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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122474
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】水洗大便器装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/02 20060101AFI20240902BHJP
   E03D 11/13 20060101ALI20240902BHJP
   E03D 9/08 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
E03D11/13
E03D9/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030034
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】篠原 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博
【テーマコード(参考)】
2D038
2D039
【Fターム(参考)】
2D038JC02
2D039AA02
2D039AD00
2D039CA01
(57)【要約】
【課題】便器本体上の適切な位置に、温水洗浄便座を容易に配置することができる水洗大便器装置を提供する。
【解決手段】本発明は、便器本体(2)及び温水洗浄便座(4)を有する水洗大便器装置(1)であって、便器本体は、汚物を受けるボウル部(2a)と、このボウル部の上端に連なり、ボウル部を囲むように形成された便器上面(2c)と、ボウル部の底部に連通した排水トラップ管路(2b)と、を備え、温水洗浄便座は、本体部(4a)と、この本体部から進退可能に設けられ、洗浄水を噴射する洗浄ノズル(4b)と、本体部に対して回動可能に取り付けられ、ボウル部を取り囲むように便器上面の上に載置される便座(4c)と、を備え、便器上面の左右方向の両端には、上方に向けて隆起したせり上がり部が設けられ、温水洗浄便座の本体部は便器本体のせり上がり部の上端よりも下方に突出するように構成されていることを特徴としている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体、及びこの便器本体の上に配置された温水洗浄便座を有する水洗大便器装置であって、
上記便器本体は、
汚物を受けるボウル部と、
このボウル部の上端に連なり、上記ボウル部を囲むように形成された便器上面と、
上記ボウル部の底部に連通した排水トラップ管路と、を備え、
上記温水洗浄便座は、
本体部と、
この本体部から進退可能に設けられ、洗浄水を噴射する洗浄ノズルと、
上記本体部に対して回動可能に取り付けられ、上記ボウル部を取り囲むように上記便器上面の上に載置される便座と、を備え、
上記便器上面の左右方向の両端には、上方に向けて隆起したせり上がり部が設けられ、上記温水洗浄便座の上記本体部は上記便器本体の上記せり上がり部の上端よりも下方に突出するように構成されていることを特徴とする水洗大便器装置。
【請求項2】
上記せり上がり部は、上記便器本体の前方側よりも、後方側が高くなるように構成されている請求項1記載の水洗大便器装置。
【請求項3】
上記せり上がり部は、上記便器本体の前方側から後方側に向けて、直線的に高さが高くなるように構成されている請求項1記載の水洗大便器装置。
【請求項4】
上記せり上がり部は、上記便器本体の前端部には設けられていない請求項1記載の水洗大便器装置。
【請求項5】
上記せり上がり部の上端には、平坦な平坦面が形成されている請求項1記載の水洗大便器装置。
【請求項6】
上記せり上がり部の上記平坦面は、上記便器本体の内方に向けて低くなるように傾斜して構成されている請求項5記載の水洗大便器装置。
【請求項7】
上記せり上がり部には、上記平坦面と上記便器上面とを接続する内傾斜面が形成されている請求項5記載の水洗大便器装置。
【請求項8】
上記せり上がり部の上記内傾斜面は、第1の曲率半径で、凹状に湾曲して形成されている請求項7記載の水洗大便器装置。
【請求項9】
上記せり上がり部の上記内傾斜面と上記平坦面は、第2の曲率半径を有する面で接続され、上記第1の曲率半径は、上記第2の曲率半径の2倍以上大きい請求項8記載の水洗大便器装置。
【請求項10】
上記第1の曲率半径は、上記便器本体の前方側よりも、後方側が小さくなるように構成されている請求項8記載の水洗大便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器装置に関し、特に、便器本体、及びこの便器本体の上に配置された温水洗浄便座を有する水洗大便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-123667号公報(特許文献1)には、壁掛式便器用取付装置、及び、トイレシステムが記載されている。このトイレシステムにおいては、便器本体が、壁面に埋め込まれた壁掛式便器用取付装置によって壁面に支持され、便器本体の上に温水洗浄機能付き便座ユニットが配置されている。このような壁掛式の便器においては、便座ユニットに温水を供給する給水管や、電力を供給する電源コードが、壁面の中から引き出されており、これらの給水管及び電源コードを便座ユニットに接続した後、便座ユニットを便器本体の上に配置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-123667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、便座ユニットに給水管や電源コードが接続された状態では、便座ユニット(温水洗浄便座)を便器本体上の適所に配置する作業の作業性が低下するという問題がある。特に、便座ユニットが、便器本体の上の適切な位置に配置されていないと、給水管や電源コードが、便器本体と便座ユニットの間に挟まり、これらを傷つけてしまう可能性がある。
【0005】
従って、本発明は、便器本体上の適切な位置に、温水洗浄便座を容易に配置することができる水洗大便器装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、便器本体、及びこの便器本体の上に配置された温水洗浄便座を有する水洗大便器装置であって、便器本体は、汚物を受けるボウル部と、このボウル部の上端に連なり、ボウル部を囲むように形成された便器上面と、ボウル部の底部に連通した排水トラップ管路と、を備え、温水洗浄便座は、本体部と、この本体部から進退可能に設けられ、洗浄水を噴射する洗浄ノズルと、本体部に対して回動可能に取り付けられ、ボウル部を取り囲むように便器上面の上に載置される便座と、を備え、便器上面の左右方向の両端には、上方に向けて隆起したせり上がり部が設けられ、温水洗浄便座の本体部は便器本体のせり上がり部の上端よりも下方に突出するように構成されていることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明によれば、便器本体の便器上面に、左右方向の両端にせり上がり部が設けられているので、温水洗浄便座を便器本体の上に配置する際、作業者は、温水洗浄便座を配置すべき適正な位置を容易に認識することができる。これにより、温水洗浄便座を便器本体の上に配置する作業の作業性を向上させることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、せり上がり部は、便器本体の前方側よりも、後方側が高くなるように構成されている。
【0009】
このように構成された本発明によれば、せり上がり部が、便器本体の前方側よりも後方側が高くなるように構成されているので、温水洗浄便座の後方側に設けられた本体部の位置を、より正確に位置決めすることができ、温水洗浄便座を配置する作業の作業性を更に向上させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、せり上がり部は、便器本体の前方側から後方側に向けて、直線的に高さが高くなるように構成されている。
【0011】
このように構成された本発明によれば、せり上がり部が、前方側から後方側に向けて、直線的に高さが高くされているので、温水洗浄便座を配置する際、温水洗浄便座の前部を把持した作業者の手と、せり上がり部が干渉しにくく、温水洗浄便座を配置する作業の作業性を、より向上させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、せり上がり部は、便器本体の前端部には設けられていない。
【0013】
このように構成された本発明によれば、せり上がり部が便器本体の前端部に設けられていないので、温水洗浄便座を便器本体の前方側から、適正位置に配置する際、温水洗浄便座とせり上がり部が干渉しにくく、温水洗浄便座を配置する作業の作業性を、更に向上させることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、せり上がり部の上端には、平坦な平坦面が形成されている。
【0015】
このように構成された本発明によれば、せり上がり部の上端に平坦面が形成されているので、便器本体の製造時や、運搬時において、突出しているせり上がり部が損傷されるのを防止することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、せり上がり部の平坦面は、便器本体の内方に向けて低くなるように傾斜して構成されている。
【0017】
このように構成された本発明によれば、せり上がり部の平坦面が便器本体の内方に向けて低くなるように傾斜しているので、温水洗浄便座を便器本体の上に配置する作業が平坦面によっても案内され、温水洗浄便座を配置する作業の作業性を、更に向上させることができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、せり上がり部には、平坦面と便器上面とを接続する内傾斜面が形成されている。
【0019】
このように構成された本発明によれば、平坦面と便器上面とを接続する内傾斜面がせり上がり部に形成されているので、温水洗浄便座を便器本体の上に配置する作業が内傾斜面によっても案内され、温水洗浄便座を配置する作業の作業性を、より向上させることができる。
【0020】
本発明において、好ましくは、せり上がり部の内傾斜面は、第1の曲率半径で、凹状に湾曲して形成されている。
【0021】
このように構成された本発明によれば、せり上がり部の内傾斜面が、第1の曲率半径で凹状に湾曲しているので、温水洗浄便座を便器本体の上に配置する作業が内傾斜面によって滑らかに案内され、温水洗浄便座を配置する作業の作業性を向上させることができる。
【0022】
本発明において、好ましくは、せり上がり部の内傾斜面と平坦面は、第2の曲率半径を有する面で接続され、第1の曲率半径は、第2の曲率半径の2倍以上大きい。
【0023】
このように構成された本発明によれば、せり上がり部の内傾斜面の第1の曲率半径が、内傾斜面と平坦面を接続する面の第2の曲率半径の2倍以上大きく構成されているので、温水洗浄便座を便器本体の上に配置する作業を、より滑らかに案内することができ、温水洗浄便座を配置する作業の作業性を向上させることができる。
【0024】
本発明において、好ましくは、第1の曲率半径は、便器本体の前方側よりも、後方側が小さくなるように構成されている。
【0025】
このように構成された本発明によれば、内傾斜面の第1の曲率半径が、便器本体の前方側よりも、後方側が小さくなるように構成されているので、温水洗浄便座を配置する作業において、温水洗浄便座の後部が、より厳密に案内され、温水洗浄便座後部の本体部を、より正確に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の水洗大便器装置によれば、温水洗浄便座を、便器本体上の適切な位置に、容易に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態の水洗大便器装置全体を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態の水洗大便器装置を、便器本体と温水洗浄便座に分解した状態を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態の水洗大便器装置の全断面図である。
図4】本発明の実施形態の水洗大便器装置を、図2のIV-IV線に沿って切断した部分拡大断面図である。
図5】本発明の実施形態の水洗大便器装置を、図2のV-V線に沿って切断した部分拡大断面図である。
図6】本発明の実施形態の水洗大便器装置を、図2のVI-VI線に沿って切断した部分拡大断面図である。
図7】本発明の実施形態の水洗大便器装置を、図2のVII-VII線に沿って切断した部分拡大断面図である。
図8】本発明の実施形態の水洗大便器装置を、図2のIIX-IIX線に沿って切断した部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器装置を説明する。
図1は、本発明の実施形態の水洗大便器装置全体を示す斜視図であり、温水洗浄便座の便座カバーを開けた状態を示している。図2は、本発明の実施形態の水洗大便器装置を、便器本体と温水洗浄便座に分解した状態を示す斜視図である。図3は、本発明の実施形態の水洗大便器装置の全断面図である。
【0029】
図1に示すように、本発明の実施形態の水洗大便器装置1は、便器本体2と、この便器本体2の上に配置された温水洗浄便座4と、を有する。また、本実施形態の水洗大便器装置1は、壁面Wに取り付けて使用される壁掛け式の水洗大便器であり、便器本体2に洗浄水を供給する貯水タンクや、汚物及び洗浄水を排出するための排水管(以上、図示せず)が、壁面Wの裏側に埋め込まれている。本実施形態において、便器本体2は陶器製である。なお、本明細書においては、便器本体2の壁面Wに近い側を便器本体2の後方側と呼び、その反対側を便器本体2の前方側と呼ぶものとする。また、壁面Wに平行な方向を、便器本体2の左右方向と呼ぶものとする。
【0030】
図2及び図3に示すように、便器本体2は、汚物を受けるボウル部2aと、ボウル部2aの底部に連通した排水トラップ管路2bと、を有する。さらに、便器本体2の上面には、ボウル部2aを囲むように便器上面2cが形成されている。この便器上面2cは、ボウル部2a上端の縁と連なっており、ほぼ水平方向に延びている。さらに、図3に示すように、ボウル部2aの上端部には、リム部2dが形成されており、このリム部2dに沿って洗浄水を吐出させるようにリム吐水口2eが形成されている。便器洗浄時においては、リム吐水口2eから吐出された洗浄水により、ボウル部2aの内壁面が洗浄されると共に、ボウル部2a内の汚物及びボウル部2aの底部に溜められた溜水が、排水トラップ管路2bを通って排出される。
【0031】
一方、図1に示すように、温水洗浄便座4は、本体部4aと、この本体部4aから進退可能に設けられた洗浄ノズル4bと、本体部4aに対して回動可能に取り付けられた便座4cと、この便座4cを覆うように、本体部4aに対して回動可能に取り付けられた便座カバー4dと、を有する。
【0032】
本体部4aは、便器本体2の上面の後方側に配置され、内部には、洗浄ノズル4bや、洗浄ノズル4bの駆動機構、洗浄ノズル4bへの洗浄水の給水系統(以上、図示せず)等が収容されている。また、図2に示すように、便器本体2の上面には、開口部2fが形成されており、この開口部2fの中に、本体部4aの底部が突出する。なお、本実施形態において、壁面Wから引き出され、温水洗浄便座4に温水を供給する給水管(図示せず)、及び温水洗浄便座4に電力を供給する電源コード(図示せず)は、便器本体2の内部から開口部2fを通って本体部4aに接続される。
【0033】
洗浄ノズル4b(図1)は、本体部4aに対し、便器本体2の前後方向に進退可能に取り付けられている。また、使用時において、洗浄ノズル4bは、本体部4aから前方斜め下方に進出し、先端部に設けられた噴射口(図示せず)から洗浄水を噴射する。これにより、水洗大便器装置1の使用者の局部が洗浄される。
【0034】
図1に示すように、便座4cは、本体部4aに対して回動可能に取り付けられ、水洗大便器装置1の使用者が座るために、ボウル部2aを取り囲むように便器上面2cの上に載置される。また、便座4cが便器上面2cの上に載置された状態では、便器本体2の上面は、本体部4a及び便座4cにより覆われる。さらに、便座4cの底面には4つの脚部4e(図2)が設けられており、これらの脚部4eと便器本体2の便器上面2cが当接することにより、便座4cが便器本体2の上方に支持される。
【0035】
便座カバー4dは、本体部4aの後部に回動可能に取り付けられている。便座カバー4dを閉じた状態においては、温水洗浄便座4の本体部4a及び便座4cが便座カバー4dによって覆われる。
【0036】
次に、図2及び図4乃至図8を参照して、便器本体2の便器上面2cに設けられているせり上がり部の構成を説明する。
図4乃至図8は、本発明の実施形態の水洗大便器装置を、図2のIV-IV線乃至IIX-IIX線に沿って切断した断面において、せり上がり部を拡大して示す図である。ここで、図4は、水洗大便器装置1を、ボウル部2aの前端部近傍で切断した断面図であり、以下、図5乃至図8は、順に、ボウル部2aの後部側に近い位置で切断した断面を示している。
【0037】
図2に示すように、便器本体2の便器上面2cには、その左右方向の両端に、上方に向けて隆起したせり上がり部6が設けられている。即ち、便器上面2cの左右方向の両端にせり上がり部6を設けることにより、便器上面2cの両端は、せり上がり、高くなっている。このせり上がり部6により、便器本体2の便器上面2cに温水洗浄便座4を配置する作業者は、視覚的に、そして手指の感触により、温水洗浄便座4を配置すべき正確な位置を認識することができ、作業性が向上する。また、温水洗浄便座4の本体部4aは、便器本体2上に配置された状態において、その一部が、便器上面2cに設けられたせり上がり部6の上端よりも下方に突出するように構成されている。
【0038】
ここで、便器本体2の便器上面2cは概ね平面であり、水平方向に向けられているのに対し、せり上がり部6の高さは、便器本体2の後方側が高くなるように構成されている。このため、せり上がり部6の上端は、水平面に対し、便器本体2の後方側が高くなるように傾斜し、せり上がり部6は、便器本体2の前方側から後方側に向けて、直線的に高さが高くなっている。そして、便器本体2の前端部付近では、せり上がり部6の高さはゼロに近くなり、便器本体2の前端部(便器上面2cの前方側の縁部の領域)にはせり上がり部6は設けられていない。このように、便器本体2の前端部にせり上がり部6が設けられていないことにより、せり上がり部6が、便器本体2の前方側から便器上面2cに温水洗浄便座4を配置する作業の邪魔にならず、作業性を向上させることができる。
【0039】
また、図4乃至図8に示すように、便座4cは、せり上がり部6の少なくとも一部を上方から覆うように配置されている。さらに、便座4cの底面に設けられた脚部4e(図5)により、便器本体2の便器上面2cと便座4cの底面の間に所定の隙間が形成されている。また、図4乃至図6に示すように、便座4cは、外周縁における厚さが、内周縁における厚さよりも薄くなるように構成されており、便器上面2cから隆起しているせり上がり部6が便座4cの底面と干渉しないようになっている。
【0040】
さらに、図4乃至図8に示すように、せり上がり部6の上端には、概ね平坦に形成された平坦面6aが形成されている。このように、せり上がり部6の上端に平坦面6aを設けることにより、便器本体2の搬送時等に、せり上がり部6が損傷するのを防止することができる。
【0041】
また、平坦面6aは、便器本体2の左右方向の断面図において、便器本体2の内方に向けて低くなるように傾斜している。このように、平坦面6aを内方に向けて低くなるように傾斜させることにより、便器上面2cに温水洗浄便座4を配置する際、作業者は手指の感触で温水洗浄便座4を配置すべき位置を認識することができ、容易に適正な位置に温水洗浄便座4を配置することができる。さらに、便器本体2の便器上面2cと、せり上がり部6の平坦面6aの間は、内傾斜面6bによって滑らかに接続されている。
【0042】
この内傾斜面6bは、便器本体2の左右方向の断面図において、第1の曲率半径R1で凹状に湾曲している。さらに、平坦な平坦面6aと、凹状に湾曲した内傾斜面6bの間も滑らかに接続されており、この平坦面6aと内傾斜面6bを接続する部分(面)は、便器本体2の左右方向の断面図において、第2の曲率半径R2で丸められている。
【0043】
ここで、凹状に湾曲した内傾斜面6bの有する第1の曲率半径R1は、図4から図8にかけて次第に小さくなっている。即ち、第1の曲率半径R1は、便器本体2の前方側よりも、後方側が徐々に小さくなるように構成されている。このように、内傾斜面6bの第1の曲率半径R1を後方側において小さくすることにより、温水洗浄便座4の本体部4aを配置すべき左右方向の位置が、より明確となり、温水洗浄便座4を適正な位置に配置しやすくなる。なお、本実施形態において、内傾斜面6bの第1の曲率半径R1は、内傾斜面6bと平坦面6aを接続する第2の曲率半径R2の2倍以上の大きさに構成されている。
【0044】
本発明の実施形態の水洗大便器装置1によれば、便器本体2の便器上面2cに、左右方向の両端にせり上がり部6が設けられている(図2)ので、温水洗浄便座4を便器本体2の上に配置する際、作業者は、温水洗浄便座4を配置すべき適正な位置を容易に認識することができる。これにより、温水洗浄便座4を便器本体2の上に配置する作業の作業性を向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、せり上がり部6が、便器本体2の前方側よりも後方側が高くなるように構成されている(図2)ので、温水洗浄便座4の後方側に設けられた本体部4aの位置を、より正確に位置決めすることができ、温水洗浄便座4を配置する作業の作業性を更に向上させることができる。
【0046】
さらに、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、せり上がり部6が、前方側から後方側に向けて、直線的に高さが高くされている(図2)ので、温水洗浄便座4を配置する際、温水洗浄便座4の前部を把持した作業者の手と、せり上がり部6が干渉しにくく、温水洗浄便座4を配置する作業の作業性を、より向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、せり上がり部6が便器本体2の前端部に設けられていない(図2)ので、温水洗浄便座4を便器本体2の前方側から、適正位置に配置する際、温水洗浄便座4とせり上がり部6が干渉しにくく、温水洗浄便座4を配置する作業の作業性を、更に向上させることができる。
【0048】
さらに、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、せり上がり部6の上端に平坦面6aが形成されている(図4乃至図8)ので、便器本体2の製造時や、運搬時において、突出しているせり上がり部6が損傷されるのを防止することができる。
【0049】
また、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、せり上がり部6の平坦面6aが便器本体2の内方に向けて低くなるように傾斜している(図4乃至図8)ので、温水洗浄便座4を便器本体2の上に配置する作業が平坦面6aによっても案内され、温水洗浄便座4を配置する作業の作業性を、更に向上させることができる。
【0050】
さらに、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、平坦面6aと便器上面2cとを接続する内傾斜面6bがせり上がり部6に形成されている(図4乃至図8)ので、温水洗浄便座4を便器本体2の上に配置する作業が内傾斜面6bによっても案内され、温水洗浄便座4を配置する作業の作業性を、より向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、せり上がり部6の内傾斜面6bが、第1の曲率半径R1で凹状に湾曲している(図4乃至図8)ので、温水洗浄便座4を便器本体2の上に配置する作業が内傾斜面6bによって滑らかに案内され、温水洗浄便座4を配置する作業の作業性を向上させることができる。
【0052】
さらに、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、せり上がり部6の内傾斜面6bの第1の曲率半径R1が、内傾斜面6bと平坦面6aを接続する面の第2の曲率半径R2の2倍以上大きく構成されているので、温水洗浄便座4を便器本体2の上に配置する作業を、より滑らかに案内することができ、温水洗浄便座4を配置する作業の作業性を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、内傾斜面6bの第1の曲率半径R1が、便器本体2の前方側よりも、後方側が小さくなるように構成されているので、温水洗浄便座4を配置する作業において、温水洗浄便座4の後部が、より厳密に案内され、温水洗浄便座4後部の本体部4aを、より正確に位置決めすることができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態の水洗大便器装置1を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、本発明を壁掛け式の水洗大便器装置1に適用していたが、床置き式の水洗大便器装置に本発明を適用することもできる。また、上述した実施形態においては、水洗大便器装置1を設置した壁面Wから延びる給水管、電源コードが、便器本体2の内部を通って、温水洗浄便座4の本体部4aに接続されていた。しかしながら、壁面又は床面から延びる給水管及び/又は電源コードが、便器本体の外部を通って温水洗浄便座に接続される水洗大便器装置に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1 水洗大便器装置
2 便器本体
2a ボウル部
2b 排水トラップ管路
2c 便器上面
2d リム部
2e リム吐水口
2f 開口部
4 温水洗浄便座
4a 本体部
4b 洗浄ノズル
4c 便座
4d 便座カバー
4e 脚部
6 せり上がり部
6a 平坦面
6b 内傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8