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特開2024-122437設定エラー検出システム、設定エラー検出方法および設定エラー検出プログラム
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  • 特開-設定エラー検出システム、設定エラー検出方法および設定エラー検出プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122437
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】設定エラー検出システム、設定エラー検出方法および設定エラー検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 41/0866 20220101AFI20240902BHJP
   H04L 41/16 20220101ALI20240902BHJP
【FI】
H04L41/0866
H04L41/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029972
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100208605
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 龍一
(72)【発明者】
【氏名】ワン ツェン
(72)【発明者】
【氏名】吉兼 昇
(57)【要約】
【課題】光伝送ネットワーク(OTN)の構成エラーを自動的に検出する。
【解決手段】光トランスポートネットワークを構成する光通信装置の設定エラーを検出する設定エラー検出システムであって、光通信装置C6~C10から設定情報を取得する構成取得部と、事前学習が行われたエラー識別モデルを用いて、ニューラルネットワークによって前記取得した設定情報からエラーを検出するエラー検出部C3と、事前学習が行われたエラー分析モデルを用いて、前記エラーが検出された光通信装置を特定し、ラベリングを行なうエラー特定部C4と、を備え、エラーの有無および特定されたエラーを示す情報を出力する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光トランスポートネットワークを構成する光通信装置の設定エラーを検出する設定エラー検出システムであって、
前記光通信装置から設定情報を取得する取得部と、
事前学習が行われたエラー識別モデルを用いて、ニューラルネットワークによって前記取得した設定情報からエラーを検出するエラー検出部と、
事前学習が行われたエラー分析モデルを用いて、前記エラーが検出された光通信装置を特定し、ラベリングを行なうエラー特定部と、を備え、
エラーの有無および特定されたエラーを示す情報を出力することを特徴とする設定エラー検出システム。
【請求項2】
前記エラー識別モデルおよび前記エラー分析モデルは、光伝送ネットワークに関する語彙を学習する第一の事前学習と、前記第一の事前学習後に実行され光伝送ネットワークに関する文章を学習する第二の事前学習によって形成されたことを特徴とする請求項1記載の設定エラー検出システム。
【請求項3】
光トランスポートネットワークを構成する光通信装置の設定エラーを検出する設定エラー検出方法であって、
前記光通信装置から設定情報を取得する工程と、
事前学習が行われたエラー識別モデルを用いて、ニューラルネットワークによって前記取得した設定情報からエラーを検出する工程と、
事前学習が行われたエラー分析モデルを用いて、前記エラーが検出された光通信装置を特定し、ラベリングを行なう工程と、
エラーの有無および特定されたエラーを示す情報を出力する工程と、を少なくとも含むことを特徴とする設定エラー検出方法。
【請求項4】
前記エラー識別モデルおよび前記エラー分析モデルは、光伝送ネットワークに関する語彙を学習する第一の事前学習と、前記第一の事前学習後に実行され光伝送ネットワークに関する文章を学習する第二の事前学習によって形成されたことを特徴とする請求項3記載の設定エラー検出方法。
【請求項5】
光トランスポートネットワークを構成する光通信装置の設定エラーを検出する設定エラー検出プログラムであって、
前記光通信装置から設定情報を取得する処理と、
事前学習が行われたエラー識別モデルを用いて、ニューラルネットワークによって前記取得した設定情報からエラーを検出する処理と、
事前学習が行われたエラー分析モデルを用いて、前記エラーが検出された光通信装置を特定し、ラベリングを行なう処理と、
エラーの有無および特定されたエラーを示す情報を出力する処理と、を少なくとも含むことを特徴とする設定エラー検出プログラム。
【請求項6】
前記エラー識別モデルおよび前記エラー分析モデルは、光伝送ネットワークに関する語彙を学習する第一の事前学習と、前記第一の事前学習後に実行され光伝送ネットワークに関する文章を学習する第二の事前学習によって形成されたことを特徴とする請求項5記載の設定エラー検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光トランスポートネットワークを構成する光通信装置の設定エラーを検出する設定エラー検出システム、設定エラー検出方法および設定エラー検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、OTN(Optical Transport Network)の障害を検出するための方法が研究されている。非特許文献1から3に示されているように、OTNにおいて、物理層の異常によって引き起こされる障害を診断し、障害の位置を特定することを目的とした研究が活発に行われている。
【0003】
また、非特許文献4から6に示されているように、ネットワークにNLP(Natural Language Processing:自然言語処理)を使用する技術が知られている。LM(Language Model)に基づいた自然言語処理((NLP)は、最近、ネットワーク構成を理解するタスクで活用されている。例えば、非特許文献4では、ネットワークの統合制御問題を解決するためにNLPを利用することが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】H. Date, T. Kubo, T. Kawasaki and H. Maeda, "Silent Failure Localization on Optical Transport System," in IEEE Photonics Technology Letters, vol. 33, no. 13, pp. 649-651, 1 July1, 2021, doi: 10.1109/LPT.2021.3084686.
【非特許文献2】J. Luo, S. Huang, J. Zhang, X. Li and W. Gu, "A novel multi-fault localization mechanism in PCE-based multi-domain large capacity optical transport networks," OFC/NFOEC, 2012, pp. 1-3.
【非特許文献3】F. Inuzuka et al., "Demonstration of a Novel Framework for Proactive Maintenance Using Failure Prediction and Bit Lossless Protection With Autonomous Network Diagnosis System," in Journal of Lightwave Technology, vol. 38, no. 9, pp. 2695-2702, 1 May1, 2020, doi: 10.1109/JLT.2020.2967510.
【非特許文献4】Huangxun Chen, Yukai Miao, Li Chen, Haifeng Sun, Hong Xu, Libin Liu, Gong Zhang, and Wei Wang. 2022. Software-defined network assimilation: bridging the last mile towards centralized network configuration management with NAssim. In Proceedings of the ACM SIGCOMM 2022 Conference (SIGCOMM '22). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 281-297. https://doi.org/10.1145/3544216.3544244
【非特許文献5】Houidi, Zied Ben, and Dario Rossi. "Neural language models for network configuration: Opportunities and reality check." arXiv preprint arXiv:2205.01398 (2022).
【非特許文献6】M. -T. -A. Nguyen, S. B. Souihi, H. -A. Tran and S. Souihi, "When NLP meets SDN : an application to Global Internet eXchange Network," ICC 2022 - IEEE International Conference on Communications, 2022, pp. 2972-2977, doi: 10.1109/ICC45855.2022.9838633.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光伝送ネットワーク(OTN)においては、光通信装置の集中制御が可能であるが、光通信装置の設定において、装置間の制御管理系の差異に起因して、設定エラーが発生することがある。例えば、コントロールプレーンの構造と制御自動化レベルの違いにより、ライトパスを構成する際、ノード内の矛盾、管理ポートと物理接続の不一致、制御ロジックの不整合、または動的に調整する最中の予測不可能な状態によって、構成エラーが発生する場合がある。商用光通信装置では、設定にXML(Extensible Markup Language)が広く使用されている。XMLの設定ファイルをチェックしてエラーを発見するには、膨大な手間や知識および経験等が必要であるため、困難である。
【0006】
また、構成エラーの可能性は、物理層の障害の可能性よりもはるかに高くなるという問題がある。非特許文献1から3の研究では、機械学習を利用しているものの、機械学習を使用して予測タスクを実行するだけであり、膨大なネットワークの故障診断を言語モデルを用いて実行するものではない。また、非特許文献4から6の研究は、OTNを対象としたものではなく、電気パケット交換ネットワークに関するものであるため、OTNに適用することはできない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、事前トレーニングを伴うアテンションスタイルのディープニューラルネットワークによる言語モデル(LM)に基づく自然言語処理(NLP)技術を利用することによって、光伝送ネットワーク(OTN)の構成エラーを自動的に検出することができる設定エラー検出システム、設定エラー検出方法および設定エラー検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の設定エラー検出システムは、光トランスポートネットワークを構成する光通信装置の設定エラーを検出する設定エラー検出システムであって、前記光通信装置から設定情報を取得する取得部と、事前学習が行われたエラー識別モデルを用いて、ニューラルネットワークによって前記取得した設定情報からエラーを検出するエラー検出部と、事前学習が行われたエラー分析モデルを用いて、前記エラーが検出された光通信装置を特定し、ラベリングを行なうエラー特定部と、を備え、エラーの有無および特定されたエラーを示す情報を出力することを特徴とする。
【0009】
(2)また、本発明の設定エラー検出システムにおいて、前記エラー識別モデルおよび前記エラー分析モデルは、光伝送ネットワークに関する語彙を学習する第一の事前学習と、前記第一の事前学習後に実行され光伝送ネットワークに関する文章を学習する第二の事前学習によって形成されたことを特徴とする。
【0010】
(3)また、本発明の設定エラー検出方法は、光トランスポートネットワークを構成する光通信装置の設定エラーを検出する設定エラー検出方法であって、前記光通信装置から設定情報を取得する工程と、事前学習が行われたエラー識別モデルを用いて、ニューラルネットワークによって前記取得した設定情報からエラーを検出する工程と、事前学習が行われたエラー分析モデルを用いて、前記エラーが検出された光通信装置を特定し、ラベリングを行なう工程と、エラーの有無および特定されたエラーを示す情報を出力する工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0011】
(4)また、本発明の設定エラー検出方法において、前記エラー識別モデルおよび前記エラー分析モデルは、光伝送ネットワークに関する語彙を学習する第一の事前学習と、前記第一の事前学習後に実行され光伝送ネットワークに関する文章を学習する第二の事前学習によって形成されたことを特徴とする。
【0012】
(5)また、本発明の設定エラー検出プログラムは、光トランスポートネットワークを構成する光通信装置の設定エラーを検出する設定エラー検出プログラムであって、前記光通信装置から設定情報を取得する処理と、事前学習が行われたエラー識別モデルを用いて、ニューラルネットワークによって前記取得した設定情報からエラーを検出する処理と、事前学習が行われたエラー分析モデルを用いて、前記エラーが検出された光通信装置を特定し、ラベリングを行なう処理と、エラーの有無および特定されたエラーを示す情報を出力する処理と、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0013】
(6)また、本発明の設定エラー検出プログラムにおいて、前記エラー識別モデルおよび前記エラー分析モデルは、光伝送ネットワークに関する語彙を学習する第一の事前学習と、前記第一の事前学習後に実行され光伝送ネットワークに関する文章を学習する第二の事前学習によって形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光通信装置の構成エラーの検出を自動化することが可能となる。また、検出したエラーの発生箇所を特定することができるため、手動による場合と比較して、エラー検出および特定のプロセスが大幅に加速される。さらに、構成エラーが発生する可能性を減らすことができると共に、ネットワーク管理者のエラー特定に係る負担を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】「BERT」の学習の様子を示す図である。
図2】事前学習およびデータセットの例を示すである。
図3】事前学習およびエラー検出・特定のステージAの動作を示すフローチャートである。
図4】本発明に係る設定エラー検出システムの概略構成を示す図である。
図5】本発明に係る設定エラー検出システムのステージBの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、言語モデル(LM)を作成する際に、語彙について事前学習のみならず文章を学習するファインチューニングを施すことによって、言語モデル適用の精度を高め、さらに、エラー有無の検出と、エラー特定の二段階を踏むことによって、エラー特定の確率を高めることを見出し、本発明に至った。
【0017】
すなわち、本発明の設定エラー検出システムは、光トランスポートネットワークを構成する光通信装置の設定エラーを検出する設定エラー検出システムであって、前記光通信装置から設定情報を取得する取得部と、事前学習が行われたエラー識別モデルを用いて、ニューラルネットワークによって前記取得した設定情報からエラーを検出するエラー検出部と、事前学習が行われたエラー分析モデルを用いて、前記エラーが検出された光通信装置を特定し、ラベリングを行なうエラー特定部と、を備え、エラーの有無および特定されたエラーを示す情報を出力することを特徴とする。
【0018】
これにより、本発明者らは、光通信装置の構成エラーの検出を、自動化することを可能とした。また、検出したエラーを特定することができるため、手動による場合と比較して、エラー検出および特定のプロセスを大幅に加速させた。さらに、構成エラーが発生する可能性を減らすと共に、ネットワーク管理者のエラー特定に係る負担を削減することを可能とした。以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0019】
本願発明では、エラーの検出と特定の2つの工程を実施することを特徴としている。すなわち、最初に(タスク固有の)LMを使用して構成の正しい構成と正しくない構成を識別し、次に、別の(タスク固有の)LMを使用して、エラーが発生したノードにおけるデバイスを発見する。これに基づいて、管理者は手動または自動ロジックを使用してエラーの詳細をさらに特定することが可能となる。
【0020】
[言語モデルの作成]
本明細書において、LM(Language Model)は、NN(Neural Network)に基づいたものであり、NNは、具体的に「Transformer」という構造を有する(参考論文:Attention is all you need)。本願発明では、「Transformer-based NN」を利用する。「Transformerベース」のLMは、多数の種類が存在するが、本明細書では、「BERT」というLMを使用する例を説明する(参考論文:BERT: Pre-training of Deep Bidirectional Transformers for Language Understanding)。この「BERT」は、従来のNLP(自然言語処理)モデルとは異なり、文章を文頭と末尾の双方向から事前学習するように設計されている。また、学習に使用することができるデータが大量に存在し、与える様々なタスクに対して柔軟な対応が可能という特徴がある。なお、本願発明は、「BERT」に限定されるわけではない。
【0021】
図1は、「BERT」の学習の様子を示す図である。「BERT」は、事前学習したモデルである。図1の左側では、第一の事前学習の様子を示している。ここでは、数千万単位の語彙や文章、すなわち、様々な「大規模Corpus(Newsなどの一般的な句)」を用いて、「Masking」および「Next sentence prediction」を行なう。ただし、LMは、自然言語(一般的に英語)に対応可能であるが、現時点ではOTN用語(OTN vocabulary)にはまだ対応していない。図1の右側は、第二の事前学習の様子を示している。ここでは、数千から数万単位の文章、特に、OTNに関連する文章が学習される。
【0022】
図2は、事前学習およびデータセットの例を示すものであり、図3は、事前学習およびエラー検出・特定のステージAの動作を示すフローチャートである。図2および図3において、まず、オリジナルの言語モデルLM(C1)を拡大させるため、OTNボキャブラリーを使用する(Step01)。ここで、「OTN vocabulary(光通信装置に関する用語)」として、例えば、「edfa, roadm, odu4」などを言語モデルとして学習させる。ここでの学習は、第一の事前学習となる。
【0023】
次に、辞典拡大によるオリジナルLM(C1)の事前学習のため、OTNコーパスを使用した学習を行なう(Step02)。OTNコーパス(センテンス)としては、例えば、OTN、トランスポンダ、波長選択スイッチ(WSS:wavelength selective switch)、再構成可能な光アド/ドロップマルチプレクサ(ROADM:reconfigurable optical add-drop multiplexer)、光スイッチなどの製品マニュアルおよび Google 検索結果などがある。ここでの学習によって、第二の事前学習としてのファインチューニングが実施される。上記の手順により、学習済の言語モデルである「OTN-LM」が作成され、OTN-LMは、OTN用語を認識および理解できる状態になる。
【0024】
次に、実際の運用を管理しているネットワークから情報を取得するステータスに遷移する。すなわち、OTNエージェント(C5)が、各光通信装置から構成情報を取得する(Step03)。ここでは、各光通信装置から構成情報を取得し、指定先に出力するコンピュータであるAgentがネットワークエレメント(ネットワーク機器・装置)からステータスを入手(取得)して、データセットをオペレータ(人間)が生成する。この「Dataset」は、一般的に人間によって作成されるものであり、機械学習の分野において標準的な手法である。
【0025】
OTNデータセットの一例が、図2に示されており、次の形式が採られている(以下の4つが必須項目となる)。
<No., text, class, label>
No.: the ID of each entry of the dataset;
Text: by conjugating configurations on each device of a lightpath;
Class: to identify the text (i.e., lightpath configurations) <correct> or <error>;
Label: to indicate the error locations, e.g., in transponder, ROADM, or optical switch etc.
【0026】
次の「Step 4」および「Step 5」は、「Task-specific LM」を取得するプロセスであり、図1の右側に示したファインチューニングに対応する。ここで、本明細書において、エラー識別モデル(Error discrimination language model)を、「EDiMo」と呼称する。このEDiMo(C3)を取得するため、バイナリ区別(<Class>に関する)タスクを実行するための全てのデータセットを使用し、Classを判別する(Step04)。なお、「Dataset」は、オペレータの判断で生成されるが、この「Step4」では、NN(ニューラルネットワーク)による判断も入ることとなる。そして、エラーがある光通信装置(デバイス)については、エラーを特定する。すなわち、部分的なデータセット(Class=Errorとする)を使用して、複数の分類(<Label>付与に関して)タスクをトレーニングする(Step05)。本明細書において、エラー分析モデル(Error analyzation model)を、「ENaMo」と呼称する。そして、このENaMo(C4)を取得する。「Multi labeling」はタスクのひとつであり、また、「Multiple classification」もタスクのひとつである。ここでは、「Class=Error」のものについて、「Label」を付与する対象を判別する。
【0027】
[光ネットワーク特有の課題]
光トランスポートネットワークにおけるエラー特定とは、ある光パスにおいてエラーが発生した設備の種類を特定するものである。すなわち、光トランスポートネットワークは、異なる機能を持つ設備で構成されており、例えば、「Transponder(光送受信機)」や「WSS(波長選択スイッチ)」などが挙げられる。
【0028】
一方、「L2/L3ネットワーク(パケットネットワーク)」におけるエラー特定では、次のように、各ネットワークレイヤにおけるエラーを特定することが挙げられる。
例1:MACレイヤにおけるBroadcast storm
例2:IPレイヤにおける IP address mistakenly divided
例3:L2における、VLANやXVLANの規則違反など
【0029】
そのため、本明細書において提案された二段階方法のうち、階段1は「光パスのconfigurationが正しいかどうか」を確認して、階段2は「この光パスにconfigurationエラーが発生したら、この光パスにconfigurationエラーが発生した設備の種類(具体な設備ではなく<Label>を参照する)を特定する。
【0030】
光トランスポートネットワークでは、IPネットワークと比べて、エラー発生の原因が異なり、ネットワークレイヤごとのエラー・障害への対応が異なる。IPネットワークにおいて、「configurationエラー」の原因は、主に「TCP・IPプロトコル」の規則違反となる。これに対して、光トランスポートネットワークにおいて、「configurationエラー」の原因は、「ポートのマッピング、ポートon/off設定、波長設定、光増幅器設定」等の「物理層の問題」となり、パケットレイヤとは異なる。本発明では、エラーを学習できるLMを取得する方法を採るため、上述した光特有の課題やエラーの原因がデータセットに反映されている。
【0031】
なお、本願発明では、二段階にエラーを特定する方法を採るが、直接エラー特定する方法よりも、二段階方法はエラー特定の正確さ(確率)が高くなる。純粋なLMより、辞書を補足し、事前訓練したLM(ファインチューニングされたLM)の方が性能が向上する。
【0032】
なお、上述した「Step 1」と「Step 2」は、外部Agent(エージェント)若しくはネットワークコントローラ以外のマシンで実施する。
【0033】
[エラーの検出および特定]
図4は、本発明に係る設定エラー検出システムの概略構成を示す図であり、図5は、本発明に係る設定エラー検出システムのステージBの動作を示すフローチャートである。上述したように言語モデルの事前学習の後、事前学習済みの言語モデルが、OTNエージェント(C5)(またはネットワークコントローラ)に配備される。OTNエージェント(C5)は、光通信装置(C6からC10)から構成情報を取得する(Step 21)。ここで、各光通信装置(ネットワーク機器)からその設定(構成情報)を取得することによって、学習モデルを強化する。ここで、モード[1]は、パッシブモードであり、制御メッセージを受信し、制御メッセージを構成情報に変換し、変換された(生成された)構成を検出する。モード[2]は、プロアクティブモードであり、現在の構成を監視し(つまり、各ノードから現在の構成を取得し)、取得した構成を検出する。
【0034】
そして、EDiMo(C3)を使用して構成を判別する(Step 22, Step 23)。すなわち、実際にエラーを検出する。上の手順で作った学習モデルを適用することによって、各ネットワーク機器の設定が正しいのかどうかを確認する。判別の結果、「正解」であった場合は、Step24に進み、「OTNエージェントC5」は、C6からC10に対して設定構成を送信し(モード[1]の場合)、終了する。なお、モード[2]の場合は、各機器に既に設定されている構成情報を基にして判断しているため、設定構成を各機器に送信する必要はない。判別の結果、「正解」でない場合はStep25に進み(つまり、分別結果が<エラー>の時)、ENaMo(C4)を使ってエラー構成にラベリングを行なう(Step 26)。これにより、エラーはどこが最も起きやすいか分析することが可能となる。次に、ラベリング結果(エラー箇所確率ランキング)をOTN管理者に報告する(Step 26)。例えば、「AgentまたはController」のインタフェース(API:Application programming interface)を介して報告する。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、光通信装置の構成エラーの検出を自動化することが可能となる。また、検出したエラーを特定することができるため、手動による場合と比較して、エラー検出および特定のプロセスが大幅に加速される。さらに、構成エラーが発生する可能性を減らすことができると共に、ネットワーク管理者のエラー特定に係る負担を削減することができる。
【0036】
[その他の実施形態]
本発明は、上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想および範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。すなわち、本発明に係る設定エラー検出システムは、方法発明として実現可能であると共に、1以上のコンピュータで実行されるプログラムによっても実現可能である。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されることにより、あるいは電気通信回線を通じて、提供または配布することができる。
【符号の説明】
【0037】
C3…EDiMo(Error discrimination language model)
C4…ENaMo(Error analyzation model)
C5…OTNエージェント
C6~C10…光通信装置
図1
図2
図3
図4
図5