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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122429
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】貯湯給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 4/02 20220101AFI20240902BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20240902BHJP
   F24H 15/10 20220101ALI20240902BHJP
   F24H 15/429 20220101ALI20240902BHJP
   F24H 15/395 20220101ALI20240902BHJP
   F24H 15/20 20220101ALI20240902BHJP
【FI】
F24H4/02 F
F24H1/18 G
F24H15/10
F24H15/429
F24H15/395
F24H15/20
F24H1/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029962
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大西 兼造
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 由典
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA23
3L122AA54
3L122AB24
3L122AB33
3L122BA41
3L122EA01
3L122EA03
3L122EA09
3L122EA35
3L122FA02
3L122GA07
(57)【要約】
【課題】故障したガス給湯器で加熱できない状態でも給湯設定温度の給湯を行うことができるように構成した貯湯給湯システムを提供すること。
【解決手段】ヒートポンプユニット(4)で加熱した湯水を貯湯する貯湯タンク(2)及び貯湯タンク(2)の湯水と上水を混合して出湯する混合弁(14)を備えた貯湯ユニット(3)と、貯湯ユニット(3)から出湯された湯水をその湯水温度に応じて加熱して又は非加熱で給湯するガス給湯器(5)と、貯湯ユニット(3)とガス給湯器(5)による給湯運転を制御する制御手段と、給湯運転の給湯設定温度の設定操作を行うための操作端末(19)を有する貯湯給湯システム(1)において、制御手段は、ガス給湯器(5)で加熱不能となる故障が検知された場合に、操作端末(19)を介してガス給湯器(5)から非加熱で給湯する応急運転モードへの移行に関する報知を行い、応急運転モードに移行した場合に給湯設定温度の設定可能な上限温度を応急運転モードへの移行前よりも低温に制限する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプユニットで加熱した湯水を貯湯する貯湯タンク及びこの貯湯タンクの湯水と上水を混合して出湯する混合弁を備えた貯湯ユニットと、前記貯湯ユニットから出湯された湯水をその湯水温度に応じて加熱して又は非加熱で給湯するガス給湯器と、前記貯湯ユニットと前記ガス給湯器による給湯運転を制御する制御手段と、前記給湯運転の給湯設定温度の設定操作を行うための操作端末を有する貯湯給湯システムにおいて、
前記制御手段は、前記ガス給湯器で加熱不能となる故障が検知された場合に、前記操作端末を介して前記ガス給湯器から非加熱で給湯する応急運転モードへの移行に関する報知を行い、前記応急運転モードに移行した場合に、前記給湯設定温度の設定可能な上限温度を前記応急運転モードへの移行前よりも低温に制限することを特徴とする貯湯給湯システム。
【請求項2】
前記ガス給湯器は、前記給湯運転の給湯流量を調整する給湯流量調整手段を有し、
前記制御手段は、前記応急運転モードに移行した場合に、前記給湯流量調整手段の調整によって給湯の上限流量を前記応急運転モードへの移行前よりも低流量に制限することを特徴とする請求項1に記載の貯湯給湯システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記応急運転モードに移行した後で前記ガス給湯器が電源復帰した場合に、前記操作端末を介して前記応急運転モードの解除に関する報知を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の貯湯給湯システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記応急運転モードに移行した後で前記ガス給湯器の故障が検知されなくなった場合に、前記操作端末を介して前記応急運転モードの解除に関する報知を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の貯湯給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主熱源機としてヒートポンプユニットと、補助熱源機としてガス給湯器を有し、給湯には主にヒートポンプユニットで加熱して貯湯タンクに貯湯した湯水を使用する貯湯給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヒートポンプユニットで加熱して貯湯タンクに貯湯した湯水を給湯に使用し、貯湯タンクに給湯可能な温度の湯水がない場合にガス給湯器で加熱して給湯する貯湯給湯システムが広く利用されている。ヒートポンプユニットは、ガス給湯器と比べて熱効率に優れているが、湯水の加熱に時間を要するので予め貯湯タンクに加熱した湯水を貯湯しておく必要がある。
【0003】
ガス給湯器は、例えば貯湯タンクに貯湯した湯水を使い切った湯切れの場合や、貯湯タンクの湯水温度よりも高温の給湯を行う場合に、燃料として供給されるガスの燃焼熱によって湯水を加熱して給湯する。それ故、貯湯給湯システムは、電力とガスを併用することによって、熱効率を向上させながら様々な使用態様に応じて給湯することができる。
【0004】
例えば自然災害又は事故によってガスの供給が停止された場合、貯湯給湯システムが使用できる熱源はヒートポンプユニットのみになるので、貯湯タンクの湯切れが発生すると給湯設定温度で給湯できなくなる。そのため特許文献1には、ガスの供給が停止している場合に、貯湯タンクに貯湯する熱量を通常よりも増加させるように貯湯運転を行って、湯切れを発生し難くする貯湯給湯システムが開示されている。
【0005】
一方、貯湯給湯システムの設置環境や使用態様によっては、貯湯給湯システムの各部で消耗、劣化が進行して故障する場合がある。例えば特許文献2には、ガス給湯器が故障して加熱できない場合に、貯湯タンクに貯湯する熱量を通常よりも増加させるように貯湯運転を行う貯湯給湯システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5592429号公報
【特許文献2】特許第5874413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2の貯湯給湯システムは、貯湯される熱量が増えるので湯切れが発生し難くなり、湯切れが発生するまでは、ガス給湯器で加熱できなくても通常時と概ね同様に給湯することができる。しかし、特許文献1では、ユーザがガス給湯器で加熱しないガス禁止モード又はガス指定禁止モードを予め選択していない場合には、ガス給湯器が故障していてもガスの供給が止まっていないので、貯湯タンクに貯湯する熱量は増加しない。そのため、ガス給湯器が故障した場合に対応するものではない。
【0008】
一方、特許文献2はガス給湯器の故障を検知して、貯湯タンクに貯湯する熱量を自動的に増加させる。しかし、湯切れが発生するまでユーザがガス給湯器の故障を認識できない虞があり、故障が長期間放置されたままになる虞がある。そして、ガス給湯器の故障を認識できないまま、給湯設定温度が貯湯された湯水温度よりも高温に設定されて給湯された場合に、ユーザが望む温度の給湯にならず、不信感を与える虞がある。
【0009】
そこで、本発明は、故障したガス給湯器で加熱できない状態でも給湯設定温度の給湯を行うことができるように構成した貯湯給湯システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明の貯湯給湯システムは、ヒートポンプユニットで加熱した湯水を貯湯する貯湯タンク及びこの貯湯タンクの湯水と上水を混合して出湯する混合弁を備えた貯湯ユニットと、前記貯湯ユニットから出湯された湯水をその湯水温度に応じて加熱して又は非加熱で給湯するガス給湯器と、前記貯湯ユニットと前記ガス給湯器による給湯運転を制御する制御手段と、前記給湯運転の給湯設定温度の設定操作を行うための操作端末を有する貯湯給湯システムにおいて、前記制御手段は、前記ガス給湯器で加熱不能となる故障が検知された場合に、前記操作端末を介して前記ガス給湯器から非加熱で給湯する応急運転モードへの移行に関する報知を行い、前記応急運転モードに移行した場合に、前記給湯設定温度の設定可能な上限温度を前記応急運転モードへの移行前よりも低温に制限することを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、貯湯給湯システムは、貯湯タンクに貯湯した湯水を給湯設定温度で給湯するために、混合弁によって湯水温度を調整して貯湯ユニットから出湯し、この湯水をガス給湯器で加熱して又は非加熱で給湯する。そして、ガス給湯器で加熱不能となる故障が検知された場合には、ガス給湯器で加熱せずに給湯する応急運転モードへの移行に関する報知が行われ、応急運転モードへの移行後には給湯設定温度の設定可能な上限温度が移行前よりも低温に制限される。これにより、高温の給湯が制限されるので、貯湯タンクに貯湯した湯水を給湯設定温度で給湯することができる。
【0012】
請求項2の発明の貯湯給湯システムは、請求項1の発明において、前記ガス給湯器は、前記給湯運転の給湯流量を調整する給湯流量調整手段を有し、前記制御手段は、前記応急運転モードに移行した場合に、前記給湯流量調整手段の調整によって給湯の上限流量を前記応急運転モードへの移行前よりも低流量に制限することを特徴としている。
上記構成によれば、応急運転モードへの移行後には給湯流量調整手段の調整によって給湯流量の上限流量が移行前よりも低流量に制限される。これにより、貯湯タンクに貯湯された湯水を節約して使用することができる。
【0013】
請求項3の発明の貯湯給湯システムは、請求項1又は2の発明において、前記制御手段は、前記応急運転モードに移行した後で前記ガス給湯器が電源復帰した場合に、前記操作端末を介して前記応急運転モードの解除に関する報知を行うことを特徴としている。
上記構成によれば、故障の修理のために電源が切られたガス給湯器の修理が完了して電源復帰した場合に、応急運転モードの解除に関する報知を行う。従って、ガス給湯器の故障によって移行した応急運転モードからの復帰忘れを防止することができる。
【0014】
請求項4の発明の貯湯給湯システムは、請求項1又は2の発明において、前記制御手段は、前記応急運転モードに移行した後で前記ガス給湯器の故障が検知されなくなった場合に、前記操作端末を介して前記応急運転モードの解除に関する報知を行うことを特徴としている。
上記構成によれば、ガス給湯器の修理が完了して故障が検知されなくなった場合に、応急運転モードの解除に関する報知を行う。従って、故障によって移行した応急運転モードからの復帰忘れを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の貯湯給湯システムによれば、故障したガス給湯器で加熱できない状態でも給湯設定温度の給湯を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例に係る貯湯給湯システムの全体構成の説明図である。
図2図1の補助熱源機の内部構成の説明図である。
図3】本発明の実施例に係る運転モード制御のフローチャートである。
図4】本発明の実施例に係る貯湯運転のフローチャートである。
図5】本発明の実施例に係る給湯運転のフローチャートである。
図6】貯湯運転の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例0018】
最初に、本発明の貯湯給湯システム1の構成について、図1に基づいて説明する。
貯湯給湯システム1は、貯湯タンク2を備えた貯湯ユニット3と、主熱源機としてヒートポンプユニット4と、補助熱源機としてガス燃焼式のガス給湯器5を有する。この貯湯給湯システム1は、ヒートポンプユニット4で目標貯湯温度に加熱された湯水を貯湯タンク2に貯湯する貯湯運転を行う。目標貯湯温度は、例えば給湯設定温度と給湯使用量の予測に基づいて、給湯設定温度よりも高温且つ貯湯給湯システム1全体のエネルギー効率が高くなる温度に設定される。ガス給湯器5は、貯湯ユニット3から出湯された湯水を、その温度(出湯温度)に応じて加熱して又は非加熱で給湯栓6に給湯する。
【0019】
次に、貯湯ユニット3について説明する。
貯湯タンク2の下部には、ヒートポンプユニット4に貯湯タンク2の湯水を供給するために、ポンプ7を備えた主熱源機往き通路8が接続されている。貯湯タンク2の上部には、ヒートポンプユニット4で加熱された湯水を貯湯タンク2に貯湯するための主熱源機戻り通路9が接続されている。主熱源機戻り通路9の途中には、湯水の流路を切り替える切替弁10が配設され、この切替弁10において主熱源機戻り通路9から分岐された戻り分岐通路9aが、主熱源機往き通路8のポンプ7よりも上流部分に接続されている。
【0020】
主熱源機戻り通路9の切替弁10よりも上流側には、ヒートポンプユニット4で加熱された湯水の温度を検知する戻り温度センサ9bが配設されている。例えば貯湯運転の開始直後は、ヒートポンプユニット4で十分に加熱することができないので、切替弁10を貯湯タンク2側から戻り分岐通路9a側に切り替えて、十分に加熱できるようになるまで貯湯タンク2に湯水を戻さずに循環させることができる。
【0021】
貯湯タンク2の底部には、矢印CWで示すように上水を供給する給水通路11が接続されている。貯湯タンク2の頂部には、貯湯ユニット3から貯湯タンク2の湯水を出湯するための出湯通路12が接続されている。出湯通路12の途中には、混合弁14が配設されている。この混合弁14には、給水通路11の途中から分岐された給水分岐通路11aが接続されている。そして、貯湯タンク2からの湯水と給水分岐通路11aからの上水とが混合弁14で混合されて、貯湯ユニット3から出湯される。尚、混合弁14の代わりに、貯湯タンク2側の流量を調整する流量調整弁と、給水分岐通路11a側の流量を調整する流量調整弁によって、貯湯タンク2からの湯水と給水分岐通路11aからの上水との混合比を調整して出湯するようにしてもよい。
【0022】
貯湯タンク2には、複数の貯湯温度センサ2a~2dが高さ方向に所定の間隔を空けて配設されており、貯湯タンク2に貯湯された湯水の温度とその温度の湯水の貯湯量を検知することができる。そして、貯湯された湯水の降温を防ぐため、これら貯湯温度センサ2a~2dと貯湯タンク2を覆うように図示外の保温材が配設されている。
【0023】
給水通路11には、上水の温度(給水温度)を検知する給水温度センサ11bが配設されている。出湯通路12には、貯湯ユニット3から出湯する湯水の出湯流量を検知する出湯流量センサ12aと、貯湯タンク2から出湯される湯水の温度(タンク出湯温度)を検知する貯湯タンク出湯温度センサ12bと、貯湯ユニット3からの出湯温度を検知する出湯温度センサ12cが配設されている。
【0024】
貯湯ユニット3の出湯通路12とガス給湯器5の給水口5aとは、連結通路15によって接続されている。ガス給湯器5の給湯口5bには、給湯栓6に接続された給湯通路16が接続されている。貯湯ユニット3から出湯された湯水は、ガス給湯器5を介して給湯栓6に給湯される。
【0025】
貯湯運転では、ヒートポンプユニット4とポンプ7を駆動して貯湯タンク2とヒートポンプユニット4の間で湯水を循環させ、貯湯タンク2の下部からヒートポンプユニット4に導入した湯水を加熱し、貯湯タンク2の上部に戻して貯湯する。これにより、貯湯タンク2内に、上層の目標貯湯温度の湯水と下層の加熱前の湯水からなる温度成層が形成される。貯湯ユニット3は、この貯湯運転と、混合弁14によって貯湯ユニット3から出湯する湯水の温度調整を制御する貯湯ユニット制御部18を有する。
【0026】
次に、ガス給湯器5について説明する。
図2に示すように、ガス給湯器5は、給水口5aと給湯口5bを接続する給湯通路21と、給湯通路21の途中に配設された熱交換器22と、送風ファン23と、送風ファン23から送られる空気を利用して外部から供給される燃料のガスを燃焼させるバーナ24と、バーナ24の火炎を検知するフレイムロッド24aを有する。熱交換器22とバーナ24とフレイムロッド24aは、燃焼ガスの流通路となる缶体20に収容されている。缶体20には、例えば燃焼異常によって所定の温度以上になったことを検知するために温度ヒューズ20aが装備されている。
【0027】
給湯通路21を流通する湯水は、送風ファン23によって熱交換器22に送られるバーナ24の燃焼ガスの熱(燃焼熱)を利用して、熱交換器22で加熱される。熱交換器22は、燃焼ガスの顕熱を利用する一次熱交換器22aと燃焼ガスの潜熱を利用する二次熱交換器22bによって構成されている。給湯通路21の熱交換器22の出口部分には、熱交換器22で加熱された湯水の温度を検知する熱交出口温度センサ22cが装備されている。
【0028】
ガス給湯器5には、二次熱交換器22bで燃焼ガスに含まれる水分が凝縮した酸性のドレン水を中和して排水するために、中和剤が収容された中和器22dが装備されている。中和器22dは、ドレン水を介して流れる電流によって水位の異常、即ち中和器22dの詰まりを検知する1対の電極22eを備えている。
【0029】
給湯通路21は給水口5aと熱交換器22の間に分配弁25を有し、熱交換器22をバイパスするバイパス通路26が分配弁25で給湯通路21から分岐されている。また、給湯通路21は熱交換器22と給湯口5bの間に給湯流量調整弁27を有し、給湯通路21の熱交換器22と給湯流量調整弁27の間にバイパス通路26が接続されている。
【0030】
分配弁25は、給水口5aから入水した湯水を熱交換器22側の給湯通路21とバイパス通路26とに分配する。分配弁25の分配比は調整可能である。給湯流量調整弁27は、給湯運転の給湯流量を調整する給湯流量調整手段に相当し、ガス給湯器5から給湯される湯水の流量を調整する。
【0031】
ガス給湯器5は、給湯流量調整弁27において給湯通路21から分岐された湯張り通路28を介して図示外の浴槽に湯水を供給することができる。また、ガス給湯器5は、説明を省略するが、図示外の浴槽の湯水の追い焚き機能と温水暖房機能を備えている。
【0032】
給湯通路21は、入水温度センサ5cと、給湯温度センサ5dと、給湯流量センサ5eを有する。入水温度センサ5cは、給水口5aから入水する湯水の入水温度を検知する。給湯温度センサ5dは、ガス給湯器5を介して給湯される湯水の給湯温度を検知する。給湯流量センサ5eは、分配弁25によって熱交換器22側に分配された湯水の流量を検知し、この流量と分配弁25の分配比に基づいてガス給湯器5を介して給湯される湯水の流量が算出される。
【0033】
ガス給湯器5は、貯湯タンク2に貯湯されている湯水の温度では給湯設定温度の給湯ができない場合に、バーナ24の燃焼熱を利用して、貯湯ユニット3から出湯された湯水を熱交換器22で加熱する加熱運転を行う。加熱運転の加熱能力は、貯湯ユニット3から出湯された湯水の温度に応じてバーナ24における燃焼量を調整することによって調整される。そして、熱交換器22で加熱された湯水とバイパス通路26からの非加熱の湯水が混合され、給湯設定温度に調整された湯水が給湯される。
【0034】
加熱運転と、この加熱運転による給湯を制御するために、ガス給湯器5は、入水温度センサ5cと給湯温度センサ5dの検知温度に基づいて、送風ファン23と分配弁25と給湯流量調整弁27の駆動を制御するガス給湯器制御部29を備えている。ガス給湯器制御部29には、図1のように貯湯ユニット制御部18に接続された操作端末19が接続され、貯湯ユニット制御部18とガス給湯器制御部29とが通信可能に接続されている。この貯湯ユニット制御部18とガス給湯器制御部29によって、貯湯給湯システム1の給湯運転の制御を含む各種制御を連携して行う制御手段が構成されている。
【0035】
操作端末19は、ユーザが例えば給湯設定温度等を設定操作するためのものであり、貯湯給湯システム1に関する情報を表示、音声出力する機能を備えている。この操作端末19は、複数台接続されていてもよい。また、貯湯ユニット3に対応する操作端末19が貯湯ユニット制御部18に接続され、ガス給湯器5に対応する操作端末がガス給湯器制御部29に接続され、貯湯ユニット制御部18とガス給湯器制御部29とが通信線で接続されていてもよい。
【0036】
貯湯給湯システム1は、運転モードとして通常運転モードと応急運転モードを備えている。通常運転モードは、学習記憶した過去の給湯使用履歴に基づいて予測した将来の給湯使用の必要熱量を貯湯する貯湯運転を行い、この貯湯した湯水を使用して、必要があればガス給湯器5で加熱して、給湯設定温度で給湯する給湯運転を行う運転モードである。応急運転モードは、例えばガス給湯器5が加熱不能となる故障時に、通常運転モードよりも多い熱量を貯湯運転で貯湯し、この貯湯した湯水を使用してガス給湯器5で加熱せずに給湯設定温度で給湯する給湯運転を行う運転モードである。
【0037】
貯湯給湯システム1の初期の運転モードは通常運転モードに設定され、例えば給湯運転中にガス給湯器5が加熱不能になる故障が発生した場合に、応急運転モードに移行することができる。運転モードの移行は、自動的に行われてもよく、ユーザが承諾した場合に行われるようにしてもよい。この運転モード制御について、図3のフローチャートに基づいて説明する。図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。この制御は、制御手段である貯湯ユニット制御部18とガス給湯器制御部29が常時連携して行う。
【0038】
最初にS1において、現在の運転モードが通常運転モードであるか否か判定する。S1の判定がYesの場合はS2に進み、S2においてガス給湯器5の故障を検知したか否か判定する。検知する故障の対象は、ガス給湯器5が加熱不可になる故障であって、修理を必要とする故障である。
【0039】
例えば、缶体20の温度ヒューズ20aの溶断、中和器22dの詰まりの発生、送風ファン23の電流値の異常、フレイムロッド24aの火炎非検知によるバーナ24の着火不良等が、検知する故障の対象である。これらの故障は、ガス給湯器5による加熱運転中に発生して加熱運転が終了される。尚、缶体20の温度ヒューズ20aの溶断と中和器22dの詰まりは加熱運転終了後も継続して検知されるが、送風ファン23の電流値異常とバーナ24の着火不良は検知されたことが記憶されて、例えば電源切断のような検知クリア操作があるまで検知継続とされる。
【0040】
S2の判定がNoの場合は、運転モードの移行が不要なのでリターンして、この運転モード制御を最初から始める。S2の判定がYesの場合はS3に進み、S3において、操作端末19を介して応急運転モードへの移行に関する報知を行ってS4に進む。応急運転モードへの移行に関する報知は、制御手段が運転モードの移行を自動で行う場合には応急運転モードへ移行したことの報知であり、ユーザが運転モードの移行を選択する場合には応急運転モードへの移行の承諾/拒否の選択を促す報知である。
【0041】
次にS4において、応急運転モードに移行したか否か判定する。S4の判定がNoの場合はS4に戻るが、貯湯ユニット3から出湯された湯水を非加熱で給湯する給湯設定温度よりも低温の給湯が継続される。S4の判定がYesの場合はS5に進む。そしてS5において、操作端末19から設定することができる給湯設定温度の上限温度を、運転モードが通常運転モードである場合よりも低温に制限してS6に進む。
【0042】
例えば通常運転モードで設定可能な給湯設定温度が30℃~60℃であるところ、応急運転モードでは30℃~42℃にして設定可能な給湯設定温度の上限温度を制限する。応急運転モードへの移行前の給湯設定温度が移行後の制限された上限温度よりも高い場合には、移行後の制限された上限温度が給湯設定温度として設定され、移行前の給湯設定温度が移行後の制限された上限温度以下であれば給湯設定温度は変更されない。尚、応急運転モードの制限された上限温度を予めユーザが設定しておくことができ、普段の給湯設定温度をその応急運転モードの制限された上限温度にすることによって、通常と概ね同様の給湯を利用することができる。
【0043】
次にS6において、給湯流量調整弁27の調整によって、給湯の上限流量を運転モードが通常運転モードである場合よりも低流量に制限してS7に進む。ガス給湯器5の仕様能力にもよるが、通常運転モードでの給湯の上限流量が例えば20L/min以上であるところ、応急運転モードでの給湯の上限流量を例えば10L/minにして給湯の上限流量を制限する。貯湯された湯水を節約して使用し、湯切れになり難くすることができる。そしてS7において、応急運転モードへの移行によって貯湯する熱量が変動するので貯湯運転を開始し、リターンする。
【0044】
一方、S1の判定がNoの場合(応急運転モードである場合)はS8に進み、S8においてガス給湯器5の電源復帰があったか否か判定する。故障したガス給湯器5の修理のためにガス給湯器5の電源を切るので、修理が終わって電源復帰したか否かによって修理完了か否かを判定するステップである。S8の判定がYesの場合はS10に進む。
【0045】
一方、S8の判定がNoの場合はS9に進み、S9においてガス給湯器5の故障がまだ検知されているか否か判定する。例えば中和器22dの詰まりのように、ガス給湯器5の電源を落とさずに修理をすることができる場合もあるので、故障が検知されなくなれば修理完了と判定するステップである。故障非検知が所定の時間(例えば10分)以上継続された場合に、修理完了と判定するようにしてもよい。ガス給湯器5の故障が検知されず、S9の判定がNoの場合はS10に進む。S9の判定がYesの場合は、故障の修理が完了していないので応急運転モードを維持してリターンする。
【0046】
ガス給湯器5の電源復帰があった場合又はガス給湯器5の故障が検知されなくなった場合に、S10において操作端末19を介して通常運転モードへの移行に関する報知を行って、S11に進む。通常運転モードへの移行に関する報知は、制御手段が運転モードの移行を自動で行う場合には通常運転モードへ移行したことの報知であり、ユーザが運転モードの移行を選択する場合には通常運転モードへの移行の承諾/拒否の選択を促す報知である。
【0047】
S11において通常運転モードに移行したか否か判定する。S11の判定がNoの場合はS11に戻る。S11の判定がYesの場合はS12に進む。そしてS12において、操作端末19から設定することができる給湯設定温度の上限温度の制限を解除し、S13に進む。例えば応急運転モードでは42℃に制限されていた設定可能な給湯設定温度の上限温度を、通常運転モードの設定可能な給湯設定温度の上限温度である60℃に戻す。
【0048】
S13において、給湯流量調整弁27の調整によって、応急運転モードの給湯の上限流量の制限を解除してS14に進む。例えば、10L/minに制限されていた給湯の上限流量を、給湯流量調整弁27を全開にして通常運転モードの給湯の上限流量の20L/min以上に戻す。そしてS14において、通常運転モードへの移行によって貯湯する熱量が変動するので貯湯運転を開始し、リターンする。
【0049】
次に貯湯給湯システム1の貯湯運転の制御について図4のフローチャートに基づいて説明する。この制御は、制御手段である貯湯ユニット制御部18とガス給湯器制御部29のうち、貯湯ユニット制御部18が行う。
【0050】
貯湯運転が開始されると、S21において、現在の運転モードが通常運転モードであるか否か判定する。S21の判定がYesの場合(通常運転モードの場合)はS22に進み、S22において学習記憶した過去の給湯使用履歴に基づいて将来の給湯使用を予測し、例えば時間帯毎に必要熱量を設定してS23に進む。このとき貯湯の目標温度が、給湯設定温度よりも高温に設定される。
【0051】
S23において、必要熱量の貯湯が完了したか否か判定する。このS23の判定は、貯湯タンク2の複数の貯湯温度センサ2a~2dの検知温度によって、既に貯湯されている湯水も含めて行うことができる。S23の判定がNoの場合はS24に進み、S24においてヒートポンプユニット4とポンプ7を駆動して貯湯を実行しS23に戻る。S23の判定がYesの場合は貯湯運転を終了する。
【0052】
一方、S21の判定がNoの場合(応急運転モードの場合)はS25に進み、S25において上記と同様に将来の給湯使用を予測し、必要熱量を設定してS26に進む。そしてS26において、ガス給湯器5で加熱しないため必要熱量を例えばαだけ増加設定してS27に進む。増加分αは、貯湯タンク2の容量に応じて適宜設定可能であり、例えば必要熱量の10%相当量とすることができる。このとき貯湯の目標温度が、給湯設定温度よりも高温に設定される。
【0053】
S27において、貯湯温度センサ2a~2dの検知温度によって、既に貯湯されている湯水も含めて必要熱量+αの貯湯が完了したか否か判定する。S27の判定がNoの場合はS28に進み、S28においてヒートポンプユニット4とポンプ7を駆動して貯湯を実行しS27に戻る。S27の判定がYesの場合は貯湯運転を終了する。
【0054】
次に、給湯運転について、図5のフローチャートに基づいて説明する。例えば給湯栓6が開栓され、出湯流量センサ12aが所定の最低作動流量以上の流量を検知すると、給湯運転が開始される。この給湯運転制御は、制御手段である貯湯ユニット制御部18とガス給湯器制御部29が連携して行う。
【0055】
給湯運転が開始されるとS31において、現在の運転モードが通常運転モードであるか否か判定する。S31の判定がYesの場合(通常運転モードの場合)はS32に進み、S32において貯湯タンク2からの湯水の温度(タンク出湯温度)と、給水温度センサ11bの検知温度(給水温度)と、出湯流量センサ12aの検知流量(出湯流量)を取得してS33に進む。
【0056】
S33において、タンク出湯温度が給湯設定温度以上であるか否か判定する。ガス給湯器5から非加熱で給湯設定温度の給湯が可能か否か判定するステップである。S33の判定がYesの場合はS34に進み、S34において出湯温度が給湯設定温度となるように混合弁14の開度を設定して貯湯ユニット3から出湯してS35に進む。そしてS35において、貯湯ユニット3から出湯した湯水をガス給湯器5から非加熱で給湯して、S36に進む。次にS36において、出湯流量がゼロになったか否か、即ち給湯使用の終了を判定する。S36の判定がNoの場合はS32に戻る。S36の判定がYesの場合は給湯運転を終了する。
【0057】
S33の判定がNoの場合はS37に進み、S37においてガス給湯器5で加熱して給湯設定温度で給湯するために、出湯温度が要加熱目標温度以下となるように混合弁14の開度を設定してS38に進む。要加熱目標温度は、ガス給湯器5で加熱して給湯設定温度で給湯できる温度であり、例えば給湯設定温度よりも10℃低い温度に設定される。そしてS38において、ガス給湯器5で加熱し、給湯設定温度に調整した湯水を給湯してS39に進む。
【0058】
S39においてガス給湯器5の故障を検知したか否か判定する。ガス給湯器5の加熱運転を伴う給湯運転中に、ガス給湯器5の故障によって加熱できなくなったことを判定するステップである。S39の判定がNoの場合はS36に進む。一方、S39の判定がYesの場合はS40に進み、S40においてガス給湯器5での加熱(燃焼)を停止させてS41に進む。そしてS41において、既に説明した運転モード制御を行ってS42に進む。
【0059】
ガス給湯器5での加熱を伴う給湯運転中にガス給湯器5が故障した場合、又は応急運転モードで給湯運転が開始されてS31の判定がNoの場合にはS42に進む。そしてS42において、タンク出湯温度と給水温度と出湯流量を取得してS43に進む。
【0060】
次にS43において、タンク出湯温度が給湯設定温度以上であるか否か判定する。S43の判定がYesの場合はS44に進み、S44において出湯温度が給湯設定温度となるように混合弁14の開度を設定してS46に進む。一方、S43の判定がNoの場合はS45に進み、S45において貯湯タンク2側が全開となるように混合弁14の開度を設定してS46に進む。
【0061】
次にS46において、ガス給湯器5から非加熱で給湯してS47に進む。そしてS47において、出湯流量がゼロになったか否か、即ち給湯使用の終了を判定する。S47の判定がNoの場合はS42に戻る。S42の判定がYesの場合は給湯運転を終了する。
【0062】
応急運転モードの貯湯は、貯湯タンク2に貯湯可能な最大熱量を貯湯するようにしてもよい。例えば図6のように、現在の運転モードが応急運転モードであってS21の判定がNoの場合にS55に進み、S55において必要熱量を貯湯タンク2の最大貯湯熱量に設定してS23に進む。そしてS23において必要熱量の貯湯完了を判定し、S23の判定がNoの場合はS24に進んで貯湯を実行してS23に戻り、S23の判定がYesの場合は貯湯運転を終了する。S21の判定がYesの場合の通常運転モードの貯湯は、既に説明した図4と同じなので説明を省略する。貯湯される熱量が貯湯タンク2の最大貯湯熱量まで増加するので、湯切れを一層発生し難くすることができる。
【0063】
上記の貯湯給湯システム1の作用、効果について説明する。
貯湯給湯システム1は、貯湯タンク2に貯湯した湯水を給湯設定温度で給湯するために、混合弁14によって湯水温度を調整して貯湯ユニット3から出湯し、この湯水をガス給湯器5で加熱して又は非加熱で給湯する。そして、ガス給湯器5の故障が検知された場合には、ガス給湯器5で加熱せずに給湯する応急運転モードへの移行に関する報知が行われ、応急運転モードへの移行後には給湯設定温度の設定可能な上限温度が移行前よりも低温に制限される。従って、高温の給湯が制限されるので、貯湯タンク2に貯湯した湯水を給湯設定温度で給湯することができる。
【0064】
また、応急運転モードへの移行後には給湯流量調整弁27(給湯流量調整手段)の調整によって給湯流量の上限流量が移行前よりも低流量に制限される。これにより、貯湯タンク2に貯湯された湯水を節約することができ、貯湯タンク2に貯湯した湯水を給湯設定温度で給湯することができる機会が増加する。
【0065】
貯湯給湯システム1は、故障の修理のために電源が切られたガス給湯器5の修理が完了して電源復帰した場合に、操作端末19を介して応急運転モードの解除に関する報知を行う。また、貯湯給湯システム1は、ガス給湯器5の修理が完了して故障が検知されなくなった場合に、操作端末19を介して応急運転モードの解除に関する報知を行うこともできる。従って、ガス給湯器5の故障によって移行した応急運転モードからの復帰忘れを防止することができる。
【0066】
その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0067】
1 :貯湯給湯システム
2 :貯湯タンク
2a~2d:貯湯温度センサ
3 :貯湯ユニット
4 :ヒートポンプユニット
5 :ガス給湯器
5a :入水口
5b :給湯口
5c :入水温度センサ
5d :給湯温度センサ
5e :給湯流量センサ
6 :給湯栓
7 :ポンプ
8 :主熱源機往き通路
9 :主熱源機戻り通路
10 :切替弁
11 :給水通路
11a :給水分岐通路
11b :給水温度センサ
12 :出湯通路
12a :出湯流量センサ
12b :貯湯タンク出湯温度センサ
12c :出湯温度センサ
14 :混合弁
15 :連結通路
16 :給湯通路
18 :貯湯ユニット制御部(制御手段)
19 :操作端末
20 :缶体
20a :温度ヒューズ
21 :給湯通路
22 :熱交換器
22a :一次熱交換器
22b :二次熱交換器
22c :熱交出口温度センサ
22d :中和器
22e :電極
23 :送風ファン
24 :バーナ
24a :フレイムロッド
25 :分配弁
26 :バイパス通路
27 :給湯流量調整弁(給湯流量調整手段)
28 :湯張り通路
29 :補助熱源機制御部(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6