(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122523
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】端末装置、基地局装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 48/16 20090101AFI20240902BHJP
H04W 24/08 20090101ALI20240902BHJP
H04W 72/23 20230101ALI20240902BHJP
H04W 48/08 20090101ALI20240902BHJP
H04B 17/309 20150101ALI20240902BHJP
【FI】
H04W48/16 132
H04W24/08
H04W72/23
H04W48/08
H04W48/16 131
H04B17/309
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030101
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大平 智弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊明
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067DD25
5K067DD34
5K067EE02
5K067EE10
5K067LL11
(57)【要約】
【課題】 端末装置のモビリティ制御を適切に行うこと
【解決手段】 端末装置は、基地局装置から送信された参照信号の受信電力を測定する第1の測定方式と、参照信号の信号強度と参照信号が送信されるリソースを含む所定のリソースの信号強度との比に基づく参照信号の受信品質を測定する第2の測定方式と、参照信号の信号強度と、参照信号と同じリソースにおける干渉および雑音の信号強度との比とに基づいて参照信号の信号対雑音比(SINR)を測定する第3の測定方式と、のいずれかおよび2つ以上の組み合わせのそれぞれについての優先度を示す情報を含んだ報知信号を基地局装置から受信し、優先度に基づいて、参照信号の測定を行うための前記第1から第3の測定方式のいずれかまたは2つ以上の測定方式の組み合わせを選択し、選択した測定方式で、基地局装置と基地局装置とは異なる他の基地局装置とから送信された無線信号の測定を行い、測定結果に応じて基地局装置との接続を制御する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置であって、
基地局装置から送信された参照信号の受信電力を測定する第1の測定方式と、前記参照信号の信号強度と前記参照信号が送信されるリソースを含む所定のリソースの信号強度との比に基づく参照信号の受信品質を測定する第2の測定方式と、前記参照信号の信号強度と、前記参照信号と同じリソースにおける干渉および雑音の信号強度との比とに基づいて参照信号の信号対雑音比(SINR)を測定する第3の測定方式と、のいずれかおよび2つ以上の組み合わせのそれぞれについての優先度を示す情報を含んだ報知信号を前記基地局装置から受信する受信手段と、
前記優先度に基づいて、前記参照信号の測定を行うための前記第1から第3の測定方式のいずれかまたは2つ以上の測定方式の組み合わせを選択する選択手段と、
前記選択手段で選択した測定方式で、前記基地局装置と前記基地局装置とは異なる他の基地局装置とから送信された無線信号の測定を行う測定手段と、
前記測定手段の測定結果に応じて前記基地局装置との接続を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする端末装置。
【請求項2】
前記参照信号はセカンダリ同期信号(SSS)であり、
前記所定のリソースは同期信号および物理ブロードキャストチャネルブロック(SS/PBCH block)であることを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記報知信号はSIB(System Information Block)メッセージであることを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項4】
前記選択手段は、前記端末装置が実行可能な測定方式および2つ以上の測定方式の組み合わせのうち、前記報知信号に含まれる前記優先度が最も高い測定方式または2つ以上の測定方式の組み合わせを選択することを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項5】
前記受信手段は、前記基地局装置および前記他の基地局装置から、セル再選択の優先度を示すSIBメッセージを受信し、
前記制御手段は、前記基地局装置および前記他の基地局装置の前記セル再選択の優先度に基づいて接続を制御する閾値を判定することを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項6】
前記測定手段は、前記第3の測定方式において、複数の参照信号の受信強度を測定し、測定した複数の参照信号の受信強度の分散に基づいて干渉および雑音の信号強度を推定することを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項7】
基地局装置であって、
参照信号の受信電力を測定する第1の測定方式と、前記参照信号の信号強度と前記参照信号が送信されるリソースを含む所定のリソースの信号強度との比に基づく参照信号の受信品質を測定する第2の測定方式と、前記参照信号の信号強度と、前記参照信号と同じリソースにおける干渉および雑音の信号強度との比とに基づいて参照信号の信号対雑音比(SINR)を測定する第3の測定方式と、のいずれかおよび2つ以上の測定方式の組み合わせのそれぞれについて、端末装置に測定させる優先度を決定する決定手段と、
前記優先度を通知する通知手段と、
を備えることを特徴とする基地局装置。
【請求項8】
前記通知手段はSIB(System Information Block)メッセージを介して前記優先度を通知することを特徴とする請求項7に記載の基地局装置。
【請求項9】
前記端末装置から前記基地局装置および前記基地局装置とは異なる他の基地局から送信された無線信号の測定報告を受信する受信手段と、
前記測定報告に基づいて前記端末装置との接続を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項7に記載の基地局装置。
【請求項10】
端末装置の制御方法であって、
基地局装置から送信された参照信号の受信電力を測定する第1の測定方式と、前記参照信号の信号強度と前記参照信号が送信されるリソースを含む所定のリソースの信号強度との比に基づく参照信号の受信品質を測定する第2の測定方式と、前記参照信号の信号強度と、前記参照信号と同じリソースにおける干渉および雑音の信号強度との比とに基づいて参照信号の信号対雑音比(SINR)を測定する第3の測定方式と、のいずれかおよび2つ以上の組み合わせのそれぞれについての優先度を示す情報を含んだ報知信号を前記基地局装置から受信することと、
前記優先度に基づいて、前記参照信号の測定を行うための前記第1から第3の測定方式のいずれかまたは2つ以上の測定方式の組み合わせを選択することと、
選択した測定方式で、前記基地局装置と前記基地局装置とは異なる他の基地局装置とから送信された無線信号の測定を行うことと、
測定結果に応じて前記基地局装置との接続を制御することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
基地局装置の制御方法であって、
参照信号の受信電力を測定する第1の測定方式と、前記参照信号の信号強度と前記参照信号が送信されるリソースを含む所定のリソースの信号強度との比に基づく参照信号の受信品質を測定する第2の測定方式と、前記参照信号の信号強度と、前記参照信号と同じリソースにおける干渉および雑音の信号強度との比とに基づいて参照信号の信号対雑音比(SINR)を測定する第3の測定方式と、のいずれかおよび2つ以上の測定方式の組み合わせのそれぞれについて、端末装置に測定させる優先度を決定することと、
決定した前記優先度を通知することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
コンピュータを、請求項1から6のいずれか1項に記載の端末装置が有する各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
コンピュータを、請求項7から9のいずれか1項に記載の基地局装置が有する各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号の測定を行う端末装置、基地局装置、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP(登録商標))の第5世代(5G)のセルラ通信規格において、端末装置が隣接セルの基地局装置から送信された参照信号の測定結果に基づいてハンドオーバを行うモビリティ制御が規定されている。端末装置は、接続(RRC_Connected)状態において、隣接セルの基地局装置から送信された参照信号の測定結果が所定の条件を満たす場合に、ハンドオーバのトリガイベントが発生したことを示す測定報告を基地局装置に送信する。また、端末装置がアイドル(RRC_Idle)または非アクティブ(RRC_Inactive)状態においてはセル再選択などのモビリティ制御処理を実行する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP TS38.331、V17.0.0、2022年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、端末装置は、複数の方式で参照信号の測定を行うことができる場合がある。ここで、端末装置と基地局装置との接続状態によって、他の基地局装置から送信される参照信号を異なる測定方式で測定する場合があった。また、参照信号の信号強度と干渉および雑音の信号強度との比を測定する方式と異なる方式で参照信号の測定を行うことで、干渉強度の高いセルにハンドオーバする場合があった。このように、端末装置が参照信号の測定方式を適切に制御できないことで端末装置の適切なモビリティ制御を実行できない場合があることが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、端末装置による参照信号の測定方式を適切に制御することを可能にする技術を提供する。
【0006】
本発明の一態様による端末装置は、
基地局装置から送信された参照信号の受信電力を測定する第1の測定方式と、前記参照信号の信号強度と前記参照信号が送信されるリソースを含む所定のリソースの信号強度との比に基づく参照信号の受信品質を測定する第2の測定方式と、前記参照信号の信号強度と、前記参照信号と同じリソースにおける干渉および雑音の信号強度との比とに基づいて参照信号の信号対雑音比(SINR)を測定する第3の測定方式と、のいずれかおよび2つ以上の組み合わせのそれぞれについての優先度を示す情報を含んだ報知信号を前記基地局装置から受信する受信手段と、
前記優先度に基づいて、前記参照信号の測定を行うための前記第1から第3の測定方式のいずれかまたは2つ以上の測定方式の組み合わせを選択する選択手段と、
前記選択手段で選択した測定方式で、前記基地局装置と前記基地局装置とは異なる他の基地局装置とから送信された無線信号の測定を行う測定手段と、
前記測定手段の測定結果に応じて前記基地局装置との接続を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、端末装置による参照信号の測定方式を適切に制御することを可能にする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】(A)はSS-RSRPの測定リソースを示す図、(B)はSS-RSRQの測定リソースを示す図、(C)はSS-SINRの測定リソースを示す図
【
図4】(A)従来の端末の状態と測定方式との対応を示す図、(B)本実施形態に係る端末の状態と測定方式との対応を示す図
【
図5】基地局装置および端末装置のハードウェア構成を示す図
【
図6】(A)は基地局装置のソフトウェア機能図、(B)は端末装置のソフトウェア機能図
【
図7】モビリティ制御に使用する指標のオプションを示す図
【
図8】(A)~(C)は基地局装置が送信する報知信号の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(無線通信システムの構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。無線通信システム1は、例えば、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP(登録商標))の第5世代(5G)規格や第4世代(4G)などのセルラ通信規格に準拠して構成された、セルラ通信システムである。無線通信システムは、基地局装置10A、10B(区別せずに基地局装置10と呼ぶ場合がある)と端末装置20とを含んで構成される。
【0011】
なお、
図1では、説明を簡単にするために、2つの基地局装置と1つの端末装置のみを示しているが、当然ながら1つの基地局装置、3つ以上の基地局装置及び複数の端末装置が存在してもよい。基地局装置10は、1つ以上のセルを形成し、接続した端末装置20に通信を提供する。端末装置20は、基地局装置10が形成したセルに接続することができる。
図1の例では、端末装置20は、基地局装置10Aに接続しているものとする。
【0012】
図2~
図5を参照して、従来のモビリティ制御における課題を説明する。
【0013】
図2はハンドオーバなどのモビリティ制御において端末装置20によって測定されるリソースの配置を示す。横軸が時間を示し、縦軸が周波数を示す。
【0014】
無線フレーム間には、所定の時間間隔で端末装置20によって測定される参照信号を含む同期信号および物理ブロードキャストチャネルブロック(SS/PBCH block)201
1~201
4(以下、区別せずにSS/PBCH block201と参照する場合がある)が配置される。ここで、端末装置20は、SS/PBCH block201の少なくとも一部のリソースを測定し、測定結果に応じてハンドオーバを実行する。端末装置20がSS/PBCH blockの測定を行う方式は
図3を参照して後述する。
【0015】
SS/PBCH block201は、プライマリ同期信号(PSS)211、物理ブロードキャストチャネル(PBCH)212~215、およびセカンダリ同期信号(SSS)216を含む。
【0016】
端末装置20が基地局装置から送信される参照信号を含む無線信号を測定する方式として、3つの方式が存在する。
【0017】
図3(A)に示す第1の測定方式は、同期信号の参照信号受信電力(SS-RSRP)を測定する方式である。SS-RSRPを測定する第1の測定方式では、1リソースエレメントあたりのSSSの受信電力を評価する。第1の測定方式ではSSSの受信電力のみを評価するため、干渉信号の有無については考慮されない。なお、第1の測定方式において、端末装置20は複数のSSSの受信電力の平均など、複数のSSSの受信電力の測定結果をSS-RSRPとしてもよい。
【0018】
図3(B)に示す第2の測定方式は、同期信号の参照信号受信品質(SS-RSRQ)を測定する方式である。第2の測定方式では、式SS-RSRQ=N×SS-RSRP/RSSIに基づいてSS-RSRQを計算する。ここで、RSSIはSS/PBCH block全体の受信信号強度インジケータであり、NはRSSIを測定するリソースブロック数であり、例えばN=20である。また、RSSIを測定するSymbolやNなどの測定パラメータは端末装置20ごと、またはセルラネットワークごとに変更可能であってもよい。この場合、RSSIはSS/PBCH blockの一部であって、SSSを含むリソースの信号強度であってもよい。
【0019】
図3(C)に示す第3の測定方式は、同期信号の信号対干渉および雑音比(SS-SINR)を測定する方法である。第3の測定方式では、SSSのリソースエレメントの受信電力を、SSSと同一リソースにおける干渉および雑音の電力で除算したものである。端末装置20は、SSSと同一リソースにおける干渉および雑音電力を公知の技術で推定するものとする。例えば、複数のSSSの受信信号強度の分散に基づいて干渉および雑音の信号強度を推定し、測定したSSSのリソースにおける電力から、推定した信号強度を減算したものをSSSの信号強度として比を計算してもよい。このような場合、分散が大きいほど干渉および雑音の電力が高いと判定することができる。あるいは、復調参照信号(DMRS)などの異なるリソースの電力を利用してSSSと同一リソースにおける干渉および雑音の電力を推定してもよい。
【0020】
SS-RSRQとSS-SINRとはともに干渉や雑音を考慮しているが、SS-RSRQはSS-SINRとは異なるリソースを含めて計測結果を計算する。このため、基地局装置10から端末装置20までの電波伝搬環境、干渉信号の周波数、測定パラメータによってはハンドオーバの候補となる候補セルの通信品質を適切に評価できない場合がある。
【0021】
図3(A)~
図3(C)に示すような3つの測定方式の何れかまたは2つ以上の組み合わせに従って端末装置20はセルの通信品質をKPI(Key Performance Indicator)として評価し、所定の閾値と比較することで基地局装置10にハンドオーバをトリガするトリガイベントの発生を判定することができる。
【0022】
ここで、従来、端末装置20は基地局装置10との接続状態(RRC状態)に応じて使用できる測定方式が異なっていた。
【0023】
図4(A)に、従来の端末装置20がRRC状態ごとに使用する測定方式を示す。従来の端末装置20は、アイドル(RRC-Idle)状態または非アクティブ(RRC-Inactive)状態において、SS-SINRを測定する第3の測定方式での測定を実行しない。これは、端末装置20のバッテリ消費を抑えるためである。しかしながら、このような場合、以下で説明するように、端末装置20のRRC状態に応じて異なる測定方式を使用することによってハンドオーバを繰り返す場合がある。
【0024】
(1)端末装置20は、接続(RRC-Connected)状態で基地局装置10Aが形成するセルに接続している。ここで、端末装置20が基地局装置10Bから送信されたSS/PBCH blockのSS-SINRを第3の測定方式で測定してトリガイベントを検出し、基地局装置10Bが形成するセルにハンドオーバする。
【0025】
(2)端末装置20は、基地局装置10Bが形成するセルにハンドオーバした後、アイドル状態に遷移する。その後、アイドル状態において基地局装置10Aから送信されたSS/PBCH blockのSS-RSRPを第1の測定方式で測定した端末装置20は、トリガイベントを検出し、基地局装置10Aが形成するセルにハンドオーバする。ここで、干渉および雑音の信号強度が大きいなどして、基地局装置10Aから送信されたSS/PBCH blockのSS-RSRPは大きいものの、SS-SINRの閾値は満たしていないものとする。
【0026】
(3)端末装置20は、基地局装置10Aが形成するセルにハンドオーバした後、接続状態に遷移する。その後、接続状態において基地局装置10Bから送信されたSS/PBCH blockのSS-SINRを第3の測定方式で測定してトリガイベントを検出し、基地局装置10Bが形成するセルにハンドオーバする。
【0027】
このように、端末装置20がハンドオーバを繰り返すことでシグナリングが大量に発生し、ネットワークリソースの消費やシグナリングに係る端末装置20および基地局装置10の負荷の増加が問題であった。
【0028】
図4(B)に、本実施形態に係る端末装置20がRRC状態ごとに使用する測定方式を示す。本実施形態に係る端末装置20は、アイドル(RRC-Idle)状態または非アクティブ(RRC-Inactive)状態において、SS-SINRを測定する第3の測定方式での測定を実行可能である。これによって、RRC状態によって異なる方式で測定を行うことによって端末装置20がハンドオーバを繰り返すことを防ぐことができる。
【0029】
本実施形態に係る基地局装置10は、第3の測定方式を高い優先度で実行するように端末装置20に通知を送信する。端末装置20は、通知に基づいてアイドル状態および非アクティブ状態においても第3の測定方式で測定を実行することで接続状態と同じ基準でハンドオーバを実行することができる。
【0030】
(ハードウェア構成)
図5を参照して本実施形態に係る基地局装置10および端末装置20のハードウェア構成について説明する。
【0031】
基地局装置10および端末装置20は、プロセッサ501、ROM502、RAM503、記憶装置504、及び通信回路505を含んで構成される。各構成要素501~505はバス506によって通信可能に接続される。
【0032】
プロセッサ501は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM502や記憶装置504に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、基地局装置10および端末装置20全体を制御する制御部として機能する。ROM502は、基地局装置10および端末装置20が実行するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM503は、プロセッサ501がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置504は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路505は、例えば、LTE(Long Term Evolution)や5G(第5世代移動通信システム)の無線通信用の回路によって構成される。また、基地局装置10は、一例では基地局間通信に用いられる有線通信用の回路を備えうる。なお、
図5では、1つの通信回路505が図示されているが、基地局装置10および端末装置20は、複数の通信回路を有しうる。例えば、基地局装置10および端末装置20は、LTE(4G)用、5G用、およびその後継規格用のそれぞれのための無線通信回路と、それらの回路に共通のアンテナを有しうる。なお、基地局装置10および端末装置は、各規格に適したアンテナを別個に有してもよい。また、基地局装置10は、さらに、他の基地局装置やコアネットワークのノードと通信する際に使用される有線通信回路を有しうる。また、端末装置20は、さらに、無線ローカルエリアネットワーク(LAN)やBluetooth(登録商標)などのセルラ通信規格以外の無線通信規格に準拠した通信回路などを有してもよい。なお、基地局装置10および端末装置20は、使用可能な複数の周波数帯域のそれぞれについて別個の通信回路505を有してもよいし、それらの周波数帯域の少なくとも一部に対して共通の通信回路505を有してもよい。
【0033】
(ソフトウェア構成)
図6(A)を参照して基地局装置10の機能構成について説明する。基地局装置10は、プロセッサ501がROM502や記憶装置504に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、優先度決定部601、優先度通知部602として機能する。なお、
図6(A)では、本実施形態に関する機能のみを図示しているが、基地局が有しうる他の機能については図示を省略している。
【0034】
優先度決定部601は、端末装置20が第1から第3の測定方式のいずれかの測定方式、または複数の測定方式で測定した参照信号を含むリソースの測定値に関する条件の組み合わせで端末装置20にセルサーチやハンドオーバ(セル遷移)などの制御動作を実行させるかを決定する。
【0035】
ここで、
図7を参照して、基地局装置10が決定する測定方式の組み合わせの一例を説明する。基地局装置10は、測定方式の少なくとも1つの組み合わせについて、端末装置20に実行させる優先度と対応付けて決定する。例えば、「SS-RSRP」は、第1の測定方式による測定値で端末装置20の制御動作の実行を可能にする条件を示す。また、「SS-RSRQ and SS-SINR」は、第2の測定方式および第3の測定方式の両方で測定値が条件を満たすことを条件として制御動作の実行を可能にする条件である。また、「SS-RSRP and (SS-RSRQ or SS-SINR)」は、第1の測定方式による測定結果が条件を満たし、かつ第2の測定方式または第3の測定方式の測定結果が条件を満たすことを条件として制御動作の実行を可能にする条件である。端末装置20の能力によっては、これらの第1から第3の測定方式の少なくとも何れかに対応していない場合がある。このような場合、端末装置20が待ち受け状態であると、基地局装置10は端末装置20がいずれの測定方式に対応しているかを判定することができない。このため、基地局装置10は、端末装置20に実行させる測定方式の優先度を決定して通知する。これによって、高い優先度の測定方式に端末装置20が対応している場合には当該高い優先度の測定方式で参照信号の測定を行わせ、そうではない場合は、端末装置20が対応しており、当該高い優先度の測定方式より優先度の低い測定方式で参照信号の測定を行わせることができる。
【0036】
これらの優先度では、トリガ(Trigger Quantity)の候補ごとに0~16までの優先度として「Priority」が設定される。Priorityは、数値が大きいほど優先度が高いことを示す。これらの優先度は、基地局装置10によってあらかじめ設定される。「Identity」は、Priorityと対応付けて端末装置20に通知を送信するために使用する識別子である。なお、本実施形態において、優先度の値は、測定方式の組み合わせの数である17を上限としているが、組み合わせの数に応じて優先度の値の範囲は適宜変更することができる。
【0037】
優先度通知部602は、基地局装置10が送信した参照信号を測定する方式または方式の組み合わせの優先度を、
図8を参照して後述するように、報知信号で端末装置20に通知する。なお、識別子および優先度はこれに限定されず、異なる識別子及び異なる優先度の範囲が設定されてもよい。
【0038】
例えば、基地局装置10は、SIB(System Information Block)メッセージに含めて、端末装置20に参照信号を測定させる際の測定方式の指示を送信する。
【0039】
図8(A)~
図8(C)を参照して基地局装置10が端末装置20に送信する優先度に関する情報の一例を説明する。
【0040】
図8(A)は、所定の周期でブロードキャスト送信されるSIB2(System Information Block type 2)メッセージを示す。SIB2メッセージ810は、s-NonIntraSearchSinr811、threshServingLowSinr812、CellReselectionPriority813、SinrMin814、s-IntraSearchSinr815、TriggerQuantityPrio816を含む。以降、これらの情報エレメント(IE)を区別せずIE811~816と参照する。
【0041】
IE811は、滞在しているセル(滞在セル)での参照信号の測定値の閾値であり、滞在セルとは異なるバンドにおけるハンドオーバ候補のセル(候補セル)をサーチする条件として使用される。IE812は、滞在セルでの参照信号の測定値の閾値であり、ハンドオーバ元とは異なるバンドにおける候補セルに遷移する条件として使用される。IE813は、セル再選択の優先度を示す。IE814は、滞在セルでの参照信号の測定値の閾値であり、滞在セルと同じバンドにおける候補セルのサーチを開始する条件として使用される。IE815は、滞在セルでの参照信号の測定値の閾値であり、滞在セルと同じバンドにおける候補セルに遷移する条件として使用される。IE816は、測定方式の優先度を示し、
図7を参照して説明した優先度と識別子とが対応付けて格納される。
【0042】
図8(B)は、所定の周期でブロードキャスト送信されるSIB3(System Information Block type 3)メッセージを示す。SIB3メッセージ820は、SinrMinOffset821を含む。SinrMinOffset821は、ハンドオーバする際に滞在セルの参照信号の測定値と候補セルの参照信号の測定値とのオフセットを示すIEである。例えば、滞在セルの測定値より候補セルの測定値がSinrMinOffset以上高い場合に候補セルにハンドオーバすると判定する。
【0043】
図8(C)は、所定の周期でブロードキャスト送信されるSIB4(System Information Block type 4)メッセージを示す。SIB4メッセージ830は、SinrMin831、threshX-HighSinr832、threshX-LowSinr833、SinrMinOffset834を含む。以降、これらの情報エレメント(IE)を区別せずIE831~834と参照する。
【0044】
IE831、834はIE814、821と同様のため説明を省略する。IE832、833は候補セルに遷移する条件として使用される候補セルの測定値の閾値である。
【0045】
これらのSIBメッセージを端末装置20が受信することで、後述する処理を実行して端末装置20はセルサーチやハンドオーバを含むモビリティ制御処理を実行することができる。
【0046】
図6(B)を参照して端末装置20の機能構成について説明する。端末装置20は、プロセッサ501がROM502や記憶装置504に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、接続制御部611、優先度受信部612、サーチ条件判定部613、遷移条件判定部614、優先度選択部615、及び測定部616として機能する。なお、
図6(B)では、本実施形態に関する機能のみを図示しているが、端末が有しうる他の機能については図示を省略している。
【0047】
接続制御部611は、端末装置20と基地局装置10との間の通信状態を制御し、上述したアイドル状態、非アクティブ状態、接続状態の遷移を行う。
【0048】
優先度受信部612は、基地局装置10から送信された優先度を含む報知信号を受信する。サーチ条件判定部613は、優先度受信部612で受信した優先度の情報に基づいて、ハンドオーバ先のセルをサーチする条件を満たすか否かを判定する。遷移条件判定部614は、優先度受信部612で受信した優先度の情報に基づいてハンドオーバを実行するか否かを判定する。優先度選択部615は、優先度受信部612で受信した優先度に関する情報に基づいて、いずれの測定方式および複数の測定方式の測定を行うかを選択する。例えば、優先度に関する情報に、第3の測定方式が高く設定されている場合であっても、端末装置20がアイドル状態または非アクティブ状態において第3の測定方式を実行しないよう設定されている場合は、より優先度の低い測定方式または測定方式の組み合わせを実行すると選択する。測定部616は、受信した優先度に関する情報に基づいて測定を実行する。
【0049】
図9を参照して端末装置20が実行する処理の一例について説明する。
図9の処理は、端末装置20のプロセッサ501がROM502や記憶装置504に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより実行される。なお、端末装置20はアイドル状態または非アクティブ状態に遷移した場合に
図9に示す処理を実行するものとする。
【0050】
S901で端末装置20は、現在滞在しているセル(滞在セル)およびハンドオーバ先の候補となるセル(候補セル)の基地局装置10から送信されたSIBメッセージを取得する。ここで、端末装置20はアイドル状態または非アクティブ状態であるため、滞在セルおよび候補セルのSIBメッセージを受信することができる。なお、本実施形態では、滞在セルの基地局装置10から指定された測定方法の優先度として、第1および第3の測定方法の測定値と閾値との比較を行うRsrpAndSinrが最も高い優先度に設定されているものとする。続いて、端末装置20は候補セルの基地局装置から送信されたSIBメッセージに含まれるCellReselectionPriority(P1)と滞在セルのSIBメッセージに含まれるCellReselectionPriority(P2)とを比較する(S902)。
【0051】
P1がP2より小さい場合(S902でP1<P2)、端末装置20は処理をS903に進め、滞在セルの参照信号の測定を行い、ハンドオーバ先のサーチを開始する条件である第1のサーチ開始条件を満たすか否かを判定する(S903)。第1のサーチ開始条件は、例えば第1および第3の測定方式で測定した滞在セルの測定値が閾値を下回ったことである。すなわち、端末装置20は、滞在セルのSS-RSRPがsNonIntraSearchPを下回り、かつ滞在セルのSS-SINRがsNonIntraSearchSinrを下回ることを条件に処理をS904に進める。条件を満たさない場合(S903でNO)は第1および第3の測定方式での参照信号の測定を所定の時間周期で繰り返す。第1のサーチ開始条件を満たす場合(S903でYES)、端末装置20はセルサーチを開始し、第1の遷移条件を満たすか否かを判定する(S904)。セルサーチでは、端末装置20は、基地局装置10から受信した、測定方式の優先度の指示に従い、候補セルおよび滞在セルの基地局装置10から送信された参照信号の測定を行う。RsrpAndSinrでは、参照信号を第1および第3の測定方式で測定し、測定値と閾値との比較を行う。具体的には、所定のタイマー(tReselectionNR)の間、(1)滞在セルのSS-RSRPがthreshServingLowPを下回り、かつ候補セルのSS-RSRPがthreshXLowPを上回ること、かつ(2)滞在セルのSS-SINRがthreshServingLowSinrを下回り、かつ候補セルのSS-SINRがthreshXLowSinrを上回ることを条件にする。第1の遷移条件を満たすと判定した場合(S904でYES)、端末装置20は処理をS909に進める。
【0052】
P1とP2とが等しい場合(S902でP1=P2)、端末装置20は処理をS905に進め、滞在セルの参照信号の測定を行い、ハンドオーバ先のサーチを開始する条件である第2のサーチ開始条件を満たすか否かを判定する(S905)。第2のサーチ開始条件は、例えば第1および第3の測定方式で測定した滞在セルの測定値が閾値を下回ったことである。例えば、離接セルが滞在セルと同じバンドである場合、端末装置20は、滞在セルのSS-RSRPがsIntraSearchPを下回り、かつ滞在セルのSS-SINRがsIntraSearchSinrを下回ることを条件に処理をS906に進める。離接セルが滞在セルと異なるバンドである場合、端末装置20は、滞在セルのSS-RSRPがsNonIntraSearchPを下回り、かつ滞在セルのSS-SINRがsNonIntraSearchSinrを下回ることを条件に処理をS906に進める。条件を満たさない場合(S905でNO)は第1および第3の測定方式での参照信号の測定を所定の時間周期で繰り返す。第2のサーチ開始条件を満たす場合(S905でYES)、端末装置20は第2の遷移条件を満たすか否かを判定する(S906)。ここで、端末装置20は、基地局装置10から受信した、測定方式の優先度の通知に従い、第1および第3の測定方式での参照信号の測定値と閾値との比較を行う。具体的には、所定のタイマー(tReselectionNR)の間、第2のサーチ開始条件に加え、候補セルのSS-RSRPが滞在セルのSS-RSRP+オフセット(qHyst)より大きいことを条件にする。第2の遷移条件を満たすと判定した場合(S906でYES)、端末装置20は処理をS909に進める。
【0053】
P1がP2より大きい場合(S902でP1>P2)、端末装置20は処理をS907に進め、ハンドオーバ先のセルサーチを開始する(S907)。続いて、端末装置20は第3の遷移条件を満たすか否かを判定する(S908)。ここで、端末装置20は、基地局装置10から受信した、測定方式の優先度の通知に従い、第1および第3の測定方式での参照信号の測定値と閾値との比較を行う。具体的には、所定のタイマー(tReselectionNR)の間、候補セルのSS-RSRPが閾値threshXHighPより大きく、かつ候補セルのSS-SINRがthreshXHighSinrより大きいことを条件とする。第3の遷移条件を満たすと判定した場合(S908でYES)、端末装置20は処理をS909に進める。
【0054】
S909では、端末装置20はセル再選択の実行などのモビリティ制御処理を実行する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、端末装置は、基地局装置との接続状態によらず、基地局装置10から送信された参照信号の信号強度と、干渉信号の信号強度とを同一の基準で比較して基地局装置から送信された無線信号の測定を行う。これによって、アイドル状態および非アクティブ状態において適切な基準でモビリティ制御を実行することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、端末装置は、基地局装置との接続状態によらずに同一の基準を使用してセルサーチやセル遷移などのモビリティ制御を実行する。これによって、接続状態によって異なる基準で頻繁にハンドオーバを繰り返すことを防ぐことができる。
【0057】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。