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特開2024-122458毛髪用エアゾール製品および毛髪処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122458
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】毛髪用エアゾール製品および毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/89 20060101AFI20240902BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240902BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
A61K8/89
A61K8/02
A61Q5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030009
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】松本 尚人
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC022
4C083AC352
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD172
4C083BB49
4C083CC32
4C083DD08
4C083EE07
4C083EE09
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】噴射剤の配合量を低減させた毛髪用エアゾール製品を提供する。
【解決手段】原液と、噴射剤と、原液および噴射剤を充填する容器と、を具備し、原液には、第1シリコーンが配合され、第1シリコーンの動粘度は、900mm/s以下であり、容器内に充填された原液の質量MLに対する噴射剤の質量MGの比:MG/MLが、2以下である、毛髪用エアゾール製品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液と、噴射剤と、前記原液および前記噴射剤を充填する容器と、
を具備し、
前記原液には、第1シリコーンが配合され、
前記第1シリコーンの動粘度は、900mm/s以下であり、
前記容器内に充填された前記原液の質量MLに対する前記噴射剤の質量MGの比:MG/MLが、2以下である、毛髪用エアゾール製品。
【請求項2】
前記原液が霧状に噴射される、請求項1に記載の毛髪用エアゾール製品。
【請求項3】
前記第1シリコーンが、前記原液に50質量%以上配合された、請求項1に記載の毛髪用エアゾール製品。
【請求項4】
前記第1シリコーンとして、動粘度が200mm/s以下のシリコーン成分が少なくとも配合された、請求項1に記載の毛髪用エアゾール製品。
【請求項5】
前記MG/MLが0.3以上である、請求項1に記載の毛髪用エアゾール製品。
【請求項6】
前記原液がセット樹脂を含まないか、もしくは、前記原液にセット樹脂が1質量%未満配合された、請求項1~5のいずれか1項に記載の毛髪用エアゾール製品。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の毛髪用エアゾール製品の前記原液を、前記噴射剤とともに前記容器から噴射して毛髪に付着させる工程、を有する、毛髪処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、毛髪用エアゾール製品および毛髪処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアスプレーなどの毛髪用エアゾール製品は、原液と噴射剤を容器に充填して製造される。噴射剤は原液を細かい霧状にして噴射させるために必要な成分であり、例えば液化石油ガス、ジメチルエーテルなどの液化ガスが主に配合される。
【0003】
特許文献1は、「内容物を収容した容器本体と、前記容器本体の上部に取り付けられ押圧することにより前記内容物を噴口から噴射するアクチュエーターとを備えたエアゾールスプレー整髪剤であり、前記内容物は、3~25質量%のエアゾールスプレー整髪剤組成物と75~97質量%の噴射剤とから構成され、前記エアゾールスプレー整髪剤組成物は、成分X(平均粒子径が5~18μmのシリカ)及び成分Y(エステル油及び炭化水素油からなる群から選ばれる少なくとも1種の油剤)を含有し、前記エアゾールスプレー整髪剤組成物中の成分Xの含有量が3~25質量%であり、前記エアゾールスプレー整髪剤組成物中の成分Yの含有量が75~92質量%であり、前記アクチュエーターが5以上の噴口を有するエアゾールスプレー整髪剤」を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-154571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、液化石油ガス、ジメチルエーテルなどの揮発性有機化合物の排出量に対する規制が世界的に進んでいる。例えば米国環境保護庁は、ヘアスプレーに配合される揮発性有機化合物を80%以下に規制しており、州によってはより厳しい規制も存在する。そこで、噴射剤の配合量を減らした毛髪用エアゾール製品が求められている。しかし、噴射剤の配合量を減らすと噴射自体が困難となるか、噴射できても噴射物の粒子径が非常に大きくなり、毛髪に対して均一に塗布できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面は、原液と、噴射剤と、前記原液および前記噴射剤を充填する容器と、を具備し、前記原液には、第1シリコーンが配合され、前記第1シリコーンの動粘度は、900mm/s以下であり、前記容器内に充填された前記原液の質量MLに対する前記噴射剤の質量MGの比:MG/MLが、2以下である、毛髪用エアゾール製品に関する。
【0007】
本開示の別の側面は、上記の毛髪用エアゾール製品の前記原液を、前記噴射剤とともに前記容器から噴射して毛髪に付着させる工程、を有する、毛髪処理方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、噴射剤の配合量を低減させた上で噴射物の粒子径が小さい毛髪用エアゾール製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示に係る実施形態について例を挙げて説明するが、本開示に係る実施形態は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示に係る発明を実施できる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値B」という記載は、数値Aおよび数値Bを含み、「数値A以上で数値B以下」と読み替えることが可能である。以下の説明において、特定の物性や条件などの数値に関して下限と上限とを例示した場合、下限が上限以上とならない限り、例示した下限のいずれかと例示した上限のいずれかと任意に組み合わせることができる。
【0010】
本開示は、添付の特許請求の範囲に記載の複数の請求項から任意に選択される2つ以上の請求項に記載の事項の組み合わせを包含する。つまり、技術的な矛盾が生じない限り、添付の特許請求の範囲に記載の複数の請求項から任意に選択される2つ以上の請求項に記載の事項を組み合わせることができる。
【0011】
本開示は、以下に関する。
本開示は、毛髪用エアゾール製品を提供するだけでなく、毛髪用エアゾール製品の内容物、毛髪用エアゾール製品を用いる毛髪処理方法、毛髪用エアゾール製品の製造方法も提供する。
【0012】
[1]原液と、噴射剤と、前記原液および前記噴射剤を充填する容器と、を具備し、前記原液には、第1シリコーンが配合され、前記第1シリコーンの動粘度は、900mm/s以下であり、前記容器内に充填された前記原液の質量MLに対する前記噴射剤の質量MGの比:MG/MLが、2以下である、毛髪用エアゾール製品。
[2]前記原液が霧状に噴射される、上記[1]に記載の毛髪用エアゾール製品。
[3]前記第1シリコーンが、前記原液に50質量%以上配合された、上記[1]または[2]に記載の毛髪用エアゾール製品。
[4]前記第1シリコーンとして、動粘度が200mm/s以下のシリコーン成分が少なくとも配合された、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の毛髪用エアゾール製品。
[5]前記MG/MLが0.3以上である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の毛髪用エアゾール製品。
[6]前記原液がセット樹脂を含まないか、もしくは、前記原液にセット樹脂が1質量%未満配合された、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の毛髪用エアゾール製品。
[7]前記原液が低級アルコールを含まないか、もしくは、20質量%未満の含有率で含む、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の毛髪用エアゾール製品。
[8]前記原液が水を含まないか、もしくは、1質量%未満の水を含む、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の毛髪用エアゾール製品。
[9]前記容器の単位容積当たりに充填される前記原液と前記噴射剤の合計の質量が、0.05g/cm以上、1g/cm以下である、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の毛髪用エアゾール製品。
[10]前記第1シリコーンとして、動粘度が20mm/s以下のシリコーン成分が少なくとも配合された、上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の毛髪用エアゾール製品。
[11]前記原液と前記噴射剤を充填した直後の前記容器内の25℃におけるゲージ圧力が、0.1MPa以上、0.8MPa以下である、上記[1]~[10]のいずれか1つに記載の毛髪用エアゾール製品。
[12]上記[1]~[11]のいずれか1つに記載の毛髪用エアゾール製品の前記原液を、前記噴射剤とともに前記容器から噴射して毛髪に付着させる工程、を有する、毛髪処理方法。
[13]原液を調製する工程と、噴射剤を準備する工程と、前記原液および前記噴射剤を容器に充填する工程と、を具備し、前記原液には、第1シリコーンが配合され、前記第1シリコーンの動粘度は、900mm/s以下であり、前記容器内に充填される前記原液の質量MLに対する前記噴射剤の質量MGの比:MG/MLが、2以下である、上記[1]~[11]のいずれか1つに記載の毛髪用エアゾール製品の製造方法。
【0013】
本開示に係る毛髪用エアゾール製品(以下、「エアゾール製品(M)」とも称する。)の用途は、特に限定されない。エアゾール製品(M)は、例えば、毛髪にツヤや質感を出す成分が原液に配合されている製品であり、毛髪固定用であってもよい。
【0014】
エアゾール製品(M)は、原液と、噴射剤と、原液および噴射剤を充填する容器を具備する。原液は、25℃で液体であり、25℃で固体の溶質が含まれ得る。原液には揮発性成分が含まれていてもよい。噴射剤は、25℃で気体であり、液化されて容器内に充填されている。噴射剤の少なくとも一部は、容器内では、液体の原液に溶存している。原液には、第1シリコーンが配合されている。第1シリコーンは、主に、毛髪にツヤや質感を出す成分である。
【0015】
第1シリコーンの動粘度が900mm/s以下である場合、容器内に充填された原液の質量MLに対する噴射剤の質量MGの比:MG/MLが2以下であっても、噴射物の粒子径を小さくできる。
【0016】
エアゾール製品(M)には、25℃で気体を呈するガスが噴射剤として配合されている。エアゾール製品(M)の使用時には、原液が噴射剤とともに霧状に噴射される。
【0017】
ここで、霧状とは、50%粒子径が25μm以下の粒子になった状態の原液をいう。容器内の原液は、所定の操作によって、容器から噴射剤とともに霧状に噴射され、毛髪に均一に塗布される。
【0018】
50%粒子径(個数基準のメディアン径)は、レーザ回折式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、型番:AEROTRACII、検出器レンズ:F100)のレーザ光源と検出器レンズを結ぶ直線上における、検出器レンズから30cmの点を測定点として測定する。レーザ光源から検出器レンズに対してレーザを照射した状態で、測定点からレーザに対して垂直方向に15cm離れた場所から、地面に対して水平方向に原液を噴射剤とともに噴射させた状態で測定を開始し、3秒間、噴出物の50%粒子径(μm)を測定する(計算方法:ロジン・ラムラー分布、測定回数:1回)。以上の測定を合計3回行い、50%粒子径の平均値を算出する。
【0019】
原液の主成分である第1シリコーンの動粘度を900mm/s以下にする場合、噴射剤の配合量をMG/MLを満たすまで低減させた場合でも、細かい霧状になって噴射され得る。そのため、原液が毛髪に均一に付着し、毛髪が原液で濡れた状態になりにくく、毛髪にツヤや質感を与える効果が向上する。特にブリーチ処理毛などの乾燥時の明度が高い毛髪は、原液で濡れた状態になると、明度が下がって見栄えが低下することがある。エアゾール製品(M)によれば、毛髪が原液で濡れた状態になりにくいため、明度の低下が抑制される。
【0020】
第1シリコーンの動粘度は、MG/ML比が2以下であっても噴射物の粒子径をより小さくできる観点から、700mm/s以下でもよく、500mm/s以下でもよく、300mm/s以下でもよく、100mm/s以下が好ましく、20mm/s以下がより好ましい。第1シリコーンは、25℃で液体であれば、揮発性を有してもよい。
【0021】
第1シリコーンの動粘度は、ウベローデ型粘度計を用いて25℃で測定することができる。具体的な測定方法は、医薬部外品原料規格2021に記載されている。毛細管の内径は、測定に適する動粘度の範囲によって、医薬部外品原料規格2021に従って選択すればよい。
【0022】
第1シリコーンは、原液に50質量%以上配合されていてもよく、60質量%以上配合されていてもよく、70質量%以上配合されていてもよく、80質量%以上配合されていてもよい。
【0023】
第1シリコーンは、既述のように、原液の主成分である。よって、ウベローデ型粘度計を用いて25℃で測定される原液の動粘度は、900mm/s以下でもよく、700mm/s以下でもよく、500mm/s以下でもよく、300mm/s以下でもよく、100mm/s以下でもよく、20mm/s以下でもよい。
【0024】
原液には、第1シリコーンとして、動粘度が200mm/s以下のシリコーン成分(以下、「第1シリコーン(L200)」とも称する。)が少なくとも配合されていることが望ましい。第1シリコーン(L200)は、第1シリコーンの50質量%よりも多くを占める主成分であってもよく、第1シリコーンの60質量%以上、70質量%以上もしくは80質量%以上を占めてもよい。これにより、霧状に噴射されたときの50%粒子径を25μmよりも十分に小さくすることができるとともに、毛髪の明度の減少を軽減しやすくなる。
【0025】
動粘度が900mm/s以下である第1シリコーンとしては、例えば、直鎖状シリコーン、環状シリコーンなどが好ましい。
【0026】
直鎖状シリコーンとしては、直鎖状メチルポリシロキサンが望ましい。直鎖状メチルポリシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、フェニルトリメチコンなどが挙げられる。環状シリコーンとしては、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状メチルポリシロキサンなどが挙げられる。動粘度が5mm/s未満のジメチルポリシロキサンは一般に揮発性であり、動粘度が5mm/s以上のメチルポリシロキサンは不揮発性である。中でも、微細な粒子の霧状に噴射されやすい点で、動粘度が100mm/s未満、もしくは動粘度が20mm/s未満である直鎖状ジメチルポリシロキサンなどが好ましい。
【0027】
MG/ML比は、1.9以下が好ましく、1.5以下であってもよく、1.3以下であってもよく、1.1以下であってもよい。これにより、噴射剤の使用量を顕著に低減することができ、揮発性有機化合物の配合量を削減することができる。一方、原液をより微細な霧状に噴射し、噴射後の毛髪の明度の低下をできるだけ軽減する観点からは、MG/ML比が0.3以上であることが好ましく、0.4以上でもよく、0.5以上でもよく、0.6以上でもよく、0.7以上もしくは0.9以上であってもよい。
【0028】
原液は、様々な任意成分を含み得る。任意成分としては、動粘度が900mm/sより大きい第2シリコーン、シリコーン以外の油性成分(エステル、炭化水素、油脂、ロウなど)、高分子化合物、界面活性剤、保湿剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粉体、ビタミン、防腐剤、香料などが挙げられる。第2シリコーンとしては、動粘度が900mm/sより大きいメチルポリシロキサン、ジメチコノール、アミノ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。
【0029】
ただし、原液は、セット樹脂を含まないか、もしくは、原液にセット樹脂が含まれる場合でも1質量%未満の配合であることが好ましい。セット樹脂をほとんど含まない原液を用いることにより、毛髪の束が形成されにくくなり、毛髪のツヤ出し効果が向上する。
【0030】
セット樹脂とは、一般に水溶性樹脂であり、毛髪の表面に被膜を形成することにより、毛髪形状を固定する働きを有する高分子化合物をいう。そのような水溶性樹脂として、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アルキル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アルキル、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニルおよびこれらの共重合体などをいう。セット樹脂、アクリル酸、アクリルアミド、アクリル酸アルキル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキル、ビニルピロリドンおよび酢酸ビニルからなる群から選択される1種または2種以上をモノマー単位として有する重合体または共重合体であってもよい。
【0031】
原液は、低級アルコールを含まないか、もしくは、原液に低級アルコールが含まれる場合でも20質量%未満の含有率であることが好ましい。毛髪にツヤや質感を与える効果を向上させる観点からは、既述のように、原液におけるセット樹脂の含有率が低いことが望ましく、セット樹脂を溶解させるための低級アルコールの含有率も低いほど望ましい。
【0032】
低級アルコールとは、炭素数1以上4以下の一価アルコール(C~Cモノアルコール)をいう。低級アルコールも揮発性有機化合物であり、その使用量が低減されることが望ましい。低級アルコールの配合量は、原液の20質量%未満が望ましく、10質量%未満がより望ましく、5質量%未満が更に望ましく、低級アルコールが原液に配合されていないことが最も望ましい。
【0033】
原液は、水を含まないか、もしくは、原液に水が含まれる場合でも1質量%未満の含有率であることが望ましい。すなわち、エアゾール製品(M)は、非水系の原液を有する。第1シリコーンは、水との親和性が低いため、水が存在すると噴射される粒子の粒径が小さくなりにくく、原液を均一に毛髪に付着させることができず、毛髪にツヤや質感を与える効果が低減する。よって、水が原液に配合されていないことが最も望ましい。
【0034】
噴射剤としては、特に限定されないが、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテルなどの液化ガスが用いられる。第1シリコーンの溶解性に優れ、噴射される原液の粒子を微小化しやすい点で、噴射剤は液化石油ガスを主成分とすることが好ましい。噴射剤の50質量%以上、更には60質量%以上もしくは70質量%以上が液化石油ガスであってもよい。
【0035】
容器の単位容積当たりに充填される原液と噴射剤の合計の質量は、例えば、0.05g/cm以上、1g/cm以下である。
【0036】
原液と噴射剤を充填した直後の容器内の25℃におけるゲージ圧力は、0.1MPa以上、0.8MPa以下であってもよい。
【0037】
なお、容器の容積は、特に限定されないが、一般的には30cm以上1000cm以下である。
【0038】
エアゾール製品(M)の製造方法は、特に限定されず、公知の毛髪用エアゾール製品の製造方法に準じて適宜変更を加えて製造すればよい。原液は、第1シリコーンを含む原料を混合して調製すればよい。噴射剤は、原液とともに容器に充填すればよい。噴射剤の少なくとも一部を容器内の原液に溶存させてもよい。
【0039】
エアゾール製品(M)の使用方法は、特に限定されないが、毛髪に噴霧して用いられる。すなわち、エアゾール製品(M)は、原液を噴射剤とともに容器から噴射して毛髪に付着させる工程を有する毛髪処理方法に用いられる。毛髪処理方法は、原液を毛髪に噴霧した後、毛髪を洗浄しない(原液を洗い流さない)方法であってもよい。原液を噴霧した後の毛髪を、手、櫛などの器具で所望の形状に整髪してもよい。
【0040】
[実施例]
以下、本開示に係る毛髪用エアゾール製品を実施例および比較例に基づいて更に具体的に説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
《実施例1~8および比較例1》
表1に示す成分比の原液を調製し、実施例1~8の毛髪用エアゾール製品A1~A8および比較例1の毛髪用エアゾール製品B1を作製した。表1中の成分比の数値は質量%である。噴射剤と原液の合計30gを容積148cmの容器に充填した。よって、容器の単位容積当たりに充填される原液と噴射剤の合計の質量は0.20g/cmである。容器内に充填した原液の質量MLに対する噴射剤の質量MGの比:MG/MLは1.0で統一した。噴射剤は、液化石油ガス100%とした。
【0042】
[評価]
(1)50%粒子径
既述の方法で、レーザ回折式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、型番:AEROTRACII、検出器レンズ:F100)を用いて、各毛髪用エアゾール製品の噴出物の50%粒子径(μm)を測定した。
【0043】
(2)噴射前後の明度差
過去にブリーチ処理がされていない日本人女性毛髪を準備し、5質量%ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(酸化エチレンの平均付加モル数:4.2)水溶液で洗浄し、全長30cm、質量6gの毛束を作成した。この毛束に、毛髪脱色剤30gを塗布して室温で30分放置後、流水で十分に水洗し、乾燥させたものを評価用毛束とした。毛髪脱色剤には、株式会社ミルボン製の「オルディーブ アディクシー ハイブリーチ」と「オルディーブ アディクシー オキシダン6.0」を質量比1:3で混合した混合物を用いた。
【0044】
次に、評価用毛束に各毛髪用エアゾール製品を噴射し、その前後での明度差を測定した。具体的には、まず分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、型番CM-5)により、毛髪用エアゾール製品を噴射する前の評価用毛束の明度(L)を測定した。その後、評価用毛束を吊り下げ、毛髪用エアゾール製品を20cm離れた場所から、地面に対して水平方向に2秒間、評価用毛束に噴射し、噴射直後の評価用毛束の明度(L)を測定した。さらに、下記式(I)から噴射前後での明度差(ΔL)を算出した。
【0045】
ΔL = L - L (I)
【0046】
【表1】
【0047】
表1の結果は、原液に動粘度が100mm/s以下である第1シリコーンを配合することで、噴射される粒子の50%粒子径が顕著に小さくなること、原液に動粘度が20mm/s以下である第1シリコーンを配合することで、噴射される粒子の50%粒子径が更に顕著に小さくなることを示している。また、第1シリコーンの動粘度を小さくするほど、噴射前後で明度差が低減されることがわかる。
【0048】
一般的には、ML/MG比の大きい毛髪用エアゾール製品を毛髪に噴射すると、毛髪が濡れやすいため、ブリーチ処理された毛髪のように乾燥時の明度が高い毛髪は明度が下がり、見栄えが低下する。これに対し、実施例1~8の毛髪用エアゾール製品A1~A8を噴射したときの明度差は、比較例1の毛髪用エアゾール製品B1を用いた場合に比べて顕著に小さくなっている。
【0049】
《実施例9~12》
表2に示す成分比の原液を調製し、実施例1~8と同様に、実施例9~12の毛髪用エアゾール製品A9~A12を作製し、同様に評価した。表2中の成分比の数値は質量%である。
【0050】
【表2】
【0051】
表2の結果は、原液のMG/ML比が非常に小さい(すなわち噴射剤の使用量が顕著に少ない)場合でも、エアゾール製品(M)によれば、噴射される粒子の50%粒子径が顕著に小さくなり、噴射前後での明度差が十分に低減されることがわかる。