(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122537
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】トンネル掘削機
(51)【国際特許分類】
E21D 9/12 20060101AFI20240902BHJP
E21D 9/093 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
E21D9/12 D
E21D9/093 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030128
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安部 剛史
(72)【発明者】
【氏名】米沢 実
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義信
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 秀司
(72)【発明者】
【氏名】福田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】吉村 隼人
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC04
2D054BA03
2D054CA01
2D054CA04
2D054DA03
2D054DA31
2D054GA12
2D054GA17
2D054GA25
2D054GA42
2D054GA52
2D054GA58
2D054GA60
2D054GA68
(57)【要約】
【課題】カッターチャンバ内の土砂を効率的に取り出すことが可能なトンネル掘削機を提供する。
【解決手段】泥土圧式のシールド掘進機は、地山の内壁を支持可能なスキンプレートと、スキンプレートに装着され、回転により地山を掘削するカッターヘッドと、胴体内に設けられ、カッターヘッドに対向して配置される隔壁13と、スキンプレート、カッターヘッド、及び隔壁13により区画され、カッターヘッドにより掘削された土砂が流入するカッターチャンバ14と、カッターチャンバ14内の土砂をトンネル掘削機の後方に排出する排出コンベヤと、カッターチャンバ内の土砂の一部を取り出す取出機構50と、を備え、取出機構50は、カッターチャンバ14内の土砂を移送することでカッターチャンバ14内から土砂を取り出す取出部60と、取出部60が取り出す土砂を圧送するポンプ55と、ポンプ55から圧送された土砂を導く搬送路51と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルを掘削する泥土圧式のトンネル掘削機であって、
地山の内壁を支持可能な胴体と、
前記胴体に装着され、回転により前記地山を掘削する掘削部と、
前記胴体内に設けられ、前記トンネルの軸方向において前記掘削部に対向して配置される隔壁と、
前記胴体、前記掘削部、及び前記隔壁により区画され、前記掘削部により掘削された土砂が流入するカッターチャンバと、
前記カッターチャンバ内の土砂を前記トンネル掘削機の後方に排出する排出機構と、
前記カッターチャンバ内の土砂の一部を取り出す取出機構と、を備え、
前記取出機構は、
前記カッターチャンバ内の土砂を移送することで前記カッターチャンバ内から土砂を取り出す取出部と、
前記取出部が取り出す土砂を圧送するポンプと、
前記ポンプから圧送された土砂を導く搬送路と、を有する、
トンネル掘削機。
【請求項2】
請求項1に記載のトンネル掘削機であって、
前記排出機構によって排出された土砂を前記トンネル掘削機のさらに後方に移送する移送機構をさらに備え、
前記取出部によって取り出された土砂は、前記搬送路を通じて前記移送機構に導かれる、
トンネル掘削機。
【請求項3】
請求項1に記載のトンネル掘削機であって、
前記搬送路は、それぞれ前記隔壁に設けられ前記カッターチャンバに開口する第一開口部及び第二開口部を通じて前記カッターチャンバに連通し、
前記取出機構は、前記第一開口部及び前記第二開口部の一方を通じて前記取出部によって取り出された土砂を前記ポンプによって前記搬送路に圧送して、他方を通じて前記カッターチャンバ内に戻すように構成される、
トンネル掘削機。
【請求項4】
請求項1に記載のトンネル掘削機であって、
前記隔壁には、それぞれ前記カッターチャンバに開口する第一開口部及び第二開口部が設けられ、
前記取出機構は、
前記第一開口部と前記第二開口部とを通じて前記カッターチャンバに連通する前記搬送路と、
前記第一開口部を通じて前記カッターチャンバ内から土砂を取り出し可能であると共に前記搬送路内の土砂を前記第一開口部を通じて前記カッターチャンバ内に供給可能に構成される、前記取出部としての第一取出部と、
前記第一取出部が取り出した土砂を前記搬送路に圧送可能であると共に前記搬送路の土砂を前記第一取出部に圧送可能に構成される、前記ポンプとしての第一ポンプと、
前記第二開口部を通じて前記カッターチャンバ内から土砂を取り出し可能であると共に前記搬送路内の土砂を前記第二開口部を通じて前記カッターチャンバ内に供給可能に構成される、前記取出部としての第二取出部と、
前記第二取出部が取り出した土砂を前記搬送路に圧送可能であると共に前記搬送路の土砂を前記第二取出部に圧送可能に構成される、前記ポンプとしての第二ポンプと、を有する、
トンネル掘削機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載のトンネル掘削機であって、
前記隔壁に設けられ土砂を塑性状態にする添加剤を前記カッターチャンバに注入する注入機構をさらに備える、
トンネル掘削機。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一つに記載のトンネル掘削機であって、
前記搬送路に設けられ前記搬送路に導かれる土砂の性状を測定する測定部をさらに備える、
トンネル掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地山を掘削するカッターと、カッターとの間にカッターチャンバを区画する隔壁と、カッターチャンバ内の土砂を排出するスクリューコンベヤと、を備える泥土圧式シールド掘進機が開示されている。このシールド掘進機では、隔壁に設けられる貫通孔の周囲にシリンダが取り付けられ、シリンダ内にピストンが嵌合されると共にシリンダの外周面にシリンダ内の密度を測定する密度計が装着される。ピストンの引き操作時の密度計の出力値によって、貫通孔からシリンダ内に吐出される掘削土砂の密度が計測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シールド掘進機では、例えばカッターチャンバ内の土砂の性状を測定する目的などのために、カッターチャンバ内の土砂をシールド掘進機外に排出するのとは別に、カッターチャンバ内の土砂の一部を取り出すことがある。
【0005】
特許文献1では、ピストンをシリンダ内で移動させることによる圧力によってカッターチャンバ内の土砂が取り出される。しかしながら、泥土圧式のシールド掘進機の場合、カッターチャンバ内には水分も含まれることから、圧力によって土砂を取り出す特許文献1の構成ではカッターチャンバ内の水分が優先的に取り出され、土砂が相対的に取り出しにくくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、カッターチャンバ内の土砂を効率的に取り出すことが可能なトンネル掘削機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トンネルを掘削する泥土圧式のトンネル掘削機であって、地山の内壁を支持可能な胴体と、胴体に装着され、回転により地山を掘削する掘削部と、胴体内に設けられ、トンネルの軸方向において掘削部に対向して配置される隔壁と、胴体、掘削部、及び隔壁により区画され、掘削部により掘削された土砂が流入するカッターチャンバと、カッターチャンバ内の土砂を機外に排出する排出機構と、カッターチャンバ内の土砂の一部を取り出す取出機構と、を備え、取出機構は、カッターチャンバ内の土砂を移送することでカッターチャンバ内から土砂を取り出す取出部と、取出部が取り出す土砂を圧送するポンプと、ポンプから圧送された土砂を導く搬送路と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カッターチャンバ内の土砂を効率的に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るシールド掘進機の構成を模式的に示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るシールド掘進機の構成を一部省略して模式的に示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るシールド掘進機の取出機構の構成を模式的に示す模式図である。
【
図4】本発明の実施形態の第一変形例に係る取出機構の構成を模式的に示す模式図である。
【
図5】本発明の実施形態の第二変形例に係る取出機構の構成を模式的に示す模式図である。
【
図6】本発明の実施形態の第三変形例に係る取出機構の構成を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るトンネル掘削機ついて説明する。以下では、トンネル掘削機が、シールド工法において用いられるシールド掘進機100である場合について説明する。シールド掘進機100は、地中(地山)を掘進して掘削坑1を形成し、掘削坑1の内壁を覆うようセグメントリング10(覆工体)を組み立てることによって、トンネルTを構築するものである。なお、本発明は、シールド掘進機100以外のトンネル掘削機、例えば、推進工法において推進管の先端に設置される掘削機にも適用可能である。
【0011】
以下では、シールド掘進機100が進む方向である切羽側を「前方」とし、その反対の方向である坑口側を「後方」として説明する。
【0012】
本実施形態の、シールド掘進機100は、泥土圧シールド工法に用いられる泥土圧式シールド掘進機である。
【0013】
シールド掘進機100は、
図1及び
図2に示すように、トンネルTの軸方向に沿って延在し掘削坑1の内壁を支持可能な筒状の胴体としてのスキンプレート11と、スキンプレート11の前方において回転駆動される掘削部としてのカッターヘッド12と、スキンプレート11内に設けられトンネルTの軸方向においてカッターヘッド12に対向して配置される隔壁13と、カッターヘッド12により掘削された土砂が流入するカッターチャンバ14と、を備える。スキンプレート11の内部の後方側において、シールド掘進機100の前進に伴ってセグメントリング10が順次構築される。なお、
図2は、
図1から排出機構を省略した図である。
【0014】
スキンプレート11には、ジャッキ20が固定される。ジャッキ20は、セグメントリング10から反力を得てスキンプレート11を前方に推進し、カッターヘッド12を地山に押し付ける。スキンプレート11が推進されてセグメントリング10がスキンプレート11から出ると、セグメントリング10の外周面と掘削坑1の内壁との間に裏込め材(図示省略)が充填される。
【0015】
カッターヘッド12には、前方に突出するカッタービット12aが複数設けられる。カッターヘッド12が地山に押し付けられた状態で回転すると、地山がカッタービット12aにより掘削されて掘削坑1が形成される。カッターヘッド12の外径は、スキンプレート11の外径と略等しく、地山は、スキンプレート11の外径と略等しい内径で掘削される。カッターヘッド12により掘削された土砂は、カッターヘッド12に設けられる図示しないカッタースリット等の開口を通じてカッターヘッド12の後方に導かれ、カッターチャンバ14内に滞留する。
【0016】
また、カッターヘッド12には、カッターチャンバ14に向かって突出しカッターヘッド12の径方向の内側に延びる複数の撹拌翼15(撹拌部)が設けられる。撹拌翼15がカッターヘッド12と共に回転することでカッターチャンバ14内に滞留する土砂が撹拌される。
【0017】
カッターチャンバ14は、スキンプレート11、カッターヘッド12、及び隔壁13により区画される。カッターチャンバ14内には、掘削された土砂及び地下水が流入する。カッターチャンバ14内を土砂で充満させてカッターチャンバ14内の土砂の圧力をカッターヘッド12に作用させることにより、切羽面の土圧及び地下水圧をカッターヘッド12で抑え切羽面を安定させることができる。
【0018】
隔壁13は、トンネルTの軸方向においてカッターヘッド12に対向して配置されており、隔壁13に対して回転ドラム26が回転自在に支持されている。カッターヘッド12は、連結ロッド27を介して回転ドラム26に連結されており、回転ドラム26と共に回転可能である。回転ドラム26は、図示しない減速機構を介して電動モータ25に連結されており、電動モータ25の駆動により、回転ドラム26とカッターヘッド12がスキンプレート11に対して回転する。電動モータ25の作動を制御することによって、カッターヘッド12の回転方向や回転速度を制御することが可能である。
【0019】
シールド掘進機100は、
図1から
図3に示すように、カッターチャンバ14内の土砂をシールド掘進機100の後方に排出する排出機構と、排出機構によって排出された土砂をシールド掘進機100のさらに後方に移送する移送機構と、カッターチャンバ14内の土砂の一部を取り出す取出機構50と、土砂の性状を測定する測定部70と、取出機構50の動作を制御する制御部80と、をさらに備える。
【0020】
排出機構は、
図1に示すように、隔壁13に設けられる開口を通じてカッターチャンバ14内に臨むスクリューコンベヤである。以下では、排出機構のスクリューコンベヤを「排出コンベヤ30」と称する。
【0021】
排出コンベヤ30は、円筒状のケース31と、ケース31の内部に組み込まれるオーガ32と、を有する。排出コンベヤ30は、オーガ32が駆動部としての図示しないモータにより回転されることによって、カッターチャンバ14内の掘削土砂を搬出可能な構成となっている。ケース31は、前方側がカッターチャンバ14に接続される土砂入口となっており、後方寄りの下方には、土砂出口となる排出口31aが開口している。カッターチャンバ14内の土砂の量は、排出コンベヤ30により排出されることで調節される。
【0022】
移送機構は、排出コンベヤ30の排出口31aの下方から後方に向かって掘削坑1に沿って設けられ排出コンベヤ30から排出土砂を受け取り後方へと搬送するベルトコンベヤ40である。ベルトコンベヤ40は、シールド掘進機100の後方に連結される図示しない後続台車上に設置される。なお、後続台車は、ホッパ41を介してベルトコンベヤ40から排出土砂を受け取る搬送車両42がその下方に進入できるよう門型に構成されている。搬送車両42としては、セグメントリング10を構成するセグメントピースを掘削坑1内へと搬入する搬入車両が利用される。ベルトコンベヤ40はシールド掘進機100により掘削された掘削土である排出土砂をシールド掘進機100の機外に移送する設備であり、または、さらに後方の坑口へと搬送するための設備である。
【0023】
このように構成された排出コンベヤ30を含む搬送経路を通じて、カッターヘッド12によって掘削された土砂は、シールド掘進機100外に排出され、掘削坑1の外へと搬出される。
【0024】
取出機構50は、
図2及び
図3に示すように、カッターチャンバ14に連通する搬送路51と、カッターチャンバ14内の土砂を移送してカッターチャンバ14内から土砂を取り出す取出部60と、取出部60が取り出す土砂を搬送路51に圧送するポンプ55と、を有する。
【0025】
隔壁13には、
図3に示すように、それぞれカッターチャンバ14に開口する第一開口部13a及び第二開口部13bが設けられる。第一開口部13aと第二開口部13bとは、それぞれカッターヘッド12の中心を挟んで鉛直方向の上下に並んで設けられる。第一開口部13aが、第二開口部13bよりも鉛直方向の上方側に設けられる。
【0026】
搬送路51は、内部に土砂の通過を許容する配管(例えば鋼管)によって構成される。搬送路51は、両端が隔壁13に接続され第一開口部13a及び第二開口部13bを通じてカッターチャンバ14に連通する第一搬送路52と、第一搬送路52に接続され内部を通過する土砂をベルトコンベヤ40に導く第二搬送路53と、を有する。
【0027】
第一搬送路52は、略U字状に形成される。第一搬送路52は、シールド掘進機100の内部、より具体的には、スキンプレート11の内側において、カッターチャンバ14内の土砂を取り出して再び別の箇所から戻す循環路を構成するものである。
【0028】
第二搬送路53は、シールド掘進機100の前方から後方に向かって延びて設けられる。第二搬送路53の一端は第一搬送路52に接続され、他端はベルトコンベヤ40の上方において開口端として構成される(
図2参照)。
【0029】
取出機構50は、取出部60として、第一開口部13aを通じてカッターチャンバ14から土砂を取り出す第一取出部60aと、第二開口部13bを通じてカッターチャンバ14から土砂を取り出す第二取出部60bと、を有する。第一取出部60aと第二取出部60bとは、互いに同様の構成であるため、以下では第一取出部60aと第二取出部60bとに共通する構成に関しては、両者を区別せず「取出部60」と称して説明する。
【0030】
取出部60は、スクリューコンベヤである取出コンベヤ61と、取出コンベヤ61を駆動する電動モータ65(駆動部)と、を有する。
【0031】
取出コンベヤ61は、排出コンベヤ30と同様、円筒状のケース62と、ケース62の内部に組み込まれるオーガ63と、を有する。
【0032】
取出コンベヤ61のケース62は、対応する第一開口部13a及び第二開口部13bを通じて一端がカッターチャンバ14に連通し、他端が第一搬送路52に連通するように隔壁13に設けられる。取出コンベヤ61のケース62は、排出コンベヤ30のケース31よりも内径が小さい。よって、カッターチャンバ14内の土砂は、主として排出コンベヤ30によって排出される。なお、取出コンベヤ61のケース62は、排出コンベヤ30のケース31よりも内径が小さい。
【0033】
取出コンベヤ61のオーガ63の先端部は、対応する第一開口部13a及び第二開口部13bを通じてカッターチャンバ14内に臨んでおり、カッターチャンバ14内の土砂に直接接触している。
【0034】
電動モータ65は、搬送路51に近接して設けられ、図示しない減速機等を介して取出コンベヤ61を回転駆動する。取出コンベヤ61のオーガ63は、電動モータ65によって回転駆動されることで、その回転方向に応じてカッターチャンバ14内からの土砂の取出又はカッターチャンバ14に向けた土砂の供給を行う。このように、取出コンベヤ61は、圧力等によってカッターチャンバ14内から土砂を吸い込むのではなく、土砂に直接接触して移送することで機械的に土砂を取り出すものである。これにより、カッターチャンバ14内の土砂をより確実に取り出すことができる。
【0035】
また、取出機構50は、ポンプ55として、第一取出部60aがカッターチャンバ14から取り出した土砂を圧送する第一ポンプ55aと、第二取出部60bがカッターチャンバ14から取り出した土砂を圧送する第二ポンプ55bと、を有する。第一ポンプ55aが第一取出部60aに対応するポンプであり、第二ポンプ55bが第二取出部60bに対応するポンプである。第一ポンプ55aと第二ポンプ55bとは、互いに同様の構成であるため、以下では第一ポンプ55aと第二ポンプ55bとに共通する構成に関しては、両者を区別せず「ポンプ55」と称して説明する。
【0036】
ポンプ55は、第一搬送路52の途中に設けられる、いわゆるラインポンプであり、一対のポートを有している。また、ポンプ55は、図示しない電動モータによって回転駆動され、回転方向に応じて一方のポートから吸い込んだ土砂を他方のポートから圧送する、双方向ポンプである。つまり、ポンプ55は、対応する取出部60が取り出した土砂を一方のポートから吸い込み、他方のポートを通じて第一搬送路52に圧送することが可能である。また、ポンプ55は、第一搬送路52の土砂を他方のポートから吸い込み、一方のポートを通じて対応する取出部60に向けて圧送することも可能である。
【0037】
ポンプ55は、例えば、ハウジング内でそれぞれ独立して駆動軸回りを回転可能な一対のブレードを有し、ブレードによりハウジング内に区画されるポンプ室に土砂を取り込み、ポンプ室から土砂を圧送するロータリーポンプである。なお、ポンプ55は、この構成に限定されず、任意の構成とすることができる。つまり、ポンプ55は、ロータリーポンプに限定されず、ロータリーポンプであったとしても、上記構成に限定されるものではない。
【0038】
測定部70は、第二搬送路53に取り付けられ、第二搬送路53を通過する土砂の性状を測定する。具体的には、測定部70は、土砂の密度及び水分量を測定する、いわゆる中性子線とガンマ線を利用したラジオアイソトープ(RI)センサである。なお、測定部70は、密度及び水分量に限らず、電気的物性や粘性などの性状を測定するものでもよい。
【0039】
取出機構50は、それぞれ搬送路51を開閉する第一開閉部56、第二開閉部57、及び第三開閉部58をさらに有する。第一開閉部56は、第一搬送路52において、第一取出部60a(より詳細には第一取出部60aの取出コンベヤ61)と第一ポンプ55aとの間に設けられる。第二開閉部57は、第一搬送路52において、第二取出部60b(より詳細には第二取出部60bの取出コンベヤ61)と第二ポンプ55bとの間に設けられる。第三開閉部58は、第二搬送路53において測定部70よりも上流側(第一搬送路52と第二搬送路53との接続部側)に設けられる。第一開閉部56、第二開閉部57、及び第三開閉部58は、例えば、電磁駆動されるシャッターやバルブにより構成され、制御部80によって作動が制御されることで搬送路51を開閉する。
【0040】
制御部80は、制御プログラム等を実行するCPU(Central Processing Unit)と、CPUにより実行される制御プログラムを記憶するROM(Read-Only Memory)と、CPUの演算結果等を記憶するRAM(Random Access Memory)と、通信装置と、等を備えたコンピュータによって構成される。制御部80は、ROMに記憶される制御プログラムがRAMに読み込まれ、RAM上でCPUによって実行されることにより、本明細書に記載の制御部80の各種機能を実行する。制御部80は、一つのコンピュータによって構成されていてもよいし、複数のマイクロコンピュータによって構成され各制御を当該複数のコンピュータで分散処理するように構成されていてもよい。
【0041】
制御部80は、図示しない入力装置を通じて入力される作業者の操作信号に応じて、取出部60の電動モータ65、ポンプ55、及び第一から第三開閉部56,57,58の作動を制御する。また、制御部80には、測定部70の測定結果が入力される。測定部70の測定結果は、図示しない表示装置に表示されたり、土砂の排出量を算出する演算に使用されたりする。
【0042】
シールド掘進機100は、
図1に示すように、隔壁13に設けられ土砂を塑性状態にする添加剤をカッターチャンバ14に注入する第一注入機構35(注入機構)と、排出コンベヤ30に設けられ排出コンベヤ30内に添加剤を注入する第二注入機構36と、を有する。
【0043】
第一注入機構35は、隔壁13に設けられる注入口を通じてカッターチャンバ14内に添加剤を注入するノズル部と、ノズル部に添加剤を供給する供給部と、を有する。注入機構によってカッターチャンバ14内に添加剤が注入されることで、カッターチャンバ14内の土砂が、適切な流動性(塑性流動性)を有する状態に保たれる。なお、第一注入機構35は、カッターヘッド12に設けられてもよい。
【0044】
第二注入機構36は、排出コンベヤ30のケース31に設けられる注入口を通じてケース31内に添加剤を注入するノズル部と、ノズル部に添加剤を供給する供給部と、を有する。第二注入機構36が添加する添加剤は、排出コンベヤ30によって排出される土砂が排出口31aから噴出する噴発を防ぐための改質剤である。改質剤には、例えば、高分子凝集剤等が含まれる。排出コンベヤ30内に添加剤が添加されることで、上述のように噴発が抑制されると共に、排出される土砂の流動性を下げて搬送しやすい状態とすることができる。
【0045】
次に、本実施形態の取出機構50の作用について説明する。
【0046】
一般に、カッターチャンバ内の圧力は、カッターチャンバ内の土砂の性状により変化する。泥土圧式のシールド掘進機は、カッターチャンバ内の圧力によってカッターヘッドを抑えて土砂を掘削するものであるため、カッターチャンバ内の全体にわたって土砂の性状が安定していることが望まれる。よって、シールド掘進機では、カッターチャンバ内の土砂を採取し、性状を測定するサンプリングが行われる。
【0047】
カッターチャンバ内には、掘削した土砂に加え、地下水や空気が含まれる。土砂は、地下水や空気に比べて比重が大きいため、鉛直方向の下方側に溜まりやすい。カッターヘッドに設けられる撹拌翼によってカッターチャンバ内が撹拌されるものの、カッターチャンバ内の性状の均一化には改善の余地がある。
【0048】
カッターチャンバ内の土砂の性状が不均一であると、カッターチャンバ内の圧力が不均一になると共に、採取した土砂の性状によってカッターチャンバ内の土砂の性状を正確に把握することが困難となる。
【0049】
また、シールド掘進機では、地山の隆起や陥没の発生を確認するために、掘削速度に基づいて算出される掘削量と、排出コンベヤからベルトコンベヤを通じて排出される土砂の排出量と、が一致しているかを確認しながら掘削作業が行われる。一般に、土砂の排出量は、測定した重量と土砂性状(掘削土の密度又は比重、地下水の流入等による掘削土の含有する水分量等)から算出される。このため、土砂性状が正確に把握できないと、排出量を正確に求めることが困難となる。
【0050】
これに対し、本実施形態では、
図3に示す取出機構50によってカッターチャンバ14内の土砂を取り出して、カッターチャンバ14内の土砂の循環と、カッターチャンバ14内の土砂の性状を測定するサンプリングと、の2つが実行される。
【0051】
まず、取出機構50による土砂の循環について説明する。
【0052】
一般には、カッターチャンバ14内は、比重の大きい土砂が下方側に溜まって不均一状態となるため、本実施形態では、取出機構50によって下方側の第二開口部13bを通じて土砂を取り出し、取り出した土砂が第一開口部13aを通じてカッターチャンバ14内に戻すようにして土砂を循環させる。
【0053】
土砂をこのように循環させるには、第一開閉部56及び第二開閉部57によって第一搬送路52を開放し、第一取出部60aと第二取出部60bとをそれぞれ駆動する。第二取出部60bは、カッターチャンバ14内から土砂を取り出すように駆動される。第二ポンプ55bは、第二取出部60bが取り出した土砂を吸い込んで第一搬送路52に圧送するように駆動される。第一ポンプ55aは、第一搬送路52の土砂を吸い込み、第一取出部60aに向けて圧送するように駆動される。そして、第一取出部60aは、第一ポンプ55aから圧送された土砂をカッターチャンバ14内に供給するように駆動される。なお、このように土砂を循環させている間は、第三開閉部58は閉じた状態にされる。
【0054】
このようにして相対的に下方側にある第二開口部13bから取り出されたカッターチャンバ14内の土砂が上方側にある第一開口部13aを通じてカッターチャンバ14内に戻されて循環される。よって、カッターチャンバ14内の土砂が撹拌され、土砂性状の均一化を図ることができる。
【0055】
なお、土砂の循環は、カッターチャンバ14内から第二開口部13bから取り出して第一開口部13aを通じて戻すものに限らず、これとは反対に、第一開口部13aから取り出して第二開口部13bを通じて戻すようにしてもよい。
【0056】
次に、取出機構50によるサンプリングについて説明する。
【0057】
カッターチャンバ14内の上方側の土砂をサンプリングする場合には、第一開閉部56によって第一搬送路52を開放し、第三開閉部58によって第二搬送路53を開放する。また、カッターチャンバ14内から土砂を取り出し、第一搬送路52に圧送するように、第一取出部60a及び第一ポンプ55aを駆動する。第二開閉部57は、閉じ状態とされ、第二取出部60b及び第二ポンプ55bは、作動が停止される。
【0058】
反対に、カッターチャンバ14内の下方側の土砂をサンプリングする場合には、第二開閉部57によって第二搬送路53を開放し、第三開閉部58によって第二搬送路53を開放する。また、カッターチャンバ14内から土砂を取り出し、第二搬送路53に圧送するように、第二取出部60b及び第二ポンプ55bを駆動する。第一開閉部56は、閉じ状態とされ、第一取出部60a及び第一ポンプ55aは、作動が停止される。
【0059】
カッターチャンバ14内から取り出された土砂は、第一ポンプ55a又は第二ポンプ55bによって第一搬送路52から第二搬送路53に導かれる。土砂が第二搬送路53を通過することで、測定部70によって土砂の性状を測定することができる。第二搬送路53に導かれた土砂は、ベルトコンベヤ40に導かれ、後方に排出される(
図2参照)。
【0060】
取出機構50によれば、カッターチャンバ14内の土砂を連続的に取り出すことができるため、土砂性状を連続的に測定することができる。また、取出機構50は、カッターチャンバ14の上方側のサンプリングと下方側のサンプリングとの両方を行うことができる。このため、カッターチャンバ14の上方側と下方側とを交互にサンプリングすることで、カッターチャンバ14内の土砂性状が均一であるかを把握することができる。
【0061】
なお、土砂の循環とサンプリングとを別々に説明したが、循環とサンプリングとを同時に行ってもよい。
【0062】
つまり、第一開閉部56及び第二開閉部57によって第一搬送路52を開放し、第一取出部60a及び第二取出部60bによって土砂を循環させると共に、第三開閉部58によって第二搬送路53を開放して土砂性状の測定を行ってもよい。この場合、カッターチャンバ14内から取り出された土砂の一部はカッターチャンバ14内に戻されて循環し、残りは第二排出通路を通過して性状が測定されシールド掘進機100の後方に排出される。第一取出部60a、第二取出部60b、第一ポンプ55a、及び第二ポンプ55bの動作を制御することで、循環する土砂の流量と性状が測定されベルトコンベヤ40まで排出される土砂の流量との比率を調整することができる。
【0063】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0064】
本実施形態の取出機構50は、取出部60が圧力ではなく土砂に直接接触して移送することで土砂をカッターチャンバ14から取り出し、ポンプ55によって土砂が搬送路51に圧送される構成である。これにより、土砂がカッターチャンバ14からより確実に取り出されるため、カッターチャンバ14内から土砂を効率的に取り出すことができる。
【0065】
また、本実施形態では、取出機構50によって、カッターチャンバ14内から土砂を取り出し、取り出した箇所とは別の箇所からカッターチャンバ14に土砂を戻すようにして、土砂が循環される。これにより、カッターチャンバ14内の土砂性状を均一化させることができる。
【0066】
また、本実施形態では、第一開口部13aは、第二開口部13bよりも鉛直方向の上方側に設けられている。このように、第一開口部13aと第二開口部13bとを鉛直方向の上下にずらして設け、第一開口部13aと第二開口部13bとを通じて土砂を循環させることで、下方側に土砂が沈下しやすいカッターチャンバ14内を効率的に撹拌させ、性状を均一化させることができる。
【0067】
また、本実施形態では、取出機構50によってカッターチャンバ14内の土砂がより確実かつ効率的に取り出されるため、土砂の性状をより安定して精度よく測定することができる。また、取出機構50によって土砂が連続的に取り出されるため、土砂性状を連続して把握することができる。
【0068】
また、本実施形態では、測定部70が第二搬送路53に設けられ第二搬送路53を通過する土砂の性状が測定される。第二搬送路53からベルトコンベヤ40に排出された土砂は大気に開放されて圧力状態がカッターチャンバ14内とは異なるのに対し、第二搬送路53を通過する土砂は圧力状態がカッターチャンバ14内の土砂に近い状態である。このため、第二搬送路53を通過する土砂の性状を測定することで、カッターチャンバ14内の土砂の性状をより精度よく測定することができる。
【0069】
さらに、排出コンベヤ30から排出される土砂には、第二注入機構36から添加剤が注入されるため、排出される土砂は、カッターチャンバ14内の土砂とは性状が異なる。したがって、排出コンベヤ30からベルトコンベヤ40に排出された土砂の性状を測定しても、カッターチャンバ14内の土砂の性状を正確に把握することは困難である。このような場合に対しても、本実施形態では、排出コンベヤ30とは別に取出コンベヤ61によってカッターチャンバ14内の土砂を取り出して性状を測定するため、カッターチャンバ14内の土砂の性状をより正確に把握することができる。
【0070】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内である。また、変形例に示す構成と上記の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0071】
上記実施形態では、シールド掘進機100は、取出機構50によってシールドチャンバから取り出した土砂の循環と性状測定の両方を実行可能に構成される。これに対し、シールド掘進機100は、取出機構50によって取り出した土砂の循環及びサンプリングのいずれか一方のみが実行可能に構成されていてもよい。
【0072】
例えば、
図4に示すように、取出機構50は、第二搬送路53及び測定部70を備えていなくてもよい。この変形例では、取出機構50によって取り出した土砂の性状測定はできないものの、上記実施形態と同様にカッターチャンバ14から取り出した土砂を循環させ、カッターチャンバ14内を撹拌させることができる。
【0073】
また、
図5に示すように、隔壁13には第一開口部13aを設ける一方で第二開口部13bは設けず、取出機構50は、第一取出部60aを備える一方、第二取出部60bを備えていない構成としてもよい。この場合、第一搬送路52は、一端が第一開口部13aに接続され、他端は第二搬送路53の一端と接続される。この変形例では、取出機構50によって取り出した土砂を循環させてカッターチャンバ14内を撹拌させることはできないものの、第一開口部13aを通じて取り出した土砂の性状測定を行うことができる。なお、図示は省略するが、シールド掘進機100は、
図5の変形例とは反対に、第一開口部13aが設けられず、第二開口部13bを通じて取り出した土砂の性状測定を行うように構成されてもよい。また、第一開口部13a及び第一開口部13aに接続される搬送路と、第二開口部13b及び第二開口部13bに接続される搬送路と、をそれぞれ独立して設け、第一開口部13a及び第二開口部13bのそれぞれを通じて取り出した土砂の性状測定を行うように構成されてもよい。この場合、カッターチャンバ14の異なる箇所(上方と下方)から取り出した土砂の性状を同時に連続して把握できるため、カッターチャンバ14内の性状が均一となっているかを容易に把握することができる。
【0074】
また、上記実施形態では、カッターチャンバ14内の土砂を循環させるための第一搬送路52に、土砂の性状を測定するための第二搬送路53が接続される。これに対し、
図6に示すように、第一搬送路52と第二搬送路53とは、互いに接続されず、独立して構成されてもよい。つまり、カッターチャンバ14に開口する第三開口部13cを第一開口部13a及び第二開口部13bとは別に隔壁13に設け、当該第三開口部13cに第二搬送路53を接続してもよい。
【0075】
また、測定部70は、第二搬送路53に設けられるものに限定されない。例えば、測定部70は、第一搬送路52に設けられ、第一搬送路52を通過する土砂の性状を測定するものでもよい。この場合、
図1から
図3に示すように第二搬送路53が設けられる形態において測定部70が第一搬送路52に設けられてもよいし、
図4に示すように第二搬送路53が設けられない形態において測定部70が第一搬送路52に設けられてもよい。また、測定部70は、搬送路51に複数設けられてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、第二搬送路53に測定部70を取り付け、測定部70により土砂の性状を測定する。これに対し、第二搬送路53に設けられる測定部70によらず、第二搬送路53の開口端から土砂を採取して、性状を測定してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、第一取出部60aに対応して第一ポンプ55aが設けられ、第二取出部60bに対応して第二ポンプ55bが設けられる。このように、取出部60付近に対応するポンプ55を設けることで、搬送路51内で土砂を安定して搬送させることができる。これに対し、取出機構50は、第一取出部60a及び第二取出部60bを備える一方、ポンプ55は搬送路51に一つだけ設けられる構成であってもよい。この構成であっても、上記実施形態と同様に、第一開口部13a及び第二開口部13bの一方から取り出された土砂がポンプ55によって吸い込まれ他方に向けて圧送されるため、上記実施系と同様に土砂を循環させることができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0079】
100 シールド掘進機
11 スキンプレート(胴体)
12 カッターヘッド(掘削部)
13 隔壁
13a 第一開口部
13b 第二開口部
14 カッターチャンバ
30 排出コンベヤ(排出機構)
35 第一注入機構(注入機構)
40 ベルトコンベヤ(移送機構)
50 取出機構
51 搬送路
55 ポンプ
55a 第一ポンプ
55b 第二ポンプ
60 取出部
60a 第一取出部
60b 第二取出部
70 測定部