IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-無段変速機 図1
  • 特開-無段変速機 図2
  • 特開-無段変速機 図3
  • 特開-無段変速機 図4
  • 特開-無段変速機 図5
  • 特開-無段変速機 図6
  • 特開-無段変速機 図7
  • 特開-無段変速機 図8
  • 特開-無段変速機 図9
  • 特開-無段変速機 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122421
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】無段変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/031 20120101AFI20240902BHJP
   F16H 63/34 20060101ALI20240902BHJP
   F16H 9/12 20060101ALI20240902BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20240902BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
F16H57/031
F16H63/34
F16H9/12 B
B60T1/06 G
F16D63/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029948
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 周平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 淳
(72)【発明者】
【氏名】波多野 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】早川 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】海保 杜久麻
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 真男
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】金田 純平
【テーマコード(参考)】
3J050
3J058
3J063
3J067
【Fターム(参考)】
3J050AA03
3J050BA03
3J050BB13
3J050CE06
3J050DA01
3J058AB21
3J058BA25
3J058CD34
3J058FA01
3J058FA07
3J063AA02
3J063AB23
3J063BB48
3J063CA07
3J063CB25
3J063CD41
3J063XA22
3J067AC23
3J067BA54
3J067BA58
3J067EA81
3J067FA05
3J067FA57
3J067FB85
3J067GA01
(57)【要約】
【課題】異物のパーキングギヤへの侵入及び/又は接近による不具合を防止可能であって、コスト及び生産性に優れた無段変速機を提供する。
【解決手段】無段変速機10は、ドライブプーリ16及びドリブンプーリ17と、ドライブプーリ16及びドリブンプーリ17に巻き掛けられた複数のエレメント31及び複数の金属リング33を有する金属ベルト18と、ドリブンプーリ17の固定側プーリ半体19に設けられたパーキングギヤ21と、パーキングポール23と、をミッションケース11内に備え、ドライブプーリ16及びドリブンプーリ17の溝幅を変化させることで変速比を変化させ、駆動源からの駆動力を車輪に伝達させる。ミッションケース11は、パーキングポール23の揺動軌跡と交差する位置と所定の位置とを除きパーキングギヤ21の外周を取り囲むように、第2ケース13と一体成型された環状リブ51を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側プーリ半体及び該固定側プーリ半体に対して軸方向に相対移動可能な可動側プーリ半体をそれぞれ有するドライブプーリ及びドリブンプーリと、
前記ドライブプーリ及び前記ドリブンプーリに巻き掛けられた複数のエレメント及び複数のリングを有するベルトと、
前記ドリブンプーリの前記固定側プーリ半体に設けられたパーキングギヤと、
揺動することにより前記パーキングギヤと嵌合可能なパーキングポールと、をケース内に備え、
前記ドライブプーリ及び前記ドリブンプーリの溝幅を変化させることで変速比を変化させ、駆動源からの駆動力を車輪に伝達させる無段変速機であって、
前記ケースは、前記パーキングポールの揺動軌跡と交差する位置と所定の位置とを除き前記パーキングギヤの外周を取り囲むように、前記ケースと一体成型された環状リブを有する、無段変速機。
【請求項2】
請求項1に記載の無段変速機であって、
前記環状リブは、
前記パーキングポールの揺動軌跡と交差する位置に設けられた第1開口部と、
前記ベルトの移動軌跡を投影した領域と重ならない位置であって前記第1開口部より下方に設けられた第2開口部と、を有する、無段変速機。
【請求項3】
請求項1に記載の無段変速機であって、
前記環状リブの内径は、前記パーキングギヤの外径より大きく、且つ、前記ドリブンプーリの外径以下である、無段変速機。
【請求項4】
請求項1に記載の無段変速機であって、
前記環状リブと前記ドリブンプーリの前記固定側プーリ半体との隙間は、前記ベルトを構成する前記リングの幅より小さい、無段変速機。
【請求項5】
請求項1に記載の無段変速機であって、
前記環状リブは、前記パーキングギヤの外周を少なくとも180度以上覆っている、無段変速機。
【請求項6】
請求項1に記載の無段変速機であって、
前記ケースは、前記環状リブから延設される遮蔽リブを有し、
前記遮蔽リブは、前記パーキングポールの揺動支点側に向かって延び、先端部が前記パーキングポールの非嵌合状態において前記パーキングギヤとの隙間が所定の幅以下になるように形成される、無段変速機。
【請求項7】
請求項6に記載の無段変速機であって、
前記遮蔽リブは、前記ドライブプーリ側に反り返った形状を有する、無段変速機。
【請求項8】
請求項7に記載の無段変速機であって、
前記ケースは、前記遮蔽リブの前記ドライブプーリ側に設けられ、前記遮蔽リブから隔離された隔離リブを有し、
前記パーキングポールは、その下部に突起を有し、
前記突起は、前記隔離リブと前記遮蔽リブの間に設置され、
前記パーキングポールの前記非嵌合状態において、前記突起と前記隔離リブの隙間が所定の幅以下になる、無段変速機。
【請求項9】
請求項1に記載の無段変速機であって、
前記ケースは、前記環状リブの下部から延設され、前記ケースの下端に接続される接続リブを有する、無段変速機。
【請求項10】
請求項9に記載の無段変速機であって、
前記接続リブは、前記環状リブから前記ケースの下端まで切れ目なく連続して形成されている、無段変速機。
【請求項11】
請求項1に記載の無段変速機であって、
前記パーキングポールを揺動させるパーキングロッドと、
前記パーキングロッドを案内するガイド部材と、を前記ケース内にさらに備え、
前記ケースは、
前記ガイド部材を支持するガイド支持部と、
前記ガイド支持部から延設され、前記ドライブプーリとの隙間が所定の幅以下になるように形成される補助リブと、を有する、無段変速機。
【請求項12】
請求項11に記載の無段変速機であって、
前記ガイド部材は、前記ドライブプーリに向かって延設されたガイド延設部を有する、無段変速機。
【請求項13】
請求項12に記載の無段変速機であって、
前記ガイド延設部は、前記補助リブの側面の少なくとも一部を覆うように設けられる、無段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載可能な無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライブプーリとドリブンプーリとの間の溝幅を変化させることで変速比を変化させ、駆動源からの駆動力を車輪に伝達させる無段変速機が知られている。この無段変速機では、ドリブンプーリの固定側プーリ半体にパーキングギヤが設けられており、パーキングポールが揺動してパーキングギヤと嵌合することで、車両の停止状態が維持される。
【0003】
特許文献1に記載の無段変速機では、パーキングギヤの外周面がケースに取り付けられたカバー部材で覆われている。これにより、異物をカバー部材で遮ることができ、異物がパーキングギヤに侵入したり接近したりすることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-206258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構造では、ケースに対しカバー部材を取り付ける必要があり、コスト及び生産性の点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、異物のパーキングギヤへの侵入及び/又は接近による不具合を防止可能であって、コスト及び生産性に優れた無段変速機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
固定側プーリ半体及び該固定側プーリ半体に対して軸方向に相対移動可能な可動側プーリ半体をそれぞれ有するドライブプーリ及びドリブンプーリと、
前記ドライブプーリ及び前記ドリブンプーリに巻き掛けられた複数のエレメント及び複数のリングを有するベルトと、
前記ドリブンプーリの固定側プーリ半体に設けられたパーキングギヤと、
揺動することにより前記パーキングギヤと嵌合可能なパーキングポールと、をケース内に備え、
前記ドライブプーリ及び前記ドリブンプーリの溝幅を変化させることで変速比を変化させ、駆動源からの駆動力を車輪に伝達させる無段変速機であって、
前記ケースは、前記パーキングポールの揺動軌跡と交差する位置と所定の位置とを除き前記パーキングギヤの外周を取り囲むように、前記ケースと一体成型された環状リブを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ケースと別体の部品を用いることなく異物のパーキングギヤへの侵入及び/又は接近を抑制することができ、コストおよび生産性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ミッションケース11の第1ケース12を内側から見た図である。
図2】ミッションケース11の第2ケース13を内側から見た図である。
図3図2のA-A線の断面図である。
図4図2のB-B線の断面図である。
図5図1及び図2のC-C線の断面図である。
図6図2のD-D線の断面図である。
図7】パーキングポール23の支軸22周辺の拡大図である。
図8】ガイド支持部12c周辺の拡大斜視図である。
図9図8のE-E線の断面図である。
図10】金属ベルト18の一部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の無段変速機の一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1および図2に示すように、無段変速機10は、ドライブプーリ16、ドリブンプーリ17、ドライブプーリ16とドリブンプーリ17とに巻き掛けられる金属ベルト18と、パーキングロック装置と、これらを収容するミッションケース11と、を備える。
【0012】
ミッションケース11は、不図示のエンジンに一端面を結合される第1ケース12と、第1ケース12の他端面を塞ぐように結合される第2ケース13とを備える。第1ケース12および第2ケース13には入力軸14および出力軸15が相互に平行に支持されており、下側に位置する入力軸14に設けられたドライブプーリ16と、上側に位置する出力軸15に設けられたドリブンプーリ17とに金属ベルト18が巻き掛けられる。
【0013】
金属ベルト18は、図10に示すように、金属プレート製の複数のエレメント31を無端状の金属製の左右一対の積層リング32によって環状に連結して構成されている。各積層リング32は、薄い鋼製の金属リング33を複数枚積層して構成されている。
【0014】
ドリブンプーリ17は、図3に示すように、第2ケース13の内壁部13aに対向するように出力軸15に固設された固定側プーリ半体19と、出力軸15上に相対回転不能かつ軸方向に摺動可能に支持されて油圧により固定側プーリ半体19に対して接近・離間可能な可動側プーリ半体20とを備える。ドライブプーリ16も同様に、図9に示すように、固定側プーリ半体40および可動側プーリ半体39を備えており、ドライブプーリ16の溝幅およびドリブンプーリ17の溝幅を変化させることで、両プーリ16、17の有効半径が変化して変速比が無段階に変更される。
【0015】
次に、図3~5も参照しながら、停車時に出力軸15の回転を拘束するパーキングロック装置の構造を説明する。
【0016】
図2及び図3に示すように、ドリブンプーリ17の固定側プーリ半体19の背面に、第2ケース13の内壁部13aに向けて突出する環状のパーキングギヤ21が一体に形成されており、パーキングギヤ21の外周面に複数の歯溝21aが形成される。図4も参照して、ミッションケース11には、ドリブンプーリ17の外周面よりも径方向外側にパーキングギヤ21に対向するようにへ字状に屈曲するパーキングポール23が設けられている。パーキングポール23は、中間部が第1ケース12の内壁部12a及び第2ケース13の内壁部13aに固定した支軸22に揺動可能に支持される。パーキングポール23の先端部には、パーキングギヤ21の歯溝21aの一つに係合可能な係止爪23aが形成される。パーキングポール23は、支軸22の外周に巻き付けた捩じりバネ24の弾発力で、係止爪23aがパーキングギヤ21の歯溝21aから離反するように、図2において時計方向に付勢される。パーキングポール23の基端側には、パーキングロッド25のコーン状のカム部材26に当接するカム面23bが形成されている。
【0017】
図5に示すように、パーキングロッド25は、第1ケース12の内壁部12aに形成した貫通孔12bを第2ケース13側に貫通し、先端にカム部材26が設けられる。パーキングロッド25は不図示のシフトレバー(あるいはアクチュエータ)に接続されて軸方向に移動可能であり、パーキングロッド25のカム部材26は、内壁部12aの貫通孔12bと、内壁部12aに2本のボルト27、27で固定したガイド部材28の円弧状のガイド面28aとによって案内される。
【0018】
運転者がシフトレバーでパーキングレンジ以外のレンジを選択しているとき、パーキングポール23は捩じりバネ24の弾発力で非作動位置にあり、パーキングポール23の係止爪23aはパーキングギヤ21の歯溝21aから離反し、出力軸15の拘束が解除されてパーキングロック装置は非作動の状態となる。運転者がシフトレバーでパーキングレンジを選択すると、カム部材26が貫通孔12bから突出し、そのカム面26aがパーキングポール23の基端側に形成したカム面23bを押圧する(図5参照)。その結果、パーキングポール23が支軸22まわりに図2の反時計方向に揺動して係止爪23aがパーキングギヤ21の歯溝21aの一つに係合し、図2に示すように出力軸15の回転が拘束されてパーキングロック装置が作動する。
【0019】
ところで、ミッションケース11の内部に異物が侵入したり、ミッションケース11の内部に配置された部品、例えば破断した金属リング33の破片が脱落して異物となったりしたような場合に、それらの異物がパーキングギヤ21に侵入及び/又は接近したりすると、パーキングポール23の係止爪23aやパーキングギヤ21が損傷したり、不具合が発生したりする虞がある。そこで、ミッションケース11には、パーキングギヤ21への異物の侵入を防止する異物侵入防止構造が設けられている。
【0020】
以下、パーキングギヤ21への異物の侵入を防止する異物侵入防止構造について説明する。なお、以下では、異物として破断した金属ベルト18を想定して説明する。
【0021】
異物侵入防止構造は、ドリブンプーリ17の近傍に設けられた環状リブ51を中心とする異物侵入防止構造と、ドライブプーリ16の近傍に設けられた補助リブ54による異物侵入防止構造と、が組み合わされて構成されるが、いずれか一方のみでもよい。
【0022】
ドリブンプーリ17の近傍の異物侵入防止構造は、第2ケース13と一体成型され、内壁部13aから軸方向に立ち上がる壁面によって構成される。この異物侵入防止構造は、図2に示すように、円環状の環状リブ51と、出力軸15の軸心を中心として環状リブ51から径方向外側に放射状に延びる複数の放射状リブ52と、環状リブ51の下部から延設され第2ケース13の下端に接続される接続リブ53と、パーキングポール23の近傍に配置された隔離リブ55と、を備える。なお、図2では、理解を容易にするため、この環状リブ51、放射状リブ52、接続リブ53、及び隔離リブ55にハッチングを付している。
【0023】
環状リブ51は、パーキングポール23の揺動軌跡と交差する位置と所定の位置とを除きパーキングギヤ21の外周を取り囲むように第2ケース13と一体成型される。環状リブ51は、パーキングギヤ21の外周を少なくとも180度以上覆っていることが好ましい。この場合、環状リブ51は、パーキングギヤ21の外周を連続して180度以上覆っている必要はなく、離散的に配置されて全体として180度以上覆っていればよい。本実施形態の環状リブ51は、パーキングポール23の揺動軌跡と交差する位置に設けられた第1開口部51aと、金属ベルト18の移動軌跡を投影した領域と重ならない位置であって第1開口部51aより下方に設けられた第2開口部51bと、を有する。
【0024】
このようにパーキングギヤ21の外周を環状リブ51で取り囲むことで、無段変速機10の金属ベルト18が破断しても、パーキングギヤ21に金属ベルト18の破片などの異物が侵入及び/又は接近したりすることを防ぐことができる。また、環状リブ51は、第2ケース13と一体成型させることができるので、別体の部品を用いることなく、コストおよび生産性が改善される。また、第1開口部51aによりパーキングポール23の揺動が阻害されることを回避でき、仮に環状リブ51の内側に異物が入り込んだとしても第2開口部51bにより異物を排出することができる。さらに第2開口部51bは、金属ベルト18の移動軌跡を投影した領域と重ならない位置に設けられるので、金属ベルト18が破断しても第2開口部51bから環状リブ51の内側に異物が入り込むことを抑制できる。
【0025】
図6に示すように、環状リブ51の内径D1は、パーキングギヤ21の外径D2より大きく、且つ、ドリブンプーリ17の外径D3以下である。また、環状リブ51とドリブンプーリ17の固定側プーリ半体19との隙間T1は、金属ベルト18を構成する金属リング33の幅T2より小さい。これにより、破断した金属リング33が、環状リブ51とドリブンプーリ17の固定側プーリ半体19との隙間に入り込むことを抑制できる。
【0026】
放射状リブ52は、本実施形態では6本設けられており、4本が等間隔にパーキングギヤ21の左側に配置され、1本がパーキングギヤ21の右下部に設けられ、残りの1本が右上部に設けられている。以下では、6本の放射状リブ52のうち、この右上部に設けられた放射状リブ52を、遮蔽リブ56と称する。なお、遮蔽リブ56は、必ずしも放射状リブ52である必要はなく、環状リブ51から連続している必要もない。
【0027】
図2に戻って、遮蔽リブ56は、環状リブ51の第1開口部51aの一端側端部からパーキングポール23の揺動支点である支軸22側に向かって延びている。遮蔽リブ56は、先端部がパーキングポール23の非嵌合状態においてパーキングギヤ21との隙間が所定の幅以下、好ましくは金属リング33の幅T2以下になるように形成される。これにより、ドライブプーリ16側で破断した金属リング33の破片がパーキングギヤ21の方に飛散することを防止できる。
【0028】
また、本実施形態では、遮蔽リブ56の先端部は、ドライブプーリ16側に反り返った形状を有している。これにより、破断した金属リング33の破片が遮蔽リブ56に当たってパーキングギヤ21側に侵入することを防止できる。
【0029】
図7も参照して、遮蔽リブ56のドライブプーリ16側には、さらに遮蔽リブ56から隔離された隔離リブ55が設けられる。隔離リブ55は、パーキングポール23の下方において遮蔽リブ56と対向するように配置される。
【0030】
ここで、パーキングポール23は、その下部に突起23cが設けられる。これにより、遮蔽リブ56及び隔離リブ55に対し、パーキングポール23を近づけることが可能となる。即ち、遮蔽リブ56の先端部が、パーキングポール23の非嵌合状態においてパーキングギヤ21との隙間が所定の幅以下となるように配置しながら、隔離リブ55の先端部もパーキングポール23の非嵌合状態においてパーキングギヤ21との隙間が所定の幅以下、好ましくは金属リング33の幅T2以下になるように配置することができる。これにより、パーキングポール23、隔離リブ55、及び遮蔽リブ56によってラビリンス隙間を形成でき、ドライブプーリ16側で破断した金属リング33の破片がパーキングギヤ21の方に飛散することをより確実に防止できる。
【0031】
接続リブ53は、環状リブ51の下部から延設され第2ケース13の下端に接続される。より具体的には、接続リブ53は、環状リブ51から第1ケース12の下端まで切れ目なく連続して形成されている。これにより、ドライブプーリ16側で破断した金属リング33の破片がドリブンプーリ17の下側からパーキングギヤ21の方に飛散してくることを防ぐことができる。
【0032】
このようなドリブンプーリ17の近傍の異物侵入防止構造では、パーキングギヤ21の外周面が環状リブ51で覆われているため、異物がパーキングギヤ21やパーキングポール23に侵入及び/又は接近することを防止できる。特に可撓性を有する細長い異物である破断した金属リング33が、パーキングギヤ21の外周に侵入及び/又は接近することが阻止される。これにより、パーキングロック装置が損傷したり、不具合が生じたりする事態を一層確実に回避することができる。
【0033】
また、仮に環状リブ51の第1開口部51aから内部に異物が侵入しても、環状リブ51の下部には第2開口部51bが形成されているため、その異物を第2開口部51bから外部に排出することで、異物が環状リブ51内に滞留することを防ぐことができる。
【0034】
一方、ドライブプーリ16の近傍の異物侵入防止構造は、第1ケース12と一体成型され、内壁部12aから軸方向に立ち上がる壁面によって構成される。この異物侵入防止構造は、図8及び図9に示すように、ガイド部材28を保持するガイド支持部12cからドライブプーリ16に向かって延設された補助リブ54を備える。
【0035】
補助リブ54は、図8に示すように、ガイド部材28を保持するガイド支持部12cと一体成型され、ガイド支持部12cからドライブプーリ16に向かって下方に延設される。補助リブ54は、その先端部とドライブプーリ16との隙間が所定の幅以下、好ましくは金属リング33の幅T2以下になるように形成される。これにより、ドライブプーリ16側で破断した金属リング33の破片がドライブプーリ16側からパーキングギヤ21の方に飛散してくることを防ぐことができる。
【0036】
ガイド支持部12cにボルト締結されるガイド部材28は、ガイド支持部12cの下面よりもドライブプーリ16側に張り出すガイド延設部28bを有する。これにより、ドライブプーリ16側で破断した金属リング33の破片がドライブプーリ16側からパーキングギヤ21の方に飛散してくることをより一層防ぐことができる。
【0037】
ところで、ガイド支持部12cの下面は、補助リブ54側に向かって上方に傾斜しており、ガイド支持部12cの下面と補助リブ54との間には空間57が形成されている。ガイド部材28のガイド延設部28bは、補助リブ54の側面の少なくとも一部を覆うように形成される。
【0038】
このようなドライブプーリ16の近傍の異物侵入防止構造では、空間57がガイド延設部28bによって側方から覆われることで、空間57で捕捉した金属リング33の破片が側方から補助リブ54を迂回してパーキングギヤ21の方に飛散してくることを防ぐことができる。
【0039】
なお、補助リブ54は、必ずしもガイド支持部12cから連続して形成される場合に限らず、ガイド支持部12cとは離間して形成されてもよい。この場合、ガイド支持部12cと補助リブ54との間隔は、金属リング33の幅T2以下であることが好ましい。
【0040】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0041】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0042】
(1) 固定側プーリ半体(固定側プーリ半体19、40)及び該固定側プーリ半体に対して軸方向に相対移動可能な可動側プーリ半体(可動側プーリ半体20、39)をそれぞれ有するドライブプーリ(ドライブプーリ16)及びドリブンプーリ(ドリブンプーリ17)と、
前記ドライブプーリ及び前記ドリブンプーリに巻き掛けられた複数のエレメント(エレメント31)及び複数のリング(金属リング33)を有するベルト(金属ベルト18)と、
前記ドリブンプーリの前記固定側プーリ半体に設けられたパーキングギヤ(パーキングギヤ21)と、
揺動することにより前記パーキングギヤと嵌合可能なパーキングポール(パーキングポール23)と、をケース(ミッションケース11)内に備え、
前記ドライブプーリ及び前記ドリブンプーリの溝幅を変化させることで変速比を変化させ、駆動源からの駆動力を車輪に伝達させる無段変速機(無段変速機10)であって、
前記ケースは、前記パーキングポールの揺動軌跡と交差する位置と所定の位置とを除き前記パーキングギヤの外周を取り囲むように、前記ケースと一体成型された環状リブ(環状リブ51)を有する、無段変速機。
【0043】
(1)によれば、パーキングギヤの外周を環状リブで取り囲むことで、仮に無段変速機のベルトが破断しても、パーキングギヤに異物が侵入及び/又は近接することを防止でき、不具合の発生を防止できる。また、環状リブは、ケースと一体成型させることができるので、別体の部品を用いることなく、コストおよび生産性が改善される。
【0044】
(2) (1)に記載の無段変速機であって、
前記環状リブは、
前記パーキングポールの揺動軌跡と交差する位置に設けられた第1開口部(第1開口部51a)と、
前記ベルトの移動軌跡を投影した領域と重ならない位置であって前記第1開口部より下方に設けられた第2開口部(第2開口部51b)と、を有する、無段変速機。
【0045】
(2)によれば、第1開口部によりパーキングポールの揺動が阻害されることを回避でき、仮に環状リブの内側に異物が入り込んだとしても、第2開口部により異物を排出することができる。さらに第2開口部は、ベルトの移動軌跡を投影した領域と重ならない位置に設けられるのでベルトが破断しても第2開口部から環状リブの内側に異物が入り込むことを抑制できる。
【0046】
(3) (1)に記載の無段変速機であって、
前記環状リブの内径(内径D1)は、前記パーキングギヤの外径(外径D2)より大きく、且つ、前記ドリブンプーリの外径(外径D3)以下である、無段変速機。
【0047】
(3)によれば、パーキングギヤに異物が侵入及び/又は接近することを防止でき、不具合の発生を防止できる。
【0048】
(4) (1)に記載の無段変速機であって、
前記環状リブと前記ドリブンプーリの前記固定側プーリ半体との隙間(隙間T1)は、前記ベルトを構成する前記リングの幅(幅T2)より小さい、無段変速機。
【0049】
(4)によれば、破断したリングが、環状リブとドリブンプーリの固定側プーリ半体との隙間に入り込むことを抑制できる。
【0050】
(5) (1)に記載の無段変速機であって、
前記環状リブは、前記パーキングギヤの外周を少なくとも180度以上覆っている、無段変速機。
【0051】
(5)によれば、パーキングギヤの外周を十分に覆うことでより一層パーキングギヤに異物が侵入及び/又は接近することを防止でき、不具合の発生を防止できる。
【0052】
(6) (1)に記載の無段変速機であって、
前記ケースは、前記環状リブから延設される遮蔽リブ(遮蔽リブ56)を有し、
前記遮蔽リブは、前記パーキングポールの揺動支点側に向かって延び、先端部が前記パーキングポールの非嵌合状態において前記パーキングギヤとの隙間が所定の幅以下になるように形成される、無段変速機。
【0053】
(6)によれば、ドライブプーリ側で破断したリングの破片がパーキングギヤの方に飛散することを防止できる。
【0054】
(7) (6)に記載の無段変速機であって、
前記遮蔽リブは、前記ドライブプーリ側に反り返った形状を有する、無段変速機。
【0055】
(7)によれば、破断したリングの破片が遮蔽リブに当たってパーキングギヤ側に侵入することを防止できる。
【0056】
(8) (7)に記載の無段変速機であって、
前記ケースは、前記遮蔽リブの前記ドライブプーリ側に設けられ、前記遮蔽リブから隔離された隔離リブ(隔離リブ55)を有し、
前記パーキングポールは、その下部に突起(突起23c)を有し、
前記突起は、前記隔離リブと前記遮蔽リブの間に設置され、
前記パーキングポールの前記非嵌合状態において、前記突起と前記隔離リブの隙間が所定の幅以下になる、無段変速機。
【0057】
(8)によれば、ドライブプーリ側で破断したリングの破片がパーキングギヤの方に飛散することをより一層防止できる。
【0058】
(9) (1)に記載の無段変速機であって、
前記ケースは、前記環状リブの下部から延設され、前記ケースの下端に接続される接続リブ(接続リブ53)を有する、無段変速機。
【0059】
(9)によれば、ドライブプーリ側で破断したリングの破片がドリブンプーリの下側からパーキングギヤの方に飛散してくることを防ぐことができる。
【0060】
(10) (9)に記載の無段変速機であって、
前記接続リブは、前記環状リブから前記ケースの下端まで切れ目なく連続して形成されている、無段変速機。
【0061】
(10)によれば、ドライブプーリ側で破断したリングの破片がドリブンプーリの下側からパーキングギヤの方に飛散してくることをより一層防ぐことができる。
【0062】
(11) (1)に記載の無段変速機であって、
前記パーキングポールを揺動させるパーキングロッド(パーキングロッド25)と、
前記パーキングロッドを案内するガイド部材(ガイド部材28)と、を前記ケース内にさらに備え、
前記ケースは、
前記ガイド部材を支持するガイド支持部(ガイド支持部12c)と、
前記ガイド支持部から延設され、前記ドライブプーリとの隙間が所定の幅以下になるように形成される補助リブ(補助リブ54)と、を有する、無段変速機。
【0063】
(11)によれば、ドライブプーリ側で破断したリングの破片がガイド部材側からパーキングギヤの方に飛散してくることを防ぐことができる。
【0064】
(12) (11)に記載の無段変速機であって、
前記ガイド部材は、前記ドライブプーリに向かって延設されたガイド延設部(ガイド延設部28b)を有する、無段変速機。
【0065】
(12)によれば、ドライブプーリ側で破断したリングの破片がガイド部材側からパーキングギヤの方に飛散してくることをより一層防ぐことができる。
【0066】
(13) (12)に記載の無段変速機であって、
前記ガイド延設部は、前記補助リブの側面の少なくとも一部を覆うように設けられる、無段変速機。
【0067】
(13)によれば、補助リブに当たった破片がさらに飛散することを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0068】
10 無段変速機
11 ミッションケース(ケース)
12c ガイド支持部
16 ドライブプーリ
17 ドリブンプーリ
18 金属ベルト(ベルト)
19 固定側プーリ半体
20 可動側プーリ半体
21 パーキングギヤ
23 パーキングポール
23c 突起
25 パーキングロッド
28 ガイド部材
28b ガイド延設部
31 エレメント
33 金属リング(リング)
39 可動側プーリ半体
40 固定側プーリ半体
51 環状リブ
51a 第1開口部
51b 第2開口部
53 接続リブ
54 補助リブ
55 隔離リブ
56 遮蔽リブ
D1 環状リブの内径
D2 パーキングギヤの外径
D3 ドリブンプーリの外径
T1 隙間
T2 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-08-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側プーリ半体及び該固定側プーリ半体に対して軸方向に相対移動可能な可動側プーリ半体をそれぞれ有するドライブプーリ及びドリブンプーリと、
前記ドライブプーリ及び前記ドリブンプーリに巻き掛けられた複数のエレメント及び複数のリングを有するベルトと、
前記ドリブンプーリの前記固定側プーリ半体に設けられたパーキングギヤと、
揺動することにより前記パーキングギヤと嵌合可能なパーキングポールと、をケース内に備え、
前記ドライブプーリ及び前記ドリブンプーリの溝幅を変化させることで変速比を変化させ、駆動源からの駆動力を車輪に伝達させる無段変速機であって、
前記ケースは、前記パーキングポールの揺動軌跡と交差する位置と所定の位置とを除き前記パーキングギヤの外周を取り囲むように、前記ケースと一体成型された環状リブを有し、
前記環状リブは、
前記パーキングポールの揺動軌跡と交差する位置に設けられた第1開口部と、
前記ベルトの移動軌跡を投影した領域と重ならない位置であって前記第1開口部より下方に設けられた第2開口部と、を有する、無段変速機。
【請求項2】
請求項1に記載の無段変速機であって、
前記環状リブの内径は、前記パーキングギヤの外径より大きく、且つ、前記ドリブンプーリの外径以下である、無段変速機。
【請求項3】
請求項1に記載の無段変速機であって、
前記環状リブと前記ドリブンプーリの前記固定側プーリ半体との隙間は、前記ベルトを構成する前記リングの幅より小さい、無段変速機。
【請求項4】
請求項1に記載の無段変速機であって、
前記環状リブは、前記パーキングギヤの外周を少なくとも180度以上覆っている、無段変速機。
【請求項5】
請求項1に記載の無段変速機であって、
前記ケースは、前記環状リブから延設される遮蔽リブを有し、
前記遮蔽リブは、前記パーキングポールの揺動支点側に向かって延び、先端部が前記パーキングポールの非嵌合状態において前記パーキングギヤとの隙間が所定の幅以下になるように形成される、無段変速機。
【請求項6】
請求項に記載の無段変速機であって、
前記遮蔽リブは、前記ドライブプーリ側に反り返った形状を有する、無段変速機。
【請求項7】
請求項に記載の無段変速機であって、
前記ケースは、前記遮蔽リブの前記ドライブプーリ側に設けられ、前記遮蔽リブから隔離された隔離リブを有し、
前記パーキングポールは、その下部に突起を有し、
前記突起は、前記隔離リブと前記遮蔽リブの間に設置され、
前記パーキングポールの前記非嵌合状態において、前記突起と前記隔離リブの隙間が所定の幅以下になる、無段変速機。
【請求項8】
請求項1に記載の無段変速機であって、
前記ケースは、前記環状リブの下部から延設され、前記ケースの下端に接続される接続リブを有する、無段変速機。
【請求項9】
請求項に記載の無段変速機であって、
前記接続リブは、前記環状リブから前記ケースの下端まで切れ目なく連続して形成されている、無段変速機。
【請求項10】
請求項1に記載の無段変速機であって、
前記パーキングポールを揺動させるパーキングロッドと、
前記パーキングロッドを案内するガイド部材と、を前記ケース内にさらに備え、
前記ケースは、
前記ガイド部材を支持するガイド支持部と、
前記ガイド支持部から延設され、前記ドライブプーリとの隙間が所定の幅以下になるように形成される補助リブと、を有する、無段変速機。
【請求項11】
請求項10に記載の無段変速機であって、
前記ガイド部材は、前記ドライブプーリに向かって延設されたガイド延設部を有する、無段変速機。
【請求項12】
請求項11に記載の無段変速機であって、
前記ガイド延設部は、前記補助リブの側面の少なくとも一部を覆うように設けられる、無段変速機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、
固定側プーリ半体及び該固定側プーリ半体に対して軸方向に相対移動可能な可動側プーリ半体をそれぞれ有するドライブプーリ及びドリブンプーリと、
前記ドライブプーリ及び前記ドリブンプーリに巻き掛けられた複数のエレメント及び複数のリングを有するベルトと、
前記ドリブンプーリの固定側プーリ半体に設けられたパーキングギヤと、
揺動することにより前記パーキングギヤと嵌合可能なパーキングポールと、をケース内に備え、
前記ドライブプーリ及び前記ドリブンプーリの溝幅を変化させることで変速比を変化させ、駆動源からの駆動力を車輪に伝達させる無段変速機であって、
前記ケースは、前記パーキングポールの揺動軌跡と交差する位置と所定の位置とを除き前記パーキングギヤの外周を取り囲むように、前記ケースと一体成型された環状リブを有し、
前記環状リブは、
前記パーキングポールの揺動軌跡と交差する位置に設けられた第1開口部と、
前記ベルトの移動軌跡を投影した領域と重ならない位置であって前記第1開口部より下方に設けられた第2開口部と、を有する