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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122459
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】衛生陶器製造システム
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/26 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
B28B1/26 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030010
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 聖司
(72)【発明者】
【氏名】内野 洋明
(72)【発明者】
【氏名】今尾 英子
(72)【発明者】
【氏名】白川 滋久
【テーマコード(参考)】
4G052
【Fターム(参考)】
4G052CC05
4G052CC07
4G052CC24
(57)【要約】
【課題】型の精度を向上させて、工程数を削減すること。
【解決手段】実施形態に係る衛生陶器製造システムは、衛生陶器の製品に対する中間モデルの三次元データに基づいて、ブロック原料を電動切削工具によって加工し、ブロック原料からマスター型を作製する工程を有する。中間モデルは、衛生陶器の製品の最終モデルに対して、焼成による素地の収縮が加味されたモデルである。ブロック原料は、樹脂材である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生陶器の製品に対する中間モデルの三次元データに基づいて、ブロック原料を電動切削工具によって加工し、前記ブロック原料からマスター型を作製する工程
を実行し、
前記中間モデルは、前記衛生陶器の製品の最終モデルに対して、焼成による素地の収縮が加味されたモデルであり、
前記ブロック原料は、樹脂材である、衛生陶器製造システム。
【請求項2】
前記マスター型を作製する工程では、前記電動切削工具によって前記ブロック原料が加工された際に生じる反りが削られる、請求項1に記載の衛生陶器製造システム。
【請求項3】
前記マスター型は、架台に支持される、請求項1に記載の衛生陶器製造システム。
【請求項4】
前記中間モデルの三次元データは、サーバーに記憶され、
前記サーバーには、前記最終モデルの三次元データ、および、修正前の三次元データの少なくとも1つが記憶され、
前記修正前の三次元データは、前記最終モデルが変更された場合の変更前の前記最終モデルの三次元データ、および、前記中間モデルが変更された場合の変更前の前記中間モデルの三次元データの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の衛生陶器製造システム。
【請求項5】
前記中間モデルの三次元データが変更された場合、前記電動切削工具の原点合わせが実行される、請求項1に記載の衛生陶器製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、衛生陶器製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塊状体を切削して、プレケース型を作製し、その後、プレケース型を用いてマスター型を作製し、さらに、マスター型を用いて生産型を作製し、生産型を用いて製品を製造する陶磁器の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-169156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記する方法では、各型を生成するために、転写が繰り返される。そのため、型の精度が低下するおそれがある。また、多くの型の生成が必要となり、工程数が多くなる。
【0005】
実施形態の一態様は、型の精度を向上させて、工程数を削減する衛生陶器製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る衛生陶器製造システムは、衛生陶器の製品に対する中間モデルの三次元データに基づいて、ブロック原料を電動切削工具によって加工し、ブロック原料からマスター型を生成する工程を有する。中間モデルは、衛生陶器の製品の最終モデルに対して、焼成による素地の収縮が加味されたモデルである。ブロック原料は、樹脂材である。
【0007】
これにより、衛生陶器製造システムは、衛生陶器を製造するためのマスター型を生成する際に、転写回数を少なくすることができる。そのため、衛生陶器製造システムは、マスター型の精度を向上させることができる。すなわち、衛生陶器製造システムは、衛生陶器の精度を向上させることができる。また、衛生陶器製造システムは、マスター型を生成するための工数を削減することができる。
【0008】
また、マスター型を生成する工程では、電動切削工具によってブロック原料が加工された際に生じる反りが削られる。
【0009】
これにより、衛生陶器製造システムは、マスター型を用いて生産型を作製する際に、反りの影響がない生産型を作製することができる。そのため、衛生陶器製造システムは、衛生陶器の精度を向上させることができる。
【0010】
また、マスター型は、架台に支持される。
【0011】
これにより、衛生陶器製造システムは、マスター型の変形を抑制することができる。
【0012】
また、中間モデルの三次元データは、サーバーに記憶される。サーバーには、最終モデルの三次元データ、および、修正前の三次元データの少なくとも1つが記憶される。修正前の三次元データは、最終モデルが変更された場合の変更前の最終モデルの三次元データ、および、中間モデルが変更された場合の変更前の中間モデルの三次元データの少なくとも1つを含む。
【0013】
これにより、衛生陶器製造システムは、修正前後におけるモデルの三次元データを記憶させることができる。そのため、衛生陶器製造システムは、たとえば、修正前の中間モデルの三次元データが必要となった場合に、サーバーから、必要な三次元データを読み出すことができる。
【0014】
また、中間モデルの三次元データが変更された場合、電動切削工具の原点合わせが実行される。
【0015】
これにより、衛生陶器製造システムは、マスター型が修正される場合に、マスター型の修正精度を向上させることができる。たとえば、衛生陶器製造システムは、マスター型に段差や、折れなどの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
実施形態の一態様によれば、型の精度を向上させて、工程数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、衛生陶器を製造する生産型を示す概略図である。
図2図2は、マスター型から、転写されて生成される、生産型の、一例を示す図である。
図3図3は、マスター型が生成される状態を示す図である。
図4図4は、衛生陶器製造システムの概略を示す図である。
図5図5は、架台に取り付けられたマスター型を示す断面図である。
図6図6は、実施形態に係る衛生陶器の製造工程を説明するフローチャートである。
図7図7は、ブロック原料に反りが発生した状態を示す図である。
図8図8は、ブロック原料に発生した反りが削られた状態を示す図である。
図9図9は、マスター型に窪みを付ける修正を説明する図である。
図10図10は、マスター型に突部を設ける修正を説明する図である。
図11図11は、第1比較例の製造工程を示す図である。
図12図12は、第2比較例における衛生陶器の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する衛生陶器製造システムを詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。衛生陶器製造システムは、衛生陶器を製造するためのシステムである。衛生陶器製造システムでは、衛生陶器を製造するための各工程が実行される。
【0019】
衛生陶器は、大便器、小便器、および、洗面器などを含む。衛生陶器は、型に泥漿が注入されて、型の表面に着肉した泥漿の着肉部が型から外されて、着肉部が焼成されることで、製造される。
【0020】
衛生陶器を製造する場合には、たとえば、図1に示すように、複数の生産型1が用いられる。図1は、衛生陶器を製造する生産型1を示す概略図である。衛生陶器を製造する場合には、たとえば、4つの生産型1a~1dが組み合わされて形成される空間に泥漿が注入される。なお、衛生陶器を製造するための生産型1の数は、4つに限られることはない。衛生陶器を製造するための生産型1の数は、2つ以上である。
【0021】
生産型1は、図2に示すように、マスター型2が転写された型である。図2は、マスター型2から、転写されて生成される、生産型1の、一例を示す図である。マスター型2は、生産型1を生成するための型である。マスター型2を転写して生産型1を生成することで、同じ生産型1を複数生成することができる。
【0022】
マスター型2は、ブロック原料10(図7参照)が、衛生陶器の製品に対する中間モデルの三次元データに基づいて、図3に示すように、電動切削工具3によって加工されて生成される。図3は、マスター型2が生成される状態を示す図である。ブロック原料10は、樹脂材である。たとえば、ブロック原料10は、ケミカルウッド等を含む樹脂を主とした複合材料である。
【0023】
中間モデルは、焼成後の衛生陶器の製品の最終モデルに対して、素地の収縮が加味されたモデルである。素地の収縮は、重力による変形を含む。中間モデルは、衛生陶器の製品に対する最終モデルとは異なるモデルである。最終モデルは、焼成による素地の収縮が反映されたモデルである。すなわち、中間モデルは、焼成前の製品の形状を示すモデルである。最終モデルは、焼成後の製品の形状を示すモデルである。
【0024】
中間モデルの三次元データは、CAD(Computer Aided Design)を用いて作成される。具体的には、中間モデルは、CADがインストールされたコンピュータ4(図4参照)を用いて作成される。
【0025】
電動切削工具3は、加工機械5(図4参照)に設けられる。加工機械5は、CADデータから作成されたCAM(Computer Aided Manufacturing)データに基づいて、制御される。加工機械5は、電動切削工具3によって、ブロック原料10を加工し、マスター型2を生成する。加工機械5は、NC(Numerical Control)工作機械、または、MC(Machining Center)である。
【0026】
最終モデルの三次元データは、中間モデルの三次元データと同様に、CADを用いて作成される。中間モデルの三次元データ、および、最終モデルの三次元データは、サーバー6に記憶される。サーバー6は、たとえば、図4に示すように、コンピュータ4と、ネットワークN1を介して無線、または、有線で通信可能に接続される。図4は、衛生陶器製造システム7の概略を示す図である。ネットワークN1は、例えば、LAN(Local Area Network)や、インターネットなどのWAN(Wide Area Network)であり、1以上のネットワークで構成される。
【0027】
サーバー6は、ネットワークN2を介して無線、または、有線で、電動切削工具3を有する加工機械5に通信可能に接続される。ネットワークN2は、例えば、LANや、インターネットなどのWANであり、1以上のネットワークで構成される。
【0028】
マスター型2には、図5に示すように、架台8が取り付けられる。図5は、架台8に取り付けられたマスター型2を示す断面図である。マスター型2は、架台8によって支持される。架台8は、マスター型2の一部を挿入可能となるように、枠状に形成される。マスター型2は、固定ボルト9によって、架台8に取り付けられる。
【0029】
次に、実施形態に係る衛生陶器製造システム7によって実行される衛生陶器の製造方法について、図6のフローチャートを参照し説明する。図6は、実施形態に係る衛生陶器の製造工程を説明するフローチャートである。以下で説明する工程は、開発工程が含まれる。
【0030】
第1設計工程(S100)において、衛生陶器の製品の最終モデルがCADによって設計される。すなわち、最終モデルの三次元データが、CADを用いて作成される。換言すると、最終モデルが、データ化される。最終モデルの三次元データは、サーバー6に記憶される。最終モデルは、設計者(ユーザ)によって設計される。第1設計工程は、開発工程である。
【0031】
次に、第2設計工程(S101)において、衛生陶器の中間モデルがCADによって設計される。すなわち、中間モデルの三次元データが、CADを用いて作成される。換言すると、中間モデルが、データ化される。中間モデルの三次元データは、サーバー6に記憶される。中間モデルは、設計者によって設計される。なお、中間モデルは、コンピュータ4によって作成されてもよい。たとえば、焼成条件や、素地の種類などが入力されることで、最終モデルから、中間モデルがコンピュータ4によって生成されてもよい。第2設計工程以降は、製造工程である。
【0032】
次に、マスター型作製工程(S102)において、マスター型2が作製される。衛生陶器の中間モデルの三次元データが、サーバー6から読み出される。読み出された中間モデルの三次元データは、CAMデータに変換される。変換されたCAMデータに基づいて、加工機械5によって、ブロック原料10が加工される。これにより、マスター型2が作製される。
【0033】
なお、マスター型作製工程においては、ブロック原料10が加工機械5によって切削される場合に、ブロック原料10の残存応力によって、ブロック原料10に反りが発生する。たとえば、ブロック原料10に、図7に示すように、電動切削工具3によって荒加工を行う場合に、ブロック原料10に反りが発生する。そのため、マスター型生成工程では、図8に示すように、反りが発生したブロック原料10が上下に反転されて、ブロック原料10に生じた反りが削られる。反りが削られたブロック原料10は、再び上下に反転されて、仕上げ加工が行われる。図7は、ブロック原料10に反りが発生した状態を示す図である。図8は、ブロック原料10に発生した反りが削られた状態を示す図である。
【0034】
次に、生産型作製工程(S103)において、生産型1が作製される。生産型1は、マスター型2から転写されて、作製される。
【0035】
たとえば、生産型1を用いて、衛生陶器の試作評価が行われる。生産型1を用いた衛生陶器の試作評価の結果に基づいて、マスター型2が修正される。マスター型2が修正される場合、CADによって中間モデルが変更されて、中間モデルの三次元データが変更される。変更後の中間モデルの三次元データ、および、変更前の中間モデルの三次元データは、サーバー6に記憶される。
【0036】
たとえば、マスター型2に窪みを付ける修正、および、たとえば、突部の高さを低くする修正が行われる場合、図9に示すように、マスター型2に対して削り込みが行われる。図9は、マスター型2に窪みを付ける修正を説明する図である。マスター型2は、窪みを付ける箇所2aが、電動切削工具3によって削られることで、修正される。
【0037】
また、マスター型2に突部2bを設ける修正が行われる場合、図10に示すように、マスター型2が修正される。図10は、マスター型2に突部2bを設ける修正を説明する図である。まず、突部2bを設ける箇所の周辺が、電動切削工具3によって掘り込まれる。そして、掘り込まれた箇所2cに、ほぼ同サイズで嵌め合うブロック2dが接着される。さらに、ブロック2dが電動切削工具3によって加工されることで、ブロック2dに突部2bが形成され、マスター型2の修正が行われる。これらの修正は、変更後の中間モデルの三次元データに基づいて、加工機械5が制御されて、実行される。
【0038】
なお、衛生陶器の製品形状が変更された場合、すなわち、衛生陶器の最終モデルが変更された場合には、CADによって最終モデルが変更されて、最終モデルの三次元データが変更される。また、最終モデルに合わせて、中間モデルも変更されて、中間モデルの三次元データが変更される。変更後の最終モデルの三次元データ、および、変更前の最終モデルの三次元データは、サーバー6に記憶される。また、変更後の中間モデルの三次元データ、および、変更前の中間モデルの三次元データは、サーバー6に記憶される。
【0039】
また、マスター型2が修正される場合、加工機械5の電動切削工具3の原点合わせが実行される。これにより、マスター型2の修正精度が向上される。たとえば、マスター型2が修正される場合に、マスター型2に段差が生じることが抑制される。また、マスター型2が修正される場合に、マスター型2の突部が折れることが抑制される。
【0040】
次に、製造工程(S104)において、衛生陶器の製品が製造される。衛生陶器は、生産型1を用いて、製造される。
【0041】
第1比較例について、図11を参照し説明する。図11は、第1比較例の製造工程を示す図である。
【0042】
第1比較例では、製品の中間モデルに対応する試作製品100(以下、「種型100」と称する。)が生成される(図11中(a))。
【0043】
次に、種型100を写し取った元型101が作製される(図11中(b))。たとえば、種型100に対して、複数の元型101が作製される。元型101は、製品を製造するための生産型103の組み合わせに応じて作製される。たとえば、2つの生産型103によって、製品を製造する場合、種型100に対して、2つの元型101a、101bが作製される。すなわち、2つの元型101a、101bを組み合わせることで、種型100に対応する空間が形成される。
【0044】
なお、元型101を用いて試作が行われて、試作評価が行われる。そして、試作評価の結果に応じて、元型101が修正される。
【0045】
次に、元型101を転写してマスター型102が作製される(図11中(c))。図11では、1つの元型101aに対応するマスター型102aが示される。なお、マスター型102を用いて、試作が行われて、試作評価の結果に応じて、マスター型102が修正される。
【0046】
次に、マスター型102を転写して生産型103(103a)が作製される(図11中(d))。次に、生産型103(103a、103b)を用いて、製品104が製造される(図11中(e))。
【0047】
第1比較例では、種型100から元型101への写し取り、元型101からマスター型102への転写、および、マスター型102から生産型103への転写が行われるため、多くの型の作製が必要となり、工程数が多くなる。また、写し取り、および、転写の回数が多くなるため、型の精度が低下する。
【0048】
なお、各型が修正される場合、各修正が作業者の手作業で行われることがある。この場合、マスター型102に対する図面が残っておらず、同型状の生産型103を複数作製することが困難である。
【0049】
これに対し、実施形態に係る衛生陶器の製造方法では、工程数を少なくすることができる。また、実施形態に係る衛生陶器の製造方法では、転写の回数を少なくすることができ、型の精度を向上させることができる。また、実施形態に係る衛生陶器の製造方法では、各状態の型(たとえば、修正前後のマスター型2)の三次元データを残すことができ、三次元データを送付することによって、離れた拠点でもマスター型2を作製することができる。
【0050】
次に、マスター型200が、樹脂・珪砂積層207によって形成される第2比較例について、図12を参照し説明する。図12は、第2比較例における衛生陶器の製造工程を示す図である。
【0051】
第2比較例では、中間モデルのデータに基づいて、試作石膏型201(201b、201b)が作製される(図12中(a))。試作石膏型201は、中間モデルのデータに基づいて、加工機械5によって作製される。
【0052】
次に、試作石膏型201を用いて試作が行われる(図12中(b))。試作では、試作石膏型201に泥漿を注入し、試作石膏型201に着肉した着肉部を焼成して、試作品が作製される。そして、試作品に対して、試作評価が行われて、試作評価の結果に応じて、試作石膏型201が修正されて、種石膏型202(202a、202b)が作製される(図12中(c))。なお、試作、および、試作評価は、複数回行われてもよい。
【0053】
次に、種石膏型202を用いて種型203が作製される(図12中(d))。種石膏型202によって形成される空間に石膏を注入し、種型203が作製される。
【0054】
次に、種型203を用いて、マスター型200用の元型204が作製される(図12中(e))。具体的には、種石膏型202、および、種型203に対して、種石膏型202の1つ(たとえば、202b)を外した物に枠組み205をセットして、石膏を注入することで、マスター型200用の元型204(たとえば、204a)が作製される。図12(e)では、1つのマスター型200用の元型204aが示される。
【0055】
次に、元型204を用いてマスター型200が作製される。具体的には、まず、元型204(204a)に鉄枠206がセットされる(図12中(f))。鉄枠206がセットされた元型204aに、樹脂・珪砂積層207が設けられる(図12中(g))。樹脂・珪砂積層207が固まった後に、元型204aが外されることで、マスター型200(200a)が作製される(図12中(h))。図12(f)~図12(h)では、1つのマスター型200用の元型204a、および、1つのマスター型200aが示される。
【0056】
次に、マスター型200を転写して生産型が作製され、生産型を用いて、衛生陶器の製品が製造される。
【0057】
第2比較例では、たとえば、種石膏型202の作製からマスター型200の作製までの作業が、作業者の手作業によって行われる。そのため、作業者の作業による作業工程が多くなる。
【0058】
これに対し、実施形態に係る衛生陶器の製造方法では、マスター型2を作製する際に作業者の手作業を低減することができる。
【0059】
衛生陶器製造システム7は、衛生陶器の製品に対する中間モデルの三次元データに基づいて、ブロック原料10を電動切削工具3によって加工し、ブロック原料10からマスター型2を作製する工程を有する。中間モデルは、衛生陶器の製品の最終モデルに対して、焼成による素地の収縮が加味されたモデルである。ブロック原料10は、樹脂材である。
【0060】
これにより、衛生陶器製造システム7は、衛生陶器を製造するためのマスター型2を作製する際に、転写回数を少なくすることができる。そのため、衛生陶器製造システム7は、マスター型2の精度を向上させることができる。すなわち、衛生陶器製造システム7は、衛生陶器の精度を向上させることができる。また、衛生陶器製造システム7は、マスター型2を作製するための工数を削減することができる。
【0061】
また、マスター型2を作製する工程では、電動切削工具3によってブロック原料10が加工された際に生じる反りが削られる。
【0062】
これにより、衛生陶器製造システム7は、マスター型2を用いて生産型1を作製する際に、反りの影響がない生産型1を作製することができる。そのため、衛生陶器製造システム7は、衛生陶器の精度を向上させることができる。
【0063】
また、マスター型2は、架台8に支持される。
【0064】
これにより、衛生陶器製造システム7は、マスター型2の変形を抑制することができる。
【0065】
また、中間モデルの三次元データは、サーバー6に記憶される。サーバー6には、最終モデルの三次元データ、および、修正前の三次元データの少なくとも1つが記憶される。修正前の三次元データは、最終モデルが変更された場合の変更前の最終モデルの三次元データ、および、中間モデルが変更された場合の変更前の中間モデルの三次元データの少なくとも1つを含む。
【0066】
これにより、衛生陶器製造システム7は、修正前後におけるモデルの三次元データを記憶させることができる。そのため、衛生陶器製造システム7は、たとえば、修正前の中間モデルの三次元データが必要となった場合に、サーバー6から、必要な三次元データを読み出すことができる。
【0067】
また、中間モデルの三次元データが変更された場合、電動切削工具3の原点合わせが実行される。
【0068】
これにより、衛生陶器製造システム7は、マスター型2が修正される場合に、マスター型2の修正精度を向上させることができる。たとえば、衛生陶器製造システム7は、マスター型2に段差や、折れなどの発生を抑制することができる。
【0069】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 生産型
2 マスター型
3 電動切削工具
4 コンピュータ
5 加工機械
6 サーバー
7 衛生陶器製造システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12