(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122463
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】蒸気タービン設備および蒸気タービン設備の制御方法
(51)【国際特許分類】
F01D 17/00 20060101AFI20240902BHJP
F01D 17/10 20060101ALI20240902BHJP
F01D 19/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
F01D17/00 J
F01D17/10 A
F01D19/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030016
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山下 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】下芝 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】峯 新一
(72)【発明者】
【氏名】今石 直之
【テーマコード(参考)】
3G071
【Fターム(参考)】
3G071AA06
3G071BA22
3G071BA26
3G071DA11
(57)【要約】
【課題】蒸気中に含まれるドレンによるエロージョンによってバイパス弁が損傷することを防止する。
【解決手段】高圧タービンと、バイパスラインと、高圧タービンバイパス弁131と、制御部と、を備え、高圧タービンバイパス弁131は、本体部131aと、軸線X1に沿った方向に沿って進退するプラグ部131bと、シート接触面131c1が形成されたシート部131cと、を有し、制御部は、発電プラントの起動時に、高圧タービンに導かれる主蒸気の温度が第1過熱度以上となったことに応じて、主蒸気に対してプラグ接触面131b3が退避した第1退避位置から第1退避位置よりもプラグ接触面131b3がシート接触面131c1に近接した第1近接位置までプラグ部131bを移動させて第1開度を減少させる発電プラントを提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気を生成するボイラから第1蒸気管を介して供給される蒸気によって駆動されるとともに第2蒸気管へ蒸気を排出する第1蒸気タービンと、
前記第1蒸気管から前記第2蒸気管へ蒸気を導く第1バイパス管と、
前記第1バイパス管に配置される第1バイパス弁と、
前記第1バイパス弁の第1開度を制御する制御部と、を備え、
前記第1バイパス弁は、
前記第1バイパス管から蒸気が流入する第1流入口と、前記第1バイパス管へ蒸気を流出させる第1流出口とを有する第1本体部と、
前記第1本体部に配置されるとともに第1所定方向に沿って進退する第1プラグ部と、
前記第1プラグ部の第1プラグ接触面と接触することにより前記第1流入口から流入した蒸気が前記第1流出口へ流出しない閉状態となる第1シート接触面が形成された第1シート部と、を有し、
前記制御部は、前記第1蒸気タービンへの蒸気の供給を開始する起動時に、前記第1蒸気タービンに導かれる蒸気の温度が第1過熱度以上となったことに応じて、前記第1流入口から前記第1本体部に流入する蒸気に対して前記第1プラグ接触面が退避した第1退避位置から前記第1退避位置よりも前記第1プラグ接触面が前記第1シート接触面に近接した第1近接位置まで前記第1プラグ部を移動させて前記第1開度を減少させる蒸気タービン設備。
【請求項2】
前記第2蒸気管を介して供給される蒸気によって駆動される第2蒸気タービンと、
前記第2蒸気管から前記第2蒸気タービンとは異なる他の機器へ蒸気を導く第2バイパス管と、
前記第2バイパス管に配置される第2バイパス弁と、を備え、
前記第2バイパス弁は、
前記第2バイパス管から蒸気が流入する第2流入口と、前記第2バイパス管へ蒸気を流出させる第2流出口とを有する第2本体部と、
前記第2本体部に配置されるとともに第2所定方向に沿って進退する第2プラグ部と、
前記第2プラグ部の第2プラグ接触面と接触することにより前記第2流入口から流入した蒸気が前記第2流出口へ流出しない閉状態となる第2シート接触面が形成された第2シート部と、を有し、
前記制御部は、前記起動時に、前記第2蒸気タービンに導かれる蒸気の温度が第2過熱度以上となったことに応じて、前記第2流入口から前記第2本体部に流入する蒸気に対して前記第2プラグ接触面が退避した第2退避位置から前記第2退避位置よりも前記第2プラグ接触面が前記第2シート接触面に近接した第2近接位置まで前記第2プラグ部を移動させて前記第2バイパス弁の第2開度を減少させる請求項1に記載の蒸気タービン設備。
【請求項3】
前記制御部は、前記起動時に、前記第1蒸気タービンに導かれる蒸気の圧力が第1所定圧力以上となったことに応じて、前記第1プラグ部の前記第1プラグ接触面を前記第1シート部の前記第1シート接触面に接触させた第1全閉位置から前記第1退避位置まで前記第1プラグ部を移動させて前記第1開度を増加させ、前記第2蒸気タービンに導かれる蒸気の圧力が第2所定圧力以上となったことに応じて、前記第2プラグ部の前記第2プラグ接触面を前記第2シート部の前記第2シート接触面に接触させた第2全閉位置から前記第2退避位置まで前記第2プラグ部を移動させて前記第2開度を増加させる請求項2に記載の蒸気タービン設備。
【請求項4】
前記第1所定圧力は0.3MPaである請求項3に記載の蒸気タービン設備。
【請求項5】
前記第2所定圧力は0.05MPaである請求項3に記載の蒸気タービン設備。
【請求項6】
前記制御部は、前記起動時に、前記第2プラグ部を前記第2退避位置から前記第2近接位置へ移動させた後に、前記第1プラグ部を前記第1退避位置から前記第1近接位置へ移動させるよう制御する請求項2に記載の蒸気タービン設備。
【請求項7】
前記第1過熱度は100℃である請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の蒸気タービン設備。
【請求項8】
前記第2過熱度は100℃である請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の蒸気タービン設備。
【請求項9】
蒸気タービン設備の制御方法であって、
前記蒸気タービン設備は、
蒸気を生成するボイラから第1蒸気管を介して供給される蒸気によって駆動されるとともに第2蒸気管へ蒸気を排出する第1蒸気タービンと、
前記第1蒸気管から前記第2蒸気管へ蒸気をバイパスさせる第1バイパス管と、
前記第1バイパス管に配置される第1バイパス弁と、を備え、
前記第1バイパス弁は、
前記第1バイパス管から蒸気が流入する第1流入口と、前記第1バイパス管へ蒸気を流出させる第1流出口とを有する第1本体部と、
前記第1本体部に配置されるとともに第1所定方向に沿って進退する第1プラグ部と、
前記第1プラグ部の第1プラグ接触面と接触することにより前記第1流入口から流入した蒸気が前記第1流出口へ流出しない閉状態となる第1シート接触面が形成された第1シート部と、を有し、
前記第1蒸気タービンへの蒸気の供給を開始する起動時に、前記第1蒸気タービンに導かれる蒸気の温度が第1過熱度以上となったことに応じて、前記第1流入口から前記第1本体部に流入する蒸気に対して前記第1プラグ接触面が退避した第1退避位置から前記第1退避位置よりも前記第1プラグ接触面が前記第1シート接触面に近接した第1近接位置まで前記第1プラグ部を移動させて前記第1バイパス弁の第1開度を減少させる制御工程を備える蒸気タービン設備の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気中に含まれるエロージョンによってバイパス弁が損傷することを防止することが可能な蒸気タービン設備および蒸気タービン設備の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電プラントなどの蒸気タービンを含むプラントにおいて、タービンへ供給される蒸気量を調整するバイパス弁が、蒸気中に含まれるエロ―ジョンによって損傷を受けることが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、バイパス弁のシート部から蒸気出口方向に沿ってコバルト基硬質合金からなる硬質合金層を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、硬質合金層を形成することにより耐エロ―ジョン性を付与してバイパス弁の寿命を延ばすことができるものの、蒸気中に含まれるドレンによるエロ―ジョンによってバイパス弁が損傷することを避けることはできない。バイパス弁が損傷してしまうと、バイパス弁を補修するためにプラントを停止するなどプラントの運用に支障が生じる。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、蒸気中に含まれるドレンによるエロージョンによってバイパス弁が損傷することを防止することが可能な蒸気タービン設備および蒸気タービン設備の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下の手段を採用する。
本開示に係る蒸気タービン設備は、蒸気を生成するボイラから第1蒸気管を介して供給される蒸気によって駆動されるとともに第2蒸気管へ蒸気を排出する第1蒸気タービンと、前記第1蒸気管から前記第2蒸気管へ蒸気を導く第1バイパス管と、前記第1バイパス管に配置される第1バイパス弁と、前記第1バイパス弁の第1開度を制御する制御部と、を備え、前記第1バイパス弁は、前記第1バイパス管から蒸気が流入する第1流入口と、前記第1バイパス管へ蒸気を流出させる第1流出口とを有する第1本体部と、前記第1本体部に配置されるとともに第1所定方向に沿って進退する第1プラグ部と、前記第1プラグ部の第1プラグ接触面と接触することにより前記第1流入口から流入した蒸気が前記第1流出口へ流出しない閉状態となる第1シート接触面が形成された第1シート部と、を有し、前記制御部は、前記第1蒸気タービンへの蒸気の供給を開始する起動時に、前記第1蒸気タービンに導かれる蒸気の温度が第1過熱度以上となったことに応じて、前記第1流入口から前記第1本体部に流入する蒸気に対して前記第1プラグ接触面が退避した第1退避位置から前記第1退避位置よりも前記第1プラグ接触面が前記第1シート接触面に近接した第1近接位置まで前記第1プラグ部を移動させて前記第1開度を減少させる。
【0007】
本開示に係る蒸気タービン設備の制御方法は、蒸気タービン設備の制御方法であって、前記蒸気タービン設備は、蒸気を生成するボイラから第1蒸気管を介して供給される蒸気によって駆動されるとともに第2蒸気管へ蒸気を排出する第1蒸気タービンと、前記第1蒸気管から前記第2蒸気管へ蒸気をバイパスさせる第1バイパス管と、前記第1バイパス管に配置される第1バイパス弁と、を備え、前記第1バイパス弁は、前記第1バイパス管から蒸気が流入する第1流入口と、前記第1バイパス管へ蒸気を流出させる第1流出口とを有する第1本体部と、前記第1本体部に配置されるとともに第1所定方向に沿って進退する第1プラグ部と、前記第1プラグ部の第1プラグ接触面と接触することにより前記第1流入口から流入した蒸気が前記第1流出口へ流出しない閉状態となる第1シート接触面が形成された第1シート部と、を有し、前記第1蒸気タービンへの蒸気の供給を開始する起動時に、前記第1蒸気タービンに導かれる蒸気の温度が第1過熱度以上となったことに応じて、前記第1流入口から前記第1本体部に流入する蒸気に対して前記第1プラグ接触面が退避した第1退避位置から前記第1退避位置よりも前記第1プラグ接触面が前記第1シート接触面に近接した第1近接位置まで前記第1プラグ部を移動させて前記第1開度を減少させる制御工程を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、蒸気中に含まれるエロージョンによってバイパス弁が損傷することを防止することが可能な蒸気タービン設備および蒸気タービン設備の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態にかかる発電プラントを示す概略構成図である。
【
図2】高圧タービンバイパス弁の端面図であり、全閉状態を示す。
【
図3】高圧タービンバイパス弁の端面図であり、全開状態を示す。
【
図4】高圧タービンバイパス弁の端面図であり、規定開度とした状態を示す。
【
図5】低圧タービンバイパス弁の端面図であり、全閉状態を示す。
【
図6】低圧タービンバイパス弁の端面図であり、全開状態を示す。
【
図7】低圧タービンバイパス弁の端面図であり、規定開度とした状態を示す。
【
図8】本実施形態の発電プラントの起動時に実行する高圧タービンバイパス弁および低圧タービンバイパス弁の制御方法を示すフローチャートである。
【
図9】高圧タービンバイパス弁の開度の変化の一例を示すタイミングチャートである。
【
図10】低圧タービンバイパス弁の開度の変化の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の一実施形態にかかる発電プラント(蒸気タービン設備)1について、図面を参照して説明する。
図1は、本開示の一実施形態にかかる発電プラント1を示す概略構成図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の発電プラント1は、ボイラ(蒸気発生器)10に設けられた熱交換器と、ボイラ10で生成した蒸気によって回転駆動される蒸気タービン111と、蒸気タービン111に連結され蒸気タービン111の回転力によって発電を行う発電機113とを備える。
【0012】
蒸気タービン111は、例えば、高圧タービン(第1蒸気タービン)111Aと中圧タービン(第2蒸気タービン)111Bと低圧タービン111Cとから構成される。ボイラ10の過熱器102で加熱された蒸気は、高圧タービン111Aを回転駆動した後、ボイラ10の再熱器103で再過熱され、中圧タービン111B、及び低圧タービン111Cを回転駆動する。低圧タービン111Cには、復水器112が連結されており、低圧タービン111Cを回転駆動した蒸気が、この復水器112で冷却水(例えば、海水や河川水など)との熱交換によって凝縮されて復水となる。
【0013】
復水器112は、給水ラインL1を介して節炭器104に連結されている。給水ラインL1には、例えば、復水ポンプ(CP)121、低圧給水ヒータ122、ボイラ給水ポンプ(BFP)123、高圧給水ヒータ124が設けられている。低圧給水ヒータ122と高圧給水ヒータ124には、蒸気タービン111を駆動する蒸気の一部が抽気されて、抽気ライン(図示省略)を介して熱源として供給され、節炭器104へ供給される給水が加熱される。
【0014】
例えば、ボイラ10が貫流ボイラの場合について説明する。節炭器104は、火炉壁101を構成する伝熱管に連結されている。節炭器104で加熱された給水は、火炉壁101を構成する伝熱管を通過する際に、火炉内の火炎から輻射を受けて加熱され、汽水分離器125へと導かれる。汽水分離器125にて分離された蒸気は、過熱器102へと供給される。汽水分離器125で分離されたドレン水は、汽水分離器ドレンタンク126へ流入し、ドレン水ラインL2を介して復水器112へと導かれる。
【0015】
ボイラ10の起動時や低負荷運転時等においては、節炭器104から供給される給水が、火炉壁101を構成する伝熱管を通過する際に全量が蒸発せず、汽水分離器125に水位が存在する運転状態(ウエット運転状態)となることがある。このウエット運転状態においては、汽水分離器125で分離され、汽水分離器ドレンタンク126に排出されたドレン水は、ボイラ循環ポンプ(BCP)127を用いて循環ラインL6により、給水ラインL1の途中に合流させることで、節炭器104から火炉壁101を構成する伝熱管へと循環して供給してもよい。
【0016】
燃焼ガスが燃焼ガス通路12を流れるとき、この燃焼ガスは、過熱器102、再熱器103、節炭器104で熱回収される。一方、ボイラ給水ポンプ(BFP)123から供給された給水は、節炭器104で予熱された後、火炉壁101を構成する伝熱管を通過する際に加熱されて蒸気となり、汽水分離器125に導かれる。
【0017】
汽水分離器125で分離された蒸気は、第1過熱器102A、第2過熱器102B、第3過熱器102Cに導入され、燃焼ガスによって過熱される。過熱器102で生成された過熱蒸気は、主蒸気ライン(第1蒸気管)L3を介して高圧タービン111Aに供給され、高圧タービン111Aを回転駆動する。高圧タービン111Aから排出された蒸気は、蒸気ライン(第2蒸気管)L4を介して第1再熱器103A、第2再熱器103Bに導入されて再度過熱される。蒸気ラインL4は、高圧タービン111Aから排出される蒸気を中圧タービン111Bへ供給する配管である。
【0018】
再過熱された蒸気は、蒸気ラインL4を介して、中圧タービン111Bを経て低圧タービン111Cに供給され、中圧タービン111Bおよび低圧タービン111Cを回転駆動する。蒸気タービン111の回転軸は、発電機113を回転駆動して、発電が行われる。低圧タービン111Cから排出された蒸気は、復水器112で冷却されることで復水となり、給水ラインL1を介して、再び、節炭器104に送られる。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の発電プラント1は、バイパスライン(第1バイパス管)L5aと、バイパスライン(第2バイパス管)L5bと、高圧タービンバイパス弁(第1バイパス弁)131と、低圧タービンバイパス弁132と、温度計133と、温度計134と、温度計135と、温度計136と、圧力計137と、圧力計138と、制御部139と、を備える。
【0020】
バイパスラインL5aは、発電プラント1の起動時や緊急停止時に、高圧タービン111Aをバイパスするように主蒸気ラインL3から蒸気ラインL4に蒸気を導く配管である。バイパスラインL5aには、高圧タービンバイパス弁131が配置される。バイパスラインL5bは、発電プラント1の起動時や緊急停止時に、中圧タービン111Bおよび低圧タービン111Cをバイパスするように蒸気ラインL4から復水器112に蒸気を導く配管である。バイパスラインL5bには、低圧タービンバイパス弁132が配置される。
【0021】
温度計133は、過熱器102から蒸気ラインL4に導かれる蒸気の温度を、バイパスラインL5aへの分岐位置の上流側で検出する装置である。温度計134は、蒸気ラインL4からバイパスラインL5aに導かれる蒸気の温度を、高圧タービンバイパス弁131の下流側で検出する装置である。
【0022】
温度計135は、蒸気ラインL4からバイパスラインL5bに導かれる蒸気の温度を、低圧タービンバイパス弁132の下流側で検出する装置である。温度計136は、再熱器103を通過した蒸気の温度を、バイパスラインL5bへの分岐位置の下流側で検出する装置である。
【0023】
圧力計137は、主蒸気ラインL3から高圧タービン111Aに導かれる蒸気の圧力を、バイパスラインL5aへの分岐位置の下流側で検出する装置である。圧力計138は、蒸気ラインL4から中圧タービン111Bに導かれる蒸気の圧力を、バイパスラインL5bへの分岐位置の下流側で検出する装置である。
【0024】
制御部139は、発電プラント1の各部を制御する装置である。制御部139は、例えば、高圧タービンバイパス弁131および低圧タービンバイパス弁132の開度を制御する。
【0025】
次に、本実施形態の高圧タービンバイパス弁131の構成について、
図2から
図4を参照して説明する。
図2から
図4は、高圧タービンバイパス弁131の端面図である。
図2は、高圧タービンバイパス弁131の全閉状態を示す。
図3は、高圧タービンバイパス弁131の全開状態を示す。
図4は、高圧タービンバイパス弁131を規定開度とした状態を示す。
【0026】
高圧タービンバイパス弁131は、本体部(第1本体部)131aと、プラグ部(第1プラグ部)131bと、シート部(第1シート部)131cと、ケージ131dと、を有する。本体部131aは、バイパスラインL5aから蒸気が流入する流入口(第1流入口)131a1と、バイパスラインL5aへ蒸気を流出させる流出口(第1流出口)131a2と、を有する。
【0027】
プラグ部131bは、本体部131aの内部に配置され、プラグ本体131b1と、プラグロッド131b2と、を有する。プラグ部131bは、駆動機構(図示略)が発生する駆動力により、軸線X1に沿った方向(第1所定方向)に沿って進退する。プラグ本体131b1は、軸線X1を中心に円板状に形成される部材であり、シート部131cと対向する先端側に、シート部131cと接触するプラグ接触面(第1プラグ接触面)131b3が形成されている。プラグ接触面131b3は、例えば、耐熱性の高い合金鋼により形成されている。プラグ接触面131b3は、プラグ本体131b1の先端側の面のうち、シート接触面131c1と接触する軸線X1を中心とした円環状の領域である。
【0028】
シート部131cは、プラグ部131bと接触することにより流入口131a1から流入した蒸気が流出口131a2へ流出しないように蒸気の流路を閉塞させる部材である。シート部131cは、本体部131aに固定されるととともに軸線X1を中心とした円環状に形成される部材である。シート部131cのプラグ部131bと対向する先端側に、プラグ接触面131b3と接触することにより蒸気の流路を閉塞させるシート接触面(第1シート接触面)131c1が形成されている。シート接触面131c1は、例えば、耐熱性の高い合金鋼により形成されている。
【0029】
ケージ131dは、軸線X1に沿って延びる円筒状に形成される部材であり、内部空間IS1にプラグ部131bが配置される。ケージ131dには、軸線X1に沿った方向の領域A1に、軸線X1回りの全周に渡って複数の貫通穴131d1が形成されている。貫通穴131d1は、バイパスラインL5aから流入口131a1へ流入した蒸気を、ケージ131dの外部空間OS1から内部空間IS1へ導く穴である。バイパスラインL5aから流入口131a1へ流入した蒸気は、外部空間OS1から内部空間IS1へ流入し、シート部131cを通過して流出口131a2に導かれる。
【0030】
図2は、プラグ部131bのプラグ接触面131b3をシート部131cのシート接触面131c1に接触させた全閉状態を示す。
図3は、流入口131a1から本体部131aに流入する蒸気に対してプラグ接触面131b3が退避した退避位置にプラグ部131bを配置した全開状態を示す。
図4は、
図3の退避位置よりもプラグ接触面131b3がシート接触面131c1に近接した近接位置にプラグ部131bを配置して規定開度とした状態を示す。
【0031】
図3および
図4に示す矢印は、蒸気の流通方向を示す。
図3に示すように、高圧タービンバイパス弁131が全開状態である場合、流入口131a1から本体部131a(具体的には外部空間OS1)に流入した蒸気は、領域A1に形成される全ての貫通穴131d1から内部空間IS1へ流入して流出口131a2へ導かれる。高圧タービンバイパス弁131が全開状態である場合、流入口131a1から本体部131aに流入する蒸気に対してプラグ接触面131b3が退避した退避位置に配置される。
【0032】
退避位置に配置されるプラグ接触面131b3は、軸線X1に沿った方向において貫通穴131d1が存在しない領域であり、領域A1とは異なる領域である。
図3に示すように、プラグ接触面131b3には、貫通穴131d1を通過した蒸気が直接的には導かれない。そのため、貫通穴131d1を通過した蒸気に含まれるドレン(固体粒子)によるエロージョンによってプラグ接触面131b3が損傷することが防止される。
【0033】
一方、
図4に示すように、高圧タービンバイパス弁131を規定開度とした状態である場合、流入口131a1から本体部131aに流入した蒸気は、領域A1に形成される貫通穴131d1のうちプラグ接触面131b3よりもシート接触面131c1に近接した位置の貫通穴131d1のみから内部空間IS1へ流入して流出口131a2へ導かれる。
【0034】
次に、本実施形態の低圧タービンバイパス弁132の構成について、
図5から
図7を参照して説明する。
図5から
図7は、低圧タービンバイパス弁132の端面図である。
図5は、低圧タービンバイパス弁132の全閉状態を示す。
図6は、低圧タービンバイパス弁132の全開状態を示す。
図7は、低圧タービンバイパス弁132を規定開度とした状態を示す。
【0035】
低圧タービンバイパス弁132は、本体部(第2本体部)132aと、プラグ部(第2プラグ部)132bと、シート部(第2シート部)132cと、ケージ132dと、を有する。本体部132aは、バイパスラインL5bから蒸気が流入する流入口(第2流入口)132a1と、バイパスラインL5bへ蒸気を流出させる流出口(第2流出口)132a2と、を有する。
【0036】
プラグ部132bは、本体部132aの内部に配置され、プラグ本体132b1と、プラグロッド132b2と、を有する。プラグ部132bは、駆動機構(図示略)が発生する駆動力により、軸線X2に沿った方向(第2所定方向)に沿って進退する。プラグ本体132b1は、軸線X2を中心に円板状に形成される部材であり、シート部132cと対向する先端側に、シート部132cと接触するプラグ接触面(第2プラグ接触面)132b3が形成されている。プラグ接触面132b3は、例えば、耐熱性の高い合金鋼により形成されている。プラグ接触面132b3は、プラグ本体132b1の先端側の面のうち、シート接触面132c1と接触する軸線X2を中心とした円環状の領域である。
【0037】
シート部132cは、プラグ部132bと接触することにより流入口132a1から流入した蒸気が流出口132a2へ流出しないように蒸気の流路を閉塞させる部材である。シート部132cは、本体部132aに固定されるととともに軸線X2を中心とした円環状に形成される部材である。シート部132cのプラグ部132bと対向する先端側に、プラグ接触面132b3と接触することにより蒸気の流路を閉塞させるシート接触面(第2シート接触面)132c1が形成されている。シート接触面132c1は、例えば、耐熱性の高い合金鋼により形成されている。
【0038】
ケージ132dは、軸線X2に沿って延びる円筒状に形成される部材であり、内部空間IS2にプラグ部131bが配置される。ケージ132dには、軸線X2に沿った方向の領域A2に、軸線X2回りの全周に渡って複数の貫通穴132d1が形成されている。貫通穴132d1は、バイパスラインL5bから流入口132a1へ流入した蒸気を、ケージ132dの外部空間OS2から内部空間IS2へ導く穴である。バイパスラインL5bから流入口132a1へ流入した蒸気は、外部空間OS2から内部空間IS2へ流入し、シート部132cを通過して流出口132a2に導かれる。
【0039】
図5は、プラグ部132bのプラグ接触面132b3をシート部132cのシート接触面132c1に接触させた全閉状態を示す。
図6は、流入口132a1から本体部132aに流入する蒸気に対してプラグ接触面132b3が退避した退避位置にプラグ部132bを配置した全開状態を示す。
図7は、
図6の退避位置よりもプラグ接触面132b3がシート接触面132c1に近接した近接位置にプラグ部132bを配置して規定開度とした状態を示す。
【0040】
図6および
図7に示す矢印は、蒸気の流通方向を示す。
図6に示すように、低圧タービンバイパス弁132が全開状態である場合、流入口132a1から本体部132a(具体的には外部空間OS1)に流入した蒸気は、領域A2に形成される全ての貫通穴132d1から内部空間IS2へ流入して流出口132a2へ導かれる。低圧タービンバイパス弁132が全開状態である場合、流入口132a1から本体部132aに流入する蒸気に対してプラグ接触面132b3が退避した退避位置に配置される。
【0041】
退避位置に配置されるプラグ接触面132b3は、軸線X2に沿った方向において貫通穴132d1が存在しない領域であり、領域A2とは異なる領域である。
図6に示すように、プラグ接触面132b3には、貫通穴132d1を通過した蒸気が直接的には導かれない。そのため、貫通穴132d1を通過した蒸気に含まれるドレンによるエロージョンによってプラグ接触面132b3が損傷することが防止される。
【0042】
一方、
図7に示すように、低圧タービンバイパス弁132を規定開度とした状態である場合、流入口132a1から本体部132aに流入した蒸気は、領域A2に形成される貫通穴132d1のうちプラグ接触面132b3よりもシート接触面132c1に近接した位置の貫通穴132d1のみから内部空間IS2へ流入して流出口132a2へ導かれる。
【0043】
次に、本実施形態の発電プラント1の起動時に実行する高圧タービンバイパス弁131および低圧タービンバイパス弁132の制御方法について説明する。
図8は、本実施形態の発電プラント1の起動時に実行する高圧タービンバイパス弁131および低圧タービンバイパス弁132の制御方法を示すフローチャートである。
図9は、高圧タービンバイパス弁131の開度の変化の一例を示すタイミングチャートである。
図10は、低圧タービンバイパス弁132の開度の変化の一例を示すタイミングチャートである。
【0044】
ステップS101で、制御部139は、発電プラント1の起動時に、圧力計137が検出する主蒸気ラインL3を流通する主蒸気の圧力が第1所定圧力P1以上であるかどうかを判定し、YESであればステップS102に処理を進め、NOであればステップS101の判定を繰り返す。
【0045】
ステップS102で、制御部139は、圧力計137が検出する主蒸気ラインL3を流通する主蒸気の圧力が第1所定圧力P1以上となったことに応じて、プラグ部131bのプラグ接触面131b3をシート部131cのシート接触面131c1に接触させた全閉位置(
図2に示す位置)から第1退避位置(
図3に示す位置)までプラグ部131bを移動させる。
【0046】
これにより、高圧タービンバイパス弁131の開度が増加し、高圧タービンバイパス弁131が
図3に示す全開状態となる。第1所定圧力P1は、例えば、0.3MPaである。
図9に示すように、高圧タービンバイパス弁131の開度は、時刻T1で0%から100%に切り替わる。
【0047】
ステップS103で、制御部139は、発電プラント1の起動時に、圧力計138が検出する蒸気ラインL4を流通する再熱蒸気の圧力が第2所定圧力P2以上であるかどうかを判定し、YESであればステップS104に処理を進め、NOであればステップS103の判定を繰り返す。
【0048】
ステップS104で、制御部139は、圧力計138が検出する蒸気ラインL4を流通する再熱蒸気の圧力が第2所定圧力P2以上となったことに応じて、プラグ部132bのプラグ接触面132b3をシート部132cのシート接触面132c1に接触させた全閉位置(
図5に示す位置)から第2退避位置(
図6に示す位置)までプラグ部132bを移動させる。
【0049】
これにより、低圧タービンバイパス弁132の開度が増加し、低圧タービンバイパス弁132が
図6に示す全開状態となる。第2所定圧力P2は、例えば、0.05MPaである。
図10に示すように、低圧タービンバイパス弁132の開度は、時刻T2で0%から100%に切り替わる。
【0050】
ステップS105で、制御部139は、温度計135が検出する低圧タービンバイパス弁132を通過する再熱蒸気の過熱度が第2過熱度以上であるかどうかを判定し、YESであればステップS106に処理を進め、NOであればステップS105の判定を繰り返す。第2過熱度は、例えば100℃である。
【0051】
なお、ステップS105において、低圧タービンバイパス弁132を通過する再熱蒸気の過熱度が第2過熱度以上であるかどうかを温度計135が検出する温度により判定するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、低圧タービンバイパス弁132と温度計135との間に再熱蒸気を所定温度以下に冷却するスプレー装置(図示略)が設けられる場合には、温度計135が所定温度を検出してから所定時間(例えば、30分程度)が経過した場合に再熱蒸気の過熱度が第2過熱度以上であると判定してもよい。
【0052】
ステップS106で、制御部139は、中圧タービン111Bに導かれる再熱蒸気の温度が第2過熱度以上となったことに応じて、流入口132a1から本体部132aに流入する蒸気に対してプラグ接触面132b3が退避した第2退避位置(
図6に示す位置)から第2退避位置よりもプラグ接触面132b3がシート接触面132c1に近接した第2近接位置(
図7に示す位置)までプラグ部132bを移動させる。
【0053】
これにより、低圧タービンバイパス弁132の開度が減少し、低圧タービンバイパス弁132が
図7に示す規定開度とした状態となる。
図10に示すように、低圧タービンバイパス弁132の開度は、時刻T3から一定の減少率で減少して時刻T4にて規定開度となる。
【0054】
全開状態を100%とした場合、規定開度は、例えば、全開状態の10%以上かつ15%以下の任意の開度に設定される。発電プラント1の起動時に、低圧タービンバイパス弁132を規定開度に設定しているのは、中圧タービン111Bに蒸気を導く際に必要な圧力を得るためである。
【0055】
ステップS107で、制御部139は、温度計134が検出する高圧タービンバイパス弁131を通過する主蒸気の過熱度が第1過熱度以上であるかどうかを判定し、YESであればステップS108に処理を進め、NOであればステップS107の判定を繰り返す。第1過熱度は、例えば100℃である。また、温度計134が検出する温度条件に加えて、温度計133が検出する主蒸気ラインL3を通過する主蒸気の過熱度が50℃以上であることを条件とする。
【0056】
ステップS108で、制御部139は、高圧タービン111Aに導かれる主蒸気の温度が第1過熱度以上となったことに応じて、流入口131a1から本体部131aに流入する蒸気に対してプラグ接触面131b3が退避した第1退避位置(
図3に示す位置)から第1退避位置よりもプラグ接触面131b3がシート接触面131c1に近接した第1近接位置(
図4に示す位置)までプラグ部131bを移動させる。
【0057】
これにより、高圧タービンバイパス弁131の開度が減少し、高圧タービンバイパス弁131が
図4に示す規定開度とした状態となる。
図9に示すように、高圧タービンバイパス弁131の開度は、時刻T4以降で一定の減少率で減少する。
【0058】
全開状態を100%とした場合、規定開度は、例えば、全開状態の10%以上かつ15%以下の任意の開度に設定される。発電プラント1の起動時に、高圧タービンバイパス弁131を規定開度に設定しているのは、高圧タービン111Aに蒸気を導く際に必要な圧力を得るためである。
【0059】
以上により、発電プラント1の起動時に実行する高圧タービンバイパス弁131および低圧タービンバイパス弁132の制御方法にかかる処理が終了する。その後、制御部139は、圧力計137が所定の第1目標圧力を検出するように高圧タービンバイパス弁131の開度を制御し、圧力計138が所定の第2目標圧力を検出するように低圧タービンバイパス弁132の開度を制御する。
【0060】
以上で説明した本実施形態の発電プラント1は、以下の作用および効果を奏する。
本実施形態の発電プラント1によれば、高圧タービン111Aへの主蒸気の供給を開始する起動時に、高圧タービン111Aに導かれる主蒸気の温度が第1過熱度以上となるまでは、プラグ接触面131b3が、流入口131a1から本体部131aに流入する主蒸気に対して退避した第1退避位置に配置される。そのため、高圧タービン111Aに導かれる主蒸気の温度が第1過熱度以上となるまでに、主蒸気中に含まれるドレンによるエロージョンによってプラグ接触面131b3が損傷することを防止することができる。
【0061】
また、本実施形態の発電プラント1によれば、高圧タービン111Aへの主蒸気の供給を開始する起動時に、高圧タービン111Aに導かれる主蒸気の温度が第1過熱度以上となったことに応じて、流入口131a1から本体部131aに流入する主蒸気に対してプラグ接触面131b3が退避した第1退避位置から第1退避位置よりもプラグ接触面131b3がシート接触面131c1に近接した第1近接位置までプラグ部131bを移動させて高圧タービンバイパス弁131の開度である第1開度を減少させる。これにより、高圧タービンバイパス弁131の開度を適切に減少させて、高圧タービン111Aの通気前に適切に昇圧することができる。
【0062】
また、本実施形態の発電プラント1によれば、中圧タービン111Bへの再熱蒸気の供給を開始する起動時に、中圧タービン111Bに導かれる再熱蒸気の温度が第2過熱度以上となったことに応じて、流入口132a1から本体部132aに流入する再熱蒸気に対してプラグ接触面132b3が退避した第2退避位置から第2退避位置よりもプラグ接触面132b3がシート接触面132c1に近接した第2近接位置までプラグ部132bを移動させて低圧タービンバイパス弁132の開度である第2開度を減少させる。これにより、低圧タービンバイパス弁132の開度を適切に減少させて、中圧タービン111Bの通気前に適切に昇圧することができる。
【0063】
また、本実施形態の発電プラント1によれば、高圧タービン111Aに導かれる主蒸気の圧力が第1所定圧力以上となったことに応じて主蒸気をバイパスラインL5aへ導き、中圧タービン111Bに導かれる再熱蒸気の圧力が第2所定圧力以上となったことに応じて再熱蒸気をバイパスラインL5bへ導き、主蒸気と再熱蒸気がそれぞれ適切な圧力となってからバイパスラインL5aおよびバイパスラインL5bへ導くことができる。
【0064】
本実施形態の発電プラント1によれば、高圧タービンバイパス弁131よりも下流側に配置される低圧タービンバイパス弁132の開度を、高圧タービンバイパス弁131の開度よりも先に減少させる。これにより、低圧タービンバイパス弁132よりも上流側に配置される高圧タービンバイパス弁131の開度を、低圧タービンバイパス弁132の開度よりも先に減少させることで、低圧タービンバイパス弁132に流入する蒸気が減少する不具合を防止することができる。
【0065】
〔他の実施形態〕
上述した実施形態では、本開示のボイラを、燃料に固体燃料を使用するボイラとして説明した。ボイラに使用される固体燃料としては、石炭、バイオマス燃料、石油コークス(PC:Petroleum Coke)燃料、石油残渣などが使用される。なお、ボイラの燃料としては、固体燃料に限らず、重油、軽油、重質油などの石油類や工場廃液、液化アンモニアなどの液体燃料も使用することができる。また、天然ガスや各種石油ガス、製鉄プロセスなどで発生する副生ガス、水素ガス、アンモニアガスなどの気体燃料も使用することができる。さらに、これらの各種燃料を組み合わせて使用する混焼ボイラにも適用することができる。また、ボイラ(蒸気発生器)の型式については、ガスタービンや焼却炉などから排出される排ガスから熱回収して蒸気を発生する排熱回収ボイラや、電気ヒータを熱源とする電気ボイラ等、その型式は限定されない。
【0066】
以上説明した各実施形態に記載の蒸気タービン設備は例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係る蒸気タービン設備(1)は、蒸気を生成するボイラ(10)から第1蒸気管(L3)を介して供給される蒸気によって駆動されるとともに第2蒸気管(L4)へ蒸気を排出する第1蒸気タービン(111A)と、前記第1蒸気管から前記第2蒸気管へ蒸気を導く第1バイパス管(L5a)と、前記第1バイパス管に配置される第1バイパス弁(131)と、前記第1バイパス弁の第1開度を制御する制御部(139)と、を備え、前記第1バイパス弁は、前記第1バイパス管から蒸気が流入する第1流入口(131a1)と、前記第1バイパス管へ蒸気を流出させる第1流出口(131a2)とを有する第1本体部(131a)と、前記第1本体部に配置されるとともに第1所定方向に沿って進退する第1プラグ部(131b)と、前記第1プラグ部の第1プラグ接触面(131b3)と接触することにより前記第1流入口から流入した蒸気が前記第1流出口へ流出しない閉状態となる第1シート接触面(131c1)が形成された第1シート部(131c)と、を有し、前記制御部は、前記第1蒸気タービンへの蒸気の供給を開始する起動時に、前記第1蒸気タービンに導かれる蒸気の温度が第1過熱度以上となったことに応じて、前記第1流入口から前記第1本体部に流入する蒸気に対して前記第1プラグ接触面が退避した第1退避位置から前記第1退避位置よりも前記第1プラグ接触面が前記第1シート接触面に近接した第1近接位置まで前記第1プラグ部を移動させて前記第1開度を減少させる。
【0067】
本開示の第1態様に係る蒸気タービン設備によれば、第1蒸気タービンへの蒸気の供給を開始する起動時に、第1蒸気タービンに導かれる蒸気の温度が第1過熱度以上となるまでは、第1プラグ接触面が、第1流入口から第1本体部に流入する蒸気に対して退避した第1退避位置に配置される。そのため、第1蒸気タービンに導かれる蒸気の温度が第1過熱度以上となるまでに、蒸気中に含まれるドレンによるエロージョンによって第1プラグ接触面が損傷することを防止することができる。
【0068】
また、本開示の第1態様に係る蒸気タービン設備によれば、第1蒸気タービンへの蒸気の供給を開始する起動時に、第1蒸気タービンに導かれる蒸気の温度が第1過熱度以上となったことに応じて、第1流入口から前記第1本体部に流入する蒸気に対して第1プラグ接触面が退避した第1退避位置から第1退避位置よりも第1プラグ接触面が第1シート接触面に近接した第1近接位置まで第1プラグ部を移動させて第1開度を減少させる。これにより、第1バイパス弁の開度を適切に減少させて、第1蒸気タービンの通気前に適切に昇圧することができる。
【0069】
本開示の第2態様に係る蒸気タービン設備は、第1態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記第2蒸気管を介して供給される蒸気によって駆動される第2蒸気タービン(111B)と、前記第2蒸気管から前記第2蒸気タービンとは異なる他の機器(112)へ蒸気を導く第2バイパス管(L5b)と、前記第2バイパス管に配置される第2バイパス弁(132)と、を備え、前記第2バイパス弁は、前記第2バイパス管から蒸気が流入する第2流入口(132a1)と、前記第2バイパス管へ蒸気を流出させる第2流出口(132a2)とを有する第2本体部(132a)と、前記第2本体部に配置されるとともに第2所定方向に沿って進退する第2プラグ部(132b)と、前記第2プラグ部の第2プラグ接触面(132b3)と接触することにより前記第2流入口から流入した蒸気が前記第2流出口へ流出しない閉状態となる第2シート接触面(132c1)が形成された第2シート部(132c)と、を有し、前記制御部は、前記起動時に、前記第2蒸気タービンに導かれる蒸気の温度が第2過熱度以上となったことに応じて、前記第2流入口から前記第2本体部に流入する蒸気に対して前記第2プラグ接触面が退避した第2退避位置から前記第2退避位置よりも前記第2プラグ接触面が前記第2シート接触面に近接した第2近接位置まで前記第2プラグ部を移動させて前記第2バイパス弁の第2開度を減少させる。
【0070】
本開示の第2態様に係る蒸気タービン設備によれば、第2蒸気タービンへの蒸気の供給を開始する起動時に、第2蒸気タービンに導かれる蒸気の温度が第2過熱度以上となるまでは、第2プラグ接触面が、第2流入口から第2本体部に流入する蒸気に対して退避した第2退避位置に配置される。そのため、第2蒸気タービンに導かれる蒸気の温度が第2過熱度以上となるまでに、蒸気中に含まれるドレンによるエロージョンによって第2プラグ接触面が損傷することを防止することができる。
【0071】
また、本開示の第2態様に係る蒸気タービン設備によれば、第2蒸気タービンへの蒸気の供給を開始する起動時に、第2蒸気タービンに導かれる蒸気の温度が第2過熱度以上となったことに応じて、第2流入口から前記第2本体部に流入する蒸気に対して第2プラグ接触面が退避した第2退避位置から第2退避位置よりも第2プラグ接触面が第2シート接触面に近接した第2近接位置まで第2プラグ部を移動させて第2開度を減少させる。これにより、第2バイパス弁の開度を適切に減少させて、第2蒸気タービンの通気前に適切に昇圧することができる。
【0072】
本開示の第3態様に係る蒸気タービン設備は、第2態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記制御部は、前記起動時に、前記第1蒸気タービンに導かれる蒸気の圧力が第1所定圧力以上となったことに応じて、前記第1プラグ部の前記第1プラグ接触面を前記第1シート部の前記第1シート接触面に接触させた第1全閉位置から前記第1退避位置まで前記第1プラグ部を移動させて前記第1開度を増加させ、前記第2蒸気タービンに導かれる蒸気の圧力が第2所定圧力以上となったことに応じて、前記第2プラグ部の前記第2プラグ接触面を前記第2シート部の前記第2シート接触面に接触させた第2全閉位置から前記第2退避位置まで前記第2プラグ部を移動させて前記第2開度を増加させる。
【0073】
本開示の第3態様に係る蒸気タービン設備によれば、第1蒸気タービンに導かれる蒸気の圧力が第1所定圧力以上となったことに応じて主蒸気を第1バイパス管へ導き、第2蒸気タービンに導かれる蒸気の圧力が第2所定圧力以上となったことに応じて再熱蒸気を第2バイパス管へ導き、主蒸気と再熱蒸気がそれぞれ適切な圧力となってから第1バイパス管および第2バイパス管へ導くことができる。
【0074】
本開示の第4態様に係る蒸気タービン設備は、第3態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記第1所定圧力は0.3MPaである。これにより、主蒸気と再熱蒸気がそれぞれ適切な圧力となってから第1バイパス管および第2バイパス管へ導くことができる。
【0075】
本開示の第5態様に係る蒸気タービン設備は、第3態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記第2所定圧力は0.05MPaである。これにより、主蒸気と再熱蒸気がそれぞれ適切な圧力となってから第1バイパス管および第2バイパス管へ導くことができる。
【0076】
本開示の第6態様に係る蒸気タービン設備は、第2態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記制御部は、前記起動時に、前記第2プラグ部を前記第2退避位置から前記第2近接位置へ移動させた後に、前記第1プラグ部を前記第1退避位置から前記第1近接位置へ移動させるよう制御する。
【0077】
本開示の第6態様に係る蒸気タービン設備によれば、第1バイパス弁よりも下流側に配置される第2バイパス弁の開度を、第1バイパス弁の開度よりも先に減少させる。これにより、第2バイパス弁よりも上流側に配置される第1バイパス弁の開度を、第2バイパス弁の開度よりも先に減少させることで、第2バイパス弁に流入する蒸気が減少する不具合を防止することができる。
【0078】
本開示の第7態様に係る蒸気タービン設備は、第2態様から第4態様のいずれかにおいて、更に以下の構成を備える。すなわち、前記第1過熱度は100℃である。
本開示の第7態様に係る蒸気タービン設備によれば、第1過熱度を適切な温度に設定することで、蒸気中に含まれるドレンによるエロージョンによって第1プラグ接触面および第2プラグ接触面が損傷することを適切に防止することができる。
【0079】
本開示の第8態様に係る蒸気タービン設備は、第2態様から第4態様のいずれかにおいて、更に以下の構成を備える。すなわち、前記第2過熱度は100℃である。
本開示の第8態様に係る蒸気タービン設備によれば、第2過熱度を適切な温度に設定することで、蒸気中に含まれるドレンによるエロージョンによって第1プラグ接触面および第2プラグ接触面が損傷することを適切に防止することができる。
【0080】
本開示の第9態様に係る蒸気タービン設備の制御方法は、蒸気タービン設備の制御方法であって、前記蒸気タービン設備は、蒸気を生成するボイラから第1蒸気管を介して供給される蒸気によって駆動されるとともに第2蒸気管へ蒸気を排出する第1蒸気タービンと、前記第1蒸気管から前記第2蒸気管へ蒸気をバイパスさせる第1バイパス管と、前記第1バイパス管に配置される第1バイパス弁と、を備え、前記第1バイパス弁は、前記第1バイパス管から蒸気が流入する第1流入口と、前記第1バイパス管へ蒸気を流出させる第1流出口とを有する第1本体部と、前記第1本体部に配置されるとともに第1所定方向に沿って進退する第1プラグ部と、前記第1プラグ部の第1プラグ接触面と接触することにより前記第1流入口から流入した蒸気が前記第1流出口へ流出しない閉状態となる第1シート接触面が形成された第1シート部と、を有し、前記第1蒸気タービンへの蒸気の供給を開始する起動時に、前記第1蒸気タービンに導かれる蒸気の温度が第1過熱度以上となったことに応じて、前記第1流入口から前記第1本体部に流入する蒸気に対して前記第1プラグ接触面が退避した第1退避位置から前記第1退避位置よりも前記第1プラグ接触面が前記第1シート接触面に近接した第1近接位置まで前記第1プラグ部を移動させて前記第1バイパス弁の第1開度を減少させる制御工程を備える。
【0081】
本開示の第9態様に係る蒸気タービン設備の制御方法によれば、第1蒸気タービンへの蒸気の供給を開始する起動時に、第1蒸気タービンに導かれる蒸気の温度が第1過熱度以上となるまでは、第1プラグ接触面が、第1流入口から第1本体部に流入する蒸気に対して退避した第1退避位置に配置される。そのため、第1蒸気タービンに導かれる蒸気の温度が第1過熱度以上となるまでに、蒸気中に含まれるドレンによるエロージョンによって第1プラグ接触面が損傷することを防止することができる。
【0082】
また、本開示の第9態様に係る蒸気タービン設備の制御方法によれば、第1蒸気タービンへの蒸気の供給を開始する起動時に、第1蒸気タービンに導かれる蒸気の温度が第1過熱度以上となったことに応じて、第1流入口から前記第1本体部に流入する蒸気に対して第1プラグ接触面が退避した第1退避位置から第1退避位置よりも第1プラグ接触面が第1シート接触面に近接した第1近接位置まで第1プラグ部を移動させて第1開度を減少させる。これにより、第1バイパス弁の開度を適切に減少させて、第1蒸気タービンへ供給される主蒸気の量を増加させ、蒸気タービン設備の起動を速やかに行うことができる。
【符号の説明】
【0083】
1 発電プラント(蒸気タービン設備)
10 ボイラ
102 過熱器
103 再熱器
104 節炭器
111 蒸気タービン
111A 高圧タービン(第1蒸気タービン)
111B 中圧タービン(第2蒸気タービン)
111C 低圧タービン
112 復水器
113 発電機
122 低圧給水ヒータ
124 高圧給水ヒータ
125 汽水分離器
126 汽水分離器ドレンタンク
131 高圧タービンバイパス弁(第1バイパス弁)
131a 本体部(第1本体部)
131a1 流入口(第1流入口)
131a2 流出口(第1流出口)
131b プラグ部(第1プラグ部)
131b1 プラグ本体
131b2 プラグロッド
131b3 プラグ接触面(第1プラグ接触面)
131c シート部(第1シート部)
131c1 シート接触面(第1シート接触面)
131d ケージ
131d1 貫通穴
132 低圧タービンバイパス弁(第2バイパス弁)
132a 本体部(第2本体部)
132a1 流入口(第2流入口)
132a2 流出口(第2流出口)
132b プラグ部(第2プラグ部)
132b1 プラグ本体
132b2 プラグロッド
132b3 プラグ接触面(第2プラグ接触面)
132c シート部(第2シート部)
132c1 シート接触面(第2シート接触面)
132d ケージ
132d1 貫通穴
133,134,135,136 温度計
137,138 圧力計
139 制御部
A1,A2 領域
IS1,IS2 内部空間
L3 主蒸気ライン
L4 蒸気ライン
L5a バイパスライン(第1バイパス管)
L5b バイパスライン(第2バイパス管)
L6 循環ライン
OS1,OS2 外部空間
P1 第1所定圧力
P2 第2所定圧力
X1,X2 軸線