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  • 特開-固体燃料の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122439
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】固体燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/48 20060101AFI20240902BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20240902BHJP
   B09B 3/45 20220101ALI20240902BHJP
   C08J 11/16 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C10L5/48
B09B5/00 Q
B09B3/45
C08J11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029974
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 恭宗
(72)【発明者】
【氏名】竹本 智典
(72)【発明者】
【氏名】明戸 剛
(72)【発明者】
【氏名】福田 誠司
【テーマコード(参考)】
4D004
4F401
4H015
【Fターム(参考)】
4D004AA22
4D004AA28
4D004AC05
4D004BA03
4D004CA04
4D004CA05
4D004CA09
4D004CA22
4D004CA27
4D004CB02
4D004CC01
4F401AC08
4F401AD03
4F401BA04
4F401CA01
4F401CA14
4F401CA17
4F401CA23
4F401CA25
4F401CA73
4F401CB06
4F401CB13
4F401CB15
4F401EA40
4F401FA01Y
4H015AA02
4H015AA17
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA11
4H015BB01
4H015BB04
4H015BB10
4H015CA03
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】加熱炉への含プラスチック廃棄物の投入量を増加したとしても固体燃料を収率よく製造できる方法を提供すること。
【解決手段】加熱炉内に収容した含プラスチック廃棄物に過熱水蒸気を含むガスを供給しつつ、所定温度にて含プラスチック廃棄物を加熱する加熱工程
を含み、
加熱炉内に収容した含プラスチック廃棄物の総質量(A)と、加熱炉内に供給した過熱水蒸気の総質量(B)との質量比[(B)/(A)]が0.45以上である、
固体燃料の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉内に収容した含プラスチック廃棄物に過熱水蒸気を含むガスを供給しつつ、所定温度にて含プラスチック廃棄物を加熱する加熱工程
を含み、
加熱炉内に収容した含プラスチック廃棄物の総質量(A)と、加熱炉内に供給した過熱水蒸気の総質量(B)との質量比[(B)/(A)]が0.45以上である、
固体燃料の製造方法。
【請求項2】
加熱炉内の容積(C)と、加熱炉内に供給した過熱水蒸気の総体積(D)との体積比[(D)/(C)]が8.0以上である、請求項1記載の固体燃料の製造方法。
【請求項3】
過熱水蒸気の過熱度が200K以上550K以下である、請求項1記載の固体燃料の製造方法。
【請求項4】
加熱温度が300℃以上650℃以下である、請求項1記載の固体燃料の製造方法。
【請求項5】
加熱後の含プラスチック廃棄物を破砕し、破砕物を、分級工程と、磁力選別工程、風力選別工程、比重選別工程及び渦電流選別工程から選択される1以上の物理選別工程とに供する、請求項1~4のいずれか1項に記載の固体燃料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃自動車、廃家電製品、廃オフィス家具等の産業廃棄物を再資源化する技術が種々検討されている。例えば、ニッケル微粒子の存在下、プラスチック及び金属を含む廃棄物を450~700℃の温度下水蒸気で処理して、プラスチックを熱分解してガス化し、金属を回収することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-160163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来技術は、含プラスチック廃棄物に含まれる金属の回収を目的とするものであり、当該廃棄物に含まれるプラスチックから固体燃料を製造するものではない。本発明者らは、含プラスチック廃棄物に含まれるプラスチックを固体燃料として有効利用すべく、炉内容積を維持しつつ、炉への含プラスチック廃棄物の投入量を増加して固体燃料の生産能力を増強する手段について検討した。しかし、炉内への含プラスチック廃棄物の投入量が炉内容積に対して一定量を超えると、含プラスチック廃棄物への伝熱が悪化して熱分解が不十分となり、生焼けの状態になるため、増量前に比べて固体燃料の収率が低下することが判明した。
本発明は、加熱炉への含プラスチック廃棄物の投入量を増加したとしても固体燃料を収率よく製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題に鑑み検討した結果、加熱炉内に収容した含プラスチック廃棄物を加熱する際に過熱水蒸気を含むガスを供給したうえで、含プラスチック廃棄物の総質量(A)と、加熱炉内に供給した過熱水蒸気の総質量(B)との質量比[(B)/(A)]を所定値以上に制御することにより、加熱炉への含プラスチック廃棄物の投入量を増加したとしても生焼けの状態にならずに熱分解が促進され、固体燃料を収率よく製造できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔5〕を提供するものである。
〔1〕加熱炉内に収容した含プラスチック廃棄物に過熱水蒸気を含むガスを供給しつつ、所定温度にて含プラスチック廃棄物を加熱する加熱工程
を含み、
加熱炉内に収容した含プラスチック廃棄物の総質量(A)と、加熱炉内に供給した過熱水蒸気の総質量(B)との質量比[(B)/(A)]が0.45以上である、
固体燃料の製造方法。
〔2〕加熱炉内の容積(C)と、加熱炉内に供給した過熱水蒸気の総体積(D)との体積比[(D)/(C)]が8.0以上である、前記〔1〕記載の固体燃料の製造方法。
〔3〕過熱水蒸気の過熱度が200K以上550K以下である、前記〔1〕又は〔2〕記載の固体燃料の製造方法。
〔4〕加熱温度が300℃以上650℃以下である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の固体燃料の製造方法。
〔5〕加熱後の含プラスチック廃棄物を破砕し、破砕物を、分級工程と、磁力選別工程、風力選別工程、比重選別工程及び渦電流選別工程から選択される1以上の物理選別工程とに供する、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の固体燃料の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱炉への含プラスチック廃棄物の投入量を増加したとしても収率よく固体燃料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の固体燃料の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の固体燃料の製造方法について詳細に説明する。本発明の固体燃料の製造方法の好適な一実施形態のフローチャートを図1に示す。
【0010】
<加熱工程>
本発明の固体燃料の製造方法は、図1に示されるように、加熱工程を行う。
加熱工程は、加熱炉内に収容した含プラスチック廃棄物を加熱する際に加熱炉内に過熱水蒸気を含むガスを供給したうえで、加熱炉内に収容した含プラスチック廃棄物の総質量(A)と、加熱炉内に供給した過熱水蒸気の総質量(B)との質量比[(B)/(A)]を所定値以上に制御することを特徴とするものである。
本発明者らは、加熱炉内での含プラスチック廃棄物への伝熱性に着目した。即ち、通常の加熱では「対流伝熱」及び「輻射伝熱」の2つの伝熱があり、主に「対流伝熱」によって行われる。これに対し、過熱水蒸気による加熱の場合は、「対流伝熱」、「輻射伝熱」及び「凝縮伝熱」の複合効果で伝熱が行われる。そして、加熱炉内の含プラスチック廃棄物を加熱する際に過熱水蒸気を供給して「凝縮伝熱」を強化したうえで、加熱炉内の含プラスチック廃棄物の総質量(A)と、加熱炉内に供給した過熱水蒸気の総質量(B)との質量比[(B)/(A)]を所定値以上に制御することで、対流伝熱における加熱が最大化される。その結果、加熱炉内への含プラスチック廃棄物の投入量を増加したとしても、含プラスチック廃棄物への入熱が速やかに達成され、生焼けの状態にならずに熱分解を促進できるため、含プラスチック廃棄物から固体燃料を収率よく製造できることを見出したものである。
【0011】
(含プラスチック廃棄物)
含プラスチック廃棄物としては、廃棄物中にプラスチックが含まれていれば特に限定されないが、例えば、シュレッダーダスト、建築廃プラスチック、農業廃プラスチック、漁業廃プラスチック、海洋廃プラスチック、工場等でのプラスチックの製造・加工時に生じる屑や不良品、事業所や一般家庭より排出される一般廃棄物、一般廃棄物を資源化施設にて破砕・選別した際に発生する残渣等を挙げることができる。ここで、本明細書において「シュレッダーダスト」とは、工業用シュレッダーで産業廃棄物又は一般廃棄物を破砕し、金属を回収した後に廃棄される破片の混合物をいう。廃棄物としては、例えば、廃自動車、廃家電、自動販売機、OA機器、家具、建具が挙げられる。シュレッダーダストの具体例としては、例えば、自動車シュレッダーダスト、廃電子基板シュレッダーダストを挙げることができる。
廃棄物中のプラスチックとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を挙げることができるが、土砂、ガラス、木くず、紙、コンクリート、陶磁器等のプラスチック以外の異物が含まれていても構わない。
なお、本工程においては、2以上の廃プラスチック廃棄物を混合しても構わない。
【0012】
廃プラスチック廃棄物の大きさは、熱分解促進の観点から、粒子径が150mm以下であることが好ましく、50mm以下が更に好ましい。ここでいう「粒子径」とは、試料がすべて通過する篩の最小の篩目で表した粒子径をいう。なお、含プラスチック廃棄物の粒子径の下限値は特に限定されない。
【0013】
加熱炉内への含プラスチック廃棄物の充填量は、加熱炉内の容積に対して、5体積%以上であるが、固体燃料の生産能力の増強の観点から、6体積%以上が好ましく、7.5体積%以上がより好ましく、9体積%以上が更に好ましい。なお、含プラスチック廃棄物の充填量の上限値は、熱分解促進の観点から、40体積%以下が好ましく、30体積%以下がより好ましく、20体積%以下が更に好ましい。
【0014】
なお、加熱工程前において、含プラスチック廃棄物の粒度調整や異物除去を目的に、前処理工程として、破砕工程、風力選別工程、分級工程、磁力選別工程、渦電流選別工程及び比重選別工程から選択される1以上の物理選別を行うことができる。なお、各物理選別工程の具体的な操作は、従来公知の方法を採用することが可能である。
【0015】
(加熱)
含プラスチック廃棄物の加熱は、加熱炉を使用することができる。加熱方式は、内熱式でも外熱式でもよく、加熱炉の種類も問わない。例えば、固定炉、ストーカー炉、ロータリーキルン炉、流動床炉、堅型炉、多段炉等を使用することができる。中でも、含プラスチック廃棄物の転動による過熱水蒸気との接触面積をより多く確保できる点、対流伝熱をより一層増強できる点、連続的な加熱が可能である点を踏まえると、外熱式ロータリーキルン炉が好ましい。
加熱炉の形状は特に限定されず、例えば、筒状、横断面矩形状等の適宜の形状を取り得る。なお、加熱炉内には、廃プラスチック廃棄物の供給部から排出部に向かって含プラスチック廃棄物を搬送するためのコンベヤを装着してもよい。
【0016】
加熱温度は、含プラスチック廃棄物に含まれる可燃成分を加熱後の固体残渣により多く分配できる点で、300℃以上が好ましく、325℃以上がより好ましく、350℃以上が更に好ましく、また廃棄物中の金属アルミニウムの融解を防止する観点から、650℃以下が好ましく、600℃以下がより好ましく、550℃以下が更に好ましい。
含プラスチック廃棄物の加熱炉内での滞留時間は、主要な樹脂材料の包括的な熱分解促進の観点から、10分以上が好ましく、20分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましく、また金属アルミニウムの融解防止の観点から、180分以下が好ましく、120分以下がより好ましく、90分以下が更に好ましい。
【0017】
(過熱水蒸気)
加熱炉内の雰囲気は、不活性雰囲気であることが必須であり、本工程では、加熱炉内を、過熱水蒸気を含むガスの雰囲気とする。
供給するガスには、過熱水蒸気以外のガスを含んでいてもよい。例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを挙げることができる。過熱水蒸気以外のガスの含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲内で適宜選択することが可能であるが、供給するガス中の過熱水蒸気の含有量は、対流伝熱の増強の観点から、90体積%以上が好ましく、95体積%以上がより好ましく、98体積%以上が更に好ましい。
【0018】
過熱水蒸気は、飽和水蒸気を発生させた後、過熱装置により飽和水蒸気を二次加熱することにより過熱水蒸気とすることができる。飽和水蒸気を発生させる装置は特に限定されず、例えば、工業用の水管ボイラや丸ボイラ等を使用することができる。なお、過熱水蒸気を得るための飽和水蒸気の温度は、一般的な低圧ボイラの温度範囲である100℃以上130℃以下が好ましい。また、セメント製造工程等で発生する工場廃熱を用いて飽和水蒸気を発生させる廃熱ボイラを使用することもできる。過熱装置の熱源は特に限定されず、例えば、燃料バーナー、高周波加熱装置が挙げられ、セメント製造工程等で発生する廃熱を利用しても構わない。
【0019】
過熱水蒸気の過熱度は、対流伝熱の増強の観点から、200K以上が好ましく、225K以上がより好ましく、250K以上が更に好ましく、そして550K以下が好ましく、500K以下がより好ましく、450K以下が更に好ましい。ここで、本明細書において「過熱度」とは、飽和水蒸気を二次加熱して所定の過熱水蒸気の温度まで上昇させる温度上昇分をいう。とりわけ、加熱炉内に供給する過熱水蒸気の温度は、加熱炉内の温度と略同一温度とすることが好ましい。過熱水蒸気の温度は、加熱炉内の温度と略同一とするために、飽和水蒸気の温度に応じて過熱度を適宜調整することができる。
【0020】
本工程においては、対流伝熱における加熱を最大化し含プラスチック廃棄物への入熱を強化して熱分解を促進するために、加熱炉内に収容した含プラスチック廃棄物の総質量(A)と、加熱炉内に供給した過熱水蒸気の総質量(B)との質量比[(B)/(A)]を0.45以上とするが、対流伝熱のより一層の増強の観点から、0.47以上が好ましく、0.49以上が更に好ましく、そして4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.0以下が更に好ましい。なお、含プラスチック廃棄物の加熱処理を連続式で行う場合、加熱炉内に収容した含プラスチック廃棄物の単位時間当たりの質量と、加熱炉内に供給した過熱水蒸気の単位時間当たりの質量に基づいて質量比[(B)/(A)]を算出することができる。
【0021】
また、対流伝熱のより一層の増強の観点から、加熱炉内の容積(C)と、加熱炉内に供給した過熱水蒸気の総体積(D)との体積比[(D)/(C)]は、8.0以上が好ましく、8.5以上がより好ましく、9.0以上が更に好ましく、そして70以下が好ましく、65以下がより好ましく、60以下が更に好ましい。
【0022】
<冷却工程>
加熱工程後、図1に示されるように、含プラスチック廃棄物を冷却することができる。
加熱後の含プラスチック廃棄物には、軟質化した樹脂成分が含まれており、このような樹脂成分の搬送時において癒着トラブルを起こすことがある。それを防止するために、加熱後の含プラスチック廃棄物を冷却する。例えば、加熱後の含プラスチック廃棄物を加熱炉からスクリューコンベヤで間接式ロータリークーラーや冷却スクリューコンベヤに搬送し冷却することができる。また、空気の存在下で加熱後の廃プラスチック廃棄物を冷却すると、着火、燃焼することがあるため、不活性ガス雰囲気下で冷却してもよい。不活性ガスとしては、上記と同様のものを挙げることができる。
【0023】
<破砕工程>
加熱工程後、図1に示されるように、加熱後の含プラスチック廃棄物を破砕することができる。これにより、加熱後の含プラスチック廃棄物に衝撃力を加えて細粒化し、固体燃料としての利用に適した粒子径に調整するとともに、被覆銅線や実装基板等のような金属と可燃成分との複合物において金属と可燃成分とを単体分離することができる。即ち、本工程の破砕は、可燃成分を固体燃料に適した形態にすることを目的とする。
破砕後の含プラスチック廃棄物の最大粒径は、10mm以上が好ましく、15mm以上が更に好ましく、そして45mm以下が好ましく、30mm以下が更に好ましい。ここで、本明細書において「最大粒径」とは、試料がすべて通過する篩の最小の目開きで表した粒径をいう。
【0024】
含プラスチック廃棄物の破砕には、破砕機を使用することができる。破砕機は、工業用の装置を使用することが可能であり、破砕方式は特に限定さないが、衝撃型破砕機が好ましい。例えば、ハンマークラッシャー、インパクトミルを挙げることができる。
本工程は、2回以上行ってもよい。2回以上行う場合には、同一又は異なる破砕機を使用することができる。なお、破砕機には、粒度調整を目的に所望の篩目のスクリーンを装着することが可能であり、スクリーンを装着しない場合には、固定歯、回転歯、内壁等を所望のクリアランスに調整してもよい。
【0025】
<分級工程・物理選別工程>
本発明においては、破砕物を、分級工程と、磁力選別工程、風力選別工程、比重選別工程、及び渦電流選別工程から選択される1以上の物理選別工程とに供することができる。これにより、破砕物から、十分な熱分解がなされ破砕により細粒化した可燃成分と、破砕により単体分離された鉄、銅等の有価金属と、陶磁器、ガラス、土砂等の無機成分とをそれぞれ個別に回収することができる。
物理選別工程は、破砕物の性状等により適宜選択することが可能であり、2以上の物理選別工程を行う場合には任意の順序で行うことが可能である。また、分級工程と、物理選別工程を行う順序も、破砕物の性状等により適宜選択することができる。例えば、破砕物に、普通鋼、強靭鋼、ステンレス等の磁着性を有する鉄鋼材料が混入している場合には、図1に示されるように、破砕物を磁力選別工程に供することが可能であり、分級工程前に行うことができる。
【0026】
(磁力選別工程)
本工程は、破砕物を磁力選別して磁着物と非磁着物に分離する工程である。これにより、磁着物として破砕により単体分離された磁性金属を除去できる。なお、磁着物は、図1に示されるように、鉄鋼原料として利用可能である。
磁力選別は、工業用の磁力選別機を用いることが可能であり、例えば、ドラム式、プーリー式及び吊下げ式のいずれでもよく、特に限定されない。
磁力選別機の表面磁束密度は、500ガウス以上が好ましく、そして10000ガウス以下が好ましい。
【0027】
(分級工程)
本工程は、破砕物を分級して篩下と篩上に分離する工程である。これにより、破砕により細粒化された可燃成分を篩下の細粉として、破砕により単体分離された有価金属や無機成分等を篩上の粗紛として回収することができる。篩下として回収された細粉については固体燃料として使用可能である。また、粗紛についてはセメント主要成分であるケイ素を多く含む場合にはセメント原料として、有価金属を多く含む場合は非鉄精錬原料として有効活用できる。
本工程においては、分級機を使用することができる。分級機の形式は特に限定せず、気流式分級機や篩機等の工業用の装置を使用することができる。例えば、サイクロン、円筒振動篩、トロンメル、波動式篩を挙げることができる。
分級工程における分級径は、細粒化された可燃成分を篩下として回収する観点から、0.3mm以上が好ましく、そして10mm以下が好ましい。
【0028】
(風力選別工程)
本工程は、破砕物を風力選別し、軽量物と重量物とに分離する工程である。これにより、破砕物に陶磁器、ガラス、土砂等の無機成分が混入している場合に、これらを重量物として除去することができる。
本工程においては、風力選別機を使用することができる。風力選別機は、工業用の装置を使用することが可能であり、方式は特に限定されない。例えば、ジグザグ式風力選別機、内部循環式風力選別機を挙げることができる。
風力選別の風速は、軽量物への金属、ガラス等の非可燃成分の混入防止の観点から、5m/sec以上が好ましく、そして25m/sec以下が好ましい。
【0029】
(比重選別工程)
本工程は、破砕物を比重選別し、重比重物と軽比重物とに選別する工程である。これにより、破砕物に単体分離された有価金属、ガラス、土砂等の無機成分が混入している場合に、これらを重比重物として除去することができる。
本工程では、比重選別機を使用することができる。比重選別機としては、工業用の装置であれば特に限定されず、乾式及び湿式のいずれでも構わない。例えば、エアテーブル式比重選別機、重液選別機、流動層選別機、ジグ選別機、薄流選別機を挙げることができる。
【0030】
(渦電流選別工程)
本工程は、破砕物を渦電流選別する工程である。これにより、破砕物に単体分離された非鉄金属が混入している場合に、これらを除去することができる。
渦電流選別は、渦電流選別機を使用することができる。渦電流選別機は、工業用の装置を使用することが可能であり、例えば、回転磁石式、直行ベルトコンベヤ式及び回転円筒式のいずれでもよく、特に限定されない。
回転磁石体の回転数は、非鉄金属除去の観点から、1500rpm以上が好ましく、そして5000rpm以下が好ましい。
【実施例0031】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0032】
1.実施例で使用した原料及び装置
(1)原料
含プラスチック廃棄物として、電化製品・家具等を解体・破砕して回収されたシュレッダーダストを用い、そのうちの目開き30mm篩を通過したものを原料として使用した。
(2)加熱炉
箱型電気炉(炉内容積9.0L)を使用した。なお、加熱処理物の冷却には窒素を封入した保管容器を使用した。
(3)破砕機
ハンマークラッシャーを使用し、開口径20mmのスクリーンを装着した。
(4)磁力選別機
表面磁束密度が2000ガウスであるドラム式磁力選別機を使用した。
(5)分級機
篩目8mmに設定した円筒振動篩を使用した。
【0033】
実施例1
<加熱工程>
炉内温度335℃の箱型電気炉に炉内温度と同一温度の過熱水蒸気を炉内に吹込んで炉内雰囲気を不活性化し、炉内の原料を加熱した。炉内の原料充填率は、6.7体積%であり、原料の炉内滞留時間は60分であった。また、(A)炉内に収容した原料の総質量と、(B)炉内に供給した過熱水蒸気の総質量との質量比[(B)/(A)]は0.50であり、(C)炉内の容積と、(D)炉内に供給した過熱水蒸気の総体積との体積比[(D)/(C)]は9.2であった。
<冷却工程>
加熱後の原料を、窒素を封入した保管容器内に静置し、室温になるまで冷却した。
<破砕工程>
冷却後の原料を、ハンマークラッシャーを使用して破砕した。なお、ハンマークラッシャーには開口径20mmのスクリーンを装着した。
<磁力選別工程>
破砕物を、表面磁束密度が2000ガウスのドラム式磁力選別機により磁力選別し、鉄鋼材料を回収した。
<分級工程>
磁力選別後の破砕物を、篩目8mmに設定した円筒振動篩を用いて分級し、細粒化された可燃成分を篩下、未分解の可燃成分と非鉄金属を篩上として分離し、篩下を固体燃料として回収した。
【0034】
実施例2
炉内温度を388℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により固体燃料を回収した。
【0035】
実施例3
炉内の原料充填率を10.0体積%、質量比[(B)/(A)]を0.67、体積比[(D)/(C)]を18.5に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により固体燃料を回収した。
【0036】
実施例4
炉内の原料充填率を10.0体積%、質量比[(B)/(A)]を0.67、体積比[(D)/(C)]を18.5に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作により固体燃料を回収した。
【0037】
実施例5
炉内の原料充填率を8.3体積%、質量比[(B)/(A)]を0.80、体積比[(D)/(C)]を18.5に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により固体燃料を回収した。
【0038】
実施例6
質量比[(B)/(A)]を1.00、体積比[(D)/(C)]を18.5に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により固体燃料を回収した。
【0039】
実施例7
炉内の原料充填率を10.0体積%、質量比[(B)/(A)]を1.33、体積比[(D)/(C)]を37.5に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により固体燃料を回収した。
【0040】
実施例8
炉内の原料充填率を10.0体積%、質量比[(B)/(A)]を2.67、体積比[(D)/(C)]を55.4に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により固体燃料を回収した。
【0041】
比較例1
過熱水蒸気に替えて、窒素を炉内に吹込み加熱工程を行ったこと以外は、実施例3と同様の操作により固体燃料を回収した。
【0042】
比較例2
過熱水蒸気に替えて、窒素を炉内に吹込み加熱工程を行ったこと以外は、実施例4と同様の操作により固体燃料を回収した。
【0043】
比較例3
炉内の原料充填率を10.0体積%、質量比[(B)/(A)]を0.17、体積比[(D)/(C)]を4.6に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により固体燃料を回収した。
【0044】
比較例4
質量比[(B)/(A)]を0.25、体積比[(D)/(C)]を4.6に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により固体燃料を回収した。
【0045】
比較例5
炉内の原料充填率を10.0体積%、質量比[(B)/(A)]を0.33、体積比[(D)/(C)]を9.2に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により固体燃料を回収した。
【0046】
比較例6
炉内の原料充填率を8.3体積%、質量比[(B)/(A)]を0.40、体積比[(D)/(C)]を9.2に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により固体燃料を回収した。
【0047】
実施例1~8及び比較例1~6で採用した固体燃料の製造条件を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例1~8及び比較例1~6で得られた固体燃料について、次の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0050】
<評価>
1.目視評価
加熱工程において充分な熱分解が進行したか否かを判断するため、加熱した試料を冷却した後、破砕工程前に、その外観について下記の基準にて目視評価を実施した。
【0051】
(評価基準)
〇:黒色又は暗褐色に変色している
△:明褐色に変色している
×:加熱前の原料の彩色が残存している
【0052】
2.重量減少率の評価
加熱工程において充分な熱分解が進行したか否かを判断するため、加熱した原料を冷却した後に質量を測定し、その質量と加熱前の原料の質量とから重量減少率を下記式(i)にて算出した。
【0053】
重量減少率(%)=(A-B)÷A×100 (i)
〔式(i)中、Aは加熱前の原料の質量(g)を示し、Bは加熱後の原料の質量(g)を示す。〕
【0054】
3.8mm篩通過率の評価
加熱工程において充分な熱分解が進行したか否かを判断するため、加熱した原料を冷却した後、冷却後の原料について目開き8mmの篩の通過率を評価した。
加熱した原料を冷却した後、JIS Z 8801適合篩にて分級して篩目8mmを通過したものの質量を測定し、加熱後の原料の質量に対する百分率を下記式(ii)にて算出した。
【0055】
8mm篩通過率(質量%)=C÷D×100 (ii)
〔式(ii)中、Cは8mm篩を通過したものの質量(g)を示し、Dは加熱後の原料の質量(g)を示す。〕
【0056】
4.総発熱量の分析
加熱した原料の総発熱量について、JIS M 8814に準拠して測定した。
【0057】
5.固体燃料収率の算出
各実施例及び比較例で得られた固体燃料の回収効率を評価するために、篩下(固体燃料)にて回収される可燃分の収率を以下の手順にしたがって評価した。
(1)質量分配率の測定
各実施例及び比較例で回収された磁着物、篩上及び篩下について、それぞれの回収量を加熱後の原料の質量に対する百分率を下記式(iii)にて算出した。
【0058】
質量分配率(質量%)=E÷F×100 (iii)
〔式(iii)中、Eは各産物の回収質量(g)を示し、Fは加熱後の原料の質量(g)を示す。〕
【0059】
(2)可燃分測定
各実施例及び比較例で回収された磁着物、篩上及び篩下について、それぞれJIS M 8812に準拠して灰分・揮発分・固定炭素量を定量し、揮発分と固定炭素量を合算した値を無水試料ベースで算出し、これを可燃分量とした。なお、破砕選別前の加熱した試料の可燃分量については各産物の結果から積み上げ式で下記式(iv)により算出した。
【0060】
加熱した試料の可燃分量(質量%)=(G×H+I×J+K×L)/100 (iv)
〔式(iv)中、Gは篩上可燃分量(質量%)を示し、Hは篩上質量分配率(質量%)を示し、Iは篩下可燃分量(質量%)を示し、Jは篩下質量分配率(質量%)を示し、Kは磁着物可燃分量(質量%)を示し、Lは磁着物質量分配率(質量%)を示す。〕
【0061】
(3)固体燃料の収率
(1)及び(2)にて分析した質量分配率と可燃分量より、下記式(v)により固体燃料の収率を求めた。
固体燃料の収率(質量%)=M×N÷P (v)
〔式(v)中、Mは篩下質量分配率(質量%)を示し、Nは篩下可燃分量(質量%)を示し、Pは加熱後の原料の可燃分量(質量%)を示す。〕
【0062】
【表2】
【0063】
表2から、実施例はいずれにも充分な熱分解が進行したことがわかる。また、実施例はいずれも固体燃料の収率が90質量%を超えており、加熱炉への含プラスチック廃棄物の投入量を増加したとしても収率よく固体燃料を製造できることがわかる。
図1