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  • 特開-外用医薬組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122448
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】外用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/573 20060101AFI20240902BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240902BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240902BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240902BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240902BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240902BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240902BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20240902BHJP
   A61K 31/592 20060101ALI20240902BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240902BHJP
   C07J 5/00 20060101ALN20240902BHJP
   C07J 71/00 20060101ALN20240902BHJP
【FI】
A61K31/573
A61P17/00
A61P29/00
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/70 401
A61K9/70 405
A61K31/58
A61K31/592
A61P43/00 121
C07J5/00
C07J71/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029987
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000150028
【氏名又は名称】株式会社池田模範堂
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】河田 仁史
(72)【発明者】
【氏名】本領 智
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C091
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC04
4C076CC18
4C076DD09
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD43Z
4C076DD45
4C076DD47
4C076DD50Z
4C076EE09
4C076EE23
4C076FF11
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086DA12
4C086DA15
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA28
4C086MA32
4C086MA63
4C086NA05
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZC75
4C091AA01
4C091BB03
4C091BB05
4C091CC01
4C091DD01
4C091EE07
4C091FF01
4C091FF04
4C091FF13
4C091GG01
4C091HH01
4C091HH03
4C091JJ03
4C091KK02
4C091KK12
4C091LL01
4C091MM03
4C091NN01
4C091NN12
4C091PA03
4C091PA05
4C091PA09
4C091PB02
4C091QQ01
4C091QQ07
4C091QQ15
(57)【要約】
【課題】ステロイドを配合した外用医薬組成物、特に、金属を原因とするアレルギー性接触性皮膚炎を治療又は予防する効果に優れる外用医薬組成物を提供すること。
【解決手段】ステロイド及びエルゴカルシフェロールを含み、pHが3~7の範囲内にある、外用医薬組成物を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステロイド及びエルゴカルシフェロールを含み、pHが3~7の範囲内にある、外用医薬組成物。
【請求項2】
ステロイドが、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、ベタメタゾン、クロベタゾンおよびそのエステル類からなる群から選択される1つ以上の化合物である、請求項1記載の外用医薬組成物。
【請求項3】
皮膚疾患を治療又は予防するための、請求項1又は2に記載の外用医薬組成物。
【請求項4】
金属を原因とするアレルギー性接触性皮膚炎を治療又は予防するための、請求項1又は2に記載の外用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用医薬組成物に関する。特には、皮膚疾患、例えば、金属を原因とするアレルギー性接触性皮膚炎(金属アレルギー)の諸症状に効果的な外用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚疾患は、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、ウイルス性皮膚炎、化学物質や金属を原因とする皮膚炎など、多岐にわたっている。近年、ファッションの多様化により、ネックレス、腕時計、指輪、下着の金具、メガネ、ベルトなどに含まれる金属が肌に接触することで発症する金属アレルギーが多くなっており、アレルギーの主な金属アレルゲンとしては、ニッケル、クロム、コバルト、水銀、金などが知られている。
金属アレルギーは、固体のままの金属が接触して起こるのではなく、ナノ化した金属がハプテンとなり、経皮的に浸入後、表皮中の自己蛋白質(担体)と結合し完全抗体となって感作が成立することから、アレルギー症状を引き起こす金属を使用しないで他の金属に変換した製品にするなどの対応が一般に行われてきている。(特許文献1)
【0003】
一方で、金属アレルギーの対応、処置については、抗炎症剤、抗生物質、紫外線療法等が知られており、特にステロイド剤がよく用いられる。しかしながら、ニッケルを原因とする金属アレルギーでは、IL-17およびそれを放出するTh17が主に関与している炎症であると報告されており、Th17はステロイド抵抗性にも関与していると言われている。従って、これら対症療法では、上記金属アレルギーの症状が一時的に軽快することはあるが、金属アレルギーの症状を治癒させることは難しかった。(非特許文献1及び2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-178805号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Jennifer K Chen, Jacob P. Thyssen、「Metal Allergy: From Dermatitis to Implant and Device Failure」、Springer、2018年、90-92頁
【非特許文献2】中島 裕史、「IL-17ファミリーサイトカインとアレルギー」、2013年、62巻7号、822-826頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
皮膚疾患の治療又は予防のための外用薬は、様々な種類の外用薬が市場で入手可能である一方で、より効果の高い外用薬に対する需要は依然として存在する。特に、金属を原因とするアレルギー性接触性皮膚炎(金属アレルギー)に代表されるTh17が関与している炎症にも効果的な医薬組成物を提供することは大きな需要が存在する。
本発明は、上記のような外用医薬組成物を提供すること、特に、皮膚疾患を治療又は予防すること、なかでも金属アレルギーの問題を解決することを目的とする。本発明は、また、ステロイドのみでは治療又は予防が難しかったTh17が関与する炎症に対しても有効な外用医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究した結果、ステロイドに加え、エルゴカルシフェロールを配合することにより、皮膚疾患を治療又は予防できること、特に、金属を原因とするアレルギー性接触性皮膚炎(金属アレルギー)を有効に治療又は予防できることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外用医薬組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、皮膚疾患を治療又は予防することができる。
さらに、本発明によれば、ステロイドにおいて金属を原因とするアレルギー性接触性皮膚炎(金属アレルギー)の治療効果に優れる外用医薬組成物を提供することができる。
特に、本発明によれば、Th17が関与している炎症においても十分な効果を示すことができ、金属を原因とするアレルギー性接触性皮膚炎(金属アレルギー)疾患に対して高い治療効果又は予防効果を発揮することのできる外用医薬組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1と比較例1の耳介厚増加値(mm)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、発明を実施するための形態を詳説するが、以下で例示する好ましい態様やより好ましい態様等は、「好ましい」や「より好ましい」等の表現にかかわらず適宜相互に組み合わせて使用することができる。また、数値範囲の記載は例示であって、各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。さらに、「含有する」又は「含む」等の用語は、「本質的になる」や「のみからなる」と読み替えてもよい。
【0011】
<<外用医薬組成物>>
本発明の外用医薬組成物は、ステロイド及びエルゴカルシフェロールを含む、外用医薬組成物である。以下、各成分及び特性等について説明する。
【0012】
<ステロイド>
本発明の外用医薬組成物は、ステロイドを含む。
本発明において使用されるステロイドは、ステロイド剤とも呼ばれ、その種類に特に制限はなく、従来知られている種々のステロイドを用いることができる。ステロイドとしては、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、ベタメタゾン、クロベタゾンおよびそのエステル類等が挙げられる。エステル類の具体例としては、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、デキサメタゾン酢酸エステル、ベタメタゾン吉草酸エステル、クロベタゾン酪酸エステルが挙げられる。
ステロイドは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本発明の外用医薬組成物に含まれるステロイドの量に特に制限はなく、使用するステロイドの種類、用途及び剤形等に応じて適宜調整すればよい。例えば、ステロイドの含有量は、外用医薬組成物中に、例えば0.001~2質量%の量、好ましくは0.005~1.0質量%の量、より好ましくは0.01~0.8質量%、さらに好ましくは0.02~0.5質量%で含まれていてもよい。
【0014】
<エルゴカルシフェロール>
本発明の外用医薬組成物は、エルゴカルシフェロールを含む。本発明は、ステロイドを配合した外用医薬組成物においてエルゴカルシフェロールをさらに用いることにより、ステロイドの薬効を高めることができる。エルゴカルシフェロールは、以下で示される化合物であり、ビタミンD2とも呼ばれる。
【0015】
本発明の外用医薬組成物に含まれるエルゴカルシフェロールの量に特に制限はなく、使用する用途や剤形に応じて適宜調整すればよい。外用医薬組成物中に、例えば0.00005~0.01質量%の量、好ましくは0.0001~0.005質量%、より好ましくは0.0002~0.003質量%、さらに好ましくは0.00025~0.0025質量%で含まれていてもよい。
【0016】
<pH>
本発明における外用医薬組成物は、外用医薬組成物の安定性及び薬効から見て、pHが3~7であることが適当である。pHは、3.0~7.0であることが好ましく、4.5~6.5であることがより好ましい。
【0017】
<pH調整剤及び/又は緩衝剤>
本発明の外用医薬組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内でpH調整剤及び/又は緩衝剤を含んでいてもよい。pH調整剤及び/又は緩衝剤の種類に特に制限はなく、種々のpH調整剤及び/又は緩衝剤を用いることができる。pH調整剤及び/又は緩衝剤の例としては、塩酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、ソルビン酸、乳酸、マレイン酸、硫酸、リン酸、リンゴ酸、アルギニン、アンモニア、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及び水酸化ナトリウム又はそれらの塩が挙げられる。これらの化合物にはpH調整剤としても、緩衝剤としても作用するものも存在する。
【0018】
<用途>
本発明の外用医薬組成物は、皮膚疾患を治療又は予防することができる。また、本発明の外用医薬組成物は、金属を原因とするアレルギー性接触性皮膚炎(金属アレルギー)の治療又は予防効果に優れる外用医薬組成物を提供することができる。特に、ステロイドのみでは所望の治療又は予防が難しかった、Th17が関与する炎症においても、当該炎症による皮膚疾患を治療(皮膚疾患を改善することを含む)又は予防するために、本発明の外用医薬組成物を好ましく用いることができる。ここでTh17はCD4+ヘルパーT細胞の一つであり、IL-17、IL-21、IL-22及びTNF-α等の炎症性サイトカインを放出して、炎症を誘導することが知られている。加えて、金属を原因とするアレルギー性接触性皮膚炎(金属アレルギー)疾患に対して高い治療効果又は予防効果を得るために、本発明の外用医薬組成物を好ましく用いることができる。
【0019】
<剤形>
本発明の医薬組成物は、「外用」である限り、特にその剤形に制限はなく、種々の剤形を採用することができる。外用医薬とは、皮膚の表面や粘膜に塗布、貼付などにより適用して使用する医薬をいう。
本発明の外用医薬組成物の適用部位としては、皮膚(頭皮を含む)や粘膜などが挙げられ、なかでも皮膚が好ましく、皮膚疾患を伴う部位に特に好適に適用することができる。本発明の外用医薬組成物は、局所皮膚適用製剤であることが好ましい。
本発明における外用医薬組成物の形態としては、軟膏剤、乳剤、クリーム剤、ジェル剤、貼付剤、パップ剤、テープ剤、および液剤の剤形が含まれる。本発明の外用医薬組成物は、有効成分と、各種剤形に適した任意の基剤成分と、その他任意の成分とを配合することにより所望の剤形の製剤を調製することができる。
【0020】
本発明により軟膏剤、乳剤及びクリーム剤を調製する場合には、基剤としての目的に使用される従来から公知の物質のいずれも用いることができる。そのような基剤の例には、白色ワセリン、ゲル化炭化水素、パラフィン、流動パラフィン、αオレフィンオリゴマー、マイクロクリスタリンワックス及びスクワラン等の炭化水素;アボカド油、アルモンド油、オリーブ油、ゴマ油、カカオ脂、パーム油、硬化油、硬化ヒマシ油等の油脂類;ミツロウ、カルナウバロウ、鯨ロウ、ラノリン、液状ラノリン、水添ラノリン、硬質ラノリン、キャンデリラロウ等のロウ類;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、トール油、ラノリン脂肪酸、イソステアリン酸等の脂肪酸誘導体;2-ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール等の高級アルコール類、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ポリエステル、オレイン酸デシル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルデシル、ラウリン酸ヘキシル、リノール酸イソプロピル、リノール酸エチルモノステアリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、2‐エチルヘキサン酸セチル等のエステル類、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トリイソオクタン酸グリセリン、トリアセチン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン等の多価アルコール脂肪酸類;ステアリン酸、ミリスチン酸及びオレイン酸等の高級脂肪酸;セタノール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコール等の高級脂肪アルコール;カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリル化デンプン300、ポリビニルピロリドン及びヒアルロン酸ナトリウム等の高分子化合物;グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール及びマクロゴール400等の多価アルコール;塩化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及びエデト酸ナトリウム等の安定化剤;メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウム等の防腐剤;尿素、ショ糖、D-ソルビトール及び乳酸等の保湿剤;モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、テトラステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテル等非イオン性界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム及びセチル硫酸ナトリウム等のイオン性界面活性剤等が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
ジェル剤、液剤を調製する場合の基剤としては、そのような目的に使用される物質のいずれも用いることができる。そのような基剤の例には、軟膏剤、乳剤及びクリーム剤を調製する場合と同様な炭化水素、炭素数12以上の高級脂肪酸、炭素数12以上の高級脂肪アルコール、脂肪酸エステル油、多価アルコール脂肪酸エステル、高分子化合物、多価アルコール、pH調節剤、安定化剤及び保湿剤の他に、エタノール及びイソプロパノール等の低級アルコール等が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
軟膏剤、乳剤、クリーム剤、ジェル剤及び液剤を調製する場合は、上記成分及び水等の媒体を混合して調製するが、その配合割合に特に制限はなく、例えば、水0~80質量%、炭化水素0~99質量%、炭素数12以上の高級脂肪酸0~25質量%、炭素数12以上の高級脂肪アルコール0~25質量%、脂肪酸エステル油0~50質量%、多価アルコール脂肪酸エステル0~30質量%、高分子化合物0~10質量%、多価アルコール0~30質量%、安定化剤0~10質量%、防腐剤0~5質量%、保湿剤0~40質量%及び界面活性剤0~10質量%である。ジェル剤、液剤及びエアゾール剤を調製する場合、上記成分及び水等の媒体を混合して調製するが、その配合割合に特に制限はなく、例えば、水0~80質量%、炭化水素0~99質量%、炭素数12以上の高級脂肪酸0~25質量%、炭素数12以上の高級脂肪アルコール0~25質量%、脂肪酸エステル油0~50質量%、多価アルコール脂肪酸エステル0~30質量%、高分子化合物0~10質量%、多価アルコール0~30質量%、pH調整剤0~10質量%、安定化剤0~10質量%、防腐剤0~5質量%、保湿剤0~40質量%、界面活性剤0~10質量%及び0~80質量%である。
【0023】
<他の薬物>
本発明の外用医薬組成物には、本発明の効果を妨げない限りにおいて、ステロイド及びエルゴカルシフェロール以外の有効成分として、他の薬物を配合することができる。そのような他の薬物には、例えば、ブフェキサマク、ウフェナマート、イブプロフェンピコノール、インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェン、ピロキシカム、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸及びその塩類、トウキエキス及びシコンエキス等の非ステロイド系抗炎症剤;レチノール酢酸エステル、レチノールパルミチン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、トコフェロール酢酸エステル等の脂溶性ビタミン剤;アスコルビン酸、ピリドキシン塩酸塩、ニコチン酸アミド等の水溶性ビタミン剤:イソプロピルメチルフェノール、クロルヘキシジン塩酸塩、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、セトリミド等の殺菌剤;リドカイン及びその塩類、ジブカイン及びその塩類、プロカイン及びその塩類、テトラカイン及びその塩類、アミノ安息香酸エチル等の局所麻酔剤;l-メントール、dl-カンフル、ハッカ油及びボルネオール等の清涼化剤;ナファゾリン塩酸塩、テトラヒドロゾリン塩酸塩及びメチルエフェドリン塩酸塩等の血管収縮剤;ニコチン酸ベンジル、ノニル酸ワニリルアミド及びトウガラシチンキ等の引赤剤等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0024】
軟膏剤、乳剤、クリーム剤、ジェル剤、液剤及びエアゾール剤等の各種剤形の本発明の外用医薬組成物を調製する方法は、特に限定されず、一般に知られる調製方法を用い、本発明の外用医薬組成物を調製することができる。
【0025】
本発明の外用医薬組成物の使用量並びに用法は、特に制限されるものではなく、種々の症状・疾患の治療に用いられている従来の医薬品、医薬部外品の通常量で用いることができる。具体的な使用量としては、例えば金属を原因とするアレルギー性接触性皮膚炎(金属アレルギー)を治療するのに効果を発揮する1日有効量を、1日に1回または複数回に分けて、疾患患部に塗布することができる。
具体的な用法としては、皮膚疾患を治療(皮膚疾患を改善することを含む)又は予防するために使用することができる。なかでも、アレルギー性接触皮膚炎を治療又は予防するために好ましく用いることができる。これらのアレルギー性接触皮膚炎の中でも、金属を原因とするアレルギー性接触性皮膚炎(金属アレルギー)を治療又は予防するために特に好ましく用いることができる。
【0026】
本発明の薬剤等の有効性は、適切な動物モデルを用いて評価することや適切な被験者での臨床試験やユーステストで評価することができる。例えば、金属アレルギーモデル(Toshiro Hirai,Metal nanoparticles in the presence oflipopolysaccharides trigger the onset ofmetal allergy in mice, Nature Nanotechnology volume 11, 808-816頁 (2016年))は、金属ナノ粒子を投与したマウスに、再度同じ金属ナノ粒子あるいは金属イオンを投与し、起こる炎症応答の悪化を指標として、タンパク質のプロテオーム解析、mRNA測定、耳介浮腫抑制試験などにより、金属アレルギーに対する各組成物の有効性を評価することができる。具体的には、以下の実施例で使用する6週齢のマウス(BALB/c、雌性)に銀ナノ粒子を投与し、銀ナノ粒子に対する感作を成立させ、金属アレルギーの症状を示す金属アレルギーモデルの利用が挙げられる。
【0027】
以下、実施例及び比較例を含む各種試験例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記試験例に制限されるものではない。
【実施例0028】
<<試験例1>>
<プロテオーム解析による評価>
表1記載の処方に従って、各成分を混合し、比較例1~3及び実施例1の組成物を調製した。得られた比較例1~3及び実施例1の各組成物を用いて、以下に示す金属アレルギーモデルに適用し、プロテオーム解析を行い、Th17の下流の炎症性バイオメディエータ―であるS100A8、S100A9のタンパク発現量を薬理効果として評価した。
結果を表1に示す。
【0029】
1.金属アレルギー試験用の銀ナノ粒子入りグルコース水溶液の準備
試験で利用する銀ナノ粒子は、グルコース水溶液として利用した。当該銀ナノ粒子入りグルコース水溶液は、銀ナノ粒子(BioPure Silver Nanospheres-Bare(Citrate)AGCB10、nanoComposix社製、lot.IAD0067)を800μg準備し、これに50%グルコース水溶液(ブドウ糖注射液「フソー」lot.20104C)100μL加え、さらにリポポリサッカライド(Sigma-Aldrich、Batch#0000119070)10μgを加え、銀ナノ粒子のグルコース水溶液とした。
2.銀ナノ粒子入りグルコース水溶液を用いた金属アレルギーモデルの準備
6週齢のマウス(BALB/c、雌性)の両足足底部に20μLずつ、上記1で得た銀ナノ粒子入りグルコース水溶液を皮内投与した。この操作を7日に1回、1週間ごとに4回行い、感作を成立させた。4回目の操作から1週間後、左耳介厚を測定(0時間値)した後に上記1で得た銀ナノ粒子入りグルコース水溶液を10μL皮内投与し、起炎処置を行った。起炎処置から72時間後に表1記載の比較例1~3、実施例1の組成物10μLを左耳介内側に適用した。
3.金属アレルギーモデルによる検体の準備
96時間後に左耳介を0.5cm×0.5cm採取し、PTSバッファーの細胞溶解液中でホモゲナイズし、95℃で5分保持し超音波破砕機で溶解処理した。得られた試料をBCAタンパク質アッセイし総タンパク量20μgを検体とした。
【0030】
4.プロテオーム解析
TMTラベルを用いたリン酸化プロテオーム解析を行った。「3.金属アレルギーモデルによる検体の準備」で取得した検体20μgを酵素処理(トリプシン+Lys-C)し、Fe-IMACを用いリン酸化ペブチドの精製を行った上で、安定同位体標識 Tandem Mass Tag(TMT)標識を行い、TMT標識ペプチドを精製し、LC-MS/MS分析後にソフト解析(Proteome Discoverer、Thermo Fisher Scientific製)を行い、検体中のタンパク質の同定を行うとともに、検体中の各ペプチドレベルを、同一サンプル中のペプチドレベルに対して比較を行い、相対存在量(比)として測定した。表1記載の比較例1~3、実施例1を用いた検体から得られた、炎症性バイオメディエータ―であるS100A8、S100A9の相対存在比を比較し、相対存在比が減少すれば金属アレルギーによる炎症の抑制を示唆している。
【0031】
【表1】
【0032】
<表1の結果>
表1から明らかなように、コントロールである比較例1~3と比較して、実施例1ではS100A8及びS100A9の相対存在比が減少しており、発現量抑制が示された。比較例2のS100A8の相対存在比はほぼ変化せず、有効な発現量抑制が示されておらず、ステロイドのTh17が関係する炎症への抑制効果が不十分である事が確認できる。
驚くべきことに本願発明のステロイドとエルゴカルシフェロールとを組み合わせた組成物を用いることによって、より炎症を抑制する効果が示されており、金属アレルギーに対する本発明の優れた効果が示された。
【0033】
<<試験例2>>
<金属アレルギーモデルによる耳介浮腫抑制試験>
表1に記載の処方に従って、各成分を混合し、比較例1及び実施例1の組成物を調製した。得られた各組成物を用いて、以下の(1)~(4)に示す手順で金属アレルギーモデルによる耳介浮腫抑制試験を行い、各組成物の薬理効果を評価した。
【0034】
金属アレルギーモデルによる耳介浮腫抑制試験は、金属アレルギーモデルに銀ナノ粒子を適用し金属アレルギーを発症させ、適用前後の耳介の浮腫の差を金属アレルギーの指標とするものであり、薬剤の投与により浮腫が抑制されることを評価することにより、金属アレルギーへの効果を評価するものである。結果を図1に示す。
【0035】
(1)6週齢のマウス(BALB/c,雌性)(N=6)の両足足底部に20μLずつ、上記1で得た銀ナノ粒子入りグルコース水溶液を皮内投与した。この操作を7日に1回、1週間ごとに4回行い、感作を成立させた。
(2)(1)の4回目の操作から1週間後、左耳介厚を測定(0時間値)した後に上記1で得た銀ナノ粒子入りグルコース水溶液を10μLずつ皮内投与した(惹起)。
(3)惹起後48時間に左耳介内側から10μL組成物を適用した。
(4)惹起後96時間の左耳介厚を測定した。
【0036】
図1の結果>
図1から明らかなように、コントロールである比較例1と比較して、実施例1では有意な耳介浮腫抑制を示した。ステロイドとエルゴカルシフェロールを組み合わせた組成物を用いることにで、より炎症を抑制する効果が示されており、金属アレルギーに対する本発明の優れた効果が示された。
【0037】
<<試験例3>>
<薬効の評価:ユーステスト>
本発明の外用医薬組成物の有効性を評価するため、(a)年齢20~69歳の男女、(b)本試験に不適当と考えられる皮膚疾患等の既往歴のない者、(c)本試験に不適当と考えられる薬物等に対するアレルギー症等がない者、(d)試験期間にから1年以内に金属アクセサリーを発症した経験があり、本発明の外用医薬組成物以外の既存薬剤(ステロイド等)で治療経験がある者、及び(e)試験期間に金属アクセサリー等の金属製品を身に着ける意思のある者、を被験者して選択し、そのうち23~25名について、表2の実施例2~6に示した外用医薬組成物に関する表3~6に示した評価を行った。なお、以下に示す、種々の疾患のモニターあるいは被験者によるユーステストなどの試験は、各人の同意を取ると同時に、インフォームドコンセントなどの所定の手続きを経た上で実施した。
【0038】
【表2】

*なお、pH以外の数値の単位は質量%
【0039】
被験者は、金属アレルギーを発症した場合、表2に記載の処方に従って、各成分を混合した実施例2の組成物を、効果を発揮する有効量を、1日に1回または複数回に分けて疾患幹部に塗布するとともに記録をつけ、完治するごとに金属アレルギー疾患の特徴である「かゆみ」「赤み」「皮膚状態(ガサガサな皮膚)」について治療効果を評価した(表3~5)。ここで、各評価の「効いた」とは、かゆみ、赤身、及び皮膚がガサガサな状態が、改善された(なくなった)状態をいい、「効かなかった」とは、かゆみ、赤身、及び皮膚がガサガサな状態が、改善されなかった(変化がなかった)ことをいい、被験者個人間の評価に差が無いように確認しながら評価を行なった。また、試験期間終了時に「効果の満足度」についても評価した(表6)。なお、表3~6並びに本明細書中、Nは被験者数を意味する。
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】
表3、4及び5からも明らかなように、本発明の外用医薬組成物は、かゆみ、赤みや皮膚症状への効果が高く、更に表6からも金属を原因とするアレルギー性接触性皮膚炎(金属アレルギー)に対する治療効果への患者の満足度も高いことが示された。
【0045】
試験例1、2及び3の結果から、本発明の外用医薬組成物は、金属を原因とするアレルギー性接触性皮膚炎(金属アレルギー)の諸症状に対して優れた有効性を示すことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の外用医薬組成物は、皮膚疾患を治療又は予防すること、特に、金属を原因とするアレルギー性接触性皮膚炎(金属アレルギー)の諸症状を治療又は予防することができる。したがって、本発明は、産業上、極めて有用である。
図1