(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122550
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
G05B23/02 V
G05B23/02 302R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030146
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内門 知博
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EA04
3C223EB01
3C223EB02
3C223FF02
3C223FF22
3C223FF26
3C223FF45
(57)【要約】
【課題】プラントの制御システムの性能を向上すること。
【解決手段】制御装置20は、プラントに含まれるフィールド機器10からセンサ値を受信し、センサ値に基づいてプラントの状態を診断し、センサ値に基づいてプラントの制御に用いるプロセス値の算出と、フィールド機器10の状態の診断とを実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象についての設備に含まれるデバイスから第1データを受信する受信部と、
前記第1データに基づいて、前記設備の状態を診断する診断部と、
前記第1データに基づいて、前記設備の制御に用いる第2データの算出と、前記デバイスの状態の診断とを実行する実行部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記受信部は、
前記第1データとして前記デバイスが取得したセンサデータを受信し、
前記診断部は、
前記センサデータに第1周波数特性を有する第1フィルタを適用して得られたデータに基づいて、前記設備の状態を診断し、
前記実行部は、
前記センサデータに第2周波数特性を有する第2フィルタを適用して得られたデータに基づいて、前記第2データとしてプロセスデータを算出し、
前記センサデータにバンドパスフィルタ第3周波数特性を有する第3フィルタを適用して得られたデータに基づいて、前記デバイスの状態を診断する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記設備は、プラントを制御する制御設備であり、
前記デバイスは、前記プラントに設置された、前記プラントの制御に用いられるフィールド機器であり、
前記診断部は、
前記フィールド機器が取得したセンサデータを説明変数、前記プラントの異常の発生有無を目的変数とする機械学習によって生成された機械学習モデルに、前記受信部によって受信された前記センサデータを入力することで、前記プラントの異常の有無を出力する、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記受信部は、
前記センサデータに影響を及ぼす周辺環境データをさらに受信し、
前記診断部は、
前記フィールド機器が取得した前記センサデータおよび前記周辺環境データを説明変数、前記プラントの異常の発生有無を目的変数とする機械学習によって生成された前記機械学習モデルに、前記受信部によって受信された前記センサデータおよび前記周辺環境データを入力することで、前記プラントの異常の有無を出力する、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記設備は、プラントを制御する制御設備であり、
前記デバイスは、前記プラントに設置された、前記プラントの制御に用いられるフィールド機器であり、
前記実行部は、
前記フィールド機器が取得したセンサデータを説明変数、前記フィールド機器の異常の発生有無を目的変数とする機械学習によって生成された機械学習モデルに、前記受信部によって受信された前記センサデータを入力することで、前記フィールド機器の異常の有無を出力する、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記フィールド機器は、圧力センサ機器であり、
前記実行部は、
前記圧力センサ機器が取得した圧力センサデータおよび振動センサデータを説明変数、前記圧力センサ機器の異常の発生確率を目的変数とする機械学習によって生成された前記機械学習モデルに、前記受信部によって受信された前記圧力センサデータおよび前記振動センサデータを入力することで、前記圧力センサ機器の異常の有無を出力する、
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記実行部は、
前記デバイスの個体差を調整するためのデバイスパラメータ、または前記設備の利用者によって調整される利用者パラメータのうち少なくとも1つを用いて、前記第2データとしてプロセスデータを算出する、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項8】
コンピュータが、
制御対象についての設備に含まれるデバイスから第1データを受信し、
前記第1データに基づいて、前記設備の状態を診断し、
前記第1データに基づいて、前記設備の制御に用いる第2データの算出と、前記デバイスの状態の診断とを実行する、
処理を実行する制御方法。
【請求項9】
コンピュータに、
制御対象についての設備に含まれるデバイスから第1データを受信し、
前記第1データに基づいて、前記設備の状態を診断し、
前記第1データに基づいて、前記設備の制御に用いる第2データの算出と、前記デバイスの状態の診断とを実行する、
処理を実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントの運転制御として、フィールド機器と制御装置とを用いた制御システムが知られている。例えば、フィールド機器は、圧力センサ値や振動センサ値などのセンサ値(適宜、「センサデータ」)を収集し、センサ値に基づき圧力値や振動値などのプロセス値(適宜、「プロセスデータ」)の生成や機器診断を実行する。制御装置は、フィールド機器からプロセス値や機器診断結果を取得し、これらに基づいて、プラントの運転制御やプラント全体の異常診断等を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、制御システムの性能を向上することは難しい。例えば、プラントに設置されるフィールド機器のリソースには制限があるので、高分解能のセンサ値を取得しつつ、プロセス値や機器診断結果の精度を高めることは困難である。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、制御システムの性能を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、制御対象についての設備に含まれるデバイスから第1データを受信する受信部と、前記第1データに基づいて、前記設備の状態を診断する診断部と、前記第1データに基づいて、前記設備の制御に用いる第2データの算出と、前記デバイスの状態の診断とを実行する実行部と、を備える制御装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、コンピュータが、制御対象についての設備に含まれるデバイスから第1データを受信し、前記第1データに基づいて、前記設備の状態を診断し、前記第1データに基づいて、前記設備の制御に用いる第2データの算出と、前記デバイスの状態の診断とを実行する、処理を実行する制御方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、コンピュータに、制御対象についての設備に含まれるデバイスから第1データを受信し、前記第1データに基づいて、前記設備の状態を診断し、前記第1データに基づいて、前記設備の制御に用いる第2データの算出と、前記デバイスの状態の診断とを実行する、処理を実行させる制御プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御システムの性能を向上することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る制御システムの構成例および処理例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る制御システムの各装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係るエンジニアリングツールによって作成されるプログラムの一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る制御システムのデータ処理の一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る機器診断処理における機械学習モデルの入力データの具体例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る機器診断処理における機械学習モデルの出力データの具体例を示す図である。
【
図7】実施形態に係るシステム診断処理における機械学習モデルの入力データの具体例1を示す図である。
【
図8】実施形態に係るシステム診断処理における機械学習モデルの入力データの具体例2を示す図である。
【
図9】実施形態に係るシステム診断処理における機械学習モデルの入力データの具体例3を示す図である。
【
図10】実施形態に係るシステム診断処理における機械学習モデルの出力データの具体例を示す図である。
【
図11】参考技術に係る平均化処理によるデータ前処理を説明する図である。
【
図12】実施形態に係るハミング窓FIRフィルタによるデータ前処理の一例を示す図である。
【
図13】実施形態に係る制御システムの制御処理全体の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図14】実施形態の変形例に係る制御システムの各装置の構成例を示すブロック図である。
【
図15】実施形態および実施形態の変形例に係るハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る制御装置、制御方法および制御プログラムを、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではない。
【0012】
〔実施形態〕
以下に、実施形態に係る制御システム1000の構成および処理、制御システム100の各装置の構成および処理、制御システム1000の各処理の具体例、制御システム1000の処理の流れを順に説明し、最後に実施形態の効果を説明する。
【0013】
〔1.制御システム1000の構成および処理〕
図1を用いて、実施形態に係る制御システム1000の構成および処理を詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る制御システム1000の構成例および処理例を示す図である。以下に、制御システム1000全体の構成例、制御システム1000の処理例、参考技術の制御システムの問題点を順に説明し、最後に制御システム1000の効果について説明する。なお、実施形態では、プラントに設置されるデバイスであるフィールド機器10を使用する工場生産遠隔監視を一例にして説明するが、デバイスや利用分野を限定するものではなく、電力モニタ、風力発電、上下水モニタ、河川監視等の環境計測遠隔監視に適用することもできる。
【0014】
(1-1.制御システム1000全体の構成例)
制御システム1000は、複数のフィールド機器10、制御装置20およびエンジニアリングツール30を有する。ここで、フィールド機器10と制御装置20とエンジニアリングツール30とは、図示しない所定の通信網を介して、有線または無線により通信可能に接続される。なお、所定の通信網には、インターネットや専用線等の各種通信網を採用することができる。
【0015】
フィールド機器10は、プラント現場に設置される。また、制御装置20は、プラントを管理するプラント計器室に設置される。なお、
図1に示した制御システム1000には、複数台の制御装置20が含まれてもよい。
【0016】
図1の例では、フィールド機器10が圧力センサ機器によって実現される場合を示したが、温度センサ機器、流量センサ機器、差圧センサ機器、振動センサ機器等であってもよい。また、
図1の例では、制御装置20がサーバ装置によって実現される場合を示したが、DCS(Distributed Control System)、PLC(Programmable Logic Controller)、クラウドシステム等により実現されてもよい。
【0017】
(1-2.制御システム1000全体の処理例)
上記のような制御システム1000全体の処理例について説明する。以下では、設定パラメータ受付処理、センサ値取得処理、センサ値送信処理、入力演算処理、システム診断処理、制御演算処理、制御情報送信処理の順に説明する。なお、下記の処理は、異なる順序で実行することもできる。また、下記の処理のうち、省略される処理があってもよい。
【0018】
(1-2-1.設定パラメータ受付処理)
制御装置20は、エンジニアリング時において、設定パラメータ受付処理を実行する(ステップS1)。例えば、制御装置20は、設定パラメータとして、プログラムや設定パラメータ等のエンジニアリング内容を設定するエンジニアリングツール30を介してユーザ調整パラメータを受け付ける。ここで、ユーザ調整パラメータとは、メンテナンス実施者によってエンジニアリングツール30を介して、プロセス値等の入力演算結果を確認しながら所望の入力演算結果となるように調整されたパラメータである。
【0019】
また、制御装置20は、設定パラメータとして、工場調整パラメータを製造工場データベース(不図示)からダウンロードすることによって受け付ける。ここで、工場調整パラメータとは、フィールド機器10の製造工場の校正作業で算出されたセンサ個体差を補正するパラメータであって、後述するプロセス値算出処理に利用されるパラメータである。
【0020】
(1-2-2.センサ値取得処理)
フィールド機器10は、通常動作時において、センサ値取得処理を実行する(ステップS2)。ここで、センサ値とは、フィールド機器10が取得するプラントの稼働に関する情報であって、圧力センサ値、温度センサ値、流量センサ値、差圧センサ値、振動センサ値等のセンサ生値である。例えば、圧力センサ機器であるフィールド機器10aは、プラントにおいて、圧力センサ値を1ミリ秒ごとに取得する。また、振動センサ機器であるフィールド機器10bは、プラントにおいて、振動センサ値を1ミリ秒ごとに取得する。
【0021】
(1-2-3.センサ値送信処理)
フィールド機器10は、通常動作時において、センサ値送信処理を実行する(ステップS3)。例えば、圧力センサであるフィールド機器10aは、64ミリ秒単位でバッファリングした圧力センサ値を制御装置20に送信する。また、振動センサであるフィールド機器10bは、64ミリ秒単位でバッファリングした振動センサ値を制御装置20に送信する。
【0022】
(1-2-4.入力演算処理)
制御装置20は、通常動作時において、入力演算処理を実行する(ステップS4)。例えば、制御装置20は、以下のように汎用演算処理、および機器固有演算処理を実行する。
【0023】
(1-2-4-1.汎用演算処理)
制御装置20は、通常動作時において、汎用演算処理を実行する。例えば、制御装置20は、受信したセンサ値にFIR(Finite Impulse Response)フィルタ処理を適用することによって、データ前処理を実行する。このとき、制御装置20は、FIRフィルタ処理として、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、ハイパスフィルタ等を適用することによって、データ前処理を実行する。
【0024】
(1-2-4-2.機器固有演算処理)
制御装置20は、通常動作時において、機器固有演算処理を実行する。例えば、制御装置20は、機器固有演算処理の1つであるプロセス値演算処理として、フィルタ処理後のセンサ値からプロセス値を生成する。ここで、プロセス値とは、センサ値から生成されるプラントの制御に用いられる情報であって、例えば圧力値、温度値、流量値、差圧値、振動値等の算出値である。
【0025】
また、制御装置20は、機器固有演算処理の1つである機器診断処理として、フィルタ処理後のセンサ値からフィールド機器10の状態を診断し、機器診断結果を生成する。ここで、機器診断結果とは、フィールド機器10等のデバイスの状態を示す情報であって、例えばデバイスが異常状態であれば「1」、デバイスが正常状態であれば「0」等の判定結果で表わされる。このとき、制御装置20は、フィルタ処理後の複数のセンサ値を用いてフィールド機器10の状態を診断し、機器診断結果を生成してもよい。例えば、制御装置20は、フィルタ処理後の圧力センサ値および振動センサ値を用いて、圧力センサであるフィールド機器10aの異常の有無を判定してもよい。また、制御装置20は、フィルタ処理後のセンサ値を説明変数、フィールド機器10の異常の発生確率を目的変数とする機械学習により生成された機械学習モデルを用いて、機器診断結果を生成してもよい。
【0026】
(1-2-5.システム診断処理)
制御装置20は、通常動作時において、システム診断処理を実行する(ステップS5)。例えば、制御装置20は、フィルタ処理後のセンサ値と周辺情報(適宜、「周辺環境データ」)とを用いてプラントの状態を診断し、システム診断結果を生成する。ここで、周辺情報とは、センサ値の取得に影響を及ぼす環境に関する情報であって、例えばプラント周辺の気象情報やプラント周辺で実施されている工事に関する情報等である。このとき、制御装置20は、フィルタ処理後のセンサ値と周辺情報とを説明変数、プラントの異常の発生確率を目的変数とする機械学習により生成された機械学習モデルを用いて、システム診断結果を生成してもよい。
【0027】
(1-2-6.制御演算処理)
制御装置20は、通常動作時において、制御演算処理を実行する(ステップS6)。例えば、制御装置20は、プロセス値を用いて制御情報(適宜、「制御データ」)を生成する。ここで、制御情報とは、プラントのフィールド機器10を制御するための情報であって、アクチュエータ等の出力系のフィールド機器10を制御する制御信号等である。
【0028】
(1-2-7.制御情報送信処理)
制御装置20は、通常動作時において、制御情報送信処理を実行する(ステップS7)。例えば、制御装置20は、生成した制御情報をアクチュエータ等の出力系のフィールド機器10に送信し、フィールド機器10を制御する。
【0029】
(1-3.制御システム1000の効果)
以下では、参考技術の概要および問題点について説明した上で、制御システム1000の効果について説明する。
【0030】
(1-3-1.参考技術の概要)
参考技術に係る制御システム1000Pでは、以下のような制御処理が実行される。第1に、参考技術に係るフィールド機器10Pは、プラントにおいて、圧力センサ値、温度センサ値、流量センサ値、差圧センサ値、振動センサ値等のセンサ値を取得する。第2に、フィールド機器10Pは、フィールド機器10Pに保存されている工場調整パラメータ等の設定パラメータを取得する。第3に、フィールド機器10Pは、機器固有演算処理を実行する。このとき、フィールド機器10Pは、センサ値からプロセス値を生成し、保存する。また、フィールド機器10Pは、センサ値からフィールド機器10P自体の状態の診断、すなわち機器診断を実行し、機器診断結果を保存する。第4に、フィールド機器10Pは、機器固有演算結果であるプロセス値や機器診断結果を、参考技術に係る制御装置20Pに送信する。
【0031】
第5に、制御装置20Pは、プロセス値や機器診断結果等の機器固有演算結果を受信する。第6に、制御装置20Pは、受信したプロセス値を用いてプラントの状態を診断し、診断結果を保存する。第7に、制御装置20Pは、プロセス値を用いて制御情報を生成し、制御情報を保存する。第8に、制御装置20Pは、生成した制御情報をアクチュエータ等の出力系のフィールド機器10Pに送信し、フィールド機器10Pを制御する。
【0032】
(1-3-2.参考技術の制御処理の問題点)
上記の参考技術のように、フィールド機器10Pによって生成されたプロセス値や機器診断結果を用いた制御処理には、以下の問題点がある。第1に、参考技術の制御処理では、空間(サイズ)、規格、コスト等の制約により、フィールド機器10Pの電力およびハードウェアリソースが制限されるという問題点がある。例えば、参考技術の制御処理では、演算機能や診断機能のパフォーマンスが制限される。また、参考技術の制御処理では、フィールド機器10Pに演算や診断等の処理があることで、センサ値取得処理に利用できるリソースが少なくなる。また、参考技術の制御処理では、フィールド機器10Pの電力およびハードウェアリソースに制限があるので、機能拡張や追加用にリソースを確保することができず、製品開発後の機能拡張や追加が容易でない。すなわち、参考技術の制御処理では、プロセスオートメーションの現場においてDX(digital transformation)対応が求められているのに対して、その対応のために必要なセンサ値の多種類化や分解能改善をするためのリソースも確保できない。
【0033】
第2に、参考技術の制御処理では、機能追加、修正、変更等のメンテナンス作業にコスト(時間、費用)がかかるという問題点がある。例えば、制御システム1000Pの利用者やメンテナンス実施者にとっては、参考技術の制御処理では、仮にフィールド機器10Pに機能を多く搭載できたとしても、搭載する機能が多くなると、その分だけ機能の追加、修正、変更の機会が増えることになる。すなわち、参考技術の制御処理では、機器交換もしくはファームウェアアップデートにより、機器ファームウェアを変更することは可能であるが、機器台数に比例して対応コスト(時間、費用)がかかる。一方、制御システム1000Pの開発者にとっては、参考技術の制御処理では、機能追加、修正、変更等のために実施する機器ファームウェアの開発は、品質確保を優先するために、組み込み機器のファームウェア全体のテスト(規格認証等も含む)が必要となり、コストがかかる大がかりな開発となりやすい。
【0034】
(1-3-3.制御システム1000の概要)
実施形態に係る制御システム1000では、以下のような制御処理が実行される。第1に、制御装置20は、設定パラメータ受付処理を実行する。第2に、フィールド機器10は、センサ値取得処理を実行する。第3に、フィールド機器10は、センサ値送信処理を実行する。第4に、制御装置20は、入力演算処理を実行する。このとき、制御装置20は、入力演算処理として、汎用演算処理、および機器固有演算処理(プロセス値演算処理、機器診断処理)を実行する。第5に、制御装置20は、システム診断処理を実行する。第6に、制御装置20は、制御演算処理を実行する。第7に、制御装置20は、制御情報送信処理を実行する。
【0035】
(1-3-4.制御システム1000の効果)
実施形態に係る制御システム1000では、以下のような制御機能や診断機能であるシステム性能を向上する効果、およびメンテナンス性を向上する効果がある。
【0036】
(システム性能向上)
第1に、制御システム1000の制御装置20では、フィールド機器10と比較して電力やハードウェアリソースの制約が厳しくないので、フィールド機器10より高速かつ高精度に演算でき、プロセス値精度の向上、プロセス値更新周期の短縮、異常診断や予知診断性能の向上を実現できる。特に、制御システム1000は、プロセス値精度向上の具体例として、CPU(Central Processing Unit)クロックを上げることによってタイマの時間分解能を高められ、かつパルス幅の測定精度が上がるので、高精度な測定であってタイマ時間分解能が必要となる測定で有効である。
【0037】
第2に、制御システム1000のフィールド機器10は、プロセス値演算、機器診断等の演算処理を行わないので、センサ値取得処理に対して電力およびハードウェアリソースを利用できる。そのため、制御システム1000は、センサデータ分解能を高めたり、センサ値更新周期を速めたりできるので、プロセス値精度の向上、プロセス値更新周期の短縮、異常診断や予知診断性能の向上を実現できる。
【0038】
第3に、制御システム1000は、複数のフィールド機器10のセンサ値を活用することで、より高度な診断が可能となる。例えば、制御装置20は、圧力センサ機器である「フィールド機器1」からの圧力センサ値と振動センサ機器である「フィールド機器2」からの振動センサ値とを用いて、「フィールド機器1」のセンサ故障診断を行うこともできる。すなわち、制御システム1000は、圧力センサ故障診断に振動等の周辺情報が加わることで、周辺環境の影響による誤判定率を低減でき、診断性能を高められる。
【0039】
(メンテナンス性向上)
第1に、制御システム1000は、機器固有演算機能(プロセス値演算機能、機器診断機能)の追加、修正、変更等が必要になった際に、フィールド機器10ごとに対応する必要はなく制御装置20で対応するのみでよいので、追加、修正、変更等が容易である。
【0040】
第2に、制御システム1000は、設定パラメータを制御装置20が保持しているので、機器交換時にパラメータ移行作業が不要で、機器交換が容易となる。
【0041】
第3に、制御システム1000は、制御装置20の診断機能(異常診断機能、予知診断機能等)の追加、修正、変更等が必要になった際に、フィールド機器10ごとに対応する必要はなく制御装置20で対応するのみでよいので、追加、修正、変更等が容易である。なお、診断機能は、利用者、利用環境、技術変化等によって要求は変わってくるので、診断機能の拡張容易性は重要である。
【0042】
第4に、制御システム1000は、フィールド機器10の機能が少なくなるので、フィールド機器10の内部の部品数を少なくでき、部品改廃リスクを低減できる。また、制御システム1000は、フィールド機器10の部品数が少なくなることで、コスト削減、省電力化、小型化等にも寄与する。そして、制御システム1000は、フィールド機器10の省電力化、小型化等を可能とすることによって、防爆設計の難易度を緩和する。
【0043】
〔2.制御システム1000の各装置の構成および処理〕
図2を用いて、
図1に示した制御システム1000が有する各機器の構成および処理について説明する。
図2は、実施形態に係る制御システム1000の各装置の構成例を示すブロック図である。以下では、実施形態に係る制御システム1000全体の構成例を説明した上で、フィールド機器10の構成例および処理例、制御装置20の構成例および処理例、ならびにエンジニアリングツール30の構成例および処理例を詳細に説明する。
【0044】
(2-1.制御システム1000全体の構成例)
図2を用いて、プラント等のシステムを制御する制御システム1000全体の構成例について説明する。
図2に示すように、制御システム1000は、フィールド機器10(10a、10b)、制御装置20およびエンジニアリングツール30を有する。制御装置20は、フィールド機器10およびエンジニアリングツール30と、所定の通信網によって通信可能に接続されている。
【0045】
(2-2.制御システム1000全体の処理例)
図3および
図4を用いて、プラント等のシステムを制御する制御システム1000全体の処理例について説明する。以下では、制御システム1000の制御装置20によって実行されるプログラム、および制御システム1000のデータ処理について説明する。
【0046】
図3を用いて、制御装置20がエンジニアリングツール30から取得するエンジニアリング内容の1つであるプログラムについて説明する。
図3は、実施形態に係るエンジニアリングツール30によって作成されるプログラムの一例を示す図である。
【0047】
図3(1)の例に示すプログラムでは、制御装置20は、プラントにおいてフィールド機器10から差圧センサ値(Fc、Fr)を受信し、プラント周辺の気象情報や工事情報等の周辺環境に関する周辺情報をさらに受信し、差圧センサ値および周辺情報を用いて「診断1」を実行する。このとき、制御装置20は、周辺情報をフィールド機器10から受信してもよいし、インターネット上から受信してもよい。すなわち、
図3(1)の例に示すプログラムは、フィールド機器10から差圧センサ値等のセンサ値を受信し、センサ値に影響を及ぼす周辺環境に関する気象情報や工事情報等の周辺情報を受信し、受信したセンサ値および周辺情報をもとにプラントの異常の有無の判定等のシステムの状態を診断する処理を実行する。
【0048】
図3(2)の例に示すプログラムでは、制御装置20は、プラントにおいてフィールド機器10から差圧センサ値(Fc、Fr)を受信し、差圧センサ値を用いて「プロセス値演算」を実行し、「機器診断」を実行し、「制御演算」を実行し、「出力(制御対象用)」を実行する。すなわち、
図3(2)の例に示すプログラムは、フィールド機器10から差圧センサ値等のセンサ値を受信し、センサ値をもとに差圧値等のプロセス値を算出し、センサ値をもとにプラントの異常の有無の判定等のシステムの状態を診断し、プロセス値をもとにプラントのフィールド機器10を制御するための制御情報(制御データ)を生成する。
【0049】
図3(3)の例に示すプログラムでは、制御装置20は、プラントにおいてフィールド機器10から振動センサ値を受信し、差圧センサ値および振動センサ値を用いて「診断2」を実行する。すなわち、
図3(3)の例に示すプログラムは、フィールド機器10から差圧センサ値や振動センサ値等の複数のセンサ値を受信し、受信した複数のセンサ値をもとにプラントの異常の有無の判定等のシステムの状態を診断する処理を実行する。
【0050】
図4を用いて、制御システム1000のデータ処理について説明する。
図4は、実施形態に係る制御システム1000のデータ処理の一例を示す図である。
【0051】
図4(1)の例に示すデータ処理では、フィールド機器10は、プラントにおいてセンサ値を取得する。このとき、フィールド機器10は、更新周期1ミリ秒でセンサ値を取得する。また、フィールド機器10は、更新周期64ミリ秒で64個のセンサ値をバッファリングする。このとき、フィールド機器10は、参考技術に係るフィールド機器と比較して、より早い更新周期でセンサ値を取得することができる。
【0052】
図4(2)~(4)の例に示すデータ処理では、フィールド機器10および制御装置20は、フィールド通信を実行する。このとき、フィールド機器10は、バッファリングした64個のセンサ値を制御装置20に送信する。また、制御装置20は、更新周期64ミリ秒で送信された64個のセンサ値を取得する。
【0053】
図4(5)の例に示すデータ処理では、制御装置20は、汎用演算(FIRフィルタ処理)として、更新周期64ミリ秒でローパスフィルタを適用してセンサ値を前処理する。このとき、制御装置20は、1/64の間隔でデータを間引く(ダウンサンプリング)。
【0054】
図4(6)の例に示すデータ処理では、制御装置20は、
図4(5)の処理で前処理されたデータを用いて、機器固有演算としてプロセス値演算を実行する。このとき、制御装置20は、更新周期64ミリ秒でプロセス値を算出し、算出したプロセス値を用いて制御情報を生成する制御演算を実行する。
【0055】
図4(7)の例に示すデータ処理では、制御装置20は、汎用演算(FIRフィルタ処理)として、更新周期1ミリ秒でバンドパスフィルタを適用してデータを前処理する。このとき、制御装置20は、前処理したセンサ値を用いて機器の状態を診断する機器診断を実行する。
【0056】
図4(8)の例に示すデータ処理では、制御装置20は、汎用演算(FIRフィルタ処理)として、更新周期1ミリ秒でハイパスフィルタを適用してデータを前処理する。このとき、制御装置20は、前処理したセンサ値を用いてシステムの状態を診断するシステム診断を実行する。
【0057】
(2-3.フィールド機器10の構成例および処理例)
図2を用いて、プラントに設置される、プラントの運用に用いられるデバイスであるフィールド機器10の構成例および処理例について説明する。以下では、フィールド機器10として、フィールド機器10aの構成例および処理例について説明するが、フィールド機器10bも同様である。フィールド機器10は、センサ100、デジタル変換部110、制御部120、記憶部130および通信部140を有する。なお、フィールド機器10は、フィールド機器10の管理者等から各種操作を受け付ける入力部(例えば、キーボードやマウス等)や、各種情報を表示するための表示部(例えば、液晶ディスプレイ等)を有してもよい。
【0058】
(2-3-1.センサ100)
センサ100は、圧力センサ、温度センサ、流量センサ、差圧センサ、振動センサ等で実現され、当該フィールド機器10へ入力されたアナログ信号を検出する。
【0059】
(2-3-2.デジタル変換部110)
デジタル変換部110は、アナログ-デジタル変換回路等で実現され、センサ100が検出したアナログ信号をデジタル信号に変換する。また、デジタル変換部110は、パルスカウンタ等で実現され、センサ100が検出したパルス信号をデジタル信号に変換する。
【0060】
(2-3-3.制御部120)
制御部120は、当該フィールド機器10全体の制御を司る。制御部120は、取得部121を有する。ここで、制御部120は、例えば、CPUやMPU(Micro Processing Unit)等の電子回路やASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現され得る。
【0061】
(2-3-3-1.取得部121)
取得部121は、センサ値を取得する。例えば、取得部121は、センサ100によって検出され、デジタル変換部110によって変換された、圧力センサ値、温度センサ値、流量センサ値、差圧センサ値、振動センサ値等のセンサ値のデジタル信号を取得する。なお、取得部121は、取得したセンサ値を記憶部130に格納する。
【0062】
具体的な例について説明すると、取得部121は、圧力センサであるセンサ100によって検出され、デジタル変換部110によって変換された圧力センサ値を、{#1:「圧力センサ値PS001」,#2:「圧力センサ値PS002」,#3:「圧力センサ値PS003」,#4:「圧力センサ値PS004」,#5:「圧力センサ値PS005」,#6:「圧力センサ値PS006」,・・・}を1ミリ秒ごとに取得し、センサ値131として記憶部130に格納する。
【0063】
(2-3-4.記憶部130)
記憶部130は、制御部120が動作する際に参照する各種情報や、制御部120が動作した際に取得した各種情報を記憶する。記憶部130は、センサ値131を記憶する。ここで、記憶部130は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置等で実現され得る。なお、
図2の例では、記憶部130は、フィールド機器10の内部に設置されているが、フィールド機器10の外部に設置されてもよいし、複数の記憶部が設置されていてもよい。
【0064】
(2-3-4-1.センサ値131)
センサ値131は、取得部121によって取得されたセンサ値である。例えば、センサ値131は、圧力センサ値、温度センサ値、流量センサ値、差圧センサ値、振動センサ値等のセンサ値のデジタル信号である。
【0065】
具体的な例について説明すると、センサ値131は、圧力センサであるセンサ100によって検出され、デジタル変換部110によって変換された圧力センサ値{#1:「圧力センサ値PS001」,#2:「圧力センサ値PS002」,#3:「圧力センサ値PS003」,#4:「圧力センサ値PS004」,#5:「圧力センサ値PS005」,#6:「圧力センサ値PS006」,・・・}である。
【0066】
(2-3-5.通信部140)
通信部140は、他の装置との間でのデータ通信を司る。例えば、通信部140は、ルータ等を介して、制御装置20の通信部250bとの間でフィールド通信40を行う。また、通信部140は、図示しないオペレータの端末との間でデータ通信を行うことができる。
【0067】
具体的な例について説明すると、通信部140は、64ミリ秒単位でバッファリングした圧力センサ値{#1:「圧力センサ値PS001」,#2:「圧力センサ値PS002」,#3:「圧力センサ値PS003」,#4:「圧力センサ値PS004」,#5:「圧力センサ値PS005」,#6:「圧力センサ値PS006」,・・・}を、制御装置20に送信する。
【0068】
(2-4.制御装置20の構成例および処理例)
図2を用いて、プラントに設置されるフィールド機器10の制御を司る制御装置20の構成例および処理例について説明する。制御装置20は、制御部200、記憶部240および通信部250を有する。なお、制御装置20は、制御装置20の管理者等から各種操作を受け付ける入力部(例えば、キーボードやマウス等)や、各種情報を表示するための表示部(例えば、液晶ディスプレイ等)を有してもよい。
【0069】
(2-4-1.制御部200)
制御部200は、当該制御装置20全体の制御を司る。制御部200は、入力演算部210、制御演算部220および診断部230を有する。ここで、制御部200は、例えば、CPUやMPU等の電子回路やASICやFPGA等の集積回路により実現され得る。
【0070】
(2-4-3-1.入力演算部210)
入力演算部210は、各種情報を受け付ける受付部として機能する。また、入力演算部210は、各種情報を受信する受信部として機能する。また、入力演算部210は、各種情報を取得する取得部として機能する。また、入力演算部210は、固有機器演算部211および汎用演算部212を有し、各種処理を実行する実行部として機能する。
【0071】
(各種情報受付処理)
入力演算部210は、エンジニアリング時に、エンジニアリングツール30から通信部250aを介してデータ通信41に含まれるプログラムを受け付ける。例えば、入力演算部210は、エンジニアリングツール30を使用してプラントを管理するプラント管理者によって作成されたプログラムを受け付け、制御部200を実行させるプログラムとして設定する。
【0072】
入力演算部210は、エンジニアリング時に、エンジニアリングツール30から通信部250aを介してデータ通信41に含まれる設定パラメータを受け付ける。例えば、入力演算部210は、デバイスの個体差を調整するためのデバイスパラメータである工場調整パラメータを製造工場データベースからダウンロードすることによって受け付け、機器固有情報241として記憶部240に格納する。また、入力演算部210は、設定パラメータとして、エンジニアリングツール30を介して、システムの利用者によって調整される利用者パラメータであるユーザ調整パラメータを受け付け、機器固有情報241として記憶部240に格納する。
【0073】
ここで、入力演算部210が受け付ける設定パラメータについて説明する。設定パラメータは、記憶部240によって記憶される機器固有情報241の情報であって、工場調整パラメータおよびユーザ調整パラメータの2種類がある。設定パラメータは、「プロセス値演算」に用いられるパラメータである。実施形態に係る制御システム1000では、フィールド機器10が設定パラメータを保持しないので、制御装置20が設定パラメータの取得や設定を実行することができる。
【0074】
すなわち、入力演算部210は、エンジニアリング時に、工場の校正作業で算出されたセンサ個体差を補正するデバイスパラメータであって、プロセス値算出に利用する工場調整パラメータを、製造工場データベース等よりダウンロードする。なお、参考技術では、工場調整パラメータは、フィールド機器10ごとに書き込まれる。
【0075】
また、入力演算部210は、エンジニアリング時に、機器固有情報241の確認、変更等ができるエンジニアリングツール30を介してユーザ調整パラメータを受け付ける。このとき、メンテナンス実施者等は、エンジニアリングツール30を接続し、プロセス値等の入力演算結果を確認しながら、所望の入力演算結果となるようにユーザ調整パラメータの調整を行う。
【0076】
一方、入力演算部210は、通常動作時、すなわち制御処理時には、記憶部240の機器固有情報241を参照し、設定パラメータ(工場調整パラメータ、ユーザ調整パラメータ)を取得する。
【0077】
(各種情報受信処理)
入力演算部210は、制御対象についての設備に含まれるデバイスから第1データを受信する。例えば、入力演算部210は、第1データとしてデバイスが測定したセンサデータ(センサ値)を受信する。また、入力演算部210は、さらにセンサデータに影響を及ぼす周辺環境データ(周辺情報)を受信する。このとき、入力演算部210は、フィールド機器10(10a、10b)から通信部250bを介してフィールド通信40に含まれるセンサ値、周辺情報等を取得する。なお、入力演算部210は、受信したセンサ値および周辺情報を記憶部240の機器固有情報241として格納する。
【0078】
具体的な例について説明すると、入力演算部210は、フィールド機器10aから64ミリ秒ごとに圧力センサ値{#1:「圧力センサ値PS001」,#2:「圧力センサ値PS002」,#3:「圧力センサ値PS003」,#4:「圧力センサ値PS004」,#5:「圧力センサ値PS005」,#6:「圧力センサ値PS006」,・・・}を受信し、記憶部240の機器固有情報241のうち、フィールド機器10aから受信した機器固有情報241aのセンサ値として格納する。また、入力演算部210は、フィールド機器10bから64ミリ秒ごとに振動センサ値{#1:「振動センサ値VS001」,#2:「振動センサ値VS002」,#3:「振動センサ値VS003」,#4:「振動センサ値VS004」,#5:「振動センサ値VS005」,#6:「振動センサ値VS006」,・・・}を受信し、記憶部240の機器固有情報241のうち、フィールド機器10bから受信した機器固有情報241bのセンサ値として格納する。
【0079】
(固有機器演算処理)
入力演算部210の固有機器演算部211は、デバイスに関する固有機器演算処理を実行する。例えば、固有機器演算部211は、プロセス値算出処理を実行する。また、固有機器演算部211は、機器診断処理を実行する。
【0080】
(固有機器演算処理1:プロセス値算出処理)
固有機器演算部211は、デバイスから受信した第1データに基づいて、デバイスを含む設備の制御に用いる第2データとしてプロセスデータ(プロセス値)の算出を実行する。このとき、固有機器演算部211は、デバイスが取得したセンサデータ(センサ値)にローパスフィルタ等の第2周波数特性を有する第2フィルタを適用して得られたデータに基づいて、プロセス値を算出する。また、固有機器演算部211は、デバイスの個体差を調整するためのデバイスパラメータである工場調整パラメータ、またはシステムの利用者によって調整される利用者パラメータであるユーザ調整パラメータのうち少なくとも1つを用いて、プロセス値を算出する。なお、固有機器演算部211は、算出したプロセス値を記憶部240の機器固有情報241の入力演算結果として格納する。
【0081】
(固有機器演算処理2:機器診断処理)
固有機器演算部211は、デバイスから受信した第1データに基づいて、設備に含まれるデバイスの状態の診断を実行する。このとき、固有機器演算部211は、デバイスが取得したセンサ値にバンドパスフィルタ等の第3周波数特性を有する第3フィルタを適用して得られたデータに基づいて、デバイスの状態を診断する。なお、固有機器演算部211は、センサ値にローパスフィルタ、ハイパスフィルタ等を適用して得られたデータに基づいて、デバイスの状態を診断してもよい。
【0082】
固有機器演算部211は、フィールド機器10が取得したセンサ値を説明変数、フィールド機器10の異常の発生有無(0,1)を目的変数とする機械学習によって生成された機械学習モデルに、受信したセンサ値を入力することで、フィールド機器10の異常の有無を出力する。例えば、固有機器演算部211は、シリコンレゾナント圧力センサ機器等のフィールド機器10が取得した圧力センサ値および振動センサ値を説明変数、フィールド機器10の異常の発生有無(0,1)を目的変数とする機械学習によって生成された機械学習モデルに、受信した圧力センサ値および振動センサ値を入力することで、フィールド機器10の異常の有無を出力する。
【0083】
ここで、
図5および
図6を用いて、上記の機械学習モデルを用いた機器診断処理の入力データおよび出力データについて説明する。
図5は、実施形態に係る機器診断処理における機械学習モデルの入力データの具体例を示す図である。
図6は、実施形態に係る機器診断処理における機械学習モデルの出力データの具体例を示す図である。
【0084】
図5を用いて、機器診断処理として、圧力センサ機器の異常検出処理等における機械学習モデルの入力データについて説明する。
図5の例において、機器診断処理における機械学習モデルの入力データ(教師データ)は、フィールド機器10aが取得した圧力センサ値である「x1(機器1圧力センサ値)」、フィールド機器10aの近くに設置されるフィールド機器10bが取得した振動センサ値である「x2(機器2振動センサ値)」、出力する正解値(正解データ)である「yt(出力 正解値)」の組合せで構成される。ここで、「x1(機器1圧力センサ値)」の値は、圧力センサ値であるデジタル信号強度を示す。また、「x2(機器2振動センサ値)」の値は、振動センサ値であるデジタル信号強度を示す。また、「yt(出力 正解値)」の値は、「0」が正常状態、「1」が異常状態を示す。
【0085】
すなわち、
図5では、{x1(機器1圧力センサ値):「10」,x2(機器2振動値):「2」,yt(出力 正解値):「0」}、{x1(機器1圧力センサ値):「15」,x2(機器2振動値):「4」,yt(出力 正解値):「0」}、{x1(機器1圧力センサ値):「120」,x2(機器2振動センサ値):「2」,yt(出力 正解値):「0」}、{x1(機器1圧力センサ値):「130」,x2(機器2振動センサ値):「4」,yt(出力 正解値):「0」}、{x1(機器1圧力センサ値):「1000」,x2(機器2振動センサ値):「100」,yt(出力 正解値):「0」}、{x1(機器1圧力センサ値):「1000」,x2(機器2振動センサ値):「3」,yt(出力 正解値):「1」}等が含まれる入力データの例が示されている。例えば、上記の入力データにおいて、圧力センサ値が大きい場合でも(例:「1000」)、振動センサ値も大きければ(例:「100」)、圧力センサ機器であるフィールド機器10aは異常状態ではない(例:「0」)と正解値がラベリングされている。
【0086】
上記の入力データで訓練することによって生成された機械学習モデルは、圧力センサ値および振動センサ値の入力に応じて、圧力センサ機器であるフィールド機器10aの異常の有無の「yp(出力 確率値)」および「判定結果」を出力する。
【0087】
図6を用いて、機器診断処理として、圧力センサ機器の異常検出処理等における機械学習モデルの出力データについて説明する。
図6の例において、機器診断処理における機械学習モデルの出力データ(機器診断結果)は、フィールド機器10aが取得した圧力センサ値である「x1(機器1圧力センサ値)」、フィールド機器10aの近くに設置されるフィールド機器10bが取得した振動センサ値である「x2(機器2振動センサ値)」、機器診断結果である「yp(出力 確率値)」、機器診断結果である「判定結果」の組合せで構成される。ここで、「x1(機器1圧力センサ値)」の値は、圧力センサ値であるデジタル信号強度を示す。また、「x2(機器2振動センサ値)」の値は、振動センサ値であるデジタル信号強度を示す。また、「yp(出力 確率値)」の値は、0≦yp≦1となる確率値を示す。また、「判定結果」の値は、「0」が正常状態、「1」が異常状態を示す。
【0088】
すなわち、
図6では、{x1(機器1圧力センサ値):「12」,x2(機器2振動センサ値):「2」,yp(出力 確率値):「0.01」,判定結果:「0」}、{x1(機器1圧力センサ値):「14」,x2(機器2振動センサ値):「4」,yp(出力 確率値):「0.02」,判定結果:「0」}、{x1(機器1圧力センサ値):「125」,x2(機器2振動センサ値):「2」,yp(出力 確率値):「0.2」,判定結果:「0」}、{x1(機器1圧力センサ値):「135」,x2(機器2振動センサ値):「4」,yp(出力 確率値):「0.23」,判定結果:「0」}、{x1(機器1圧力センサ値):「1004」,x2(機器2振動センサ値):「100」,yp(出力 確率値):「0.22」,判定結果:「0」}、{x1(機器1圧力センサ値):「1004」,x2(機器2振動センサ値):「3」,yp(出力 確率値):「0.88」,判定結果:「1」}等が含まれる出力データの例が示されている。
【0089】
上記の入力データで訓練することによって生成された2値分類の訓練済みの機械学習モデルは、「x1(機器1圧力センサ値)」および「x2(機器2振動センサ値)」の入力に応じて、「yp(出力 確率値)」を出力し、yp≧0.5であれば「判定結果」を「1」とし、圧力センサ機器であるフィールド機器10aを異常状態と出力する。
【0090】
上記の
図6の入力データを用いた機械学習を行うことによって、機器診断処理においてフィールド機器10の故障の検出精度を向上することができる。
【0091】
(汎用演算処理)
入力演算部210の汎用演算部212は、データに関する汎用演算処理を実行する。例えば、汎用演算部212は、最大最小判定処理を実行する。また、汎用演算部212は、フィルタ処理を実行する。
【0092】
(汎用演算処理1:最大最小判定処理)
汎用演算部212は、デバイスから受信したデータのうち、最大値および最小値の判定を実行する。このとき、汎用演算部212は、デバイスから受信したデータの最大値が所定の上限値以上の場合には、当該データを不適切なデータとして削除する。また、汎用演算部212は、デバイスから受信したデータの最小値が所定の下限値以下の場合には、当該データを不適切なデータとして削除する。
【0093】
(汎用演算処理2:フィルタ処理)
汎用演算部212は、デバイスが取得したセンサ値にローパスフィルタ等の第2周波数特性を有する第2フィルタを適用して、前処理を実行する。また、汎用演算部212は、デバイスが取得したセンサ値にバンドパスフィルタ等の第3周波数特性を有する第3フィルタを適用して、前処理を実行する。汎用演算部212は、デバイスが取得したセンサ値にハイパスフィルタ等の第1周波数特性を有する第1フィルタを適用して、前処理を実行する。
【0094】
ここで、
図11および
図12、ならびに下記(1)式および(2)式に表わす数式を用いて、汎用演算部212が実行するデータの前処理について説明する。
図11は、参考技術に係る平均化処理によるデータ前処理を説明する図である。
図12は、実施形態に係るハミング窓FIRフィルタによるデータ前処理の一例を示す図である。
【0095】
下記(1)式は、FIRフィルタによるデータ前処理の一般式を示す。
【0096】
【0097】
下記(2)式は、移動平均フィルタによるデータ前処理の一般式を示す。
【0098】
【0099】
なお、上記(1)式および(2)式において、「K」は、フィルタ次数を表わす。
【0100】
まず、参考技術に係る平均化処理によるデータ前処理について説明する。参考技術ではCPUリソースに限りがあるので、データ前処理には「平均化処理」がよく用いられる。その理由は、FIRフィルタの一般式である上記(1)式において、平均化処理では、フィルタ係数h[]をメモリで保持する必要がなく、全配列を加算した後にデータサイズで除算することで平均化処理を適用できるためである。しかしながら、上記の平均化処理は、CPUリソース(メモリ容量、CPUプロセス数)を節約できる半面、
図11に示すように、周波数特性において阻止域で比較的大きいリップルが発生する。
【0101】
一方、実施形態に係る制御装置20では、CPUリソースの問題は少ないので、一般のFIRフィルタ(ハミング窓FIRフィルタ)を実装でき、上記の平均化処理よりもよい周波数特性を有するフィルタを設計できる。
【0102】
例えば、差圧伝送器では、電気的ノイズや機器が振動することによる高周波ノイズが、センサ値に乗ることがある。参考技術の平均化処理では、高周波ノイズを除去しようとした場合、阻止域のリップルの影響で本来除去したい高周波ノイズ成分が残ってしまい(
図11参照)、圧力値等のプロセス値の精度低下を招く。一方、実施形態に係る制御装置20では、ハミング窓FIRフィルタ等の一般のFIRフィルタを用いることによって阻止域リップルはほとんど発生しておらず、高周波ノイズ成分をきれいに除去できるので(
図12参照)、圧力値等のプロセス値の精度が向上できる。
【0103】
また、フィールド機器10と制御装置20とで搭載されるCPUパフォーマンスに違いがあるので、圧力値等のプロセス値の精度が向上できる。
【0104】
(2-4-3-2.制御演算部220)
制御演算部220は、プロセス値に基づいて、制御演算を実行する。例えば、制御演算部220は、プロセス値として算出された圧力値が所定値を超過する場合には、圧力値を抑制するようにアクチュエータ等のフィールド機器10を制御する制御情報を生成し、対応するフィールド機器10に送信する。また、制御演算部220は、上述した入力演算部210の固有機器演算部211によってフィールド機器10の異常が判定された場合や、後述する診断部230によってプラントの異常が判定された場合には、対応する異常を抑制するようにアクチュエータ等のフィールド機器10を制御する制御情報を生成し、対応するフィールド機器10に送信する。なお、制御演算部220は、生成した制御情報を記憶部240の制御情報243として格納する。
【0105】
(2-4-3-3.診断部230)
診断部230は、システムに含まれるデバイスから受信されたデータに基づいて、デバイスが含まれるシステムの状態を診断する。例えば、デバイスが取得したセンサデータ(センサ値)にハイパスフィルタ等の第1周波数特性を有する第1フィルタを適用して得られたデータに基づいて、デバイスが含まれるシステムの状態を診断する。なお、診断部230は、システム診断結果を記憶部240のシステム診断結果242として格納する。
【0106】
診断部230は、フィールド機器10が取得したセンサ値を説明変数、プラントの異常の発生有無(0,1)を目的変数とする機械学習によって生成された機械学習モデルに、受信されたセンサ値を入力することで、プラントの異常の有無を判定する。また、診断部230は、フィールド機器10が取得したセンサ値および周辺環境データ(周辺情報)を説明変数、プラントの異常の発生有無(0,1)を目的変数とする機械学習によって生成された機械学習モデルに、受信されたセンサ値および周辺情報を入力することで、プラントの異常の有無を出力する。
【0107】
ここで、
図7~
図10を用いて、上記の機械学習モデルを用いたシステム診断処理の入力データおよび出力データについて説明する。
図7~
図9は、実施形態に係るシステム診断処理における機械学習モデルの入力データの具体例を示す図である。
図10は、実施形態に係るシステム診断処理における機械学習モデルの出力データの具体例を示す図である。
【0108】
図7を用いて、システム診断処理として、圧力センサ機器の異常検出処理等における機械学習モデルの入力データについて説明する。
図7の例において、システム診断処理における機械学習モデルの入力データ(教師データ)は、フィールド機器10aが取得した圧力センサ値である「x1(機器1圧力センサ値)」、出力する正解値(正解データ)である「yt(出力 正解値)」の組合せで構成される。ここで、「x1(機器1圧力値)」の値は、圧力センサ値であるデジタル信号強度を示す。また、「yt(出力 正解値)」の値は、「0」が正常状態、「1」が異常状態を示す。
【0109】
すなわち、
図7では、{#1,x1(機器1圧力センサ値):「10」,yt(出力 正解値):「0」}、{#2,x1(機器1圧力センサ値):「15」,yt(出力 正解値):「0」}、{#3,x1(機器1圧力センサ値):「120」,yt(出力 正解値):「0」}、{x1(機器1圧力センサ値):「130」,yt(出力 正解値):「0」}、{#4,x1(機器1圧力センサ値):「1000」,yt(出力 正解値):「0」}、{#5,x1(機器1圧力センサ値):「500」,yt(出力 正解値):「1」}等が含まれる、振動に関する周辺情報が付加されていない入力データの例が示されている。
【0110】
図8を用いて、システム診断処理として、圧力センサ機器の異常検出処理等における機械学習モデルの入力データについて説明する。
図8の例において、システム診断処理における機械学習モデルの入力データ(教師データ)は、フィールド機器10aが取得した圧力センサ値である「x1(機器1圧力センサ値)」、フィールド機器10aの近くに設置されるフィールド機器10bが取得した周辺情報と位置付けられる振動センサ値である「x2(機器2振動センサ値)」、出力する正解値(正解データ)である「yt(出力 正解値)」の組合せで構成される。ここで、「x1(機器1圧力センサ値)」の値は、圧力センサ値であるデジタル信号強度を示す。また、「x2(機器2振動センサ値)」の値は、振動センサ値であるデジタル信号強度を示す。また、「yt(出力 正解値)」の値は、「0」が正常状態、「1」が異常状態を示す。
【0111】
すなわち、
図8では、{#1,x1(機器1圧力センサ値):「10」,x2(機器2振動センサ値):「2」,yt(出力 正解値):「0」}、{#2,x1(機器1圧力センサ値):「15」,x2(機器2振動センサ値):「4」,yt(出力 正解値):「0」}、{#3,x1(機器1圧力センサ値):「120」,x2(機器2振動センサ値):「2」,yt(出力 正解値):「0」}、{x1(機器1圧力センサ値):「130」,x2(機器2振動センサ値):「4」,yt(出力 正解値):「0」}、{#4,x1(機器1圧力センサ値):「1000」,x2(機器2振動センサ値):「100」,yt(出力 正解値):「0」}、{#5,x1(機器1圧力センサ値):「500」,x2(機器2振動センサ値):「3」,yt(出力 正解値):「1」}等が含まれる、振動に関する周辺情報が付加されている入力データの例が示されている。
【0112】
図7および
図8の例において、「#5」がフィールド機器10aの近くで大きな振動が発生している状態の入力データとすると、「#5」では、フィールド機器10aの異常状態ではなく、周辺環境の影響により圧力センサ値が異常状態となっている。したがって、
図7の例(周辺情報なし)では、「#5」および「#6」で比較した場合、「ある一定以上の圧力センサ値(例:700以上)になったらセンサ異常なし」と判断するような機械学習モデルが生成され、所望の機械学習モデルとならない可能性がある。一方、
図8の例(周辺情報あり)では、周辺情報を付加した入力データでは、「振動センサ値が大きい場合には圧力センサ異常なし」との判断が可能となる。
【0113】
上記の
図8の周辺情報を利用した入力データを用いることによって、システム診断処理においてフィールド機器10のセンサ等の故障判定を行う際にセンサ故障と誤判定されることを回避し、機器センサ故障なのか、周辺環境による影響なのかの切り分けが可能となり、診断性能を高められる。
【0114】
図9を用いて、システム診断処理として、キャビテーション検出処理等における機械学習モデルの入力データについて説明する。
図9の例において、システム診断処理における機械学習モデルの入力データ(教師データ)は、フィールド機器10aが取得したハイパスフィルタ適用後の差圧センサ値である「x1(Fc’)」、フィールド機器10aが取得したハイパスフィルタ適用後の差圧センサ値である「x2(Fr’)」、フィールド機器10bが取得した圧力センサ値である「x1(Fc’)」、フィールド機器10aの近くに設置されるフィールド機器10bが取得した周辺情報と位置付けられる振動センサ値である「x3(機器2振動センサ値)」、出力する正解値(正解データ)である「yt(出力 正解値)」の組合せで構成される。ここで、「x1(Fc’)」の値は、フィルタ処理後の差圧センサ値であるデジタル信号強度を示す。また、「x2(Fr’)」の値は、フィルタ処理後の差圧センサ値であるデジタル信号強度を示す。また、「x3(機器2振動センサ値)」の値は、振動センサ値であるデジタル信号強度を示す。また、「yt(出力 正解値)」の値は、「0」がキャビテーションの発生がない状態、「1」がキャビテーションの発生がある状態を示す。なお、差圧センサ値において、ハイパスフィルタ適用後の「Fc’」および「Fr’」を利用するのは、キャビテーションは差圧センサ値の高周波成分に特徴が現れると考えられるためである。
【0115】
すなわち、
図9では、{#1,x1(Fc’):「10」,x2(Fr’):「40」,x3(機器2振動センサ値):「2」,yt(出力 正解値):「0」}、{#2,x1(Fc’):「15」,x2(Fr’):「50」,x3(機器2振動センサ値):「4」,yt(出力 正解値):「0」}、{#3,x1(Fc’):「120」,x2(Fr’):「40」,x3(機器2振動センサ値):「2」,yt(出力 正解値):「0」}、{#4,x1(Fc’):「130」,x2(Fr’):「34」,x3(機器2振動センサ値):「4」,yt(出力 正解値):「0」}、{#5,x1(Fc’):「1000」,x2(Fr’):「100」,x3(機器2振動センサ値):「100」,yt(出力 正解値):「0」}、{#6,x1(Fc’):「1000」,x2(Fr’):「104」,x3(機器2振動センサ値):「3」,yt(出力 正解値):「1」}等が含まれる、振動に関する周辺情報が付加されている入力データの例が示されている。例えば、上記の入力データにおいて、ハイパスフィルタ適用後の差圧センサ値(Fc’、Fr’)が大きい場合でも(例:「1000」)、振動センサ値も大きければ(例:「100」)、キャビテーション発生ではなく、振動等の周辺環境によるもの(例:「0」)と正解値がラベリングされている。
【0116】
上記の入力データで訓練することによって生成された機械学習モデルは、複数の差圧センサ値および振動センサ値の入力に応じて、キャビテーションの発生の有無の「yp(出力 確率値)」および「判定結果」を出力する。
【0117】
図10を用いて、システム診断処理として、キャビテーション検出処理等における機械学習モデルの出力データについて説明する。
図10の例において、システム診断処理における機械学習モデルの出力データ(システム診断結果)は、フィールド機器10aが取得したハイパスフィルタ適用後の差圧センサ値である「x1(Fc’)」、フィールド機器10aが取得したハイパスフィルタ適用後の差圧センサ値である「x2(Fr’)」、フィールド機器10aの近くに設置されるフィールド機器10bが取得した周辺情報と位置付けられる振動センサ値である「x3(機器2振動センサ値)」、システム診断結果である「yp(出力 確率値)」、システム診断結果である「判定結果」の組合せで構成される。ここで、「x1(Fc’)」の値は、ハイパスフィルタ処理後の差圧センサ値であるデジタル信号強度を示す。また、「x2(Fr’)」の値は、ハイパスフィルタ処理後の差圧センサ値であるデジタル信号強度を示す。また、「x3(機器2振動センサ値)」の値は、振動センサ値であるデジタル信号強度を示す。また、「yp(出力 確率値)」の値は、0≦yp≦1となる確率値を示す。また、「判定結果」の値は、「0」がキャビテーションの発生がない状態、「1」がキャビテーションの発生がある状態を示す。
【0118】
すなわち、
図10では、{#1,x1(Fc’):「12」,x2(Fr’):「41」,x3(機器2振動センサ値):「2」,yt(出力 確率値):「0.01」,判定結果:「0」}、{#2,x1(Fc’):「14」,x2(Fr’):「44」,x3(機器2振動センサ値):「4」,yp(出力 確率値):「0.02」,判定結果:「0」}、{#3,x1(Fc’):「125」,x2(Fr’):「34」,x3(機器2振動センサ値):「2」,yp(出力 確率値):「0.2」,判定結果:「0」}、{#4,x1(Fc’):「135」,x2(Fr’):「56」,x3(機器2振動センサ値):「4」,yp(出力 確率値):「0.23」,判定結果:「0」}、{#5,x1(Fc’):「1004」,x2(Fr’):「111」,x3(機器2振動センサ値):「100」,yp(出力 確率値):「0.22」,判定結果:「0」}、{#6,x1(Fc’):「1004」,x2(Fr’):「102」,x3(機器2振動センサ値):「3」,yp(出力 確率値):「0.88」,判定結果:「1」}等が含まれる出力データの例が示されている。
【0119】
上記の入力データで訓練することによって生成された2値分類の訓練済みの機械学習モデルは、「x1(Fc’)」、「x2(Fr’)」および「x3(機器2振動センサ値)」の入力に応じて、「yp(出力 確率値)」を出力し、yp≧0.5であれば「判定結果」を「1」とし、キャビテーションの発生を判定する。
【0120】
上記の
図9の周辺情報を利用した入力データを用いた機械学習を行うことによって、システム診断処理においてキャビテーションの発生の検出精度を向上することができる。
【0121】
(2-4-3-4.記憶部240)
記憶部240は、制御部200が動作する際に参照する各種情報や、制御部200が動作した際に取得した各種情報を記憶する。記憶部240は、センサ値、設定パラメータ、入力演算結果等を含む機器固有情報241、システム診断結果242および制御情報243を記憶する。ここで、記憶部240は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置等で実現され得る。なお、
図2の例では、記憶部240は、制御装置20の内部に設置されているが、制御装置20の外部に設置されてもよいし、複数の記憶部が設置されていてもよい。
【0122】
(2-5.エンジニアリングツール30の構成例および処理例)
図2を用いて、エンジニアリングツール30の構成例および処理例について説明する。例えば、エンジニアリングツール30は、プラントを管理する計器室に設置される制御装置20に接続され、プラント管理者等の操作をもとにエンジニアリング内容の生成を実行する情報処理装置である。
【0123】
エンジニアリングツール30は、制御装置20の通信部250aを介してデータ通信41に含まれるプログラムを送信する。例えば、エンジニアリングツール30は、プラントを管理するプラント管理者の操作によってプログラムを作成し、制御部200を実行させるプログラムとして制御装置20に送信する。
【0124】
また、エンジニアリングツール30は、機器固有情報241の確認、変更等し、ユーザ調整パラメータを生成する。このとき、メンテナンス実施者等は、エンジニアリングツール30を接続し、プロセス値等の入力演算結果を確認しながら、所望の入力演算結果となるようにユーザ調整パラメータの調整を行う。
【0125】
〔3.制御システム1000の処理の流れ〕
図13を用いて、実施形態に係る制御システム1000の処理の流れについて説明する。
図13は、実施形態に係る制御システム1000の制御処理全体の流れの一例を示すフローチャートである。以下では、フィールド機器10の処理であるステップS101~S102の処理、制御装置20の処理であるステップS103~S111の処理の順に説明する。なお、下記のステップS101~S111の処理は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS101~S111の処理のうち、省略される処理があってもよい。
【0126】
(3-1.フィールド機器10の処理)
実施形態に係るフィールド機器10の処理の流れについて説明する。第1に、フィールド機器10は、センサ値取得処理を実行する(ステップS101)。第2に、フィールド機器10は、センサ値送信処理を実行する(ステップS102)。
【0127】
(3-2.制御装置20の処理)
実施形態に係る制御装置20の処理の流れについて説明する。第1に、制御装置20は、センサ値受信処理を実行する(ステップS103)。第2に、制御装置20は、設定パラメータ取得処理を実行する(ステップS104)。第3に、制御装置20は、固有機器演算処理(プロセス値算出処理、機器診断処理)、汎用演算処理を含む入力演算処理を実行する(ステップS105)。第4に、制御装置20は、プロセス値、機器診断結果、フィルタ処理済みセンサ値等の入力演算結果を保存する入力演算結果保存処理を実行する(ステップS106)。第5に、制御装置20は、システム診断処理を実行する(ステップS107)。第6に、制御装置20は、システム診断結果を保存するシステム診断結果保存処理を実行する(ステップS108)。第7に、制御装置20は、制御演算処理を実行する(ステップS109)。第8に、制御装置20は、制御情報等を含む制御演算結果を保存するシステム制御演算結果保存処理を実行する(ステップS110)。第9に、制御装置20は、制御情報送信処理を実行し(ステップS111)、処理を終了する。
【0128】
〔4.実施形態の変形例および適用例〕
実施形態の変形例および適用例について説明する。以下では、実施形態の変形例、実施形態の各種の適用例について説明する。
【0129】
(4-1.実施形態の変形例)
図14を用いて、
図2に示した制御システム1000の変形例である制御システム2000について説明する。
図14は、実施形態の変形例に係る制御システム2000の各装置の構成例を示すブロック図である。以下では、制御システム1000の変形例である制御システム2000について、実施形態に係る制御システム1000とは異なる構成を中心に説明する。
【0130】
制御システム1000の制御装置20内の診断部230は、
図14に示すように制御装置20とは異なる制御装置51に接続してもよい。ここで、制御装置51に接続された診断部500は、制御装置20の記憶部240の各種情報を利用してシステム診断処理を実行する。このとき、制御装置51は、制御部50の診断部500を用いて、イーサネット(登録商標)等を利用した通信部250cのデータ通信42を介して各種情報を取得する。
【0131】
上記のように制御装置20と制御装置51とを別装置とすることで、より高度な診断の実現が期待できる。例えば、複数の制御装置で制御システムが構築されている場合、制御装置ごとのデータのみを利用した異常診断や予知診断では、プラント全体のデータが揃っていないので、診断性能が落ちてしまう。そこで、診断部を別装置に配置して、複数の制御装置のデータを利用できるようにすることで、システム全体のデータを利用してAI等の診断処理を実行でき、より高度な診断処理を実現できる。
【0132】
(4-2.実施形態の各種適用例)
実施形態の各種の適用例について説明する。以下では、制御システム1000および制御システム2000の制御処理に適用可能な各種適用例について説明する。
【0133】
制御システム1000および制御システム2000において、複数のフィールド機器10のセンサ値を活用して、仮想的なフィールド機器10を実現できる。具体例1として、圧力伝送器(高圧側)と圧力伝送器(低圧側)とから、差圧伝送器を実現することができる。具体例2として、差圧伝送器と温度伝送器(温度補正用)とから、温度補正に温度伝送器のプロセス値を利用する差圧伝送器を実現することができる。具体例3として、差圧伝送器と圧力伝送器と温度伝送器とから、差圧式流量伝送器を実現することができる。
【0134】
制御システム1000および制御システム2000において、通信部140、通信部250(250a、250b、250c)は、共通の通信インタフェースであってもよい。例えば、通信部140および通信部250(250a、250b、250c)は、共通イーサネットベースの通信インタフェースを利用することができる。また、通信部140および通信部250bでは、イーサネットベースのフィールド通信(PROFINE等)を利用することができる。また、通信部140の物理層には、イーサネット-APL(Advanced Physical Layer)を利用することで防爆にも対応可能となる。また、通信部140にイーサネット-APLを利用した場合、通信部250bでもイーサネット-APLに対応する必要が出てくるが、APLパワースイッチ(標準イーサネット1000BASE-T等に変換)を経由することで、通信部140は、標準イーサネットのインタフェースとすることができる。一方、通信部250aおよび通信部250cは、汎用インターネットプロトコル(TCP/IP、HTTP、MQTT等)を利用する。
【0135】
制御システム1000および制御システム2000において、制御装置20および制御装置51は、オンプレミスでもよいし、クラウド環境であってもよい。
【0136】
〔5.実施形態の効果〕
最後に、実施形態の効果について説明する。以下では、実施形態に係る処理に対応する効果1~7について説明する。
【0137】
(5-1.効果1)
第1に、上述した実施形態に係る処理では、制御装置20は、制御対象についての設備に含まれるデバイスから第1データを受信し、第1データに基づいて設備の状態を診断し、第1データに基づいて設備の制御に用いる第2データの算出と、デバイスの状態の診断とを実行する。このため、本処理では、制御システムの性能を向上することができる。
【0138】
(5-2.効果2)
第2に、上述した実施形態に係る処理では、制御装置20は、第1データとしてデバイスが取得したセンサ値を受信し、センサ値にハイパスフィルタ等の第1周波数特性を有する第1フィルタを適用して得られたデータに基づいてシステムの状態を診断し、センサ値にローパスフィルタ等の第2周波数特性を有する第2フィルタを適用して得られたデータに基づいて第2データとしてプロセス値を算出し、センサ値にバンドパスフィルタ等の第3周波数特性を有する第3フィルタを適用して得られたデータに基づいてデバイスの状態を診断する。このため、本処理では、複数のフィルタ処理を行ったデータを用いて、制御システムの性能を向上することができる。
【0139】
(5-3.効果3)
第3に、上述した実施形態に係る処理では、制御装置20は、制御対象についての設備は、プラントを制御する制御設備であり、デバイスは、プラントに設置されたプラントの制御に用いられるフィールド機器10であり、フィールド機器10が取得したセンサ値を説明変数、プラントの異常の発生有無(0,1)を目的変数とする機械学習によって生成された機械学習モデルに、受信したセンサ値を入力することで、プラントの異常の有無を判定する。このため、本処理では、プラントにおいて取得したフィールド機器10のセンサ値を用いた機械学習モデルによってシステムの異常を出力し、制御システムの性能を向上することができる。
【0140】
(5-4.効果4)
第4に、上述した実施形態に係る処理では、制御装置20は、センサ値に影響を及ぼす周辺情報をさらに受信し、フィールド機器10が取得したセンサ値および周辺情報を説明変数、プラントの異常の発生有無(0,1)を目的変数とする機械学習によって生成された機械学習モデルに、受信したセンサ値および周辺情報を入力することで、プラントの異常の有無を判定する。このため、本処理では、プラントにおいて取得したフィールド機器10のセンサ値と周辺環境に関する情報を用いた機械学習モデルによってシステムの異常を出力し、制御システムの性能を向上することができる。
【0141】
(5-5.効果5)
第5に、上述した実施形態に係る処理では、制御装置20は、制御対象についての設備は、プラントを制御する制御設備であり、デバイスは、プラントに設置されたプラントの制御に用いられるフィールド機器10であり、フィールド機器10が取得したセンサ値を説明変数、フィールド機器10の異常の発生有無(0,1)を目的変数とする機械学習によって生成された機械学習モデルに、受信したセンサ値を入力することで、フィールド機器10の異常の有無を出力する。このため、本処理では、プラントにおいて取得したフィールド機器10のセンサ値を用いた機械学習モデルによってフィールド機器10の異常を判定し、制御システムの性能を向上することができる。
【0142】
(5-6.効果6)
第6に、上述した実施形態に係る処理では、制御装置20は、フィールド機器10は、圧力センサ機器であり、フィールド機器10が取得した圧力センサ値および振動センサ値を説明変数、圧力センサデータの異常の発生有無(0,1)を目的変数とする機械学習によって生成された機械学習モデルに、受信した圧力センサデータおよび振動センサデータを入力することで、圧力センサデータの異常の有無を判定する。このため、本処理では、プラントにおいて取得した圧力センサ機器のセンサ値と周辺環境に関する情報を用いた機械学習モデルによって圧力センサ機器の異常を出力し、制御システムの性能を向上することができる。
【0143】
(5-7.効果7)
第7に、上述した実施形態に係る処理では、制御装置20は、デバイスの個体差を調整するためのデバイスパラメータ、または設備の利用者によって調整される利用者パラメータのうち少なくとも1つを用いて、プロセス値を算出する。このため、本処理では、各種パラメータを用いて精度の高いプロセス値を算出することによって、制御システムの性能を向上することができる。
【0144】
〔システム〕
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0145】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0146】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0147】
〔ハードウェア〕
次に、制御装置である制御装置20のハードウェア構成例を説明する。なお、他の装置も同様のハードウェア構成とすることができる。
図15は、実施形態に係るハードウェア構成例を説明する図である。
図15に示すように、制御装置20は、通信装置20a、HDD(Hard Disk Drive)20b、メモリ20c、プロセッサ20dを有する。また、
図12に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0148】
通信装置20aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD20bは、
図2および
図14に示した機能を動作させるプログラムやデータベースを記憶する。
【0149】
プロセッサ20dは、
図2および
図14に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD20b等から読み出してメモリ20cに展開することで、
図2等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、制御装置20が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ20dは、入力演算部210、制御演算部220、診断部230等と同様の機能を有するプログラムをHDD20b等から読み出す。そして、プロセッサ20dは、入力演算部210、制御演算部220、診断部230等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0150】
このように、制御装置20は、プログラムを読み出して実行することで各種処理方法を実行する装置として動作する。また、制御装置20は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施形態と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施形態でいうプログラムは、制御装置20によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0151】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【0152】
〔その他〕
開示される技術特徴の組合せのいくつかの例を以下に記載する。
【0153】
(1)制御対象についての設備に含まれるデバイスから第1データを受信する受信部と、前記第1データに基づいて、前記設備の状態を診断する診断部と、前記第1データに基づいて、前記設備の制御に用いる第2データの算出と、前記デバイスの状態の診断とを実行する実行部と、を備える制御装置。
【0154】
(2)前記受信部は、前記第1データとして前記デバイスが取得したセンサデータを受信し、前記診断部は、前記センサデータに第1周波数特性を有する第1フィルタを適用して得られたデータに基づいて、前記設備の状態を診断し、前記実行部は、前記センサデータに第2周波数特性を有する第2フィルタを適用して得られたデータに基づいて、前記第2データとしてプロセスデータを算出し、前記センサデータに第3周波数特性を有する第3フィルタを適用して得られたデータに基づいて、前記デバイスの状態を診断する、(1)に記載の制御装置。
【0155】
(3)前記設備は、プラントを制御する制御設備であり、前記デバイスは、前記プラントに設置された、前記プラントの制御に用いられるフィールド機器であり、前記診断部は、前記フィールド機器が取得したセンサデータを説明変数、前記プラントの異常の発生有無を目的変数とする機械学習によって生成された機械学習モデルに、前記受信部によって受信された前記センサデータを入力することで、前記プラントの異常の有無を出力する、(1)または(2)に記載の制御装置。
【0156】
(4)前記受信部は、前記センサデータに影響を及ぼす周辺環境データをさらに受信し、前記診断部は、前記フィールド機器が取得した前記センサデータおよび前記周辺環境データを説明変数、前記プラントの異常の発生有無を目的変数とする機械学習によって生成された機械学習モデルに、前記受信部によって受信された前記センサデータおよび前記周辺環境データを入力することで、前記プラントの異常の有無を出力する、(3)に記載の制御装置。
【0157】
(5)前記設備は、プラントを制御する制御設備であり、前記デバイスは、前記プラントに設置された、前記プラントの制御に用いられるフィールド機器であり、前記実行部は、前記フィールド機器が取得したセンサデータを説明変数、前記フィールド機器の異常の発生有無を目的変数とする機械学習によって生成された機械学習モデルに、前記受信部によって受信された前記センサデータを入力することで、前記フィールド機器の異常の有無を出力する、(1)~(4)のいずれか1つに記載の制御装置。
【0158】
(6)前記フィールド機器は、圧力センサ機器であり、前記実行部は、前記圧力センサ機器が取得した圧力センサデータおよび振動センサデータを説明変数、前記圧力センサ機器の異常の発生有無を目的変数とする機械学習によって生成された機械学習モデルに、前記受信部によって受信された前記圧力センサデータおよび前記振動センサデータを入力することで、前記圧力センサ機器の異常の有無を出力する、(5)に記載の制御装置。
【0159】
(7)前記実行部は、前記デバイスの個体差を調整するためのデバイスパラメータ、または前記設備の利用者によって調整される利用者パラメータのうち少なくとも1つを用いて、前記第2データとしてプロセスデータを算出する、(1)~(6)のいずれか1つに記載の制御装置。
【0160】
(8)コンピュータが、制御対象についての設備に含まれるデバイスから第1データを受信し、前記データに基づいて、前記設備の状態を診断し、前記第1データに基づいて、前記設備の制御に用いる第2データの算出と、前記第1デバイスの状態の診断とを実行する、処理を実行する制御方法。
【0161】
(9)コンピュータに、制御対象についての設備に含まれるデバイスから第1データを受信し、前記第1データに基づいて、前記設備の状態を診断し、前記第1データに基づいて、前記設備の制御に用いる第2データの算出と、前記デバイスの状態の診断とを実行する、処理を実行させる制御プログラム。
【符号の説明】
【0162】
10 フィールド機器
100 センサ
110 デジタル変換部
120 制御部
121 取得部
130 記憶部
140 通信部
20 制御装置
200 制御部
210 入力演算部
211 固有機器演算部
212 汎用演算部
220 制御演算部
230 診断部
240 記憶部
250 通信部
50 制御部
51 制御装置
500 診断部
1000 制御システム