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<図1>
  • 特開-鞍乗り型車両の車体前部構造 図1
  • 特開-鞍乗り型車両の車体前部構造 図2
  • 特開-鞍乗り型車両の車体前部構造 図3
  • 特開-鞍乗り型車両の車体前部構造 図4
  • 特開-鞍乗り型車両の車体前部構造 図5
  • 特開-鞍乗り型車両の車体前部構造 図6
  • 特開-鞍乗り型車両の車体前部構造 図7
  • 特開-鞍乗り型車両の車体前部構造 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122411
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両の車体前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62J 17/06 20060101AFI20240902BHJP
   B62J 23/00 20060101ALI20240902BHJP
   B62J 17/10 20200101ALI20240902BHJP
【FI】
B62J17/06
B62J23/00 A
B62J17/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029937
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】中村 正典
(72)【発明者】
【氏名】迎 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼口 祐輔
(57)【要約】
【課題】レッグシールドの表面を流れる水をリブで案内可能としつつ、リブが走行風を受けることによる空力の影響を抑えることができる鞍乗り型車両の車体前部構造を提供する。
【解決手段】レッグシールドは、上部カバー31と下部カバー41とを備え、レッグシールドの前面側で下部カバー41の上縁部43よりも上方の部位には、下部カバー41の上縁部43に沿うように延びるリブ60を備え、リブ60は、車幅方向で複数の単リブに分割され、複数の単リブの内、車幅方向で隣接する単リブ同士は、上下方向で互いに隙間S1を空けて離間し、かつ車幅方向で重なり代L1を有している。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足を載せるステップ部(6)と、前記ステップ部(6)の前方に配置されるレッグシールド(28)と、を備える鞍乗り型車両の車体前部構造において、
前記レッグシールド(28)は、
前記レッグシールド(28)の上部を形成する上部カバー(31)と、
前記上部カバー(31)の下方に配置され、前記レッグシールド(28)の下部を形成する下部カバー(41)と、を備え、
前記レッグシールド(28)の前面側で前記下部カバー(41)の上縁部(43)よりも上方の部位には、前記レッグシールド(28)の前面から前方へ突出し、前記下部カバー(41)の上縁部(43)に沿うように延びるリブ(60)を備え、
前記リブ(60)は、車幅方向で複数の単リブ(61)に分割され、
前記複数の単リブ(61)の内、車幅方向で隣接する単リブ(61)同士は、上下方向で互いに隙間(S1)を空けて離間し、かつ車幅方向で重なり代(L1)を有している鞍乗り型車両の車体前部構造。
【請求項2】
前記下部カバー(41)は、前記上部カバー(31)の下方に隙間を空けて配置され、
前記レッグシールド(28)は、前記上部カバー(31)および前記下部カバー(41)の間の隙間を覆う中部カバー(51)をさらに備え、
前記リブ(60)は、前記中部カバー(51)に形成されている請求項1に記載の鞍乗り型車両の車体前部構造。
【請求項3】
車幅方向で隣接する前記単リブ(61)同士の組の少なくとも一つは、上下方向で重なり代(L2)を有している請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両の車体前部構造。
【請求項4】
車幅方向で隣接する前記単リブ(61)同士の組の全てが、上下方向で重なり代(L2)を有している請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両の車体前部構造。
【請求項5】
前記複数の単リブ(61)は、車幅方向外側から車幅方向内側へ下向きに傾斜する傾斜リブ(62)を備えている請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両の車体前部構造。
【請求項6】
前記複数の単リブ(61)の内、車幅方向中央部に位置する前記単リブ(61)は、前後方向から見て下方に凸の湾曲状の湾曲リブ(63)とされる請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両の車体前部構造。
【請求項7】
前記複数の単リブ(61)の内、車幅方向中央部に位置する前記単リブ(61)は、前後方向から見て下方に凸の湾曲状の湾曲リブ(63)とされ、
前記複数の単リブ(61)は、前記傾斜リブ(62)と前記湾曲リブ(63)との間に、略水平に延びる水平リブ(64)を備えている請求項5に記載の鞍乗り型車両の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両の車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する空力性向上に関する研究開発が行われている。
例えば特許文献1には、鞍乗り型車両の車体前部構造において、乗員の脚部の前方を覆うレッグシールドを、インナーラックの開口の上縁に沿って上下に分割し、レッグシールドとインナーラックとのカバー合わせ部に、インナーラック内に水が浸入することを防ぐリブを設ける構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-116298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行文献においては、レッグシールド表面の水の流れを制限する部位によっては、水の流れとともに走行風の流れを制限してしまうことがある。このため、水の浸入を防ぎつつ、リブに沿って流れる風を流しやすくすることが望まれていた。
【0005】
そこで本発明は、レッグシールドの表面を流れる水をリブで案内可能としつつ、リブが走行風を受けることによる空力の影響を抑えることができる鞍乗り型車両の車体前部構造を提供する。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の第一の態様は、足を載せるステップ部(6)と、前記ステップ部(6)の前方に配置されるレッグシールド(28)と、を備える鞍乗り型車両の車体前部構造において、前記レッグシールド(28)は、前記レッグシールド(28)の上部を形成する上部カバー(31)と、前記上部カバー(31)の下方に配置され、前記レッグシールド(28)の下部を形成する下部カバー(41)と、を備え、前記レッグシールド(28)の前面側で前記下部カバー(41)の上縁部(43)よりも上方の部位には、前記レッグシールド(28)の前面から前方へ突出し、前記下部カバー(41)の上縁部(43)に沿うように延びるリブ(60)を備え、前記リブ(60)は、車幅方向で複数の単リブ(61)に分割され、前記複数の単リブ(61)の内、車幅方向で隣接する単リブ(61)同士は、上下方向で互いに隙間(S1)を空けて離間し、かつ車幅方向で重なり代(L1)を有している。
この構成によれば、レッグシールドが上部カバーおよび下部カバーを備え、レッグシールドの前面側には下部カバーの上縁部に沿うようにリブを配置することで、上部カバーの前面を流下する水が下部カバーの上縁に至ることを抑止し、下部カバーの上縁部(レッグシールドの分割部)から後面側(乗員側)に水が染み出すことを抑止することができる。また、リブは、車幅方向で複数の単リブに分割され、複数の単リブの内、車幅方向で隣接する単リブ同士は、上下方向で互いに隙間を空けて離間し、かつ車幅方向で重なり代を有していることで、レッグシールドの前面側でリブに囲まれた領域に走行風が吹き込んだとしても、単リブ間の隙間からリブで囲まれた領域の外側へ走行風を流すことができる。このため、走行風の流れがリブに遮られ難くなり、レッグシールドに止水リブを設けたことによる走行風の影響を抑えることができる。
【0007】
本発明の第二の態様は、上記第一の態様において、前記下部カバー(41)は、前記上部カバー(31)の下方に隙間を空けて配置され、前記レッグシールド(28)は、前記上部カバー(31)および前記下部カバー(41)の間の隙間を覆う中部カバー(51)をさらに備え、前記リブ(60)は、前記中部カバー(51)に形成されている。
この構成によれば、レッグシールドの上部および下部をそれぞれ形成する上部カバーおよび下部カバーに対し、これらの間の隙間を覆う中部カバーに止水リブを形成することで、比較的大型になりやすい上部カバーおよび下部カバーの成型性に影響を与えることなく、比較的小型で済む中部カバーを利用して止水リブを容易に形成することができる。
【0008】
本発明の第三の態様は、上記第一又は第二の態様において、車幅方向で隣接する前記単リブ(61)同士の組の少なくとも一つは、上下方向で重なり代(L2)を有している。
この構成によれば、車幅方向で隣接する単リブ同士が上下方向でも重なることで、リブで囲まれた領域から車幅方向外側へ走行風を流すことを可能としながら、リブ上の水が車幅方向外側へ流れることを抑止することができる。
【0009】
本発明の第四の態様は、上記第一又は第二の態様において、車幅方向で隣接する前記単リブ(61)同士の組の全てが、上下方向で重なり代(L2)を有している。
この構成によれば、車幅方向で隣接する単リブ同士の全てが上下方向でも重なることで、複数の単リブ同士の間に隙間を空けながら、複数の単リブ同士を車幅方向および上下方向で近づけてコンパクトに配置するとともに、リブ上の水が車幅方向外側へ流れることをより一層抑止することができる。
【0010】
本発明の第五の態様は、上記第一から第四の態様の何れか一つにおいて、前記複数の単リブ(61)は、車幅方向外側から車幅方向内側へ下向きに傾斜する傾斜リブ(62)を備えている。
この構成によれば、車幅方向内側ほど下方に位置する傾斜リブを備えることで、傾斜リブ上に溜まった水が車幅方向内側に案内され、車幅方向中央部で集約されて下方へ滴下される。このため、レッグシールドの分割部から後面側(乗員側)に水が染み出すことを抑止することができる。
【0011】
本発明の第六の態様は、上記第一から第五の態様の何れか一つにおいて、前記複数の単リブ(61)の内、車幅方向中央部に位置する前記単リブ(61)は、前後方向から見て下方に凸の湾曲状の湾曲リブ(63)とされる。
この構成によれば、車幅方向中央部の単リブが下方凸の湾曲リブであることで、車幅方向中央部に集約した水を滴下させやすくするとともに、湾曲リブが車幅方向中央部から車幅方向外側へ徐々に傾斜することで、走行風を車幅方向外側へ流しやすくすることができる。
【0012】
本発明の第七の態様は、上記第五の態様において、前記複数の単リブ(61)の内、車幅方向中央部に位置する前記単リブ(61)は、前後方向から見て下方に凸の湾曲状の湾曲リブ(63)とされ、前記複数の単リブ(61)は、前記傾斜リブ(62)と前記湾曲リブ(63)との間に、略水平に延びる水平リブ(64)を備えている。
この構成によれば、傾斜リブの傾斜を確保しながら、レッグシールドの幅に合わせてリブを配置しやすくなり、リブの設計自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レッグシールドの前面を流れる水をリブで案内可能としつつ、リブが走行風を受けることによる空力の影響を抑えることができる鞍乗り型車両の車体前部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態における自動二輪車の左側面図である。
図2】上記自動二輪車の車体前部の左側面図である。
図3】上記自動二輪車の車体前部の一部構成を省略した前面図である。
図4】上記自動二輪車のレッグシールドの後面図である。
図5】上記自動二輪車のレッグシールドの前面図である。
図6図5の要部拡大図である。
図7図5のVII-VII断面図である。
図8図5のVIII-VIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両上方を示す矢印UP、車体左右中央を示す線CL、が示されている。
【0016】
図1は、車両の一例としてのスクータ型の自動二輪車(鞍乗り型車両)1を、車両左右方向(車幅方向)から見た左側面図を示している。自動二輪車1は、操向輪である前輪3と、駆動輪である後輪4と、を備えている。前輪3は、左右一対のフロントフォーク3aに支持され、バーハンドル2によって操向可能である。後輪4は、スイング式のパワーユニット8に支持され、パワーユニット8によって駆動可能である。
【0017】
バーハンドル2、フロントフォーク3aおよび前輪3を含むステアリング系部品は、車体フレーム10の前端部のヘッドパイプ10aに操向可能に支持されている。パワーユニット8の前部は、車体フレーム10の前後中間部(中央に限らない)に上下揺動可能に支持されている。パワーユニット8は、車両走行用の駆動源8aと、駆動源8aが発生した駆動力を後輪4に伝達する伝動装置8bと、を備えている。駆動源8aは、例えば内燃機関および電気モータの少なくとも一方を備えている。
【0018】
車体フレーム10は、ヘッドパイプ10aと、ヘッドパイプ10aから下後方へ延びるダウンフレーム10bと、ダウンフレーム10bの下部から後方へ延びるロアフレーム10cと、ロアフレーム10cの後部から後上方へ延びるリヤフレーム10dと、を備えている。ヘッドパイプ10aおよびダウンフレーム10bは、車体左右中央CL上で単一に設けられている。
【0019】
前輪3と後輪4との間には、運転者が足を置くフロアステップ6が設けられている。フロアステップ6の前方には、フロントボディ11が設けられ、フロアステップ6の後方には、リアボディ12が設けられている。フロントボディ11およびリアボディ12の間でフロアステップ6の上方の空間K1は、運転者が車体を跨ぐ際の跨ぎ空間K1とされる。フロントボディ11の上方には、バーハンドル2が配置されている。バーハンドル2の周囲は、ハンドルカバー2aで覆われている。リアボディ12の上方には、乗員が着座するシート5が配置されている。フロアステップ6の下部左側には、車体を左側に傾斜させた起立状態で支持可能な可倒式のサイドスタンド7が設けられている。
【0020】
自動二輪車1の車体フレーム10の周囲は、車体カバー20で覆われている。車体カバー20は、フロントボディ11を前方から覆うフロントセンターカバー21と、フロントボディ11を左右側方から覆うフロントサイドカバー22と、フロントボディ11を後方から覆うフロントインナーカバー23と、を備えている。
【0021】
また、車体カバー20は、フロアステップ6を上方から覆うフロアカバー24と、フロアステップ6を左右側方から覆うフロアサイドカバー25と、リアボディ12を前方から覆うリヤセンターカバー26と、リアボディ12を左右側方から覆うリヤサイドカバー27と、を備えている。
【0022】
フロントセンターカバー21およびフロントサイドカバー22は、フロントボディ11の外観を形成するフロントボディカバー11aに含まれる。リヤセンターカバー26およびリヤサイドカバー27は、リアボディ12の外観を形成するリヤボディカバー12aに含まれる。フロアカバー24の上面は、フロアステップ6の足載せ面24aとされる。足載せ面24aは、例えば車幅方向の全幅に渡って平坦状に形成されている。フロアステップ6は、車幅方向内側で上方に隆起するセンタートンネルを備えてもよい。車体カバー20は、ハンドルカバー2aを除き、車体フレーム10に直接又は間接的に固定されている。
【0023】
フロントサイドカバー22は、車両側面視で前上がりに傾斜するフロント分割線22cを境に、上側のフロント第一カバー22aと下側のフロント第二カバー22bとに分割されている。例えば、フロント第一カバー22aは、フロントセンターカバー21に対し、連続的な外観面を形成するとともに同様の塗装等がなされることで、一体的な外観を形成している。例えば、フロント第二カバー22bは、フロント第一カバー22aに対し、車幅方向外側にオフセットした外観面を形成するとともに異なる塗装等がなされることで、別体的な外観を形成している。
【0024】
<レッグシールド>
図1図2図4を参照し、フロントインナーカバー23は、フロントインナーカバー23の上部を形成する上部カバー31と、フロントインナーカバー23の下部を形成する下部カバー41と、上部カバー31の下部と下部カバー41の上部とに跨って後方側から取り付けられている中部カバー51と、を備えている。下部カバー41は、上部カバー31との間に上下方向で間隔を空けて配置されている。フロントインナーカバー23は、運転者の脚部の前方を覆うレッグシールド28を構成している。
【0025】
レッグシールド28は、ダウンフレーム10bの後方および左右側方を覆うトンネル状の中央膨出部28aと、中央膨出部28aの左右両側に張り出す左右一対のシールド本体部28bL,28bRと、を備えている。中央膨出部28aは、後方に凸の略台形状の断面形状を有し、レッグシールド28の上下端に渡って延びている。図中符号28cは、中央膨出部28aの後方側で概ね一定の左右幅を有して上下方向に延びる後方平坦部を示す。
【0026】
レッグシールド28は、側面視で前方に凸の浅いV字形状をなしている。例えば、レッグシールド28の側面視の屈曲位置B1を境に、レッグシールド28の各構成の上部と下部とが分かれるものとする。レッグシールド28の上部は、側面視でヘッドパイプ10aの傾斜に沿うように形成されている。レッグシールド28の下部は、側面視でダウンフレーム10bの傾斜に沿うように形成されている。
【0027】
図3を併せて参照し、レッグシールド28の上部前方は、フロントセンターカバー21に覆われている。レッグシールド28の下部前方は、前輪3を配置する空間(タイヤハウス)を形成するべく切り欠かれている。フロントカバーの下部の切り欠き領域には、車両前方から見て凹状のタイヤハウスカバー29が取り付けられている。タイヤハウスカバー29の上部には、左右フロントフォーク3aを回動可能に挿通するためのカバー開口29aが形成されている。カバー開口29aは、車両前方に向けて開口し、このカバー開口29aを通じて、フロントボディカバー11a内に走行風が導入される。
【0028】
図4を参照し、レッグシールド28の上部右側には、イグニッションスイッチおよび各種ロックの施錠解除スイッチを含む不図示のメインスイッチユニットが配置されている。例えば、メインスイッチユニットは、フロントボディカバー11aの内側で不図示のハンドルロック装置と一体化されている。フロントボディカバー11aの内側でメインスイッチユニットの下方には、不図示のヒューズボックスおよび各種のECU(Electronic Control Unit)等の電装部品が集約して配置されている。
【0029】
レッグシールド28の上部の左右両側には、物品を収納可能な左右インナーボックス35,36がそれぞれ備えられている。左右インナーボックス35,36は、上部カバー31と中部カバー51との組み合わせにより形成されている。左右インナーボックス35,36は、何れも車体左右中央CLと重ならず、車体左右中央CLから左右方向外側に離隔している。左右インナーボックス35,36の上端部に位置するボックス開口35a,36aは、リッドを備えておらず、車両後上方に開放した態様をなしている。右側のインナーボックス36のボックス開口36aの内側には、メインスイッチユニットの操作部を設置するための台座部34が形成されている。フロントボディカバー11aの右内側に電装部品が多く配置されるため、右インナーボックス36は左インナーボックス35よりも容量が小さくされる。
【0030】
左右インナーボックス35,36の間には、中央膨出部28aが配置されている。中央膨出部28aの後方平坦部28cにおいて、上下方向で左右インナーボックス35,36のボックス開口35a,36aと重なる高さには、荷掛フック37が取り付けられている。
【0031】
図2図5を併せて参照し、上部カバー31の左右両側には、車両前方に向けて凹む左右凹部38L,38Rが形成されている。左右凹部38L,38Rは、左右インナーボックス35,36の前方側を形成している。上部カバー31の左右凹部38L,38Rの後方側は、中部カバー51の左右側部52に覆われて閉塞される。これにより、上方側が開放した容器形状の左右インナーボックス35,36が形成されている。上部カバー31の下部の左右中央部には、ダウンフレーム10bを避けるための中央切り欠き部39aが形成されている。
【0032】
下部カバー41の左右側部には、中央膨出部28aに対して車両前方に変位する下凹部42が形成されている。左右の下凹部42の下端は、フロアステップ6の足載せ面24aに至っている。車両前方に変位した下凹部42が足載せ面24aの前端部の上方に形成されることで、足載せ面24aの前端部が前方に広く確保される。
【0033】
ここで、上部カバー31、中部カバー51および下部カバー41は、それぞれ合成樹脂製の一体成型品である。
例えば、上部カバー31および下部カバー41は、着色済みの樹脂材料(原着樹脂)を用いた無塗装部品とされる。上部カバー31は、ボックス開口35a,36aを通じて運転者から視認されやすいボックス前側の内壁(凹部38L,38R)を形成するとともに、運転者が触れやすいメインスイッチおよび荷掛フック37の配置部位を形成している。
【0034】
下部カバー41は、足載せ面24aに近接することで運転者の足が触れやすい。このような下部カバー41および上部カバー31を原着樹脂製の無塗装部品とすることで、物品等が接触することによる傷付きを目立たなくしている。
一方、車両後方側(乗員側)から取り付けられて乗員の目に触れやすい中部カバー51は、例えば塗装がなされた塗装部品とすることで、外観性の向上が図られるとともに、フロントサイドカバー22のフロント第一カバー22a等の塗装部品と一体感のある外観を形成可能である。
【0035】
<中部カバー>
図2図4図5を参照し、中部カバー51は、上部カバー31の左右の凹部38L,38Rに後方側から取り付けられて左右インナーボックス35,36を形成する左右側部52と、左右側部52の間で中央膨出部28aの後方平坦部28cに重なるように取り付けられる左右中央部53と、を備えている。上部カバー31の下縁部39は、左右インナーボックス35,36の底部高さ(深さ)近傍に配置されている。上部カバー31の下縁部39および左右インナーボックス35,36の底部は、レッグシールド28の側面視の屈曲位置B1近傍に配置されている。中部カバー51の下部は、上部カバー31の下縁部39よりも下方まで延びている。
【0036】
中部カバー51における上部カバー31の下縁部39(および屈曲位置B1)よりも下方に延びる部位(以下、下方延出部54という。)は、左右中央部53では略一定の上下幅を有し、左右側部52では車幅方向外側ほど上下幅を減少させるように形成されている。下方延出部54は、前後方向から見て下方に凸の三日月形状に形成されている。中部カバー51の上部(上部カバー31の下縁部39よりも上方の部位)は、上側ほど後方に位置するように傾斜し、上部カバー31の下縁部39よりも下方に延びる下方延出部54は、下側ほど後方に位置するように傾斜している。
【0037】
図5を参照し、下部カバー41の上縁部43は、上部カバー31の下縁部39の下方に離間している。中部カバー51の下部は、下部カバー41の上縁部43まで延びている。中部カバー51の下縁部55は、下部カバー41の上縁部43に結合されている。中部カバー51の下方延出部54は、上部カバー31と下部カバー41との間の隙間を閉塞する部位であり、この下方延出部54の前面側に、後述する止水リブ集合体60が形成されている。
【0038】
図8図9を併せて参照し、中部カバー51の下縁部55には、図8図9の断面視で前下方に屈曲して延びる下縁屈曲部56が形成されている。下縁屈曲部56は、下縁部55の全長に渡って形成されている。下部カバー41の上縁部43には、図8図9の断面視で前方に凸のV字状に屈曲する上縁凹部44が形成されている。上縁凹部44は、上縁部43の全長に渡って形成されている。上縁凹部44に下縁屈曲部56を嵌め込むことで、中部カバー51と下部カバー41との結合部(分割部43A)からレッグシールド28内に水が浸入したりレッグシールド28内の水が流出したりすることが抑えられる。
【0039】
図2図4を参照し、中部カバー51は、フロントサイドカバー22の上部(フロント第一カバー22a)と連続的な外観を形成している。下部カバー41は、例えばフロントサイドカバー22の下部(フロント第二カバー22b)と同様の質感の外観を形成している。すなわち、フロント第二カバー22bは、下部カバー41と同様、着色済みの樹脂材料(原着樹脂)を用いた無塗装部品としてもよい。
【0040】
上部カバー31は、ハンドルカバー2aと中部カバー51との間において乗員側に露出する。上部カバー31は、概ね下半分が中部カバー51に後方から覆われるインナーカバーである。中部カバー51は、後面(外面)全体が運転者側に露出する外装カバーである。
【0041】
図2図5を参照し、上部カバー31は、左右インナーボックス35,36の凹形状(凹部38L,38R)を形成するため、側面視でヘッドパイプ10aと直交する方向に厚さを有している。これに対し、上部カバー31の下部は、屈曲位置B1近傍で終端するので、上部カバー31の下部の側面視の厚さの増加が抑えられる。
【0042】
下部カバー41は、ダウンフレーム10bの下部を避けるとともに運転者のフットスペースを確保するため、車幅方向内側に中央膨出部28aを形成するとともに左右側部は車両前方に変位した下凹部42を形成している。このため、下部カバー41は、側面視でダウンフレーム10bと直交する方向に厚さを有している。これに対し、下部カバー41の上部は、屈曲位置B1よりも上方に延びないので、下部カバー41の上部の側面視の厚さの増加が抑えられる。
【0043】
図2図4を参照し、中部カバー51は、側面視で屈曲位置B1の上方および下方にそれぞれ延びている。中部カバー51の上端部は、上部カバー31の上端部よりも下方で終端し、中部カバー51の下端部は、下部カバー41の下端部よりも上方で終端する。このため、中部カバー51の上下幅は、上部カバー31および下部カバー41の上下幅よりも小さく、側面視V字形状でありながら側面視の厚さの増加が抑えられている。
【0044】
<止水リブ>
図5図8に示すように、中部カバー51の前面側(フロントボディカバー11aの内側)には、レッグシールド28の前面側を伝う水がレッグシールド28の分割部43A(中部カバー51と下部カバー41との間の分割部、下部カバー41の上縁部43に沿う部位)に至ることを抑制するための止水リブ集合体60が形成されている。水リブ集合体60は、車幅方向で複数の単リブ61を並べた態様をなしている。以下、止水リブ集合体60を単にリブ60又は止水リブ60ということがある。
【0045】
各単リブ61は、中部カバー51の前面から車両前方側へ突出し、中部カバー51の前面を流れ落ちる水を受け止める。各単リブ61は、下部カバー41の上縁部43の上方でこの上縁部43に沿うように車幅方向に延びている。リブ60は、複数の単リブ61を、車両前後方向視で概ねV字形状をなすように配置し、受け止めた水を車幅方向中央部に案内する。例えば、リブ60は、車幅方向中央部に集約した水を、フロントボディカバー11a内で下方に滴下させる。
【0046】
複数の単リブ61は、傾斜リブ62と、湾曲リブ63と、水平リブ64と、を含んでいる。
傾斜リブ62は、リブ60の車幅方向外側の範囲にそれぞれ備えられている。傾斜リブ62は、車幅方向外側から車幅方向内側へ下向きに傾斜して延びている。傾斜リブ62は、車幅方向内側ほど下方に位置するように傾斜している。傾斜リブ62は、車幅方向両側の各々において複数設けられている。実施形態では、傾斜リブ62は、車幅方向両側の各々において三つずつ設けられている。以下、複数の傾斜リブ62を、車幅方向外側から順に第一傾斜リブ62a、第二傾斜リブ62bおよび第三傾斜リブ62cという。複数の傾斜リブ62は、車体左右中央CLに関して左右対称に形成されている。
【0047】
複数の傾斜リブ62の内、車幅方向で隣接する傾斜リブ62同士は、前後方向から見て、車幅方向に対する傾斜と交差(例えば直交)する上下方向で、互いに隙間S1を空けて配置されている。この隙間S1により、レッグシールド28の前面側でリブ60に囲まれた領域に走行風が吹き込んだとしても、この走行風が車幅方向外側へ流れる際、傾斜リブ62の間の隙間S1を通過することで、走行風の流れが傾斜リブ62に遮られ難くなる。これにより、レッグシールド28の前面側に止水リブ60を設けた場合にも、止水リブ60が走行風の力を受けることによる走行風の流れを制限することが抑えられる。
【0048】
図6を参照し、車幅方向で隣接する傾斜リブ62同士は、車幅方向で重なり代L1を有している。これにより、傾斜リブ62上に受け止めた水は、傾斜リブ62の傾斜に沿って車幅方向内側へ流下する際、隣り合う傾斜リブ62との間の隙間S1から滴下することがなく、リブ60の車幅方向中央へ案内される。実施形態では、止水リブ60を複数の単リブ61に分割しながら、止水リブ60の分割部から水が滴下することを抑え、所望の部位に水を案内可能としている。
【0049】
図7図8を参照し、複数の傾斜リブ62は、車両前方側への突出高さTFが均一であるが、例えば幅方向外側よりも車幅方向内側の方が、車両前方側への突出高さTFが低くなるように形成されてもよい。すなわち、第一傾斜リブ62a、第二傾斜リブ62bおよび第三傾斜リブ62cの順に前方への突出高さTFが低くなるように形成されてもよい。また、各傾斜リブ62の各々においても、車幅方向内側に位置するほど前方への突出高さTFが低くなるように形成されてもよい。
【0050】
図5図6を参照し、湾曲リブ63は、車幅方向中央部に単一に設けられている。湾曲リブ63は、前後方向から見て下方に凸の円弧状に形成されている。湾曲リブ63は、円弧形状の半径よりも小さい上下幅を有している。湾曲リブ63の左右側部63bは、前後方向から見て上向きに傾斜している。湾曲リブ63は、車体左右中央CLに関して左右対称に形成されている。
【0051】
水平リブ64は、第三傾斜リブ62cと湾曲リブ63との間に備えられ、前後方向から見て略水平に延びている。水平リブ64は、リブ60の車幅方向両側にそれぞれ単一に設けられている。水平リブ64の車幅方向外側には、上方へ屈曲して延びる外側屈曲部64aが形成されている。外側屈曲部64aは、前後方向から見て第三傾斜リブ62cと略平行に傾斜している。水平リブ64は、車体左右中央CLに関して左右対称に形成されている。
【0052】
図6を参照し、複数の単リブ61の内、車幅方向で隣接する単リブ61同士は、上下方向(前後方向から見て傾斜する部位においては、前記傾斜と交差(例えば直交)する上下方向)で、互いに隙間S1を空けて配置されるとともに、車幅方向で重なり代L1を有している。
具体的に、第一傾斜リブ62aと第二傾斜リブ62bとの間、第二傾斜リブ62bと第三傾斜リブ62cとの間、第三傾斜リブ62cと水平リブ64の外側屈曲部64aとの間、の各々には、前記傾斜と直交する上下方向で隙間S1が形成されるとともに、車幅方向の重なり代L1が設定されている。水平リブ64の車幅方向内側部と湾曲リブ63との間には、上下方向で隙間S1が形成されるとともに、車幅方向の重なり代L1が設定されている。
【0053】
さらに、車幅方向で隣接する単リブ61同士の組の少なくとも一つは、上下方向で重なり代L2を有している。実施形態では、複数の傾斜リブ62および水平リブ64の内の車幅方向で隣接する各組が、上下方向で重なり代L2を有している。
複数の傾斜リブ62は、それぞれ下側の傾斜リブ62の上端よりも上側の傾斜リブ62の下端の方が下方に位置している。第三傾斜リブ62cと水平リブ64とは、下側の水平リブ64の外側屈曲部64aの上端よりも上側の第三傾斜リブ62cの下端の方が下方に位置している。
【0054】
なお、水平リブ64と湾曲リブ63との組は、上下方向の重なり代L2を有していないが、例えば図6に鎖線で示すように、水平リブ64の車幅方向内側に下方へ屈曲して延びる内側屈曲部64bを形成することで、水平リブ64と湾曲リブ63との組が上下方向の重なり代L2を有する構成としてもよい。すなわち、車幅方向で隣接する単リブ61同士の組の全てが、上下方向で重なり代L2を有する構成としてもよい。この場合、水平リブ64と湾曲リブ63とは、下側の湾曲リブ63の上端よりも上側の水平リブ64の内側屈曲部64bの下端の方が下方に位置している。
【0055】
<リブの作用>
図3図5図6を参照し、ホイールハウスカバー29のカバー開口29a等からフロントボディカバー11a内に浸入した雨水等は、レッグシールド28の前面を伝って滴下する際、リブ60に受け止められる。リブ60上の水は、概ねV字形状に配置されたリブ60に沿って、車幅方向中央部に案内される。リブ60は複数の単リブ61に分割されているが、単リブ61間には車幅方向で重なり代L1が設定されることで、リブ60上の水が単リブ61間から滴下することなく、車幅方向中央部に案内される。車幅方向中央部に集められた水は、湾曲リブ63の左右中央部63a(リブ60の車幅方向中央部)から下方へ滴下される。リブ60の車幅方向中央部から滴下した水は、例えばダウンフレーム10bの後面に沿って流れて、車体下方に排水される。
【0056】
ここで、フロントボディカバー11a内に走行風が吹き込み、この走行風が前後方向から見てV字状に配置された止水リブ60の内側に衝突すると、特に左右両側の傾斜リブ62が走行風の力を強く受けた場合に、走行風の流れを制限することが考えられる。
実施形態では、止水リブ60を複数の単リブ61に分割し、隣接する単リブ61の間に隙間S1を設けることで、リブ60が連続する場合と比べて、走行風の流れがリブ60に遮られ難くしている。これにより、リブ60が走行風から受ける力を軽減し、空力への影響を抑えている。
【0057】
単リブ61間の隙間S1を走行風が流れる際、単リブ61間には上下方向でも重なり代L2が設定されることで、走行風とともにリブ60上の水がリブ60の外側の領域に飛散することを抑えている。すなわち、車幅方向で隣接する単リブ61同士の車幅方向および上下方向の各重なり代L1,L2は、隙間S1に走行風を流す際に水が飛散し難くなるように設定されている。
【0058】
以上説明したように、上記実施形態における自動二輪車1の車体前部構造は、運転者が足を載せるフロアステップ6の前方に配置されるレッグシールド28を備え、前記レッグシールド28は、レッグシールド28の上部を形成する上部カバー31と、上部カバー31の下方に配置され、レッグシールド28の下部を形成する下部カバー41と、を備え、前記レッグシールド28の前面側で前記下部カバー41の上縁部43よりも上方の部位には、前記レッグシールド28の前面から前方へ突出し、前記下部カバー41の上縁部43に沿うように延びるリブ60を備え、前記リブ60は、車幅方向で複数の単リブ61に分割され、前記複数の単リブ61の内、車幅方向で隣接する単リブ61同士は、上下方向で互いに隙間S1を空けて離間し、かつ車幅方向で重なり代L1を有している。
この構成によれば、レッグシールド28が上部カバー31および下部カバー41を備え、レッグシールド28の前面側には下部カバー41の上縁部43に沿うようにリブ60を配置することで、上部カバー31の前面を流下する水が下部カバー41の上縁に至ることを抑止し、下部カバー41の上縁部43(レッグシールド28の分割部43A)から後面側(乗員側)に水が染み出すことを抑止することができる。また、リブ60は、車幅方向で複数の単リブ61に分割され、複数の単リブ61の内、車幅方向で隣接する単リブ61同士は、上下方向で互いに隙間S1を空けて離間し、かつ車幅方向で重なり代L1を有していることで、レッグシールド28の前面側でリブ60に囲まれた領域に走行風が吹き込んだとしても、単リブ61間の隙間S1からリブ60で囲まれた領域の外側へ走行風を流すことができる。このため、走行風の流れがリブ60に遮られ難くなり、レッグシールド28に止水リブ60を設けたことによる走行風の影響を抑えることができる。
【0059】
上記自動二輪車1の車体前部構造において、前記下部カバー41は、前記上部カバー31の下方に隙間を空けて配置され、前記レッグシールド28は、前記上部カバー31および前記下部カバー41の間の隙間を覆う中部カバー51をさらに備え、前記リブ60は、前記中部カバー51に形成されている。
この構成によれば、レッグシールド28の上部および下部をそれぞれ形成する上部カバー31および下部カバー41に対し、これらの間の隙間を覆う中部カバー51に止水リブ60を形成することで、比較的大型になりやすい上部カバー31および下部カバー41の成型性に影響を与えることなく、比較的小型で済む中部カバー51を利用して止水リブ60を容易に形成することができる。
【0060】
上記自動二輪車1の車体前部構造において、車幅方向で隣接する前記単リブ61同士の組の少なくとも一つは、上下方向で重なり代L2を有している。
この構成によれば、車幅方向で隣接する単リブ61同士が上下方向でも重なることで、リブ60で囲まれた領域から車幅方向外側へ走行風を流すことを可能としながら、リブ60上の水が車幅方向外側へ流れることを抑止することができる。
【0061】
上記自動二輪車1の車体前部構造において、車幅方向で隣接する前記単リブ61同士の組の全てが、上下方向で重なり代L2を有している。
この構成によれば、車幅方向で隣接する単リブ61同士の全てが上下方向でも重なることで、複数の単リブ61同士の間に隙間S1を空けながら、複数の単リブ61同士を車幅方向および上下方向で近づけてコンパクトに配置するとともに、リブ60上の水が車幅方向外側へ流れることをより一層抑止することができる。
【0062】
上記自動二輪車1の車体前部構造において、前記上部カバー31はフロントインナーカバー23の上部を形成し、前記下部カバー41はフロントインナーカバー23の下部を形成することを特徴とする。
この構成によれば、レッグシールド28を構成するフロントインナーカバー32の上下の分割部43Aにおいて、後面側(乗員側)に水が染み出すことを抑止することができる。
【0063】
上記自動二輪車1の車体前部構造において、前記複数の単リブ61は、車幅方向外側から車幅方向内側へ下向きに傾斜する傾斜リブ62を備えている。
この構成によれば、車幅方向内側ほど下方に位置する傾斜リブ62を備えることで、傾斜リブ62上に溜まった水が車幅方向内側に案内され、車幅方向中央部で集約されて下方へ滴下される。このため、レッグシールド28の分割部43Aから後面側(乗員側)に水が染み出すことを抑止することができる。なお、傾斜リブ62が車幅方向外側ほど下方に位置するように傾斜する場合、リブ60上に溜まった水が左右に分かれて流れるため、左右中央に集めて滴下させる場合と比べて水が排水し難くなる。
【0064】
上記自動二輪車1の車体前部構造において、前記傾斜リブ62は、車幅方向外側よりも車幅方向内側の方が、車両前方への突出高さTFが低く形成されてもよい。
この構成によれば、傾斜リブ62の車幅方向外側を高く形成することで、車幅方向外側の水を受け止めやすくするとともに、傾斜リブ62の車幅方向内側を低く形成することで、集約した水を滴下させやすくすることができる。
【0065】
上記自動二輪車1の車体前部構造において、前記複数の単リブ61の内、車幅方向中央部に位置する前記単リブ61は、前後方向から見て下方に凸の湾曲状の湾曲リブ63とされる。
この構成によれば、車幅方向中央部の単リブ61が下方凸の湾曲リブ63であることで、車幅方向中央部に集約した水を滴下させやすくするとともに、湾曲リブ63が車幅方向中央部から車幅方向外側へ徐々に傾斜することで、走行風を車幅方向外側へ流しやすくすることができる。
【0066】
上記自動二輪車1の車体前部構造において、前記複数の単リブ61は、前記傾斜リブ62と前記湾曲リブ63との間に、略水平に延びる水平リブ64を備えている。
この構成によれば、傾斜リブ62の傾斜を確保しながら、レッグシールド28の幅に合わせてリブ60を配置しやすくなり、リブ60の設計自由度を高めることができる。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、乗員が足を載せるステップ部は、フロアステップに限らず、バータイプのステップでもよい。本実施形態の車体前部構造は、レッグシールドを備える車両であれば、自動二輪車以外の鞍乗り型車両に適用してもよい。
前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪(四輪バギー等)の車両も含まれる。原動機に電気モータを含む車両に適用してもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
6 フロアステップ(ステップ部)
28 レッグシールド
31 上部カバー
41 下部カバー
43 上縁部
51 中部カバー
60 止水リブ集合体(リブ)
61 単リブ
62 傾斜リブ
63 湾曲リブ
64 水平リブ
L1 車幅方向の重なり代
L2 上下方向の重なり代
S1 上下方向の隙間
TF 前方への突出高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8