(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122500
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】イオンビーム引出用電極、イオン源及び引出電極系
(51)【国際特許分類】
H01J 37/04 20060101AFI20240902BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20240902BHJP
H01J 27/02 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
H01J37/04 Z
H01J37/08
H01J27/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030064
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】平井 裕也
(72)【発明者】
【氏名】趙 維江
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101AA34
5C101BB01
5C101BB08
5C101CC12
5C101DD03
5C101DD25
(57)【要約】
【課題】引出電極系への堆積物の堆積を抑えつつ、これに伴う種々の問題を解消できるようにする。
【解決手段】イオンビームが通過するビーム通過穴20hが形成された第1部材と、第1部材と対向配置されるとともに、ビーム通過穴20hが形成された第2部材と、少なくとも一部が第1部材及び第2部材の間に配置されたヒータ50と、ビーム通過穴20hから第1部材及び第2部材の間のガスの流れを遮断するガス遮断部材60とを備えるようにした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームが通過するビーム通過穴が形成された第1部材と、
前記第1部材と対向配置されるとともに、前記ビーム通過穴が形成された第2部材と、
少なくとも一部が前記第1部材及び前記第2部材の間に配置されたヒータと、
前記ビーム通過穴から前記第1部材及び前記第2部材の間のガスの流れを遮断するガス遮断部材とを備えることを特徴とするイオンビーム引出用電極。
【請求項2】
前記ヒータがシート状をなすものである、請求項1記載のイオンビーム引出用電極。
【請求項3】
前記第1部材が、1枚の電極の構成要素である蓋体であり、
前記第2部材が、前記蓋体が被せられて該蓋体とともに前記電極を構成する底板であり、
前記ヒータが、前記蓋体と前記底板との間に埋め込まれて前記ガス遮断部材となる、請求項1記載のイオンビーム引出用電極。
【請求項4】
前記第1部材及び前記第2部材の間と、その周囲にある周囲空間とが空間的に隔てられている、請求項1記載のイオンビーム引出用電極。
【請求項5】
請求項1に記載のイオンビーム引出用電極と、
前記イオンビーム引出用電極によりイオンビームが引き出される容器とを備え、
前記容器に腐食性ガスが供給されることを特徴とするイオン源。
【請求項6】
イオンビームが通過するビーム通過穴が形成された第1部材と、
前記第1部材と対向配置されるとともに、前記ビーム通過穴が形成された第2部材と、
少なくとも一部が前記第1部材及び前記第2部材の間に配置されたヒータと、
前記ビーム通過穴から前記第1部材及び前記第2部材の間のガスの流れを遮断するガス遮断部材とを備えることを特徴とする引出電極系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンビーム引出用電極、イオン源及び引出電極系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオンビーム照射装置などに用いられるイオン源は、プラズマ生成容器からイオンビームを引き出すための複数枚の電極からなる引出電極系を備えている。
【0003】
この引出電極系に堆積物が堆積し続けると、堆積物にイオンビームからの電荷が付与されて放電が生じる恐れがあることから、従来のイオン源としては、引出電極系への堆積物の堆積を抑制するべく、引出電極系を加熱するヒータを備えたものがある(特許文献1)。具体的にこのものは、引出電極系を構成する抑制電極と接地電極との間にヒータが配置されている。
【0004】
しかしながら、このイオン源は、ヒータが配置される空間に、プラズマの原料ガスやスパッタ用のガスなど、イオン源の運転中に用いられるガスが流入可能な構成であり、流れ込んだガスが加熱されて前記空間の内圧が高まることで、電極の破損、電極の位置ズレ、電極間での火花放電など、種々の問題を引き起こす懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上述した問題を解決するべくなされたものであり、引出電極系への堆積物の堆積を抑えつつ、これに伴う上述した種々の問題を解消することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係るイオンビーム引出用電極は、イオンビームが通過するビーム通過穴が形成された第1部材と、前記第1部材と対向配置されるとともに、前記ビーム通過穴が形成された第2部材と、少なくとも一部が前記第1部材及び前記第2部材の間に配置されたヒータと、前記ビーム通過穴から前記第1部材及び前記第2部材の間のガスの流れを遮断するガス遮断部材とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
このように構成されたイオンビーム引出用電極によれば、ヒータにより加熱することで、堆積物の堆積を抑えることができ、なおかつ、ヒータの少なくとも一部が配置される第1部材及び第2部材の間のガスの流れをガス遮断部材が遮断するので、このガスの流れに伴う種々の問題を未然に防ぐことができる。
【0009】
前記ヒータがシート状をなすものであることが好ましい。
このような構成であれば、イオンビーム引出用電極のコンパクト化を図れるうえ、例えば第1部材及び第2部材の間の大きさに応じたシート状のヒータを用いることで、第1部材及び第2部材の均熱化を図れる。
【0010】
前記第1部材が、1枚の電極の構成要素である蓋体であり、前記第2部材が、前記蓋体が被せられて該蓋体とともに前記電極を構成する底板であり、前記ヒータが、前記蓋体と前記底板との間に埋め込まれて前記ガス遮断部材となることが好ましい。
このような構成であれば、例えばヒータと蓋体との間やヒータと底板との間に絶縁部材を介在させることにより、比較的簡素な構成でヒータの耐電圧を確保することができる。
【0011】
前記第1部材及び前記第2部材の間と、その周囲にある周囲空間とが空間的に隔てられていることが好ましい。
このような構成であれば、腐食性ガスを用いる場合であっても、第1部材及び第2部材の間に配置されているヒータには腐食性ガスが触れず、ヒータの腐食を可及的に低減することができる。
【0012】
また、本発明に係るイオン源は、上述したイオンビーム引出用電極と、前記イオンビーム引出用電極によりイオンビームが引き出される容器とを備え、前記容器に腐食性ガスが供給されることを特徴とするものである。
【0013】
このように構成されたイオン源及びイオンビーム引出用電極であれば、上述したガス遮断部材によってヒータに対する腐食性ガスの腐食影響を低減することができ、腐食性ガスを用いる種々のイオンビーム照射プロセスに資する。
【0014】
さらに、本発明に係る引出電極系は、イオンビームが通過するビーム通過穴が形成された第1部材と、前記第1部材と対向配置されるとともに、前記ビーム通過穴が形成された第2部材と、少なくとも一部が前記第1部材及び前記第2部材の間に配置されたヒータと、前記ビーム通過穴から前記第1部材及び前記第2部材の間のガスの流れを遮断するガス遮断部材とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
このように構成した本発明によれば、引出電極系への堆積物の堆積を抑えつつ、これに伴う種々の問題を未然に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るイオン源の構成を示す模式図。
【
図3】その他の実施形態における抑制電極の構成を示す断面図。
【
図4】その他の実施形態における抑制電極の構成を示す断面図。
【
図5】その他の実施形態におけるヒータの配置を示す模式図。
【
図6】その他の実施形態におけるヒータの配置を示す模式図。
【
図7】その他の実施形態におけるヒータの配置を示す模式図。
【
図8】その他の実施形態における抑制電極の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明に係るイオン源及びこのイオン源に用いられるイオンビーム引出用電極の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
本実施形態のイオン源100は、イオンビーム照射装置を構成するものである。イオンビーム照射装置の一例としては、基板の表面にイオンビームIBを照射して、所望のイオン種を基板に注入するためのイオン注入装置を挙げることができるが、必ずしもこれに限るものではなく、イオンビームエッチング装置等であっても構わない。
【0019】
このイオン源100は、
図1に示すように、容器10と、その容器10の開口からイオンビームIBを引き出す引出電極系20とを備えている。
【0020】
容器10は、プラズマの原料ガス、スパッタ材をスパッタするために用いられるスパッタ用ガス、又は、坩堝内の固体金属と反応し、坩堝の加熱により、金属を含む反応生成物の蒸気を生成するためのガスなど、腐食性ガスが供給されるものであり、ここでは内部でプラズマが生成されるプラズマ生成容器である。ただし、容器10には、必ずしも腐食性ガスが供給される必要はなく、種々のガスを供給して構わない。
【0021】
引出電極系20は、
図1に示すように、複数枚のイオンビーム引出用電極を備えており、この実施形態では2枚のイオンビーム引出用電極から構成されており、具体的には、二次電子の容器10側への流入を抑制するイオンビーム引出用電極たる抑制電極21と、グランド電位のイオンビーム引出用電極たる接地電極22とから構成されている。
【0022】
そして、本実施形態のイオン源100は、引出電極系20を構成する抑制電極21に特徴があるので、以下に詳述する。
【0023】
抑制電極21は、例えばグランド電位を基準にして負の電圧が印加されるものであり、
図2に示すように、容器10から引き出されたイオンビームIBが通過するビーム通過穴20hが形成されている。
【0024】
より詳細に説明すると、この抑制電極21は、容器10の開口に対向配置された第1部材たる蓋体30と、蓋体30に対して容器10とは反対側に配置された第2部材たる底板40とを有している。
【0025】
蓋体30は、
図2に示すように、中央部にビーム通過穴20hの一部が形成された板状をなすものであり、ここではイオンビームIBの進行方向から見て円形状をなす。ただし、蓋体30は、円形状のものに限らず、イオンビームIBの進行方向から見て矩形状のものであっても良い。
【0026】
本実施形態の蓋体30は、ビーム通過穴20hを取り囲むとともに、容器10側に向かってやや屈曲した屈曲部31を有している。
【0027】
底板40は、中央部にビーム通過穴20hの一部が形成された板状をなすものであり、例えばボルトなどの締結具により蓋体30に固定されている。
【0028】
本実施形態の底板40は、外縁部41及び内縁部42それぞれが蓋体30に向かって突出しており、これらの外縁部41及び内縁部42の間に、ビーム通過穴20hを取り囲む環状の凹部43が形成されている。
【0029】
蓋体30に形成されたビーム通過穴20hの一部と、底板40に形成されたビーム通過穴20hの一部とは、イオンビームIBの進行方向から見て、互いに重なり合っており、ここでは矩形状をなす。ただし、ビーム通過穴20hの形状や大きさは適宜変更して構わない。
【0030】
そして、本実施形態の抑制電極21は、
図2に示すように、蓋体30と底板40との間に介在するヒータ50を備えている。
【0031】
より具体的に説明すると、底板40と蓋体30との間には、ビーム通過穴20hを取り囲むとともに、ヒータ50の少なくとも一部が配置されるヒータ設置空間S1が形成されている。
【0032】
このヒータ設置空間S1は、上述した底板40の凹部を利用して形成された環状をなす空間であり、本実施形態では、ヒータ50が環状をなし、そのヒータ50の全体がヒータ設置空間S1に収容されている。
【0033】
ヒータ50は、シート状をなすものであり、具体的には絶縁層(不図示)と、この絶縁層上に設けられて、電流が流れる配線パターンが形成されたパターン層(不図示)とを有する。
【0034】
然して、本実施形態の抑制電極21は、ビーム通過穴20hから蓋体30及び底板40の間のガスの流れを遮断するガス遮断部材60を備えている。
【0035】
このガス遮断部材60は、ヒータ設置空間S1へガスが流れることにより生じる不具合を未然に防ぐものである。こうした不具合としては、流れ込んだガスが加熱されてヒータ設置空間S1の内圧が高まることにより生じるものを挙げることができ、具体的には、抑制電極21の破損、抑制電極21の位置ズレ、蓋体30と底板40との間に生じ得る火花放電などである。また、別の不具合としては、腐食性ガスを用いていることによるヒータ50の腐食も挙げられる。
【0036】
このガス遮断部材60は、抑制電極21の周囲にある周囲空間S2からビーム通過穴20hを経てヒータ設置空間S1へ流れ込もうとするガスの流れを遮断するものである。
【0037】
なお、周囲空間S2は、少なくとも容器10と引出電極系20との間の空間を含んでおり、言い換えれば、容器10に供給されたガスが多少なりとも漏れ出る空間を含んでいる。
【0038】
本実施形態では、蓋体30と底板40との間にヒータ50が埋め込まれており、このヒータ50がガス遮断部材60となる。
【0039】
具体的にこのガス遮断部材60は、蓋体30と底板40との挟み込まれており、蓋体30と接触するとともに、底板40と接触している。
【0040】
これにより、ガス遮断部材60たるヒータ50は、周囲空間S2からビーム通過穴20hを経て蓋体30及び底板40の間に流れ込もうとするガスの流れを遮断する。
【0041】
さらに、この実施形態では、上述した底板40の外縁部41が蓋体30と当接しており、この外縁部41もガス遮断部材60として機能する。
【0042】
このガス遮断部材60たる外縁部41は、ヒータ設置空間S1を取り囲むとともに、抑制電極21の外側から、ビーム通過穴20hを経ずに蓋体30及び底板40の間に流れ込もうとするガスの流れを遮断する。
【0043】
このように構成された抑制電極21によれば、ヒータ50により加熱することで、堆積物の堆積を抑えることができ、なおかつ、蓋体30及び底板40の間のガスの流れをガス遮断部材60が遮断するので、このガスの流れに伴う種々の問題を未然に防ぐことができる。
【0044】
また、ヒータ50がヒータ設置空間S1を占有しているので、ヒータ設置空間S1の均熱化を図ることができ、なおかつ、ヒータ50がシート状をなすので、抑制電極21のコンパクト化を図れる。
【0045】
さらに、ヒータ50が蓋体30と底板40との間に設けられているので、例えばヒータ50と底板40との間やヒータ50と蓋体30との間に絶縁部材を介在させることにより、比較的簡素な構成でヒータ50の耐電圧を確保することができる。
【0046】
そのうえ、底板40の外縁部41もガス遮断部材60として機能するので、蓋体30及び底板40の間のガスの流れをより確実に遮断することができる。
【0047】
また、本実施形態に係るイオン源100は、容器10に腐食性ガスが供給されるところ、ヒータ50によるガス遮断部材60としての機能がより顕著に発揮されて、ヒータ50に対する腐食性ガスの腐食影響を低減することができ、腐食性ガスが用いられる種々のイオンビーム照射プロセスに資する。
【0048】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0049】
例えば、前記実施形態では、引出電極系20を構成する抑制電極21について説明したが、引出電極系20を構成するもう1枚の接地電極22が、抑制電極21と同様に、ヒータ50及びガス遮断部材60を備えるものであっても良い。
【0050】
また、イオン源100としては、引出電極系20を3枚以上の電極で構成するものであっても良く、この場合においても、1又は複数枚の電極が、前記実施形態における抑制電極21と同様に、ヒータ50及びガス遮断部材60を備えていれば良い。
【0051】
前記実施形態の抑制電極21は、単一のヒータ50を備えるものであったが、複数のヒータ50を備えるものであっても良い。これらのヒータ50は、蓋体30及び底板40の間に収容されていても良いし、一部が蓋体30及び底板40の間の領域外に設けられていても良い。
【0052】
前記実施形態では、ヒータ設置空間S1と周囲空間S2とが連通していたが、
図3に示すように、蓋体30及び底板40の間が、ガス遮断部材60により密閉されて、周囲空間S2から空間的に隔てられていても良い。
【0053】
より具体的に説明すると、ここでの底板40は、蓋体30に向かって突出して蓋体30に当接しており、この内縁部42がガス遮断部材60である。なお、底板40の外縁部41も前記実施形態と同様にガス遮断部材60である。これにより、蓋体30及び底板40の間は密閉されており、周囲空間S2から蓋体30及び底板40の間へのガスの流入を不能にしている。
【0054】
さらに、抑制電極21としては、
図4に示すように、ヒータ50と蓋体30との間及びヒータ50と底板40との間の一方又は両方に介在する絶縁部材70をさらに備えていても良い。
【0055】
この絶縁部材70は、耐熱性を有する例えば平板状のものであり、具体的にはアルミナ等のセラミックスからなるものなどを挙げることができる。
【0056】
前記実施形態では、抑制電極21を蓋体30と底板40に分割して、これらの間にヒータ50を介在させていたが、
図5に示すように、抑制電極21と接地電極22との間にヒータ50を介在させても良い。この場合、第1部材は抑制電極21であり、第2部材は接地電極22であり、ガス遮断部材60たるヒータ50が、抑制電極21及び接地電極22の間のガスの流れを遮断している。このような構成において、本発明に係る引出電極系20は、少なくとも2枚の電極である第1部材及び第2部材と、これらの電極の間に介在するヒータ50と、これらの電極の間のガスの流れを遮断するガス遮断部材60とを備えたものである。なお、少なくとも2枚の電極は、必ずしも抑制電極21と接地電極22とに限られるものではなく、例えば、イオンビームの引き出し方向に、容器10からプラズマ電極、加速電極、抑制電極および接地電極からなる引出電極系20の場合、プラズマ電極と加速電極、加速電極と抑制電極など、適宜変更して構わない。
【0057】
上述した構成において、ヒータ50と抑制電極21との間及びヒータ50と接地電極22との間の一方又は両方に絶縁部材80を介在させておくことが好ましく、
図5においては、ヒータ50のパターン層(不図示)が接地電極22側に設けられており、ヒータ50と接地電極22との間に絶縁部材80たる絶縁碍子を介在させている。
なお、ここでの絶縁部材80は、その外縁部81が抑制電極21に当接するとともに接地電極22に当接している。これにより、外縁部81は、抑制電極21及び接地電極22の間のガスの流れを遮断するガス遮断部材60である。
【0058】
ヒータ50としては、シート状をなすものに限らず、
図6及び
図7に示すように、ロッド状(棒状)又は線状のものであっても良い。
【0059】
より具体的に説明すると、
図6においては、抑制電極21と接地電極22との間に、ビーム通過穴20hよりも径方向外側に位置する環状の第1絶縁部材91たる絶縁碍子と、その第1絶縁部材91よりもさらに径方向外側に位置する環状の第2絶縁部材92たる絶縁碍子とが設けられており、これらの第1絶縁部材91及び第2絶縁部材92の間に形成される環状の空間にヒータ50を配置してある。
【0060】
上述した構成において、第1絶縁部材91及び第2絶縁部材92が、抑制電極21及び接地電極22の間のガスの流れを遮断するガス遮断部材60である。ここでは、ガス遮断部材60たる第1絶縁部材91及び第2絶縁部材92が、ヒータ50が配置される環状のヒータ設置空間S1へのガスの流れを遮断している。
【0061】
なお、ヒータ50と接地電極22との間の絶縁を確保する必要があれば、
図6(A)に示すように、ヒータ50と接地電極22との間にも第3絶縁部材93たる絶縁碍子を設けても良いし、図示していないが、ヒータ50と抑制電極21との間の絶縁を確保する必要があれば、ヒータ50と抑制電極21との間にも第4絶縁部材たる絶縁碍子を設けても良い。また、
図6(B)に示すように、ヒータ50を抑制電極21及び接地電極22から電気的に浮かせることができれば、第3絶縁部材93及び第4絶縁部材は不要である。
【0062】
さらに、
図7に示すように、ガスが腐食性のものではない場合など、ヒータ50に対するガスの影響が少ない場合であれば、ヒータ50にガスが触れる構成であっても構わない。
【0063】
具体的には、第1絶縁部材91及び抑制電極21の間、第1絶縁部材91及び接地電極22の間、第2絶縁部材92及び抑制電極21の間、又は、第2絶縁部材92及び接地電極22の間の何れかに、ヒータ50が介在していても構わない。この場合、第1絶縁部材91、第2絶縁部材92、及び、ヒータ50が、抑制電極21及び接地電極22の間のガスの流れを遮断するガス遮断部材60となる。
【0064】
また、
図2乃至
図5の抑制電極21を構成する蓋体30と底板40との間に、
図6又は
図7の実施形態で説明したヒータ50又は絶縁碍子を配置してもよい。
【0065】
加えて、前記実施形態の抑制電極21は、底板40の外縁部41が蓋体30に当接してガス遮断部材60として機能していたが、
図8に示すように、ヒータ50の外周部が露出していても構わない。なお、引出電極系20を構成する少なくとも2枚の電極の間にヒータ50を設ける場合においても、ヒータ50の外周部が露出していても構わない。
【0066】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
100・・・イオン源
IB ・・・イオンビーム
10 ・・・容器
20 ・・・引出電極系
21 ・・・抑制電極
22 ・・・接地電極
20h・・・ビーム通過穴
30 ・・・蓋体
40 ・・・底板
50 ・・・ヒータ
60 ・・・ガス遮断部材
70 ・・・絶縁部材
S1 ・・・ヒータ設置空間
S2 ・・・周囲空間