(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122483
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】作業機械および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20240902BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F9/20 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030046
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】太田 匡哉
(72)【発明者】
【氏名】吉端 達也
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003BA06
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
2D015HA03
(57)【要約】
【課題】ブレードを障害物として誤検知している可能性がある場合にオペレータに対処を促すことが可能な作業機械を提供する。
【解決手段】油圧ショベル1は、下部走行体11と、上部旋回体12と、ブレード13と、物体検知センサ3a~3cと、ディスプレイ53と、コントローラ4と、を備える。上部旋回体12は、下部走行体11に対して旋回可能である。ブレード13は、下部走行体11に取り付けられ、上下方向に動作可能である。ディスプレイ53は、オペレータにブレード13の下げ動作を促す指示を行う。コントローラ4は、物体検知センサ3a~3cにより検知した物体がブレード13の可能性があると判断した場合、指示を行わせるようにディスプレイに指令を出力する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に対して旋回可能な上部旋回体と、
前記下部走行体に取り付けられ、上下方向に動作可能なブレードと、
前記上部旋回体に配置され、周囲の物体を検知する物体検知部と、
オペレータに前記ブレードの下げ動作を促す指示を行う指示部と、
前記物体検知部により検知した物体が前記ブレードの可能性があると判断した場合、前記指示を行わせるように前記指示部に指令信号を出力するコントローラと、を備えた作業機械。
【請求項2】
前記ブレードの存在位置を検知するブレード位置検知部を更に備え、
前記コントローラは、前記ブレード位置検知部に基づいた前記ブレードの存在位置に、前記物体検知部により検知した物体の検知位置が含まれる場合、前記物体が前記ブレードの可能性があると判断する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記ブレード位置検知部は、前記下部走行体に対する前記上部旋回体の旋回角度を検知する旋回角度センサを有し、
前記コントローラは、前記旋回角度センサによって検知された旋回角度に基づいて、前記ブレードの存在位置を求める、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記ブレード位置検知部は、前記上部旋回体の周囲を撮像する撮像部を有し、
前記コントローラは、前記撮像部によって撮像された画像データに基づいて、前記ブレードの存在位置を求める、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項5】
前記物体検知部は、レーダを含む、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項6】
下部走行体と、前記下部走行体に対して旋回可能な上部旋回体と、前記下部走行体に取り付けられ、上下方向に動作可能なブレードと、を備えた作業機械の制御方法であって、
前記作業機械の周囲の物体を検知する物体検知ステップと、
前記物体検知ステップによって検知した物体が前記ブレードの可能性があるか否かを判断する判断ステップと、
前記物体検知ステップにより検知した物体が前記ブレードの可能性があると判断した場合、前記ブレードの下げ動作を促す指示を行う指示ステップと、を備えた、
作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路工事や、管埋設工事等でショベル機械が多く使用されている。ショベル機械は、下部走行体と、下部走行体に対して旋回可能な上部旋回体と、を備えている。このようなショベル機械に対して周囲の障害物を検知するためにセンサを設ける構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、ショベル機械には、下部走行体に、整地作業等に用いられるブレードが装着される場合がある(例えば、特許文献2の
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6468444号明細書
【特許文献2】特開2022-190397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ブレードがセンサの検知範囲内に入ると、ブレードを障害物として誤検知するため、障害物の存在を検知し難かった。
【0006】
本開示は、ブレードを障害物として誤検知している可能性がある場合にオペレータに対処を促すことが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の態様にかかる作業機械は、下部走行体と、上部旋回体と、ブレードと、物体検知部と、指示部と、コントローラと、を備える。上部旋回体は、下部走行体に対して旋回可能である。ブレードは、下部走行体に取り付けられ、上下方向に動作可能である。指示部は、オペレータにブレードの下げ動作を促す指示を行う。コントローラは、物体検知部により検知した物体がブレードの可能性があると判断した場合、指示を行わせるように指示部に指令を出力する。
【0008】
本開示の他の態様にかかる作業機械の制御方法は、物体検知ステップと、判断ステップと、指示ステップと、を備える。作業機械は、下部走行体と、下部走行体に対して旋回可能な上部旋回体と、下部走行体に取り付けられ、上下方向に動作可能なブレードと、を備える。物体検知ステップは、作業機械の周囲の物体を検知する。判断ステップは、物体検知ステップによって検知した物体がブレードの可能性があるか否かを判断する。指示ステップは、物体検知ステップにより検知した物体がブレードの可能性があると判断した場合、ブレードの下げ動作を促す指示を行う。
【発明の効果】
【0009】
本開示の態様によれば、ブレードを障害物として誤検知している可能性がある場合にオペレータに対処を促すことが可能な作業機械および作業機械の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本開示の実施形態1にかかる油圧ショベルを示す左側面図である。
【
図1B】本開示の実施形態1にかかる油圧ショベルを示す右側面図である。
【
図1C】本開示の実施形態1にかかる油圧ショベルを示す背面図である。
【
図2】本開示の実施形態1にかかる油圧ショベルの物体検知センサによる物体検知範囲を示す平面図である。
【
図3】本開示の実施形態1にかかる油圧ショベルの制御構成を示すブロック図である。
【
図4】本開示の実施形態1にかかる油圧ショベルにおいてブレードが物体検知センサによって検知される状態を示す側面図である。
【
図5】本開示の実施形態1にかかる油圧ショベルの動作を示すフロー図である。
【
図6】(a)本開示の実施形態2にかかる油圧ショベルの上部旋回体の左側面部を示す図である。(b)本開示の実施形態2にかかる油圧ショベルの上部旋回体の右側面部を示す図である。(c)本開示の実施形態2にかかる油圧ショベルの上部旋回体の背面部を示す図である。
【
図7】本開示の実施形態2にかかる油圧ショベルのカメラの撮像範囲を示す平面図である。
【
図8】本開示の実施形態2にかかる油圧ショベルの制御構成を示すブロック図である。
【
図9】本開示の実施形態2にかかる油圧ショベルの動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示にかかる作業機械の一例としての油圧ショベルについて図面を参照しながら以下に説明する。
【0012】
<構成>
(油圧ショベル1の概要)
図1Aは、本実施形態の油圧ショベル1の構成を示す左側面図である。
図1Bは、本実施形態の油圧ショベル1の構成を示す右側面図である。
図1Cは、油圧ショベル1の構成を示す背面図である。
【0013】
図1A~
図1Cに示すように、油圧ショベル1(作業機械の一例)は、下部走行体11と、上部旋回体12と、ブレード13と、物体検知センサ3a~3c(物体検知部の一例)と、コントローラ4(
図3参照)と、を有する。
【0014】
下部走行体11は、一対の走行装置21、22を有する。各走行装置21、22は、履帯21a、22aを有している。エンジンからの駆動力によって走行モータが回転して履帯21a、22aが駆動されることによって油圧ショベル1が走行する。
【0015】
上部旋回体12は、下部走行体11の上側に配置されている。上部旋回体12は、旋回モータ37(
図3参照)によって上下方向に沿った軸を中心として下部走行体11に対して旋回可能に構成されている。上部旋回体3にはスイングマシナリが配置されている。下部走行体11には、スイングサークルが配置されており、スイングマシナリの出力ピニオンと噛み合っている。旋回モータ37の回転駆動がスイングマシナリ(図示せず)によって減速され出力ピニオンから出力される。これにより、スイングマシナリがスイングサークルの内側または外側を回転移動し下部走行体11に対して上部旋回体12が回転する。
【0016】
上部旋回体12は、旋回フレーム23と、キャブ24と、作業機25と、エンジンルーム26と、を有する。旋回フレーム23は、下部走行体11の上側に配置されており、下部走行体11に対して旋回可能なフレームである。キャブ24は、旋回フレーム23の前部左側位置に設けられている。キャブ24は、オペレータが運転時に着座する運転席として設けられている。キャブ24の内部には、運転席、作業機25を操作するためのレバーおよびブレード13を操作するためのレバーを含む操作装置51(
図3参照)、ならびにディスプレイ53(
図3参照)等が配置されている。
【0017】
作業機25は、上部旋回体12の前部中央位置に取り付けられている。作業機25は、
図1Aに示すように、ブーム31、アーム32、バケット33を有する。ブーム31の基端部は、上部旋回体12に回動可能に連結されている。また、ブーム31の先端部はアーム32の基端部に回動可能に連結されている。アーム32の先端部は、バケット33に回動可能に連結されている。バケット33は、その開口が上部旋回体12の方向(後方)を向くことができるようにアーム32に取り付けられている。バケット33が、このような向きに取り付けられた油圧ショベル1は、バックホウと呼ばれている。
【0018】
ブーム31、アーム32およびバケット33のそれぞれに対応するように油圧シリンダ34~36(ブームシリンダ34、アームシリンダ35およびバケットシリンダ36)が配置されている。これらの油圧シリンダ34~36が駆動されることによって作業機25が駆動される。これにより、掘削等の作業が行われる。
【0019】
エンジンルーム26は、上部旋回体12のキャブ24の後側に配置されている。エンジンルーム26には、エンジン、エンジンを冷却する冷却ユニット、および油圧ポンプ等が収納されている。
【0020】
ブレード13は、下部走行体11に上下方向に動作可能に取り付けられている。ブレード13は、整地作業に用いられる。ブレード13は、一対の履帯21a、22aの前側に配置されている。ブレード13と下部走行体11の各々に接続されたブレードシリンダ38が設けられている。ブレードシリンダ38が延びるとブレード13は下方に移動し、ブレードシリンダ38が収縮するとブレード13は上方に移動する。ブレードシリンダ38は、例えば、油圧シリンダである。
【0021】
なお、本実施形態において下部走行体11の前後左右は、一対の履帯21a、22aと平行な下部走行体11の中心軸を基準として説明する。中心軸に沿った方向のうちブレード13が配置されている方向を前方向とし、前方向に対向する方向を後方向とする。ブレード13を前方に見たときの側方方向の右側、左側をそれぞれ右方向、左方向とする。また、上部旋回体12の前後左右は、キャブ24内の運転席を基準として説明する。運転席が正面に正対する方向を前方向とし、前方向に対向する方向を後方向とする。運転席が正面に正対したときの側方方向の右側、左側をそれぞれ右方向、左方向とする。
【0022】
(物体検知センサ3a~3c)
物体検知センサ3a~3cは、油圧ショベル1の周囲の物体を検知する。物体検知センサ3a~3cは、物体の存在を検知するとともに、物体の位置に関する位置情報を検知し、物体の存在と検知した位置情報とを検知信号としてコントローラ4に送信する。物体検知センサ3a~3cとしては、ミリ波レーダ、超音波センサ、およびLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)の少なくとも1種を用いることができる。なお、位置情報としては、位置そのものであってもよいし、コントローラ4で位置を演算するために必要な情報であってもよい。
【0023】
図1Aに示すように、物体検知センサ3aは、上部旋回体12の左側面部12aの下部に配置されている。
図1Bに示すように、物体検知センサ3bは、上部旋回体12の右側面部12bの下部に配置されている。
図1Cに示すように、物体検知センサ3cは、上部旋回体12の背面部12cの下部に配置されている。
【0024】
図2は、物体検知センサ3a~3cの物体検知範囲を示す平面図である。
図2では、下部走行体11に対して上部旋回体12が90°左方向に旋回している。
図2において、下部走行体11の前方向が矢印Aで示され、上部旋回体12の前方向が矢印Bで示されている。左側面部12aに配置されている物体検知センサ3aは、上部旋回体12の周囲のうち左側に存在する物体を検知する。物体検知センサ3aの検知範囲がRaとして示されている。右側面部12bに配置されている物体検知センサ3bは、上部旋回体12の周囲のうち右側に存在する物体を検知する。物体検知センサ3bの検知範囲がRbとして示されている。背面部12cに配置されている物体検知センサ3cは、上部旋回体12の周囲のうち後側に存在する物体を検知する。物体検知センサ3cの検知範囲がRcとして示されている。検知範囲Ra~Rcは、
図2において点線で囲まれている。
【0025】
検知範囲Raの一部と検知範囲Rcの一部は、互いに重なっている。検知範囲Rcの一部と検知範囲Rbの一部は互いに重なっている。これによって、油圧ショベル1の左側から後側を通って右側までを抜けなくセンサの検知範囲で覆うことができる。
【0026】
(油圧ショベル1の制御構成)
図3は、油圧ショベル1およびその制御システムの構成を示すブロック図である。
図3に示すように、油圧ショベル1は、エンジン41と、油圧ポンプ42と、動力伝達装置43と、ポンプ制御装置44と、制御弁45と、上述したコントローラ4を含む。
【0027】
エンジン41は、コントローラ4からの指令信号により制御される。油圧ポンプ42は、エンジン41によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ42から吐出された作動油は、ブームシリンダ34と、アームシリンダ35と、バケットシリンダ36と、旋回モータ37と、ブレードシリンダ38に供給される。
【0028】
上述した旋回モータ37は、例えば油圧モータである。旋回モータ37は、油圧ポンプ42からの作動油によって駆動される。旋回モータ37は、上部旋回体12を旋回させる。
【0029】
油圧ポンプ42は可変容量ポンプである。油圧ポンプ42にはポンプ制御装置44が接続されている。ポンプ制御装置44は、油圧ポンプ42の容量を制御する。ポンプ制御装置44は、例えば電磁弁を含み、コントローラ4からの指令信号により制御される。コントローラ4は、ポンプ制御装置44を制御することで、油圧ポンプ42の容量を制御する。なお、
図3では、1つの油圧ポンプが図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0030】
制御弁45は、油圧ポンプ42から油圧シリンダ34-36、38及び旋回モータ37に供給される作動油の流量を制御する。油圧シリンダ34-36、38および旋回モータ37と油圧ポンプ42とは、制御弁45を介して油圧回路によって接続されている。制御弁45は、コントローラ4からの指令信号によって制御される。コントローラ4は、制御弁45を制御することで、作業機25の動作を制御する。コントローラ4は、制御弁45を制御することで、上部旋回体12の旋回を制御する。コントローラ4は、制御弁45を制御することで、ブレード13の上下動作を制御する。
【0031】
動力伝達装置43は、エンジン41の駆動力を下部走行体11に伝達する。履帯21a、22aは、動力伝達装置43からの駆動力によって駆動されて、油圧ショベル1を走行させる。動力伝達装置43は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であるが、トルクコンバーター、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッション、またはHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)などの他の形式のトランスミッションであってもよい。
【0032】
コントローラ4は、CPUなどのプロセッサ4aを含む。プロセッサ4aは、油圧ショベル1の制御のための処理を行う。コントローラ4は、記憶装置4bを含む。記憶装置4bは、RAM或いはROMなどのメモリ、及び、HDD(Hard Disk Drive)或いはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含む。記憶装置4bは、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記憶媒体の一例である。記憶装置4bは、油圧ショベル1の制御のためのデータ及びプログラムを記憶している。
【0033】
油圧ショベル1の制御システムは、操作装置51を含む。操作装置51は、オペレータによって操作可能である。操作装置51は、例えば、レバー、ペダル、或いはスイッチを含む。操作装置51は、オペレータによる操作に応じた操作信号をコントローラ4に出力する。コントローラ4は、オペレータによる操作装置51の操作に応じて、作業機25を動作させるように、制御弁45を制御する。コントローラ4は、オペレータによる操作装置51の操作に応じて、上部旋回体12を旋回させるように、制御弁45を制御する。コントローラ4は、オペレータによる操作装置51の操作に応じて、ブレード13を上下方向に動作させるように制御弁45を制御する。コントローラ4は、オペレータによる操作装置51の操作に応じて、油圧ショベル1を走行させるように、エンジン41及び動力伝達装置43を制御する。
【0034】
油圧ショベル1の制御システムは、入力装置52とディスプレイ53(指示部の一例)とを含む。入力装置52は、オペレータによって操作可能である。入力装置52は、例えばタッチスクリーンである。ただし、入力装置52は、ハードウェアキーを含んでもよい。オペレータは、入力装置52を操作することで、油圧ショベル1に関する各種の設定を入力する。入力装置52は、オペレータの操作に応じた入力信号を出力する。
【0035】
ディスプレイ53は、例えばLCD、OELD、或いは他の種類のディスプレイである。ディスプレイ53は、コントローラ4からの指令信号に応じた画面を表示する。
【0036】
油圧ショベル1の制御システムは、旋回角度センサ61(ブレード位置検知部の一例)を更に含む。旋回角度センサ61は、上部旋回体12の下部走行体11に対する旋回角θ°を検知する。旋回角度センサ61は、旋回角θ°を示す旋回角信号をコントローラ4に出力する。
図2に示すように、下部走行体11の履帯21a、22aに沿った方向であって、上部旋回体12の旋回中心12gを通る直線を第1基準線L1とする。また、上部旋回体12の旋回中心12gを通って上部旋回体12の前後方向に沿った直線を第2基準線L2とする。旋回角θ°は、第1基準線L1と第2基準線L2によって形成される角度である。旋回角度センサ61は、例えば旋回モータ37に配置されたエンコーダや、スイングマシナリの歯を検知するセンサである。
【0037】
コントローラ4は、操作装置51から操作信号を受信する。コントローラ4は、入力装置52から入力信号を受信する。コントローラ4は、ディスプレイ53に表示させるための指令信号を出力する。コントローラ4は、旋回角度センサ61から旋回角信号を受信する。
【0038】
コントローラ4は、物体検知センサ3a~3cから、検知信号を受信する。コントローラ4は、検知信号を受信すると、検知信号に基づいて、検知した物体の位置(検知位置)を求める。検知位置は、上部旋回体12の旋回中心12gを通る前後方向をX軸(第2基準線L2と一致)とし、左右方向をY軸としたXY平面上の座標の値として求めることができる。
【0039】
ここで、ブレード13を上方向に移動させた場合、物体検知センサ3a~3cによってブレード13が物体として検知される場合がある。
図4は、ブレード13が物体検知センサ3a~3cによって検知される状態を示す側面図である。
図4では、ブレードシリンダ38を収縮させてブレード13を上方向Cに移動させており、ブレード13の一部(符号13aで示す)が物体検知センサ3aの検知範囲Raに含まれている。この場合、ブレード13を物体が存在しているとして誤検知することになる。
【0040】
コントローラ4は、物体検知センサ3a~3cによって物体を検知した場合、受信した旋回角信号に基づいて、上部旋回体12に対するブレード13の存在位置Rd(
図2参照)を求める。求めたブレード13の存在位置に検知した物体の検知位置が含まれる場合には、コントローラ4は、検知した物体がブレード13の可能性があると判断する。
【0041】
コントローラ4は、平面視における旋回角度毎のブレード13の上部旋回体12に対する存在位置をテーブルとして記憶装置4bに記憶することによって、旋回角信号からブレード13の存在位置を求めることができる。
【0042】
ブレード13の存在位置Rdは、例えば、
図2に示すように、ブレード13を含む範囲(一点鎖線で示す)とすることができる。存在位置Rdは、前端の左端位置をP1とし、前端の右端位置をP2とし、後端の左端位置をP3とし、後端の右端位置をP4とすると、位置P1、P2、P3、P4で示される。各位置P1、P2、P3、P4については、上述したXY座標における位置で定義することができる。例えば、
図2に示す旋回角度90°の場合のXY座標上におけるブレードの位置P1、P2、P3、P4の座標が記憶されている。所定間隔の旋回角度ごとにおいてブレード13の位置P1、P2、P3、P4の座標が、テーブルとして記憶装置4bに記憶されている。なお、
図2には、上部旋回体12が旋回した場合に、ブレード13が存在する可能性のある範囲が存在可能範囲Reとして示されている。存在可能範囲Reは、旋回中心12gを中心にしてブレード13の存在位置Rdを回転させた形状であり、円環状の範囲となる。
【0043】
コントローラ4は、物体検知センサ3a~3cによって検知された物体の位置が、旋回角度θから求めたブレード13の存在位置Rdである位置P1、P2、P3、P4の範囲に含まれている場合、検知した物体がブレード13の可能性があると判断する。
図2では、物体検知センサ3bによって検知された物体の検知位置がPdで示されている。
図2に示す検知位置Pdは、ブレード13の存在位置Rdに含まれているため、コントローラ4は、検知した物体がブレード13の可能性があると判断する。
【0044】
検知した物体がブレード13の可能性があると判断すると、コントローラ4は、オペレータにブレード13の下げ動作を促す指示を表示するようにディスプレイ53に指令信号を出力する。ブレード13の下げ動作を促す指示は、ディスプレイ53における表示だけに限らず、例えば音または光を発生させてもよい。
【0045】
なお、コントローラ4は、ブレード13の存在位置Rdに物体の検知位置Pdが含まれないと判断した場合には、油圧ショベル1の周囲に物体(人や障害物)が存在することをオペレータに報知するようにディスプレイ53に指令信号を出力する。例えば、
図2に示されるように柵90が存在する場合、柵90は、物体検知センサ3aによって検知されるが、ブレード13の存在位置Rdに含まれていないため、ブレード13の可能性がないと判断され、油圧ショベル1以外の物体として検知される。
【0046】
<動作>
次に、本実施形態の油圧ショベル1の動作について説明する。
図5は、本実施形態1の油圧ショベル1の動作を示すフロー図である。
【0047】
ステップS10において、コントローラ4が、物体検知センサ3a~3cからの検知信号を受信する。ステップS10は、物体検知ステップの一例に対応する。
【0048】
次に、ステップS11において、コントローラ4は、検知信号から物体の検知位置Pdを求める。
【0049】
次に、ステップS12において、コントローラ4は、物体検知センサ3a~3cによる検知信号を受信した時点における、旋回角信号を旋回角度センサ61から受信する。なお、旋回角信号の受信は、ステップS10と同時に行われても良い。
【0050】
次に、ステップS13において、コントローラ4は、旋回角信号から記憶装置4bに記憶されているデータを用いて、上部旋回体12に対するブレード13の存在位置Rdを求める。なお、旋回角信号の受信がステップS10と同時に行われる場合、ステップS11と同時に上部旋回体12に対するブレード13の存在位置Rdを求めても良い。
【0051】
次に、ステップS14において、ブレード13の存在位置Rdに、物体の検知位置Pdが含まれているか否かを判定する。ステップS14は、判断ステップの一例に対応する。含まれていない場合には、コントローラ4は、検知した物体はブレード13である可能性がないと判断し、ステップS15において、例えば、物体の存在をオペレータに報知するようにディスプレイ53に表示を行わせ、制御は終了する。
【0052】
一方、ステップS14において、ブレード13の存在位置Rdに、検知信号に基づいた物体の検知位置Pdが含まれている場合、コントローラ4は、検知した物体はブレード13の可能性があると判断する。そして、ステップS16において、オペレータにブレード13の下げ動作を促す指示を表示するようにディスプレイ53に指令信号を出力し、制御は終了する。ステップS16は、指示ステップの一例に対応する。この表示に基づいてオペレータがブレード13を下げることによって、ブレード13の誤検知を防ぎ物体検知機能を通常の状態に戻すことができる。
【0053】
(実施形態2)
次に、本開示に係る実施形態2の油圧ショベル101について説明する。
【0054】
<構成>
上記実施形態1の油圧ショベル1では、物体検知センサ3a~3cにより検知した物体がブレード13であることの可能性を、旋回角度センサ61からの旋回角信号に基づいて判断しているが、本実施形態2の油圧ショベル101では、カメラからの画像信号に基づいて判断する。
【0055】
図6(a)は、実施形態2の油圧ショベル101の上部旋回体12の左側面部12aを示す図である。
図6(b)は、実施形態2の油圧ショベル101の上部旋回体12の右側面部12bを示す図である。
図6(c)は、実施形態2の油圧ショベル101の上部旋回体12の背面部12cを示す図である。
【0056】
本実施形態2の油圧ショベル101は、カメラ5a~5d(ブレード位置検知部の一例、撮像部の一例)を備える。
図6(a)に示すように、カメラ5aは、上部旋回体12の左側面部12aの上部に配置されている。
図6(b)に示すように、カメラ5bは、上部旋回体12の右側面部12bの上部に配置されている。
図6(c)に示すように、カメラ5cは、上部旋回体12の背面部12cの上部に配置されている。カメラ5dは、
図6(a)に示すように、上部旋回体12の左側面部12aにおける、キャブ24の前ピラーの上部に配置されている。
【0057】
図7は、カメラ5a~5dの撮像範囲を示す平面図である。カメラ5aは、上部旋回体12の左側を撮像する。カメラ5aによる撮像範囲がSaとして実線で示されている。カメラ5bは、上部旋回体12の右側を撮像する。カメラ5bによる撮像範囲がSbとして実線で示されている。カメラ5cは、上部旋回体12の後側を撮像する。カメラ5cによる撮像範囲がScとして実線で示されている。カメラ5dは、上部旋回体12の前側を撮像する。カメラ5dによる撮像範囲がSdとして実線で示されている。
図7に示すように撮像範囲Saの一部と撮像範囲Scの一部は互いに重なっている。撮像範囲Scの一部と撮像範囲Sbの一部は互いに重なっている。撮像範囲Sbの一部と撮像範囲Sdの一部は互いに重なっている。撮像範囲Sdの一部と撮像範囲Saの一部は互いに重なっている。
【0058】
これにより、カメラ5a~5dによって、平面視における上部旋回体12の全周に亘って撮像することができる。また、撮像範囲Sa、Sb、Sc、Sdは、実施形態1で述べたブレード13の存在可能範囲Reを含む。このため、コントローラ4は、カメラ5a~5dが撮像した画像データを解析することによって上部旋回体12に対するブレード13の存在位置Rdを求めることができる。
【0059】
図8は、本実施形態2の油圧ショベル101の制御構成を示すブロック図である。本実施形態2の油圧ショベル101では、実施形態1の旋回角度センサ61に代わり、コントローラ4にカメラ5a~5dの画像データを含む画像信号が入力される。
【0060】
コントローラ4は、物体検知センサ3a~3cによって物体を検知した場合、受信した画像信号に基づいて、上部旋回体12に対するブレード13の存在位置Rdを求める。例えば、コントローラ4は、ブレード13の画像を記憶しており、記憶したブレード13の画像と一致する画像をカメラ5a~5dが撮像した画像データから抽出することでブレード13を検出することができる。コントローラ4は、抽出したブレード13の画像を含む範囲をブレード13の存在位置Rdと設定し、存在位置Rdの角を位置P1、P2、P3、P4として各座標を求める。コントローラ4は、求めたブレード13の存在位置Rdに物体検知センサ3a~3cで検知した物体の検知位置Pdが含まれる場合には、検知した物体がブレード13の可能性があると判断する。
【0061】
<動作>
次に、本実施形態の油圧ショベル1の動作について説明する。
図9は、本実施形態2の油圧ショベル101の動作を示すフロー図である。
【0062】
ステップS110において、コントローラ4が、物体検知センサ3a~3cからの検知信号を受信する。ステップS110は、物体検知ステップの一例に対応する。
【0063】
次に、ステップS111において、コントローラ4は、検知信号から物体の検知位置Pdを求める。
【0064】
次に、ステップS112において、コントローラ4は、カメラ5a~5dから画像信号を受信する。なお、カメラ5a~5dからの画像信号の受信は、ステップS110と同時に行われても良い。
【0065】
次に、ステップS113において、コントローラ4は、画像信号から解析を行って、上部旋回体12に対するブレード13の存在位置Rdを求める。なお、カメラ5a~5dからの画像信号の受信がステップS110と同時に行われる場合、ステップS113の解析は、ステップS111と同時に行われても良い。
【0066】
次に、ステップS114において、コントローラ4は、ブレード13の存在位置Rdに、物体の検知位置Pdが含まれているか否かを判定する。ステップS114は、判断ステップの一例に対応する。含まれていない場合には、コントローラ4は、検知した物体はブレード13の可能性がないと判断し、ステップS115において、例えば、物体の存在をオペレータに報知するようにディスプレイ53に表示を行わせ、制御は終了する。
【0067】
一方、ステップS114において、ブレード13の存在位置Rdに、検知信号に基づいた物体の検知位置Pdが含まれている場合、コントローラ4は、検知した物体はブレード13の可能性があると判断する。そして、ステップS116において、オペレータにブレード13の下げ動作を促す指示を表示するようにディスプレイ53に指令信号を出力し、制御は終了する。ステップS116は、指示ステップの一例に対応する。
【0068】
(特徴)
本実施形態1、2では、物体検知センサ3a~3cにより検知した物体がブレード13の可能性があると判断した場合、オペレータにブレード13の下げ動作を促す指示を行わせるようにディスプレイ53に指令信号を出力する。
【0069】
これにより、物体検知センサ3a~3cによって検知された物体がブレード13の可能性がある場合に、オペレータにブレード13の下げ動作を行わせて、ブレード13による誤検知を解消することができる。また、ブレード13を下げることによって、ブレード13の誤検知を防ぎ物体検知機能を通常の状態に戻すことができる。
【0070】
本実施形態1では、コントローラ4は、旋回角度センサ61によって旋回角度に基づいてブレード13の存在位置Rdを求め、ブレード13の存在位置Rdに物体検知センサ3a~3cによって検知した物体の検知位置Pdが含まれる場合に、検知した物体がブレード13の可能性があると判断する。
【0071】
これにより、物体検知センサ3a~3cがブレード13を物体として誤検知した可能性があるか否かを判断することができる。
【0072】
本実施形態2では、コントローラ4は、カメラ5a~5dによって撮像された画像データに基づいてブレード13の存在位置Rdを求め、ブレード13の存在位置Rdに物体検知センサ3a~3cによって検知した物体の検知位置Pdが含まれる場合に、物体がブレード13の可能性があると判断する。
【0073】
これにより、物体検知センサ3a~3cがブレード13を物体として誤検知した可能性があるか否かを判断することができる。
【0074】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0075】
(A)
上記実施形態1では、記憶装置4bが、旋回角度ごとのブレード13の存在位置Rd(位置P1、P2、P3、P4)を記憶しているが、これに限られるものではない。記憶装置4bは、位置P1、P2、P3、P4を求めることができるデータを記憶してればよい。例えば、記憶装置4bが位置P1に対する位置P2と位置P3と位置P4の相対的な位置関係と位置P1の旋回中心12gからの距離を記憶することによって、コントローラ4は、旋回角度θから位置P1、P2、P3、P4のxy座標を求めることができる。
【0076】
(B)
上記実施形態1、2の油圧ショベル1、101では、3つの物体検知センサ3a~3cが設けられているが、このような数および配置に限られなくてもよい。例えば、左側面部12a、右側面部12bおよび背面部12cの各々に複数の物体検知センサが横方向または上下方向に並んで設けられていてもよい。また、例えば、運転席に着座したオペレータが視認し難い油圧ショベル1の後側または右側についてのみ物体の検知を行う場合には、右側面部12bまたは背面部12cにのみ物体検知センサが設けられていればよい。また、物体検知センサ3a~3cの配置は、上部旋回体12の下部に限らなくても良いが、物体を検知する観点からは上部よりも下部の方が好ましい。
【0077】
(C)
上記実施形態2の油圧ショベル101では、4つのカメラ5a~5dが設けられているが、このような数および配置に限られなくてもよい。なお、油圧ショベル1の周囲全体を撮像範囲で覆うことが可能なカメラの配置および数が好ましい。
【0078】
(D)
上記実施形態1,2では、ブレード13の存在位置Rdを平面視において矩形状に設定しているが、これに限らなくてもよく、ブレード13の平面視の外形状に合わせて4点よりも多く位置を設定してもよい。
【0079】
(E)
上記実施の形態では、旋回モータ27は油圧モータであるが、これに限られるものではなく、電動モータであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示によれば、ブレードを障害物として誤検知している可能性がある場合にオペレータに対処を促すことが可能な効果を有し、油圧ショベル等の作業機械に有用である。
【符号の説明】
【0081】
1 :油圧ショベル
3a :物体検知センサ
3b :物体検知センサ
3c :物体検知センサ
4 :コントローラ
11 :下部走行体
12 :上部旋回体
13 :ブレード
53 :ディスプレイ