(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122512
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】除細動制御装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/39 20060101AFI20240902BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20240902BHJP
A61B 5/346 20210101ALI20240902BHJP
【FI】
A61N1/39
A61B5/33 120
A61B5/346
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030084
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】坂下 直也
(72)【発明者】
【氏名】小島 康弘
【テーマコード(参考)】
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C053JJ18
4C053JJ23
4C127AA02
4C127BB05
4C127GG16
(57)【要約】
【課題】カテーテル治療に役立つ情報を提供する。
【解決手段】除細動制御装置14は、電極カテーテル12に電気エネルギーを供給する電源部48と、電気エネルギーの供給後に電極カテーテル12の複数の電極によって計測される複数の心電波形を用いて、最早期異常波形を検出する異常検出部52cと、最早期異常波形の検出を契機にアラートを発動する警告部52dと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極カテーテルに電気エネルギーを供給する電源部と、
前記電気エネルギーの供給後に前記電極カテーテルの複数の電極によって計測される複数の心電波形を用いて、最早期異常波形を検出する異常検出部と、
前記最早期異常波形の検出を契機にアラートを発動する警告部と、を備える除細動制御装置。
【請求項2】
前記異常検出部は、前記複数の心電波形のうち、前記電気エネルギーの供給後に振幅が第1閾値以上となる開始タイミングが最も早い最早期波形を検出し、前記最早期波形を用いて前記最早期異常波形を検出する、請求項1に記載の除細動制御装置。
【請求項3】
前記異常検出部は、前記最早期波形の振幅が前記第1閾値以上となる波形部分を検出し、前記開始タイミングから基準時間経過までの前記波形部分の検出数が所定数以上となる場合、前記最早期異常波形を検出する、請求項2に記載の除細動制御装置。
【請求項4】
前記異常検出部は、前記最早期波形の振幅が前記第1閾値以上で下向きとなる波形部分を検出し、前記開始タイミングから基準時間経過までの前記波形部分の検出数が所定数以上となる場合、前記最早期異常波形を検出する、請求項2に記載の除細動制御装置。
【請求項5】
前記異常検出部は、前記最早期波形の振幅が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下となる平坦部分の連続時間を計測し、前記開始タイミングから基準時間経過までに計測される前記平坦部分の連続時間が所定値を超えない場合、前記最早期異常波形を検出する、請求項2に記載の除細動制御装置。
【請求項6】
前記異常検出部は、前記最早期波形を取得する電極が所定の電極ではない場合、前記最早期異常波形を検出する、請求項2に記載の除細動制御装置。
【請求項7】
前記異常検出部は、前記複数の心電波形について前記電気エネルギーの供給後に振幅が第1閾値以上となる開始タイミングを検出し、前記複数の心電波形の前記開始タイミングの検出順序を用いて前記最早期異常波形を検出する、請求項1に記載の除細動制御装置。
【請求項8】
前記最早期異常波形を取得する電極が前記複数の電極のいずれであるかを示す情報を表示する表示部をさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の除細動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、除細動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心腔内にカテーテルを挿入し、不整脈の原因と考えられる箇所を局所的に焼灼するカテーテルアブレーション治療が一般的になされている。アブレーション治療では、心腔内に挿入される電極カテーテルを用いて心腔内の心電位が計測され、不整脈の原因と考えられる箇所が分析される。アブレーション術中に発生しうる心房細動を除去するため、心腔内の電極カテーテルを介して、除細動のための電気エネルギーを心臓に直接的に供給する心腔内除細動システムも利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アブレーション治療では、不整脈の原因となる箇所の特定と、特定した箇所の焼灼とが同時並行的に実施されることがある。不整脈の原因となる箇所の診断に役立つ情報を提供できれば、治療に当たる医師等にとって有益である。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、カテーテル治療に役立つ情報を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様の除細動制御装置は、電極カテーテルに電気エネルギーを供給する電源部と、電気エネルギーの供給後に電極カテーテルの複数の電極によって計測される複数の心電波形を用いて、最早期異常波形を検出する異常検出部と、最早期異常波形の検出を契機にアラートを発動する警告部と、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本開示に包含される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、カテーテル治療に役立つ情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る除細動システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】電極カテーテルの構造を概略的に示す図である。
【
図4】電源部から出力される電圧波形の一例を示すグラフである。
【
図5】除細動制御装置の動作モードの遷移を模式的に示す図である。
【
図6】除細動制御装置の表示画面の一例を示す図である。
【
図7】正常時における複数の心電波形の一例を模式的に示す図である。
【
図8】最早期異常時における複数の心電波形の一例を模式的に示す図である。
【
図9】最早期異常波形の一例を模式的に示す図である。
【
図10】最早期異常波形の一例を模式的に示す図である。
【
図11】最早期異常波形の一例を模式的に示す図である。
【
図12】第1実施形態に係る除細動方法を模式的に示すフローチャートである。
【
図13】第2実施形態に係る除細動システムの構成を概略的に示す図である。
【
図14】第2実施形態に係るトリガ検出方法を模式的に示すフローチャートである。
【
図15】第2実施形態に係る波形選択方法を模式的に示すフローチャートである。
【
図16】第3実施形態に係る除細動システムの構成を概略的に示す図である。
【
図17】第3実施形態に係る除細動方法を模式的に示すフローチャートである。
【
図18】第4実施形態に係る除細動システムの構成を概略的に示す図である。
【
図19】第4実施形態に係るトリガ検出方法を模式的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態(以下では実施形態とも表す)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本開示の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組み合わせは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る除細動システム10の構成を概略的に示す図である。除細動システム10は、電極カテーテル12と、除細動制御装置14と、モニタリング装置16とを備える。
【0012】
電極カテーテル12は、いわゆる心臓カテーテルである。電極カテーテル12は、患者20の体内に挿入され、電極カテーテル12の先端部24が患者20の心臓22に位置するようにして使用される。電極カテーテル12の先端側には複数の電極が長手方向に並ぶように設けられる。電極カテーテル12は、複数の電極によって心腔内の複数箇所の心電位を計測できる。電極カテーテル12は、複数の電極に電圧を印加することにより、除細動のための電気エネルギーを心臓22に直接的に供給できる。
【0013】
除細動制御装置14は、電極カテーテル12に接続される。除細動制御装置14は、心電位計測モードまたは除細動モードのいずれかの動作モードで動作する。除細動制御装置14は、心電位計測モードにおいて、電極カテーテル12の複数の電極によって計測される心電波形を取得し、モニタリング装置16に出力する。除細動制御装置14は、除細動モードにおいて、電極カテーテル12の複数の電極に電圧を印加することにより、除細動のための電気エネルギーを電極カテーテル12に供給する。
【0014】
モニタリング装置16は、患者20の心電波形を取得してモニタする。モニタリング装置16は、電極カテーテル12によって計測される心電波形を除細動制御装置14を介して取得する。モニタリング装置16は、患者20の体表面に貼付される電極パッド18などの心電位計測手段を介して患者20の心電波形を取得する。モニタリング装置16は、除細動制御装置14に接続される電極カテーテル12とは別の電極カテーテルから取得される患者20の心電波形を取得することもできる。モニタリング装置16は、取得した心電波形の少なくとも一つを除細動制御装置14に提供する。モニタリング装置16から除細動制御装置14に提供される心電波形は、除細動のための電気エネルギーの供給開始可能タイミング(トリガポイント)を決定するために用いられる。
【0015】
除細動システム10は、例えば、不整脈の原因と考えられる箇所を局所的に焼灼するカテーテルアブレーション手術において使用される。アブレーション術中には、不整脈の一種である心房細動が発生することがある。心房細動が発生した場合、除細動のために電極カテーテル12を介して電気エネルギーが供給される。電気エネルギーの供給によって心房細動が除去された場合、正常な心拍が開始されることが多いが、正常な心拍の開始前に、不整脈の原因箇所が異常興奮することがある。本実施形態では、除細動後の心電波形を分析することにより、異常興奮の発生を示す最早期異常波形を検出する。本実施形態によれば、最早期異常波形を検出することにより、不整脈の原因に関連する有益な情報を医師等に提供することができる。
【0016】
図2は、電極カテーテル12の構造を概略的に示す図である。電極カテーテル12は、体内に挿入される管状の可撓性を有するシャフト26と、シャフト26の基端側(体外側)に接続されるハンドル部28とを備える。電極カテーテル12のユーザである医師等は、ハンドル部28を把持しながら電極カテーテル12を操作する。ユーザは、ハンドル部28を把持しながら、つまみ部34を回転させることで、シャフト26内に挿通されるプルワイヤ(不図示)を通じてシャフト26の先端部24を所定の方向に偏向(首振り)できる。また、ハンドル部28を周方向に回転することで、シャフト26の先端部24の偏向方向を調整できる。ハンドル部28の末端には、除細動制御装置14に接続するためのケーブル30が接続される。
【0017】
シャフト26の先端側には、第1電極群31G、第2電極群32Gおよび第3電極群33Gが設けられる。シャフト26の軸方向(長手方向)における第1電極群31G、第2電極群32G、第3電極群33Gの位置や順序は任意であるが、
図2に示される例では、先端側から基端側に向かって第1電極群31G、第2電極群32G、第3電極群33Gの順に配置される。このような電極配置の電極カテーテル12によって心腔内に除細動処置を施す場合、例えば、先端側の第1電極群31Gは冠静脈洞(CS;coronary sinus)に位置し、基端側の第2電極群32Gは右心房(RA;right atrium)に位置し、更に基端側の第3電極群33Gは上大静脈(SVC;superior vena cava)に位置する。
【0018】
第1電極群31Gは、軸方向に間隔を空けて配置される複数のリング状の第1電極31を備える。第2電極群32Gは、軸方向に間隔を空けて配置される複数のリング状の第2電極32を備える。第3電極群33Gは、軸方向に間隔を空けて配置される複数のリング状の第3電極33を備える。
図2に示される例では、8個の第1電極31と、8個の第2電極32と、4個の第3電極33とが設けられるが、各電極群31G,32G,33Gに含まれる電極の個数は特に限られない。複数の電極31、32、33は、電極群31G、32G、33Gとしてまとまって配置されなくてもよく、それぞれが軸方向の任意の位置に分散して配置されてもよい。
【0019】
電極カテーテル12に設けられる複数の電極31、32、33のそれぞれには、電極番号が付与されてもよい。電極番号は、例えば、電極カテーテル12の先端側から基端側に向けて順番に付与される。例えば、第1電極群31Gの8個の第1電極31には「1」~「8」の番号が付与され、第2電極群32Gの8個の第2電極32には「9」~「16」の番号が付与され、第3電極群33Gの4個の第3電極33には「17」~「20」の番号が付与される。
【0020】
シャフト26の内部には、各電極群31G、32G、33Gと電気的に接続される第1導線群、第2導線群および第3導線群(不図示)が挿通されている。第1導線群は、第1電極群31Gにおける複数の第1電極31に対応して接続される複数(例えば8本)の第1導線を備える。第2導線群は、第2電極群32Gにおける複数の第2電極32に対応して接続される複数(例えば8本)の第2導線を備える。第3導線群は、第3電極群33Gにおける複数の第3電極33に対応して接続される複数(例えば4本)の第3導線を備える。各導線群は、ケーブル30を介して除細動制御装置14と電気的に接続される。除細動制御装置14は、心電位計測モードにおいて、各電極群31G、32G、33Gを構成する複数の電極31、32、33のそれぞれで計測される心電波形を取得できる。
【0021】
第1電極群31Gを用いて計測される心電波形を第1心電波形ともいう。第1心電波形は、例えば、冠静脈洞(CS)の心電位を示すCS波形である。第1電極群31Gが8個の第1電極31を備える場合、冠静脈洞における4箇所のCS波形(CS1、CS2、CS3、CS4)を計測できる。4箇所のCS波形のそれぞれは、例えば、第1電極群31Gのうちの隣接する二つの第1電極31の間の電位差の時間変化に相当する。
【0022】
第2電極群32Gを用いて計測される心電波形を第2心電波形ともいう。第2心電波形は、例えば、右心房(RA)の心電位を示すRA波形である。第2電極群32Gが8個の第2電極32を備える場合、右心房における4箇所のRA波形(RA1、RA2、RA3、RA4)を計測できる。4箇所のRA波形のそれぞれは、例えば、第2電極群32Gのうちの隣接する二つの第2電極32の間の電位差の時間変化に相当する。
【0023】
第3電極群33Gを用いて計測される心電波形を第3心電波形ともいう。第3心電波形は、例えば、上大静脈(SVC)の心電位を示すSVC波形である。第3電極群33Gが4個の第3電極33を備える場合、上大静脈における2箇所のSVC波形(SVC1、SVC2)を計測できる。2箇所のSVC波形のそれぞれは、例えば、隣接する二つの第3電極33の電位差の時間変化に相当する。
【0024】
第1電極群31Gおよび第2電極群32Gは、除細動モードにおいて、除細動制御装置14によって異なる極性の電圧が印加される。第1電極群31Gに正の電圧が印加される場合には第2電極群32Gに負の電圧が印加される。例えば、第1電極群31Gを構成する複数の第1電極31には共通の正電圧が印加され、第2電極群32Gを構成する複数の第2電極32には共通の負電圧が印加される。逆に、第1電極群31Gに負の電圧が印加される場合には、第2電極群32Gに正の電圧が印加される。例えば、第1電極群31Gを構成する複数の第1電極31には共通の負電圧が印加され、第2電極群32Gを構成する複数の第2電極32には共通の正電圧が印加される。このようにして、第1電極群31Gが配置される冠静脈洞(CS)と、第2電極群32Gが配置される右心房(RA)との間に除細動のための電気エネルギーを直接的に供給できる。
【0025】
図1に戻り、除細動制御装置14について説明する。除細動制御装置14は、カテーテル接続部40と、接点切替部42と、波形出力部44と、波形入力部46と、電源部48と、操作ボタン50と、制御部52と、表示部54と、スピーカ56とを備える。
【0026】
カテーテル接続部40は、電極カテーテル12に接続されるケーブル30が取り付けられる。カテーテル接続部40は、電極カテーテル12の各電極群31G、32G、33Gを構成する複数の電極31、32、33のそれぞれと電気的に接続される接続端子群を備える。カテーテル接続部40は、第1電極群31Gと電気的に接続される第1接続端子群と、第2電極群32Gと電気的に接続される第2接続端子群と、第3電極群33Gと電気的に接続される第3接続端子群とを備える。第1接続端子群および第2接続端子群は、接点切替部42と接続される。第3接続端子群は、破線40aで示されるように、接点切替部42ではなく、波形出力部44および制御部52と接続される。
【0027】
接点切替部42は、1回路2接点の切替スイッチであり、共通接点42cを第1接点42aまたは第2接点42bのいずれかに接続するよう構成される。共通接点42cには、カテーテル接続部40の第1接続端子群および第2接続端子群が接続される。したがって、共通接点42cは、電極カテーテル12の第1電極群31Gおよび第2電極群32Gと接続される。第1接点42aは、波形出力部44および制御部52に接続される。第2接点42bは、電源部48に電気的に接続される。
【0028】
接点切替部42は、例えば心電位計測モードにおいて、共通接点42cを第1接点42aに接続する。共通接点42cを第1接点42aに接続することにより、第1電極群31Gにて計測される第1心電波形および第2電極群32Gにて計測される第2心電波形を、波形出力部44を介してモニタリング装置16に出力できる。共通接点42cを第1接点42aに接続することにより、第1心電波形および第2心電波形を、制御部52にて分析できる。接点切替部42は、例えば除細動モードにおいて、共通接点42cを第2接点42bに接続する。共通接点42cを第2接点42bに接続することにより、第1電極群31Gおよび第2電極群32Gを電源部48に接続し、電源部48から電気エネルギーを供給できる。
【0029】
波形出力部44は、電極カテーテル12を用いて計測される心電波形をモニタリング装置16に向けて出力する。波形出力部44は、例えば、第1電極群31Gで計測される複数の第1心電波形を出力する第1出力端子群、第2電極群32Gで計測される複数の第2心電波形を出力する第2出力端子群、および第3電極群33Gで計測される複数の第3心電波形を出力する第3出力端子群を備える。
【0030】
波形出力部44は、例えば心電位計測モードにおいて、第1心電波形および第2心電波形を出力する。波形出力部44から出力される第1心電波形および第2心電波形は、接点切替部42を経由する。波形出力部44は、例えば除細動モードにおいて第1接点42aが共通接点42cから切り離される場合、第1心電波形および第2心電波形を出力しない。波形出力部44は、心電位計測モードおよび除細動モードの両方において、第3心電波形を出力する。波形出力部44から出力される第3心電波形は、接点切替部42を経由しないためである。
【0031】
波形入力部46は、モニタリング装置16から提供される心電波形が入力される。波形入力部46は、例えば、モニタリング装置16から提供される心電波形が入力される入力端子を備える。波形入力部46に入力される心電波形は、例えば、電極パッド18によって計測される体表面心電波形である。波形入力部46に入力される心電波形は、電極カテーテル12とは異なる別の電極カテーテルによって計測される心腔内心電波形であってもよい。波形入力部46に入力される心電波形は、電極カテーテル12の第3電極群33Gによって計測される第3心電波形であってもよい。
【0032】
電源部48は、接点切替部42の第2接点42bに接続される。電源部48は、除細動モードにおいてカテーテル接続部40と接続され、心電計測モードにおいてカテーテル接続部40から切断される。電源部48は、除細動モードにおいて電極カテーテル12の第1電極群31Gおよび第2電極群32Gに接続され、心電計測モードにおいて電極カテーテル12の第1電極群31Gおよび第2電極群32Gから切断される。
【0033】
電源部48は、除細動モードにおいて、除細動処置に必要な電気エネルギーを電極カテーテル12に供給する。電源部48は、測定回路48aと、充電回路48bと、放電回路48cと、コンデンサ48dとを備える。
【0034】
測定回路48aは、第1電極群31Gと第2電極群32Gの間のインピーダンスを測定する。測定回路48aによって測定されるインピーダンスは、第1電極群31Gおよび第2電極群32Gが心腔内の組織に適切に接触しており、除細動のための電気エネルギーの供給に適した状態であるか否かの判定に用いられる。例えば、測定回路48aによって測定されるインピーダンスが21Ω以上99Ω以下であれば、除細動に適切した状態と判定される。
【0035】
充電回路48bは、除細動のための電気エネルギーをコンデンサ48dに充電する。充電回路48bは、例えば、100V~600V程度の高電圧を発生させる昇圧回路によって構成される。充電回路48bによってコンデンサ48dに充電されるエネルギー量は、ユーザからの入力操作によって可変となるように構成される。
【0036】
放電回路48cは、コンデンサ48dに充電された電気エネルギーを電極カテーテル12の第1電極群31Gおよび第2電極群32Gに供給する。放電回路48cは、例えば、4個のスイッチ素子(例えばトランジスタ)を用いるHブリッジ回路によって構成される。放電回路48cは、4個のスイッチ素子のオンオフを切り替えることにより、第1電極群31Gに正電圧が印加され、第2電極群32Gに負電圧が印加される第1状態と、第1電極群31Gに負電圧が印加され、第2電極群32Gに正電圧が印加される第2状態とを生成する。
【0037】
図3は、電源部48の回路構成を模式的に示す図である。電源部48は、第1電極群31Gに接続可能な第1端子48eと、第2電極群32Gに接続可能な第2端子48fとを備える。測定回路48aは、第1スイッチS1および第2スイッチS2を介して、第1端子48eおよび第2端子48fに接続される。放電回路48cは、Hブリッジを構成する第3スイッチS3、第4スイッチS4、第5スイッチS5、および第6スイッチS6を備える。
【0038】
測定回路48aによって第1端子48eと第2端子48fの間のインピーダンスを測定する場合、第1スイッチS1および第2スイッチS2がオンとなり、放電回路48cの4個のスイッチS3~S6がオフとなる。充電回路48bによってコンデンサ48dに充電される場合、全てのスイッチS1~S6がオフとなる。放電回路48cによってコンデンサ48dから放電する場合、第3スイッチS3および第4スイッチS4がオン、第5スイッチS5および第6スイッチS6がオフとなる第1状態と、第3スイッチS3および第4スイッチS4がオフ、第5スイッチS5および第6スイッチS6がオンとなる第2状態とが用いられる。
【0039】
図4は、電源部48から出力される電圧波形の一例を示すグラフであり、第1電極群31Gと第2電極群32Gの間に印加される電圧の時間変化を示す。まず、除細動の開始タイミング(トリガポイント)から待機期間T0の経過後に電圧印加が開始される。待機期間T0は、例えば10~50ms(ミリ秒)程度であり、一例を挙げれば10msである。第1期間T1は、第1端子48eに正電圧が印加され、第2端子48fに負電圧が印加される第1状態である。第1期間T1では、第1ピーク電圧V
Aから印加電圧の大きさが時間経過とともに低下する。第1ピーク電圧V
Aの大きさは、コンデンサ48dの充電電圧に相当し、100V~600V程度である。第2期間T2は、第1端子48eに負電圧が印加され、第2端子48fに正電圧が印加される第2状態である。第2期間T2では、第2ピーク電圧V
Bから印加電圧の大きさが時間経過とともに低下する。第2ピーク電圧V
Bの大きさは、第1期間T1の終了時の電圧V
Cの大きさとほぼ同じである。第1期間T1と第2期間T2の間のインターバル期間ΔTは、放電回路48cのスイッチS3~S6のオンオフの切替に要するわずかな時間である。第1期間T1および第2期間T2を含む放電期間Tは、例えば6~30ms程度であり、一例を挙げれば20msである。
【0040】
図1に戻り、操作ボタン50は、ユーザによる入力操作を受け付ける押ボタン等のスイッチである。操作ボタン50は、モード切替ボタン50aと、充電ボタン50bと、放電ボタン50cとを備える。モード切替ボタン50aは、心電位計測モードと除細動モードの間で動作モードを切り替えるために用いられる。充電ボタン50bは、除細動モードにおいて、充電回路48bによるコンデンサ48dへの充電を開始するために用いられる。放電ボタン50cは、除細動モードにおいて、放電回路48cによるコンデンサ48dからの放電を開始するために用いられる。
【0041】
制御部52は、除細動制御装置14の動作全般を制御する。制御部52は、モード制御部52aと、トリガ検出部52bと、異常検出部52cと、警告部52dとを備える。
【0042】
モード制御部52aは、ユーザによる操作ボタン50の操作に応じて除細動制御装置14の動作モードを切り替える。トリガ検出部52bは、モニタリング装置16から提供される心電波形に基づいて、除細動のための放電を開始するトリガポイントを検出する。異常検出部52cは、除細動のための放電の完了後における心電波形を分析し、心電波形における異常を検出する。警告部52dは、ユーザにアラートすべき事象が発生した場合、表示部54による警告表示やスピーカ56による警告音によるアラートを発動する。
【0043】
図5は、除細動制御装置14の動作モードの遷移を模式的に示す図である。上述の通り、除細動制御装置14は、動作モードとして、心電位計測モード70と、除細動モード72とを備える。心電位計測モード70は、通常モード70aと、異常検出モード70bとを有する。除細動モード72は、測定モード72aと、充電モード72bと、放電モード72cとを有する。
【0044】
モード制御部52aは、通常モード70aにおいて、モード切替ボタン50aが押下された場合、除細動モード72に切り替えし、測定モード72aに移行する。測定モード72aでは、測定回路48aによって第1電極群31Gと第2電極群32Gの間のインピーダンスが測定される。モード制御部52aは、測定モード72aに移行すると、接点切替部42の接点を切り替えし、共通接点42cを第2接点42bに接続する。モード制御部52aは、測定回路48aによるインピーダンス測定が完了した場合、接点切替部42の接点を切り替えし、共通接点42cを第1接点42aに戻す。モード制御部52aは、測定したインピーダンス値が所定範囲(例えば21Ω以上99Ω以下)である場合、充電モード72bに移行する。モード制御部52aは、測定したインピーダンス値が所定範囲外である場合、通常モード70aに移行する。インピーダンス値が所定範囲外である場合、例えば、第1電極群31Gおよび第2電極群32Gが心腔内の組織に適切に接触するように、電極カテーテル12の心腔内の位置がユーザによって調整される。
【0045】
充電モード72bでは、充電回路48bによってコンデンサ48dへの充電が行われる。モード制御部52aは、充電モード72bにおいて充電ボタン50bが押下された場合、充電回路48bによるコンデンサ48dへの充電を開始させる。モード制御部52aは、充電モード72bにおいて充電ボタン50bが押下されない場合、充電回路48bによるコンデンサ48dへの充電を開始させない。モード制御部52aは、充電モード72bにおいて接点切替部42の接点の切り替えをせず、共通接点42cが第1接点42aに接続されたままとなる。モード制御部52aは、コンデンサ48dの充電が完了した場合、放電モード72cに移行する。
【0046】
放電モード72cでは、放電回路48cによってコンデンサ48dから電極カテーテル12への放電が行われる。モード制御部52aは、放電モード72cにおいて放電ボタン50cが押下された場合、トリガ検出部52bによるトリガポイントの検出を待機する状態となる。その後、トリガ検出部52bによるトリガポイントが検出された場合、モード制御部52aは、接点切替部42の接点を切り替えして共通接点42cを第2接点42bに接続させた後、放電回路48cを動作させて電極カテーテル12に電気エネルギーを供給する。モード制御部52aは、放電回路48cによる放電が完了した後、接点切替部42の接点を切り替えして共通接点42cを第1接点42aに戻し、異常検出モード70bに移行する。
【0047】
異常検出モード70bでは、電極カテーテル12によって計測される心電波形に基づいて、波形異常の有無が検出される。異常検出部52cは、異常検出モード70bにおいて、最早期異常波形および心停止の有無を検出する。警告部52dは、最早期異常波形または心停止が検出された場合、ユーザにアラートする。モード制御部52aは、ユーザによってアラートを停止するための所定のボタン操作がされた場合、通常モード70aに移行する。モード制御部52aは、最早期異常波形または心停止が検出されない場合、通常モード70aに移行する。
【0048】
トリガ検出部52bは、波形入力部46に入力される心電波形に基づいて、トリガポイントを検出する。トリガ検出部52bは、例えば、心電波形におけるR波のピークの位置をトリガポイントとして検出する。トリガ検出部52bは、例えば、心電波形におけるR波のピーク高さを計測し、計測したピーク高さの80%の電位に到達した場合に次のR波のピーク位置を検出する。トリガ検出部52bは、バンドパスフィルタを用いて心電波形の高周波成分を抽出したフィルタ波形を生成し、フィルタ波形のピーク位置に基づいてトリガポイントを検出してもよい。トリガ検出部52bは、R波のピーク位置の間隔に基づいて、不整脈に起因すると考えられるピーク位置をトリガポイントから除外してもよい。
【0049】
図6は、除細動制御装置14の表示画面の一例を示す図であり、表示部54に表示される画面例である。
図6に示す例において、表示部54は、入力心電波形74と、フィルタ波形76と、心拍78aと、インピーダンスbと、ジュール78cと、入力種別80aと、モード80bとを表示する。表示部54は、液晶ディスプレイや有機ディスプレイなどによって構成される。
【0050】
入力心電波形74は、波形入力部46に入力される心電波形である。フィルタ波形(Filtered ECG)76は、入力心電波形74の高周波成分の波形であり、入力心電波形74の下方に表示される。入力心電波形74には、トリガ検出部52bによって検出されるトリガポイントの位置を示すトリガマーカ74a,74b,74c,74d,74eが重畳表示される。トリガマーカ74a~74eの位置は、入力心電波形74のR波のピーク位置に相当する。
図6の例では、トリガポイントとして検出されなかったR波のピーク位置を示すスキップマーカ74sが表示されている。
図6の例では、直前のトリガマーカ74bの位置からスキップマーカ74sまでの時間間隔が心拍に比べて短いために、スキップマーカ74sに対応するピーク波形がトリガポイントから除外されている。
【0051】
心拍78aは、入力心電波形74から算出される心拍数を示す。インピーダンス78bは、測定回路48aによって計測されるインピーダンス値を示す。ジュール78cは、コンデンサ48dに充電されている電気エネルギーの値を示す。入力種別80aは、入力心電波形74の種別を示す。
図6に示す例では、電極パッド18からの心電波形であることを示す「PAD」と表示されている。モード80bは、除細動制御装置14の現在の動作モードを示す。
図6に示す例では、心電位計測モードであることを示す「ECG」と表示される。なお、除細動モードである場合には「DC」と表示される。
【0052】
異常検出部52cは、異常検出モード70bにおいて、最早期異常波形を検出する。異常検出部52cは、電極カテーテル12の複数の電極にて計測される複数の心電波形を用いて最早期波形を検出する。より具体的には、異常検出部52cは、第1電極群31G、第2電極群32Gおよび第3電極群33Gにて計測される第1心電波形、第2心電波形および第3心電波形のうち、有意な波形が生じるタイミングが最も早い最早期波形を検出する。異常検出部52cは、検出した最早期波形に基づいて、最早期異常波形を検出する。
【0053】
図7は、正常時における複数の心電波形の一例を模式的に示す図である。
図7の例では、電極パッド18によって計測される心電波形(PAD1、PAD2)と、第3電極群33Gによって計測される2個の第3心電波形(SVC1、SVC2)と、第2電極群32Gによって計測される4個の第2心電波形(RA1~RA4)と、第1電極群31Gによって計測される4個の第1心電波形(CS1~CS4)とを示す。
図7の左端には、除細動の印加電圧に対応する振幅の大きな除細動波形82がある。除細動波形82の後、RA1にて最早期波形84が生じ、その後、RA2、RA3、RA4、SVC1、SVC2、CS4、CS3、CS2、CS1の順に波形が生じる。これは、心腔内における正常な電気信号の伝達経路の順序に対応する。
【0054】
図8は、最早期異常時における複数の心電波形の一例を模式的に示す図である。
図8の例では、除細動波形82の後、CS4にて最早期波形86が生じ、その後、CS3、CS2、CS1、RA1、RA2、RA3、RA4、SVC1、SVC2の順に波形が生じている。したがって、
図8の例では、
図7に示す正常時とは異なる順序で波形が生じている。これは、CS4に対応する第1電極31の近傍で異常興奮が発生し、異常興奮部位にて生じた電気信号が周囲に伝達されるためと考えられる。また、
図8に示される最早期波形86は、異常興奮に起因して、
図7に示される最早期波形84とは形状が異なっている。
図7の最早期波形84は、最早期正常波形ということができ、
図8の最早期波形86は、最早期異常波形ということができる。
【0055】
異常検出部52cは、除細動波形82の後に生じる最早期波形84または86を検出する。異常検出部52cは、複数の心電波形のうち、電気エネルギーの供給後に振幅が第1閾値(例えば0.5mV)以上となる開始タイミングが最も早い波形を最早期波形として検出する。異常検出部52cは、検出した最早期波形が所定の電極(例えばRA1に対応する第2電極32)または所定の電極群(例えば第2電極群32G)によって計測されていない場合、最早期異常波形を検出する。
【0056】
異常検出部52cは、複数の心電波形の二以上について、電気エネルギーの供給後に振幅が第1閾値(例えば0.5mV)以上となる開始タイミングを検出し、開始タイミングの検出順序を用いて最早期異常を検出してもよい。異常検出部52cは、複数の心電波形の二以上について、開始タイミングの検出順序が所定の電極の順序(例えば、RA1、RA2、RA3、RA4、SVC1、SVC2、CS4、CS3、CS2、CS1)に合致しない場合、最早期異常波形を検出してもよい。異常検出部52cは、複数の心電波形の二以上について、開始タイミングの検出順序が所定の電極群の順序(例えば、第2電極群32G、第3電極群33G、第1電極群31G)に合致しない場合、最早期異常波形を検出してもよい。
【0057】
異常検出部52cは、検出した最早期波形の形状が所定の異常形状に合致する場合、最早期異常波形を検出する。
図9~
図11は、最早期異常波形88,90,92の一例を模式的に示す図である。
図9は、第1異常形状に合致する最早期異常波形88を示す。第1異常形状は、最早期波形の開始タイミングから第1基準時間Ta(例えば150ms)が経過するまでにおいて、波形の振幅が第1閾値V1(例えば0.5mV)以上となる波形部分88a,88bの検出数が所定の第1個数(例えば8個)以上となることを条件とする。第1基準時間Taの起点は、最早期波形の振幅が最初に第1閾値V1となるタイミングである。第1基準時間Taの起点は、波形の振幅が上向きで第1閾値V1となるタイミングでもよいし、波形の振幅が下向きで第1閾値V1となるタイミングでもよい。第1閾値V1以上となる波形部分の検出数は、上向きで第1閾値V1以上となる波形部分88aの個数と、下向きで第1閾値V1以上となる波形部分88bの個数の合計である。
図9に示す例では、上向きの波形部分88aが5個であり、下向きの波形部分88bが4個であり、合計の検出数は9個であり、所定数(例えば8個)以上となるため、第1異常形状に合致する。
【0058】
図10は、第2異常形状に合致する最早期異常波形90を示す。第2異常形状は、最早期波形の開始タイミングから第1基準時間Ta(例えば150ms)が経過するまでにおいて、波形の振幅が第1閾値V1(例えば0.5mV)以上となる下向きの波形部分90bの検出数が所定の第2個数(例えば5個)以上となることを条件とする。ここで、第2異常形状に係る第2個数(例えば5個)は、第1異常形状に係る第1個数(例えば8個)よりも少ない。第1基準時間Taの起点は、
図9の第1異常形状と同様であり、波形の振幅が上向きで第1閾値V1となるタイミングでもよいし、波形の振幅が下向きで第1閾値V1となるタイミングでもよい。
図10に示す例では、上向きの波形部分90aが1個であり、下向きの波形部分88bが5個であり、合計の検出数が6個であるため、第1個数(例えば8個)よりも少なく、第1異常形状に合致しない。しかしながら、下向きの波形部分88bが所定数(例えば5個)以上であるため、第2異常形状に合致する。
【0059】
図11は、第3異常形状に合致する最早期異常波形92を示す。第3異常形状は、最早期波形の開始タイミングから第2基準時間Tb(例えば90ms)が経過するまでにおいて、波形の振幅が第1閾値V1よりも小さい第2閾値V2(例えば0.2mV)以下となる平坦部分92cの連続時間Tcが所定値(例えば20ms)を超えないことを条件とする。第3異常波形は、最早期波形を構成する一つの波形範囲の時間長が第2基準時間Tb(例えば90ms)以上となることを条件とするとも言える。ここで、一つの波形範囲は、平坦部分92cの連続時間Tcが所定値(例えば20ms)を超える場合に終了する。逆の言い方をすれば、平坦部分92cの連続時間Tcが所定値(例えば20ms)以下であれば、その前後の波形を一つの波形範囲とみなす。
図11に示す例では、最早期波形の開始タイミングから第2基準時間Tb(例えば90ms)が経過するまでに、平坦部分92cの連続時間Tcが所定値(例えば20ms)以上とならないため、第3異常形状に合致する。
図11に示す例では、上向きの波形部分92aが2個であり、下向きの波形部分92bが2個であるため、第1異常形状に合致せず、第2異常形状にも合致しない。
【0060】
異常検出部52cは、異常検出モード70bにおいて、心停止をさらに検出してもよい。異常検出部52cは、除細動のための放電が完了してから第1時間(例えば5秒)が経過してから第2時間(例えば10秒)が経過するまでに、波形の振幅が第3閾値V3(例えば2.8mV)以上となる心拍が5回未満であれば、心停止を検出する。異常検出部52cは、除細動のための放電が完了してから第1時間(例えば5秒)が経過してから第2時間(例えば10秒)が経過前に、波形の振幅が第3閾値V3(例えば2.8mV)以上となる心拍が5回以上あれば、心停止の検出処理を終了する。
【0061】
警告部52dは、異常検出部52cによって異常が検出された場合、アラートを発動する。警告部52dは、異常検出部52cによって最早期異常波形または心停止が検出された場合、アラートを表示部54に表示させるとともに、スピーカ56に警告音を出力させる。警告部52dは、最早期異常波形が検出された心電波形、電極群または電極がいずれであるかを示す情報を表示部54に表示させてもよい。例えば、
図8の例であれば、最早期異常波形86が検出された心電波形を示す「CS4」を表示させてもよいし、電極群を示す「CS」を表示させてもよいし、電極番号を示す「7」「8」を表示させてもよい。警告部52dは、アラートを停止させるための操作ボタン50における所定のボタンが操作された場合、警告表示および警告音を停止させる。
【0062】
図1に戻り、モニタリング装置16について説明する。モニタリング装置16は、波形取得部60と、波形提供部62と、波形選択部64とを備える。
【0063】
波形取得部60は、患者20の心電波形を取得する。波形取得部60は、除細動制御装置14の波形出力部44から出力される第1心電波形、第2心電波形および第3心電波形を取得する。波形取得部60は、電極パッド18を用いて計測される患者20の体表面心電波形を取得する。波形取得部60は、電極カテーテル12とは異なる別の電極カテーテルが患者20に使用される場合、別の電極カテーテルを用いて計測される心電波形(第4心電波形ともいう)を取得する。
【0064】
波形提供部62は、波形取得部60によって取得された心電波形の少なくとも一つを除細動制御装置14の波形入力部46に提供する。波形選択部64は、ユーザの操作に応じて、波形提供部62によって提供される心電波形を選択する。例えば、波形選択部64が電極パッド18からの体表面心電波形を選択した場合、波形提供部62は、選択された体表面心電波形を除細動制御装置14に提供する。
【0065】
図12は、第1実施形態に係る除細動方法を模式的に示すフローチャートである。まず、心電位計測モードにおいてモード切替ボタン50aが押下され、除細動モードに切り替えされる(ステップS10)。次に、電極カテーテル12の電極間のインピーダンスが測定され(ステップS12)、インピーダンスが所定範囲であれば(ステップS14のY)、充電ボタン50bの押下を契機として電気エネルギーを充電する(ステップS16)。電気エネルギーの充電完了後、放電ボタン50cの押下を契機として、トリガポイントに同期して電極カテーテル12に電気エネルギーを供給する(ステップS18)。電気エネルギーの供給完了後、異常検出モードに移行する(ステップS20)。
【0066】
異常検出モードにおいて、最早期異常波形が検出された場合(ステップS22のY)、アラートを発動する(ステップS26)。最早期異常波形が検出されず(ステップS22のN)、心停止が検出される場合(ステップS24のY)、アラートを発動する(ステップS26)。ユーザによって所定の停止操作がなされるまで(ステップS28のN)、アラートを継続する。ユーザによって所定の停止操作がなされた場合(ステップS28のY)、アラートを停止し(ステップS30)、心電位計測モードに移行する(ステップS32)。ステップS14において、インピーダンスが所定範囲外であれば(ステップS14のN)、心電位計測モードに移行する(ステップS32)。ステップS24において、心停止が検出されない場合(ステップS24のN)、ステップS26~S30をスキップして、心電位計測モードに移行する(ステップS32)。
【0067】
本実施形態によれば、除細動の完了後に異常検出モードに移行することにより、電極カテーテルによって計測される複数の心電波形を用いて、最早期異常波形を検出することができる。最早期異常波形の検出を契機にアラートを発動することにより、医師等のユーザに有益な情報を迅速に通知できる。
【0068】
本実施形態によれば、検出された最早期波形の形状および電極位置を分析することにより、様々な種類の最早期異常波形を検出することができる。例えば、検出された最早期波形の形状が第1異常形状、第2異常形状または第3異常形状のいずれかに合致するかを判定することにより、様々な形状の最早期異常波形を検出することができる。
【0069】
本実施形態によれば、検出された最早期異常波形の電極位置に関する情報を通知することにより、最早期異常波形の原因と考えられる異常興奮部位に関する情報を通知できる。アブレーション治療では、異常興奮部位を適切に特定することが求められるため、医師等のユーザに役立つ情報を提供できる。
【0070】
(第2実施形態)
図13は、第2実施形態に係る除細動システム110の構成を概略的に示す図である。第2実施形態では、除細動制御装置114が送信部120をさらに備え、モニタリング装置116が受信部124、同期判定部128および警告部130をさらに備える。以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明し、共通点については説明を適宜省略する。
【0071】
除細動システム110は、電極カテーテル12と、除細動制御装置114と、モニタリング装置116とを備える。電極カテーテル12は、第1実施形態と同様に構成される。
【0072】
除細動制御装置114は、カテーテル接続部40と、接点切替部42と、波形出力部44と、波形入力部46と、電源部48と、操作ボタン50と、制御部52と、表示部54と、スピーカ56と、送信部120とを備える。
【0073】
送信部120は、トリガ検出部52bによって検出されるトリガポイントを示すトリガ信号をモニタリング装置116に送信する。送信部120は、トリガ検出部52bによってトリガポイントが検出できない場合、トリガ異常信号をモニタリング装置116に送信する。トリガポイントが検出できない原因として、波形入力部46に心電波形が入力されていない、波形入力部46に入力される心電波形に異常があってR波のピークが検出できないことが考えられる。
【0074】
モニタリング装置116は、波形取得部60と、波形提供部62と、波形選択部64と、受信部124と、同期判定部128と、警告部130とを備える。
【0075】
受信部124は、除細動制御装置114の送信部120から送信される信号を受信する。
受信部124は、トリガ信号を受信する。受信部124は、トリガ異常信号を受信する。
【0076】
同期判定部128は、受信部124が受信するトリガ信号と、波形提供部62が提供する心電波形とが同期しているか否かを判定する。除細動制御装置114のトリガ検出部52bは、波形提供部62から提供される心電波形を用いてトリガポイントを検出している。そのため、トリガ信号と心電波形の同期を判定することにより、トリガ検出部52bがトリガポイントを適切に検出しているか否かを確認できる。
【0077】
同期判定部128は、例えば、トリガ検出部52bと同様の手法を用いて、心電波形のR波のピーク位置を検出し、検出タイミングとトリガ信号が同期しているかを判定する。同期判定部128は、トリガ検出部52bとは異なる手法を用いて、心電波形とトリガ信号の同期を判定してもよい。
【0078】
警告部130は、受信部124がトリガ異常信号を受信した場合、アラートを発動する。警告部130は、同期判定部128によってトリガ信号が同期していないと判定された場合、アラートを発動する。警告部130は、例えば、モニタリング装置116の表示画面における警告表示や、モニタリング装置116のスピーカによる警告音によるアラートを発動する。警告部130は、アラートを停止させるための所定の操作がなされた場合、警告表示および警告音によるアラートを停止させる。
【0079】
警告部130によってアラートが発動された場合、ユーザは、アラートを停止した後に、波形選択部64によって選択される心電波形を別の心電波形に切り替える操作をすることができる。ユーザは、波形取得部60が取得する複数の心電波形のいずれかを選択することができる。例えば、波形選択部64によって選択される心電波形をPAD1からPAD2に切り替える操作をすることができる。
【0080】
図14は、第2実施形態に係るトリガ検出方法を模式的に示すフローチャートである。モニタリング装置116は、波形取得部60によって複数の心電波形を取得する(ステップS40)。ユーザによる波形選択操作があれば(ステップS42のY)、選択操作に応じて、複数の心電波形のいずれかが波形選択部64によって選択される(ステップS44)。波形選択操作がなければ(ステップS42のN)、ステップS44の処理をスキップする。モニタリング装置116は、選択中の心電波形を波形提供部62から除細動制御装置114に提供する(ステップS46)。
【0081】
除細動制御装置114は、心電波形が入力されており(ステップS48のY)、トリガ検出部52bによってトリガポイントが検出できていれば(ステップS50のY)、トリガ信号を送信部120からモニタリング装置116に送信する(ステップS52)。除細動制御装置114は、心電波形が入力されていない場合(ステップS48のN)、またはトリガ検出部52bによってトリガポイントが検出できていない場合(ステップS50のN)、トリガ異常信号を送信部120からモニタリング装置116に送信する(ステップS54)。
【0082】
モニタリング装置116は、受信部124にてトリガ異常信号を受信した場合(ステップS56のY)、警告部130によってアラートを発動する(ステップS60)。モニタリング装置116は、トリガ異常信号を受信しない場合であって(ステップS56のN)、同期判定部128によってトリガ信号が同期しないと判定される場合(ステップS58のN)、警告部130によってアラートを発動する(ステップS60)。モニタリング装置116は、ユーザによって所定の停止操作がなされるまで(ステップS62のN)、警告部130によるアラートを継続し、ユーザによって所定の停止操作がなされた場合(ステップS62のY)、警告部130によるアラートを停止する(ステップS64)。ステップS58にて、同期判定部128によってトリガ信号が同期すると判定される場合(ステップS58のY)、ステップS60~S64の処理がスキップされる。
【0083】
図14のフローは、繰り返し実行される。ユーザは、ステップS64にてアラートが停止された後、選択中の心電波形とは別の心電波形を選択する波形選択操作をする。この場合、ステップS42の処理がYとなり、選択中の心電波形が別に心電波形に切り替えされ(ステップS44)、切替後の心電波形が除細動制御装置114に提供される(ステップS46)。
【0084】
本実施形態によれば、除細動制御装置114にてトリガポイントを検出できない場合に、除細動制御装置114にてアラートを発動させるのではなく、モニタリング装置116にてアラートを発動させることができる。仮に、除細動制御装置114にてアラートが発動された場合、ユーザは、除細動制御装置114にてアラートの停止操作をした後に、モニタリング装置116にて心電波形の切替操作をしなければならず、2台の装置のそれぞれを操作するという手間が発生する。一方、モニタリング装置116にてアラートが発動されれば、ユーザは、モニタリング装置116のアラートの停止操作後に、心電波形の切替操作をモニタリング装置116にて実行でき、1台の装置のみを操作すれば済む。本実施形態によれば、除細動システム110を利用するユーザの利便性を向上できる。特に、除細動処置が必要とされる緊迫した状況下において、ユーザの負担を少しでも軽減させることは、非常に有益である。
【0085】
第2実施形態の変形例として、モニタリング装置116にてアラートを発動させる代わりに、波形選択部64が選択中の心電波形を別の心電波形に自動的に切り替えてもよい。波形選択部64は、波形取得部60によって取得される複数の心電波形のそれぞれについて、「未選択」または「選択済」のステータスを記録してもよい。波形選択部64は、心電波形を選択した場合、選択した心電波形のステータスを「未選択」から「選択済」に更新する。波形選択部64は、心電波形を自動選択する場合、未選択の心電波形のいずれかを選択する。警告部130は、未選択の心電波形が存在せず、波形選択部64が未選択の心電波形を自動選択できない場合に、アラートを発動する。
【0086】
図15は、第2実施形態に係る波形選択方法を模式的に示すフローチャートである。
図15のフローは、モニタリング装置116の動作のみを示す。
図15のフローにおいて、除細動制御装置114の動作は、
図14のフローと同様である。
図15のフローにおいて、
図14のフローと同様の処理には、同じ符号を付与する。
【0087】
モニタリング装置116は、
図14のステップS40~S46と同様の処理を実行するが、ステップS44の実行後に、選択された心電波形のステータスを「選択済」に更新する(ステップS45)。モニタリング装置116は、受信部124にてトリガ異常信号を受信した場合(ステップS56のY)、ステータスが「未選択」の心電波形があれば(ステップS68のY)、波形選択部64によって「未選択」の心電波形のいずれかを自動選択する(ステップS70)。モニタリング装置116は、トリガ異常信号を受信しない場合であって(ステップS56のN)、同期判定部128によってトリガ信号が同期しないと判定される場合(ステップS58のN)、ステータスが「未選択」の心電波形があれば(ステップS58のY)、ステップS70の処理を実行する。波形選択部64によって自動選択された心電波形のステータスは、波形選択部64によって「選択済」に更新される(ステップS72)。モニタリング装置116は、ステップS68において、ステータスが「未選択」の心電波形がなければ(ステップS68のN)、
図14のステップS60~S64の処理を実行した後、複数の心電波形のステータスの全てを「未選択」にする初期化を実行する(ステップS74)。
【0088】
図15の処理フローによれば、除細動制御装置114にてトリガポイントを検出できない場合に、モニタリング装置116にて選択中の心電波形が自動切替されるため、心電波形を切り替える選択操作の手間を省くことができる。これにより、除細動システム110を利用するユーザの利便性を向上できる。
【0089】
(第3実施形態)
図16は、第3実施形態に係る除細動システム210の構成を概略的に示す図である。第3実施形態では、モニタリング装置216に最早期異常波形または心停止を検出する異常検出部232が設けられる。以下、第3実施形態について、上述の実施形態との相違点を中心に説明し、共通点については説明を適宜省略する。
【0090】
除細動システム210は、電極カテーテル12と、除細動制御装置214と、モニタリング装置216とを備える。電極カテーテル12は、第1実施形態と同様に構成される。
【0091】
除細動制御装置214は、カテーテル接続部40と、接点切替部42と、波形出力部44と、波形入力部46と、電源部48と、操作ボタン50と、制御部252と、表示部54と、スピーカ56と、第1送信部220と、第1受信部222とを備える。
【0092】
制御部252は、モード制御部252aと、トリガ検出部52bと、警告部252dとを備える。制御部252は、異常検出部52cを備えない点で、第1実施形態と相違する。
【0093】
モード制御部252aは、
図5の異常検出モード70bを有しない点で、第1実施形態と相違する。モード制御部252aは、放電モード72cにおいて電気エネルギーの供給が完了した場合、通常モード70aに移行する。
【0094】
警告部252dは、第1受信部222がモニタリング装置216からの異常信号を受信した場合、アラートを発動する。警告部252dは、アラートを停止させるための所定のボタン操作がされた場合、警告表示および警告音を停止させる。
【0095】
第1送信部220は、放電モード72cにおいて電気エネルギーの供給が完了した場合、供給完了信号(または除細動完了信号)をモニタリング装置216に送信する。供給完了信号は、例えば、放電モード72cにおいて電気エネルギーの供給が完了し、
図4に示される放電期間Tにおける電圧波形の記録の完了を契機に送信される。
【0096】
第1送信部220は、第2実施形態に係る送信部120と同様、トリガ検出部52bによって検出されるトリガポイントを示すトリガ信号をモニタリング装置216に送信する。第1送信部220は、第2実施形態に係る送信部120と同様、トリガ検出部52bによってトリガポイントが検出できない場合、トリガ異常信号をモニタリング装置216に送信する。第1受信部222は、モニタリング装置216から異常信号を受信する。第1受信部222が異常信号を受信した場合、警告部252dによるアラートが発動する。
【0097】
モニタリング装置216は、波形取得部60と、波形提供部62と、波形選択部64と、第2受信部224と、第2送信部226と、異常検出部232と、同期判定部128と、警告部130とを備える。
【0098】
第2受信部224は、除細動制御装置214から送信される供給完了信号を受信する。第2受信部224は、除細動制御装置214から送信されるトリガ信号およびトリガ異常信号を受信する。第2送信部226は、異常検出部232によって最早期異常波形または心停止が検出された場合、除細動制御装置214に異常信号を送信する。
【0099】
異常検出部232は、第2受信部224が供給完了信号を受信した場合、供給完了信号の受信後に波形取得部60が取得する複数の心電波形を用いて、最早期異常波形または心停止を検出する。異常検出部232による最早期異常波形または心停止の検出方法は、上述の第1実施形態に係る異常検出部52cによる最早期異常波形または心停止の検出方法と同様である。したがって、異常検出部232は、電極カテーテル12の複数の電極にて計測される複数の心電波形(例えば、第1心電波形、第2心電波形および第3心電波形)を用いて最早期異常波形または心停止を検出する。
【0100】
第2送信部226は、異常検出部232によって最早期異常波形が検出された場合、最早期異常波形が検出された心電波形、電極群または電極がいずれであるかを示す情報を除細動制御装置214に送信してもよい。この場合、警告部252dは、第1受信部222が受信する情報を用いて、最早期異常波形が検出された心電波形、電極群または電極がいずれであるかを示す情報を表示部54に表示させてもよい。
【0101】
図17は、第3実施形態に係る除細動方法を模式的に示すフローチャートである。
図17のフローにおいて、
図12のフローと同様の処理には、同じ符号を付与する。
【0102】
まず、
図12のステップS10~S18と同様の処理が実行される。ステップS18の電気エネルギーの供給完了後、第1送信部220からモニタリング装置216に供給完了信号が送信され(ステップS80)、モード制御部252aによって心電位計測モードに移行する(S82)。ステップS14において、インピーダンスが所定範囲外であれば(ステップS14のN)、ステップS16~S80の処理をスキップし、心電位計測モードに移行する(ステップS82)。
【0103】
モニタリング装置216は、第2受信部224にて供給完了信号を受信すると(ステップS84のY)、異常検出部232による異常検出処理を開始する(ステップS86)。モニタリング装置216は、異常検出部232にて最早期異常波形が検出された場合(ステップS88のY)、第2送信部226から除細動制御装置214に異常信号を送信する(ステップS92)。モニタリング装置216は、異常検出部232にて最早期異常波形が検出されず(ステップS88のN)、心停止が検出された場合(ステップS90のY)、第2送信部226から除細動制御装置214に異常信号を送信する(ステップS92)。モニタリング装置216は、ステップS92の処理後、異常検出処理を終了する(ステップS94)。モニタリング装置216は、ステップS90にて心停止が検出されない場合(ステップS90のN)、異常検出処理を終了する(ステップS94)。モニタリング装置216は、ステップS84にて供給完了信号を受信しない場合(ステップS84のN)、ステップS86~S94の処理をスキップする。
【0104】
除細動制御装置214は、第1受信部222にて異常信号を受信すると(ステップS96のY)、警告部252dによるアラートを発動する(ステップS98)。除細動制御装置214は、ユーザによって所定の停止操作がなされるまで(ステップS100のN)、警告部252dによるアラートを継続し、ユーザによって所定の停止操作がなされた場合(ステップS100のY)、警告部252dによるアラートを停止する(ステップS102)。ステップS96にて異常信号を受信していない場合(ステップS96のN)、ステップS98~S102の処理をスキップする。
【0105】
本実施形態によれば、異常検出部52cを備えない除細動制御装置214を使用する場合であっても、モニタリング装置216において最早期異常波形や心停止などの異常を検出できる。本実施形態によれば、モニタリング装置216において最早期異常波形や心停止を検出した場合に、モニタリング装置216から除細動制御装置214に異常信号を送信することにより、除細動制御装置214にてアラートを発動できる。除細動制御装置214にてアラートが発動されれば、ユーザは、除細動制御装置214のアラートの停止操作後に、除細動制御装置214にて再度の除細動のための操作ができるため、1台の装置のみを操作すれば済む。したがって、本実施形態によれば、除細動システム210を利用するユーザの利便性を向上できる。特に、除細動処置が必要とされる緊迫した状況下において、ユーザの負担を少しでも軽減させることは、非常に有益である。
【0106】
第3実施形態において、モニタリング装置216は、同期判定部128および警告部130を備えなくてもよい。この場合、除細動制御装置214の第1送信部220は、トリガ信号およびトリガポイント信号をモニタリング装置216に送信しなくてもよい。
【0107】
(第4実施形態)
図18は、第4実施形態に係る除細動システム310の構成を概略的に示す図である。第4実施形態では、除細動制御装置314に同期判定部352eが設けられ、モニタリング装置316にトリガ検出部334が設けられる。以下、第4実施形態について、上述の実施形態との相違点を中心に説明し、共通点については説明を適宜省略する。
【0108】
除細動システム310は、電極カテーテル12と、除細動制御装置314と、モニタリング装置316とを備える。電極カテーテル12は、第1実施形態と同様に構成される。
【0109】
除細動制御装置314は、カテーテル接続部40と、接点切替部42と、波形出力部44と、波形入力部46と、電源部48と、操作ボタン50と、制御部352と、表示部54と、スピーカ56と、第1送信部320と、第1受信部322とを備える。
【0110】
制御部352は、モード制御部352aと、同期判定部352eと、警告部252dとを備える。制御部352は、トリガ検出部52bの代わりに同期判定部352eを備える点で、第3実施形態と相違する。
【0111】
同期判定部352eは、第1受信部322が受信するトリガ信号と、波形入力部46に入力される心電波形とが同期しているか否かを判定する。同期判定部352eは、例えば、トリガ検出部52bと同様の手法を用いて、心電波形のR波のピーク位置を検出し、検出タイミングとトリガ信号が同期しているかを判定する。トリガ信号が同期していると判定される場合、トリガ信号に基づくトリガポイント(例えば
図6のトリガマーカ74a~74e)が表示部54に表示される。
【0112】
モード制御部352aは、放電モード72cにおいて、第1受信部322が受信するトリガ信号に基づくトリガポイントに同期して、電極カテーテル12に電気エネルギーを供給する。
【0113】
第1送信部320は、第1受信部322にトリガ信号が送信されていない場合、トリガ異常信号をモニタリング装置316に送信する。第1送信部320は、同期判定部352eによってトリガ信号が同期しないと判定される場合、トリガ異常信号をモニタリング装置316に送信する。第1送信部320は、第3実施形態に係る第1送信部220と同様、放電モード72cにおいて電気エネルギーの供給が完了した場合、供給完了信号をモニタリング装置316に送信する。
【0114】
第1受信部322は、モニタリング装置316からトリガポイントを示すトリガ信号を受信する。第1受信部322は、第3実施形態に係る第1受信部222と同様、モニタリング装置316から最早期異常波形や心停止の検出を示す異常信号を受信する。
【0115】
モニタリング装置216は、波形取得部60と、波形提供部62と、波形選択部64と、第2受信部324と、第2送信部326と、異常検出部232と、トリガ検出部334と、警告部330とを備える。
【0116】
第2受信部324は、除細動制御装置314からトリガ異常信号を受信する。第2受信部324は、第3実施形態に係る第2受信部224と同様、除細動制御装置314から供給完了信号を受信する。
【0117】
第2送信部326は、トリガ検出部334によって検出されるトリガポイントを示すトリガ信号を除細動制御装置314に送信する。第2送信部326は、第3実施形態に係る第2送信部226と同様、異常検出部232によって最早期異常波形または心停止が検出されたことを示す異常信号を除細動制御装置314に送信する。
【0118】
トリガ検出部334は、波形選択部64によって選択中の心電波形、つまり波形提供部62によって除細動制御装置314に提供される心電波形に基づいて、トリガポイントを検出する。トリガ検出部334によるトリガポイントの検出方法は、第1実施形態に係るトリガ検出部52bと同様の方法であってもよいし、トリガ検出部52bとは異なる方法であってもよい。
【0119】
警告部330は、トリガ検出部334によってトリガポイントを検出できない場合、アラートを発動する。警告部330は、第2受信部324がトリガ異常信号を受信した場合、アラートを発動する。警告部330は、アラートを停止させるための所定の操作がなされた場合、警告表示および警告音によるアラートを停止させる。
【0120】
図19は、第4実施形態に係るトリガ検出方法を模式的に示すフローチャートである。
図19のフローにおいて、
図14のフローと同様の処理には、同じ符号を付与する。
【0121】
モニタリング装置316は、
図14のステップS40~S46と同様の処理を実行する。トリガ検出部334は、選択中の心電波形を用いてトリガポイントを検出し、トリガポイントを検出できていれば(ステップS110のY)、第2送信部326から除細動制御装置314にトリガ信号を送信する(ステップS112)。
【0122】
除細動制御装置314は、第1受信部322にてトリガ信号を受信しており(ステップS114のY)、同期判定部352eにてトリガ信号が同期すると判定される場合(ステップS116のY)、表示部54にトリガポイント(例えば
図6のトリガマーカ74a~74e)を表示させる(ステップS118)。除細動制御装置314は、第1受信部322にてトリガ信号を受信していない場合(ステップS114のN)、または、同期判定部352eにてトリガ信号が同期しないと判定される場合(ステップS116のN)、第2受信部324からモニタリング装置316にトリガ異常信号を送信する(ステップS120)。
【0123】
モニタリング装置316は、第2受信部324にてトリガ異常信号を受信した場合(ステップS122のY)、
図14のステップS60~S64と同様の処理を実行する。モニタリング装置316は、ステップS110にてトリガポイントを検出できない場合(ステップS110のN)、ステップS60~S64の処理を実行する。ステップS122にて、トリガ異常信号を受信していない場合(ステップS122のN)、ステップS60~S64の処理をスキップする。
【0124】
本実施形態によれば、モニタリング装置316にてトリガポイントを検出するとともに、除細動制御装置314にてトリガ信号が同期しているか否かを判定できる。モニタリング装置316にてトリガポイントを検出できない場合、モニタリング装置316にてアラートを発動させることができる。また、除細動制御装置314にてトリガ信号が受信できない場合やトリガが同期していないと判定される場合においても、モニタリング装置316にてアラートを発動させることができる。ユーザは、モニタリング装置316のアラートの停止操作後に、心電波形の切替操作をモニタリング装置316にて実行できるため、1台の装置のみを操作すれば済む。本実施形態においても、除細動システム310を利用するユーザの利便性を向上できる。
【0125】
第4実施形態の変形例として、第2実施形態の変形例と同様、モニタリング装置316にてアラートを発動させる代わりに、波形選択部64が選択中の心電波形を別の心電波形に自動的に切り替えてもよい。モニタリング装置316は、
図19のS60~S64の処理の代わりに、
図15のS68~S74の処理を実行してもよい。この場合、モニタリング装置316は、
図19のS40~S46の処理の代わりに、
図15のS40~S46の処理を実行してもよい。
【0126】
第4実施形態の変形例として、モニタリング装置316に異常検出部232を設ける代わりに、除細動制御装置314の制御部352に異常検出部52cを設けてもよい。除細動制御装置314は、第1実施形態に係る除細動制御装置14と同様、除細動後に最早期異常波形または心停止を検出してアラートを発動してもよい。
【0127】
以上、本開示を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本開示の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0128】
本開示のある態様は以下の通りである。
【0129】
第1の態様は、電極カテーテルに電気エネルギーを供給する電源部と、前記電気エネルギーの供給後に前記電極カテーテルの複数の電極によって計測される複数の心電波形を用いて、最早期異常波形を検出する異常検出部と、前記最早期異常波形の検出を契機にアラートを発動する警告部と、を備える除細動制御装置である。この態様によれば、最早期異常波形を検出してアラートを発動することにより、カテーテル治療を実施する医師等のユーザに役立つ情報を迅速に提供できる。
【0130】
第2の態様は、前記異常検出部は、前記複数の心電波形のうち、前記電気エネルギーの供給後に振幅が第1閾値以上となる開始タイミングが最も早い最早期波形を検出し、前記最早期波形を用いて前記最早期異常波形を検出する、第1の態様に記載の除細動制御装置である。この態様によれば、複数の心電波形の中から最早期波形を検出することにより、最早期異常波形を適切に検出できる。
【0131】
第3の態様は、前記異常検出部は、前記最早期波形の振幅が前記第1閾値以上となる波形部分を検出し、前記開始タイミングから基準時間経過までの前記波形部分の検出数が所定数以上となる場合、前記最早期異常波形を検出する、第2の態様に記載の除細動制御装置である。この態様によれば、正常波形に比べて有意なピークを有する波形部分の数が多い異常波形を適切に検出できる。
【0132】
第4の態様は、前記異常検出部は、前記最早期波形の振幅が前記第1閾値以上で下向きとなる波形部分を検出し、前記開始タイミングから基準時間経過までの前記波形部分の検出数が所定数以上となる場合、前記最早期異常波形を検出する、第2または第3の態様に記載の除細動制御装置である。この態様によれば、正常波形に比べて下向きの波形部分の数が多い異常波形を適切に検出できる。
【0133】
第5の態様は、前記異常検出部は、前記最早期波形の振幅が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下となる平坦部分の連続時間を計測し、前記開始タイミングから基準時間経過までに計測される前記平坦部分の連続時間が所定値を超えない場合、前記最早期異常波形を検出する、第2から第4のいずれか一つの態様に記載の除細動制御装置である。この態様によれば、正常波形に比べて一つの波形範囲の時間長が大きい異常波形を適切に検出できる。特に、隣接する波形部分の間に平坦部分が含まれる場合であっても、平坦部分が所定値以下である場合に一つの波形範囲に含まれるとみなして、異常波形を適切に検出できる。
【0134】
第6の態様は、前記異常検出部は、前記最早期波形を取得する電極が所定の電極ではない場合、前記最早期異常波形を検出する、第2から第5のいずれか一つの態様に記載の除細動制御装置である。この態様によれば、心腔内における正常な電気信号の伝達とは異なる異常興奮に起因する異常波形を適切に検出できる。
【0135】
第7の態様は、前記異常検出部は、前記複数の心電波形について前記電気エネルギーの供給後に振幅が第1閾値以上となる開始タイミングを検出し、前記複数の心電波形の前記開始タイミングの検出順序を用いて前記最早期異常波形を検出する、第1から第6のいずれか一つの態様に記載の除細動制御装置である。この態様によれば、心腔内における正常な電気信号の伝達とは異なる異常興奮に起因する異常波形を適切に検出できる。
【0136】
第8の態様は、前記最早期異常波形を取得する電極が前記複数の電極のいずれであるかを示す情報を表示する表示部をさらに備える、第1から第7のいずれか一つの態様に記載の除細動制御装置である。この態様によれば、異常興奮部位の位置に関連する情報を通知することができ、ユーザの利便性を向上できる。
【0137】
第9の態様は、心電波形を取得する波形取得部と、電極カテーテルに電気エネルギーを供給する除細動制御装置に前記心電波形を提供する波形提供部と、前記除細動制御装置から前記電気エネルギーの供給開始可能タイミングを示すトリガ信号を受信する受信部と、前記トリガ信号が前記心電波形と同期するか否かを判定する同期判定部と、を備えるモニタリング装置である。この態様によれば、除細動制御装置に心電波形を提供するモニタリング装置において、除細動制御装置にてトリガポイントが適切に検出できているかを判定できる。これにより、除細動制御装置に適切な心電波形を提供できているかをモニタリング装置にて一元的に把握することができ、ユーザの利便性を向上できる。
【0138】
第10の態様は、前記トリガ信号が同期しないと判定される場合、アラートを発動する警告部をさらに備える、第9の態様に記載のモニタリング装置である。この態様によれば、除細動制御装置にてトリガポイントが適切に検出できていない場合に、モニタリング装置にてアラートが発動されるため、モニタリング装置にてアラートの停止操作をした後に、除細動制御装置に提供する心電波形の切替操作をモニタリング装置にてそのまま実行できる。その結果、アラートの停止操作および心電波形の切替操作をモニタリング装置のみで完結できるため、ユーザの利便性を向上できる。
【0139】
第11の態様は、前記受信部が前記除細動制御装置から異常信号を受信した場合、アラートを発動する警告部をさらに備える、第9の態様に記載のモニタリング装置である。この態様によれば、除細動制御装置から異常信号を受信した場合に、モニタリング装置にてアラートが発動されるため、モニタリング装置にてアラートの停止操作をした後に、除細動制御装置に提供する心電波形の切替操作をモニタリング装置にてそのまま実行できる。その結果、アラートの停止操作および心電波形の切替操作をモニタリング装置のみで完結できるため、ユーザの利便性を向上できる。
【0140】
第12の態様は、前記波形取得部は、複数の心電波形を取得し、前記複数の心電波形のいずれかを選択する波形選択部をさらに備え、前記波形提供部は、前記波形選択部によって選択された心電波形を提供し、前記波形選択部は、前記トリガ信号が同期しないと判定される場合、前記複数の心電波形のうち選択中の心電波形とは別の心電波形を選択する、第9の態様に記載のモニタリング装置である。この態様によれば、除細動制御装置にてトリガポイントが適切に検出できていない場合に、除細動制御装置に提供する心電波形が自動切替されるため、ユーザの手間を軽減できる。
【0141】
第13の態様は、前記波形取得部は、複数の心電波形を取得し、前記複数の心電波形のいずれかを選択する波形選択部をさらに備え、前記波形提供部は、前記波形選択部によって選択された心電波形を提供し、前記波形選択部は、前記受信部が前記除細動制御装置から異常信号を受信した場合、前記複数の心電波形のうち選択中の心電波形とは別の心電波形を選択する、第9の態様に記載のモニタリング装置である。この態様によれば、除細動制御装置から異常信号を受信した場合に、除細動制御装置に提供する心電波形が自動切替されるため、ユーザの手間を軽減できる。
【0142】
第14の態様は、前記除細動制御装置から前記電気エネルギーの供給完了信号を受信する受信部と、前記供給完了信号の受信後に前記電極カテーテルの複数の電極によって計測される複数の心電波形を用いて、最早期異常波形を検出する異常検出部と、前記最早期異常波形の検出を契機に前記除細動制御装置に異常信号を送信する送信部と、をさらに備える、第9から第13のいずれか一つの態様に記載のモニタリング装置である。この態様によれば、この態様によれば、最早期異常波形を検出して異常信号を除細動制御装置に送信することにより、除細動制御装置にてアラートを発動することができる。これにより、カテーテル治療を実施する医師等のユーザに役立つ情報を迅速に提供できる。
【0143】
第15の態様は、電極カテーテルに電気エネルギーを供給する除細動制御装置から前記電気エネルギーの供給完了信号を受信する受信部と、前記供給完了信号の受信後に前記電極カテーテルの複数の電極によって取得される複数の心電波形を用いて、最早期異常波形を検出する検出部と、前記最早期異常波形の検出を契機に前記除細動制御装置に異常信号を送信する送信部と、を備えるモニタリング装置である。この態様によれば、最早期異常波形を検出して異常信号を除細動制御装置に送信することにより、除細動制御装置にてアラートを発動することができる。これにより、カテーテル治療を実施する医師等のユーザに役立つ情報を迅速に提供できる。
【0144】
第16の態様は、電極カテーテルに電気エネルギーを供給する電源部と、モニタリング装置から提供される心電波形が入力される波形入力部と、前記モニタリング装置から前記電気エネルギーの供給開始可能タイミングを示すトリガ信号を受信する受信部と、前記トリガ信号が前記心電波形と同期するか否かを判定する同期判定部と、前記トリガ信号が同期しない場合、前記モニタリング装置に異常信号を送信する送信部と、を備える除細動制御装置である。この態様によれば、除細動制御装置に心電波形およびトリガ信号を提供するモニタリング装置においてトリガポイントが適切に検出できているかを除細動制御装置にて判定し、異常があればモニタリング装置に通知できる。これにより、除細動制御装置に適切な心電波形およびトリガ信号を提供できているかをモニタリング装置にて一元的に把握することができ、ユーザの利便性を向上できる。
【0145】
上述の各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリを含む、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0146】
10,110,210,310…除細動システム、12…電極カテーテル、14,114,214,314…除細動制御装置、16,116,216,316…モニタリング装置、48…電源部、52,252,352…制御部、52c…異常検出部、52d,252d…警告部、54…表示部、120…送信部、122…受信部、124…同期判定部、130,330…警告部、220,320…第1送信部、222,322…第1受信部、224,324…第2受信部、226,326…第2送信部、232…異常検出部、334…トリガ検出部、352e…同期判定部。