりからなる絶縁層が、前第三の容器の底面に該底面の形状として形成される。つまり、酸化アルミニウムは、耐熱性が1500℃と高いため、酸化アルミニウム微粒子同士が接触部位で摩擦熱によって強固に接合し、一定の機械的強度を持つ絶縁層が形成される。
いっぽう、酸化アルミニウムは、体積固有抵抗率が1014Ωcm以上の絶縁体である。さらに、グラフェン接合体の表面に形成される絶縁層の厚みがサブミクロンと薄く、絶縁層の形状効果で、絶縁抵抗はさらに大きくなる。例えば、絶縁層の厚みが0.5μmで、絶縁層の幅が1cmで、長さが10cmとすると、絶縁抵抗は2×1019Ω以上になる。つまり、酸化アルミニウムを微粒子化し、酸化アルミニウムの微粒子同士を接合することで、厚みが極めて薄い絶縁層が形成できる。この厚みが薄い絶縁層の形状効果で、絶縁抵抗が著しく増える。また、絶縁層の厚みが極めて薄いため、絶縁層は熱伝導性に優れる。
さらに、酸化アルミニウムの最高使用温度が1500℃と高く、高温時において絶縁層の耐電圧は変わらない。
また、酸化アルミニウムの熱伝導率は40W/mKで、絶縁物としては高い熱伝導率を持つ。ちなみに、従来の絶縁層であるエポキシ樹脂の熱伝導率は0.17-0.21W/mKである。従って、酸化アルミニウムは、エポキシ樹脂の200倍近い熱伝導率を持つ。さらに、絶縁層の厚みがサブミクロンと薄く、酸化アルミニウムからなる絶縁層は、熱伝導性に優れる。これによって、絶縁層は、絶縁抵抗が高い絶縁体であるが、グラフェン接合体に熱を良く伝え、熱伝導性に優れ、所定の面積を持つグラフェン接合体から外界に熱が放出される。
以上に説明した酸化アルミニウムの微粒子の集まりからなる絶縁層は、4段落に記載した合成樹脂の絶縁層が持つ3つの課題を同時に解決する。
【0022】
13段落の第四の工程に記載した導電層を形成する処理方法は、13段落の第四の工程に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、熱分解で銅を析出するオクチル酸銅、ラウリン酸銅、ないしは、ステアリン酸銅からなるいずれかのカルボン酸銅化合物であり、該カルボン酸銅化合物を、熱分解で銅を析出する金属化合物として用い、13段落の第四の工程に記載した処理方法に従って、導電性の銅微粒子同士が金属結合した該銅微粒子の集まりからなる導電層を、第四の容器の底面に該底面の形状として形成する、13段落の第四の工程に記載した導電層を形成する処理方法。
【0023】
つまり、カルボキシル基を構成する酸素イオンが銅イオンに共有結合する第一の特徴と、飽和脂肪酸からなるカルボン酸で構成される第二の特徴とを兼備するカルボン酸銅化合物は、大気雰囲気の熱分解で、導電性と熱伝導性に優れる銅を析出する。また、このカルボン酸銅化合物は、メタノールに10重量%近く分散する。従って、このカルボン酸銅化合物は、13段落に記載した第四の工程において、2つの性質を兼備する金属化合物になる。このため、カルボン酸銅化合物は、導電層を形成する銅微粒子の原料になる。こうしたカルボン酸銅化合物として、オクチル酸銅、ラウリン酸銅、ステアリン酸銅などの飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅化合物がある。これらカルボン酸の沸点に応じて、大気雰囲気の290-430℃の温度領域で銅が析出する。
また、カルボン酸銅化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、汎用的な有機酸であるカルボン酸を、強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機銅化合物と反応させると、カルボン酸銅化合物が合成される。
すなわち、2つの特徴を兼備するカルボン酸銅化合物は、カルボン酸が電離して生じるアニオンであるカルボキシラートイオンに、銅イオンが共有結合した銅化合物である。つまり、カルボン酸銅化合物は、最も大きいイオンである銅イオンにカルボキシラートイオンが近づいて共有結合するため、カルボキシル基を構成する酸素イオンと銅イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸銅化合物を大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸の沸点で、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が分断され、カルボン酸と金属とに分離する。さらに、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した直後に、40-60nmの大きさからなる粒状の銅微粒子同士が互いに接触して一斉に析出する。この際、銅のナノ粒子は、不純物を一切含まず、真性な銅のナノ粒子として活性状態で析出するため、銅のナノ粒子同士が接触部位で金属結合し、金属結合で接合した銅のナノ粒子の集まりが、第四の容器の底面に導電層として形成される。
いっぽう、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって酸化銅が析出する。例えばオレイン酸銅は、酸化銅Cu2Oと酸化銅CuOとが同時に析出し、銅に還元するための処理費用を要する。中でも酸化銅Cu2Oは、大気雰囲気より酸素ガスがリッチな雰囲気で一度酸化銅CuOに酸化させた後に、再度、還元雰囲気で銅に還元させる必要があるため、還元処理の費用がかさむ。
銅は、モース硬度が3.0の軟質金属である。一方、酸化アルミニウムのモース硬度は9と高い。従って、13段落に記載した第五の工程において、導電層を絶縁層に摩擦圧接する際に、40-60nmの大きさからなる銅微粒子に圧縮応力が加わり、銅微粒子が容易に塑性変形し、塑性変形した銅微粒子が酸化アルミニウムの微粒子と接触する接触部位に、過大な摩擦熱が集中して発生し、銅の融点が2562℃と高く、塑性変形した銅微粒子が酸化アルミニウムの微粒子との接触部位で摩擦熱によって接合し、一定の機械的強度を持つ導電層が、絶縁層の上に接合する。なお、銅微粒子が塑性変形する際に、全ての銅微粒子同士が金属結合しているため、銅微粒子同士の金属結合は破壊されず、金属結合した銅微粒子が塑性変形する。
また、銅は、体積固有抵抗率が1.7μΩcmで、熱伝導率が401W/mKで、銀に次いで導電性と熱伝導性に優れる金属である。従って、大電流が導電層に流れると、また、パワーデバイスやLEDなどの部品が発熱すると、発生した熱が効率よく銅の導電層を介して、酸化アルミニウムの絶縁層に伝わり、さらに、熱伝導に優れた絶縁層から、熱伝導性に優れたグラフェン接合体に伝わり、最後に一定の面積を持つグラフェン接合体から外界に放出される。なお、導電層は、導電層に流れる電流の大きさに応じて、厚みを厚くする必要があるが、導電層の厚みが厚くなっても、銅の熱伝導率が高いため、導電層の熱伝導性は低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】グラフェン同士が重なり合って接合したグラフェン接合体の側面の一部を拡大して模式的に示した図である。
【
図2】回路基板のグラフェンの表面に、絶縁層と導電層とを摩擦圧接させた第一の回路部品の正面図である。
【
図3】回路基板のグラフェンの表面に、絶縁層と導電層とを摩擦圧接させた第二の回路部品の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施形態1
本実施形態は、20-21段落に記載したカルボン酸アルミニウム化合物に関わる実施形態である。カルボン酸アルミニウム化合物は、熱分解で酸化アルミニウムを析出し、メタノールに溶解せずメタノールに分散する性質を兼備する。酸化アルミニウムを析出するアルミニウム化合物として、安息香酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが、アルミニウムイオンに配位結合した安息香酸アルミニウムが適切であることを説明する。
熱分解で酸化アルミニウムを析出する物質は、アルミニウム化合物の微細結晶を析出するには、液相化しなければならない。水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの無機アルミニウム化合物は、液相化された無機アルミニウム化合物にアルミニウムイオンが溶出し、多くのアルミニウムイオンが酸化アルミニウムの析出に参加できなくなる。従って、アルミニウム化合物は溶剤に溶解せず、溶剤に分散する性質が必要になる。
また、最も汎用的な有機溶剤であるメタノールに分散できれば、アルミニウム化合物が溶剤中に均一に分散するため、アルミニウム化合物のメタノール分散液からメタノールを気化させれば、アルミニウム化合物の微細結晶の集まりが析出する。無機アルミニウム化合物は、メタノールに分散しない。このため、熱分解で酸化アルミニウムを析出するアルミニウム化合物は、無機アルミニウム化合物ではなく有機アルミニウム化合物が望ましい。
さらに、有機アルミニウム化合物は、熱分解で酸化アルミニウムを析出しなければならない。いっぽう、有機アルミニウム化合物から酸化アルミニウムが生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。つまり、有機アルミニウム化合物の微細結晶の集まりを昇温するだけで、有機アルミニウム化合物が熱分解して酸化アルミニウムが析出する。さらに、有機アルミニウム化合物の合成が容易であれば、有機アルミニウム化合物を安価に製造できる。こうした性質を兼備する有機アルミニウム化合物にカルボン酸アルミニウム化合物がある。
すなわち、カルボン酸アルミニウム化合物を構成する物質の中で、最も大きい共有結合半径を持つ物質はアルミニウムイオンである。いっぽう、アルミニウムイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとが共有結合するカルボン酸アルミニウム化合物は、22-23段落に記載したカルボン酸金属化合物と同様に、アルミニウムイオンと酸素イオンとの距離が最大になる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸アルミニウム化合物を昇温させると、カルボン酸の沸点において、カルボン酸とアルミニウムとに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後にアルミニウムが析出する。従って、熱分解によって酸化アルミニウムを析出するカルボン酸アルミニウム化合物は、アルミニウムイオンと結合する酸素イオンとの距離が短く、酸素イオンがアルミニウムイオンの反対側で結合するイオンと結合する距離が最も長い分子構造上の特徴を持つ必要がある。つまり、カルボン酸アルミニウム化合物を昇温させると、カルボン酸の沸点において、酸素イオンがアルミニウムイオンの反対側で結合するイオンと結合する部位が最初に切れ、酸化アルミニウムとカルボン酸とに分解する。このような分子構造上の特徴を持つカルボン酸アルミニウム化合物に、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になってアルミニウムイオンに近づいて配位結合するカルボン酸アルミニウム化合物がある。また、カルボン酸アルミニウム化合物は、メタノールに溶解せず、メタノールに分散する。
さらに、有機アルミニウム化合物の中でカルボン酸アルミニウム化合物は、合成が容易で、安価な有機アルミニウム化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液と反応させると、カルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。このカルボン酸アルカリ金属化合物を、硫酸塩などの無機アルミニウム塩と反応させると、カルボン酸アルミニウム化合物が生成される。また、カルボン酸は沸点が低い有機酸であるため、熱分解温度が比較的低い。このため、カルボキシル基を構成する酸素イオンが、配位子となってアルミニウムイオンに近づいて配位結合するカルボン酸アルミニウム化合物は、安価な工業用薬品であり、熱処理費用も安価で済む。
こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などがある。なお、酢酸の沸点は118℃で、カプリル酸の沸点は237℃で、安息香酸の沸点は249℃である。いっぽう、ナフテン酸は5員環をもつ飽和脂肪酸の混合物で、一般式ではCnH2n-1COOHで示され、主成分は沸点が268℃で、分子量が170のC9H17COOHからなる。ナフテン酸金属化合物の熱分解温度は330℃である。なお、炭素原子数が20個のアルカンC20H42の沸点が344℃である。従って、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物ないしはナフテン酸金属化合物は、前記した2つの性質を兼備する。
いっぽう、熱分解で酸化アルミニウムを析出するカルボン酸アルミニウム化合物として、安息香酸アルミニウムが望ましい。すなわち、酢酸アルミニウムとカプリル酸アルミニウムは、熱分解で無定形アルミナを析出する。また、ナフテン酸アルミニウムは、330℃で熱分解が完了する。従って、熱分解温度がナフテン酸アルミニウムより20℃低い安息香酸アルミニウムAl(C6H5COO)3が、酸化アルミニウムの原料として望ましい。
【0026】
実施形態2
本実施形態は、22-23段落で説明した熱分解で銅を出するカルボン酸銅化合物に関わる実施形態である。本発明におけるカルボン酸銅化合物は、第一にメタノールに分散し、メタノールに溶解せず、第二に熱分解で銅を析出する2つの性質を兼備する。
分子量が少ない無機物の分子ないしは無機イオンが、銅イオンに配位結合する銅錯イオンを有する錯体として、アンミン銅錯体やクロロ銅錯体がある。これらの錯体は、還元雰囲気の熱分解で銅を析出するが、汎用的な有機酸からなる有機銅化合物に比べると高価である。
有機銅化合物は銅を析出する。有機銅化合物から銅が生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応のひとつに熱分解反応がある。さらに、有機酸が汎用的な有機酸で、有機銅化合物の合成が容易でれば、有機銅化合物が安価に製造できる。さらに、有機銅化合物の熱分解温度が低ければ、銅を安価な熱処理費用で析出できる。こうした性質を兼備する有機銅化合物に、カルボン酸R-COOHのカルボキシラートアニオン(R-COO-)が銅イオンに共有結合するカルボン酸銅がある。つまり、カルボン酸銅を構成するイオンの中で、最も大きいイオンは銅イオンである。従って、カルボン酸のカルボキシラートアニオンが、銅イオンに共有結合すれば、銅イオンとカルボキシラートアニオンとの距離が、イオン同士の距離の中で最も長い。こうしたカルボン酸銅を大気雰囲気で昇温させると、カルボン酸の沸点を超えると、カルボン酸と銅とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸で構成されれば、カルボン酸が気化熱を伴って気化し、カルボン酸の気化した後に銅が析出する。なお、窒素雰囲気でのカルボン酸銅の熱分解は、大気雰囲気での熱分解より高温側で進むため、大気雰囲気での熱分解のほうが熱処理費用は安価で済む。またカルボン酸が不飽和脂肪酸であれば、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅が熱分解すると、酸化銅が析出する。
いっぽう、カルボン酸銅の中で、カルボン酸のカルボキシラートアニオンが配位子となって銅イオンに近づいて配位結合するカルボン酸銅は、銅イオンとカルボキシラートアニオンとの距離が短くなり、反対に、カルボキシラートアニオンにおける酸素イオンが銅イオンと反対側で結合するイオンとの距離が最も長くなる。このような分子構造の特徴を持つカルボン酸銅の熱分解反応は、カルボキシラートアニオンにおける酸素イオンが銅イオンと反対側で結合するイオンとの結合部が最初に分断され、この結果、酸化銅が析出する。このカルボン酸銅は、実施形態1で説明したカルボン酸金属化合物に属する。
さらに、カルボン酸銅は、カルボン酸が最も汎用的な有機酸であるため、合成が容易で最も安価な有機銅化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させると、カルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。このカルボン酸アルカリ金属化合物を、硫酸銅などの無機銅化合物と反応させると、カルボン酸銅が生成される。このため、有機銅化合物の中で最も安価である。
カルボン酸銅の組成式はCu(COOR)2で表わせられる。Rは炭化水素で、この組成式はCmHnである(ここでmとnとは整数)。カルボン酸銅を構成する物質の中で、組成式の中央に位置する銅イオンCu2+が最も大きい。従って、銅イオンCu2+とカルボキシラートアニオン(R-CO2
-)とが共有結合する場合は、銅イオンCu2+とカルボキシラートアニオン(R-CO2
-)との距離が最大になる。この理由は、銅原子の2重結合における共有結合半径は115pmであり、酸素原子の2重結合における共有結合半径は57pmであり、炭素原子の2重結合における共有結合半径は67pmであることによる。このため、このような分子構造の特徴を持つカルボン酸銅は、カルボン酸の沸点を超えると、結合距離が最も長い銅イオンとカルボキシラートアニオン(R-CO2
-)との結合部が最初に分断され、銅とカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸であれば、カルボン酸が気化熱を伴って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に銅が析出する。こうしたカルボン酸銅として、オクチル酸銅、ラウリン酸銅、ステアリン酸銅などがある。このようなカルボン酸銅の多くは、金属石鹸として市販されている安価な工業用薬品である。
さらに飽和脂肪酸の沸点が低ければ、カルボン酸銅は低い温度で熱分解し、銅を析出させる熱処理費用が安価で済む。飽和脂肪酸を構成する炭化水素が長鎖構造である場合は、長鎖が長いほど、つまり、飽和脂肪酸の分子量が多いほど、飽和脂肪酸の沸点が高くなり、飽和脂肪酸の気化熱が大きいため、熱分解温度が高くなる。ちなみに、分子量が200.3であるラウリン酸の大気圧での沸点は296℃であり、分子量が284.5であるステアリン酸の大気圧での沸点は361℃である。
これに対し、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短く、沸点が低くなり、気化熱も小さい。このため、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅は、さらに低い温度で熱分解温度する。また、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸は極性を持つため、分岐鎖構造を有する飽和脂肪酸からなるカルボン酸銅も極性を持ち、メタノールなどの極性を持つ有機溶剤に相対的に高い割合で分散する。このような分岐構造の飽和脂肪酸としてオクチル酸がある。オクチル酸は構造式がCH3(CH2)3CH(C2H5)COOHで示され、CHでCH3(CH2)3とC2H5とのアルカンに分岐され、CHにカルボキシル基COOHが結合する。オクチル酸の大気圧での沸点は228℃であり、ラウリン酸より沸点が68℃低い。このため、熱分解で銅を析出する原料として、オクチル酸銅Cu(C7H15COO)2が望ましい。オクチル酸銅は、大気雰囲気において290℃で熱分解が完了して銅が析出し、メタノールに10重量%近く分散する。なお、窒素雰囲気では340℃で熱分解が完了して銅が析出する。
【0027】
実施例1
本実施例は、13段落に記載した第一と第二の工程に記載した処理方法に従って、重なり合ったグラフェン同士を接合したグラフェン接合体を、容器の底面に形成する。
最初に、2リットルの1-ブタノールを、1.2m×1.2mの底面をもち、底が浅い容器に充填した。
次に、2枚の平行平板電極の間隙に電界が発生する電極の有効面積が、1m×1mである平行平板電極板を用意し、2枚の平行平板電極板を100μmの間隙で重ね合わせ、この間隙に黒鉛粒子を満遍なく引き詰め、1-ブタノール中に浸漬する。なお、黒鉛粒子を粒径が25μmの球と仮定し、2枚の平行平板電極で作られる100μmの間隙に、黒鉛粒子を満遍なく引き詰めた場合、6.4×10
7個の黒鉛粒子が存在する。この黒鉛粒子の集まりに、10.6キロボルト以上の直流電圧を印加すると、全ての黒鉛粒子の基底面の層間結合が同時に破壊される。この際、1.9×10
13個のグラフェンの集まりが得られ、用いる黒鉛粒子の集まりは、僅かに1.18gである。
このため、電界が発生する電極の有効面積が1m×1mである平行平板電極板の表面に、鱗片状黒鉛粒子(例えば、伊藤黒鉛工業株式会社のXD100)の6gを重ねて引き詰めた。この平行平板電極板を、1-ブタノールが充填された容器に浸漬し、さらに、もう一方の平行平板電極板を前記の平行平板電極板の上に重ね合わせ、2枚の平行平板電極板を100μmの間隙で離間させ、12キロボルトの直流電圧を電極間に加えた。次に、2枚の平行平板電極板の間隙を拡大し、さらに、2枚の平行平板電極板を1-ブタノール中で傾斜させ、0.2Gからなる3方向の振動加速度を容器に繰り返し加え、この後、容器から2枚の平行平板電極板を取り出した。
次に、グラフェンの集まりが1-ブタノールに分散した分散液の81gを、30cm×30cm×1cm(深さ)の容器に移した。この後、0.2Gからなる3方向の振動加速度を、容器に5秒間ずつ3回繰り返して加えた。さらに、容器を117℃に昇温し、容器内の1-ブタノールを気化した。この後、容器内の試料の表面に、30cm×30cm×1mm(厚み)のアルミニウム板を被せた。さらに、アルミニウム板の上に、10kgの重り9個を等間隔に置き、試料の表面を均等に圧縮した。この後、重りとアルミニウム板とを取り除いた。こうした試料を2枚作製した。なお、1枚の試料については、容器の底面の5個所に0.5Gの衝撃加速度を同時に3回加え、試料を容器の底から剥がし、容器から試料を取り出した。
次に、試料の表面と側面とを、電子顕微鏡を用いて観察と分析を行なった。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100ボルトからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる特徴を持つ。
最初に、試料の表面からの反射電子線の900-1000ボルトの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料の表面に、極めて厚みが薄い段差が確認できた。次に、試料の側面からの反射電子線の900-1000ボルトの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。厚みが極めて薄い物質が、20層前後重なり合っていた。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理した結果、炭素原子のみ存在し、試料は、グラフェン同士が重なり合ったグラフェン接合体であることが確認できた。
図1に、グラフェンが重なり合って接合したグラフェン接合体の側面の一部を拡大し、模式的にグラフェン接合体を表した。1はグラフェンである。
なお、容器の底から剥がしたグラフェン接合体に、30cm×30cm×1mmのアルミニウム板を介して、再度10kgの重り9個を載せ、重りとアルミニウム板を取り除いた後に、グラフェン接合体の表面を電子顕微鏡で再度観察したが、グラフェン接合体の表面に変化がなかったため、グラフェン同士が一定の接合力で接合されている。
【0028】
実施例2
本実施例は、13段落に記載した第三の工程に記載した処理方法に従って、絶縁層を作成する。
酸化アルミニウムの原料として、安息香酸アルミニウムAl(C6H5COO)3(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。
安息香酸アルミニウムの3.9g(0.01モルに相当する)を、50gのメタノールに分散し、安息香酸アルミニウムのメタノール分散液を作成した。外側の四角柱が20cm×20cm×2cmからなり、内側の四角柱が16cm×16cm×2cmからなり、該2つの四角柱で挟まれた幅が2cmで深さが1cmの溝が形成された容器に、安息香酸アルミニウムのメタノール分散液の10gを注入した。この後、容器を65℃に昇温し、容器内のメタノールを気化した。さらに、0.3Gからなる3方向の振動加速度を、容器に5秒間ずつ3回繰り返して加えた。この後、容器内のメタノール分散液の表面に、外側の四角柱が20cm×20cm×2cmからなり、内側の四角柱が16cm×16cm×2cmからなり、該2つの四角柱で挟まれた幅が2cmで厚みが1mmのアルミニウム板を置いた。さらに、アルミニウム板の上に、4kgの重り9個を等間隔に置き、試料の表面を均等に圧縮し、10秒後に重りを取り除いた。この後、容器を大気雰囲気の200℃に昇温された熱処理装置に配置した。最初に、20℃/分の昇温速度で240℃まで熱処理装置を昇温させ、次に、70℃/分の昇温速度で310℃まで熱処理装置を昇温させ、310℃に1分間放置し、容器を熱処理装置から取り出した。この後、前記したアルミニウムの板の上に、8kgの重り9個を等間隔に置き、試料の表面を均等に圧縮し、10秒後に重りを取り除いた。さらに、容器の底面の4個所に0.4Gの衝撃加速度を同時に3回加え、試料を容器の底から剥がした。こうした試料を2枚作製した。
次に、実施例1で用いた電子顕微鏡によって、試料の表面と側面とを観察と分析を行なった。最初に、表面からの反射電子線の900-1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料は、10nm前後の大きさからなる粒状のナノ粒子同士が高い密度で接合していた。次に、反射電子線の900-1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められたので、ナノ粒子は、複数の原子から形成されている。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、ナノ粒子を構成する元素を分析した。アルミニウム原子と酸素原子が存在したので、ナノ粒子は、酸化アルミニウムのナノ粒子である。
また、側面からの反射電子線の900-1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料は、10nm前後の大きさからなる粒状のナノ粒子同士が、10個前後が積層していた。従って、作成した試料は、酸化アルミニウムの10nm前後からなるナノ粒子同士が接合し、100nm前後の厚みからなる絶縁層を形成した。
次に、容器の底から剥がした試料の絶縁抵抗を、日置電機株式会社の絶縁抵抗計IR4055で測定した結果、絶縁抵抗は100MΩを超え、高い絶縁性を持った。
なお、容器の底から剥がした試料に、前記したアルミニウム板を介して、再度8kgの重り9個を載せ、重りとアルミニウム板を取り除いた後に、試料の表面を電子顕微鏡で再度観察したが、試料の表面に変化がなかったため、酸化アルミニウムのナノ粒子同士が一定の接合力で接合されている。
【0029】
実施例3
本実施例は、13段落に記載した第四の工程に記載した処理方法に従って、導電層を作成する。
銅の原料として、オクチル酸銅Cu(C7H15COO)2(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。
オクチル酸銅の5.3g(0.015モルに相当する)を、60gのメタノールに分散し、オクチル酸銅のメタノール分散液を作成した。外側の四角柱が19cm×19cm×2cmからなり、内側の四角柱が17cm×17cm×2cmからなり、該2つの四角柱で挟まれた幅が1cmで深さが1cmの溝が形成された容器に、オクチル酸銅のメタノール分散液の15gを注入した。この後、容器を65℃に昇温し、容器内のメタノールを気化した。さらに、容器を大気雰囲気の200℃に昇温された熱処理装置に配置した。最初に、20℃/分の昇温速度で220℃まで熱処理装置を昇温させ、次に、70℃/分の昇温速度で290℃まで熱処理装置を昇温させ、290℃に1分間放置し、容器を熱処理装置から取り出した。
この後、容器の底面の4個所に0.3Gの衝撃加速度を同時に3回加え、試料を容器の底から剥がした。こうした試料を2枚作製した。
次に、実施例1で用いた電子顕微鏡によって、試料の表面と側面とを観察と分析を行なった。最初に、表面からの反射電子線の900-1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料は、40-60nmの大きさからなる粒状のナノ粒子同士が高い密度で接合していた。次に、反射電子線の900-1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認めらなかったので、ナノ粒子は、単一の原子から形成されている。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、ナノ粒子を構成する元素を分析した。銅原子のみが存在したので、ナノ粒子は、銅のナノ粒子である。
また、側面からの反射電子線の900-1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料は、40-60nmの大きさからなる粒状のナノ粒子同士が、20個前後が積層していた。従って、作成した試料は、銅の40-60nmからなるナノ粒子同士が接合し、1μm前後の厚みからなる絶縁層を形成した。
次に、容器の底から剥がした試料の表面抵抗を、表面抵抗計によって測定した(例えばシムコジャパン株式会社の表面抵抗計ST-4)。表面抵抗値は1×103Ω/□未満であったため、導電層は金属に近い表面抵抗を有する。
なお、容器の底から剥がした試料に、前記したアルミニウム板を介して、2kgの重り4個を載せ、重りとアルミニウム板を取り除いた後に、試料の表面を電子顕微鏡で再度観察したが、試料の表面に変化がなかったため、銅のナノ粒子同士が一定の接合力で接合されている。
【0030】
実施例4
本実施例は、13段落に記載した第五の工程に記載した処理方法に従って、実施例1で作成したグラフェン接合体の表面に、実施例2で作成した絶縁層を摩擦圧接させ、さらに、絶縁層の表面に、実施例3で作成した導電層を摩擦圧接させる回路部品を作成する。
実施例1で作成した30cm×30cmからなるグラフェン接合体の表面の中央部に、実施例2で作成した絶縁層を配置させ、実施例2で用いたアルミ板を絶縁層に被せ、アルミニウムの板の上に、7kgの重り9個を等間隔に置き、絶縁層の表面を均等に圧縮し、10秒後に重りを取り除いた。さらに、実施例2で作成した絶縁層の表面の中央部に、実施例3で作成した導電層を配置させ、導電層の表面全体を覆う新たなアルミニウムの板材を被せ、新たな板材の上に、6kgの重り9個を等間隔に置き、導電層の表面を均等に圧縮し、10秒後に重りを取り除いた。この後、グラフェン接合体が形成された容器の底面の4個所に0.5Gの衝撃加速度を同時に3回加え、試料を容器の底から剥がした。こうした試料を2枚作製した。
図2に、回路基板のグラフェンの表面に、絶縁層と導電層とを摩擦圧接させた第一の回路部品の正面図を示す。2は回路基板としてのグラフェン接合体で、3は酸化アルミニウムのナノ粒子の集まりからなる絶縁層で、4は銅のナノ粒子の集まりからなる導電層である。
1枚の試料の導電層が接合された表面に、再度7kgの重り9個を等間隔に置いたが、導電層と絶縁層とに変化はなかった。さらに、試料の導電層が接合された表面に、8kgの重り9個を等間隔に置いた。この際に、導電層が極わずか圧縮されて塑性変形したが、絶縁層と導電層との双方は、グラフェン接合体から剥がれなかった。このため、絶縁層が、一定の接合強度でグラフェン接合体に接合し、導電層が一定の接合強度で絶縁層に接合した。
さらに、もう一枚の試料を、2mの高さから自然落下させたが、試料の変化は見られなかった。さらに、4mの高さから自然落下させたが、試料の変化は見られなかった。このため、絶縁層が、一定の接合強度でグラフェン接合体に接合し、導電層が一定の接合強度で絶縁層に接合した。
【0031】
実施例5
本実施例は、18段落に記載した第一と第二の工程に記載した処理方法に従って、容器に形成した複数の溝の各々の溝の底面に、重なり合ったグラフェン同士を接合したグラフェン接合体を、同一形状のグラフェン接合体として形成する。
最初に、28cm×22cm×1.5cm(厚み)の板材に、11cm×2cm×1cm(深さ)からなる溝の10個を、横方向に2個、縦方向に5個からなる溝を2cmの間隔を置いて形成するとともに、容器の四方の端部から2cm離れた位置に溝を形成した容器を用意する。さらに、11cm×2cm×1.5mm(長さ)からなる10個の突起を持つ板材を、容器に重ね合わせた際に、10個の突起の側面が10個の溝の側面と接触する位置に突起が形成された28cm×22cm×2.5cm(厚み)板材を用意する。
次に、実施例1で作成したグラフェンの集まりが1-ブタノールに分散した分散液の2gを、10個の溝の各々の溝に注入した。この後、0.2Gからなる3方向の振動加速度を、容器に5秒間ずつ3回繰り返して加えた。さらに、容器を117℃に昇温し、10個の溝の各々の溝内の1-ブタノールを気化した。この後、容器の表面に板材を重ね合わせ、10個の溝の各々の溝に、10個の突起を挿入した。さらに、板材の上に、12kgの重り5個を等間隔に置き、試料の表面を均等に圧縮した。この後、重りとアルミニウム板とを取り除いた。こうした試料を10枚作製した。
【0032】
実施例6
本実施例は、18段落に記載した第三の工程に記載した処理方法に従って、容器に形成した複数の溝の各々の溝の底面に、絶縁層を形成する実施例である。
最初に、5cm×11cm×1.5cm(厚み)の板材に、直径が1cmで深さが1cmからなる溝の10個を、横方向に2個、縦方向に5個からなる溝を1cmの間隔を置いて形成するとともに、容器の四方の端部から1cm離れた位置に溝を形成した容器を用意する。さらに、直径が1cmで長さが1.5cm(長さ)からなる10個の突起を持つ板材を、容器に重ね合わせた際に、10個の突起の側面が10個の溝の側面と接触する位置に突起が形成された5cm×11cm×2.5cm(厚み)板材を用意する。
次に、実施例2で作成した安息香酸アルミニウムのメタノール分散液の0.07gを、10個の溝の各々の溝に注入した。この後、容器を65℃に昇温し、容器内のメタノールを気化した。さらに、0.3Gからなる3方向の振動加速度を、容器に5秒間ずつ3回繰り返して加えた。この後、容器に板材を重ね合わせ、さらに、板材の上に、1kgの重り5個を等間隔に置き、試料の表面を均等に圧縮し、10秒後に重りを取り除いた。この後、容器を大気雰囲気の200℃に昇温された熱処理装置に配置した。最初に、20℃/分の昇温速度で240℃まで熱処理装置を昇温させ、次に、70℃/分の昇温速度で310℃まで熱処理装置を昇温させ、310℃に1分間放置し、容器を熱処理装置から取り出した。この後、前記したアルミニウムの板の上に、2kgの重り5個を等間隔に置き、試料の表面を均等に圧縮し、10秒後に重りを取り除いた。さらに、容器の底面の5個所に0.4Gの衝撃加速度を同時に3回加え、試料を容器の底から剥がした。こうした試料を10枚作製した。
【0033】
実施例7
本実施例は、18段落に記載した第四の工程に記載した処理方法に従って、容器に形成した複数の溝の各々の溝の底面に、導電層を形成する実施例である。
最初に、3.2cm×8.8cm×1.5cm(厚み)の板材に、直径が0.8cmで深さが1cmからなる溝の10個を、横方向に2個、縦方向に5個からなる溝を0.8cmの間隔を置いて形成するとともに、容器の四方の端部から0.8cm離れた位置に溝を形成した容器を用意する。さらに、直径が0.8cmで長さが1.5cm(長さ)からなる10個の突起を持つ板材を、容器に重ね合わせた際に、10個の突起の側面が10個の溝の側面と接触する位置に突起が形成された3.2cm×8.8cm×2.5cm(厚み)板材を用意する。
次に、実施例3で作成したオクチル酸銅のメタノール分散液の0.04gを、複数の溝の各々の溝に同じ量を注入した。この後、容器を65℃に昇温し、容器内のメタノールを気化した。さらに、容器を大気雰囲気の200℃に昇温された熱処理装置に配置した。最初に、20℃/分の昇温速度で220℃まで熱処理装置を昇温させ、次に、70℃/分の昇温速度で290℃まで熱処理装置を昇温させ、290℃に1分間放置し、容器を熱処理装置から取り出した。
この後、容器の底面の4個所に0.3Gの衝撃加速度を同時に3回加え、試料を容器の底から剥がした。こうした試料を10枚作製した。
【0034】
実施例8
本実施例は、18段落に記載した第五の工程に記載した処理方法に従って、実施例5で作成した10個の溝の各々の溝に作成したグラフェン接合体の表面の同じ位置に、実施例6で作成した絶縁層を摩擦圧接させ、さらに、絶縁層の表面の同じ位置に、実施例7で作成した導電層を摩擦圧接させ、同一の形状と同一の構成からなる回路部品を、10個の溝の各々の溝に作成する。
実施例5で作成した10個の溝の各々の溝に作成した11cm×2cmからなるグラフェン接合体の表面に、実施例6で作成した10個の絶縁層を等間隔に配置させ、実施例5で用いた板材を被せ、板材の上に、2kgの重り5個を等間隔に置き、絶縁層の表面を均等に圧縮し、10秒後に重りを取り除いた。さらに、10個の絶縁層の各々の絶縁層の表面の中央部に、実施例7で作成した導電層を配置させ、実施例5で用いた板材を被せ、板材の上に、1.5kgの重り5個を等間隔に置き、導電層の表面を均等に圧縮し、10秒後に重りを取り除いた。この後、グラフェン接合体が形成された容器の底面の4個所に0.5Gの衝撃加速度を同時に3回加え、試料を容器の底から剥がした。こうした試料を10枚作製した。
図4に、回路基板のグラフェンの表面に、絶縁層と導電層とを摩擦圧接させた第二の回路部品の正面図を示す。6は回路基板としてのグラフェン接合体であり、7は酸化アルミニウムのナノ粒子の集まりからなる絶縁層であり、8は銅のナノ粒子の集まりからなる導電層である。
1枚の試料の導電層が接合された表面に、再度1.5kgの重り5個を等間隔に置いたが、導電層と絶縁層とに変化はなかった。さらに、試料の導電層が接合された表面に、2kgの重り5個を等間隔に置いた。この際に、導電層が極わずか圧縮されて塑性変形したが、絶縁層と導電層との双方は、グラフェン接合体から剥がれなかった。このため、絶縁層が、一定の接合強度でグラフェン接合体に接合し、導電層が一定の接合強度で絶縁層に接合した。
さらに、もう一枚の試料を、2mの高さから自然落下させたが、試料の変化は見られなかった。さらに、4mの高さから自然落下させたが、試料の変化は見られなかった。このため、絶縁層が、一定の接合強度でグラフェン接合体に接合し、導電層が一定の接合強度で絶縁層に接合した。
【0035】
実施例1と実施例5で作成したグラフェン接合体は一例に過ぎない。つまり、グラフェン接合体の形状と、積層して接合したグラフェンの枚数とは、グラフェンの集まりが1-ブタノールに分散した分散液を注入する容器の形状と注入する量によって決まる。いっぽう、容器の形状と注入する量に制約はない。このため、グラフェン接合体の形状と、積層して接合したグラフェンの枚数の制約はない。さらに、グラフェンが極めて強靭な素材であり、グラフェンを重なり合わせたグラフェンの集まりに、過大な圧縮応力を加えても、グラフェンは破壊しない。従って、重なり合ったグラフェンに過大な圧縮応力を加えると、重なり合った部位に摩擦熱が発生し、グラフェン同士が摩擦熱で接合する。従って、実施例1と実施例5で作成したグラフェン接合体は一例に過ぎない。
実施例2と実施例6で作成した絶縁層の形状と厚みは、安息香酸アルミニウムのメタノール分散液を注入する容器の形状と、注入する量によって決まる。いっぽう、容器の形状と注入する量に制約はない。このため、絶縁層の形状と厚みの制約はない。従って、実施例2と実施例6で作成した絶縁層は、一例に過ぎない。従って、絶縁層の絶縁抵抗は、自在に変えられる。
実施例3と実施例7で作成した導電層の形状と厚みは、オクチル酸銅のメタノール分散液を注入する容器の形状と、注入する量によって決まる。いっぽう、容器の形状と注入する量に制約はない。このため、導電層の形状と厚みの制約はない。従って、実施例2と実施例6で作成した絶縁層は、一例に過ぎない。
さらに、実施例4で作成した回路部品は、実施例1で作成したグラフェン接合体の表面に、実施例2で作成した絶縁層を摩擦圧接させ、さらに、絶縁層の表面に、実施例3で作成した導電層を摩擦圧接させたため、実施例4で作成した回路部品の形状と構成は一例に過ぎない。同様に、実施例8で作成した回路部品の形状と構成も一例に過ぎない。
【符号の説明】
【0036】
1 グラフェン 2 回路基板としてのグラフェン接合体 3 酸化アルミニウムのナノ粒子の集まりからなる絶縁層 4 銅のナノ粒子の集まりからなる導電層 5 回路基板としてのグラフェン接合体 6 酸化アルミニウムのナノ粒子の集まりからなる絶縁層 7 銅のナノ粒子の集まりからなる導電層