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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122478
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/02 20060101AFI20240902BHJP
   E03D 11/13 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
E03D11/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030038
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】中野 義一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博
(72)【発明者】
【氏名】篠原 祐紀
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AD00
2D039CA01
2D039CB01
2D039DB00
(57)【要約】
【課題】便器本体に取り付けられる電気機器と、電気機器と外部の供給源とを接続する接続部材と、接続部材を保持する保持部材とを有する水洗大便器において、保持部材を便器本体に容易に固定できるようにする。
【解決手段】水洗大便器1は、ボウル部21、リム部23及び排水トラップ部27などを備える便器本体2と、この便器本体に取り付けられる温水洗浄便座4と、この温水洗浄便座と外部の水源とを接続する給水ホース51、52と、便器本体の内部空間に配置され、給水ホースの一部分を保持するホース用保持部材50と、を有しており、このホース用保持部材は、ねじ60により便器本体に固定される締結固定部としての穴部50b1と、ねじなどを用いない係合により便器本体に固定される係合固定部としての凸部50b2と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部と、このボウル部の上縁に形成されるリム部と、上記ボウル部の底部に接続されて汚物を排出する排水トラップ部と、を備える便器本体と、
この便器本体に取り付けられる電気機器と、
この電気機器と外部の所定の供給源とを接続する接続部材と、
上記便器本体の内部空間に配置され、上記接続部材の一部分を保持する保持部材と、
を有し、
上記保持部材は、締結部材により上記便器本体に固定される締結固定部と、締結部材を用いない係合により上記便器本体に固定される係合固定部と、を有する、
ことを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記便器本体には、穴部が形成され、
上記保持部材の上記係合固定部は、上記便器本体の上記穴部と係合する凸部により構成されている、
請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記接続部材は、一端が上記供給源としての水源に接続されると共に、他端が上記電気機器に接続されて、上記水源からの水を上記電気機器に供給する給水ホースであり、
この給水ホースには、使用者が操作可能な操作部を備え、上記保持部材により保持されるバルブが設けられ、
このバルブは、上記操作部の回動操作によって開状態と閉状態とが切り替わるように構成されていると共に、開状態から閉状態へと切り替わるように上記操作部が操作されたときに、上記保持部材の上記係合固定部を上記便器本体へ押し付ける方向に力を付与するように構成されている、
請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記便器本体の上記内部空間には、下方へ傾斜する天面が形成され、
上記保持部材は、上記締結固定部から上記天面までの高さが上記係合固定部から上記天面までの高さよりも高くなるように、上記天面の下方に配置されている、
請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記排水トラップ部は、上記便器本体の上記内部空間に配置され、
上記保持部材は、上記内部空間において上記排水トラップ部の下方に配置されている、
請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係わり、特に、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水洗大便器において、ボウル部、リム部及び排水トラップ部などを備える便器本体と、この便器本体に取り付けられる温水洗浄便座などの電気機器と、この電気機器と外部の水源や電源とを接続する給水ホースや給電ケーブルなどの接続部材と、この接続部材を保持して便器本体に固定する保持部材と、を有するものが知られている。
【0003】
この種の水洗大便器が、例えば特許文献1に記載されている。特に、特許文献1には、温水洗浄便座(衛生洗浄装置)の給水ホース及び給電ケーブルを保持して便器本体に固定する保持部材が、便器本体下部の内部空間に設けられた水洗大便器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-040142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に記載された水洗大便器では、保持部材を便器本体下部の内部空間に設けていたが、この内部空間は比較的狭いので、保持部材を便器本体に固定する作業が困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、便器本体に取り付けられる電気機器と、電気機器と外部の供給源とを接続する接続部材と、接続部材を保持する保持部材とを有する水洗大便器において、保持部材を便器本体に容易に固定できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、汚物を受けるボウル部と、このボウル部の上縁に形成されるリム部と、ボウル部の底部に接続されて汚物を排出する排水トラップ部と、を備える便器本体と、この便器本体に取り付けられる電気機器と、この電気機器と外部の所定の供給源とを接続する接続部材と、便器本体の内部空間に配置され、接続部材の一部分を保持する保持部材と、を有し、保持部材は、締結部材(例えばねじなど)により便器本体に固定される締結固定部と、締結部材を用いない係合により便器本体に固定される係合固定部と、を有する、ことを特徴とする。
このように構成された本発明では、電気機器と外部の供給源とを接続する接続部材を保持する保持部材が、締結固定部及び係合固定部により便器本体に固定される。したがって、本発明によれば、保持部材の2以上の箇所が便器本体に締結固定される構成と比較して、1箇所を便器本体に締結固定し、もう1箇所は便器本体に係合すればよいので、便器本体の比較的狭い内部空間において、保持部材を便器本体に固定する作業を容易に行うことができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、便器本体には、穴部が形成され、保持部材の係合固定部は、便器本体の穴部と係合する凸部により構成されている。
このように構成された本発明によれば、保持部材の凸部を便器本体の穴部に挿入することで、保持部材を便器本体に容易に係合固定することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、接続部材は、一端が供給源としての水源に接続されると共に、他端が電気機器に接続されて、水源からの水を電気機器に供給する給水ホースであり、この給水ホースには、使用者が操作可能な操作部を備え、保持部材により保持されるバルブが設けられ、このバルブは、操作部の回動操作によって開状態と閉状態とが切り替わるように構成されていると共に、開状態から閉状態へと切り替わるように操作部が操作されたときに、保持部材の係合固定部を便器本体へ押し付ける方向に力を付与するように構成されている。
このように構成された本発明によれば、バルブが開状態から閉状態へと切り替わるように操作部が操作されたときに、保持部材の凸部を便器本体から引き離す方向に大きな力が付与されて保持部材が便器本体から外れてしまうことを防止できる。
【0010】
本発明において、好ましくは、便器本体の内部空間には、下方へ傾斜する天面が形成され、保持部材は、締結固定部から天面までの高さが係合固定部から天面までの高さよりも高くなるように、天面の下方に配置されている。
このように構成された本発明によれば、保持部材において、締結固定部が設けられた側の内部空間が、係合固定部が設けられた側の内部空間よりも広いので、保持部材を便器本体に締結固定する作業を容易に行うことができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、排水トラップ部は、便器本体の内部空間に配置され、保持部材は、内部空間において排水トラップ部の下方に配置されている。
便器本体において排水トラップ部の下方にある内部空間は比較的広いが、上記の本発明では、保持部材が、このような比較的広い内部空間に配置される。そのため、保持部材を便器本体に固定する作業をより行い易くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、便器本体に取り付けられる電気機器と、電気機器と外部の供給源とを接続する接続部材と、接続部材を保持する保持部材とを有する水洗大便器において、保持部材を便器本体に容易に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る水洗大便器を斜め上方から見た斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る水洗大便器について温水洗浄便座を取り除いた状態の上面図である。
図3図2のIII-III線に沿って見た、本発明の実施形態に係る水洗大便器の断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る水洗大便器の底面図である。
図5図2のV-V線に沿って見た、本発明の実施形態に係る水洗大便器の部分断面図である。
図6図2のVI-VI線に沿って見た、本発明の実施形態に係る水洗大便器の部分断面図である。
図7】本発明の実施形態に係るホース用保持部材について、給水ホースを保持し便器本体に固定された状態を斜め上方から見た斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係るホース用保持部材について、給水ホースを保持し便器本体に固定された状態を斜め下方から見た斜視図である。
図9】本発明の実施形態に係るホース用保持部材のみについて、その前部を斜め上方から見た斜視図である。
図10】本発明の実施形態に係るホース用保持部材のみについて、その背部(後部)を斜め上方から見た斜視図である。
図11】本発明の実施形態に係るホース用保持部材が固定される袴部の縦面(内壁面)の部分の平面図である。
図12】本発明の実施形態に係るケーブル用保持部材について、給電ケーブルを保持し便器本体に固定された状態を斜め上方から見た斜視図である。
図13】本発明の実施形態に係るケーブル用保持部材について、給電ケーブルを保持し便器本体に固定された状態を真上から見た平面図である。
図14】本発明の実施形態に係るケーブル用保持部材に保持されたコネクタを透視して示した側面図である。
図15】本発明の実施形態に係るケーブル用保持部材による便器本体の横面及び縦面への接触状態を説明するための部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る水洗大便器について説明する。
【0015】
なお、本明細書では、使用者から見て、水洗大便器の手前側を前側、奥側を後方、右側を右側、左側を左側、として説明する。また、本明細書における「使用者」は、水洗大便器を利用する者に限られず、たとえば、水洗大便器の施工やメンテナンスなどの各種作業を行う者も含むものとする。
【0016】
[全体構成]
まず、図1乃至図6を参照して、本発明の実施形態に係る水洗大便器の全体構成について説明する。図1は、本実施形態に係る水洗大便器を斜め上方から見た斜視図である。図2は、本実施形態に係る水洗大便器について温水洗浄便座を取り除いた状態の上面図である。図3は、図2のIII-III線に沿って見た、本実施形態に係る水洗大便器の断面図である。図4は、本実施形態に係る水洗大便器の底面図である。図5は、図2のV-V線に沿って見た、本実施形態に係る水洗大便器の部分断面図である。図6は、図2のVI-VI線に沿って見た、本実施形態に係る水洗大便器の部分断面図である。
【0017】
図1に示すように、水洗大便器1は、その後方側が壁面W(二点鎖線で示す)に固定される、いわゆる壁掛け式便器である。水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、この便器本体2の上部に取り付けられ、図示しない水源(洗浄水用の給水源)及び電源から洗浄水及び電力が供給されて動作する温水洗浄便座4と、を有する。温水洗浄便座4は、主に、便蓋41と、この便蓋41により覆われる図示しない便座と、使用者の局部を洗浄するように洗浄水を噴射するノズル及びこのノズルを制御する機能部を含むノズルユニット43(図1において破線で模式的に示している)などを有する。
【0018】
なお、温水洗浄便座4は本発明における「電気機器」の一例に相当するが、電気機器として温水洗浄便座4を用いることに限定はされない。少なくとも電力が供給されて動作するような種々の電気機器(一例を挙げると便器洗浄ユニットや水洗大便器1の周囲を照射する照明装置など)を適用可能である。
【0019】
続いて、図2乃至図4に示すように、水洗大便器1の便器本体2は、汚物を受けるボウル部21と、このボウル部21の上縁に形成されるリム部23と、図示しない水源からの洗浄水をボウル部21に供給する導水路25と、ボウル部21の底部に接続されて汚物を排出する排水トラップ部27と、ボウル部21及び排水トラップ部27の外側を取り囲む袴部28と、を有する。より詳しくは、排水トラップ部27は、ボウル部21の底部から後方に向かって上昇した後に下降するように形成されている(図6参照)。
【0020】
また、図2に示すように、便器本体2は、ボウル部21よりも後方に形成された凹部30を有し、この凹部30には、上記した温水洗浄便座4の一部(より具体的にはノズルユニット43の一部(典型的には機能部の一部)であり、図2において破線で模式的に示している)が収容されるようになっている。加えて、便器本体2の凹部30には、温水洗浄便座4を便器本体2の上部に取り付けるべく、当該温水洗浄便座4が接続される接続部材31と、この接続部材31よりも後方に配置され、温水洗浄便座4を便器本体2の取り付け位置に案内するための補助部材32と、が設けられている。これら接続部材31及び補助部材32は、ポリプロピレンなどの樹脂により形成され、便器本体2の上部にねじ止めされる。
【0021】
続いて、図2図3及び図5に示すように、水洗大便器1は、便器本体2の凹部30に配置され、図示しない水源と温水洗浄便座4とを接続する接続部材(つまり可撓性を有する細長い部材)としての、給水ホース51、52を有する。具体的には、給水ホース51の一端が水源に接続されると共に、給水ホース52の一端が温水洗浄便座4に接続される一方で、これら給水ホース51、52のそれぞれの他端が互いに接続されることで、水源からの水が給水ホース51、52を介して温水洗浄便座4に供給されるようになっている。図5から明らかなように、給水ホース51、52の全長は、便器本体2の上下方向の長さよりも長くなっている。
【0022】
また、図4図5及び図6に示すように、給水ホース51、52は、使用者が操作可能な操作部54aを備えるバルブ54を介して連結されている。バルブ54は、使用者による操作部54aの回動操作によって開状態と閉状態とが切り替わるように構成された止水栓である。給水ホース51、52は、このバルブ54が設けられた部分において、ポリプロピレンなどの樹脂により形成されたホース用保持部材50により保持される。ホース用保持部材50は、その長手方向と、給水ホース51、52に設けられたバルブ54の長手方向とが沿うように、当該バルブ54を保持している。
【0023】
また、ホース用保持部材50は、便器本体2の内部空間、つまり凹部30において、便器本体2の下端部に固定されている(図4図5参照)。加えて、ホース用保持部材50は、凹部30にある排水トラップ部27の下方に配置されている(図6参照)。特に、ホース用保持部材50は、排水トラップ部27において後方に向かって下方に傾斜する底面27aの下方に配置されている。この排水トラップ部27の底面27aは、ホース用保持部材50にとって、その上方に位置する天面となる。
【0024】
また、図4図5及び図6に示すように、ホース用保持部材50は、便器本体2の袴部28において前後方向に延びる内側の縦面34に固定されている。具体的には、この袴部28の縦面34は、袴部28の下部に設けられた開口部36(図4参照)の縁端部分を形成する内壁面である。これにより、ホース用保持部材50は、袴部28の縦面34に対して、袴部28の開口部36を介して、前後方向に直交する横方向から取り付けられるようになっている。また、ホース用保持部材50は、バルブ54の操作部54aが便器本体2の外部、具体的にはホース用保持部材50が取り付けられた縦面(内壁面)34の外側を向くように、バルブ54を保持している(図4図5及び図6参照)。これにより、使用者は、袴部28の開口部36から、操作部54aを容易に操作することができる。
【0025】
続いて、図2及び図3に示すように、水洗大便器1は、便器本体2の凹部30に配置され、図示しない電源と温水洗浄便座4とを接続する接続部材(つまり可撓性を有する細長い部材)としての、給電ケーブル71、72を有する。具体的には、給電ケーブル71(第1給電ケーブル)の一端が電源に接続されると共に、給電ケーブル72(第2給電ケーブル)の一端が温水洗浄便座4に接続される一方で、これら給電ケーブル71、72のそれぞれの他端が互いに接続されることで、電源からの電力が給電ケーブル71、72を介して温水洗浄便座4に供給されるようになっている。
【0026】
図3から明らかなように、給電ケーブル71、72の全長は、便器本体2の上下方向の長さよりも長くなっており、また、給電ケーブル71、72は、それぞれで長さが異なっている。具体的には、給電ケーブル72の長さのほうが給電ケーブル71の長さ(壁面Wから露出している給電ケーブル71の長さを意味する)よりも長い。また、給電ケーブル72の一部分は、上記した接続部材31の左右方向(横方向)を横断するように、当該接続部材31により保持されている(図2参照)。なお、この接続部材31は、給電ケーブル72と共に、又は給電ケーブル72の代わりに、上記した給水ホース52を保持してもよい。
【0027】
このような給電ケーブル71、72は、詳細は後述するが、図示しないコネクタを介して連結され、このコネクタが設けられた部分において、ポリプロピレンなどの樹脂により形成されたケーブル用保持部材70により保持される。ケーブル用保持部材70は、その長手方向と、給電ケーブル71、72の長手方向(つまりコネクタの長手方向)とが沿うように、コネクタを保持している。また、ケーブル用保持部材70は、便器本体2の内部空間、つまり凹部30において、上記したホース用保持部材50よりも上方の位置にて固定されている(図2図3参照)。
【0028】
以上述べたように、本実施形態に係る水洗大便器1では、図2に示すように、便器本体2に温水洗浄便座4が取り付けられていない状態において、ホース用保持部材50及びケーブル用保持部材70の両方が上方から視認できるように、これら保持部材50、70が便器本体2内に配置されている。これにより、水洗大便器1の施工性やメンテナンス性を向上させることが可能となる。なお、このようにホース用保持部材50及びケーブル用保持部材70を視認する方向(上方)は、真上だけでなく、種々の斜め上方向(典型的には給水ホース51、52や給電ケーブル71、72を避けるようにして見る方向)を含む。
【0029】
他方で、ケーブル用保持部材70は、便器本体2に温水洗浄便座4が取り付けられた状態において、外部から視認できないように便器本体2内に配置されている。つまり、ケーブル用保持部材70は、水洗大便器1の使用状態(換言すると水洗大便器1が組み立てられた状態)において隠蔽されるように便器本体2内に配置されている。より具体的には、便器本体2に温水洗浄便座4が取り付けられた状態では、当然、ケーブル用保持部材70を上方から視認できないが、ケーブル用保持部材70は便器本体2の凹部30の上部付近に設けられているので、袴部28の下部に設けられた開口部36からも視認できないようになっている(他方でホース用保持部材50は開口部36から視認できる)。これにより、使用者がケーブル用保持部材70などの給電系統に触れることを防止でき、安全性を確保することが可能となる。
【0030】
[ホース用保持部材の構成]
次に、図7乃至図11を参照して、本実施形態に係るホース用保持部材50について具体的に説明する。図7は、本実施形態に係るホース用保持部材50について、給水ホース51、52を保持し便器本体2に固定された状態を斜め上方から見た斜視図である。図8は、本実施形態に係るホース用保持部材50について、給水ホース51、52を保持し便器本体2に固定された状態を斜め下方から見た斜視図である。図9は、本実施形態に係るホース用保持部材50のみについて、その前部を斜め上方から見た斜視図である。図10は、本実施形態に係るホース用保持部材50のみについて、その背部(後部)を斜め上方から見た斜視図である。図11は、本実施形態に係るホース用保持部材50が固定される袴部28の縦面34の部分の平面図である。
なお、ホース用保持部材50については、短手方向において、袴部28の開口部36から露出しない側、つまり袴部28の縦面34に固定される側を後ろ側(後背側)とし、この側に対向する、袴部28の開口部36から露出する側を前側とする(図4乃至図6も参照)。
【0031】
図7乃至図10に示すように、ホース用保持部材50は、主に、前面50aと、この前面50aに対向する背面50bと、これら前面50a及び背面50bの中央上部を横架するように設けられて、バルブ54の上方を覆うカバー50cと、底面50dと、を有する。詳しくは、カバー50cは、一端がヒンジにて背面50bに回動可能に取り付けられ、他端が前面50aに係止されるように構成されている。
【0032】
また、図9及び図10に示すように、ホース用保持部材50の背面50bの長手方向における一方側には、締結固定部としての穴部50b1が形成されている。このホース用保持部材50の背面50bに形成された穴部50b1と、便器本体2の袴部28の縦面34に形成された穴部34a(図11参照)とに、締結部材としてのねじ60(図7参照)が挿入される。これにより、ホース用保持部材50が、袴部28の縦面34に対して締結固定される。この場合、図示しないゴムブッシュが袴部28の縦面34の穴部34aに挿入されて、このゴムブッシュにおいて、ねじ60により締結固定(ねじ止め)される。
なお、締結部材としてねじ60を用いることに限定はされず、ホース用保持部材50を便器本体2に対して締結固定可能な種々の締結部材を用いることができる。
【0033】
続いて、図10に示すように、ホース用保持部材50の背面50bの長手方向における他方側には、係合固定部としての十字形の凸部50b2が形成されている。このホース用保持部材50の背面50bに形成された凸部50b2が、便器本体2の袴部28の縦面34に形成された穴部34b(図11参照)に挿入されると、凸部50b2が穴部34bに係合することになる。これにより、ホース用保持部材50が、袴部28の縦面34に対して係合固定されるようになっている。
【0034】
ここで、上述したように、ホース用保持部材50は、排水トラップ部27において後方に向かって下方に傾斜する底面27a(ホース用保持部材50にとっての天面)の下方に配置されている(図6参照)。特に、ホース用保持部材50は、図6から明らかなように、締結固定部としての穴部50b1から底面27aまでの高さ(鉛直方向に沿った長さ)が、係合固定部としての凸部50b2から底面27aまでの高さ(鉛直方向に沿った長さ)よりも高くなるように、排水トラップ部27の底面27aの下方に配置されている。なお、ホース用保持部材50において、穴部50b1と凸部50b2との上下方向における位置はほぼ同じである。
【0035】
続いて、図7及び図8に示すように、ホース用保持部材50の前面50a及び底面50dには、バルブ54の操作部54aを収容するための切欠部50eが、これら前面50a及び底面50dを跨ぐように形成されている。バルブ54がホース用保持部材50に保持された状態においては、バルブ54の操作部54aは、ホース用保持部材50の切欠部50eから露出し、この切欠部50e内において図7及び図8中の矢印A1で示すように回動する。この場合、図7及び図8において、符号54a1で示す操作部54aの位置は、バルブ54が開状態となる位置であり、符号54a2で示す操作部54aの位置は、バルブ54が閉状態となる位置である。なお、図7及び図8では、説明の便宜上、2つの位置にある操作部54aを重ねて示している。
【0036】
このような切欠部50eは、ホース用保持部材50の前面50aに形成されている一方で、この前面50aに対向する背面50bには形成されていない。したがって、バルブ54が取り付けられた給水ホース51、52をホース用保持部材50に保持させる(取り付ける)ときに、バルブ54の操作部54aを切欠部50eから的確に露出させるためには、ホース用保持部材50を前側から見た場合、給水ホース51をホース用保持部材50の左側に位置させ、給水ホース52をホース用保持部材50の右側に位置させる必要がある。これは、給水ホース51、52をホース用保持部材50に保持させるときには、バルブ54を開状態とするように操作部54aを給水ホース51、52の長手方向に直交するように位置させるので(符号54a2で示す位置)、この位置にある操作部54aをホース用保持部材50の切欠部50eから的確に露出させる必要があるからである。このようなことから、ホース用保持部材50は、水源に接続される給水ホース51と温水洗浄便座4に接続される給水ホース52とが逆向きに取り付けられることを確実に防止できるように構成されていると言える。
【0037】
他方で、バルブ54を開状態から閉状態へと切り替えるときには、操作部54aは、上方から見ると半時計回りに回転される(図7参照)。一方、ホース用保持部材50を前側から見ると、締結固定部としての穴部50b1は背面50bの左側に形成されている一方で、係合固定部としての凸部50b2は背面50bの右側に形成されている(図7乃至図10参照)。したがって、バルブ54が開状態から閉状態へと切り替わるように操作部54aが操作されると、ホース用保持部材50の凸部50b2を袴部28の縦面34へと押し付ける方向に力が付与されることとなる。
【0038】
以上述べたように、本実施形態に係るホース用保持部材50は、ねじ60により便器本体2に固定される締結固定部としての穴部50b1と、ねじ60などを用いない係合により便器本体2に固定される係合固定部としての凸部50b2と、を有する。これにより、本実施形態によれば、ホース用保持部材50の2箇所を両方とも便器本体2に締結固定する構成と比較して、1箇所のみを便器本体2に締結固定すればよいので、便器本体2の比較的狭い内部空間においてホース用保持部材50の固定を容易に行うことが可能となる。
【0039】
[ケーブル用保持部材の構成]
次に、図12乃至図15を参照して、本実施形態に係るケーブル用保持部材70について具体的に説明する。図12は、本実施形態に係るケーブル用保持部材70について、給電ケーブル71、72を保持し便器本体2に固定された状態を斜め上方から見た斜視図である。図13は、本実施形態に係るケーブル用保持部材70について、給電ケーブル71、72を保持し便器本体2に固定された状態を真上から見た平面図である。図14は、本実施形態に係るケーブル用保持部材70(破線で示す)に保持されたコネクタ74、75を透視して示した側面図である。図15は、本実施形態に係るケーブル用保持部材70による便器本体2の横面37及び縦面38への接触状態を説明するための部分断面図である。
【0040】
図12及び図15に示すように、ケーブル用保持部材70は、便器本体2の内部空間としての凹部30(図2及び図3も参照)にある、横方向に延びる横面37と、この横面37に交わり且つ当該横面37の下方に延びる縦面38と、の両方に接するように配置されている。また、ケーブル用保持部材70は、横面37及び縦面38の両方に跨って接触するような逆L字形状に形成されている。
【0041】
具体的には、図12乃至図15に示すように、ケーブル用保持部材70は、給電ケーブル71に接続されたコネクタ74及び給電ケーブル72に接続されたコネクタ75(これらコネクタ74、75は連結された状態にある)を収容するコネクタ収容部70aと(特に図14)、このコネクタ収容部70aから横方向に延びるように連結され、締結部材としてのねじ80により便器本体2の横面37に固定される締結固定部70bと、この締結固定部70bから下方向に延びるように連結されると共にコネクタ収容部70aの背面に連結され、便器本体2の縦面38に線接触するように構成された接触部70cと(特に図15)、を有する。
【0042】
より詳しくは、図13に示すように、締結固定部70bは、ねじ80が挿入される穴部70b1を備え、この穴部70b1は、ねじ80のねじ部の径よりも大きなサイズを有する、閉じられた長穴により形成されている。これにより、ねじ80が締結固定部70bの穴部70b1に挿入された状態において、ケーブル用保持部材70の位置を調整できるようになっている。
なお、穴部70b1を、閉じられた長穴により形成することに限定はされず、一端が開放した長穴により形成してもよい。また、締結部材としてねじ80を用いることに限定はされず、ケーブル用保持部材70を便器本体2に対して締結固定可能な種々の部材を用いることができる。
【0043】
また、図15に示すように、便器本体2の横面37に形成された穴部37aにゴムブッシュ81が挿入されて、このゴムブッシュ81を用いて、ケーブル用保持部材70の締結固定部70bがねじ80にてねじ止めされる。なお、図15では、説明の便宜上、ねじ80をゴムブッシュ81から取り外して上方に位置させた状態を示している。更に、ケーブル用保持部材70は、接触部70cにおいて便器本体2の縦面38に線接触する位置から横面37と縦面38との交線までの距離L2が、ケーブル用保持部材70の下端から上記交線までの距離の半分の長さL1(ケーブル用保持部材70の中心(重心)から交線までの距離に相当する)よりも少なくとも長くなるように形成されている。図15に示す例では、距離L2が、ケーブル用保持部材70の下端から交線までの距離(L1の2倍)に概ね等しくなっている。
【0044】
なお、上記した例では、ケーブル用保持部材70の接触部70cにおいて便器本体2の縦面38に対向する面が平面により形成されており、それにより、接触部70cが縦面38に線接触していた(図15参照)。しかしながら、このように接触部70cを縦面38に線接触させることに限定はされず、他の例では、接触部70cを縦面38に点接触させてもよい。この他の例では、ケーブル用保持部材70の接触部70cにおいて便器本体2の縦面38に対向する面を曲面にて形成すればよい。
【0045】
以上述べたように、本実施形態に係るケーブル用保持部材70は、便器本体2の縦面38及び横面37の両方に接するように配置されているので、陶器により形成された便器本体2の製造誤差などによらずに、ケーブル用保持部材70を便器本体2に対して安定して固定することができる。
【0046】
[作用及び効果]
次に、上述した本実施形態に係る水洗大便器1の作用及び効果について説明する。本実施形態では、水洗大便器1は、ボウル部21、リム部23及び排水トラップ部27などを備える便器本体2と、この便器本体2に取り付けられる温水洗浄便座4(電気機器)と、この温水洗浄便座4と外部の水源とを接続する給水ホース51、52(接続部材)と、便器本体2の内部空間(つまり凹部30)に配置され、給水ホース51、52の一部分を保持するホース用保持部材50と、を有しており、このホース用保持部材50は、ねじ60により便器本体2に固定される締結固定部としての穴部50b1と、ねじ60などを用いない係合により便器本体2に固定される係合固定部としての凸部50b2と、を有する。このような本実施形態では、ホース用保持部材50の2以上の箇所を便器本体2に締結固定する構成と比較して、1箇所のみを便器本体2に締結固定し、もう1箇所は便器本体2に係合すればよいので、便器本体2の比較的狭い内部空間において、ホース用保持部材50を便器本体2に容易に固定することができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、便器本体2には、穴部34bが形成され、ホース用保持部材50の係合固定部は、便器本体2の穴部34bと係合する凸部50b2により構成されている。これにより、ホース用保持部材50の凸部50b2を便器本体2の穴部34bに挿入することで、ホース用保持部材50を便器本体2に容易に係合固定することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、給水ホース51、52は、一端が水源に接続されると共に、他端が温水洗浄便座4に接続されて、水源からの水を温水洗浄便座4に供給するものであり、この給水ホース51、52には、使用者が操作可能な温水洗浄便座4を備え、ホース用保持部材50により保持されるバルブ54が設けられ、このバルブ54は、操作部54aの回動操作によって開状態と閉状態とが切り替わるように構成されていると共に、開状態から閉状態へと切り替わるように操作部54aが操作されたときに、係合固定部としての凸部50b2を便器本体2へ押し付ける方向に力を付与するように構成されている。これにより、バルブ54が開状態から閉状態へと切り替わるように操作部54aが操作されたときに(典型的には水洗大便器1のメンテナンスが行われるとき)、ホース用保持部材50の凸部50b2を便器本体2から引き離す方向に大きな力が付与されて、ホース用保持部材50が便器本体2から外れてしまうことを防止できる。
【0049】
また、本実施形態によれば、便器本体2の内部空間には、下方へ傾斜する天面、つまり排水トラップ部27の底面27aが形成され、ホース用保持部材50は、穴部50b1から底面27aまでの高さが凸部50b2から底面27aまでの高さよりも高くなるように、底面27aの下方に配置されている。これにより、ホース用保持部材50において、締結固定部としての穴部50b1が設けられた側の内部空間が、係合固定部としての凸部50b2が設けられた側の内部空間よりも広いので、ホース用保持部材50を便器本体2に締結固定する作業を容易に行うことができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、排水トラップ部27は、便器本体2の内部空間に配置され、ホース用保持部材50は、内部空間において排水トラップ部27の下方に配置されている。この場合、便器本体2において排水トラップ部27の下方にある内部空間は比較的広く、ホース用保持部材50は、このような比較的広い内部空間に配置されている。これにより、ホース用保持部材50を便器本体2に固定する作業をより行い易くなる。
【0051】
なお、上述した実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 温水洗浄便座(電気機器)
21 ボウル部
23 リム部
27 排水トラップ部
27a 底面
28 袴部
30 凹部(内部空間)
34 縦面
34a、34b 穴部
37 横面
38 縦面
41 便蓋
43 ノズルユニット
50 ホース用保持部材
50a 前面
50b 背面
50b1 穴部
50b2 凸部
50e 切欠部
51、52 給水ホース(接続部材)
54 バルブ
54a 操作部
60 ねじ(締結部材)
70 ケーブル用保持部材
70a コネクタ収容部
70b 締結固定部
70b1 穴部
70c 接触部
71、72 給電ケーブル(接続部材)
74、75 コネクタ
80 ねじ(締結部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15