(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122487
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】車両用シートのアームレスト及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/75 20180101AFI20240902BHJP
A47C 7/54 20060101ALI20240902BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240902BHJP
【FI】
B60N2/75
A47C7/54 B
A47C7/54 Z
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030051
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 浩二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健人
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DC02
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】一体発泡成形によりアームレスト本体に埋め込まれるフレームの幅や長さが大きく設定される場合でも、アームレスト本体の脱型を容易にする。
【解決手段】アームレスト20は、発泡体からなるアームレスト本体22と、一体発泡成形によりアームレスト本体22に埋め込まれたフレーム26と、を備える。フレーム26は、金属パイプによって構成され、アームレスト本体22の上下方向から見てアームレスト本体の後方側が開放された略U字状をなすパイプフレーム28と、板金によって構成され、パイプフレームの後端部に固定された左右一対のサイドフレーム30と、板金によって構成され、左右のサイドフレーム30の後端部間に架け渡されると共に、後部に切欠き46が形成されたリヤブラケット34と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体からなるアームレスト本体と、
一体発泡成形により前記アームレスト本体に埋め込まれたフレームと、
を備えた車両用シートのアームレストであって、
前記フレームは、
金属パイプによって構成され、前記アームレスト本体の上下方向から見て前記アームレスト本体の後方側が開放された略U字状をなすパイプフレームと、
板金によって構成され、前記パイプフレームの後端部に固定された左右一対のサイドフレームと、
板金によって構成され、前記左右のサイドフレームの後端部間に架け渡されると共に、後部に切欠きが形成されたリヤブラケットと、
を有する車両用シートのアームレスト。
【請求項2】
前記アームレスト本体の後端から前記リヤブラケットの後端までの距離が20ミリメートル以下に設定されている請求項1に記載の車両用シートのアームレスト。
【請求項3】
前記リヤブラケットは、前記アームレスト本体の左右方向から見た断面がクランク状をなしている請求項1又は請求項2に記載の車両用シートのアームレスト。
【請求項4】
乗員が着座するシートクッションと、
前記乗員の背部を支持するシートバックと、
前記フレームが前記シートバックに回転可能に連結された請求項1又は請求項2に記載の車両用シートのアームレストと、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特に車両用シートのアームレストに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたアームレストは、基端部に回動機構部を有するフレームと、回動機構部を露出させた状態でフレームを内蔵して発泡成形されたアームレスト本体と、を備えている。フレームは、金属板からなる左右の側部と、それらの側部間に架設された橋絡部と、U字状のパイプフレームとによって構成されている。アームレスト本体は、回動機構部を含む露出領域およびその隣接領域を除いてフレームを内蔵する第1部分と、第1部分と相補的な形状をなす第2部分とを含んでいる。第2部分は、第1部分との分割面の一側で第1部分と開閉可能に連続し、第1部分側に折り畳まれ、第2部分でフレームの隣接領域が覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先行技術では、回動機構部を含む領域は、展開された状態で発泡成形される第2部分を折り畳むことで覆われる構成であるため、第2部分を折り畳む工程が必要となる。ここで、例えば回動機構部がアームレスト本体に埋め込まれた状態でアームレスト本体が発泡成形される場合、上記の折り畳み工程が不要となるが、アームレスト本体の脱型時にフレームに指を引っ掛けることが困難になる。特に、アームレスト後部の補強のためにフレームの橋絡部がアームレスト本体の後端付近に配置される場合や、アームレスト前部にカップホルダが設けられることでフレームの幅が大きく設定される場合に、アームレスト本体の脱型が困難になる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、一体発泡成形によりアームレスト本体に埋め込まれるフレームの幅や長さが大きく設定される場合でも、アームレスト本体の脱型が容易になるアームレスト及び車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の車両用シートのアームレストは、発泡体からなるアームレスト本体と、一体発泡成形により前記アームレスト本体に埋め込まれたフレームと、を備えた車両用シートのアームレストであって、前記フレームは、金属パイプによって構成され、前記アームレスト本体の上下方向から見て前記アームレスト本体の後方側が開放された略U字状をなすパイプフレームと、板金によって構成され、前記パイプフレームの後端部に固定された左右一対のサイドフレームと、板金によって構成され、前記左右のサイドフレームの後端部間に架け渡されると共に、後部に切欠きが形成されたリヤブラケットと、を有する。
【0007】
第1の態様の車両用シートのアームレストでは、一体発泡成形によりアームレスト本体にフレームが埋め込まれている。このフレームは、パイプフレームと、左右一対のサイドフレームと、リヤブラケットとを有している。パイプフレームは、金属パイプによって構成され記アームレスト本体の上下方向から見てアームレスト本体の後方側が開放された略U字状をなしている。左右のサイドフレームは、板金によって構成され、パイプフレームの後端部に固定されている。リヤブラケットは、板金によって構成され、左右のサイドフレームの後端部間に架け渡されると共に、後部に切欠きが形成されている。このため、フレームの幅や長さが大きく設定される場合でも、アームレスト本体を発泡成形型から脱型する際には、上記の切欠きの箇所でリヤブラケットに指をかけることができる。これにより、アームレスト本体の脱型が容易になる。
【0008】
第2の態様の車両用シートのアームレストは、第1の態様において、前記アームレスト本体の後端から前記リヤブラケットの後端までの距離が20ミリメートル以下に設定されている。
【0009】
第2の態様の車両用シートのアームレストでは、上記のように構成されているため、アームレスト本体の後端と発泡成形型との間に挿入した指をリヤブラケットの後端に引っ掛けることが困難であるが、リヤブラケットの後部に形成された切欠きの箇所ではリヤブラケットと発泡成形型との間に指を挿入し易くなり、リヤブラケットに指を引っ掛け易くなる。
【0010】
第3の態様の車両用シートのアームレストは、第1の態様又は第2の態様において、前記リヤブラケットは、前記アームレスト本体の左右方向から見た断面がクランク状をなしている。
【0011】
第3の態様の車両用シートのアームレストでは、フレームの後端部に設けられるリヤブラケットが上記のような断面とされるので、フレームの後端部の強度を確保し易くなる。
【0012】
第4の態様の車両用シートは、乗員が着座するシートクッションと、前記乗員の背部を支持するシートバックと、前記フレームが前記シートバックに回転可能に連結された第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様の車両用シートのアームレストと、を備える。
【0013】
第4の態様の車両用シートでは、シートクッションに着座する乗員の背部がシートバックによって支持される。このシートバックには、アームレストのフレームが回転可能に連結されている。このアームレストは、第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様のものであるため、前述した効果が得られる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、一体発泡成形によりアームレスト本体に埋め込まれるフレームの幅や長さが大きく設定される場合でも、アームレスト本体の脱型が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係るアームレストを示す斜視図である。
【
図3】アームレストのフレームを示す平面図である。
【
図5】同フレームが有するリヤブラケットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1~
図5を参照して本発明の一実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜記載された矢印FR、RH及びUPは、車両用シート10の前方、右方及び上方をそれぞれ示している。
【0017】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、3人掛け用のリヤシートであり、車両の乗員が着座するシートクッション12と、乗員の背部を支持するシートバック14と、乗員の頭部を支持する3つのヘッドレスト16とを備えている。
【0018】
シートバック14は、一例として6:4の分割可倒式とされており、2人掛け用の右側シートバック14Rと、1人掛け用の左側シートバック14Lとに分割されている。右側シートバック14Rの上端部には、2つのヘッドレスト16が取り付けられており、左側シートバック14Lの上端部には、1つのヘッドレスト16が取り付けられている。
【0019】
右側シートバック14Rの左側部分には、本実施形態に係るアームレスト20が取り付けられている。アームレスト20は、
図1に示される展開位置と、右側シートバック14Rの左側部分に形成された凹部18内に収納される収納位置との間で右側シートバック14Rに対して回転可能とされている。アームレスト20が展開位置に位置する状態では、アームレスト20の前後左右上下の方向と、車両用シート10の前後左右上下の方向が一致する。アームレスト20が収納位置に位置する状態では、アームレスト20の前後方向とシートバック14の高さ方向とが一致し、アームレスト20の左右方向と車両用シート10の左右方向とが一致し、アームレスト20の上下方向とシートバック14の前後方向とが一致する。
【0020】
図2~
図4に示されるように、アームレスト20は、発泡体からなるアームレスト本体22と、アームレスト本体22の表面を覆ったアームレスト表皮24と、一体発泡成形によりアームレスト本体22に埋め込まれたフレーム26と、一体発泡成形によりアームレスト本体22に取り付けられたカップホルダ48と、を備えている。
【0021】
アームレスト本体22は、例えばウレタンフォームによって構成されており、前後方向を長手方向とし、左右方向を幅方向とし、上下方向を厚さ方向とする長尺な直方体状をなしている。アームレスト本体22の幅寸法は、アームレスト本体22の厚さ寸法よりも大きく設定されている。アームレスト表皮24は、布材、皮革又は合成皮革等からなる複数の表皮片が縫製されて袋状に構成されており、アームレスト本体22に被せられている。アームレスト本体22の前後左右上下の方向と、アームレスト20の前後左右上下の方向とは一致している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、アームレスト本体22に対する方向を示すものとする。
【0022】
図3及び
図4に示されるように、フレーム26は、金属パイプによって構成されたパイプフレーム28と、板金によって構成された左右一対のサイドフレーム30と、板金によって構成された中間フレーム32と、板金によって構成されたリヤブラケット34とを有している。パイプフレーム28は、金属パイプが略U字状に曲げ加工されたものであり、アームレスト本体22の左右の側部において前後方向に延びる左右一対の前後延在部28Aと、左右の前後延在部28Aの前端部を左右方向に繋いだ左右延在部28Bとを有している。
【0023】
左右のサイドフレーム30は、板金がプレス成形されて製造されたものであり、前後方向を長手とする長尺状をなしている。左右のサイドフレーム30は、前後方向から見て左右方向の中央側が開放された略U字状の断面を有している。左右のサイドフレーム30の前端部は、左右の前後延在部28Aの後端部に対して左右方向の外側から重ね合わされており、溶接等の手段で左右の前後延在部28Aと接合されている。
【0024】
左右のサイドフレーム30の後端部には、左右方向の外側へ突出した連結軸36が固定されている。左右の連結軸36は、左右方向を軸方向とする円柱状をなしており、同軸上に配置されている。左右の連結軸36は、右側シートバック14Rの図示しないフレームに対して回転可能に軸支されている。これにより、フレーム26すなわちアームレスト20は、左右の連結軸36回りに回転可能に右側シートバック14Rに連結されている。
【0025】
中間フレーム32は、板金がプレス成形されて製造されたものであり、左右方向を長手とする長尺状をなしている。中間フレーム32の左右方向両端部は、上下方向を板厚方向とする平板状をなしている。中間フレーム32の左右方向中間部は、左右方向から見て下方側が開放された略U字状の断面を有している。中間フレーム32の左右方向両端部は、左右の前後延在部28Aの上面に重ね合わされており、溶接等の手段で左右の前後延在部28Aと接合されている。中間フレーム32の左右方向中間部には、複数(ここでは4つ)の円形の貫通孔38が左右方向に並んで形成されている。
【0026】
中間フレーム32と左右の前後延在部28Aと左右延在部28Bとで囲まれた領域には、カップホルダ48の一部が配置されている。カップホルダ48は、例えば樹脂の射出成形によって製造されたものであり、上方側が開放された角箱状をなしている。カップホルダ48は、左右方向を長手方向としてアームレスト20の前部に配置されており、上方側に向けて開口した状態でアームレスト本体22に埋め込まれている。このカップホルダ48は、2つの飲料用容器を左右方向に並べて保持可能とされている。
【0027】
リヤブラケット34は、板金がプレス成形されて製造されたものであり、左右方向を長手とする長尺状をなしている。このリヤブラケット34は、左右のサイドフレーム30の後端部間に架け渡されている。このリヤブラケット34は、
図5に示されるように、左右方向から見てクランク状の断面を有しており、上下方向を板厚方向とする平板状の上壁部34Aと、上壁部34Aの後端から下方側へ延びる縦壁部34Bと、縦壁部34Bの下端から後方側かつ若干上方側へ延びる下壁部34Cとを有している。
【0028】
上壁部34Aの左右方向両端部は、左右のサイドフレーム30の上側のフランジ部30Aに対して上方側から重ね合わされており、溶接等の手段で各フランジ部30Aと接合されている。下壁部34Cの左右方向両端部は、左右のサイドフレーム30の下側のフランジ部30Bに対して上方側から重ね合わされており、溶接等の手段で各フランジ部30Bと接合されている。上壁部34Aは、リヤブラケット34の前部を構成しており、下壁部34Cは、リヤブラケット34の後部を構成している。
【0029】
上壁部34Aの左右方向中間部には、複数(ここでは3つ)の円形の貫通孔40が左右方向に並んで形成されている。縦壁部34Bの左右方向中間部には、複数(ここでは2つ)の矩形の貫通孔42が左右方向に並んで形成されている。下壁部34Cの左右方向中間部には、上下方向の両側及び後方側が開放された矩形の切欠き46が形成されている。アームレスト本体22の後端からリヤブラケット34の後端までの距離L1(
図3参照)は、ここでは20ミリメートル以下に設定されている。アームレスト本体22の後端から切欠き46の前端まで距離L2は、上記の距離L1に比べて十分に大きく設定されている。
【0030】
上記構成のアームレスト20では、アームレスト本体22を発泡成形するための発泡成形型にフレーム26がセットされた状態でアームレスト本体22の発泡成形が行われる。発泡成形後は、発泡成形型とアームレスト本体22との間に作業者が指を挿入し、アームレスト本体22が発泡成形型から取り出される構成になっている。
【0031】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
上記構成の車両用シート10では、シートクッション12に着座する乗員の背部がシートバック14によって支持される。このシートバックには、アームレスト20のフレーム26が回転可能に連結されている。このアームレスト20では、一体発泡成形によりアームレスト本体22にフレーム26が埋め込まれている。このフレーム26は、パイプフレーム28と、左右一対のサイドフレーム30と、リヤブラケット34とを有している。
【0032】
パイプフレーム28は、金属パイプによって構成され記アームレスト本体22の上下方向から見てアームレスト本体22の後方側が開放された略U字状をなしている。左右のサイドフレーム30は、板金によって構成され、パイプフレーム28の後端部に固定されている。リヤブラケット34は、板金によって構成され、左右のサイドフレーム30の後端部間に架け渡されると共に、後部に切欠き46が形成されている。このため、フレーム26の幅や長さが大きく設定されている場合でも、アームレスト本体22を発泡成形型から脱型する際には、上記の切欠き46の箇所でリヤブラケット34に指をかけることができる。これにより、アームレスト本体22の脱型が容易になる。
【0033】
特に、本実施形態では、アームレスト20の前部にカップホルダ48が設けられるため、フレーム26の左右方向の幅が大きく設定されており、アームレスト本体22の左右方向両側では発泡成形型とフレーム26との間に指を挿入することができないが、上記の切欠き46により指の引っ掛かり代を確保することができる。その結果、カップホルダ48の左右方向の寸法の制約が少なくなり、カップホルダ48の大型化が可能となる。
【0034】
また、本実施形態では、アームレスト本体22の後端からリヤブラケット34の後端までの距離L1が20ミリメートル以下に設定されている。このため、アームレスト本体22の後端と発泡成形型との間に挿入した指をリヤブラケット34の後端に引っ掛けることが困難であるが、切欠き46の箇所ではリヤブラケット34と発泡成形型との間に指を挿入し易くなり、リヤブラケット34に指を引っ掛け易くなる。
【0035】
また、本実施形態では、フレーム26の後端部に設けられたリヤブラケット34は、アームレスト本体22の左右方向から見た断面がクランク状をなしている。これにより、フレーム26の後端部の強度を確保し易くなる。その結果、アームレスト20の前部側に過大な荷重が加えられた場合に、フレーム26の後端部が破損することを防止し易くなる。
【0036】
以上、実施形態を挙げて本発明について説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
20 アームレスト
22 アームレスト本体
26 フレーム
28 パイプフレーム
30 サイドフレーム
34 リヤブラケット
36 切欠き