(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122567
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】圧力測定用プローブ
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20240902BHJP
G01L 1/02 20060101ALI20240902BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G01L5/00 Z
G01L1/02
A61B5/11 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030168
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向井 光樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮至
【テーマコード(参考)】
2F051
4C038
【Fターム(参考)】
2F051AA17
2F051AB02
2F051BA07
4C038VA04
4C038VB05
4C038VB07
(57)【要約】
【課題】成形が容易なバルーンを用いながら、接続部材との接続時には扁平形状にして気密性を確保し、しかも、気密性が確保されているか否かの目視検査を容易にする。
【解決手段】透光性を有するバルーン5は、有底筒状に形成されている。接続部材10は、バルーン5の基端部に差し込まれる扁平筒状のコネクタ部12を有している。コネクタ部12の外面には、バルーン5の内面に密着する密着部20と、密着部20よりも大きな外径を有するとともにバルーン5の開口側の内面に密着してバルーン5を拡径させる拡径部21と、密着部20と拡径部21の間で空気層R1を形成する非密着部23とを有している。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔関連圧力の測定に使用される圧力測定用プローブにおいて、
口腔内に挿入される弾性部材からなり、透光性を有するバルーンと、前記バルーンを構成する弾性部材よりも硬い樹脂材からなり、前記バルーンが接続される接続部材とを備え、
前記バルーンは、有底筒状に形成されて基端部が開口しており、
前記接続部材は、前記バルーンの基端部に差し込まれる扁平筒状のコネクタ部を有し、
前記コネクタ部の外面には、前記バルーンの内面に密着する密着部と、前記密着部よりも前記バルーンの開口に近い側で前記バルーンの内面との間に空気層を形成する非密着部とが形成されていることを特徴とする圧力測定用プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力測定用プローブにおいて、
前記コネクタ部の外面には、前記密着部よりも大きな外径を有するとともに前記バルーンの開口側の内面に密着して前記バルーンを拡径させる拡径部が形成され、
前記非密着部は、前記密着部と前記拡径部の間に形成されていることを特徴とする圧力測定用プローブ。
【請求項3】
請求項1に記載の圧力測定用プローブにおいて、
前記密着部の外径は、前記密着部における前記コネクタ部の軸線方向一端から他端まで同径であることを特徴とする圧力測定用プローブ。
【請求項4】
請求項2に記載の圧力測定用プローブにおいて、
前記拡径部の外径は、前記拡径部における前記コネクタ部の軸線方向一端から他端まで同径であることを特徴とする圧力測定用プローブ。
【請求項5】
請求項2に記載の圧力測定用プローブにおいて、
前記拡径部は、前記コネクタ部の軸線方向に互いに間隔をあけて設けられる第1拡径部と第2拡径部とを含んでおり、前記第1拡径部が前記第2拡径部よりも前記密着部に近く位置付けられ、
前記非密着部は、前記密着部と前記第1拡径部との間に形成され、
前記第1拡径部と、前記第2拡径部との間に空気層を形成する空気層形成部を有していることを特徴とする圧力測定用プローブ。
【請求項6】
請求項1に記載の圧力測定用プローブにおいて、
前記密着部は、前記バルーンの内面に対して長径方向に連続した線状に密着していることを特徴とする圧力測定用プローブ。
【請求項7】
請求項1に記載の圧力測定用プローブにおいて、
前記密着部は、前記バルーンの内面に対して長径方向に連続するとともに軸線方向に所定の幅を有する面状に密着していることを特徴とする圧力測定用プローブ。
【請求項8】
請求項1に記載の圧力測定用プローブにおいて、
前記バルーンが透明であり、
前記コネクタ部が有色であることを特徴とする圧力測定用プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、舌圧、舌下筋圧、口唇圧、頬圧力などの口腔関連圧力を測定する際に使用される圧力測定用プローブに関し、特に、口腔内に挿入されるバルーンを備えた構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者のQOL(Quality of Life)の向上のために摂食・嚥下機能の維持・回
復が求められており、その機能の解明が必要になってきている。摂食・嚥下機能には舌の動きが深く関与しており、食塊の形成および咽頭への送り込みには所定の舌圧が必要となる。このため、舌圧の測定とその解析は重要な意味を持つ。また、舌圧だけでなく、舌下筋圧、口唇圧、頬圧力などの口腔関連圧力の測定も同様に重要な意味を持っており、これら口腔関連圧力の被測定者としては高齢者以外にも身体に障害を有する者等も対象となる。
【0003】
口腔関連圧力の測定方法としては、例えば特許文献1に開示されているように、口腔内に挿入するバルーンに押圧力を加えることによって上記圧力を測定可能にする、いわゆるバルーン式の測定用プローブを用いる方法が知られている。特許文献1のバルーンは、有底筒状に形成されて基端部が開口しており、この開口には、扁平筒状のコネクタ部が差し込まれている。
【0004】
また、可撓性を有するチューブが接続されるコネクタとして、特許文献2~4に開示されているように、チューブに差し込まれる円筒状の接続部を有するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-143961号公報
【特許文献2】特開2007-195851号公報
【特許文献3】特開2007-222195号公報
【特許文献4】特表2007-532274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、バルーンを成形の容易な円筒状としながら、扁平筒状のコネクタ部を差し込むことでバルーンを扁平な形状に変化させることができる。これにより、舌圧の測定時にバルーンを安定させることができる。さらに、頬の内側にバルーンを入れて頬圧力を測定する場合、舌の下のバルーンを入れて舌下筋圧を測定する場合、バルーンを上唇と下唇とで挟んで口唇圧を測定する場合も扁平な形状のバルーンの方が安定しやすい。
【0007】
ところが、円筒状のバルーンに扁平筒状のコネクタ部を差し込むということは、バルーンを変形させることになり、バルーンの内面の周方向の一部とコネクタ部の外面との間に隙間が生じるおそれがある。周方向の一部にでも隙間が生じると耐圧性の低下を招き、ひいては測定結果に悪影響を及ばす。
【0008】
このことに対して、バルーンの取付後に気密性が確保されているか否かの検査工程を設けて対応することが考えられる。ところが、圧力測定装置等に繋いで検査するのでは工数がかかり過ぎるので、目視で検査したい。しかしながら、気密性が確保されている部分と、隙間ができている部分との差が目視で分かりにくく、検査の正確性及び手間がかかるという点で問題があった。
【0009】
一方、特許文献2~4では、チューブに差し込まれる接続部の外面に、気密保持のために突条部を周方向に連続して設けているが、これら特許文献の接続部は円筒状であることから、特許文献1のようにバルーンを扁平な形状にすることはできず、使用時の安定性が悪化してしまう。よって、特許文献2~4の構成を適用することはできない。
【0010】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、成形が容易なバルーンを用いながら、接続部材との接続時には扁平形状にして気密性を確保し、しかも、気密性が確保されているか否かの目視検査を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様では、口腔関連圧力の測定に使用される圧力測定用プローブを前提とすることができる。圧力測定用プローブは、口腔内に挿入される弾性部材からなり、透光性を有するバルーンと、前記バルーンを構成する弾性部材よりも硬い樹脂材からなり、前記バルーンが接続される接続部材とを備えている。前記バルーンは、有底筒状に形成されて基端部が開口している。また、前記接続部材は、前記バルーンの基端部に差し込まれる扁平筒状のコネクタ部を有し、前記コネクタ部の外面には、前記バルーンの内面に密着する密着部と、前記密着部よりも前記バルーンの開口に近い側で前記バルーンの内面との間に空気層を形成する非密着部とが形成されている。
【0012】
この構成によれば、バルーンの開口に接続部材のコネクタ部を差し込むことで、成形の容易な有底筒状のバルーンが全体的に扁平な形状になり、使用時にバルーンが口腔内で安定する。また、コネクタ部の密着部がバルーンの内面に密着し、さらにコネクタ部の基端側がバルーンの内面に密着してバルーンの開口側が拡径する。このとき、密着部とコネクタ部の基端側との間の非密着部は、バルーンに密着せずに、バルーンの内面との間に空気層を形成している。バルーンを外部から見たとき、空気層が形成されている部分と、密着部に密着している部分とでは見え方に明確な差ができる。そして、空気層が形成されている部分と、密着部に密着している部分とが並ぶように形成されることになるので、目視検査で密着部の全周がバルーンの内面に密着しているか否かを容易に判別することが可能になる。
【0013】
本開示の第2の態様に係るコネクタ部の外面には、前記密着部よりも大きな外径を有するとともに前記バルーンの開口側の内面に密着して前記バルーンを拡径させる拡径部が形成されている。前記非密着部は、前記密着部と前記拡径部の間に形成されているので、空気層と密着部との差が判別し易くなる。
【0014】
本開示の第3の態様に係る密着部の外径は、当該密着部における前記コネクタ部の軸線方向一端から他端まで同径に設定することができる。これにより、金型でコネクタ部を成形する際に脱型が容易な形状になるので、コネクタ部の成形が容易に行える。
【0015】
本開示の第4の態様に係る拡径部の外径は、当該拡径部における前記コネクタ部の軸線方向一端から他端まで同径に設定することができる。従って、コネクタ部の成形が容易に行えるようになる。
【0016】
本開示の第5の態様に係る拡径部は、前記コネクタ部の軸線方向に互いに間隔をあけて設けられる第1拡径部と第2拡径部とを含んでいてもよい。この場合、前記第1拡径部が前記第2拡径部よりも前記密着部に近く位置付けられ、前記非密着部は、前記密着部と前記第1拡径部との間に形成され、前記第1拡径部と、前記第2拡径部との間に空気層を形成する空気層形成部を有する構成とすることができる。これにより、非密着部と空気層形成部との少なくとも2箇所で空気層がそれぞれ形成されるので、気密性の目視検査がより一層容易に行える。
【0017】
本開示の第6の態様に係る密着部は、前記バルーンの内面に対して長径方向に連続した線状に密着していてもよい。これにより、密着部とバルーンとの接触面積が減少するので、面圧が上昇し、耐圧性が向上する。
【0018】
本開示の第7の態様に係る密着部は、前記バルーンの内面に対して長径方向に連続するとともに軸線方向に所定の幅を有する面状に密着していてもよい。これにより、密着部とバルーンとの接触面積が増加するので、気密性が向上する。
【0019】
本開示の第8の態様では、バルーンが透明であり、コネクタ部が有色であるので、空気層と、密着部が密着している部分との見え方の差が明確になる。その結果、目視検査がより一層容易になるとともに、目視検査の精度が向上する。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、有底筒状のバルーンに差し込まれる扁平筒状のコネクタ部の外面に、バルーンの内面に密着する密着部と、空気層を形成する非密着部とを設けたので、成形が容易なバルーンを用いながら、接続部材との接続時には扁平形状にして気密性を確保することができ、しかも、気密性が確保されているか否かの目視検査を容易にかつ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る圧力測定用プローブを備えた圧力測定装置を示す正面図である。
【
図2】圧力測定用プローブを先端側から見た斜視図である。
【
図8】コネクタ部の基端側筒部及び外筒部の拡大断面図である。
【
図9】バルーンが装着された状態を示す
図8相当図である。
【
図11】バルーンが装着された状態を示す
図10相当図である。
【
図13】実施形態の変形例に係るプローブ側接続部材の正面図である。
【
図14】実施形態の変形例に係るプローブ側接続部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る圧力測定用プローブ1を備えた圧力測定装置100を示すものである。圧力測定装置100は、口腔関連圧力を測定するための装置であり、圧力測定装置本体101と、測定用プローブ1とを備えている。口腔関連圧力とは、例えば、舌圧、舌下筋圧、口唇圧、頬圧力などであるが、これらに限られるものではなく、口腔関連の各種圧力を測定する際に使用することができる。舌圧とは舌を口蓋に押し付ける力であり、舌下筋圧とは舌を下に押し付ける力であり、口唇圧とは上唇と下唇とを閉じる力であり、頬圧力とは頬を口腔内側へ向けて押す力である。また、被測定者としては、例えば高齢者、障がい者等を挙げることができるが、健常者であってもよい。また、圧力測定用プローブ1は、口腔機能回復のための訓練用具として用いることもでき、その用途は特に限定されない。
【0024】
(圧力測定装置本体101の構成)
圧力測定装置本体101は、圧力センサ102、制御装置103、表示部104、操作ボタン105、ケーシング106及び接続ホース107を備えており、例えば内蔵された電池(図示せず)によって動作するように構成されている。圧力センサ102は、空気圧の変化を測定することが可能に構成された従来周知のセンサであり、現在の測定圧力に対する変化量を測定することができるものであってもよいし、絶対圧を測定することができるものであってもよい。制御装置103は、圧力センサ102から出力された信号に基づいて表示部104を制御するように構成されており、具体的にはマイクロコンピュータである。表示部104は、圧力レベルを数字やバー表示にて示すことが可能に構成されている。予め圧力レベルを複数段階に分けておき、圧力センサ102から出力された信号に基づいて、制御装置103がどの圧力レベルに入るか判定し、その判定結果を表示部104に表示する。表示部104には、圧力を数値で表示するようにしてもよい。
【0025】
操作ボタン105は、圧力測定装置本体101の電源のON/OFF切換や、測定結果のリセットを行うためのものである。操作ボタン105の操作に応じて制御装置103が各部を制御する。ケーシング106は、圧力センサ102や制御装置103等を収容するための部材である。
【0026】
接続ホース107は、基端側接続部材110と、ホース111と、先端側接続部材2とを備えている。ケーシング106には、圧力センサ102に連通する通路(図示せず)が設けられており、この通路に基端側接続部材110が気密状態で接続されるようになっている。基端側接続部材110と先端側接続部材2とは、同じ部材で構成することもできるし、異なる部材で構成することもできる。ホース111は、柔軟な部材で構成されている。ホース111と基端側接続部材110との間、ホース111と先端側接続部材2との間は気密性が確保されている。
【0027】
(測定用プローブ1の構成)
図2~
図5に示すように、測定用プローブ1は、プローブ側接続部材10と、測定時に口腔内に挿入されるバルーン5とを備えており、測定用プローブ1と圧力測定装置本体101とは接続構造S(
図1にのみ示す)によって接続される。測定用プローブ1は、口腔関連圧力の測定に使用されるプローブであることから、口腔関連圧力測定用プローブと呼ぶこともできる。
【0028】
図6に示すバルーン5は、弾性部材からなるものであり、その材料としては、例えばPVC等の樹脂や各種ゴム等を使用することができる。バルーン5を構成する材料は、透光性を有している。これにより、バルーン5は、外部から内部を視認することが可能になる。バルーン5は、透明であってもよく、この場合、無色透明であってもよいし、有色の透明であってもよい。また、バルーン5は、乳白色等に着色された状態で透光性を有していてもよい。
【0029】
図6は、プローブ側接続部材10に取り付けられる前のバルーン5を示している。プローブ側接続部材10に取り付けられる前のバルーン5は、有底の円筒状に形成されており、その底部5aは、軸線方向に膨出するように形成され、全体が滑らかな湾曲面で構成されている。バルーン5の底部5aと基端部5bとの間の中間部5cは、断面形状が円形となっている。バルーン5の基端部5bは、その端面の全体が開口している。この開口は、バルーン5の中間部5cの断面形状と略同じ円形となっている。バルーン5の成形方法は特に限定されないが、例えば、溶融原料に型を浸けて引き上げるディッピング成形、金型内に原料を射出する射出成形等を用いることができる。バルーン5の形状を円筒状にしているので、成形が容易になり、狙い通りの形状が得られやすくなる。また、バルーン5の周方向の肉厚を均一化することも容易になる。
【0030】
バルーン5の形状は、図示した形状に限られるものではなく、例えば、中途部に、大径部と小径部とによって段差が形成されたものであってもよいし、寸胴形状であってもよい。また、バルーン5の断面は円形状であってもよく、この場合は、コネクタ部12を扁平形状にすることで、上述したような扁平形状のバルーン5とすることができる。また、バルーン5の断面が楕形状であってもよく、この場合、その長辺方向もしくは短辺方向に広げることによって扁平形状のバルーン5とすることができる。
【0031】
プローブ側接続部材10は、バルーン5を構成する弾性部材よりも硬い樹脂材からなり、バルーン5の基端部5bが気密に接続される部材である。プローブ側接続部材10を構成する樹脂材は、例えばABS樹脂等を挙げることができるが、これに限られるものではない。
【0032】
プローブ側接続部材10は、プローブ側接続管部11と、コネクタ部12と、外筒部13とを備えている。プローブ側接続管部11、コネクタ部12及び外筒部13は、例えば射出成形法等によって一体成形されている。コネクタ部12を構成する樹脂材は着色されている。これにより、コネクタ部12が有色となる。具体的には、コネクタ部12は、バルーン5と異なる色とされており、後述する空気層R1、R2(
図9に示す)の有無の識別が容易な色とするのが好ましい。また、プローブ側接続管部11は、その基端部から先端部まで円形断面を有しており、直線状に延びている。
【0033】
コネクタ部12は、バルーン5の基端部5bに差し込まれる扁平筒状に形成されている。コネクタ部12の長径寸法(
図3に示すD1)は、バルーン5におけるコネクタ部12が差し込まれた部分から先端側に離れた部分の最大外径D2よりも大きく設定されている。また、コネクタ部12の長径寸法D1は、成形直後(コネクタ部12が差し込まれていないとき)のバルーン5の中間部5c及び基端部5bの外径よりも長く設定されている。さらに、コネクタ部12の短径寸法(
図5に示すD3)は、成形直後のバルーン5の中間部5c及び基端部5bの外径よりも短く設定されている。
【0034】
コネクタ部12の長径寸法D1が成形直後のバルーン5の中間部5c及び基端部5bの外径よりも長いので、コネクタ部12をバルーン5の基端部5bに差し込むと、バルーン5の基端部5bの形状がコネクタ部12の外形状に対応するように扁平な形状になる。バルーン5の基端部5bが扁平形状になると、バルーン5が弾性変形して全体的に扁平な形状になる。つまり、上述したようにバルーン5を円筒状のような成形が容易な形状に成形していたとしても、コネクタ部12に接続することによってバルーン5の全体が扁平な形状に変化する。また、詳細は後述するが、バルーン5を変形させる際にコネクタ部12の外周面にバルーン5の基端部5bが密着し、これにより、気密性が高まる。
【0035】
バルーン5は、球状よりも扁平な形状の方が好ましい。その理由は、例えば舌の上にバルーン5を載せて舌圧を測定する場合を想定すると、舌を上に押し上げるように力を加えることになり、このときに球状バルーンよりも扁平な形状のバルーン5の方が安定しやすいからである。同様に、頬の内側にバルーン5を入れて頬圧力を測定する場合、舌の下のバルーン5を入れて舌下筋圧を測定する場合、バルーン5を上唇と下唇とで挟んで口唇圧を測定する場合も扁平な形状のバルーン5の方が安定しやすい。
【0036】
コネクタ部12の外周長は、バルーン5における該コネクタ部12が差し込まれた部分から先端側に離れた部分の最大の内周長よりも長く設定されている。これにより、バルーン5の基端部5bにコネクタ部12を差し込むと、バルーン5の基端部5bの周長が長くなるように、当該基端部5bが変形することになる。したがって、コネクタ部12の外周面にバルーン5の基端部5bが確実に密着する。
【0037】
図4及び
図5に示すように、コネクタ部12は、バルーン5の基端部5bに差し込まれる基端側筒部12aと、基端側筒部12aの先端部からバルーン5の内部へ向けて突出する先端側筒部12bとを備えている。基端側筒部12aの基端部は、プローブ側接続管部11の先端部から突出するように形成されており、基端側筒部12aの内部とプローブ側接続管部11の内部とは連通している。基端側筒部12aも扁平形状となっており、基端側筒部12aの長手方向に延びる両外面12cは、詳細は後述するが、バルーン5への差込方向とは反対側(基端側)へ行くほど軸線Eから離れるように形成されている。基端側筒部12aの両外面12cが軸線Eから離れるように形成されていることにより、コネクタ部12の外周長がバルーン5への差込方向とは反対側へ行くほど長くなる。
【0038】
先端側筒部12bは、基端側筒部12aの先端部に一体成形されている。バルーン5に差し込まれた状態で、先端側筒部12bの先端部がバルーン5の内部(中間部5cの内部)に達するようになっている。この先端側筒部12bも基端側筒部12aと同様な扁平形状になっているので、バルーン5が確実に扁平な形状になる。先端側筒部12bの内部と基端側筒部12aの内部とは連通している。先端側筒部12bの先端面は開口しており、バルーン5の内部と連通している。これにより、バルーン5の内部からプローブ側接続部材10の基端部まで空気の流通が可能になる。
【0039】
先端側筒部12bの外周長は、基端側筒部12aの外周長よりも短く設定されている。先端側筒部12bの外周長が相対的に短く設定されていることで、先端側筒部12bをバルーン5の内部へ容易に差し込むことが可能になる。また、基端側筒部12aの外周長が相対的に長いので、基端側筒部12aの外面とバルーン5の内面との密着度を高めることができる。
【0040】
外筒部13は、基端側筒部12aに接着されたバルーン5の基端部5bを囲むように延びており、基端側筒部12aと同様な扁平状をなしている。外筒部13の基端部は、プローブ側接続管部11の先端部と一体化されており、外筒部13はプローブ側接続管部11の先端部からプローブ側接続部材10の先端側へ向けて突出している。外筒部13の内面と、基端側筒部12aの外面との間には、バルーン5の基端部5bを差し込むことが可能な隙間ができている。この隙間の大きさは、バルーン5における基端側筒部12aが差し込まれた部分を外側から目視可能な程度の大きさとなっている。また、バルーン5における基端側筒部12aが差し込まれた部分を外筒部13によって覆うことができるので、バルーン5が抜け難くなる。
【0041】
外筒部13には、軸線方向に延びるスリット13aが形成されている。スリット13aの数は特に限定されるものではないが、この実施形態では2つとされている。スリット13aの形成位置は、外筒部13の長手方向両端部とされている。スリット13aを形成することで、バルーン5の基端部5bの位置及び基端側筒部12aへの接着状態を、スリット13aを介して外筒部13の外部から確認することが可能になる。
【0042】
(基端側筒部12aの詳細)
図8に拡大して示すように、基端側筒部12aの両外面12cには、それぞれ、バルーン5の内面に密着する密着部20と、先端側拡径部(第1拡径部)21と、基端側拡径部(第2拡径部)22とが設けられている。バルーン5の内面と密着部20とは接着剤等によって接着されていてもよいし、接着されていなくてもよい。
【0043】
密着部20は、基端側筒部12aの長径方向に連続している。密着部20は、基端側筒部12aの先端部に位置しており、従って
図9に示すように、バルーン5の基端部5bに差し込まれた状態で当該バルーン5の開口から当該バルーン5の奥側に離れることになる。また、密着部20は、バルーン5の内面に対して周方向に連続して密着する部分となっている。この密着部20は、コネクタ部12の軸線E方向に所定の幅W1を有しており、密着部20の外径D4は、当該密着部20におけるコネクタ部12の軸線E方向一端から他端まで同径である。
【0044】
密着部20の幅W1は、任意に設定することができる。密着部20の幅W1を広げることで、密着部20がバルーン5の内面に対して周方向に連続するとともに軸線E方向に所定の幅を有する面状に密着することになる。これにより、密着部20とバルーン5との接触面積が増加するので、気密性が向上する。
【0045】
一方、密着部20の幅W1を狭くすることで、密着部20は、バルーン5の内面に対して周方向に連続した線状に密着する。これにより、密着部20とバルーン5との接触面積が減少するので、面圧が上昇し、耐圧性が向上する。
【0046】
先端側拡径部21と基端側拡径部22とは、コネクタ部12の軸線E方向に互いに間隔をあけて設けられている。先端側拡径部21は、密着部20よりもコネクタ部12の基端部に近く位置付けられており、従ってバルーン5の基端部5bに差し込まれた状態で密着部20よりもバルーン5の開口に近い側に配置される。先端側拡径部21は、密着部20の外径D4よりも大きな外径D5を有するとともに、基端側筒部12aの長径方向に連続している。これにより、先端側拡径部21がバルーン5に差し込まれた状態で、先端側拡径部21の外面がバルーン5の開口側の内面に密着してバルーン5を拡径させる。先端側拡径部21及び基端側拡径部22は、バルーン5の内面に対して接着剤等によって接着されていてもよいし、接着されていなくてもよい。
【0047】
先端側拡径部21は、コネクタ部12の軸線E方向に所定の幅W2を有しており、先端側拡径部21の外径D5は、当該先端側拡径部21におけるコネクタ部12の軸線E方向一端から他端まで同径である。先端側拡径部21の幅W2と、密着部20の幅W1とは、略同じに設定されているが、幅W2が幅W1より広く設定されていてもよいし、狭く設定されていてもよい。先端側拡径部21と密着部20との外径差S1は、例えば0.3mm以上、または0.5mm以上、または1.0mm以上に設定することができる。
【0048】
先端側拡径部21と密着部20とに外径差S1を設けることで、
図9に示すように、バルーン5の内面に密着しない非密着部23がコネクタ部12の外面に形成される。非密着部23は、バルーン5に差し込まれた状態で、密着部20よりもバルーン5の開口に近い側に位置している。つまり、非密着部23は、密着部20と先端側拡径部21の間に形成されている。また、非密着部23は、基端側筒部12aの長径方向に連続している。これにより、密着部20よりもバルーン5の開口に近い側においてバルーン5の内面との間に、基端側筒部12aの長径方向に連続した第1空気層R1が形成される。外径差S1を上記寸法以上確保することで、第1空気層R1が全周に亘って確実に形成されることになる。言い換えると、第1空気層R1が基端側筒部12aの長径方向に連続して形成されるように、外径差S1の下限値を設定している。
【0049】
先端側拡径部21と密着部20との外径差S1の上限は、例えば1.5mm以下、2.0mm以下に設定することができる。先端側拡径部21が密着部20に比べて大きすぎて上記上限を超えてしまうと、密着部20がバルーン5の内面に密着し難くなり、気密性が低下するとともに、後述する目視検査の精度が低下するので、上限を上記範囲としておくのが好ましい。
【0050】
基端側拡径部22は、先端側拡径部21よりもコネクタ部12の基端部に近く位置付けられており、従ってバルーン5の基端部5bに差し込まれた状態で先端側拡径部21よりもバルーン5の開口に近い側に配置される。基端側拡径部22は、先端側拡径部21の外径D5よりも大きな外径D6を有するとともに、基端側筒部12aの長径方向に連続している。これにより、基端側拡径部22がバルーン5に差し込まれた状態で、基端側拡径部22の外面がバルーン5の開口側の内面に密着してバルーン5を拡径させる。
【0051】
基端側拡径部22は、コネクタ部12の軸線E方向に所定の幅W3を有しており、基端側拡径部22の外径D6は、当該基端側拡径部22におけるコネクタ部12の軸線E方向一端から他端まで同径である。基端側拡径部22の幅W3は、密着部20の幅W1や先端側拡径部21の幅W2よりも広く設定されているが、幅W3が幅W1、W2より狭く設定されていてもよいし、同じに設定されていてもよい。基端側拡径部22と先端側拡径部21との外径差S2は、先端側拡径部21と密着部20との外径差S1と同様に設定することができる。
【0052】
基端側拡径部22と先端側拡径部21とに外径差S2を設けることで、
図9に示すように、バルーン5の内面に密着しない空気層形成部24がコネクタ部12の外面に形成される。空気層形成部24は、バルーン5に差し込まれた状態で、先端側拡径部21よりもバルーン5の開口に近い側に位置している。つまり、空気層形成部24は、先端側拡径部21と基端側拡径部22の間に形成されている。また、空気層形成部24は、基端側筒部12aの長径方向に連続している。これにより、先端側拡径部21よりもバルーン5の開口に近い側においてバルーン5の内面との間に基端側筒部12aの長径方向に連続した第2空気層R2が形成される。外径差S2を上記寸法以上確保することで、第2空気層R2が基端側筒部12aの長径方向に連続して形成されることになる。言い換えると、第2空気層R2が基端側筒部12aの長径方向に連続して形成されるように、外径差S2の下限値を設定している。
【0053】
尚、先端側拡径部21と基端側拡径部22とのうち、一方を省略してもよい。先端側拡径部21を省略すると、基端側拡径部22と密着部20との間に第1空気層R1が形成されることになる。また、基端側拡径部22を省略すると、第2空気層R2が形成されないことになる。
【0054】
また、上述した例では、拡径部が先端側拡径部21と基端側拡径部22とを含んでいる例について説明したが、3つ目の拡径部や4つ目の拡径部を含んでいてもよい。これにより、空気層の数が更に増えることになり、目視検査が行い易くなる。
【0055】
(使用方法)
次に、上記のように構成された圧力測定装置100の使用方法について説明する。まず、測定用プローブ1のバルーン5を口腔内に挿入する。バルーン5の口腔内における位置は、測定したい部位に応じて設定することができる。舌圧を測定する場合には、舌の上にバルーン5を載せて舌を上に押し上げるように力を加える。これにより、バルーン5は上下方向に押し潰されることになり、バルーン5の内部の空気圧が高まる。バルーン5の内部の空気圧変化は、プローブ側接続部材10、先端側接続部材2、ホース111及び基端側接続部材110を介して圧力測定装置本体101の圧力センサ102によって検知される。圧力センサ102から出力された信号に基づいて、制御装置103が圧力レベルを判定し、その判定結果を表示部104に表示する。
【0056】
(実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、バルーン5の開口にプローブ側接続部材10のコネクタ部12を差し込むことで、成形の容易な有底筒状のバルーン5が全体的に扁平な形状になり、使用時にバルーン5が口腔内で安定する。具体的には、舌圧の測定時にバルーン5を舌の上で安定させることができるとともに、頬の内側にバルーン5を入れて頬圧力を測定する場合、舌の下のバルーン5を入れて舌下筋圧を測定する場合、バルーン5を上唇と下唇とで挟んで口唇圧を測定する場合もバルーン5が安定する。
【0057】
また、コネクタ部12の密着部20がバルーン5の内面に密着し、さらにコネクタ部12の拡径部21、22がバルーン5の内面に密着してバルーン5の開口側が拡径する。このとき、密着部20と先端側拡径部21の間の非密着部23は、バルーン5に密着せずに、バルーン5の内面との間に第1空気層R1を形成している。バルーン5を外部から見たとき、第1空気層R1が形成されている部分と、密着部20に密着している部分とでは見え方に明確な差、具体的には、第1空気層R1が形成されている部分と、密着部20に密着している部分との色の違いが明確に把握できるようになる。
【0058】
そして、第1空気層R1が形成されている部分と、密着部20に密着している部分とが並ぶように形成されることになるので、目視検査で密着部20の全周がバルーン5の内面に密着しているか否かを容易に判別することが可能になる。例えば、第1空気層R1が形成されている部分と同じ色が、密着部20に対応する部分に存在していると、その部分には空隙が生じているということであり、気密性を確保できないと判断する。一方、第1空気層R1が形成されている部分と同じ色が、密着部20に対応する部分に存在していない場合には、空隙が無いということであり、気密性を確保できると判断する。
【0059】
特に、先端側拡径部21と基端側拡径部22とが軸線E方向に離れていて、先端側拡径部21と基端側拡径部22との間に第2空気層R2が形成されているので、密着している部分と、密着していない部分(空気層がある部分)とが交互に複数形成されることになる。これにより、目視検査が容易になるとともに、目視検査の精度が工場する。
【0060】
また、密着部20がバルーン5の内面に密着していることで、十分な気密性が確保される。例えばバルーン5の内圧を30kPaまで高めて30秒間放置してもバルーン5とコネクタ部12との間からの空気漏れは無かった。
【0061】
(変形例)
図10は、変形例に係るコネクタ部12の基端側筒部12a及び外筒部13の拡大断面図である。バルーン5の内面に密着する密着部200は、基端側筒部12aの先端部から軸線E方向中間部に亘って形成されている。密着部200の外径D7は、基端側筒部12aの先端部に接近すればするほど小さくなっている。この変形例では、
図11に示すように、バルーン5に差し込まれた状態で、密着部200が、バルーン5の内面に対して長径方向に連続するとともに軸線E方向に所定の幅W4を有する面状に密着している。
【0062】
図12は、
図10のA部を拡大して示している。密着部200における軸線E方向の寸法Bは、密着部200における厚み寸法Cよりも長く設定されている。すなわち、
図12の仮想線L1は、密着部200を設ける前のベースとなる形状を示す線であり、このベースとなる形状に対して外径が大きくなるように密着部200を設けている。仮想線L1と、密着部200におけるバルーン5に密着する面との離間寸法が寸法Cとなっている。寸法Cは、例えば0.3mm以上、または0.5mm以上に設定することができる。一方、寸法Bは、例えば1.5mm以上、または2.0mm以上に設定することができる。
【0063】
図10及び
図11に示すように、基端側筒部12aの外面12cには、密着部200よりも基端寄りの部位に、非密着部203が設けられている。非密着部203は、密着部200における軸線E方向の基端に連続している。さらに、基端側筒部12aの外面12cには、非密着部203も基端寄りの部位に、密着部200よりも大きな外径を有するとともに、バルーン5を拡径させる拡径部201が設けられている。非密着部203と拡径部201との外径差S3は、上記外径差S1と同様に設定されている。これにより、
図11に示すように、バルーン5に差し込まれた状態で、密着部200よりもバルーン5の開口に近い側でバルーン5の内面との間に空気層R3が形成される。
【0064】
図13~
図15は、実施形態の別の変形例を示す図である。この変形例では、基端側筒部12aの両外面12cに、それぞれバルーン5の内面に密着する先端側密着部211及び基端側密着部212と、非密着部213とが設けられている。先端側密着部211と基端側密着部212とは、互いに間隔をあけて設けられており、先端側密着部211と基端側密着部212との間に非密着部213が設けられている。先端側密着部211は、外面12cから径方向に膨出する膨出面で構成されている。また、基端側密着部212は、外面12cから径方向に、先端側密着部211と同じ程度に外面12cから膨出する膨出面で構成されている。両外面12cは、バルーン5への差込方向とは反対側(基端側)へ行くほど軸線Eから離れるように形成されているため、基端側密着部212は先端側密着部211よりも軸線Eに沿った方向に見て径方向に突出している。先端側密着部211及び基端側密着部212は断面円弧状に形成することができる。先端側密着部211と基端側密着部212との間の部分は窪むような形状となっており、この部分が非密着部213となっている。
【0065】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上説明したように、本発明に係る圧力測定用プローブは、例えば舌圧、舌下筋圧、口唇圧、頬圧力などの口腔関連圧力を測定する際に使用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 圧力測定用プローブ
5 バルーン
10 プローブ側接続部材
12 コネクタ部
20 密着部
21 先端側拡径部(第1拡径部)
22 基端側拡径部(第2拡径部)
23 非密着部
24 空気層形成部
R1 第1空気層
R2 第2空気層