(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122503
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】エレベーター制御システム、及び、エレベーター制御方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
B66B5/02 L
B66B5/02 P
B66B5/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030070
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大竹 崇泰
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304CA02
3F304CA04
3F304CA05
3F304EA01
3F304EB01
3F304EC01
3F304EC04
3F304ED16
(57)【要約】
【課題】低速運転を行うエレベーターにおいて乗客を速やかに降車させることが可能なエレベーター制御システムを提供する。
【解決手段】蓄電装置と、給電装置と、エレベーターを制御する制御部とを備えるエレベーター制御システムを構成する。制御部は、低速運転中に、災害、及び、乗客のリクエストの少なくともいずれかを検知する検知部と、エレベーターの運転制御を低速運転から通常運転に切り替える運転制御部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置と、給電装置と、エレベーターを制御する制御部とを備えるエレベーター制御システムであって、
前記制御部は、
前記エレベーターの低速運転中に、災害、及び、乗客のリクエストの少なくともいずれかを検知する検知部と、
前記エレベーターの運転速度を低速運転から通常運転に切り替える運転制御部と、を有する
エレベーター制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記低速運転中は、前記蓄電装置から前記エレベーターに電力を供給する
請求項1に記載のエレベーター制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記低速運転から前記通常運転に切り替えられた場合にも前記蓄電装置から前記エレベーターに電力を供給する
請求項2に記載のエレベーター制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、通常運転時に停電を検知した場合、前記エレベーターへの電力の供給元を前記蓄電装置に切り替え、
前記運転制御部が前記エレベーターの前記運転速度を前記低速運転に切り替える
請求項1に記載のエレベーター制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記検知部として火災の発生を検知する火災検知部を有する
請求項1に記載のエレベーター制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記検知部として地震の発生を検知する地震検知部を有する
請求項1に記載のエレベーター制御システム。
【請求項7】
前記制御部は、通信回線網と接続する通信部を有し、
前記通信部は、前記乗客の所持する携帯端末から前記通信回線網を介して前記エレベーターの前記運転速度の変更の前記リクエストを取得する
請求項1に記載のエレベーター制御システム。
【請求項8】
前記通信部は、前記通信回線網を介して外部のサーバーに接続され、
前記サーバーは、前記通信回線網を介して前記乗客の前記携帯端末から前記エレベーターの前記運転速度の変更の前記リクエストを取得し、前記リクエストについて前記エレベーターへの権限の可否を判定し、判定結果を前記通信部に送信する
請求項7に記載のエレベーター制御システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記通信部で取得した前記サーバーによる前記リクエストの権限の可否の判定結果を基に、前記運転制御部に前記運転速度の切り替えを通知するリクエスト処理部を備える
請求項8に記載のエレベーター制御システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記通信部で取得した前記エレベーターの前記運転速度の変更の前記リクエストについて、前記エレベーターへの前記リクエストの権限の可否を判定するリクエスト処理部を備える
請求項7に記載のエレベーター制御システム。
【請求項11】
蓄電装置と、給電装置と、エレベーターを制御する制御部とを備えるエレベーターの制御方法であって、
前記エレベーターの低速運転中に、災害、及び、乗客のリクエストの少なくともいずれかを検知し、前記エレベーターの運転速度を低速運転から通常運転に切り替える運転制御を行う
エレベーター制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター制御システム、及び、エレベーター制御方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
建物の多くには、昇降設備としてエレベーターが備えられている。これらのエレベーターは、停電の際にエレベーターに備え付けられたバッテリによって最寄階まで走行し、乗客の閉じ込めを防止する。しかし、エレベーターに備え付けられたバッテリは、乗客の閉じ込めを防止することを目的としているため、容量が少ない。このため、上記エレベーターは、最寄階への走行後、停電復旧まで停止する。
【0003】
一方、ショッピングセンター等の大型施設やマンション、オフィスビルにおいて、エレベーターの外部に設けられた蓄電装置と給電装置とを備えた充電装置を設け、停電時に充電装置から建物内の設備へ給電する手法が提案されている。例えば、蓄電装置及び給電装置としてハイブリッド型電気自動車充電設備を用いて、電気自動車からエレベーターへ電力供給する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、地震等による停電発生の際に、エレベーターなどのビル設備への電源を、蓄電装置からの給電に切り替え、エレベーターを定格速度以下の低速運転に変更する制御技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。エレベーターは、蓄電装置から給電している期間中、低速運転を行うことにより、停電中でも長時間の運転が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-101448号公報
【特許文献2】特開2014-118232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に記載の技術のように停電中でも長時間の運転が可能になったエレベーターでは、低速運転制御の期間中に、火災等の別の災害が発生する可能性が増加している。火災等が発生した際には、エレベーターを避難階や最寄り階へ走行し、乗客を降車させる必要があるが、低速運転制御では目的の階への到着が遅くなる。
【0006】
上述した問題の解決のため、本発明においては、低速運転を行うエレベーターにおいて乗客を速やかに降車させることが可能なエレベーター制御システム、及び、エレベーター制御方法を提供する。
【0007】
また、本発明の上記の目的及びその他の目的と本発明の新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエレベーター制御システムは、蓄電装置と、給電装置と、エレベーターを制御する制御部とを備える。制御部は、エレベーターの低速運転中に、災害、及び、乗客のリクエストの少なくともいずれかを検知する検知部と、エレベーターの運転速度を低速運転から通常運転に切り替える運転制御部とを有する。
【0009】
また、本発明のエレベーター制御方法は、蓄電装置と、給電装置と、エレベータを制御するー制御部とを備えるエレベーターの制御方法である。エレベーターの低速運転中に、災害、及び、乗客のリクエストの少なくともいずれかを検知し、エレベーターの運転速度を低速運転から通常運転に切り替える運転制御を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低速運転を行うエレベーターに対して、低速運転を行うエレベーターにおいて乗客を速やかに降車させることが可能なエレベーター制御システム、及び、エレベーター制御方法を提供することができる。
【0011】
なお、上述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】エレベーター制御システムの構成を示すシステムブロック図である。
【
図2】停電時の運転制御切替処理を説明するフローチャートである。
【
図3】火災発生の際の運転制御切替処理を説明するフローチャートである。
【
図4】地震発生の際の運転制御切替処理を説明するフローチャートである。
【
図5】ユーザーからのリクエストによる運転制御切替処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るエレベーター制御システム、及び、エレベーター制御方法の一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。以下で説明する各図において、共通の部材には同一の符号を付している。また、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0014】
[エレベーター制御システム]
図1にエレベーター制御システムの構成を説明するためのシステムブロック図を示す。
図1に示すエレベーター制御システム1は、エレベーター21を制御するエレベーター制御部(制御部)100と、停電時にエレベーター21に電力を供給する充電給電装置200とを備える。
また、エレベーター制御部100は、通信回線網15を介してWebサーバー16に接続されている。
さらに、エレベーター21、エレベーター制御部100、及び、充電給電装置200には、外部の商用電源から電力が供給される。
【0015】
エレベーター制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等により構成される。エレベーター制御部100のCPUは、ROMに格納されている各種処理プログラムを読出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って各部の動作を統括的に制御する。
【0016】
停電検知部9は、エレベーター21、エレベーター制御部100、及び、充電給電装置200に外部から電力を供給する商用電源6が停電したことを検知する。また、停電検知部9は、商用電源6の停電が復旧したことを検知する。さらに、検知した商用電源6の停電及び復旧を運転制御部10に通知する。
運転制御部10は、エレベーター21の運転を制御する。例えば、エレベーター21の運転速度を通常運転(定格速度)と定格速度以下の低速運転とで切り替える、エレベーター21の運転制御を行う。また、運転制御部10は、エレベーター21の運転中、停止中等の運転状態の取得、指定の階での停止制御等を行う。
【0017】
火災検知部11は、エレベーター21が設置された施設において火災が発生したことを検知する。そして、火災検知部11は、火災を検知したことを運転制御部10に通知する。
地震検知部12は、エレベーター21が設置された施設において地震が発生したことを検知する。そして、地震検知部12は、地震を検知したことを運転制御部10に通知する。
リクエスト処理部13は、エレベーター21のユーザー(乗客)が所持する携帯端末24からの運転速度(運転制御)の変更リクエストを受け取り、リクエストの可否を処理する。また、リクエスト処理部13は、処理したリクエストを運転制御部10に通知する。
【0018】
通信部14は、例えば、NIC(Network Interface Card)やモデム等で構成され、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等の通信回線網15に接続し、外部のWebサーバー16等の情報機器との間で各種データの送受信を行う。
Webサーバー16は、エレベーター21のユーザーが所持する携帯端末24と、通信回線網15を介して通信し、さらに、通信回線網15を介して通信部14と通信する。Webサーバー16は、リクエスト処理部13に代わってエレベーター21のユーザーによる運転速度の変更リクエストを受け取り、リクエストの可否を処理してもよい。リクエストの可否を処理した場合、Webサーバー16は、リクエストの可否の処理結果をリクエスト処理部13に送信する。
【0019】
充電給電装置200は、給電装置7と、外部蓄電装置8とを有する。
給電装置7は、交流電力と直流電力とを変換するコンバータ回路部や、直流電力を平滑化するコンデンサとを有する。また、給電装置7は、コネクタ等を介して外部蓄電装置8と接続可能に設けられている。
給電装置7は、通常時(非災害時)では、商用電源6から外部蓄電装置8へ給電することにより、外部蓄電装置8の充電を行う。また、給電装置7は、災害発生時には、エレベーター21への電力供給源を商用電源6から外部蓄電装置8に切替え、外部蓄電装置8からエレベーター21に給電を行う。
【0020】
外部蓄電装置8は、給電装置7にコネクタ等を介して接続された二次電池やキャパシタ等で構成される。外部蓄電装置8を構成する二次電池としては、例えば、リチウムイオン電池やナトリウム硫黄電池、全固体電池等が挙げられる。
また、外部蓄電装置8として、二次電池を備える電気自動車を用いてもよい。電気自動車は、電気エネルギのみによって走行する車両だけでなく、電気エネルギを少なくとも一部のエネルギ源として走行する車両であればよい。例えば、電気自動車は、化石燃料をエネルギ源として動作するエンジンと電気エネルギとをエネルギ源として動作するモーターを併用して走行する、いわゆるハイブリッド車両であってもよい。
【0021】
エレベーター21は、乗りかご内のユーザーに対して情報を表示するための表示装置25を備える。また、エレベーター21は、停電に備えて図示しない、内部蓄電池と、内部蓄電池と商用電源6との間で電力供給源を切替える切替装置とを備える。
【0022】
[エレベーター制御方法]
次に、
図1に示すエレベーター制御システム1による、エレベーター21の運転制御について説明する。
まず、停電が発生した際のエレベーター21の運転制御について説明する。
停電が発生した際、停電検知部9は商用電源6が停電したことを検知する。そして、停電検知部9は、給電装置7、及び、運転制御部10に、停電の発生を通知する。給電装置7は、停電検知部9から通知を受けて、外部蓄電装置8への蓄電をエレベーター21への給電に切り替える。また、運転制御部10は、停電検知部9から通知を受けて、エレベーター21の運転速度を通常運転から低速運転に切り替える。次に、停電が復旧した際、停電検知部9は、商用電源6の停電が復旧したことを検知する。そして、停電検知部9は、給電装置7、及び、運転制御部10に、停電の復旧を通知する。給電装置7は、停電検知部9から通知を受けて、エレベーター21への給電を外部蓄電装置8への蓄電に切り替える。また、運転制御部10は、停電検知部9から通知を受けて、エレベーター21の運転速度を低速運転から通常運転に切り替える。
【0023】
次に、エレベーター21の低速運転中に災害が発生した場合のエレベーター21の運転制御を、火災が発生した場合と地震が発生した場合を例に説明する。
火災が発生した際、火災検知部11は、火災が発生したことを検知する。そして、火災検知部11は、運転制御部10に、火災の発生を通知する。運転制御部10は、火災検知部11から通知を受けて、エレベーター21の運転速度を低速運転から通常運転に切り替える。そして、運転制御部10は、エレベーター21の乗りかごを避難階まで運転し、ドア22を開放する。
また、地震が発生した際には、地震検知部12は、地震が発生したことを検知する。そして、地震検知部12は、運転制御部10に地震の発生を通知する。運転制御部10は、地震検知部12から通知を受けて、エレベーター21の運転速度を低速運転から通常運転に切り替える。そして、運転制御部10は、エレベーター21の乗りかごを最寄りの階まで運転し、ドア22を開放する。
【0024】
次に、エレベーター21のユーザーのリクエストによって、運転速度を変更する場合のエレベーター制御システム1による運転制御について説明する。
まず、エレベーター21に搭乗中のユーザーは、ユーザーの所持する携帯端末24を用い、通信回線網15を経由してエレベーター制御システム1に運転制御の変更のリクエストを送信する。例えば、ユーザーは、携帯端末24に予め登録されたアプリケーションを用いてエレベーター制御システム1にリクエストを送信する。また、乗りかご内や表示装置25に表示したURL(Uniform Resource Locator)、二次元コード等からエレベーター制御システム1に接続してリクエストを送信する。
Webサーバー16は、通信回線網15を介してユーザーからのリクエストを受け取り、当該エレベーター21へのリクエスト権限等のリクエストの可否を処理する。Webサーバー16は、通信回線網15を経由し、リクエストの可否の処理結果を、エレベーター制御システム1の通信部14に送信する。エレベーター制御システム1は、通信部14でWebサーバー16からの処理結果を受信し、通信部14で受信した処理結果を基にリクエスト処理部13が運転制御の変更指示を運転制御部10に通知する。運転制御部10は、リクエスト処理部13の通知に従ってエレベーター21の運転速度を低速運転から通常運転に切り替える。
【0025】
なお、上述のユーザーのリクエストによる運転制御の変更では、Webサーバー16におてユーザーのリクエストの可否を処理しているが、このリクエストの可否を処理は、エレベーター制御システム1において行ってもよい。例えば、エレベーター制御システム1のリクエスト処理部13が、ユーザーのリクエストの可否を処理してもよい。リクエスト処理部13がユーザーのリクエストの可否を処理する場合、Webサーバー16は、通信回線網15を介してユーザーからのリクエストを受け取り、通信回線網15を経由してエレベーター制御システム1の通信部14にユーザーからのリクエストを送信する。エレベーター制御システム1は、通信部14でWebサーバー16からユーザーのリクエストを受け取り、リクエスト処理部13がリクエスト権限等のリクエストの可否を処理する。そして、リクエスト処理部13は、リクエストの可否を処理結果を基に、運転制御の変更指示を運転制御部10に通知する。運転制御部10は、リクエスト処理部13の通知に従ってエレベーター21の運転速度を低速運転から通常運転に切り替える。
【0026】
[運転切り替え処理のフローチャート]
次に、上述のエレベーター制御システム1を用いた、停電発生、災害発生、及び、ユーザーリクエストによるエレベーターの運転制御の切替処理についてフローチャートを用いて説明する。なお、以下の説明では、災害の一例として、火災発生及び地震発生の際のエレベーターの運転制御の切替処理について説明する。
【0027】
(停電検出)
図2に、停電時の運転制御の切替処理を説明するためのフローチャートを示す。
まず、エレベーター制御システム1は、停電検知部9が停電発生の有無を検知する(ステップS201)。運転制御部10は、停電検知部9が検知した情報から、停電が発生したかどうかを判定する(ステップS202)。停電が発生した場合(ステップS202のYes)、運転制御部10は、給電装置7に対して外部蓄電装置8の充電からエレベーター21への放電に切り替えを指示する(ステップS203)。また、運転制御部10は、エレベーター21の運転制御を低速運転に切り替える(ステップS204)。これにより、給電装置7は、商用電源6を用いた外部蓄電装置8の充電から、外部蓄電装置8によるエレベーター21への電力供給に切り替える。そして、エレベーター21は、外部蓄電装置8からの電力供給による低速運転を行う。
【0028】
次に、エレベーター21を低速運転に切り替え後、又は、停電が発生していない場合(ステップS202のNo)、運転制御部10は、停電検知部9が検知した情報から停電が復旧したかどうかを判定する(ステップS205)。停電が復旧した場合(ステップS205のYes)、運転制御部10は、給電装置7に対してエレベーター21への放電から外部蓄電装置8の充電に切り替えを指示する(ステップS206)。また、運転制御部10は、エレベーター21の運転速度を低速運転から通常運転に切り替える(ステップS207)。これにより、給電装置7は、外部蓄電装置8によるエレベーター21への電力供給から、商用電源6を用いた外部蓄電装置8の充電に切り替える。そして、エレベーター21は、商用電源6からの電力供給による通常運転を行う。
通常運転への切り替え後、又は、停電が復旧していない場合(ステップS205のNo)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0029】
(火災検知)
次に、
図3に、災害発生の一例として火災発生の際の運転制御の切替処理を説明するためのフローチャートを示す。
まず、エレベーター制御システム1は、火災検知部11が火災発生の有無を検知する(ステップS301)。運転制御部10は、火災検知部11が検知した情報から、火災が発生したかどうかを判定する(ステップS302)。火災が発生した場合(ステップS302のYes)、運転制御部10は、エレベーター21が走行中かどうかを判定する(ステップS303)。エレベーター21が走行中の場合(ステップS303のYes)、運転制御部10は、エレベーター21の目的階を避難階に変更する(ステップS304)。さらに、運転制御部10は、エレベーター21が低速運転での運転制御中かどうかを判定する(ステップS305)。エレベーター21が低速運転中の場合(ステップS305のYes)、運転制御部10は、エレベーター21の運転速度を低速運転から通常運転に切り替える(ステップS306)。
【0030】
次に、エレベーター21を通常運転に切り替え後、又は、低速運転中でない場合(ステップS305のNo)、運転制御部10は、エレベーター21を通常運転で走行させて避難階に停止させる(ステップS307)。
次に、エレベーター21を避難階に停止させた後、又は、エレベーター21が走行中でない場合(ステップS303のNo)、運転制御部10は、エレベーター21を運転休止にする(ステップS308)。
エレベーター21の運転休止後、又は、火災が発生していない場合(ステップS302のNo)、本フローチャートによる処理を終了する。
上記処理によれば、エレベーター制御部は、停電中に外部蓄電装置からの電力供給で低速運転するエレベーターに対し、火災発生を検知した場合に通常運転に切り替える。そして、エレベーター制御部は、エレベーターを通常運転で避難階まで走行させる。これにより、エレベーター制御システムにおいて、低速運転中のエレベーターに搭乗中の乗客を、災害発生時に速やかに降車させることが可能となる。
【0031】
(地震検知)
次に、
図4に、災害発生の一例として地震発生の際の運転制御切替処理を説明するためのフローチャートを示す。
まず、エレベーター制御システム1は、地震検知部12が地震発生の有無を検知する(ステップS401)。運転制御部10は、地震検知部12が検知した情報から、地震が発生したかどうかを判定する(ステップS402)。地震が発生した場合(ステップS402のYes)、運転制御部10は、エレベーター21が走行中かどうかを判定する(ステップS403)。エレベーター21が走行中の場合(ステップS403のYes)、運転制御部10は、エレベーター21の目的階を最寄り階に変更する(ステップS404)。さらに、運転制御部10は、エレベーター21が低速運転での運転制御中かどうかを判定する(ステップS405)。エレベーター21が低速運転中の場合(ステップS405のYes)、運転制御部10は、エレベーター21の運転速度を低速運転から通常運転に切り替える(ステップS406)。
【0032】
次に、エレベーター21を通常運転に切り替え後、又は、低速運転中でない場合(ステップS405のNo)、運転制御部10は、エレベーター21を通常運転で走行させて最寄り階に停止させる(ステップS407)。
次に、エレベーター21を最寄り階に停止させた後、又は、エレベーター21が走行中でない場合(ステップS403のNo)、運転制御部10は、エレベーター21を運転休止にする(ステップS408)。
エレベーター21の運転休止後、又は、地震が発生していない場合(ステップS402のNo)、本フローチャートによる処理を終了する。
上記処理によれば、エレベーター制御部は、停電中に外部蓄電装置からの電力供給で低速運転するエレベーターに対し、地震発生を検知した場合に通常運転に切り替える。そして、エレベーター制御部は、エレベーターを通常運転で最寄り階階まで走行させる。これにより、エレベーター制御システムにおいて、低速運転中のエレベーターに搭乗中の乗客を、災害発生時に速やかに降車させることが可能となる。
【0033】
(ユーザーリクエスト)
次に、
図5にエレベーター21に搭乗中のユーザーからのリクエストによる運転制御切替処理を説明するためのフローチャートを示す。なお、以下の例では、リクエストとして、ユーザーの所持する携帯端末からの運転制御の変更のリクエストが行われた場合について説明する。
【0034】
まず、エレベーター21に搭乗中のユーザーが、所持する携帯端末24から、通信回線網15を経由して、Webサーバー16に通常運転のリクエストを送信する(ステップS501)。Webサーバー16は、ユーザーから通常運転のリクエストを受け付け、当該リクエストにエレベーター21の運転制御切り替えの権限が有るかどうかを判定する(ステップS502)。リクエスト権限がある場合(ステップS502のYes)、リクエスト処理部13が運転制御部10にエレベーター21の運転制御の変更指示を通知する(ステップS503)。この処理では、エレベーター制御部100は、通信回線網15を介して、通信部14がWebサーバー16からリクエスト権限と判定結果を受け付ける。そして、リクエスト処理部13が通信部14からリクエスト権限と判定結果を取得する。
変更指示の通知後、又は、リクエスト権限が無い場合(ステップS502のNo)、運転制御部10は、エレベーター21が停電による低速運転での運転制御中かどうかを判定する(ステップS504)。低速運転での制御中でない場合(ステップS504のNo)、運転制御部10は、エレベーター21の運転速度を通常運転で走行させる(ステップS505)。
【0035】
低速運転での制御中の場合(ステップS504のYes)、運転制御部10は、ユーザーの携帯端末24からの通常運転への切り替えリクエストについて、リクエスト処理部13から通知を受けたかどうかを確認(判定)する(ステップS506)。リクエスト通知が無い場合(ステップS506のNo)、運転制御部10は、エレベーター21を低速運転で制御して走行させる(ステップS507)。リクエスト通知がある場合、運転制御部10は、エレベーター21の運転速度を低速運転から通常運転に切り替える(ステップS508)。そして、運転制御部10は、エレベーター21を通常運転で走行させる(ステップS509)。
【0036】
次に、運転制御部10は、エレベーター21を目的階に停止させる(ステップS510)。そして、運転制御部10は、停電中かどうかを確認(判定)する(ステップS511)。停電中の場合(ステップS511のYes)、運転制御部10は、エレベーター21の運転速度を低速運転に切り替える。
エレベーター21の運転速度を低速運転に切り替えた後、又は、停電中でない場合(ステップS511のNo)、本フローチャートによる処理を終了する。
上記処理によれば、エレベーター制御部は、停電中に外部蓄電装置からの電力供給で低速運転で走行するエレベーターに対し、ユーザーからの運転制御切り替えリクエストを受けて通常運転に切り替える。そして、エレベーター制御部は、エレベーターを通常運転で目的階まで走行させる。これにより、エレベーター制御システムにおいて、低速運転中のエレベーターに搭乗中の乗客を、ユーザーの任意のリクエストに応じて速やかに降車させることが可能となる。
【0037】
なお、上記フローチャートによる処理では、リクエスト権限の可否の判定をWebサーバー16側で行わずに、リクエスト処理部13で行ってもよい。例えば、ステップS502においてWebサーバー16が行う当該リクエストに権限が有るかどうかを判定を、リクエスト処理部13が行ってもよい。この場合、Webサーバー16から通信回線網15と通信部14を経由して、リクエスト処理部13がユーザーから通常運転のリクエストを受け付ける。そして、リクエスト処理部13が、ユーザーからの通常運転のリクエストにエレベーター21の運転制御切り替えの権限が有るかどうかを判定する。
【0038】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 エレベーター制御システム、6 商用電源、7 給電装置、8 外部蓄電装置、9 停電検知部、10 運転制御部、11 火災検知部、12 地震検知部、13 リクエスト処理部、14 通信部、15 通信回線網、16 Webサーバー、21 エレベーター、22 ドア、24 携帯端末、25 表示装置、100 エレベーター制御部、200 充電給電装置