(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122484
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】コーティング層の除去方法及びコーティング層の除去装置
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20240902BHJP
B26D 7/18 20060101ALI20240902BHJP
B24C 1/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
B26D7/18 A
B24C1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030048
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 太寿
(72)【発明者】
【氏名】深谷 知巳
(72)【発明者】
【氏名】大西 郷
(72)【発明者】
【氏名】長澤 俊明
【テーマコード(参考)】
3C021
4F401
【Fターム(参考)】
3C021FA00
4F401AA02
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA16
4F401AA22
4F401AA23
4F401AA24
4F401AA26
4F401AB10
4F401AD02
4F401BA13
4F401CA35
4F401CA38
4F401CA39
4F401CA91
(57)【要約】
【課題】ロールツーロールで搬送される積層フィルムからコーティング層を効率よく容易に除去できるコーティング層の除去方法を提供すること。
【解決手段】第1の基材フィルム51及び第1のコーティング層52を有する第1の積層フィルム50を第1のロール1から繰り出す第1の繰出工程と、第2の基材フィルム51A及び第2のコーティング層52Aを有する第2の積層フィルム50Aを第2のロール2から繰り出す第2の繰出工程と、前記第1の積層フィルム50の第1の基材フィルム51の側の面と、前記第2の積層フィルム50Aの第2の基材フィルム51Aの側の面とを対向させて融着積層フィルム600を得る融着工程と、融着積層フィルム600からコーティング層52,52Aを除去する除去工程と、コーティング層52,52Aが除去された後の融着積層フィルム600をロール状に巻き取る巻取工程と、を有する、コーティング層の除去方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材フィルム及び第1のコーティング層を有する第1の積層フィルムが巻回された第1のロールと、第2の基材フィルム及び第2のコーティング層を有する第2の積層フィルムが巻回された第2のロールとを準備する工程と、
前記第1のロールから前記第1の積層フィルムを繰り出す第1の繰出工程と、
前記第2のロールから前記第2の積層フィルムを繰り出す第2の繰出工程と、
繰り出された前記第1の積層フィルムの前記第1の基材フィルムの側の面と、繰り出された前記第2の積層フィルムの前記第2の基材フィルムの側の面とを対向させ、前記第1の積層フィルムと前記第2の積層フィルムとを融着させて融着積層フィルムを得る融着工程と、
前記融着積層フィルムから前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層を除去する除去工程と、
前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層が除去された後の前記融着積層フィルムをロール状に巻き取る巻取工程と、を有する、
コーティング層の除去方法。
【請求項2】
前記融着工程は、前記第1の積層フィルム及び前記第2の積層フィルムの少なくとも一方に、超音波ホーンで超音波振動を付与することにより前記第1の積層フィルムと前記第2の積層フィルムとを融着させる工程である、
請求項1に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項3】
前記融着工程の後、かつ前記除去工程の前に、前記融着積層フィルムを延伸する延伸工程をさらに有する、
請求項1または請求項2に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項4】
前記除去工程は、前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層の少なくとも一方を前記融着積層フィルムから粘着ロールに転着させる工程である、
請求項1または請求項2に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項5】
前記除去工程は、前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層の少なくとも一方をブレード又はワイヤブラシを用いて前記融着積層フィルムから掻き落す工程である、
請求項1または請求項2に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項6】
前記除去工程は、前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層の少なくとも一方を前記融着積層フィルムからブラスト材で削り取る工程である、
請求項1または請求項2に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項7】
前記第1の積層フィルム及び前記第2の積層フィルムの少なくとも一方は、セラミックグリーンシート付き積層フィルムであり、
前記セラミックグリーンシート付き積層フィルムであるコーティング層の側には、セラミックグリーンシートが付着している、
請求項1または請求項2に記載のコーティング層の除去方法。
【請求項8】
第1の基材フィルム及び第1のコーティング層を有する第1の積層フィルムが巻回された第1のロールから前記第1の積層フィルムを繰り出す第1の繰出手段と、
第2の基材フィルム及び第2のコーティング層を有する第2の積層フィルムが巻回された第2のロールから前記第2の積層フィルムを繰り出す第2の繰出手段と、
繰り出された前記第1の積層フィルムの前記第1の基材フィルムの側の面と、繰り出された前記第2の積層フィルムの前記第2の基材フィルムの側の面とを対向させ、前記第1の積層フィルムと前記第2の積層フィルムとを融着させて融着積層フィルムを得る融着手段と、
前記融着積層フィルムから前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層を除去する除去手段と、
前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層が除去された後の前記融着積層フィルムをロール状に巻き取る巻取手段と、を備える、
コーティング層の除去装置。
【請求項9】
前記融着手段は、前記第1の積層フィルム及び前記第2の積層フィルムの少なくとも一方に、超音波振動を付与する超音波ホーンである、
請求項8に記載のコーティング層の除去装置。
【請求項10】
前記融着積層フィルムを延伸する延伸手段をさらに有する、
請求項8または請求項9に記載のコーティング層の除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング層の除去方法及びコーティング層の除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球資源保護や環境保護等の観点から、各種分野で、廃棄物の発生抑制、再使用、及び再生利用等の取組みを通じて、循環型社会の構築を目指す動きが活発化している。
例えば、特許文献1には、プラスチック部品の表面に塗装膜が形成された塗膜付きプラスチック部品を400℃以上1000℃以下の高温雰囲気に曝して、前記塗装膜を脆化処理して除去することを特徴とする塗膜付きプラスチック部品の処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の処理方法は、様々なサイズのプラスチック部品を直接高温雰囲気に曝して表面の塗装膜を脆化させるため、脆化が不十分な箇所が生じ、塗装膜を容易に除去できない可能性がある。また、特許文献1に記載の処理方法は、プラスチック部品全体を高温雰囲気に曝すため、塗装膜だけでなく、プラスチック部品まで脆化する可能性がある。
一方、ロールツーロールで積層フィルムからコーティング層を除去する技術においては、処理効率を向上させる観点から、搬送中の各工程においてプラスチックフィルム(基材フィルム)の破断を生じさせないことが求められる。特許文献1に記載の技術は、プラスチックまで脆化する可能性があるため、ロールツーロールへの適用が困難である。
【0005】
本発明の目的は、ロールツーロールで搬送される積層フィルムからコーティング層を効率よく容易に除去できるコーティング層の除去方法及びコーティング層の除去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]第1の基材フィルム及び第1のコーティング層を有する第1の積層フィルムが巻回された第1のロールと、第2の基材フィルム及び第2のコーティング層を有する第2の積層フィルムが巻回された第2のロールとを準備する工程と、前記第1のロールから前記第1の積層フィルムを繰り出す第1の繰出工程と、前記第2のロールから前記第2の積層フィルムを繰り出す第2の繰出工程と、繰り出された前記第1の積層フィルムの前記第1の基材フィルムの側の面と、繰り出された前記第2の積層フィルムの前記第2の基材フィルムの側の面とを対向させ、前記第1の積層フィルムと前記第2の積層フィルムとを融着させて融着積層フィルムを得る融着工程と、前記融着積層フィルムから前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層を除去する除去工程と、前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層が除去された後の前記融着積層フィルムをロール状に巻き取る巻取工程と、を有する、コーティング層の除去方法。
[2]前記融着工程は、前記第1の積層フィルム及び前記第2の積層フィルムの少なくとも一方に、超音波ホーンで超音波振動を付与することにより前記第1の積層フィルムと前記第2の積層フィルムとを融着させる工程である、
前記[1]に記載のコーティング層の除去方法。
[3]前記融着工程の後、かつ前記除去工程の前に、前記融着積層フィルムを延伸する延伸工程をさらに有する、前記[1]または[2]に記載のコーティング層の除去方法。
[4]前記除去工程は、前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層の少なくとも一方を前記融着積層フィルムから粘着ロールに転着させる工程である、
前記[1]から[3]のいずれか一項に記載のコーティング層の除去方法。
[5]前記除去工程は、前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層の少なくとも一方をブレード又はワイヤブラシを用いて前記融着積層フィルムから掻き落す工程である、前記[1]から[3]のいずれか一項に記載のコーティング層の除去方法。
[6]前記除去工程は、前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層の少なくとも一方を前記融着積層フィルムからブラスト材で削り取る工程である、
前記[1]から[3]のいずれか一項に記載のコーティング層の除去方法。
[7]前記第1の積層フィルム及び前記第2の積層フィルムの少なくとも一方は、セラミックグリーンシート付き積層フィルムであり、前記セラミックグリーンシート付き積層フィルムであるコーティング層の側には、セラミックグリーンシートが付着している、
前記[1]から[6]のいずれか一項に記載のコーティング層の除去方法。
[8]第1の基材フィルム及び第1のコーティング層を有する第1の積層フィルムが巻回された第1のロールから前記第1の積層フィルムを繰り出す第1の繰出手段と、第2の基材フィルム及び第2のコーティング層を有する第2の積層フィルムが巻回された第2のロールから前記第2の積層フィルムを繰り出す第2の繰出手段と、繰り出された前記第1の積層フィルムの前記第1の基材フィルムの側の面と、繰り出された前記第2の積層フィルムの前記第2の基材フィルムの側の面とを対向させ、前記第1の積層フィルムと前記第2の積層フィルムとを融着させて融着積層フィルムを得る融着手段と、前記融着積層フィルムから前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層を除去する除去手段と、前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層が除去された後の前記融着積層フィルムをロール状に巻き取る巻取手段と、を備える、
コーティング層の除去装置。
[9]前記融着手段は、前記第1の積層フィルム及び前記第2の積層フィルムの少なくとも一方に、超音波振動を付与する超音波ホーンである、
前記[8]に記載のコーティング層の除去装置。
[10]前記融着積層フィルムを延伸する延伸手段をさらに有する、
前記[8]または[9]に記載のコーティング層の除去装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、ロールツーロールで搬送される積層フィルムからコーティング層を効率よく容易に除去できるコーティング層の除去方法及びコーティング層の除去装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】第1実施形態に係る除去方法で用いられる第1の積層フィルムの断面図。
【
図1B】第1実施形態に係る融着工程で得られる融着積層フィルムの断面図。
【
図1C】セラミックグリーンシート付き積層フィルムの斜視図。
【
図3】変形例1に係る延伸手段を備える除去装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、「第1」及び「第2」等の序数による表現は、構成を区別することを目的としており、順序を意味するものではない。
本明細書において、序数を付していない表現、例えば、「積層フィルム」という表現は、積層フィルムの総称であり、「第1」及び「第2」等の序数を付した積層フィルムに共通する説明をするときに使用する。
例えば、「第1の積層フィルム」及び「第2の積層フィルム」のように序数を付して表記した複数の構成に共通して適用される説明がなされる場合に、序数を除いた「積層フィルム」と表記することにより、「第1の積層フィルム」及び「第2の積層フィルム」をまとめて表現する。
【0010】
〔第1実施形態〕
〔コーティング層の除去方法〕
本実施形態に係るコーティング層の除去方法(以下、本実施形態に係る除去方法とも称する)は、第1の基材フィルム及び第1のコーティング層を有する第1の積層フィルムが巻回された第1のロールと、第2の基材フィルム及び第2のコーティング層を有する第2の積層フィルムが巻回された第2のロールとを準備する工程(以下、準備工程とも称する)と、前記第1のロールから前記第1の積層フィルムを繰り出す第1の繰出工程と、前記第2のロールから前記第2の積層フィルムを繰り出す第2の繰出工程と、繰り出された前記第1の積層フィルムの前記第1の基材フィルムの側の面と、繰り出された前記第2の積層フィルムの前記第2の基材フィルムの側の面とを対向させ、前記第1の積層フィルムと前記第2の積層フィルムとを融着させて融着積層フィルムを得る融着工程と、前記融着積層フィルムから前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層を除去する除去工程と、前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層が除去された後の前記融着積層フィルムをロール状に巻き取る巻取工程と、を有する。
【0011】
図1Aは、本実施形態に係る除去方法で用いられる第1の積層フィルム50の断面図である。第1の積層フィルム50は、第1の基材フィルム51と、第1のコーティング層52とを有する。第1の積層フィルム50は、第1の基材フィルム51と第1のコーティング層52とが直接積層している。
【0012】
本実施形態に係る融着工程では、第1の積層フィルム及び第2の積層フィルムの基材フィルム同士を対向させ、2枚の積層フィルムを融着させて融着積層フィルムを得る。
図1Bには、融着工程で得られる融着積層フィルムの断面図が示されている。
図1Bに示すように、第2の積層フィルム50Aは、第2の基材フィルム51Aと、第2のコーティング層52Aとを有する。第2の積層フィルム50Aは、第2の基材フィルム51Aと第2のコーティング層52Aとが直接積層している。
第2の積層フィルム50Aは、第1の積層フィルム50と同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。第1の積層フィルム50及び第2の積層フィルム50Aが互いに異なる構成とは、積層フィルム50,50Aをそれぞれ構成する基材フィルム及びコーティング層のうち、少なくとも一方が異なることをいう。
【0013】
本実施形態に係る融着工程で得られる融着積層フィルム600は、
図1Bに示すように、外側の表裏に2層のコーティング層52,52Aが露出し、内側に基材フィルム51,51Aが融着された融着基材フィルム510を含む構造を有する。
本実施形態に係る除去方法によれば、融着工程で得た融着積層フィルム600において、コーティング層52,52Aが外側の表裏に露出しているため、続く除去工程でコーティング層52,52Aを容易に除去することができる。
本実施形態に係る除去方法は、ロールツーロールで実施されるため、コーティング層の除去から基材フィルムの巻き取りまで、基材フィルムに破断を生じさせないことが重要である。本実施形態では、融着工程で融着積層フィルム600を得た後に、除去工程及び巻取工程を実施する。融着工程で得た融着積層フィルム600は、2枚の積層フィルムが融着され、かつ基材フィルム51,51Aが内側で融着されているため、搬送時の強度(例えば引張強度など)が高められた積層フィルムとなる。本実施形態に係る除去方法は、このような強度が高められた融着積層フィルム600を用いて除去工程及び巻取工程を実施するため、1枚の積層フィルムを用いた場合に比べて、基材フィルムの破断を顕著に抑制できる。ゆえに、コーティング層の除去から基材フィルムの巻き取りまでの処理速度を上げることができる。また、融着積層フィルム600の強度が高くなるため、搬送時に融着積層フィルム600にかかる張力の上限値を大きくすることができる。
よって、本実施形態に係る除去方法によれば、融着工程を実施し、強度の高い融着積層フィルム600を得てから、除去工程及び巻取工程を実施するのでロールツーロールの処理効率を向上できる。
中でも、積層フィルムとして、セラミックグリーンシート付き積層フィルムのように、コーティング層の表面に微小な切れ目(セラミックグリーンシートの打ち抜き加工で生じる切れ目)のある積層フィルムを用いた場合に、基材フィルムの破断の抑制効果が顕著に発現する。通常は、前記微小な切れ目を起点として積層フィルムが破断され易くなるところ、本実施形態では、融着工程で、2枚の積層フィルムが融着されることで、前記微小な切れ目周辺のフィルム強度が補われるからである
以上より、本実施形態に係る除去方法によれば、ロールツーロールで搬送される積層フィルムからコーティング層を効率よく容易に除去できる。
また、除去工程後は、コーティング層52,52Aが除去された融着基材フィルム510が得られるため、巻取工程で、2枚の基材フィルム51,51Aを1枚の融着基材フィルム510として巻き取る(回収する)ことができる。
巻取工程で回収した融着基材フィルム510は、リサイクルされ、プラスチック製品及び化学製品の原料などに再利用される。本実施形態の除去方法で回収された融着基材フィルム510は、成型グレード用の樹脂ペレットに加工されて再利用されることが好ましい。
さらに本実施形態に係る除去方法は、ロールツーロール方式を採用するため、繰出工程から巻取工程までの各工程を連続して実施できる。
よって、本実施形態に係る除去方法によれば、積層フィルムからコーティング層を効率よく容易に除去できる。
【0014】
本実施形態に係る除去方法の各工程について説明する。
【0015】
<準備工程>
本実施形態に係る準備工程は、第1の基材フィルム51及び第1のコーティング層52を有する第1の積層フィルム50が巻回された第1のロールと、第2の基材フィルム51A及び第2のコーティング層52Aを有する第2の積層フィルム50Aが巻回された第2のロールとを準備する工程である。
準備工程においては、例えば、幅及び長さの揃った第1のロール及び第2のロールの組み合わせを選択すること、並びに、融着工程における基材フィルム51,51Aの融着の容易性を考慮した第1のロール及び第2のロールの組み合わせを選択することが好ましい。
基材フィルム51,51Aの融着の容易性の観点から、第1の基材フィルム51及び第2の基材フィルム51Aは、互いに同一の材料もしくは類似の材料で構成されていることが好ましい。
【0016】
第1の積層フィルム50及び第2の積層フィルム50Aの少なくとも一方が、セラミックグリーンシートの製造に用いられ、前記セラミックグリーンシートが剥離された後の積層フィルムであってもよい。当該積層フィルムには、セラミックグリーンシートの残渣が付着していてもよい。セラミックグリーンシートは、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の製造に用いられることが好ましい。
第1の積層フィルム50及び第2の積層フィルム50Aの両方が、セラミックグリーンシートの製造に用いられ、前記セラミックグリーンシートが剥離された後の積層フィルムであってもよい。
【0017】
第1の積層フィルム50及び第2の積層フィルム50Aの少なくとも一方が、セラミックグリーンシート付き積層フィルムであり、セラミックグリーンシート付き積層フィルムであるコーティング層の側には、セラミックグリーンシートが付着していてもよい。第1の積層フィルム50及び第2の積層フィルム50Aの両方が、セラミックグリーンシート付き積層フィルムであってもよい。
図1Cは、第1の積層フィルム50がセラミックグリーンシート付き積層フィルム50Gである場合の当該積層フィルム50Gの斜視図である。
図1Cには、ロール1Gからセラミックグリーンシート付き積層フィルム50Gが繰り出された状態が示されている。
セラミックグリーンシートの残渣920は、第1のコーティング層52の表面に付着している。セラミックグリーンシートが剥離された後は、凹部910となっており、凹部910から第1のコーティング層52が露出している。
【0018】
積層フィルムとして、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の製造に用いられた後の、セラミックグリーンシート付き積層フィルム(
図1C)を用いる場合、搬送中に、ハーフカット部分(セラミックグリーンシートへの打ち抜きでコーティング層面に生じる刃跡)を起点として積層フィルムが破断されることがある。
本実施形態に係る除去方法によれば、融着工程により、2枚の積層フィルム50,50Aを1枚の融着積層フィルム600として搬送できるので、セラミックグリーンシート付き積層フィルムを用いた場合でも、ハーフカット部分に加わる張力を分散させることができ、搬送時の積層フィルムの破断を抑制できる。
【0019】
<第1の繰出工程、第2の繰出工程>
本実施形態に係る第1の繰出工程は、第1のロールから第1の積層フィルム50を繰り出す工程であり、第2の繰出工程は、第2のロールから第2の積層フィルム50Aを繰り出す工程である。
【0020】
<融着工程>
本実施形態に係る融着工程において、第1の積層フィルム50と第2の積層フィルム50Aとを融着させる手段(融着手段)としては、例えば、超音波融着装置(例えば超音波ホーンなど)、高周波融着装置(例えば高周波ウェルダーなど)、加熱融着装置(例えばヒートシーラーなど)、及びレーザ融着装置などが挙げられる。
融着手段は、基材フィルムの材質及び厚さ、融着の容易性、並びに融着後の基材フィルム同士の剥がれ難さの観点で選択されることが好ましい。
例えば、異種成分(例えば接着剤など)を使わない融着手段で積層フィルム50,50Aを融着させることで、基材フィルム51,51Aを再生して得られる樹脂の品質を高めることができる。異種成分を使わない融着手段としては、例えば、超音波ホーン、及びレーザ融着装置などが挙げられる。
各融着手段における融着条件(例えば、周波数、振幅、加圧力、時間、及び温度など)も同様に、基材フィルムの材質及び厚さ、融着の容易性、並びに融着後の基材フィルム同士の剥がれ難さの観点で選択されることが好ましい。
融着工程は、第1の積層フィルム50及び第2の積層フィルム50Aの少なくとも一方に、超音波ホーンで超音波振動を付与することにより第1の積層フィルム50と第2の積層フィルム50Aとを融着させる工程であることが好ましい。
超音波振動の好適な条件としては、例えば、周波数が、15Hz以上60Hz以下であり、振幅が、5μm以上50μm以下であり、加圧力が、1.0MPa以上10MPa以下である。
【0021】
<除去工程>
本実施形態に係る除去工程は、融着積層フィルム600から第1のコーティング層52及び第2のコーティング層52Aを除去する工程である。
除去工程は、第1のコーティング層52及び第2のコーティング層52Aの少なくとも一方をブレード又はワイヤブラシを用いて融着積層フィルム600から掻き落す工程であることが好ましい。ブレード及びワイヤブラシなどの機械的手法を用いることで、コーティング層の化学的性質によらずに、コーティング層を除去できる。
ブレード及びワイヤブラシの材質は特に限定されない。
【0022】
<巻取工程>
本実施形態に係る巻取工程は、第1のコーティング層52及び第2のコーティング層52Aが除去された後の融着積層フィルム(融着基材フィルム510)をロール状に巻き取る工程である。
【0023】
〔第2実施形態〕
〔コーティング層の除去装置〕
図2は、第2実施形態に係るコーティング層の除去装置(以下、第2実施形態に係る除去装置とも称する)の一例の概略図である。
図2におけるX軸、Y軸、及びZ軸は、それぞれが直交する関係にある。Y軸と平行な
図2の手前方向から観た場合を基準とし、方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「右」がX軸の矢印方向で「左」がその逆方向、「前」がY軸と平行な
図2中手前方向で「後」がその逆方向とする。
【0024】
第2実施形態に係る除去装置100は、第1の基材フィルム51及び第1のコーティング層52を有する第1の積層フィルム50が巻回された第1のロール1から前記第1の積層フィルム50を繰り出す第1の繰出手段10と、第2の基材フィルム51A及び第2のコーティング層52Aを有する第2の積層フィルム50Aが巻回された第2のロール2から前記第2の積層フィルム50Aを繰り出す第2の繰出手段10Aと、繰り出された前記第1の積層フィルム50の前記第1の基材フィルム51の側の面と、繰り出された前記第2の積層フィルム50Aの前記第2の基材フィルム51Aの側の面とを対向させ、前記第1の積層フィルム50と前記第2の積層フィルム50Aとを融着させて融着積層フィルム600を得る融着手段15と、前記融着積層フィルム600から前記第1のコーティング層52及び前記第2のコーティング層52Aを除去する除去手段30と、前記第1のコーティング層52及び前記第2のコーティング層52Aが除去された後の前記融着積層フィルム(融着基材フィルム510)をロール状に巻き取る巻取手段40と、を備える。
【0025】
<第1の繰出手段10、第2の繰出手段10A>
第1の繰出手段10は、第1のロール1を回転自在に指示する支持部材(不図示)と、駆動ローラ(不図示)とを備えている。第2の繰出手段10Aの構成及び動作も同様である。
【0026】
<融着手段15>
融着手段15は、第1の積層フィルム50及び第2の積層フィルム50Aの基材フィルム同士を対向させて、2枚の積層フィルム50,50Aを融着させて、融着積層フィルム600を得る手段である。
図2中、領域R1における融着積層フィルム600の拡大図は、
図1Bで示される。
図2の領域R1において、融着積層フィルム600は、Z軸方向に向かって、第2のコーティング層52Aと、第2の基材フィルム51A及び第1の基材フィルム51が融着することで形成された融着基材フィルム510と、第1のコーティング層52とがこの順で積層されている。
【0027】
融着手段15は、第1の積層フィルム50及び第2の積層フィルム50Aの少なくとも一方に、超音波振動を付与する超音波ホーンであることが好ましい。
図2の場合、融着手段15は、超音波ホーン16と、超音波ホーン16に対向して設けられたガイドロールGR1とを備える。超音波ホーン16は、ホーン、超音波振動子及び超音波発振器(不図示)を備える。超音波ホーン16は、第1の積層フィルム50の側に設けられている。融着手段15は、2以上設けられていてもよい。
【0028】
<除去手段30>
除去手段30は、融着積層フィルム600から第1のコーティング層52及び第2のコーティング層52Aを除去する手段である。
図2の場合、除去手段30は、第1のブレード71と、第2のブレード71Aと、融着積層フィルム600を巻き掛けて搬送するガイドロールGR31と、ニップロールNR31とを備える。
第2のブレード71Aは、第2のコーティング層52Aの面に当接するように、ガイドロールGR31に対向して設けられている。
第1のブレード71は、第2のブレード71Aよりも下流側に設けられ、第1のコーティング層52の面に当接するように、ニップロールNR31に対向して設けられている。
第1のブレード71及び第2のブレード71Aの下方には、それぞれ、掻き落とされたコーティング層52,52Aを回収する受け皿35が配置されている。
【0029】
<巻取手段40>
巻取手段40は、第1のコーティング層52及び第2のコーティング層52Aが除去された後の融着積層フィルム600(融着基材フィルム510)をロール状に巻き取る手段である。巻取手段40は、巻き取りロール4を回転自在に支持する支持部材(不図示)と、駆動ローラ(不図示)とを備えている。
【0030】
図2に示す除去装置100を用いた場合、第1実施形態に係る除去方法は、例えば、以下のように実施される。
【0031】
第1の繰出手段10により、第1のロール1から繰り出された第1の積層フィルム50、及び、第2の繰出手段10Aにより、第2のロール2から繰り出された第2の積層フィルム50Aは、超音波ホーン16へ向かって搬送される(第1の繰出工程、第2の繰出工程)。
超音波ホーン16は、ガイドロールGR1との間に、2枚の積層フィルム50,50Aを挟み、第1の積層フィルム50の側から超音波振動を付与することで、内側に配置された2枚の基材フィルム51,51Aを融着して、融着基材フィルム510とする。これにより、
図1Bに示す融着積層フィルム600が得られる。
融着積層フィルム600は、コーティング層52,52Aを除去する除去手段30に向かって搬送される。除去手段30において、融着積層フィルム600は、まず、ガイドロールGR31を通過する際に、第2のブレード71Aによって、第2のコーティング層52Aが掻き落とされ、次いで、ニップロールNR31を通過する際に、第1のブレード71によって、第1のコーティング層52が掻き落とされる(除去工程)。コーティング層52,52Aが除去された後の融着積層フィルム(融着基材フィルム510)は、巻き取りロール4によってロール状に巻き取られる(巻取工程)。
第2実施形態によれば、ロールツーロールで搬送される積層フィルムからコーティング層を効率よく容易に除去できるコーティング層の除去装置が実現される。
【0032】
〔実施形態の変形例〕
本発明は、前記実施形態に限定されない。本発明は、本発明の目的を達成できる範囲での変形及び改良等を含むことができる。
【0033】
〔変形例1〕
第1実施形態に係る除去方法は、融着工程の後、かつ除去工程の前に、融着積層フィルムを延伸する延伸工程をさらに有してもよい。
延伸工程とは、コーティング層にクラックを生じさせる工程である。コーティング層にクラックを生じさせるとは、コーティング層の厚み方向にひび割れ(亀裂)が生じることを意味する。
変形例1に係る除去方法では、延伸工程により、コーティング層52,52Aにクラックが生じるため、その後の除去工程において、コーティング層52,52Aの除去がより容易になる。
通常、延伸工程により、積層フィルムが延伸され、コーティング層にひび割れが生じると、基材フィルムが破断され易くなるが、変形例1に係る延伸工程では、2枚の積層フィルムが融着され、かつ基材フィルムが内側に配置された融着積層フィルムを延伸するため、コーティング層にひび割れを生じさせても、基材フィルムの破断が抑制され易くなる。
よって、変形例1に係る除去方法によれば、融着工程を実施し、強度の高い融着積層フィルム600を得てから、延伸工程、除去工程及び巻取工程を実施するので、基材フィルムを破断させずに、コーティング層を容易に除去でき、基材フィルムの巻き取りまで完遂し得る。
図3は、変形例1に係る延伸手段20を備える除去装置101の概略図である。
変形例1に係る除去装置101は、第2実施形態の除去装置100に対し、融着手段15と、除去手段30との間に、延伸手段20をさらに有する。この点以外、第2実施形態の除去装置100と同様の構成である。具体的には、変形例1に係る除去装置101は、
図2の中の領域R3を、
図3中の領域R5に置き換えた構成である。領域R3は、第2実施形態に係る融着手段15よりも下流側、かつ除去手段30よりも上流側の領域である。領域R5は、変形例1に係る延伸手段20を示す領域である。
【0034】
図3に示す延伸手段20は、第1の延伸ロール21と、第1の延伸ロール21よりも下流側に設けられた第2の延伸ロール22と、これらの延伸ロール21,22の周速を制御する周速制御手段(不図示)とを備える。周速制御手段は、例えばコンピュータ等である。
延伸手段20は、融着積層フィルム600を加熱する加熱手段を備えることが好ましい。加熱手段としては特に限定されないが、例えば、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、UVランプ、及び熱風発生装置等が挙げられる。
図3の場合、第1の延伸ロール21及び第2の延伸ロール22との間に加熱手段24が設けられている。加熱手段の配置位置は特に限定されない。
【0035】
延伸工程は、
図3に示す延伸手段20を用いた場合、以下のように実施される。
【0036】
融着工程後の融着積層フィルム600は、ガイドロールGR2を通過した後、上流側ニップロールNR21及び第1の延伸ロール21に順に巻き掛けられて搬送され、第1の延伸ロール21及び第2の延伸ロール22の間を通過する際に延伸される(延伸工程)。この延伸により融着積層フィルム600の外側のコーティング層52,52Aには、複数のクラックCRが生じる(
図3中の領域R4)。
その後、融着積層フィルム600は、第2の延伸ロール22及び下流側ニップロールNR22に順に巻き掛けられ、ガイドロールGR3を通過した後、
図2中の除去手段30(領域R2)へ搬送される。領域R2は、第2実施形態に係る除去手段30を示す領域である。
図3中の符号520及び520Aは、それぞれ、クラックが生じた後の第1のコーティング層及び第2のコーティング層を表す。
図3の場合、延伸工程は、加熱手段24により、融着積層フィルム600を加熱しながら行う工程である。これにより、コーティング層52,52AにクラックCRがより生じ易くなる。
延伸工程における加熱温度及び加熱時間は、基材フィルム及びコーティング層の材質により決定される。
【0037】
融着積層フィルム600を延伸する方法としては、例えば、搬送経路の下流側に設けられた第2の延伸ロール22の周速を、搬送経路の上流側に設けられた第1の延伸ロール21の周速よりも速くなるように制御する方法、及び第1の延伸ロール21から第2の延伸ロール22までの間に他の延伸ロールを1以上設け、融着積層フィルム600を第1の延伸ロール21、他の延伸ロール及び第2の延伸ロール22に巻き掛けながら搬送する方法等が挙げられる。
融着積層フィルム600を加熱する場合、以下の理由により、基材フィルムのガラス転移温度Tg1以上の温度で加熱することが好ましい。
基材フィルムのガラス転移温度Tg1、およびコーティング層のガラス転移温度Tg2は、JIS K7121(2012)に定められている方法に準拠して求められ、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定する。尚、延伸時の温度は、基材フィルムを破断せずに延伸し易くさせ、一方でコーティング層を破断し易くさせるため、基材フィルムのガラス転移温度Tg1以上が好ましく、基材フィルムのガラス転移温度Tg1以上かつコーティング層のガラス転移温度Tg2以下がより好ましい。
【0038】
〔変形例2〕
第1実施形態及び変形例1に係る除去方法において、除去工程は、第1のコーティング層及び第2のコーティング層の少なくとも一方を、ワイヤブラシを用いて融着積層フィルムから掻き落す工程であってもよい。
図4Aは、変形例2に係る除去手段30Aの概略図である。
除去手段30Aは、第1のコーティング層52を融着積層フィルム600から掻き落す第1のワイヤブラシ36と、第2のコーティング層52Aを融着積層フィルム600から掻き落す第2のワイヤブラシ36Aとを備える。
ワイヤブラシ36,36Aの材質は特に限定されない。ワイヤブラシ36,36Aは、互いに同一でもよいし、異なっていてもよい。
変形例2に係る除去方法は、例えば、
図2中の除去手段30(領域R2)を
図4Aに示す除去手段30Aに置き換えた除去装置を用いて実施される。
【0039】
〔変形例3〕
第1実施形態及び変形例1に係る除去方法において、除去工程は、第1のコーティング層及び第2のコーティング層の少なくとも一方を融着積層フィルムからブラスト材で削り取る工程であってもよい。
図4Bは、変形例3に係る除去手段30Bの概略図である。
除去手段30Bは、第1のコーティング層52を融着積層フィルム600から削り取る第1のブラスト処理装置37と、第2のコーティング層52Aを融着積層フィルム600から掻き落す第2のブラスト処理装置37Aとを備える。
ブラスト処理装置37,37Aは、公知のブラスト処理装置を用いることができる。
ブラスト材としては、例えば、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、炭化ケイ素粒子、アルミナ粒子、ドライアイス粒子、及びメラミン樹脂粒子等が挙げられる。ブラスト材としてドライアイス粒子を用いた場合、ドライアイス粒子はブラスト処理後に消失するので、粒子の除去作業が不要となる。ブラスト材の粒径は、好適には5μm以上40μm以下である。
ブラスト材の吹き付け条件は、コーティング層52,52Aの材質により決定される。
ブラスト処理装置37,37Aは、互いに同一でもよいし、異なっていてもよい。
変形例3に係る除去方法は、例えば、
図2中の除去手段30を
図4Bに示す除去手段30Bに置き換えた除去装置を用いて実施される。
【0040】
〔変形例4〕
第1実施形態及び変形例1に係る除去方法において、除去工程は、第1のコーティング層及び第2のコーティング層の少なくとも一方を融着積層フィルムから粘着ロールに転着させる工程であってもよい。
変形例4に係る除去手段は、粘着ロールを備える。粘着ロールは、公知の粘着ロールを用いることができる。
粘着ロールの材質は特に限定されない。2つの粘着ロールは、互いに同一でもよいし、異なっていてもよい。
変形例4に係る除去方法は、例えば、
図2中の第1のブレード71及び第2のブレード71Aを、それぞれ公知の粘着ロールに置き換えた除去装置を用いて実施される。
【0041】
〔変形例5〕
第1実施形態及び変形例2~4に係る除去方法は、融着工程の後、かつ除去工程の前に、コーティング層52,52Aの少なくとも一方に向けて過熱水蒸気を吹き付ける工程(以下、過熱水蒸気吹き付け工程とも称する)をさらに有してもよい。
変形例1に係る除去方法は、融着工程の後、かつ延伸工程の前に、コーティング層52,52Aの少なくとも一方に向けて過熱水蒸気を吹き付ける工程をさらに有してもよい。
過熱水蒸気の温度は、100℃以上400℃未満が好ましく、150℃以上400℃未満がより好ましく、200℃以上350℃以下がさらに好ましい。
過熱水蒸気の吹付時間は、例えば、コーティング層の材質、及び融着積層フィルム600の搬送速度等により決定される。
過熱水蒸気吹き付け工程を実施した後のコーティング層52,52Aは、急冷される。この急冷により、コーティング層52,52Aと融着基材フィルム510との熱膨張率の差からコーティング層52,52Aに歪みが生じ易くなり、コーティング層52,52Aの界面剥離が助長される。よって、過熱水蒸気吹き付け工程の後に除去工程(変形例1の場合は、過熱水蒸気吹き付け工程の後に延伸工程及び除去工程)を実施することで、コーティング層52,52Aを融着積層フィルム600から容易に除去できる。
変形例5に係る過熱水蒸気吹き付け工程は、過熱水蒸気吹付手段を用いて実施される。
過熱水蒸気吹付手段は、例えば、水蒸気を加熱するためのヒーターと、過熱水蒸気を吹き付けるための水蒸気吹付ノズルとを備えていればよい。
過熱水蒸気吹付手段は、コーティング層52,52Aを除去する前のいずれかのライン上に設けられることが好ましい。
図2の場合、過熱水蒸気吹付手段は、超音波ホーン16よりも下流側かつ第2のブレード71Aよりも上流側に設けられることが好ましい。
図3の場合、過熱水蒸気吹付手段は、超音波ホーン16よりも下流側かつ上流側ニップロールNR21よりも上流側に設けられることが好ましい。
【0042】
変形例2から変形例4に係る除去方法では、第1のコーティング層52及び第2のコーティング層52Aの除去を同じ部材(ブレード、ワイヤブラシ、ブラスト材又は粘着ロール)を用いて行う場合について説明したが、それぞれのコーティング層の除去は異なる部材を用いて行ってもよい。
【0043】
前述の実施形態で用いる積層フィルムの構成について説明する。
【0044】
〔積層フィルム〕
前述の実施形態で用いる積層フィルムは、基材フィルムと、コーティング層とを有する。コーティング層は単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上のコーティング層からなる複層であってもよい。また、基材フィルムの両面にコーティング層が形成されていてもよい。
積層フィルムは、当該積層フィルムからコーティング層を除去し、残存する基材フィルムを回収し易くする観点から、基材フィルムとコーティング層とが、直接積層している構成であることが好ましい。ここで、「直接積層」とは、例えば、基材フィルムと、コーティング層との間に、他の層を有さずに、基材フィルム及びコーティング層が互いに直接接触している構成を指す。
【0045】
<基材フィルム>
基材フィルムは、回収を予定している樹脂成分が製膜された樹脂フィルムが使用される。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリアミドフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリアセテートフィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体フィルム;エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム;シクロオレフィンポリマーフィルム;ポリウレタンフィルム;ポリフェニレンスルフィドフィルム;セロハン;等を用いることができる。
これらの中でも、耐熱性及び強度の観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムとしては、樹脂の回収及び再生がし易い観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレートのいずれかを主たる構成成分とするポリエステルフィルムが好ましい。本明細書において、主たる構成成分又は主成分とは、材料全体の質量に占める割合が50質量%以上であることを意味する。
また、樹脂フィルムは、公知のフィラー、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、及び触媒等を含有してもよい。また、樹脂フィルムは、透明なものであっても、所望により着色等されていてもよい。また、基材フィルムの少なくとも1つの表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、及び酸化等のエッチング処理等の表面処理を必要に応じて施してもよい。
【0046】
基材フィルムの厚さは、特に制限はないが、強度、剛性等の観点から、好ましくは10μm以上500μm以下、より好ましくは15μm以上300μm以下、更に好ましくは20μm以上200μm以下である。
【0047】
<コーティング層>
前記コーティング層は、機能層であることが好ましい。機能層としては、例えば、剥離剤層、印刷層、ハードコート層、易接着層及び粘着剤層が挙げられる。これらの中でも、コーティング層は、剥離剤層であることが好ましい。
コーティング層が剥離剤層である場合、前記剥離剤層は、剥離剤組成物から形成された層であることが好ましい。
前記剥離剤層の形成に用いられる剥離剤組成物としては、剥離性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、シリコーン系化合物;フッ素化合物;長鎖アルキル基含有化合物;オレフィン系樹脂、ジエン系樹脂などの熱可塑性樹脂材料;などを主成分とする剥離剤組成物を用いることができる。また、エネルギー線硬化型又は熱硬化型樹脂を主成分とする剥離剤組成物を使用することが好ましい。これらの剥離剤組成物は、1種を単独で用いてもよく、又は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
シリコーン系化合物を主成分とする剥離剤組成物において、前記シリコーン系化合物としては、基本骨格としてオルガノポリシロキサンを有するシリコーン系化合物が挙げられる。また、前記シリコーン系化合物としては、付加反応型及び縮合反応型などの熱硬化型シリコーン系化合物;紫外線硬化型、及び電子線硬化型などのエネルギー線硬化型シリコーン系化合物;などが挙げられる。
【0049】
フッ素化合物を主成分とする剥離剤組成物において、前記フッ素化合物としては、フッ素シリコーン化合物、フッ素ボロン化合物、及びポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖含有化合物などが挙げられる。
【0050】
長鎖アルキル基含有化合物を主成分とする剥離剤組成物において、前記長鎖アルキル基含有化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール系重合体に、長鎖アルキルイソシアネートを反応させて得られたポリビニルカーバメートや、ポリエチレンイミンに、長鎖アルキルイソシアネートを反応させて得られたアルキル尿素誘導体、あるいは長鎖アルキル(メタ)アクリレートの共重合体などが挙げられる。さらに、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応によって得られるアルキド樹脂に、長鎖脂肪酸を変性剤として用いた長鎖アルキル変性アルキッド樹脂が用いられてもよい。
【0051】
エネルギー線硬化型樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基及びマレイミド基から選択される反応性官能基を有するエネルギー線硬化性化合物と、ポリオルガノシロキサンとを含むものが好ましい。この剥離剤組成物により形成された剥離剤層においては、相互に分子構造、極性、分子量が異なるエネルギー線硬化性化合物及びポリオルガノシロキサンを用いているので、硬化前にポリオルガノシロキサンに由来する成分が剥離剤層の外表面付近に偏析した状態となり、その後エネルギー線により硬化し偏析が固定化する。これにより、剥離剤層の剥離性を向上することができる。エネルギー線硬化型樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、更に、光重合開始剤を含んでいてもよい。
【0052】
熱硬化型樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、例えば、メラミン樹脂を主成分とする剥離剤組成物やエポキシ樹脂を主成分とする剥離剤組成物が挙げられる。メラミン樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、主剤であるメラミン樹脂、メラミン樹脂を熱硬化させる酸触媒、及び剥離剤層に剥離性を付与するポリオルガノシロキサンを含む組成物が挙げられる。また、エポキシ樹脂を主成分とする剥離剤組成物としては、主剤であるエポキシ樹脂、エポキシ樹脂を熱硬化させる酸又は塩基性の熱硬化触媒、及び剥離剤層に剥離性を付与するポリオルガノシロキサンを含む組成物が挙げられる。硬化前にポリオルガノシロキサンに由来する成分が剥離剤層の外表面付近に偏析した状態となり、その後硬化して偏析が固定化する。これにより、剥離剤層の剥離性を向上することができる。
【0053】
また、前記コーティング層には、前述の樹脂成分以外に、その他の添加剤を含有していてもよい。その他の添加剤としては、例えば、老化防止剤、光安定剤、難燃剤、導電剤、帯電防止剤、及び可塑剤等が挙げられる。
【0054】
コーティング層の厚さは、適宜、選択することが可能であり、特に制限はないが、例えば、好ましくは0.02μm以上5μm以下、より好ましくは0.03μm以上2μm以下、更に好ましくは0.05μm以上1.5μm以下である。
【0055】
各実施形態で用いられる積層フィルムは、一般に、特定の用途に用いられる他の機能性シートや各種部品の製造、運搬、保管時等に、これらの機能性シートや部品の表面を保護する目的等で用いられる。実際にこれらの部品等の保護の役目を果たした後は、表面から剥離され、廃棄されることも多い。そのため、前記積層フィルムを用いることで、積層フィルムからコーティング層と基材フィルムとを容易に分離することができるため、資源保護、環境保護の観点からも、貢献度の高い用途である。
【符号の説明】
【0056】
1…第1のロール、2…第2のロール、4…巻き取りロール、10,10A…繰出手段、15…融着手段、16…超音波ホーン、20…延伸手段、21…第1の延伸ロール、22…第2の延伸ロール、24…加熱手段、30,30A,30B…除去手段、36,36A…ワイヤブラシ、37,37A…ブラスト処理装置、40…巻取手段、50,50A…積層フィルム、51,51A…基材フィルム、52,52A…コーティング層、71,71A…ブレード、100,101…除去装置、510…融着基材フィルム、600…融着積層フィルム。