IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

特開2024-122453変性ポリビニルアセタール樹脂、及び、蓄電池電極用組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122453
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】変性ポリビニルアセタール樹脂、及び、蓄電池電極用組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 16/38 20060101AFI20240902BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240902BHJP
   C08F 8/48 20060101ALI20240902BHJP
   C08L 29/14 20060101ALI20240902BHJP
   C08L 27/16 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C08F16/38
H01M4/62 Z
C08F8/48
C08L29/14
C08L27/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030003
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】竹中 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 潤
(72)【発明者】
【氏名】浅羽 祐太郎
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
5H050
【Fターム(参考)】
4J002BD14X
4J002BE061
4J002BE06W
4J002DA026
4J002DA036
4J002DC006
4J002DE056
4J002DH046
4J002FD116
4J002GQ00
4J002GQ02
4J002HA05
4J002HA08
4J100AD02P
4J100AF16P
4J100BB01H
4J100BB01P
4J100CA01
4J100CA03
4J100CA31
4J100DA30
4J100FA19
4J100HA43
4J100HB25
4J100HC04
4J100HC16
4J100HC19
4J100HE12
4J100JA43
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050DA11
5H050EA23
5H050HA02
5H050HA08
(57)【要約】
【課題】本発明は、塗工性、結着性、経時安定性に優れるとともに、蓄電池の電極に用いた場合に電解液への耐性が高く、柔軟性に優れる電極が得られ、高出力の蓄電池を作製することが可能な変性ポリビニルアセタール樹脂、並びに、該変性ポリビニルアセタール樹脂を用いた蓄電池電極用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、塩素原子を有する構成単位を含み、水酸基量が55モル%以上である、変性ポリビニルアセタール樹脂である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素原子を有する構成単位を含み、水酸基量が55モル%以上である、変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項2】
水酸基量が95モル%以下である、請求項1記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項3】
塩素原子を有する構成単位を0.1モル%以上含有する、請求項1又は2記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項4】
塩素原子を有する構成単位を35モル%以下含有する、請求項1又は2記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項5】
塩素原子を有する構成単位は、塩素原子がアセタール結合を介して結合した構造である、請求項1又は2記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項6】
塩素原子を有する構成単位は、下記式(1)で表される構造を有する、請求項5記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【化1】
式(1)中、Rは塩素原子又はクロロアルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子又は塩素原子を表す。
【請求項7】
式(1)において、Rが塩素原子、-CHCl又は-CHCHClである、請求項6記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項8】
塩素原子を有する構成単位は、下記式(2)で表される構造を有する、請求項1又は2記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【化2】
式(2)中、Rは単結合又はアルキレン基を表し、Rは水素原子、塩素原子又はクロロアルキル基を表す。
【請求項9】
重合度が200~5000である、請求項1又は2記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項10】
水酸基量と非塩素化アセタール化度から算出される値[水酸基量]-[非塩素化アセタール化度]が43モル%以上、85モル%以下である請求項1又は2記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項11】
下記式(5)で算出される、アセタール基内平均炭素数が2.4以上、4.0以下である、請求項1又は2記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。

[アセタール基内平均炭素数]=[塩素化変性アセタール結合単位量÷アセタール化度×2]+[アセトアセタール基量÷アセタール化度×2]+[ブチラール基量÷アセタール化度×4] (5)
【請求項12】
真密度(真比重)が1.15~1.35である、請求項1又は2記載の変性ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項13】
請求項1又は2記載の変性ポリビニルアセタール樹脂、溶媒、及び、活物質を含有する、蓄電池電極用組成物。
【請求項14】
請求項1又は2記載の変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、溶媒、及び、活物質を含有する、蓄電池電極用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工性、結着性、経時安定性に優れるとともに、蓄電池の電極に用いた場合に電解液への耐性が高く、柔軟性に優れる電極が得られ、高出力の蓄電池を作製することが可能な変性ポリビニルアセタール樹脂、及び、該変性ポリビニルアセタール樹脂を用いた蓄電池電極用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールを原料として合成される樹脂であり、側鎖にアセチル基と水酸基、及び、アセタール基を有する。これにより、優れた強靭性や接着性などを発現することができる。また、側鎖基の比率を変化させることで樹脂物性を変化させることが可能となる。このような特性を利用して、例えば、蓄電池の電極や顔料組成物、セラミックグリーンシートなど、多くの用途でポリビニルアセタール樹脂は使用されている。
【0003】
また、近年、携帯型ビデオカメラや携帯型パソコン等の携帯型電子機器の普及に伴い、移動用電源としての蓄電池(二次電池)の需要が急増している。また、このような二次電池に対する小型化、軽量化、高エネルギー密度化の要求は非常に高い。
そこで、二次電池として、リチウム又はリチウム合金を負極電極に用いたリチウム二次電池の研究開発が盛んに行われている。このリチウム二次電池は、高エネルギー密度を有し、自己放電も少なく、軽量であるという優れた特徴を有している。
【0004】
現在、特に、リチウム二次電池の電極用のバインダーとして最も広範に用いられているのが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)に代表されるフッ素系樹脂である。
しかしながら、フッ素系樹脂をバインダーとして用いた場合、可撓性を有する薄膜を作製可能な一方で、集電体と活物質の結着性に劣るため、電池製造工程時に活物質の一部又は全部が集電体から剥離、脱落する恐れがあった。また、電池の充放電が行われる際、活物質内ではリチウムイオンの挿入、放出が繰り返され、それに伴い、集電体から活物質の剥離、脱落の問題が起こり得るという問題もあった。
【0005】
上述の問題を解決するため、PVDF以外のバインダーを使用することも試みられており、例えば、特許文献1には、酸性官能基含有モノマー及びアミド基含有モノマーの共重合体からなる非水二次電池用バインダーが記載されている。
このようなバインダーを用いることで、電解液耐性に優れ、電極との密着性が良好であり、かつ、製造時の安全性を実現することが可能であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5708872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のバインダーを使用した場合、活物質の分散性が低くなり、塗工時に塗工むらが発生したり、得られる電池の容量不足が生じたりしている。
また、このような樹脂を用いた場合、電極の抵抗が高いものとなっている。
更に、電解液による溶解が発生するため、電池耐久性の低下を招くという問題がある。
加えて、得られる電極が固くなることで、電極の製造工程や、充放電中に電極に割れが生じるという問題がある。
【0008】
本発明に係る変性ポリビニルアセタール樹脂は、塗工性、結着性、及び、経時安定性に優れる。また、蓄電池の電極に用いた場合に電極抵抗を低下させ、電解液による劣化を防ぐことができ、高出力の蓄電池を作製することが可能となる。
即ち、本発明は、上述した特性に優れる変性ポリビニルアセタール樹脂、該変性ポリビニルアセタール樹脂を用いた蓄電池電極用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示(1)は、塩素原子を有する構成単位を含み、水酸基量が55モル%以上である、変性ポリビニルアセタール樹脂である。
本開示(2)は、水酸基量が95モル%以下である、本開示(1)記載の変性ポリビニルアセタール樹脂である。
本開示(3)は、塩素原子を有する構成単位を0.1モル%以上含有する、本開示(1)又は(2)記載の変性ポリビニルアセタール樹脂である。
本開示(4)は、塩素原子を有する構成単位を35モル%以下含有する、本開示(1)~(3)の何れかに記載の変性ポリビニルアセタール樹脂である。
本開示(5)は、塩素原子を有する構成単位は、塩素原子がアセタール結合を介して結合した構造である、本開示(1)~(4)の何れかに記載の変性ポリビニルアセタール樹脂である。
本開示(6)は、塩素原子を有する構成単位は、下記式(1)で表される構造を有する、本開示(5)記載の変性ポリビニルアセタール樹脂である。
【0010】
【化1】
【0011】
式(1)中、Rは塩素原子又はクロロアルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子又は塩素原子を表す。
本開示(7)は、式(1)において、Rが塩素原子、-CHCl又は-CHCHClである、本開示(6)記載の変性ポリビニルアセタール樹脂である。
本開示(8)は、塩素原子を有する構成単位は、下記式(2)で表される構造を有する、本開示(1)~(4)の何れかに記載の変性ポリビニルアセタール樹脂である。
【0012】
【化2】
【0013】
式(2)中、Rは単結合又はアルキレン基を表し、Rは水素原子、塩素原子又はクロロアルキル基を表す。
本開示(9)は、重合度が200~5000である、本開示(1)~(8)の何れかに記載の変性ポリビニルアセタール樹脂である。
本開示(10)は、水酸基量と非塩素化アセタール化度から算出される値[水酸基量-非塩素化アセタール化度]が43モル%以上、85モル%以下である本開示(1)~(9)の何れかに記載の変性ポリビニルアセタール樹脂である。
本開示(11)は、下記式(5)で算出される、アセタール基内平均炭素数が2.4以上、4.0以下である、本開示(1)~(10)の何れかに記載の変性ポリビニルアセタール樹脂である。

[アセタール基内平均炭素数]=[塩素化変性アセタール結合単位量÷アセタール化度×2]+[アセトアセタール基量÷アセタール化度×2]+[ブチラール基量÷アセタール化度×4] (5)

本開示(12)は、真密度(真比重)が1.15~1.35である、本開示(1)~(11)の何れかに記載の変性ポリビニルアセタール樹脂である。
本開示(13)は、本開示(1)~(12)の何れかに記載の変性ポリビニルアセタール樹脂、溶媒、及び、活物質を含有する、蓄電池電極用組成物である。
本開示(14)は、本開示(1)~(12)の何れかに記載の変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、溶媒、及び、活物質を含有する、蓄電池電極用組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0014】
本発明者らは、鋭意検討の結果、塩素原子を有する構成単位を含む変性ポリビニルアセタール樹脂は、塗工性、結着性、経時安定性に優れることを見出した。さらに、蓄電池の電極に用いた場合に電極抵抗を低下させ、電解液への耐性が高く、柔軟性に優れる電極が得られ、高出力の蓄電池を作製することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、塩素原子を有する構成単位を含む。上記塩素原子を有する構成単位を含むことで、結着性及び塗工性に優れ、得られる組成物の経時安定性に優れる。また、蓄電池の電極に用いた場合に電極抵抗を低下させ、電解液への耐性が高く、柔軟性に優れる電極が得られ、高出力の蓄電池を作製することが可能となる。なお、経時安定性とは、時間が経過した場合において、粘度等の物性の変化(特に増粘)が少ないことを意味する。
なお、上記塩素原子を有する構成単位は、塩素原子を1~3個有するものであることが好ましい。
【0016】
本発明において、塩素原子を有する構成単位は、塩素原子を有する構造であれば特に限定されないが、塩素原子がアセタール結合を介して結合した構造、塩素原子や塩素原子含有基を側鎖に有する構造等が好ましい。なお、塩素原子がアセタール結合を介して結合した構造には、アセタール結合以外の連結基を更に介して結合する場合も含む。
【0017】
上記塩素原子を有する構成単位が、塩素原子がアセタール結合を介して結合した構造(以下、このような構成単位を塩素化変性アセタール結合単位ともいう)である場合、下記式(3)で表される構成単位であることが好ましい。
【0018】
【化3】
式(3)中、Rは塩素原子含有炭化水素基を表す。
【0019】
また、上記塩素化変性アセタール結合単位は、下記式(1)で表される構成単位であることが好ましい。
下記式(1)で表される構成単位を有することで、変性ポリビニルアセタール樹脂の主鎖と塩素原子とが適度な距離を保つことができる。その結果、変性ポリビニルアセタール樹脂は、結着性及び塗工性に優れ、また、得られる組成物の経時安定性にもより一層優れたものとなる。また、蓄電池の電極に用いた場合に電極抵抗を低下させることができる。
【0020】
【化4】
式(1)中、Rは塩素原子又はクロロアルキル基を表し、R、Rはそれぞれ独立して水素原子又は塩素原子を表す。
なお、R、Rは、クロロアルキル基であってもよい。
【0021】
上記クロロアルキル基としては、クロロメチル基(-CHCl)、クロロエチル基(-CHCHCl)、ジクロロエチル基、クロルプロピル基、トリクロロメチル基等が挙げられる。式(1)において、Rは塩素原子、-CHCl又は-CHCHClであることが好ましい。
また、本発明では、Rが塩素原子、R、Rが水素原子の組み合わせで用いることが好ましい。
【0022】
上記塩素原子を有する構成単位が、塩素原子や塩素原子含有基を側鎖に有する構造(以下、このような構成単位を塩素化変性側鎖結合単位ともいう)である場合、下記式(2)で表される構成単位であることが好ましい。
下記式(2)で表される構成単位を有することで、変性ポリビニルアセタール樹脂は、結着性及び塗工性に優れ、また、得られる組成物の経時安定性にもより一層優れたものとなる。また、蓄電池の電極に用いた場合に電極抵抗を低下させることができる。
【0023】
【化5】
式(2)中、Rは単結合又はアルキレン基を表し、Rは水素原子、塩素原子又はクロロアルキル基を表す。
なお、Rは、クロロアルキレン基であってもよい。
【0024】
上記Rに示すアルキレン基としては、炭素数が1~20であることが好ましく、例えば、直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基、環状アルキレン基が好ましい。
上記直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。
上記分岐状アルキレン基としては、メチルメチレン基、メチルエチレン基、1-メチルペンチレン基、1,4-ジメチルブチレン基等が挙げられる。
上記環状アルキレン基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。なかでも、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基等の直鎖状アルキル基が好ましく、メチレン基、エチレン基がより好ましい。
上記Rに示すクロロアルキル基としては、Rと同様のものを使用することができる。
また、本発明では、Rが単結合、Rが水素原子の組み合わせで用いることが好ましい。
【0025】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂における上記塩素原子を有する構成単位の含有量(塩素化変性単位量)は、好ましい下限が0.1モル%である。上記塩素化変性単位量を0.1モル%以上とすることで結着性、塗工性、得られる組成物の経時安定性を向上させることができる。上記塩素化変性単位量のより好ましい下限は1.0モル%、さらに好ましい下限は4.0モル%である。特に限定されないが、製造上の取り扱い性の観点から、上記塩素化変性単位量の上限は35モル%であることが好ましく、30モル%であることがより好ましい。すなわち、上記塩素化変性単位量は0.1~35モル%が好ましく、1.0~30モル%がより好ましく、4.0~30モル%が更に好ましい。上記塩素化変性単位量はH-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて測定する。
なお、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂が、塩素化変性アセタール結合単位と、塩素化変性側鎖結合単位の両方を含む場合、上記塩素化変性単位量は両者の合計を意味する。
【0026】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂が、塩素原子がアセタール結合を介して結合した構造(塩素化変性アセタール結合単位)を含む場合は、上記塩素化変性アセタール結合単位の含有量のより好ましい下限は0.1モル%である。上記塩素化変性アセタール結合単位の含有量を0.1モル%以上とすることで結着性、塗工性、得られる組成物の経時安定性を向上させることができる。上記塩素化変性アセタール結合単位の含有量のより好ましい下限は1.0モル%、さらに好ましい下限は4.0モル%である。特に限定されないが、製造上の取り扱い性の観点から、上記塩素化変性アセタール結合単位の含有量の上限は30モル%であるとよい。上記塩素化変性アセタール結合単位の含有量は0.1~30モル%が好ましく、1.0~30モル%がより好ましい。上記塩素化変性アセタール結合単位の含有量はH-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて測定する。
【0027】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂が、塩素原子や塩素原子含有基を側鎖に有する構造(塩素化変性側鎖結合単位)を含む場合は、上記塩素化変性側鎖結合単位の含有量のより好ましい下限は0.1モル%、より好ましい上限は15モル%である。また、更に好ましい下限は0.5モル%、更に好ましい上限は10モル%である。上記塩素化変性側鎖結合単位の含有量は0.1~15モル%が好ましく、0.5~10モル%がより好ましい。上記塩素化変性側鎖結合単位の含有量はH-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて測定する。
上記範囲内とすることで、結着性、塗工性、得られる組成物の経時安定性を向上させることができる。
【0028】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂が、塩素化変性アセタール結合単位、及び、塩素化変性側鎖結合単位の両方を含む場合、両者の比率(塩素化変性アセタール結合単位/塩素化変性側鎖結合単位)は、0.5以上、3以下であることが好ましく、1以上、2以下であることがより好ましい。すなわち、上記塩素化変性アセタール結合単位/塩素化変性側鎖結合単位は0.5~3が好ましく、1~2がより好ましい。
【0029】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記塩素原子を有する構成単位に加えて、水酸基を有する構成単位を有する。
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂における上記水酸基を有する構成単位の含有量(水酸基量)の下限は55モル%である。上記水酸基量を55モル%以上とすることで、有機溶媒への溶解性が向上し、組成物として好適に使用することができ、電極とした場合に結着性や電解液耐性を付与することができる。
上記水酸基量の好ましい下限は71モル%、好ましい上限は95モル%であり、より好ましい下限は73モル%であり、より好ましい上限は85モル%である。すなわち、上記水酸基量は71~95モル%が好ましく、73~85モル%がより好ましい。上記水酸基量はH-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて測定する。
【0030】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記塩素原子を有する構成単位及び、水酸基を有する構成単位に加えて、後述する非塩素化アセタール基を有する構成単位を有する。
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基量から非塩素化アセタール基を有する構成単位の含有量を引いた値([水酸基量]-[非塩素化アセタール基を有する構成単位の含有量])が43モル%以上、85モル%以下であることが好ましい。上記範囲内とすることで、電極とした場合に、高い結着性、電解液耐性、柔軟性を付与することができる。上記値は45モル%以上、80モル%以下であることがより好ましく、48モル%以上、75モル%以下であることがさらに好ましい。すなわち、上記[水酸基量]-[非塩素化アセタール基を有する構成単位の含有量]は、43~85モル%が好ましく、45~80モル%がより好ましく、48~75モル%がさらに好ましい。
【0031】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記塩素原子を有する構成単位、水酸基を有する構成単位に加えて、アセチル基を有する構成単位、アセタール基を有する構成単位を有する。
【0032】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂における上記アセチル基を有する構成単位の含有量(アセチル基量)の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は20モル%である。上記アセチル基量を0.1モル%以上とすることで、樹脂の柔軟性を維持することができ、上記アセチル基量を20モル%以下とすることで、蓄電池の電極に使用した際に電解液への耐性が向上し、樹脂が電解液へ溶出して電池が劣化することを防ぐことができる。上記アセチル基量のより好ましい下限は0.3モル%、より好ましい上限は10モル%である。すなわち、上記アセチル基量は0.1~20モル%が好ましく、0.3~10モル%がより好ましい。上記アセチル基量はH-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて測定する。
【0033】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、上記アセタール基を有する構成単位を有する。
また、上記ポリビニルアセタール樹脂は、上記アセタール基を有する構成単位として、非塩素化アセタール基を有する構成単位と、塩素化アセタール基を有する構成単位の両方を有することが好ましい。
上記ポリビニルアセタール樹脂における上記非塩素化アセタール基を有する構成単位の含有量(非塩素化アセタール化度)は5モル%以上、40モル%以下であることが好ましい。上記非塩素化アセタール化度を5モル%以上とすることで、有機溶媒への溶解性が向上し、組成物として好適に使用することができる。上記非塩素化アセタール化度を40モル%以下とすることで、結着性、塗工性、電解液耐性を維持することができる。より好ましくは10モル%以上、35モル%以下である。すなわち、上記非塩素化アセタール化度は5~40モル%が好ましく、10~35モル%がより好ましい。上記非塩素化アセタール化度はH-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて測定する。
なお、本明細書において、非塩素化アセタール化度とは、ポリビニルアルコールの水酸基数のうち、アルデヒド基を除いた部分の塩素原子を含まないアルデヒド(ブチルアルデヒド、アセトアルデヒド等)でアセタール化された水酸基数の割合のことである。従って、上述した「塩素原子がアセタール結合を介して結合した構造」の含有量は非塩素化アセタール化度には含まれない。
また、非塩素化アセタール化度の計算方法としては、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基からアセタール化されて形成されていることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を算出する。
【0034】
上記非塩素化アセタール基は、アセトアルデヒドでアセタール化されたアセトアセタール基、ブチルアルデヒドでアセタール化されたブチルアセタール基であることが好ましい。
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂におけるアセトアルデヒドでアセタール化されたアセトアセタール基の含有量(アセトアセタール基量)は10モル%以上、40モル%以下であることが好ましい。すなわち、上記アセトアセタール基量は10~40モル%が好ましい。上記アセトアセタール基量はH-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて測定する。
また、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂におけるブチルアルデヒドでアセタール化されたブチルアセタール基の含有量(ブチラール基量)は3モル%以上、50モル%以下であることが好ましい。すなわち、上記ブチラール基量は3~50モル%が好ましい。上記範囲内とすることで、耐水性を維持、優れた粘度特性を得ることができる。上記ブチラール基量はH-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて測定する。
【0035】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、下記式(5)で算出されるアセタール基内平均炭素数が2.4以上、4.0以下であることが好ましい。上記範囲内とすることで、電解液への耐性を保持しつつ、電極の柔軟性を優れたものとすることができる。上記アセタール基内平均炭素数は2.8以上、3.8以下であることがより好ましい。すなわち、上記アセタール基内平均炭素数は2.4~4.0が好ましく、2.8~3.8がより好ましい。

[アセタール基内平均炭素数]=[塩素化変性アセタール結合単位量÷アセタール化度×2]+[アセトアセタール基量÷アセタール化度×2]+[ブチラール基量÷アセタール化度×4] (5)
【0036】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂が、非塩素化アセタール基を有する構成単位と、塩素化変性アセタール結合単位とを両方含む場合、上記非塩素化アセタール化度と、上記塩素化変性アセタール結合単位量の合計量であるアセタール化度[非塩素化アセタール化度+塩素化変性アセタール結合単位量]は8モル%以上であることが好ましい。また、上記合計量は50モル%以下であることが好ましい。上記範囲内とすることで、有機溶媒への溶解性を維持しつつ、結着性、塗工性に優れ、得られる組成物は高い経時安定性を実現することができる。上記アセタール化度は、10モル%以上、45モル%以下であることがより好ましい。すなわち、上記アセタール化度は8~50モル%が好ましく、10~45モル%がより好ましい。上記アセタール化度はH-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて測定する。
【0037】
また、上記塩素化変性アセタール結合単位の含有量に対する上記非塩素化アセタール基を有する構成単位の割合[非塩素化アセタール化度/塩素化変性アセタール結合単位量]は15以下であることが好ましい。また、上記割合は10以下であることがより好ましい。なお、下限については特に限定されないが1以上が好ましい。すなわち、上記[非塩素化アセタール化度/塩素化変性アセタール結合単位量]は1~15が好ましく、1~10がより好ましい。
更に、アセタール化度に対する非塩素化アセタール化度の割合[非塩素化アセタール化度/アセタール化度]は、0.4以上、0.95以下であることが好ましい。すなわち、上記[非塩素化アセタール化度/アセタール化度]は0.4~0.95が好ましい。上記範囲内とすることで、有機溶媒への溶解性を維持しつつ、結着性、塗工性に優れ、得られる組成物は高い経時安定性を実現することができる。
加えて、アセタール化度に対する塩素化変性アセタール結合単位量[塩素化変性アセタール結合単位量/アセタール化度]の割合は、0.05以上、0.8以下であることが好ましい。すなわち、上記[塩素化変性アセタール結合単位量/アセタール化度]は0.05~0.8が好ましい。上記範囲内とすることで、有機溶媒への溶解性を維持しつつ、結着性、塗工性に優れ、得られる組成物は高い経時安定性を実現することができる。
加えて、水酸基量に対する非塩素化アセタール化度の割合[非塩素化アセタール化度/水酸基量]は、0.1以上、1.0以下であることが好ましく、0.15以上、0.8以下であることがより好ましい。すなわち、上記[非塩素化アセタール化度/水酸基量]は0.1~1.0が好ましく、0.15~0.8がより好ましい。上記範囲内とすることで、有機溶媒への溶解性を維持しつつ、結着性、塗工性に優れ、得られる組成物は高い経時安定性を実現することができる。
【0038】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂における上記非塩素化アセタール化度と、上記塩素化変性単位量の合計量[非塩素化アセタール化度+塩素化変性単位量]は8モル%以上、45モル%以下であることが好ましい。上記範囲内であることで、結着性、塗工性、及び、得られる組成物の経時安定性が向上する。上記非塩素化アセタール化度+塩素化変性単位量は、15モル%以上、40モル%以下であることがより好ましい。すなわち、上記[非塩素化アセタール化度+塩素化変性単位量]は8~45モル%が好ましく、15~40モル%がより好ましい。
【0039】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂における上記塩素化変性単位量に対する上記非塩素化アセタール化度の割合[非塩素化アセタール化度/塩素化変性単位量]は0.2以上、40以下であることが好ましく、0.3以上、30以下であることがより好ましく、0.5以上、25以下であることが更に好ましい。上記範囲内であることで、結着性、塗工性、及び得られる組成物の経時安定性が向上する。すなわち、上記[非塩素化アセタール化度/塩素化変性単位量]は0.2~40が好ましく、0.3~30がより好ましく、0.5~25が更に好ましい。
【0040】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は5000である。上記重合度が200以上であることで、工業的に生産が容易となる。上記重合度が5000以下であることで、溶液粘度が適度なものとなり、工業的に製造することが可能となる。上記重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は3500である。すなわち、上記重合度は200~5000が好ましく、500~3500がより好ましい。なお、上記変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度は、原料となるポリビニルアルコールから求めることができる。
【0041】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、真密度(真比重)の好ましい下限は1.15、好ましい上限は1.35である。上記範囲内とすることで、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂とポリフッ化ビニリデン樹脂の両方を含む電極を作製する場合、上記樹脂が分離しづらく、均一な電極を作製することが可能となる。上記真密度のより好ましい下限は1.2である。すなわち、上記真密度は1.15~1.35が好ましく、1.2~1.35がより好ましい。
なお、上記真密度(真比重)は、例えば、ピクノメーター(ヘリウムガスによる置換で密度測定)によって測定することができる。
【0042】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂を製造する方法としては、塩素原子を有する構成単位を含むポリビニルアルコールを用意し、その後アセタール化する方法、塩素原子を有する構成単位を含まないポリビニルアルコールをアセタール化した後、塩素原子を付加する方法等が挙げられる。また、塩素原子を有する構成単位を含むポリビニルアルコール、塩素原子を有する構成単位を含まないポリビニルアルコールを用意し、その後アセタール化によって塩素原子を有する構成単位を導入する方法等が挙げられる。
より具体的には、上記式(2)で表される構成単位を予め有するポリビニルアルコールを用意し、その後アセタール化する方法、上記式(2)で表される構成単位を有しないポリビニルアルコールをアセタール化した後、上記式(2)で表される構成単位のR、Rに相当する部分を付加する方法等が挙げられる。また、上記式(2)で表される構成単位を予め有するポリビニルアルコール、上記式(2)で表される構成単位を有しないポリビニルアルコールを用意し、その後アセタール化によって上記式(1)で表される構成単位を導入する方法等が挙げられる。
【0043】
上記塩素原子を有する構成単位を含むポリビニルアルコールを作製する方法としては、例えば、塩化ビニルと酢酸ビニルとを共重合した後、得られた共重合体のアルコール溶液に酸またはアルカリを添加してケン化する方法等が挙げられる。また、塩素原子を付加する方法により、上記塩素原子を有する構成単位を含むポリビニルアルコールを作製してもよい。
また、上記塩素原子を付加する方法としては、例えば、ポリビニルアルコールと塩素ガスを反応させる方法等が挙げられる。
【0044】
上記塩素原子を有する構成単位を含まないポリビニルアルコール(以下、単にポリビニルアルコールともいう)は、例えば、ビニルエステルとエチレンの共重合体をケン化することにより得ることができる。上記ビニルエステルとしては、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が挙げられる。なかでも、経済性の観点から酢酸ビニルが好適である。
【0045】
上記アセタール化によって塩素原子を有する構成単位を導入する方法としては、ポリビニルアルコールと、塩素原子を有するアルデヒドまたはアルデヒド等価体とを反応させる方法を用いることができる。なお、クロロアセトアルデヒド等の塩素原子を有するアルデヒドは反応性が高く、ポリビニルアルコールと均一に反応させることが難しく、危険性も高い傾向にある。従って、実際の製造工程では、アルデヒド等価体を使用することがより好ましい。
上記塩素原子を有するアルデヒドとしては、例えば、クロロアセトアルデヒド、ジクロロアセトアルデヒド、トリクロロアセトアルデヒド、3-クロロプロピオンアルデヒド、4-クロロブチルアルデヒド等が挙げられる。
上記アルデヒド等価体とは、アルデヒドに保護基を付けたもの、又は、一般に用いられる方法でアルデヒドに変換できる化合物であり、例えば、アセタール、ヘミアセタール、アルデヒド水和物等が挙げられる。なかでも、塩素原子を有するアルデヒド等価体が好ましい。
上記塩素原子を有するアルデヒド等価体としては、クロロアセトアルデヒドジメチルアセタール、クロロアセトアルデヒドジエチルアセタール、2-クロロメチル-1,3-ジオキソラン、ジクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール、ジクロロアセトアルデヒドジエチルアセタール、2,2-ジクロロメチル-1,3-ジオキソラン、トリクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール、トリクロロアセトアルデヒドジエチルアセタール、トリクロロアセトアルデヒドメチルヘミアセタール、トリクロロアセトアルデヒドエチルヘミアセタール、抱水クロラール、2,2,2-トリクロロメチル-1,3-ジオキソラン、3-クロロプロピオンアルデヒドジメチルアセタール、3-クロロプロピオンアルデヒドジエチルアセタール、2-(2-クロロエチル)-1,3-ジオキソラン、4-クロロブチルアルデヒドジメチルアセタール、4-クロロブチルアルデヒドジエチルアセタール、2-(3-クロロプロピル)-1,3-ジオキソラン等が挙げられる。
【0046】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン性不飽和単量体を共重合したものであってもよい。上記エチレン性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等が挙げられる。また、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル-(3-アクリルアミド-3-ジメチルプロピル)-アンモニウムクロリド、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びそのナトリウム塩等が挙げられる。更に、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物の存在下で、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体とエチレンを共重合し、それをケン化することによって得られる末端変性ポリビニルアルコールも用いることができる。
【0047】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂の用途としては、例えば、蓄電池電極等のバインダー及び分散剤、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等をベースとした接着剤の改質剤、セラミックグリーンシート、導電ペースト等が挙げられる。
また、ゲルインク等のインク製品のバインダー、3Dプリンター用樹脂、アクチュエーター、気体分離膜、接着剤、塗料、フィルム等の原料にも使用することができる。
特に、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂を蓄電池電極に用いるバインダーとして使用する場合は、電極抵抗を低下させ、電解液による劣化を防ぐことができ、高出力の蓄電池を作製することが可能となる。
【0048】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂、溶媒、及び、活物質を含有する蓄電池電極用組成物もまた本発明の1つである。
このような蓄電池電極用組成物では、塗工性、結着性に優れるとともに、電気抵抗を低下させ、さらに電解液による劣化を防ぐことができ、高出力の蓄電池を作製することができる。
【0049】
本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、溶媒、及び、活物質を含有する蓄電池電極用組成物もまた本発明の1つである。
このような蓄電池電極用組成物では、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂とポリフッ化ビニリデン樹脂とを両方を含有することで、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂単独、または、ポリフッ化ビニリデン樹脂単独で用いた場合より、さらに結着性に優れ、電気抵抗を低下させることができる場合がある。
本発明の蓄電池電極用組成物において、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂の塩素原子を有する構成単位の含有量は相溶性の観点から0.5モル%以上であることが好ましく、1モル%以上であることがより好ましい。
上記ポリフッ化ビニリデン樹脂の重量平均分子量は、400000以上、1200000以下が好ましく、600000以上、1000000以下がより好ましい。なお、上記重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて絶対分子量測定法で測定することができる。
また、本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂とポリフッ化ビニリデン樹脂の重量比は0.5:9.5~8:2であることが好ましく、1:9~7:3であることがより好ましい。上記範囲内とすることで、結着性が向上し、さらに電気抵抗を低下させることができる。また、本発明の蓄電池電極用組成物中における樹脂量(本発明の変性ポリビニルアセタール樹脂とポリフッ化ビニリデン樹脂の重量との合計量)は0.5~4重量部が好ましく、0.6~3重量部がより好ましく、0.7~2重量部がさらに好ましい。上記樹脂量が0.5重量部以上であることで高い結着性を発現でき、4重量部以下であることで、電気抵抗の低い電極を作製することができる。
【0050】
上記活物質としては、正極活物質、負極活物質が挙げられる。
上記正極活物質としては、例えば、リチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiN、x+y+z=1)等のリチウム含有複合金属酸化物や、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム等のリチウム含有複合金属リン酸化合物等が挙げられる。具体的には例えば、LiNiO、LiCoO、LiMn、LiN1/31/31/3、LiN0.50.30.2、LiN0.60.20.2、LiN0.80.10.1、LiN0.80.15Al0.05、LiFePO、LiMn0.7Fe0.3PO等が挙げられる。
また、上記負極活物質としては、例えば、従来から蓄電池の負極活物質として用いられている材料を用いることができ、例えば、球状天然黒鉛、天然グラファイト、人造グラファイト、 アモルファス炭素、カーボンブラック、または、これらの成分に異種元素を添加したもの等が挙げられる。
なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
本発明に係る蓄電池電極用組成物は、さらに導電助剤(導電付与剤)を含むことが好ましい。導電助剤を含むことにより、得られる蓄電池電極用組成物の電気抵抗がより一層低下させることができる。上記導電助剤としては、例えば、黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブなどの炭素材料が挙げられる。
【0052】
上記溶媒としては、例えば、アルコール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、エステル類、アミド系溶剤、アミン系溶剤、及び水が挙げられる。
上記アルコール類としては、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、シクロヘキサノール等のその他高級アルコール類、ベンジルアルコール、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール等が挙げられる。
上記多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、フェニルグリコール等が挙げられる。
上記グリコールエーテル類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、ブチルカルビトール、ブチルトリグリコール、メチルジグリコール等が挙げられる。
上記エステル類としては、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸ブチル、ペンタン酸メチル、ペンタン酸エチル、ペンタン酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酪酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
また、ブチルセルソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオールアセテート等を用いることもできる。
上記アミド系溶剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルテセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトアニリド等が挙げられる。
上記アミン系溶剤としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン、ジn-ブチルアミン、トリn-ブチルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン等が挙げられる。
また、上記溶媒を2種類以上混合して用いてもよい。
【0053】
本発明の蓄電池電極用組成物には、上述した物質以外にも、必要に応じて、難燃助剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤のような添加剤を添加してもよい。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、塗工性、結着性、及び、得られる組成物の経時安定性に優れるとともに、蓄電池の電極に用いた場合に電極抵抗を低下させ、電解液への耐性が高く、柔軟性に優れる電極が得られ、高出力の蓄電池を作製することが可能な変性ポリビニルアセタール樹脂を提供できる。また、該変性ポリビニルアセタール樹脂を用いた蓄電池電極用組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
(製造例1)
(塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
ケン化度99.3モル%、重合度800のポリビニルアルコール(a)120gを純水1400gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸100g、n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17g添加した後、液温を50℃に保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を50℃のまま6時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂の粉末を得た。得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0057】
(製造例2)
n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド8g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール35gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0058】
(製造例3)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.3モル%、重合度が1800のポリビニルアルコール(b)を用い、n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド14g及び抱水クロラール10gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=Cl、R=Cl)であった。
【0059】
(製造例4)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.3モル%、重合度が2700のポリビニルアルコール(c)を用い、n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド9g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール12gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0060】
(製造例5)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.3モル%、重合度が5000のポリビニルアルコール(d)を用い、n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド7g及び4-クロロブチルアルデヒドジメチルアセタール4gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂溶液(樹脂含有量:5重量%)を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0061】
(製造例6)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.3モル%、重合度が300のポリビニルアルコール(e)を用い、n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド11g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール27gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0062】
(製造例7)
n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド9g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール65gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0063】
(製造例8)
n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール33gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、アセトアセタール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0064】
(製造例9)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.3モル%、重合度が1200のポリビニルアルコール(f)を用い、n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド16g及び抱水クロラール15gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=Cl、R=Cl)であった。
【0065】
(製造例10)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.3モル%、重合度が1200のポリビニルアルコール(f)を用い、n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド22g及び3-クロロプロピオンアルデヒドジメチルアセタール13gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=CHCl、R=H、R=H)であった。
【0066】
(製造例11)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.3モル%、重合度が1200のポリビニルアルコール(f)を用い、n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド22g及び4-クロロブチルアルデヒドジメチルアセタール12gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=CHCHCl、R=H、R=H)であった。
【0067】
(製造例12)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.9モル%、重合度が300のポリビニルアルコール(g)を用いた。更に、n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド16g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール20gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0068】
(製造例13)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度88.4モル%、重合度が300のポリビニルアルコール(h)を用いた。n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド12g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール25gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0069】
(製造例14)
n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド16g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール7g及びアセトアルデヒド4gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0070】
(製造例15)
(変性ポリビニルアルコール(i)の合成)
攪拌機、温度計、滴下ロート及び還流冷却器を付したフラスコ中に、酢酸ビニル1000重量部、塩化ビニル90重量部及びメタノール300重量部を添加し、系内の窒素置換を行った後、温度を60℃まで昇温した。この系に2,2-アゾビスイソブチロニトリル1.1重量部を添加し、重合を開始した。重合開始から5時間で重合を停止した。重合停止時の系内の固形分濃度は53重量%であり、全モノマーに対する重合収率は65重量%であった。減圧下に未反応のモノマーを除去した後、共重合体の45重量%メタノール溶液を得た。得られた共重合体は酢酸ビニル単位92.4モル%、塩化ビニル単位7.6モル%を含有することが未反応のモノマーの定量より確認された。
【0071】
この共重合体のメタノール溶液100重量部を40℃で攪拌しながら、3%のNaOHメタノール溶液25重量部を添加して、よく混合した後に放置した。30分後、固化したポリマーを粉砕機で粉砕し、メタノールで洗浄後、乾燥してポリマー粉末を得た(以下、これを変性ポリビニルアルコール(i)と称する)。
変性ポリビニルアルコール(i)のケン化度は99.3モル%、塩素化変性側鎖結合単位量6.8モル%、重合度は800であった。
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.3モル%、塩素化変性側鎖結合単位量6.8モル%、重合度が800の塩素原子を有する構成単位を有する変性ポリビニルアルコール(i)を用い、n-ブチルアルデヒド19gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(2)で表される構成単位(R=単結合、R=H)であった。
【0072】
(製造例16)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.3モル%、塩素化変性側鎖結合単位量3.2モル%、重合度が800の塩素原子を有する構成単位を有する変性ポリビニルアルコール(j)を用い、n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド22gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(2)で表される構成単位(R=CH、R=H)であった。
【0073】
(製造例17)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.3モル%、塩素化変性側鎖結合単位量5.4モル%、重合度が1800の塩素原子を有する構成単位を有する変性ポリビニルアルコール(k)を用い、n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド17g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール11gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)及び上記式(2)で表される構成単位(R=単結合、R=H)であった。
【0074】
(製造例18)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.2モル%、塩素化変性側鎖結合単位量1.2モル%、重合度が2700の塩素原子を有する構成単位を有する変性ポリビニルアルコール(l)を用い、n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド26gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=単結合、R=H)であった。
【0075】
(製造例19)
n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド27g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール0.2gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(2)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0076】
(製造例20)
ポリビニルアルコール(a)に代えて、ケン化度99.2モル%、塩素化変性側鎖結合単位量0.06モル%、重合度が800の塩素原子を有する構成単位を有する変性ポリビニルアルコール(m)を用い、n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド23gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(3)で表される構成単位(R=単結合、R=H)であった。
【0077】
(製造例21)
n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド26gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、及び、ブチラール基量を測定した。結果を表1に示す。
【0078】
(製造例22)ポリビニルアルコール(a)に代えて、ポリビニルアルコール(b)を用い、n-ブチルアルデヒド26gに代えて、n-ブチルアルデヒド23gを添加した以外は、製造例21と同様の方法により、塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、及び、ブチラール基量を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
(製造例23)
n-ブチルアルデヒド18g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール17gに代えて、n-ブチルアルデヒド40g及びクロロアセトアルデヒドジメチルアセタール10gを添加した以外は、製造例1と同様の方法により塩素原子を有する構成単位を含む塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO-d(ジメチルスルホキシド)に溶解し、H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いて水酸基量、アセチル基量、ブチラール基量、及び、塩素化変性アセタール結合単位量を測定した。結果を表1に示す。
なお、塩素原子を有する構成単位は、上記式(1)で表される構成単位(R=Cl、R=H、R=H)であった。
【0080】
(実施例1)
(蓄電池電極用組成物の作製)
製造例1の塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する樹脂溶液20重量部(ポリビニルアセタール樹脂:2重量部、N-メチルピロリドン18重量部)に、活物質としてリン酸鉄リチウム(Dynanonic社製)95重量部、導電付与剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)を3重量部、N-メチルピロリドン45重量部を加えた。その後、シンキー社製泡取練太郎にて混合し、蓄電池電極用組成物を得た。
【0081】
(実施例2~21、比較例1~3)
(蓄電池電極用組成物の作製)
表2に示す種類、添加量の塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして、蓄電池電極用組成物を得た。
【0082】
(実施例22)
(蓄電池電極用組成物の作製)
製造例2で得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂10gをN-メチルピロリドン90gに溶解し、ポリビニルアセタール樹脂溶液を得た。
また、ポリフッ化ビニリデン樹脂(重量平均分子量600000)5gをN-メチルピロリドン95gに溶解し、ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂溶液10重量部(ポリビニルアセタール樹脂:1重量部)に、ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液20重量部(ポリフッ化ビニリデン樹脂:1重量部)を加えた。更に、活物質としてリン酸鉄リチウム(Dynanonic社製)95重量部、導電付与剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)を3重量部、N-メチルピロリドン36重量部を加えた。その後、シンキー社製泡取練太郎にて混合し、蓄電池電極用組成物を得た。
【0083】
(実施例23)
製造例2で得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂に代えて、製造例3で得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂を使用した以外は、実施例22と同様にしてポリビニルアセタール樹脂溶液およびポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を調製し、蓄電池電極用組成物を得た。
【0084】
(実施例24)
製造例2で得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂に代えて、製造例7で得られた塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂を使用した以外は、実施例22と同様にしてポリビニルアセタール樹脂溶液およびポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を調製し、蓄電池電極用組成物を得た。
【0085】
(実施例25)
ポリフッ化ビニリデン樹脂(重量平均分子量600000)に代えて、ポリフッ化ビニリデン樹脂(重量平均分子量1000000)を使用した以外は、実施例22と同様にしてポリビニルアセタール樹脂溶液およびポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を調製し、蓄電池電極用組成物得た。
【0086】
(実施例26)
製造例2で得られた塩素化変性ポリビニルアセタールを用いて、蓄電池電極用組成物を作製する際、ポリビニルアセタール樹脂溶液10重量部(ポリビニルアセタール樹脂:1重量部)に代えて、ポリビニルアセタール樹脂溶液5重量部(ポリビニルアセタール樹脂:0.5重量部)、ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液30重量部(ポリフッ化ビニリデン樹脂:1.5重量部)を添加した以外は実施例25と同様にして蓄電池電極用組成物を得た。
【0087】
(比較例4)
ポリフッ化ビニリデン樹脂(重量平均分子量600000)5gをN-メチルピロリドン95gに溶解し、ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を得た。
得られたポリフッ化ビニリデン樹脂溶液40重量部(ポリフッ化ビニリデン樹脂:2重量部)に対して、活物質としてリン酸鉄リチウム(Dynanonic社製)95重量部、導電付与剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)を3重量部、N-メチルピロリドン30重量部を加えた。その後、シンキー社製泡取練太郎にて混合し、蓄電池電極用組成物を得た。
【0088】
<評価>
実施例、比較例で得られた蓄電池電極用組成物について、以下の評価を行った。結果を表2に示した。
(1)蓄電池電極用組成物の評価
(1-1)塗工性(初期粘度および増粘率)
得られた蓄電池電極用組成物について、作製直後の粘度(初期粘度)および、粘度の経時変化(増粘率)を測定することで、塗工性を評価した。
【0089】
(1-1-1)初期粘度
回転レオメータ(Thermo Fisher Scientific社製;HAAKE Rheo Stress 3000)を用いて、以下の測定条件でCR ローテーション時間依存測定モードにて、せん断速度:10[1/s]での粘度(Pa・s)を測定した。
<測定条件>
回転する円盤:平板
回転する円盤の直径:35mm
ギャップ:0.5mm
またその後、以下の基準で判定した。
○:粘度が10Pa・s以下
△:粘度が10Pa・s超え、30Pa・s未満
×:粘度が30Pa・s以上
【0090】
(1-1-2)増粘率
上記初期粘度測定の24時間後に、同様の方法でせん断速度:10[1/s]での粘度を測定し、初期粘度からの粘度変化率を計算して増粘率(%)とした。またその後、以下の基準で判定した。
○:増粘率が150%以下
△:増粘率が150%超え、200%未満
×:増粘率が200%以上
【0091】
(1-2)集電箔結着性(剥離強度)
得られた蓄電池電極用組成物について、アルミ箔に対する結着性を評価した。
アルミ箔(厚み20μm)の上に、乾燥後の膜厚が70μmとなるように電極用組成物を塗工、乾燥し、アルミ箔上に電極がシート状に形成された試験片を得た。
このサンプルを縦10cm、横3cmに切り出し、AUTOGRAPH(島津製作所社製、「AGS-J」)を用い、試験片を固定しながら電極シートを引き上げ、アルミ箔か電極シートを剥離する際に要する剥離強度(N/m)を計測した後、以下の基準で判定した。
○:剥離強度が15.0N/m以上
△:剥離強度が10N/m超え、15.0N/m未満
×:剥離強度が10N/m以下
【0092】
(1-3)導電性
上記「(1-2)集電箔結着性」で得られた試験片について、抵抗測定装置(日置電機株式会社製RM―2610)を用いて合剤層抵抗(Ω・cm)を測定し、以下の基準で評価した。なお、合剤層とは、試験片において、アルミ箔を除いた電極部分のことを示す。
○:合剤層抵抗が8Ω・cm以下
△:合剤層抵抗が8Ω・cm超え、12Ω・cm未満
×:合剤層抵抗が12Ω・cm以上
【0093】
(1-4)電極柔軟性
上記「(1-2)集電箔結着性」で得られた試験片を、直径4.0mmのステンレス丸棒に巻き付け、湾曲した試験片表面を観察し、以下の基準で評価した。
○:試験片表面に全く割れが見られない。
△:試験片表面に微細な割れが見られる。
×:試験片表面に明らかな割れが見られる。
【0094】
(1-5)電解液耐性(電解液への膨潤率)
(樹脂シートの作製)
離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、乾燥後の膜厚が30μとなるように、実施例1~21および比較例1~4については、各実施例及び比較例で使用した塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂溶液を塗工、乾燥して樹脂シートを作製した。また、実施例22~26では各実施例で使用した塩素化変性ポリビニルアセタール樹脂溶液および、ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を混ぜ合わせた後、塗工、乾燥して樹脂シートを作製した。比較例5では、ポリフッ化ビニリデン樹脂(重量平均分子量600000)溶液を塗工、乾燥して樹脂シートを作製した。
その後、上記樹脂シートを2cm角に切り出し、樹脂シート試験片を作製した。
【0095】
(膨潤率評価)
得られた試験片の重量を正確に計量した後、試験片を電解液である、1モル/LのLiPFを含有するEC:DEC:EMC=3:4:3混合溶液に浸し、25℃にて24時間放置した。放置後、試験片を取り出して重量を計測し、試験前後の重量変化から樹脂シートの膨潤率を算出した。
○:膨潤率が130%以下
△:膨潤率が130%超え、150%未満
×:膨潤率が150%以上
【0096】
(2)電池性能評価
(コイン型電池の作製)
実施例及び比較例で得られた蓄電池電極用組成物を、アルミ箔(厚み20μm)の上に塗工、乾燥し、乾燥後の厚さが70μmである正極シートを得た後、これをφ11mmに打ち抜き正極層を得た。また、厚さ100μmの金属リチウム箔をφ11mmに打ち抜くことで負極層を得た。電解液として1モル/LのLiPFを含有するEC:DEC:EMC=3:4:3の混合溶液を用い、正極集電体、正極層、多孔質PP膜セパレータ(厚さ25μm)、負極層、負極集電体の順で重ね合わせた後、かしめ機により圧力を加えることで密閉型のコイン型電池を得た。
【0097】
(充放電サイクル評価)
得られたコイン電池について、充放電試験装置(北斗電工社製)を用い、電圧範囲3.0~4.2V、電流値0.5C、温度25℃で充放電サイクル評価を行った。初回の放電容量に対する、200サイクル後の容量を容量維持率(%)として算出した。
【0098】
(放電レート特性)
得られたコイン電池について、充放電試験装置(北斗電工社製)を用い、電圧範囲3.0~4.2V、電流値0.2C、温度25℃で3サイクル充放電を行い、その後電流値を3Cに変更してさらに3サイクル充放電を行った。電流値0.2Cでの3サイクルの平均放電容量を基準値とし、電流値3Cでの3サイクルの平均放電容量から3C容量維持率(%)を算出した。なお、電流値0.2Cは5時間で満充電状態から完全放電状態まで放電する際の電流値、3Cは20分で満充電状態から完全放電状態まで放電する際の電流値を示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明によれば、塗工性、結着性、経時安定性に優れるとともに、蓄電池の電極に用いた場合に電解液への耐性が高く、柔軟性に優れる電極が得られ、高出力の蓄電池を作製することが可能な変性ポリビニルアセタール樹脂、該変性ポリビニルアセタール樹脂を用いた蓄電池電極用組成物を提供できる。