(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122561
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】誘導加熱装置及び誘導加熱方法
(51)【国際特許分類】
C21D 1/42 20060101AFI20240902BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20240902BHJP
F27D 11/06 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
C21D1/42 J
H05B6/10 371
C21D1/42 M
C21D1/42 E
F27D11/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030161
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中原 純也
(72)【発明者】
【氏名】平 将人
(72)【発明者】
【氏名】末松 芳章
【テーマコード(参考)】
3K059
4K063
【Fターム(参考)】
3K059AA08
3K059AB19
3K059AB24
3K059AB28
3K059CD12
4K063CA09
4K063FA32
4K063FA37
(57)【要約】
【課題】一例として、金属材を入れ替える度に誘導コイルを分解し組立しなくて済む誘導加熱装置及び誘導加熱方法を提供する。
【解決手段】誘導加熱装置10は、筒状の金属材12に誘導電流を生じさせることにより金属材12を加熱する誘導コイル16を備える。誘導コイル16は、金属材12の外側を金属材12の軸方向と交差する交差方向の周りに巻き回されることにより、金属材12を取り囲む形状に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の金属材に誘導電流を生じさせることにより前記金属材を加熱する誘導コイルを備え、
前記誘導コイルは、前記金属材の外側を前記金属材の軸方向と交差する交差方向の周りに巻き回されることにより、前記金属材を取り囲む形状に形成されている
誘導加熱装置。
【請求項2】
前記誘導コイルは、接続線を介して交流電源に接続され、
前記接続線と前記誘導コイルとの接続部は、前記軸方向から見た場合に前記金属材の内側の孔と重なる位置に配置されている
請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項3】
前記金属材を前記軸方向の周りに回転させる回転装置を備える
請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項4】
前記金属材の周方向に亘って前記金属材の加熱温度が規定温度範囲に収まるように、前記回転装置による前記金属材の回転速度を制御する制御装置を備える
請求項3に記載の誘導加熱装置。
【請求項5】
前記金属材を前記交差方向に搬送する搬送装置を備える
請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項6】
誘導コイルによって筒状の金属材に誘導電流を生じさせることにより前記金属材を加熱することを備え、
前記誘導コイルは、前記金属材の外側を前記金属材の軸方向と交差する交差方向の周りに巻き回されることにより、前記金属材を取り囲む形状に形成されている
誘導加熱方法。
【請求項7】
前記誘導コイルは、接続線を介して交流電源に接続され、
前記接続線と前記誘導コイルとの接続部は、前記軸方向から見た場合に前記金属材の内側の孔と重なる位置に配置されている
請求項6に記載の誘導加熱方法。
【請求項8】
前記金属材を前記軸方向の周りに回転させることを備える
請求項6に記載の誘導加熱方法。
【請求項9】
前記金属材の周方向に亘って前記金属材の加熱温度が規定温度範囲に収まるように、前記金属材の回転速度を制御することを備える
請求項8に記載の誘導加熱方法。
【請求項10】
前記金属材を前記交差方向に搬送することを備える
請求項6に記載の誘導加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱装置及び誘導加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状の金属材に誘導電流を生じさせることにより金属材を加熱する誘導加熱装置としては、次の技術が公知である(例えば、特許文献1、2参照)。すなわち、公知の誘導加熱装置は、筒状の金属材の内側と外側とに亘って巻き回された誘導コイルを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-178641号公報
【特許文献1】特開2013-035028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、筒状の金属材の内側と外側とに亘って巻き回された誘導コイルの場合、金属材を入れ替える度に誘導コイルを分解し組立する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、一例として、金属材を入れ替える度に誘導コイルを分解し組立しなくて済む誘導加熱装置及び誘導加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、筒状の金属材に誘導電流を生じさせることにより前記金属材を加熱する誘導コイルを備え、前記誘導コイルは、前記金属材の外側を前記金属材の軸方向と交差する交差方向の周りに巻き回されることにより、前記金属材を取り囲む形状に形成されている誘導加熱装置である。
【0007】
本発明の第2態様は、第1態様に係る誘導加熱装置において、前記誘導コイルは、接続線を介して交流電源に接続され、前記接続線と前記誘導コイルとの接続部は、前記軸方向から見た場合に前記金属材の内側の孔と重なる位置に配置されている誘導加熱装置である。
【0008】
本発明の第3態様は、第1態様又は第2態様に係る誘導加熱装置において、前記金属材を前記軸方向の周りに回転させる回転装置を備える誘導加熱装置である。
【0009】
本発明の第4態様は、第3態様に係る誘導加熱装置において、前記金属材の周方向に亘って前記金属材の加熱温度が規定温度範囲に収まるように、前記回転装置による前記金属材の回転速度を制御する制御装置を備える誘導加熱装置である。
【0010】
本発明の第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか一つの態様に係る誘導加熱装置において、前記金属材を前記交差方向に搬送する搬送装置を備える誘導加熱装置である。
【0011】
本発明の第6態様は、誘導コイルによって筒状の金属材に誘導電流を生じさせることにより前記金属材を加熱することを備え、前記誘導コイルは、前記金属材の外側を前記金属材の軸方向と交差する交差方向の周りに巻き回されることにより、前記金属材を取り囲む形状に形成されている誘導加熱方法である。
【0012】
本発明の第7態様は、第6態様に係る誘導加熱方法において、前記誘導コイルは、接続線を介して交流電源に接続され、前記接続線と前記誘導コイルとの接続部は、前記軸方向から見た場合に前記金属材の内側の孔と重なる位置に配置されている誘導加熱方法である。
【0013】
本発明の第8態様は、第6態様又は第7態様に係る誘導加熱方法において、前記金属材を前記軸方向の周りに回転させることを備える誘導加熱方法である。
【0014】
本発明の第9態様は、第8態様に係る誘導加熱方法において、前記金属材の周方向に亘って前記金属材の加熱温度が規定温度範囲に収まるように、前記金属材の回転速度を制御することを備える誘導加熱方法である。
【0015】
本発明の第10態様は、第6態様から第9態様のいずれか一つの態様に係る誘導加熱方法において、前記金属材を前記交差方向に搬送することを備える誘導加熱方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一例として、金属材を入れ替える度に誘導コイルを分解し組立しなくて済む誘導加熱装置及び誘導加熱方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る誘導加熱装置を示す正面図である。
【
図2】第1実施形態に係る誘導コイル、交流電源、及び金属材を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る誘導コイル及び金属材を示す平面図である。
【
図4】第1実施形態に係る誘導コイル及び金属材を示す側面断面図である。
【
図5】第2実施形態に係る誘導コイル、交流電源、及び金属材を示す斜視図である。
【
図6】第3実施形態に係る誘導コイル、交流電源、及び金属材を示す斜視図である。
【
図7】第4実施形態に係る誘導コイル、交流電源、及び金属材を示す斜視図である。
【
図8】第5実施形態に係る誘導加熱装置の動作を説明する図である。
【
図9】第6実施形態に係る誘導コイル、交流電源、及び金属材を示す斜視図である。
【
図10】第7実施形態に係る誘導コイル、交流電源、及び金属材を示す斜視図である。
【
図11】第8実施形態に係る誘導加熱装置の動作を説明する図である。
【
図12】第9実施形態に係る誘導加熱装置の動作を説明する図である。
【
図13】第10実施形態に係る誘導コイル及び金属材を示す平面図である。
【
図14】第11実施形態に係る誘導コイル及び金属材を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
はじめに、本発明の第1実施形態について説明する。
【0019】
図1には、第1実施形態に係る誘導加熱装置10が正面図にて示されている。誘導加熱装置10は、筒状の金属材12を誘導加熱により加熱処理する装置である。X軸方向は、金属材12の軸方向と平行な方向である。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、互いに直交する方向である。一例として、X軸方向及びY軸方向は、水平方向と平行な方向であり、Z軸方向は、鉛直方向と平行な方向である。
【0020】
金属材12は、一例として、コイル状に巻かれた鋼材コイルである。鋼材は、例えば、高張力鋼、電磁鋼、又はステンレス鋼等の熱延板若しくは冷延板等の各種鋼材でもよい。また、金属材12は、誘導加熱が可能な金属であれば、どのような金属によって形成されていてもよい。金属材12は、コイル状に巻かれることにより複数の層14を有する。隣接する層14は、例えば、各層14の表面に絶縁被膜が形成されることにより、互いに電気的に絶縁されている。
【0021】
誘導加熱装置10は、誘導コイル16と、交流電源18と、回転装置20と、制御装置22とを備える。
【0022】
図2には、
図1の誘導コイル16、交流電源18、及び金属材12が斜視図にて示されており、
図3には、
図1の誘導コイル16及び金属材12が平面図にて示されている。誘導コイル16は、金属材12に誘導電流を生じさせることにより金属材12を加熱する部材である。誘導コイル16は、金属材12の外側を金属材12の軸方向と交差する交差方向の周りに巻き回されることにより、金属材12を取り囲む形状に形成されている。
【0023】
具体的には、誘導コイル16は、金属材12の軸方向と交差する交差方向の一例として、金属材12の軸方向と直交するY軸方向の周りに巻き回されている。本明細書において、「直交」とは、完全な直交の他に、本開示の技術が属する技術分野で一般的に許容される誤差であって、本開示の技術の趣旨に反しない程度の誤差を含めた意味合いでの直交を指す。
【0024】
誘導コイル16は、従来技術のように金属材12の内側と外側とに亘って巻き回されるのではなく、金属材12の外側に巻き回されている。また、誘導コイル16は、金属材12を取り囲む形状の一例として、金属材12の軸方向に延びる一対の軸方向部分24と、金属材12の径方向に延びる一対の径方向部分26とを有する。
【0025】
一対の軸方向部分24の一方の端部同士は、一対の径方向部分26のうちの一方によって連結されており、一対の軸方向部分24の他方の端部同士は、一対の径方向部分26のうちの他方によって連結されている。誘導コイル16は、誘導コイル16の軸方向(すなわち、Y軸方向)から見た場合に、金属材12の外形に沿う概略矩形状に形成されている。また、誘導コイル16は、誘導コイル16の軸方向から見た場合に、一対の軸方向部分24と一対の径方向部分26とを有する閉形状によって形成されている。
【0026】
誘導コイル16の巻き数及び巻き長さは任意に設定されてもよい。一例として、誘導コイル16は、複数のループ部28を有する複数巻きで形成されている。複数のループ部28は、連続しており直列に接続されている。
【0027】
誘導コイル16は、金属材12の軸方向から見た場合に、金属材12の中心と重なる位置に配置されている(
図1参照)。また、誘導コイル16は、誘導コイル16の軸方向が水平方向と平行になる縦置きに配置されている。さらに、誘導コイル16は、誘導コイル16の軸方向が金属材12の軸方向と直交する向きで配置されている(
図3参照)。
【0028】
誘導コイル16の両端部(すなわち、両側の端末部)は、一対の接続線30を介して交流電源18に接続されている。各接続線30と誘導コイル16との接続部32は、X軸方向から見た場合に、金属材12の内側の孔34と重なる位置に配置されている(
図1参照)。換言すれば、接続部32は、孔34の直径の範囲内に配置されている。交流電源18は、高周波電源(すなわち、インバータ)であり、一対の接続線30を介して誘導コイル16に対して交流電流Iを供給する。
【0029】
図4には、
図1の誘導コイル16及び金属材12が側面断面図にて示されている。誘導コイル16に一定の条件で交流電流Iが供給されると、各層14の断面内にループ状に流れる誘導電流iが生じる。誘導電流iが生じることにより各層14がその厚さ方向及び幅方向に亘って全体的に加熱される。誘導電流iを生じさせるためには、電流浸透深さをδ[m]とし、層14の板厚をt[m]とした場合に、以下の式(1)を満たす必要がある。
【数1】
【0030】
また、式(1)を満たすためには、交流電源18の周波数が十分に高い必要がある。具体的には、交流電源18の周波数をf[Hz]とし、金属材12の比抵抗をρ[Ωm]とし、金属材12の比透磁率をμ
rとした場合に、電流浸透深さδは以下の式(2)で示されるため、fは以下の式(3)を満たす必要がある。
【数2】
【数3】
【0031】
回転装置20は、一例として、一対のローラ36と、回転駆動装置38とを有する。一対のローラ36は、それぞれX軸方向に延びており、互いにY軸方向に離れて配置されている。一対のローラ36は、X軸方向と平行な回転軸(図示省略)によって回転可能に支持されている。一対のローラ36の上には、金属材12が回転可能に載置される。
【0032】
回転駆動装置38は、一対のローラ36を回転させることにより、金属材12を軸方向の周りに回転させる装置である。回転駆動装置38は、例えば、モータ及び減速機等(いずれも図示省略)を備える駆動装置によって実現される。
【0033】
制御装置22は、交流電源18及び回転装置20を制御する装置である。制御装置22は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等を備えるコンピュータによって実現される。制御装置22は、各層14の断面内に誘導電流iが生じるように、交流電源18を制御する。また、制御装置22は、金属材12の周方向に亘って金属材12の加熱温度が規定温度範囲に収まるように(すなわち、ほぼ均一になるように)、誘導コイル16による加熱中に、回転装置20による金属材12の回転速度を制御する。
【0034】
規定温度範囲は、任意に設定されてもよい。金属材12の加熱温度に上限温度が設定されている場合、金属材12の回転速度が低いと、金属材12の加熱温度が上限温度を超えないように、交流電源18の電力が制限される。したがって、制御装置22は、金属材12の加熱温度が上限温度を上回らないように、金属材12の回転速度の下限値を設定する。また、制御装置22は、回転装置20の振動、又は回転駆動装置38のモータの出力等の回転装置20の機械的な制約に基づいて、金属材12の回転速度の上限値を設定する。
【0035】
金属材12の回転速度は、金属材12に対して配置された速度計(図示省略)によって測定されてもよく、ローラ36に対して配置された速度計(図示省略)による測定値に基づいて算出されてもよい。
【0036】
続いて、第1実施形態に係る誘導加熱方法について説明する。
【0037】
第1実施形態に誘導加熱方法は、上述の誘導加熱装置10を用いて実行される。誘導加熱方法では、先ず、誘導加熱装置10に金属材12がセットされる。具体的には、金属材12が一対のローラ36の上に回転可能に載置され、金属材12を取り囲むように誘導コイル16が金属材12に対して配置される。この際に、一対のローラ36に載置された金属材12に対して誘導コイル16が移動機構(図示省略)によって移動してもよく、金属材12が載置された一対のローラ36を有する台車(図示省略)が移動機構によって誘導コイル16に対して移動してもよい。
【0038】
次いで、制御装置22が回転装置20を作動させる。これにより、回転装置20によって一対のローラ36が回転し、金属材12が回転する。また、交流電源18によって誘導コイル16に交流電流Iが供給されるように、制御装置22が交流電源18を制御する。これにより、金属材12の各層14の断面内にループ状に流れる誘導電流iが生じ、金属材12のうちの誘導電流iが生じた部位が加熱される。制御装置22が回転装置20を作動させるタイミングと、制御装置22が交流電源18を制御するタイミングとは、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
次いで、制御装置22は、金属材12の周方向に亘って金属材12の加熱温度が規定温度範囲に収まるように(すなわち、ほぼ均一になるように)、回転装置20による金属材12の回転速度を制御する。これにより、金属材12の周方向に亘って金属材12の加熱温度が規定温度範囲に収まるように、金属材12が加熱される。
【0040】
そして、金属材12の加熱が終了したタイミングで、制御装置22が回転装置20及び交流電源18を停止させる。
【0041】
続いて、第1実施形態の効果について説明する。
【0042】
以上詳述した通り、第1実施形態に係る誘導加熱装置10は、筒状の金属材12に誘導電流iを生じさせることにより金属材12を加熱する誘導コイル16を備え、誘導コイル16は、金属材12の外側を金属材12の軸方向と交差する交差方向の周りに巻き回されることにより、金属材12を取り囲む形状に形成されている。したがって、金属材12を入れ替える度に誘導コイル16を分解し組立しなくて済む。
【0043】
すなわち、筒状の金属材12の内側と外側とに亘って巻き回された誘導コイル16の場合、金属材12を入れ替える度に誘導コイル16を分解し組立する必要がある。これに対し、第1実施形態に係る誘導加熱装置10では、金属材12を入れ替える際の分解組立工程を省くことができる。
【0044】
また、金属材12を入れ替える際の分解組立工程を省くことにより、誘導コイル16を分解及び組立を前提とした構成にする必要がない。したがって、例えば、誘導コイル16が分解及び組立を前提とした構成、すなわち誘導コイル16を構成する複数の部材を接続する接続部を有する構成に比して、誘導コイル16の耐久性を向上させることができる。
【0045】
また、誘導コイル16は、接続線30を介して交流電源18に接続されており、接続線30と誘導コイル16との接続部32は、誘導コイル16の軸方向から見た場合に金属材12の内側の孔34と重なる位置に配置されている。したがって、例えば、接続部32が誘導コイル16の軸方向から見た場合に金属材12と重なる位置に配置されている場合(すなわち、金属材12の径方向の厚みの範囲内に接続部32が位置する場合)に比して、金属材12に対する加熱効率を向上させることができる。
【0046】
すなわち、接続部32が誘導コイル16の軸方向から見た場合に金属材12と重なる位置に配置されている場合には、誘導コイル16と金属材12とが重なる領域が減り、金属材12に対する加熱効率が低下する。これに対し、第1実施形態に係る誘導加熱装置10では、接続部32が誘導コイル16の軸方向から見た場合に金属材12の内側の孔34と重なる位置に配置されることで、誘導コイル16と金属材12とが重なる領域が確保されるので、金属材12に対する加熱効率を向上させることができる。
【0047】
また、第1実施形態に係る誘導加熱装置10は、金属材12を軸方向の周りに回転させる回転装置20を備える。したがって、誘導コイル16が金属材12の周方向の一部しか加熱できない構成でも、金属材12を軸方向の周りに回転させることで、金属材12の周方向に亘って金属材12を加熱することができる。
【0048】
また、制御装置22は、金属材12の周方向に亘って金属材12の加熱温度が規定温度範囲に収まるように、回転装置20による金属材12の回転速度を制御する。これにより、金属材12の加熱ムラを防いで、金属材12を全周に亘ってほぼ均一に加熱することができる。
【0049】
また、金属材12は、コイル状に巻かれることにより複数の層14を有する。隣接する層14は、例えば、各層14の表面に絶縁被膜が形成されることにより、互いに電気的に絶縁されている。そして、各層14の断面内にループ状に流れる誘導電流iが生じるように、誘導コイル16に一定の条件で交流電流Iが供給される。これにより、各層14をその厚さ方向及び幅方向に亘って全体的に加熱することができる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0051】
図5には、第2実施形態に係る誘導コイル16、交流電源18、及び金属材12が斜視図にて示されている。第2実施形態では、第1実施形態(
図2参照)に対して、誘導コイル16の構成が次のように変更されている。
【0052】
すなわち、第2実施形態において、誘導コイル16を構成する複数のループ部28は、互いに独立している。各ループ部28は、一重巻きの構成であり、金属材12を取り囲む形状の一例として、金属材12の軸方向に延びる一対の軸方向部分24と、金属材12の径方向に延びる一対の径方向部分26とを有する。
【0053】
各ループ部28の両端部は、一対の接続線30にそれぞれ接続されている。これにより、複数のループ部28は、交流電源18に対して並列に接続されている。各接続線30と誘導コイル16との接続部32(すなわち、各接続線30と各ループ部28との接続部32)は、X軸方向から見た場合に、金属材12の内側の孔34と重なる位置に配置されている。
【0054】
このように構成されていても、誘導コイル16に一定の条件で交流電流Iが供給された場合には、各層14(
図4参照)の断面内にループ状に流れる誘導電流iが生じ、各層14をその厚さ方向及び幅方向に亘って全体的に加熱することができる。
【0055】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0056】
図6には、第3実施形態に係る誘導コイル16、交流電源18、及び金属材12が斜視図にて示されている。第3実施形態では、第1実施形態(
図2参照)に対して、誘導コイル16の構成が次のように変更されている。
【0057】
すなわち、第3実施形態において、誘導コイル16は、一つのループ部28を有する一重巻きの構成である。誘導コイル16は、金属材12を取り囲む形状の一例として、金属材12の軸方向に延びる一対の軸方向部分24と、金属材12の径方向に延びる一対の径方向部分26とを有する。
【0058】
誘導コイル16の両端部は、一対の接続線30にそれぞれ接続されている。各接続線30と誘導コイル16との接続部32は、X軸方向から見た場合に、金属材12の内側の孔34と重なる位置に配置されている。
【0059】
このように構成されていても、誘導コイル16に一定の条件で交流電流Iが供給された場合には、各層14(
図4参照)の断面内にループ状に流れる誘導電流iが生じ、各層14をその厚さ方向及び幅方向に亘って全体的に加熱することができる。
【0060】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0061】
図7には、第4実施形態に係る誘導コイル16、交流電源18、及び金属材12が斜視図にて示されている。第4実施形態では、第3実施形態(
図6参照)に対して、誘導コイル16の構成が次のように変更されている。
【0062】
すなわち、第4実施形態において、誘導コイル16は、金属材12を取り囲む形状の一例として、金属材12の軸方向に延びる軸方向部分24と、金属材12の径方向に延びる一対の径方向部分26とを有する。一対の径方向部分26の一方の端部同士は、軸方向部分24によって連結されている。
【0063】
第4実施形態に係る誘導コイル16は、一対の径方向部分26の他方の端部同士を連結する軸方向部分24を有しておらず、軸方向部分24と反対側の部分に開放部40を有する開形状によって形成されている。一例として、開放部40は、誘導コイル16の下側に形成されている。
【0064】
このように構成されていても、誘導コイル16に一定の条件で交流電流Iが供給された場合には、各層14(
図4参照)の断面内にループ状に流れる誘導電流iが生じ、各層14をその厚さ方向及び幅方向に亘って全体的に加熱することができる。
【0065】
また、誘導コイル16の下側には、開放部40が形成されているので、例えば、開放部40と対向する台車等(図示省略)が加熱されることを抑制することができる。
【0066】
なお、第4実施形態においても、各接続線30と誘導コイル16との接続部32は、X軸方向から見た場合に、金属材12の内側の孔34と重なる位置に配置されていてもよい。
【0067】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
【0068】
図8には、第5実施形態に係る誘導加熱装置10が二面図(すなわち、正面図及び平面図)にて示されている。第5実施形態では、第1実施形態(
図2参照)に対して、誘導加熱装置10の構成が次のように変更されている。
【0069】
すなわち、第5実施形態において、誘導加熱装置10は、金属材12を搬送する搬送装置42を備える。搬送装置42は、一例として、台車44と、搬送駆動装置46とを有する。台車44は、台座部48と、複数の車輪50とを有する。台座部48には、一対のローラ36が回転可能に支持されている。複数の車輪50は、台車44部の各隅部に設けられている。台車44は、複数の車輪50の回転を伴って走行する構成である。各車輪50は、一対のローラ36の回転軸と平行な回転軸(図示省略)によって回転可能に支持されている。
【0070】
搬送駆動装置46は、台車44を走行させる装置である。搬送駆動装置46によって台車44が走行することにより、金属材12の軸方向と交差する交差方向の一例として、金属材12がY軸方向に搬送される。搬送駆動装置46は、例えば、モータ及び減速機等(いずれも図示省略)を備える駆動装置によって実現される。制御装置22は、誘導コイル16によって金属材12が加熱される前及び後に搬送装置42によって金属材12が搬送されるように搬送装置42を制御する。
【0071】
続いて、第5実施形態に係る誘導加熱方法について説明する。
【0072】
第5実施形態に係る誘導加熱方法では、台車44に設けられた一対のローラ36の上に金属材12が回転可能に載置される。次いで、搬送駆動装置46によって台車44が走行することにより、金属材12がY軸方向に搬送され、金属材12が誘導コイル16の内側に配置される。次いで、第1実施形態と同様に、誘導コイル16によって金属材12が加熱される。次いで、搬送駆動装置46によって台車44が走行することにより、金属材12がY軸方向に搬送され、次の工程に運ばれる。
【0073】
このように、第5実施形態に係る誘導加熱装置10は、Y軸方向に台車44を搬送する搬送装置42を備えるので、金属材12の誘導コイル16への搬入、誘導コイル16による金属材12の加熱、及び金属材12の誘導コイル16からの搬出を連続的に行うことができる。
【0074】
なお、第5実施形態では、搬送駆動装置46によって台車44が走行することにより、金属材12がY軸方向に搬送されるが、金属材12の軸方向と交差する交差方向に金属材12が搬送されてもよい。
【0075】
また、搬送装置42による金属材12の搬送方向は、一方向に限らず、X軸方向とY軸方向の二方向でもよい。また、搬送装置42による金属材12の搬送方向は、上記以外の方向でもよい。
【0076】
また、制御装置22は、誘導コイル16によって金属材12が加熱される前及び後のいずれか一方において、搬送装置42によって金属材12が搬送されるように搬送装置42を制御してもよい。
【0077】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
【0078】
図9には、第6実施形態に係る誘導コイル16、交流電源18、及び金属材12が斜視図にて示されている。第6実施形態では、第3実施形態(
図6参照)に対して、誘導コイル16の構成が次のように変更されている。
【0079】
すなわち、第6実施形態において、誘導コイル16は、複数の線材52と、複数の連結材54とを有する。複数の線材52の数(すなわち、誘導コイル16の分割数)は、一例として、4つである。複数の線材52は、X軸方向及びZ軸方向に分割されている。複数の線材52のうち隣り合う線材52同士は、連結材54によって連結されている。複数の線材52は、複数の連結材54によって直列に接続されている。
【0080】
このように構成されていても、誘導コイル16に一定の条件で交流電流Iが供給された場合には、各層14(
図4参照)の断面内にループ状に流れる誘導電流iが生じ、各層14をその厚さ方向及び幅方向に亘って全体的に加熱することができる。
【0081】
なお、第6実施形態において、複数の線材52の数は、一例として、4つであるが、4つ以外でもよい。
【0082】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態について説明する。
【0083】
図10には、第7実施形態に係る誘導コイル16、交流電源18、及び金属材12が斜視図にて示されている。第7実施形態では、第6実施形態(
図9参照)に対して、誘導コイル16の構成が次のように変更されている。
【0084】
すなわち、第7実施形態において、誘導コイル16では、複数の連結材54によって、複数の線材52が交流電源18に対して並列に接続されている。
【0085】
このように構成されていても、誘導コイル16に一定の条件で交流電流Iが供給された場合には、各層14(
図4参照)の断面内にループ状に流れる誘導電流iが生じ、各層14をその厚さ方向及び幅方向に亘って全体的に加熱することができる。
【0086】
また、複数の線材52が交流電源18に対して並列に接続されているので、複数の線材52が直列に接続された場合に比して、誘導コイル16全体のインダクタンス及び抵抗を低減することができる。これにより、誘導コイル16に投入される電力(すなわち、電流×電圧)が電圧に偏りすぎることを抑制することができる。
【0087】
なお、第7実施形態において、複数の線材52と交流電源18との間の回路系にスイッチ(図示省略)が設けられることにより、複数の線材52に流れる電流が切り替えられてもよい。この場合に、電流が流れる線材52が、金属材12の軸方向の一方側に位置する線材52と、金属材12の軸方向の他方側に位置する線材52とに切り替えられてもよい。
【0088】
[第8実施形態]
次に、本発明の第8実施形態について説明する。
【0089】
図11には、第8実施形態に係る誘導加熱装置10が正面図にて示されている。第8実施形態では、第1実施形態(
図2参照)に対して、誘導加熱装置10の構成が次のように変更されている。
【0090】
すなわち、第8実施形態において、誘導コイル16は、誘導コイル16の軸方向が鉛直方向と平行になる横置きに配置されている。具体的には、誘導コイル16は、金属材12の軸方向と交差する交差方向の一例として、Z軸方向の周りに巻き回されている。
【0091】
また、第8実施形態において、誘導加熱装置10は、誘導コイル16を移動させる移動装置56を備える。移動装置56は、一例として、移動機構(図示省略)と、移動駆動装置58とを有する。移動機構は、誘導コイル16をZ軸方向に移動可能に支持している。
【0092】
移動駆動装置58は、誘導コイル16がZ軸方向に移動するように、移動機構を作動させる装置である。移動駆動装置58によって移動機構が作動することにより、誘導コイル16がZ軸方向に移動する。
【0093】
続いて、第8実施形態に係る誘導加熱方法について説明する。
【0094】
第8実施形態に係る誘導加熱方法では、一対のローラ36の上に金属材12が回転可能に載置される。次いで、Z軸方向に誘導コイル16と対向する位置に金属材12が配置される。この場合に、誘導コイル16が水平方向に移動してもよく、一対のローラ36と共に金属材12が水平方向に移動してもよい。また、誘導コイル16と金属材12の両方が水平方向に移動してもよい。
【0095】
次いで、移動駆動装置58によって移動機構が作動することにより、誘導コイル16が金属材12の側に移動し、金属材12の外側に誘導コイル16が配置される。次いで、第1実施形態と同様に、回転駆動装置38によって一対のローラ36が回転することにより、金属材12が回転しながら、誘導コイル16によって金属材12が加熱される。次いで、移動駆動装置58によって移動機構が作動することにより、誘導コイル16が元の位置に移動し、金属材12が次の工程に運ばれる。
【0096】
このように、第8実施形態に係る誘導加熱装置10は、誘導コイル16を移動させる移動装置56を備えるので、金属材12の搬入及び搬出時に誘導コイル16と金属材12とが干渉することを回避することができる。
【0097】
なお、第8実施形態において、誘導コイル16は、金属材12の軸方向と交差する交差方向の一例として、Z軸方向の周りに巻き回されているが、Y軸方向の周りに巻き回されていてもよい。そして、Y軸方向の周りに巻き回された誘導コイル16が移動装置56によってY軸方向に移動してもよい。また、誘導コイル16は、移動装置56によってZ軸方向及びY軸方向の両方に移動してもよい。
【0098】
[第9実施形態]
次に、本発明の第9実施形態について説明する。
【0099】
図12には、第9実施形態に係る誘導加熱装置10が正面図にて示されている。第9実施形態では、第8実施形態(
図11参照)に対して、誘導加熱装置10の構成が次のように変更されている。
【0100】
すなわち、第9実施形態において、移動装置56は、誘導コイル16を移動させるのではなく、台車44をZ軸方向に移動させる。
【0101】
続いて、第9実施形態に係る誘導加熱方法について説明する。
【0102】
第9実施形態に係る誘導加熱方法では、台車44に設けられた一対のローラ36の上に金属材12が回転可能に載置される。次いで、Z軸方向に誘導コイル16と対向する位置に台車44が配置される。この場合に、誘導コイル16が水平方向に移動してもよく、台車44が水平方向に移動してもよい。また、誘導コイル16と台車44の両方が水平方向に移動してもよい。
【0103】
次いで、移動駆動装置58によって移動機構が作動することにより、台車44が金属材12の側に移動し、誘導コイル16の内側に金属材12が配置される。次いで、第1実施形態と同様に、回転駆動装置38によって一対のローラ36が回転することにより、金属材12が回転しながら、誘導コイル16によって金属材12が加熱される。次いで、移動駆動装置58によって移動機構が作動することにより、台車44が元の位置に移動し、金属材12を載せた台車44が次の工程に運ばれる。
【0104】
このように、第9実施形態に係る誘導加熱装置10は、金属材12を載せた台車44を移動させる移動装置56を備えるので、金属材12の搬入及び搬出時に誘導コイル16と金属材12とが干渉することを回避することができる。
【0105】
なお、第9実施形態では、台車44が鉛直方向上側から下側に移動することによって、誘導コイル16の内側に金属材12が配置されるが、台車44が鉛直方向下側から上側に移動することによって、誘導コイル16の内側に金属材12が配置されてもよい。
【0106】
[第10実施形態]
次に、本発明の第10実施形態について説明する。
【0107】
図13には、第10実施形態に係る誘導コイル16及び金属材12が平面図にて示されている。第10実施形態では、第1実施形態(
図2参照)に対して、誘導コイル16の構成が次のように変更されている。
【0108】
すなわち、第10実施形態おいて、誘導コイル16は、金属材12の軸方向と交差する交差方向の一例として、Z軸方向から見てY軸方向と傾斜する方向の周りに巻き回されている。
【0109】
このように構成されていても、誘導コイル16に一定の条件で交流電流Iが供給された場合には、各層14(
図4参照)の断面内にループ状に流れる誘導電流iが生じ、各層14をその厚さ方向及び幅方向に亘って全体的に加熱することができる。
【0110】
なお、第10実施形態において、誘導コイル16は、Z軸方向から見てY軸方向と傾斜する方向の周りに巻き回されているが、金属材12の軸方向と交差する交差方向であれば、どのような方向の周りに巻き回されていてもよい。
【0111】
[第11実施形態]
次に、本発明の第11実施形態について説明する。
【0112】
図14には、第11実施形態に係る誘導コイル16及び金属材12が側面断面図にて示されている。第11実施形態では、第1実施形態(
図2参照)に対して、金属材12の構成が次のように変更されている。
【0113】
すなわち、第11実施形態において、金属材12は、複数の層14を有さずに、一塊の構成とされている。
【0114】
このように金属材12が構成されている場合には、誘導コイル16に一定の条件で交流電流Iが供給されると、金属材12の表面に沿ってループ状に流れる誘導電流iが生じることで金属材12を加熱することができる。
【0115】
なお、金属材12の各層14の表面から絶縁被膜が省かれることにより、重なり合う層14が電気的に接続され、これにより、金属材12が実質的に一塊の構成とされてもよい。
【0116】
また、上記第1実施形態から第11実施形態のうち組み合わせ可能な実施形態は、適宜、組み合わされて実施されてもよい。
【0117】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0118】
10 誘導加熱装置
12 金属材
14 層
16 誘導コイル
18 交流電源
20 回転装置
22 制御装置
24 軸方向部分
26 径方向部分
28 ループ部
30 接続線
32 接続部
34 孔
36 ローラ
38 回転駆動装置
40 開放部
42 搬送装置
44 台車
46 搬送駆動装置
48 台座部
50 車輪
52 線材
54 連結材
56 移動装置
58 移動駆動装置
I 交流電流
i 誘導電流