(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122418
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】洗浄タンク
(51)【国際特許分類】
E03D 1/012 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
E03D1/012
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029945
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】三宅 翼
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039BA02
2D039EA03
(57)【要約】
【課題】洗浄タンクの組立施工時につば付ナットの締め付けを確実に行うことができる洗浄タンクを提供する。
【解決手段】本発明の洗浄タンク4は、タンク底面に開口穴20が形成された陶器製タンク12と、陶器製タンクの開口穴に挿入されその外周に雄ねじが形成された排水筒22を備えた樹脂製タンク14と、陶器製タンクの内側底面と樹脂製タンクの外側底面との間に取り付けられた第1パッキン34と、樹脂製タンクの排水筒の雄ねじと螺合する雌ねじがその内周に形成されたナット本体28と、このナット本体の上端に形成され外側に延びて陶器製タンクの外側底面と接するつば部30を備えたつば付ナット26と、このつば付ナットの外周側に取り付けられた第2パッキン36と、を有し、さらに、陶器製タンクの開口穴と樹脂製タンクの排水筒との間の隙間に挿入される薄片部76、82、86、88を有している。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗大便器に設置して使用される洗浄タンクであって、
タンク底面を備え、このタンク底面にタンク内側とタンク外側を貫通する開口穴が形成された陶器製タンクと、
この陶器製タンクの内側に配置され、上記陶器製タンクの開口穴に挿入されその外周に雄ねじが形成された排水筒を備えた樹脂製タンクと、
上記陶器製タンクの内側底面と上記樹脂製タンクの外側底面との間に取り付けられ陶器製タンクと樹脂製タンクとの隙間からの漏水を防止する第1パッキンと、
上記樹脂製タンクの排水筒の雄ねじと螺合する雌ねじがその内周に形成されたナット本体と、このナット本体の上端に形成され外側に延びて上記陶器製タンクの外側底面と接するつば部を備えたつば付ナットと、
このつば付ナットの外周側に取り付けられつば付ナットからの漏水を防止する第2パッキンと、を有し、
さらに、上記陶器製タンクの開口穴と上記樹脂製タンクの排水筒との間の隙間に挿入される薄片部を有していることを特徴とする洗浄タンク。
【請求項2】
上記薄片部は、上記つば付ナットと一体的に設けられている、請求項1に記載の洗浄タンク。
【請求項3】
上記薄片部の内周に、上記つば付ナットのナット本体の雌ねじと同じ方向且つ同じピッチの螺旋形状部が形成され、この螺旋形状部は、つば付ナットの締付け時に、その一部が上記陶器製タンクの開口穴と樹脂製タンクの排水筒との間の隙間内で潰れるようになっている、請求項2に記載の洗浄タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄タンクに係り、特に、水洗大便器に設置して使用される洗浄タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されているように、水洗大便器に設置して使用される洗浄タンクとして、内装タンクを樹脂製タンク、外装タンクを陶器製タンクとした洗浄タンクが知られている。この洗浄タンクの樹脂製タンクには排水筒が設けられ、この排水筒が陶器製タンクの底面の開口穴に挿入され、つば付ナットにより、固定されるようになっている。また、この洗浄タンクの陶器製タンクの内側底面と樹脂製タンクの外側底面の間に、平パッキンが配置され、この平パッキンが、つば付ナットを締め付けることによって、陶器製タンクと樹脂製タンクの間で押し潰されて両者間の隙間を塞ぎ、洗浄水がその隙間に流入するのを防ぐようになっている。
【0003】
また、特許文献2に記載されているように、内装タンクの外面に凸形状のガイドを設け、このガイドを外装タンクの内面に当接させながら、内装タンクを外装タンク内に挿入するようにした洗浄タンクも知られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-70395号公報
【特許文献2】特開2012-177257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、洗浄タンクを施工者が組立施工するとき、組立施工時の陶器タンク等の破損を防ぐために、つば付ナットを手締めで締め付け、陶器製タンク内に樹脂製タンクを固定するようにしている。
しかしながら、樹脂製タンクの陶器製タンクへの固定は、両タンクを横に傾けて(水平にして)行うので、樹脂製タンクが陶器製タンクに対して傾むくと、両タンクの軸線がずれ、それにより、つば付ナットを締付けたとき、つば付ナットのつば部が陶器タンクの外側底面に対して傾いて当接し、つば付ナットの締め付けを十分に行うことができないという問題があった。
なお、特許文献2の洗浄タンクにおいては、内装タンクの外面に凸形状のガイドを形成する必要があるので内装タンクの形状が複雑となり、さらに、他の形状の洗浄タンクに適用することができないので汎用性のないものとなっていた。
【0006】
また、この樹脂製タンクの陶器製タンクに対して傾くのは、陶器製タンクが焼結後に収縮し、樹脂製タンクの排水筒と同じ径とすることができず、必然的に樹脂製タンクの排水筒の外径と陶器製タンクの開口穴の内径との間に隙間が生じることにも原因の一つとなっている。
【0007】
本発明者らは、この洗浄タンクの施工時において、つば付けナットの締付け時に生じる問題点について鋭意研究した。この内容について、
図22及び
図23を参照して説明する。
図22(a)は樹脂製タンクが陶器製タンクに正常に挿入された状態を示す洗浄タンクの断面図であり、
図22(b)は樹脂製タンクが陶器製タンクに傾斜して挿入された状態を示す洗浄タンクの断面図である。
【0008】
先ず、
図22(a)に示すように、陶器製タンク100の底面には、開口穴102が形成されており、組立施工時には、樹脂製タンク104の排水筒106が陶器製タンク100の開口穴102に挿入される。樹脂製タンク104の排水筒106の外周には雄ねじ106aが形成され、この排水筒106の雄ねじ106aに対してつば付ナット108を締付け、排水筒106の雄ねじ106aとつば付ナット108の雌ねじ108aとが螺合することにより、樹脂製タンク102が陶器製タンク100に固定される。このとき、陶器製タンク100の軸線Xと樹脂製タンク102の軸線Yは同軸線となっている。
【0009】
これに対し、
図22(b)に示すように、樹脂製タンク104が陶器製タンク100に傾斜して挿入された場合、陶器製タンク100の軸線Xと樹脂製タンク104の軸線Yとは、同軸線とはならず、そのため、樹脂製タンク104の排水筒106の雄ねじ106aとつば付ナット108の雌ねじ108aも同軸上に配置されない。
この状態で、つば付ナット108を締め付けると、樹脂製タンク104の排水筒106の雄ねじ106aとつば付ナット108の雌ねじ108aとの螺合位置がずれてしまい(即ち、ねじ山同士がずれてしまい螺合しなくなる)、これにより、つば付きナット50の締め付けができなくなる。この状態を、以下「ねじ飛び」という。その結果、陶器製タンク100の内側底面と樹脂製タンク104の外側底面の間に配置された平パッキン110が正常に押し潰されず、洗浄水が開口穴102から外部に流出することになる。
【0010】
このような状況に鑑み、本発明者らは、「樹脂製タンクの傾き量」と「つば付ナットの締付けトルク」との関係を検証し、「ねじ飛び」が発生する条件を見出した。この条件を
図23により説明する。
図22(a)は「樹脂製タンクの傾き量」を示す説明図であり、
図22(b)は「樹脂製タンクの傾き量」と「つば付ナットの締付けトルク」との関係を示す線図である。
【0011】
先ず、
図22(a)に示すように、樹脂製タンク104が陶器製タンク100に傾斜して挿入された場合、上側の排水筒106の陶器製タンク110の外側底面からの突出量Aと下側の突出量Bの差をD(=|A―B|)とする。この差Dが「樹脂製タンクの傾き量」に相当する。この差Dは、実際の組立作業時において、最大値Dmaxより大きな値となることはない。
次に、
図22(b)に示す線図において、横軸は差D(=|A―B|)を示し、縦軸はつば付ナットの締付けトルクを示している。ここで、つば付ナットは、施工者が手締めにより行うので、その時の最大の締付けトルクは、Tmaxとなる。
【0012】
樹脂製タンクの傾き量をゼロからDmaxまで変化させ、このときの「ねじ飛び」が生じる締付けトルクについて、トルク発生器具を使用して検証し、
図22(b)に示す曲線Pを得た。この曲線Pにより、樹脂製タンクの傾き量が大きいほど小さな締付けトルクで「ねじ飛び」が生じ、傾き量が小さいほど大きな締付けトルクで「ねじ飛び」が生じることを確認した。また、
図22(b)には示さないが、そのときの両者の定量的な関係も求めた。
【0013】
この
図22(b)に示した検証結果から、つば付ナットを手締めする場合であっても、締付けトルクTmaxで締付けたときに「ねじ飛び」が生じる差DをD1とすると、領域Q(傾き量であるがD1~Dmax且つ締付けトルクがTmax以下)の場合に「ねじ飛び」が生じることが明らかとなった。
【0014】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、洗浄タンクの組立施工時のつば付ナットのねじ飛びを抑制し、つば付ナットの締め付けを確実に行うことができる洗浄タンクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明は、水洗大便器に設置して使用される洗浄タンクであって、タンク底面を備え、このタンク底面にタンク内側とタンク外側を貫通する開口穴が形成された陶器製タンクと、この陶器製タンクの内側に配置され、陶器製タンクの開口穴に挿入されその外周に雄ねじが形成された排水筒を備えた樹脂製タンクと、陶器製タンクの内側底面と樹脂製タンクの外側底面との間に取り付けられ陶器製タンクと樹脂製タンクとの隙間からの漏水を防止する第1パッキンと、樹脂製タンクの排水筒の雄ねじと螺合する雌ねじがその内周に形成されたナット本体と、このナット本体の上端に形成され外側に延びて陶器製タンクの外側底面と接するつば部を備えたつば付ナットと、このつば付ナットの外周側に取り付けられつば付ナットからの漏水を防止する第2パッキンと、を有し、さらに、陶器製タンクの開口穴と樹脂製タンクの排水筒との間の隙間に挿入される薄片部を有していることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、陶器製タンクの開口穴と樹脂製タンクの排水筒との間の隙間に薄片部を挿入することにより、樹脂製タンクが陶器製タンクに対して傾く原因となる隙間を埋める又は小さくするので、つば付ナットを締付けたとき、つば付ナットのつば部に加わる偏荷重を抑制することができるので、つば付ナットの手締めトルクによる「ねじ飛び」を防止することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、薄片部は、つば付ナットと一体的に設けられている。
このように構成された本発明においては、薄片部がつば付ナットと一体的に設けられているので、樹脂製タンクが陶器製タンクに対して傾く原因となる隙間を埋める又は小さくするので、つば付ナットを締付けたとき、つば付ナットのつば部に加わる偏荷重を確実に抑制することができるので、つば付ナットの手締めトルクによる「ねじ飛び」を防止することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、薄片部の内周に、つば付ナットのナット本体の雌ねじと同じ方向且つ同じピッチの螺旋形状部が形成され、この螺旋形状部は、つば付ナットの締付け時に、その一部が陶器製タンクの開口穴と樹脂製タンクの排水筒との間の隙間内で潰れるようになっている。
このように構成した本発明においては、薄片部の内周に、つば付ナットのナット本体の雌ねじと同じ方向且つ同じピッチの螺旋形状部が形成され、この螺旋形状部が、つば付ナットの締付け時に、その一部が陶器製タンクの開口穴と樹脂製タンクの排水筒との間の隙間内で潰れるようになっているので、つば付ナットを締付けたとき、つば付ナットのつば部に加わる偏荷重を確実に抑制することができるので、つば付ナットの手締めトルクによる「ねじ飛び」を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の洗浄タンックによれば、洗浄タンクの組立施工時のつば付ナットのねじ飛びを抑制し、つば付ナットの締め付けを確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態による洗浄タンクが設置される水洗大便器を示す側面断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による洗浄タンクのつば付ナットを示す縦断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による洗浄タンクのつば付ナットを示す平面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態による洗浄タンクのつば付ナットの第1変形例を示す断面図である。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿って見た断面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態による洗浄タンクのつば付ナットの第2変形例を示す平面図である。
【
図9】
図8のIX―IX線に沿って見た断面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態による洗浄タンクのつば付ナットの第3変形例を示す断面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態による洗浄タンクを示す要部拡大断面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態による洗浄タンクに使用される薄片を示す平面図、b-b線に沿って見た断面図、斜視図である。
【
図13】本発明の第2実施形態による洗浄タンクのつば付ナットの第1変形例を示す断面図である。
【
図14】本発明の第2実施形態による洗浄タンクのつば付ナットの第2変形例を示す断面図である。
【
図15】本発明の第1及び第2実施形態による洗浄タンクの陶器製タンクの製造工程を示すフローチャートである。
【
図16】型印工程において型印の第1例が形成された陶器製タンクの底面を示す平面図である。
【
図17】型印工程において型印の第2例が形成された陶器製タンクの底面を示す平面図である。
【
図18】型印工程において型印の第3例が形成された陶器製タンクの底面を示す平面図である。
【
図19】型印工程において型印の第4例が形成された陶器製タンクの底面を示す平面図である。
【
図20】型印工程において型印の第5例が形成された陶器製タンクの底面を示す平面図である。
【
図21】型印工程において型印の第6例が形成された陶器製タンクの底面を示す平面図である。
【
図22】樹脂製タンクが陶器製タンクに正常に挿入された状態を示す洗浄タンクの断面図(
図22(a))、及び、樹脂製タンクが陶器製タンクに傾斜して挿入された状態を示す洗浄タンクの断面図(
図22(b))である。
【
図23】「樹脂製タンクの傾き量」を示す説明図(
図22(a))、及び、「樹脂製タンクの傾き量」と「つば付ナットの締付けトルク」との関係を示す線図(
図22(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態による洗浄タンクについて説明する。
先ず、
図1乃至
図3により、本発明の第1実施形態による洗浄タンクについて説明する。
図1は本発明の第1実施形態による洗浄タンクが設置される水洗大便器を示す側面断面図であり、
図2は
図1の洗浄タンクを示す縦断面図であり、
図3は
図2のIIIの部分の拡大図である。
【0021】
図1に示すように、水洗大便器1は、便器本体2と、本発明の第1実施形態による洗浄タンク4を有する。便器本体2には、便座6及びその上面を覆う便蓋8が回動自在に設けられている。洗浄タンク4には、洗浄水が貯水されており、この洗浄水が、洗浄タンク4から便器本体2の導水路10に供給される。
【0022】
図2に示すように、洗浄タンク4は、陶器製タンク12と、この陶器製タンク12内に収容された樹脂製タンク14とを備えている。この洗浄タンク4は、樹脂製タンク14の内部に貯水された洗浄水の重力を利用して洗浄水を便器本体2に供給する重力給水式の貯水タンクである。
図2のXは、陶器製タンク12の軸線を示している。
【0023】
また、樹脂製タンク14内には、給水弁装置16及び排水弁装置18が設けられており、給水弁装置16により樹脂製タンク14内に洗浄水が供給され、この樹脂製タンク14に貯水された洗浄水が排水弁装置18により便器本体2に排出されるようになっている。
【0024】
図3に示すように、陶器製タンク12の底面12aには、タンク内側とタンク外側を貫通する開口穴20が形成されている。また、樹脂製タンク14の下部には、洗浄水を排水するための排水筒22が設けられており、この排水筒22の外周には雄ねじ24が形成されている。この排水筒22が陶器製タンク12の開口穴20内に挿入され、陶器製タンク12の底面12aから排水筒22の雄ねじ24が突出するようになっている。
この排水筒22の雄ねじ24の径は陶器製タンク12の開口穴20の径よりも小さく、排水筒22の雄ねじ24と開口穴20との間には隙間Sが存在する。
樹脂製タンク14の排水筒22の雄ねじ24は、後述するつば付ナット26の雌ねじと螺合するようになっている。
【0025】
洗浄タンク4は、さらに、樹脂製タンク14を陶器製タンク12に固定するためのつば付ナット26を備えている。このつば付ナット26は、樹脂製であり、ナット本体28と、このナット本体28の上端に接続されたつば部30を備えている。ナット本体28の内側には、樹脂製タンク14の排水筒22の雄ねじ24と螺合する雌ねじ32(
図4参照)が形成されている。
【0026】
洗浄タンク4は、さらに、第1パッキン34及び第2パッキン36を備えている。第1パッキン34は、陶器製タンク12の内側底面と樹脂製タンク14の外側底面との間に配置された環形状のパッキンであり、つば付ナット26を締付けることにより、圧縮され、排水筒22と開口穴20との隙間Sからの漏水を防止している。
【0027】
第2パッキン36は、環形状のパッキンであり、つば付ナット26のナット本体28の外周面及びつば部30と当接して、つば付ナット26と陶器タンク12の開口穴20の間からの漏水を防止している。
【0028】
次に、
図4及び
図5により、つば付ナット28の構造を説明する。
図4は本発明の第1実施形態による洗浄タンクのつば付ナットを示す縦断面図であり、
図5は本発明の第1実施形態による洗浄タンクのつば付ナットを示す平面図である。
図4及び
図5に示すように、つば付ナット26は、上述したように、ナット本体26及びつば部30を備え、ナット本体26の内周には雌ねじ32が形成されている。
【0029】
つば付ナット26は、さらに、ナット本体26とつば部との接続部38を備え、この接続部38には、ナット本体26の軸線方向に凹んだ環状の溝40が形成されている。
この接続部38に形成された溝40により、つば付ナット26を締付け、排水筒22の雄ねじ24とつば付ナット26の雌ねじ32が螺合するとき、環状の溝40を基点としてつば部30が弾性変形し、つば部30に加わる偏荷重を吸収して、つば付ナット26の手締めトルクによる「ねじ飛び」を防止するようになっている。このように、つば付ナット26の環状の溝40が形成された接続部38は、つば部30に加わる偏荷重を吸収する偏荷重吸収機構として機能している。
【0030】
次に、
図6及び
図7により、つば付ナットの第1変形例について説明する。
図6は本発明の第1実施形態による洗浄タンクのつば付ナットの第1変形例を示す断面図であり、
図7は
図6のVII-VII線に沿って見た断面図である。
図6及び
図7に示すように、第1変形例によるつば付ナット46は、上述したつば付ナット26と同じ樹脂製であり、基本構造は同じである。このつば付ナット46においては、ナット本体26のつば部30との接続部38の近傍に、ナット本体26の内側から外側に向けて横方向に延びる4個(複数)の横方向スリット48が形成されている。各横方向スリット48の間にはナット本体26の上下部分を接続する接続片50が設けられている。
【0031】
この第1変形例によるつば付ナット46においては、ナット本体28に、複数の横方向スリット48が形成されているので、つば付ナット46を締付け、排水筒22の雄ねじ24とつば付ナット46の雌ねじ32が螺合するとき、複数の横方向スリット48を基点としてつば部30が弾性変形し、つば部30に加わる偏荷重を吸収して、つば付ナット46の手締めトルクによる「ねじ飛び」を防止するようになっている。このように、ナット本体26に形成された複数の横方向スリット48は、つば部30に加わる偏荷重を吸収する偏荷重吸収機構として機能している。
【0032】
次に、
図8及び
図9により、つば付ナットの第2変形例について説明する。
図8は本発明の第1実施形態による洗浄タンクのつば付ナットの第2変形例を示す平面図であり、
図9は
図8のIX―IX線に沿って見た断面図である。
図8及び
図9に示すように、第2変形例によるつば付ナット56は、上述したつば付ナット26と同じ樹脂製であり、基本構造は同じである。このつば付ナット56においては、ナット本体26とつば部30との間に環状で且つナット本体26の軸線方向の延びる4個(複数)の縦方向スリット58が形成されている。各縦方向スリット58の間にはナット本体26のつば部30を接続する接続片50が設けられている。
【0033】
この第2変形例によるつば付ナット56においては、ナット本体28に、複数の縦方向スリット58が形成されているので、つば付ナット56を締付け、排水筒22の雄ねじ24とつば付ナット56の雌ねじ32が螺合するとき、複数の縦方向スリット58を基点としてつば部30が弾性変形し、つば部30に加わる偏荷重を吸収して、つば付ナット56の手締めトルクによる「ねじ飛び」を防止するようになっている。このように、ナット本体56に形成された複数の縦方向スリット58は、つば部30に加わる偏荷重を吸収する偏荷重吸収機構として機能している。
【0034】
次に、
図10により、つば付ナットの第3変形例について説明する。
図10は本発明の第1実施形態による洗浄タンクのつば付ナットの第3変形例を示す断面図である。
図10に示すように、第3変形例によるつば付ナット66は、上述したつば付ナット26と同じ樹脂製であり基本構造は同じである。このつば付ナット66においては、ナット本体28の外周にねじ形状部68が形成されている。
【0035】
この第3変形例によるつば付ナット66においては、ナット本体28の外周にねじ形状部68が形成されているので、つば付ナット66を締付け、排水筒22の雄ねじ24とつば付ナット66の雌ねじ32が螺合するとき、このねじ形状部68が弾性変形してつば部30に加わる偏荷重を吸収して、つば付ナット66の手締めトルクによる「ねじ飛び」を防止するようになっている。このように、ナット本体66の外周に形成されたねじ形状部68は、つば部30に加わる偏荷重を吸収する偏荷重吸収機構として機能している。
【0036】
次に、
図11及び
図12により、本発明の第2実施形態による洗浄タンクについて説明する。
図11は本発明の第2実施形態による洗浄タンクを示す要部拡大断面図であり、
図12は本発明の第2実施形態による洗浄タンクに使用される薄片を示す平面図、b-b線に沿って見た断面図、斜視図である。この第2実施形態による洗浄タンク74は、上述した第1実施形態による洗浄タンク4と基本構造は同じなので、同一部分には同一符号を付して説明は省略し、以下、異なる部分について説明する。
【0037】
図11及び
図12に示すように、第2実施形態による洗浄タンク74においては、陶器製タンク12の開口穴20と樹脂製タンク14の排水筒22との間の隙間Sに薄片76が挿入されるようになっている。この薄片74は、樹脂製であり、断面が三角形状の環状部材である。この薄片74には、環状の一部にスリット78が設けられ、上述した隙間Sの径の大きさに合わせて薄片74の外径が変更できるようになっている。
なお、第2実施形態において使用するつば付ナット75は、上述した第1実施形態で使用したつば付きナット26、46、56、66と同じ構造のものであってもよい。
【0038】
この第2実施形態による洗浄タンク74においては、陶器製タンク12の開口穴20と樹脂製タンク14の排水筒22との間の隙間Sに薄片76を挿入することにより、樹脂製タンク14が陶器製タンク12に対して傾く原因となる隙間Sを埋める又は小さくするので、つば付ナット26を締付けたとき、つば付ナット26のつば部30に加わる偏荷重を抑制することができるので、つば付ナット26の手締めトルクによる「ねじ飛び」を防止することができる。
【0039】
次に、
図13により、本発明の第2実施形態の洗浄タンクの第1変形例について説明する。
図13は本発明の第2実施形態による洗浄タンクのつば付ナットの第1変形例を示す断面図である。
図13示すように、第1変形例のつば付ナット80は、ナット本体28とつば部30を備えている。つば付ナット80は、ナット本体28の上端に一体的に設けられた薄片82を備えている。この薄片82は、断面が三角形状の環状部材であるが、スリットは形成されていない。
【0040】
この第1変形例によるつば付ナット80においては、薄片82がつば付ナット80と一体的に設けられているので、樹脂製タンク14が陶器製タンク12に対して傾く原因となる隙間Sを埋める又は小さくするので、つば付ナット80を締付けたとき、つば付ナット80のつば部30に加わる偏荷重を確実に抑制することができるので、つば付ナット80の手締めトルクによる「ねじ飛び」を防止することができる。
【0041】
次に、
図14により、本発明の第2実施形態の洗浄タンクの第2変形例について説明する。
図14は本発明の第2実施形態による洗浄タンクのつば付ナットの第2変形例を示す断面図である。
図14に示すように、第2変形例のつば付ナット84は、ナット本体28とつば部30を備えている。つば付ナット84は、ナット本体28の上端に一体的に設けられた薄片86を備えている。この薄片82は、断面が三角形状の環状部材であり、その内周に、ナット本体28の雌ねじ32と同じ方向且つ同じピッチの雌ねじ(螺旋形状部)88が形成されている。この薄片82の雌ねじ88は、つば付ナット84の締付け時に、その一部が陶器製タンク12の開口穴20と樹脂製タンク14の排水筒22との間の隙間S内で潰れるようになっている
【0042】
この第2変形例によるつば付ナット84においては、薄片部の内周に、つば付ナットのナット本体の雌ねじと同じ方向且つ同じピッチの螺旋形状部が形成され、この螺旋形状部が、つば付ナットの締付け時に、その一部が陶器製タンクの開口穴と樹脂製タンクの排水筒との間の隙間内で潰れるようになっているので、つば付ナットを締付けたとき、つば付ナットのつば部に加わる偏荷重を確実に抑制することができるので、つば付ナットの手締めトルクによる「ねじ飛び」を防止することができる。
【0043】
次に、
図15乃至
図21により、上述した第1及び第2実施形態による洗浄タンクの陶器製タンクの製造方法を説明する。
先ず、
図15により、陶器製タンクの製造工程を説明する。
図15は本発明の第1及び第2実施形態による洗浄タンクの陶器製タンクの製造工程を示すフローチャートである。
図15において、Sは各ステップを示す。
【0044】
図15に示すように、上述した第1及び第2実施形態の洗浄タンク4に使用される陶器製タンク12は、最初に、S1において、生素地成形体の穴あけ位置に型印を設ける工程を実行し、次に、S2において、生素地成形体の穴あけ工程を実行し、次に、S3において、生素地成形体の表面仕上げ工程を実行し、最後に、S4において、生素地成形体の乾燥工程を実行して、製造される。
【0045】
次に、
図16乃至
図21により、上述した型印工程において付される「型印」の第1例乃至第6例について説明する。
先ず、
図16により、型印の第1例について説明する。
図16(a)に示すように、陶器製タンク12の底面12aの開口穴20が形成される所定の位置に、開口穴20と同形で開口穴20よりも直径が小さな型印91が付される。この型印91は、底面12aに対して凸形状又は凹形状で形成する。
図16(b)に示すように、開口穴20が所定の位置にあけられた場合には、型印91の全てが見えなくなる(即ち、型印がなくなってします)。
このようにして、第1例では、開口穴20が、正しい位置に穴あけがされていることを目視または機械で確認することができる。
【0046】
なお、
図16(a)(b)に示すように、底面12aには、上述した給水装置16に洗浄水を供給する給水ホース(図示せず)を挿入するための給水ホース用穴89が予めあけられている。
図16(b)に示すように、底面12aには、洗浄タンク4を便器本体2に固定する2本の取付ボルト(図示せず)を取り付けるための取付ボルト用穴90も形成されている。
【0047】
次に、
図17により、型印の第2例について説明する。
図17(a)に示すように、陶器製タンク12の底面12aの開口穴20が形成される所定の位置に、同じ長さの4本の直線が同じ中心角を持つように開口穴24の中心で交差している型印92が付される。型印92の直線の長さは、開口穴12aの直径よりも短い。この型印92も第1例と同様に凸形状又は凹形状で形成する。
図17(b)に示すように、開口穴20が所定の位置にあけられた場合には、型印92の全てが見えなくなる(即ち、型印がなくなってします)。
このようにして、第2例でも、開口穴20が、正しい位置に穴あけがされていることを目視または機械で確認することができる。
【0048】
次に、
図18により、型印の第3例について説明する。
図18(a)に示すように、陶器製タンク12の底面12aの開口穴20が形成される所定の位置に、開口穴20の周囲(外側)を取り囲む4個の点からなる型印93が付される。これらの4個の点は、開口穴20の中心を中心としてそれぞれが対向している。対向する点を結んだ線は、開口穴20の中心で交差し、軸線同士の中心角は90度である。
図18(b)に示すように、開口穴20が所定の位置にあけられた場合には、型印93である4個の点は残り、開口穴20が所定の位置にあけられていない場合には、4個の点が全て残ることなく、見えなくなる点が存在する。
このようにして、第3例でも、開口穴20が、正しい位置に穴あけがされていることを目視または機械で確認することができる。
【0049】
次に、
図19により、型印の第4例について説明する。
図19(a)に示すように、陶器製タンク12の底面12aの開口穴20が形成される所定位置に、開口穴20の周囲(外側)を取り囲む4個のL字形状の線からなる型印94が付される。これらの4個のL字形状の線を延長すると正方形となり、この正方形内に開口穴20の所定の位置が位置するようになっている。
図19(b)に示すように、開口穴20が所定の位置にあけられた場合には、型印94である4個の直線は残り、開口穴20が所定の位置にあけられていない場合には、4個の線が全て残ることなく、見えなくなる線が存在する。
このようにして、第4例でも、開口穴20が、正しい位置に穴あけがされていることを目視または機械で確認することができる。
【0050】
次に、
図20により、型印の第5例について説明する。
図20(a)に示すように、陶器製タンク12の底面12aの開口穴20が形成される所定位置に、この開口穴20の周囲(外側)を取り囲む円形の表面粗さが他の部分よりも粗い型印95が付される。
図20(b)に示すように、開口穴20が所定の位置にあけられた場合には、型印95である円形の表面粗さの粗い部分は残り、開口穴20が所定の位置にあけられていない場合には、円形の表面粗さの粗い部分の一部が見えなくなる。
このようにして、第5例でも、開口穴20が、正しい位置に穴あけがされていることを目視または機械で確認することができる。
【0051】
次に、
図21により、型印の第6例について説明する。
図21(a)に示すように、陶器製タンク12の底面12aに取付ボルト用穴90が形成される所定位置に、これらの取付ボルト用穴90の周囲(外側)を取り囲む矩形の型印96が付される。
図21(b)に示すように、取付ボルト用穴90が所定の位置にあけられた場合には、型印96である矩形は残り、取付ボルト用穴90が所定の位置にあけられていない場合には、型印96である矩形の一部が見えなくなる。
このようにして、第6例でも、取付ボルト用穴90が、正しい位置に穴あけがされていることを目視または機械で確認することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 水洗大便器
2 便器本体
4、74 洗浄タンク
12 陶器製タンク
12a 底面
14 樹脂製タンク
20 開口穴
22 排水筒
24 雄ねじ
26、46、56、66、75、80、84 つば付ナット
28 ナット本体
30 つば部
32 雌ねじ
34 第1パッキン
36 第2パッキン
38 接続部
40 溝
48 横方向スリット
50 接続片
58 縦方向スリット
60 接続片
68 ねじ形状部
76 薄片
78 スリット
82 薄片
86 薄片
88 雌ねじ
90 取付ボルト用穴
91~96 型印