(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122570
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法および推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
G05B23/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030173
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】反町 宏明
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223AA11
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB05
3C223FF02
3C223FF05
3C223FF12
3C223FF13
3C223FF22
3C223FF23
3C223FF26
3C223FF42
3C223GG01
3C223HH02
3C223HH03
3C223HH29
(57)【要約】
【課題】ソフトセンサが出力する推定値の精度を維持すること。
【解決手段】ソフトセンサ10は、プラントで製造される製造物の性状を推定した値をバイアス値で補正して推定値として出力し、製造物の性状を分析した分析値を取得し、取得した分析値に対応付けられた製造物が分析された所定時刻における、プラントが有するデバイスによって測定された測定値の安定性を示す安定度を算出し、算出した安定度に対応する変数値を用いて、分析値と推定値とに基づくバイアス値を更新する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントで製造される製造物の性状を推定した値をバイアス値で補正して推定値として出力する制御部を有し、
前記制御部は、
前記製造物の性状を分析した分析値を取得し、
前記分析値に対応付けられた前記製造物が分析された所定時刻における、前記プラントが有するデバイスによって測定された測定値の安定性を示す安定度を算出し、
前記安定度に対応する変数値を用いて、前記分析値と前記推定値とに基づく前記バイアス値を更新する、
推定装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記分析値と前記推定値との差分に、前記安定度が高いほど大きな値となる前記変数値を乗算した結果を用いて、前記バイアス値を更新する、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記プラントにおいて前記製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、前記分析値を取得し、前記安定度を算出し、前記安定度に対応する前記変数値を用いて前記バイアス値を更新し、
前記所定時間ごとに更新される前記バイアス値を用いて、前記製造物の性状をリアルタイムに推定した前記推定値を出力する、
請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記プラントにおいて前記製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、化学的分析または物理的分析を用いて前記製造物の性状を分析した前記分析値を取得し、前記安定度を算出し、前記安定度に対応する前記変数値を用いて前記バイアス値を更新する、
請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記プラントにおいて前記製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、オンラインアナライザを用いて前記製造物の性状を分析した前記分析値を取得し、前記安定度を算出し、前記安定度に対応する前記変数値を用いて前記バイアス値を更新する、
請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記プラントにおいて前記製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、プロセスシミュレータを用いて前記製造物の性状を分析した前記分析値を取得し、前記安定度を算出し、前記安定度に対応する前記変数値を用いて前記バイアス値を更新する、
請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記プラントにおいて前記製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、前記測定値の入力に応じて前記分析値を出力するように訓練された機械学習モデルを用いて前記製造物の性状を分析した前記分析値を取得し、前記安定度を算出し、前記安定度に対応する前記変数値を用いて前記バイアス値を更新する、
請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項8】
前記デバイスは、石油精製プラントにおける温度計、圧力計および流量計のうち少なくとも1つであって、
前記製造物の性状は、前記石油精製プラントで生産される石油の成分である、
請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項9】
コンピュータが、
プラントで製造される製造物の性状を推定した値をバイアス値で補正して推定値として出力し、
前記製造物の性状を分析した分析値を取得し、
前記分析値に対応付けられた前記製造物が分析された所定時刻における、前記プラントが有するデバイスによって測定された測定値の安定性を示す安定度を算出し、
前記安定度に対応する変数値を用いて、前記分析値と前記推定値とに基づく前記バイアス値を更新する、
処理を実行する推定方法。
【請求項10】
コンピュータに、
プラントで製造される製造物の性状を推定した値をバイアス値で補正して推定値として出力し、
前記製造物の性状を分析した分析値を取得し、
前記分析値に対応付けられた前記製造物が分析された所定時刻における、前記プラントが有するデバイスによって測定された測定値の安定性を示す安定度を算出し、
前記安定度に対応する変数値を用いて、前記分析値と前記推定値とに基づく前記バイアス値を更新する、
処理を実行させる推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、推定方法および推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製プラント等の多くのプラントでは製造物の性状(プロパティ)を計測するために、高度制御の一部であるソフトセンサが使用されることがある。ソフトセンサは、オンラインアナライザ等の特別な機器を使用せず、温度、圧力、流量といったプラントで計測、収集されるデータを用いて性状をリアルタイムに推定する。ソフトセンサを用いることで、リアルタイムに連続的に性状値を推定し、推定値を用いてPID(Proportional Integral Differential)制御等により性状を緻密に制御できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】横河電機株式会社、横河ソリューションサービス株式会社:“Platform for Advanced Control and Estimation(高度制御ソリューション)”、[online]、[2023年2月10日検索]、インターネット<https://www.yokogawa.co.jp/solutions/products-and-services/isol/mes/apc-jp/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ソフトセンサが出力する推定値の精度を維持することは難しい。例えば、プラントのプロセスが安定していない場合には、信頼性の低い分析値を用いてソフトセンサ値を補正するバイアス値を更新すると、推定値であるソフトセンサ値の精度を悪化させる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ソフトセンサが出力する推定値の精度を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プラントで製造される製造物の性状を推定した値をバイアス値で補正して推定値として出力する制御部を有し、前記制御部は、前記製造物の性状を分析した分析値を取得し、前記分析値に対応付けられた前記製造物が分析された所定時刻における、前記プラントが有するデバイスによって測定された測定値の安定性を示す安定度を算出し、前記安定度に対応する変数値を用いて、前記分析値と前記推定値とに基づく前記バイアス値を更新する、推定装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、コンピュータが、プラントで製造される製造物の性状を推定した値をバイアス値で補正して推定値として出力し、前記製造物の性状を分析した分析値を取得し、前記分析値に対応付けられた前記製造物が分析された所定時刻における、前記プラントが有するデバイスによって測定された測定値の安定性を示す安定度を算出し、前記安定度に対応する変数値を用いて、前記分析値と前記推定値とに基づく前記バイアス値を更新する、処理を実行する推定方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、コンピュータに、プラントで製造される製造物の性状を推定した値をバイアス値で補正して推定値として出力し、前記製造物の性状を分析した分析値を取得し、前記分析値に対応付けられた前記製造物が分析された所定時刻における、前記プラントが有するデバイスによって測定された測定値の安定性を示す安定度を算出し、前記安定度に対応する変数値を用いて、前記分析値と前記推定値とに基づく前記バイアス値を更新する、処理を実行させる推定プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ソフトセンサが出力する推定値の精度を維持することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る性状推定システムの構成例および処理例を示す図である。
【
図2】参考技術に係る性状推定システムの具体例1を示す図である。
【
図3】参考技術に係る性状推定システムの具体例2を示す図である。
【
図4】参考技術に係る性状推定システムの具体例3を示す図である。
【
図5】実施形態に係る性状推定システムの各装置の構成例を示すブロック図である。
【
図6】実施形態に係るデータ処理例を示す図である。
【
図7】実施形態に係る性状推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係るハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る推定装置、推定方法および推定プログラムを、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではない。
【0012】
〔実施形態〕
以下に、実施形態に係る性状推定システム100の構成および処理、性状推定システム100の各装置の構成および処理、性状推定システム100の処理の流れを順に説明し、最後に実施形態の効果を説明する。
【0013】
〔1.性状推定システム100の構成および処理〕
図1を用いて、実施形態に係る性状推定システム100の構成および処理を詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る性状推定システム100の構成例および処理例を示す図である。以下に、性状推定システム100全体の構成例、性状推定システム100全体の処理例、参考技術の性状推定システム100-Pの問題点を順に説明し、最後に性状推定システム100の効果について説明する。なお、実施形態では、石油精製プラントに設置されるデバイスであるフィールド機器20Aを使用する工場生産遠隔監視を一例にして説明するが、デバイスや利用分野を限定するものではなく、電力モニタ、風力発電、上下水モニタ、河川監視等の環境計測遠隔監視に適用することもできる。
【0014】
(1-1.性状推定システム100全体の構成例)
性状推定システム100は、推定装置であるソフトセンサ10および外部機器20(フィールド機器20A、オペレータ端末20B、制御機器20C)を有する。ここで、フィールド機器20Aは、石油精製プラントに設置される外部機器20であって、例えば、温度、圧力、流量等のプロセス値を収集するセンサ機器である。また、オペレータ端末20Bは、石油精製プラントを管理するオペレータOが使用する外部機器20であって、例えば、デスクトップPC(Personal Computer)等である。また、制御機器20Cは、石油精製プラントのプロセスを制御する外部機器20であって、例えば、フィールドコントローラ等である。なお、
図1に示した性状推定システム100には、複数台のソフトセンサ10が含まれてもよい。
【0015】
ソフトセンサ10と外部機器20とは、図示しない所定の通信網(ネットワーク)を介して、有線または無線により通信可能に接続される。なお、所定の通信網には、インターネットや専用線等の各種通信網を採用することができる。
【0016】
(1-2.性状推定システム100全体の処理例)
上記のような性状推定システム100全体の処理例について説明する。以下では、プロセス値送信処理、分析値送信処理、安定度算出処理、アップデートパラメータ変換処理、バイアス値更新処理、推定値出力処理、推定値送信処理の順に説明する。なお、下記の処理は、異なる順序で実行することもできる。また、下記の処理のうち、省略される処理があってもよい。
【0017】
(1-2-1.プロセス値送信処理)
フィールド機器20Aは、プロセス値送信処理を実行する(ステップS1)。ここで、プロセス値とは、フィールド機器20Aが収集するプラントの制御に用いられる測定値であって、温度値、圧力値、流量値等である。例えば、温度センサ機器であるフィールド機器20Aは、石油精製プラントにおいて生産されたガソリンの温度値を1分ごとに送信する。
【0018】
(1-2-2.分析値送信処理)
オペレータ端末20Bは、分析値送信処理を実行する(ステップS2)。例えば、オペレータ端末20Bは、オペレータOの操作によって、実験室(適宜、「ラボ」)において分析されたガソリン中の硫黄の含有量を1日ごとに送信する。
【0019】
(1-2-3.安定度算出処理)
ソフトセンサ10は、安定度算出処理を実行する(ステップS3)。ここで、安定度とは、プロセス値の安定性を示す数値であって、例えば、所定時間におけるプロセス値の平均値との差分(平均偏差)や標準偏差等である。例えば、ソフトセンサ10は、分析値が対応付けられたガソリンが採取(サンプリング)された採取時刻を含む1時間前におけるプロセス値の平均偏差や標準偏差を算出する。このとき、プロセス値の平均偏差が所定値以上である場合には、プロセス値の安定性が低いと判断できる。また、プロセス値の標準偏差が所定値以上である場合には、プロセス値の安定性が低いと判断できる。
【0020】
(1-2-4.アップデートパラメータ変換処理)
ソフトセンサ10は、アップデートパラメータ変換処理を実行する(ステップS4)。ここで、アップデートパラメータ(適宜、「安定度インデックス」)とは、ソフトセンサ10の推定値であるソフトセンサ値を補正するバイアス値を更新するために用いる変数値であって、例えば、0~1の範囲の連続値である。例えば、ソフトセンサ10は、算出したプロセス値の平均偏差や標準偏差を用いて、プロセス値の安定性が低ければ0に近づき、プロセス値の安定性が高ければ1に近づくように、分析値の採取時刻tに対応するアップデートパラメータP(t)を算出する。
【0021】
(1-2-5.バイアス値更新処理)
ソフトセンサ10は、バイアス値更新処理を実行する(ステップS5)。例えば、ソフトセンサ10は、採取時刻tの分析値VA(t)と採取時刻tの推定値VE(t)との性状値差分ΔV(t)を算出し、更新前バイアス値b(old)にアップデートパラメータP(t)×性状値差分ΔV(t)を加算することによって更新後バイアス値b(new)を算出する。
【0022】
(1-2-6.推定値出力処理)
ソフトセンサ10は、推定値出力処理を実行する(ステップS6)。例えば、ソフトセンサ10は、プロセス値Xとモデルパラメータaを用いて算出した補正前推定値Y(old)に更新後バイアス値b(new)を加算することによって補正後推定値Y(new)を算出する。このとき、ソフトセンサ10は、ソフトセンサ10と接続されるモニタに算出した補正後推定値Y(new)をソフトセンサ値として表示することもできる。
【0023】
(1-2-7.推定値送信処理)
ソフトセンサ10は、推定値送信処理を実行する(ステップS7)。例えば、ソフトセンサ10は、算出した補正後推定値Y(new)をソフトセンサ値として制御機器20Cに送信する。このとき、制御機器20Cは、送信されたソフトセンサ値が所定値を超過した場合には、プロセスの異常を検出し、アラームを発生することもできる。
【0024】
(1-3.性状推定システム100の効果)
以下では、ソフトセンサの概要、参考技術に係る性状推定システム100-Pの概要および問題点について説明した上で、性状推定システム100の効果について説明する。
【0025】
(1-3-1.性状推定システム100-Pの概要)
図2を用いて、参考技術に係る性状推定システム100-Pの概要について説明する。
図2は、参考技術に係る性状推定システム100-Pの具体例1を示す図である。
【0026】
石油精製プラントをはじめ、多くのプラントでは製品の性状を計測している。プラントの運転には、実験室やオンラインアナライザを用いた性状分析に加え、高度制御の一部であるソフトセンサが使用されることがある。ソフトセンサは、オンラインアナライザ等の特別な機器を使用せず、温度、圧力、流量といったプラントで通常、計測および収集されるデータを用いて性状をリアルタイムに推定する。
【0027】
ソフトセンサの利点として以下の2つが挙げられる。第1に、リアルタイム、かつ連続的に性状値を推定できる。第2に、推定した性状値を用いて、PID制御やモデル予測制御によって性状を緻密に制御できる。
【0028】
すなわち、
図2に示すように、性状推定システム100-Pでは、ソフトセンサ10-Pは、ラボサンプリングによる分析値(適宜、「ラボ分析値」)を用いて、ラボサンプリングのたびにバイアス値更新処理(バイアス・アップデート)を実行する。
【0029】
ここで、ソフトセンサ10-Pが実行するバイアス値更新処理について説明する。ソフトセンサ10-Pが実行するバイアス値更新処理では、事前に決定されたアップデートパラメータPp(0~1の連続値)を用いて以下のように実行される。すなわち、ソフトセンサ10-Pは、採取時刻(サンプリング時刻)tの分析値VA(t)と採取時刻tの推定値VE(t)との性状値差分ΔV(t)を算出し、更新前バイアス値b(old)にアップデートパラメータPp×性状値差分ΔV(t)を加算することによって更新後バイアス値b(new)を算出する。このとき、性状値差分ΔV(t)=VA(t)-VE(t)、更新後バイアス値b(new)=b(old)+Pp×ΔV(t)のように表わされる。
【0030】
そして、ソフトセンサ10-Pは、プロセス値Xとモデルパラメータaを用いて算出した補正前推定値Y(old)に更新後バイアス値b(new)を加算することによって補正後推定値Y(new)を算出する。ここで、ソフトセンサ10-Pは、推定式が線形とした場合には、推定式Y=Σa(i)×X(i)+bを用いて、ラボ分析値と推定値が一致するようにバイアス値を更新する。すなわち、上記の推定式において、推定値をY、N種類の入力データ(測定値)を{X(1),・・・,X(i),・・・,X(N)}、X(i)に対応するa(i)をモデルパラメータ、bを定数項であるバイアス値とすると、補正前推定値Y(old)=Σa(i)×X(i)と表わされるので、補正後推定値Y(new)=Y(old)+b(new)が成立する。
【0031】
(1-3-2.性状推定システム100-Pの問題点)
図3および
図4を用いて、参考技術に係る性状推定システム100-Pの問題点について説明する。
図3は、参考技術に係る性状推定システム100-Pの具体例2を示す図である。
図4は、参考技術に係る性状推定システム100-Pの具体例3を示す図である。
【0032】
図3に示すように、性状推定システム100-Pでは、参考技術に係るソフトセンサ10-Pは、ラボ分析値を用いてバイアス値を更新する。
図3の例では、ソフトセンサ10-Pは、
図3(1)のようにラボ分析値を用いてバイアス値を更新し、
図3(2)のように更新したバイアス値を用いてソフトセンサ値を出力している。
【0033】
上記の処理は、性状値の真値であるラボ分析値に推定値を一致させることによって、ソフトセンサ値の精度を高く維持することができるが、ラボ分析値の信頼性に関連する採取時刻におけるプロセスの状況を考慮しない。
図4の例では、
図4(1)のようにプロセス値およびソフトセンサ値の出力値が上下動する幅が大きいプロセスは不安定であり、
図4(2)のようにプロセス値およびソフトセンサ値の出力値が上下動する幅が少ないプロセスは安定である。しかしながら、ソフトセンサ10-Pは、プロセスが安定していないときに採取されたラボ分析値に対しても同様にバイアス値更新処理を実行する。プロセスが安定していない場合には、温度や圧力等のプロセス値が安定していないので、測定対象の性状値であるラボ分析値も安定しない。したがって、性状推定システム100-Pでは、ラボ分析値が安定しない信頼性が低いデータを用いてバイアス値更新処理を実行することによって、ソフトセンサ値の精度を悪化させる可能性がある。
【0034】
具体的な例を挙げて説明すると、性状推定システム100-Pでは、アップデートパラメータPpは固定値であるので、サンプリングの際のプロセスが安定していた場合でも不安定な場合でも同じ割合でバイアス値更新処理を実行する。ここで、アップデートパラメータPpに大きな値(≒1.0)が設定されていた場合には、信頼性の低いラボ分析値を用いてバイアス値を大きく変更するので、ソフトセンサ値の精度を悪化させる。一方、アップデートパラメータPpに小さな値(≒0.0)が設定されていた場合には、ラボ分析値がバイアス値に反映されないので、ソフトセンサ値の精度を悪化させる。すなわち、性状推定システム100-Pでは、プロセスが安定していても安定していなくても、ソフトセンサ10-Pの性能が維持できない可能性がある。
【0035】
(1-3-3.性状推定システム100の概要)
性状推定システム100では、フィールド機器20Aは、プラントで収集した測定値であるプロセス値をソフトセンサ10に送信する。また、オペレータ端末20Bは、ラボ分析値等の分析値をソフトセンサ10に送信する。ソフトセンサ10は、分析値が対応付けられた採取時刻の1時間前におけるプロセス値の安定度を算出し、算出した安定度をアップデートパラメータPに変換し、変換したアップデートパラメータPを用いてバイアス値を更新し、更新したバイアス値を用いて推定値であるソフトセンサ値を出力する。また、ソフトセンサ10は、出力したソフトセンサ値を制御機器20Cに送信することもできる。
【0036】
(1-3-4.性状推定システム100の効果)
性状推定システム100では、ラボ分析値の信頼度を考慮しバイアス値更新処理を実行することで、ソフトセンサ10の性能悪化を防止することができる。また、性状推定システム100は、「Platform for Advanced Control and Estimation(適宜、「PACE」と表記)」に対して適応することができる。さらに、性状推定システム100では、ソフトセンサ10の精度を向上し、プラントの歩留まりを向上することができる。
【0037】
以上より、性状推定システム100は、ソフトセンサ10が出力する推定値の精度を維持することを可能とする。
【0038】
〔2.性状推定システム100の各装置の構成および処理〕
図5を用いて、
図1に示した性状推定システム100が有するソフトセンサ10等の構成および処理について説明する。
図5は、実施形態に係る性状推定システム100の各装置の構成例を示すブロック図である。以下では、実施形態に係る性状推定システム100全体の構成例を説明した上で、ソフトセンサ10の構成例および処理例、外部機器20の構成例および処理例、ならびに性状推定システム100のデータ処理例を詳細に説明する。
【0039】
(2-1.性状推定システム100全体の構成例)
図5を用いて、
図1に示した性状推定システム100全体の構成例について説明する。
図5に示すように、性状推定システム100は、ソフトセンサ10および外部機器20(フィールド機器20A、オペレータ端末20B、制御機器20C)を有する。ソフトセンサ10は、フィールド機器20A、オペレータ端末20Bおよび制御機器20Cと、所定の通信網によって通信可能に接続されている。
【0040】
(2-2.ソフトセンサ10の構成例および処理例)
図5を用いて、ソフトセンサ10の構成例および処理例について説明する。ソフトセンサ10は、通信部11、記憶部12および制御部13を有する。なお、ソフトセンサ10は、ソフトセンサ10の管理者等から各種操作を受け付ける入力部(例えば、キーボードやマウス等)や、各種情報を表示するための表示部(例えば、液晶ディスプレイ等)を有してもよい。
【0041】
(2-2-1.通信部11)
通信部11は、他の装置との間でのデータ通信を司る。例えば、通信部11は、ルータ等を介して、各通信装置との間でデータ通信を行う。また、通信部11は、図示しないオペレータの端末との間でデータ通信を行うことができる。
【0042】
(2-2-2.記憶部12)
記憶部12は、制御部13が動作する際に参照する各種情報や、制御部13が動作した際に取得した各種情報を記憶する。ここで、記憶部12は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置等で実現され得る。なお、
図5の例では、記憶部12は、ソフトセンサ10の内部に設置されているが、ソフトセンサ10の外部に設置されてもよいし、複数の記憶部が設置されていてもよい。
【0043】
(2-2-3.制御部13)
制御部13は、当該ソフトセンサ10全体の制御を司る。制御部13は、取得部13a、算出部13b、更新部13cおよび推定部13dを有する。ここで、制御部13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の電子回路やASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現され得る。
【0044】
(2-2-3-1.取得部13a)
取得部13aは、各種情報を受信する。なお、取得部13aは、取得した各種情報を記憶部12に格納する。このとき、取得部13aは、測定値、分析値等を取得する。
【0045】
(測定値取得処理)
取得部13aは、プラントが有するデバイスによって測定された測定値を取得する。例えば、取得部13aは、デバイスであるフィールド機器20Aとして、石油精製プラントにおける温度計である温度センサ機器によって測定された温度値を取得する。また、取得部13aは、デバイスであるフィールド機器20Aとして、石油精製プラントにおける圧力計である圧力センサ機器によって測定された圧力値を取得する。また、取得部13aは、デバイスであるフィールド機器20Aとして、石油精製プラントにおける流量計である流量センサ機器によって測定された流量値を取得する。
【0046】
測定値の具体的な例について説明すると、取得部13aは、フィールド機器20Aのうち温度センサ機器から1分ごとの温度値として、VM-T(t1-001)、VM-T(t1-002)、VM-T(t1-003)、・・・、VM-T(t1-060)、・・・を取得する。また、取得部13aは、フィールド機器20Aのうち圧力センサ機器から1分ごとの圧力値として、VM-P(t1-001)、VM-P(t1-002)、VM-P(t1-003)、・・・、VM-P(t1-060)、・・・を取得する。また、取得部13aは、フィールド機器20Aのうち流量センサ機器から1分ごとの流量値として、VM-F(t1-001)、VM-F(t1-002)、VM-F(t1-003)、・・・、VM-F(t1-060)、・・・を取得する。なお、t1-001、t1-002、t1-003、・・・、t1-060、・・・は、各測定値の測定時刻を示す。
【0047】
(分析値取得処理)
取得部13aは、プラントで製造される製造物の性状を分析した分析値を取得する。例えば、取得部13aは、外部機器20から、プラントにおいて製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、分析値を取得する。このとき、取得部13aは、分析値として、ラボ分析値、オンラインアナライザ分析値、プロセスシミュレーション分析値、AI(Artificial Intelligence)アルゴリズム分析値等を取得する。
【0048】
(ラボ分析値取得処理)
取得部13aは、プラントにおいて製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、化学的分析または物理的分析を用いて製造物の性状を分析した分析値を取得する。例えば、取得部13aは、石油精製プラントの稼働開始から1日ごとに、オペレータOの操作によって入力された、実験室において分析された石油精製プラントで生産される石油の成分であるガソリン中の硫黄の含有量を、オペレータ端末20Bから取得する。このとき、取得部13aは、ガソリンを完全燃焼させることによって発生する酸化物をもとに成分を分析する化学的分析による分析値を取得することができる。また、取得部13aは、ガソリンの成分を分離、抽出、精製することによって成分を分析する物理的分析による分析値を取得することができる。
【0049】
ラボ分析値の具体的な例について説明すると、取得部13aは、外部機器20のうちオペレータ端末20Bから1日ごとのガソリン中の硫黄の含有量として、VEL-S(t1-060)、VEL-S(t2-060)、VEL-S(t3-060)、・・・を取得する。なお、t1-060、t2-060、t3-060、・・・は、各分析値に対応する製造物の採取時刻を示す。
【0050】
(オンラインアナライザ分析値取得処理)
取得部13aは、プラントにおいて製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、オンラインアナライザを用いて製造物の性状を分析した分析値を取得する。例えば、取得部13aは、石油精製プラントの稼働開始から1日ごとに、赤外線から成分量を推定するオンラインアナライザによって出力された石油精製プラントで生産される石油の成分であるガソリン中の硫黄の含有量を、オンラインアナライザから取得する。
【0051】
オンラインアナライザ分析値の具体的な例について説明すると、取得部13aは、外部機器20のうちオンラインアナライザから1日ごとのガソリン中の硫黄の含有量として、VEA-S(t1-060)、VEA-S(t2-060)、VEA-S(t3-060)、・・・を取得する。なお、t1-060、t2-060、t3-060、・・・は、各分析値の出力時刻を示す。
【0052】
(プロセスシミュレーション分析値取得処理)
取得部13aは、プラントにおいて製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、プロセスシミュレータを用いて製造物の性状を分析した分析値を取得する。例えば、取得部13aは、石油精製プラントの稼働開始から1日ごとに、プロセスシミュレータによって出力された石油精製プラントで生産される石油の成分であるガソリン中の硫黄の含有量を、プロセスシミュレータから取得する。
【0053】
プロセスシミュレーション分析値の具体的な例について説明すると、取得部13aは、外部機器20のうちプロセスシミュレータから1日ごとのガソリン中の硫黄の含有量として、VES-S(t1-060)、VES-S(t2-060)、VES-S(t3-060)、・・・を取得する。なお、t1-060、t2-060、t3-060、・・・は、各分析値の出力時刻を示す。
【0054】
(AIアルゴリズム分析値取得処理)
取得部13aは、プラントにおいて製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、測定値の入力に応じて分析値を出力するように訓練された機械学習モデルを用いて製造物の性状を分析した分析値を取得する。例えば、取得部13aは、石油精製プラントの稼働開始から1日ごとに、機械学習モデルによって出力された石油精製プラントで生産される石油の成分であるガソリン中の硫黄の含有量を、機械学習モデルを有する分析機器から取得する。なお、取得部13aは、記憶部12が記憶する機械学習モデルが出力するAIアルゴリズム分析値を取得してもよいし、外部機器20のうち機械学習モデルを有する分析機器が出力するAIアルゴリズム分析値を取得してもよい。
【0055】
AIアルゴリズム分析値の具体的な例について説明すると、取得部13aは、外部機器20のうち機械学習モデルを有する分析機器から1日ごとのガソリン中の硫黄の含有量として、VEM-S(t1-060)、VEM-S(t2-060)、VEM-S(t3-060)、・・・を取得する。なお、t1-060、t2-060、t3-060、・・・は、各分析値の出力時刻を示す。
【0056】
(2-2-3-2.算出部13b)
算出部13bは、各種情報を算出する。なお、算出部13bは、算出した各種情報を記憶部12に格納する。このとき、算出部13bは、安定度、アップデートパラメータ等を算出する。
【0057】
(安定度算出処理)
算出部13bは、分析値に対応付けられた製造物が分析された所定時刻における、プラントが有するデバイスによって測定された測定値の安定性を示す安定度を算出する。例えば、算出部13bは、取得部13aによって取得されたラボ分析値に対応付けられた製造物が採取された時刻がt1-001であった場合には、時刻t1-001を含む1時間前の測定値を用いて、当該測定値の安定度を算出する。このとき、算出部13bは、対応する時刻の測定値を、記憶部12から取得する。また、算出部13bは、記憶部12から取得した測定値を用いて、平均偏差や標準偏差を算出する。
【0058】
安定度の具体的な例について説明すると、算出部13bは、オペレータ端末20Bから取得されたラボ分析値に対応付けられた製造物が採取された時刻がt1-060であった場合には、フィールド機器20Aのうち温度センサ機器から1分ごとの温度値として、{VM-T(t1-001)、VM-T(t1-002)、VM-T(t1-003)、・・・、VM-T(t1-060)}の60データを記憶部12から取得し、t1-001からt1-060における測定値の安定度として、平均偏差や標準偏差を算出する。また、算出部13bは、フィールド機器20Aのうち圧力センサ機器から1分ごとの圧力値として、{VM-P(t1-001)、VM-P(t1-002)、VM-P(t1-003)、・・・、VM-P(t1-060)}の60データを記憶部12から取得し、測定値の安定度として平均偏差や標準偏差を算出してもよいし、フィールド機器20Aのうち流量センサ機器から1分ごとの流量値として、{VM-F(t1-001)、VM-F(t1-002)、VM-F(t1-003)、・・・、VM-F(t1-060)}の60データを記憶部12から取得し、測定値の安定度として平均偏差や標準偏差を算出してもよい。また、複数の測定値の安定度の平均値を算出してもよいし、測定値ごとに重み付けをして安定度を算出してもよい。
【0059】
(アップデートパラメータ変換処理)
算出部13bは、安定度に対応する変数値であるアップデートパラメータPを算出する。このとき、算出部13bは、上記の安定度算出処理において算出した安定度を0~1の連続数である安定度インデックスに変換することによって、アップデートパラメータPを算出する。
【0060】
アップデートパラメータPの具体的な例について説明すると、算出部13bは、測定値の安定度として、採取時刻がt1-060に対応する平均偏差を算出した場合には、設定された平均偏差の上限値に対応するアップデートパラメータP(t1-060)を1.0、設定された平均偏差の下限値に対応するアップデートパラメータP(t1-060)を0.0となるように、安定度をアップデートパラメータPに変換する。また、算出部13bは、測定値の安定度として、採取時刻がt1-060に対応する標準偏差を算出した場合には、設定された標準偏差の上限値に対応するアップデートパラメータP(t1-060)を1.0、設定された標準偏差の下限値に対応するアップデートパラメータP(t1-060)を0.0となるように、安定度をアップデートパラメータP(t1-060)に変換する。
【0061】
(2-2-3-3.更新部13c)
更新部13cは、各種情報を更新する。なお、更新部13cは、更新した各種情報を記憶部12に格納する。
【0062】
更新部13cは、安定度に対応する変数値を用いて、分析値と推定値とに基づくバイアス値を更新する。例えば、更新部13cは、分析値と推定値との差分に、安定度が高いほど大きな値となる変数値であるアップデートパラメータPを乗算した結果を用いて、バイアス値を更新する。
【0063】
具体的な例について説明すると、第1に、更新部13cは、オペレータ端末20Bから取得されたラボ分析値に対応付けられた製造物が採取された時刻がt1-060であった場合には、採取時刻t1-060の分析値VA(t1-060)と採取時刻t1-060の推定値VE(t1-060)との性状値差分ΔV(t1-060)を算出する。すなわち、ΔV(t1-060)=VA(t1-060)-VE(t1-060)と表わされる。第2に、更新部13cは、更新前バイアス値b(old)にアップデートパラメータP(t1-060)×性状値差分ΔV(t1-060)を加算することによって更新後バイアス値b(new)を算出する。すなわち、更新後バイアス値は、b(new)=b(old)+P(t1-060)×ΔV(t1-060)のように表わされる。
【0064】
(2-2-3-4.推定部13d)
推定部13dは、各種情報を推定する。なお、推定部13dは、推定した各種情報を記憶部12に格納する。
【0065】
推定部13dは、プラントで製造される製造物の性状を推定した値をバイアス値で補正して推定値として出力する。また、推定部13dは、所定時間ごとに更新されるバイアス値を用いて、製造物の性状をリアルタイムに推定した推定値を出力する。
【0066】
具体的な例について説明すると、推定部13dは、プロセス値Xとモデルパラメータaを用いて算出した補正前推定値Y(old)に更新後バイアス値b(new)を加算することによって補正後推定値Y(new)を算出する。ここで、推定部13dは、推定式Y=Σa(i)×X(i)+bを用いて、ラボ分析値と推定値が一致するようにバイアス値を更新する。ここで、上記の推定式において、推定値をY、N種類の入力データ(測定値)を{X(1),・・・,X(i),・・・,X(N)}、X(i)に対応するa(i)をモデルパラメータ、bを定数項であるバイアス値とすると、補正前推定値Y(old)=Σa(i)×X(i)と表わされるので、補正後推定値Y(new)=Y(old)+b(new)が成立する。
【0067】
すなわち、オペレータ端末20Bから取得されたラボ分析値に対応付けられた製造物が採取された時刻がt1-060であった場合には、第1に、推定部13dは、入力データ(測定値)X(i)として、{X(1):温度値VM-T(t1-060),X(2):圧力値VM-P(t1-060),X(3):流量値VM-F(t1-060)}を記憶部12から取得し、入力データ(測定値)X(i)に対応するモデルパラメータa(i)として、{a(1),a(2),a(3)}を取得して、補正前推定値Y(old)として、Y(old)=Σa(i)×X(i)=a(1)×X(1)+a(2)×X(2)+a(3)×X(3)を算出する。第2に、推定部13dは、更新部13cによって算出された時刻t1-060における更新後バイアス値b(new)として、b(new)=b(old)+P(t1-060)×ΔV(t1-060)を取得する。第3に、推定部13dは、補正後推定値Y(new)として、Y(new)=Y(old)+b(new)={a(1)×X(1)+a(2)×X(2)+a(3)×X(3)}+P(t1-060)×ΔV(t1-060)を算出し、時刻t1-060の推定値(ソフトセンサ値)として出力する。第4に、推定部13dは、オペレータ端末20Bから新たにラボ分析値を取得するまでは、時刻t1-060における更新後バイアス値b(new)を、各時刻の補正前推定値Y(old)に加算することによって、リアルタイムにソフトセンサ値を出力する。
【0068】
(2-3.外部機器20の構成例および処理例)
図5を用いて、外部機器20の構成例および処理例について説明する。外部機器20は、フィールド機器20A、オペレータ端末20B、制御機器20C等を含む。
【0069】
(2-3-1.フィールド機器20A)
フィールド機器20Aは、プラントが有するデバイスによって実現され、測定値を取得し、ソフトセンサ10に送信する。例えば、石油精製プラントにおける温度計である温度センサ機器は、1分ごとに温度値を取得し、ソフトセンサ10に送信する。また、石油精製プラントにおける圧力計である圧力センサ機器は、1分ごとに圧力値を取得し、ソフトセンサ10に送信する。また、石油精製プラントにおける流量計である流量センサ機器は、1分ごとに流量値を取得し、ソフトセンサ10に送信する。
【0070】
(2-3-2.オペレータ端末20B)
オペレータ端末20Bは、プラントを管理するオペレータOが使用するデスクトップPCによって実現され、分析値をソフトセンサ10に送信する。例えば、オペレータ端末20Bは、オペレータOの操作によって入力されたラボ分析値を、1日ごとにソフトセンサ10に送信する。
【0071】
(2-3-3.制御機器20C)
制御機器20Cは、プラントのプロセスを制御するフィールドコントローラ等によって実現され、ソフトセンサ10から推定値を取得し、各種情報を生成する。例えば、制御機器20Cは、ソフトセンサ10から取得した推定値が所定の閾値を超過した場合に、アクチュエータ等を制御する制御信号を生成したり、プラントのプロセスの異常を示すアラームを生成したりする。
【0072】
(2-3-4.その他)
外部機器20は、上記のフィールド機器20A、オペレータ端末20Bおよび制御機器20Cに限定されず、オンラインアナライザ、Petro-SIM等のプロセスシミュレータ、機械学習モデルを有する分析機器等であってもよい。
【0073】
(2-4.性状推定システム100のデータ処理例)
図6を用いて、
図1に示した性状推定システム100のデータ処理例について説明する。
図6は、実施形態に係るデータ処理例を示す図である。以下では、データ入出力機能、安定性計算機能、バイアス更新機能および推定値計算機能における各データ処理について説明する。
【0074】
(2-4-1.データ入出力機能)
データ入出力機能(A)は、上記のソフトセンサ10の通信部11、取得部13a等で実現される。以下では、データ入出力機能(A)が関与する入力データおよび出力データについて説明する。
【0075】
(2-4-1-1.入力データ)
データ入出力機能(A)は、外部機器20から、リアルタイムプロセス値(A01)、ラボ分析値(A02)等の入力を受け付ける。例えば、データ入出力機能(A)は、フィールド機器20Aから、1分ごとの測定値であるリアルタイムプロセス値(A01)を取得する。また、データ入出力機能(A)は、オペレータ端末20Bから、1日ごとの実験室の分析値であるラボ分析値(A02)を取得する。
【0076】
データ入出力機能(A)は、記憶部12から、プロパティ推定値(A21)等の入力を受け付ける。例えば、データ入出力機能(A)は、記憶部12を参照し、1分ごとの製造物の性状の推定値であるプロパティ推定値(A21)を取得する。
【0077】
(2-4-1-2.出力データ)
データ入出力機能(A)は、記憶部12に、リアルタイムプロセス値(A11)、ラボ分析値(A12)等を出力する。例えば、データ入出力機能(A)は、フィールド機器20Aから取得した1分ごとの測定値であるリアルタイムプロセス値(A11)を記憶部12に格納する。また、データ入出力機能(A)は、オペレータ端末20Bから取得した1日ごとの実験室の分析値であるラボ分析値(A12)を記憶部12に格納する。
【0078】
データ入出力機能(A)は、外部機器20に、プロパティ推定値(A31)等を出力する。例えば、データ入出力機能では、DCS(Distributed Control System)を構成する制御機器20Cに、1分ごとの製造物の性状の推定値であるプロパティ推定値を送信する。
【0079】
(2-4-2.安定性計算機能)
安定性計算機能(B)は、上記のソフトセンサ10の算出部13b等で実現される。以下では、安定性計算機能(B)が関与する入力データおよび出力データについて説明する。
【0080】
(2-4-2-1.入力データ)
安定性計算機能(B)は、記憶部12から、プロセス値(B01)等の入力を受け付ける。例えば、安定性計算機能(B)は、記憶部12を参照し、ラボ分析値(A02)における採取時刻を含む1時間前のプロセス値(B01)を取得する。
【0081】
(2-4-2-2.出力データ)
安定性計算機能(B)は、記憶部12に、安定度インデックス(B11)等を出力する。例えば、安定性計算機能(B)は、記憶部12から取得したプロセス値(B01)を用いて、安定度として平均偏差や標準偏差を算出し、算出した安定度を0~1の連続数のアップデートパラメータPである安定度インデックス(B11)に変換し、記憶部12に格納する。
【0082】
(2-4-3.バイアス更新機能)
バイアス更新機能(C)は、上記のソフトセンサ10の更新部13c等で実現される。以下では、バイアス更新機能(C)が関与する入力データおよび出力データについて説明する。
【0083】
(2-4-3-1.入力データ)
バイアス更新機能(C)は、記憶部12から、ラボ分析値(C01)、プロパティ推定値(C02)、安定度インデックス(C03)、バイアス値(C04)等の入力を受け付ける。例えば、バイアス更新機能(C)は、記憶部12を参照し、分析値および採取時刻を含むラボ分析値(C01)を取得する。また、バイアス更新機能(C)は、記憶部12を参照し、ラボ分析値(C01)の採取時刻に対応するプロパティ推定値(C02)を取得する。また、バイアス更新機能(C)は、記憶部12を参照し、ラボ分析値(C01)の採取時刻に対応する安定度インデックス(C03)を取得する。また、バイアス更新機能(C)は、記憶部12を参照し、更新前のバイアス値(C04)を取得する。
【0084】
(2-4-3-2.出力データ)
バイアス更新機能(C)は、記憶部12に、バイアス値(C11)等を出力する。例えば、バイアス更新機能(C)は、記憶部12から取得したラボ分析値(C01)、プロパティ推定値(C02)、安定度インデックス(C03)、バイアス値(C04)等を用いて更新後のバイアス値(C11)を算出し、記憶部12に格納する。
【0085】
(2-4-4.推定値計算機能)
推定値計算機能(D)は、上記のソフトセンサ10の推定部13d等で実現される。以下では、推定値計算機能(D)が関与する入力データおよび出力データについて説明する。
【0086】
(2-4-4-1.入力データ)
推定値計算機能(D)は、記憶部12から、リアルタイムプロセス値(D01)、モデルパラメータ(D02)等の入力を受け付ける。例えば、推定値計算機能(D)は、記憶部12を参照し、フィールド機器20Aが測定した1分ごとの測定値であるリアルタイムプロセス値(D01)を記憶部12から取得する。また、推定値計算機能(D)は、記憶部12を参照し、推定値の計算に用いるモデルパラメータ(D02)を取得する。このとき、推定値計算機能(D)は、記憶部12を参照し、推定値の補正に用いる更新後のバイアス値(C11)を取得してもよい。
【0087】
(2-4-4-2.出力データ)
推定値計算機能(D)は、記憶部12に、プロパティ推定値(D11)等を出力する。例えば、推定値計算機能(D)は、記憶部12から取得したリアルタイムプロセス値(D01)、モデルパラメータ(D02)等を用いてプロパティ推定値(D11)を1分ごとに算出し、記憶部12に格納する。このとき、推定値計算機能(D)は、記憶部12を参照し、推定値の補正に用いる更新後のバイアス値(C11)をさらに用いてプロパティ推定値(D11)を算出し、記憶部12に格納してもよい。
【0088】
〔3.性状推定システム100の処理の流れ〕
図7を用いて、実施形態に係る性状推定処理の流れについて説明する。
図7は、実施形態に係る性状推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下では、プロセス値取得処理、分析値取得処理、安定度算出処理、アップデートパラメータ変換処理、バイアス値更新処理、推定値出力処理、推定値送信処理の順に説明する。なお、下記のステップS101~S107の処理は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS101~S107の処理のうち、省略される処理があってもよい。
【0089】
(3-1.プロセス値取得処理)
第1に、ソフトセンサ10は、プロセス値取得処理を実行する(ステップS101)。例えば、ソフトセンサ10は、石油精製プラントにおいて生産されたガソリンの温度値、圧力値、流量値等を1分ごとに取得する。
【0090】
(3-2.分析値取得処理)
第2に、ソフトセンサ10は、分析値取得処理を実行する(ステップS102)。例えば、ソフトセンサ10は、オペレータOの操作によって、実験室において分析されたラボ分析値であるガソリン中の硫黄の含有量を1日ごとに取得する。
【0091】
(3-3.安定度算出処理)
第3に、ソフトセンサ10は、安定度算出処理を実行する(ステップS103)。例えば、ソフトセンサ10は、分析値が対応付けられたガソリンの採取時刻を含む1時間前におけるプロセス値の平均偏差や標準偏差を安定度として算出する。
【0092】
(3-4.アップデートパラメータ変換処理)
第4に、ソフトセンサ10は、アップデートパラメータ変換処理を実行する(ステップS104)。例えば、ソフトセンサ10は、算出した安定度を変換し、プロセス値の安定性が低ければ0に近づき、プロセス値の安定性が高ければ1に近づくように、分析値の採取時刻tに対応するアップデートパラメータP(t)を算出する。
【0093】
(3-5.バイアス値更新処理)
第5に、ソフトセンサ10は、バイアス値更新処理を実行する(ステップS105)。例えば、ソフトセンサ10は、採取時刻tの分析値VA(t)と採取時刻tの推定値VE(t)との性状値差分ΔV(t)を算出し、更新前バイアス値b(old)にアップデートパラメータP(t)×性状値差分ΔV(t)を加算することによって更新後バイアス値b(new)を算出する。
【0094】
(3-6.推定値出力処理)
第6に、ソフトセンサ10は、推定値出力処理を実行する(ステップS106)。例えば、ソフトセンサ10は、プロセス値Xとモデルパラメータaを用いて算出した補正前推定値Y(old)に更新後バイアス値b(new)を加算することによって補正後推定値Y(new)を算出し、モニタにソフトセンサ値として表示する。
【0095】
(3-7.推定値送信処理)
第7に、ソフトセンサ10は、推定値送信処理を実行する(ステップS107)。例えば、ソフトセンサ10は、算出した補正後推定値Y(new)をソフトセンサ値として制御機器20Cに送信する。
【0096】
〔4.実施形態の効果〕
最後に、実施形態の効果について説明する。以下では、実施形態に係る処理に対応する効果1~8について説明する。
【0097】
(4-1.効果1)
第1に、上述した実施形態に係る処理では、ソフトセンサ10は、プラントで製造される製造物の性状を推定した値をバイアス値で補正して推定値として出力し、製造物の性状を分析した分析値を取得し、分析値に対応付けられた製造物が分析された所定時刻における、プラントが有するデバイスによって測定された測定値の安定性を示す安定度を算出し、安定度に対応する変数値を用いて分析値と推定値とに基づくバイアス値を更新する。このため、本処理では、ソフトセンサ10が出力する推定値の精度を維持することができる。
【0098】
(4-2.効果2)
第2に、上述した実施形態に係る処理では、ソフトセンサ10は、分析値と推定値との差分に、安定度が高いほど大きな値となる変数値を乗算した結果を用いて、バイアス値を更新する。このため、本処理では、分析値を取得したタイミングでバイアス値を更新することによって、ソフトセンサ10が出力する推定値の精度を維持することができる。
【0099】
(4-3.効果3)
第3に、上述した実施形態に係る処理では、ソフトセンサ10は、プラントにおいて製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、分析値を取得し、安定度を算出し、安定度に対応する変数値を用いてバイアス値を更新し、所定時間ごとに更新されるバイアス値を用いて製造物の性状をリアルタイムに推定した推定値を出力する。このため、本処理では、所定時間ごとにバイアス値を更新することによって、ソフトセンサ10が出力する推定値の精度を維持することができる。
【0100】
(4-4.効果4)
第4に、上述した実施形態に係る処理では、ソフトセンサ10は、プラントにおいて製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、化学的分析または物理的分析を用いて製造物の性状を分析した分析値を取得し、安定度を算出し、安定度に対応する変数値を用いてバイアス値を更新する。このため、本処理では、ラボ分析値を用いてバイアス値を更新することによって、ソフトセンサ10が出力する推定値の精度を維持することができる。
【0101】
(4-5.効果5)
第5に、上述した実施形態に係る処理では、ソフトセンサ10は、プラントにおいて製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、オンラインアナライザを用いて製造物の性状を分析した分析値を取得し、安定度を算出し、安定度に対応する変数値を用いてバイアス値を更新する。このため、本処理では、オンラインアナライザ分析値を用いてバイアス値を更新することによって、ソフトセンサ10が出力する推定値の精度を維持することができる。
【0102】
(4-6.効果6)
第6に、上述した実施形態に係る処理では、ソフトセンサ10は、プラントにおいて製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、プロセスシミュレータを用いて製造物の性状を分析した分析値を取得し、安定度を算出し、安定度に対応する変数値を用いてバイアス値を更新する。このため、本処理では、プロセスシミュレーション分析値を用いてバイアス値を更新することによって、ソフトセンサ10が出力する推定値の精度を維持することができる。
【0103】
(4-7.効果7)
第7に、上述した実施形態に係る処理では、ソフトセンサ10は、プラントにおいて製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、測定値の入力に応じて分析値を出力するように訓練された機械学習モデルを用いて製造物の性状を分析した分析値を取得し、安定度を算出し、安定度に対応する変数値を用いてバイアス値を更新する。このため、本処理では、AIアルゴリズム分析値を用いてバイアス値を更新することによって、ソフトセンサ10が出力する推定値の精度を維持することができる。
【0104】
(4-8.効果8)
第8に、上述した実施形態に係る処理では、デバイスは、石油精製プラントにおける温度計、圧力計および流量計のうち少なくとも1つであって、製造物の性状は、石油精製プラントで生産される石油の成分である。このため、本処理では、ソフトセンサ値の精度が要求される石油精製プラントにおいて、ソフトセンサ10が出力する推定値の精度を維持することができる。
【0105】
〔システム〕
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0106】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0107】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0108】
〔ハードウェア〕
次に、推定装置であるソフトセンサ10のハードウェア構成例を説明する。なお、他の装置も同様のハードウェア構成とすることができる。
図8は、実施形態に係るハードウェア構成例を説明する図である。
図8に示すように、ソフトセンサ10は、通信装置10a、HDD(Hard Disk Drive)10b、メモリ10c、プロセッサ10dを有する。また、
図8に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0109】
通信装置10aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD10bは、
図5に示した機能を動作させるプログラムやデータベースを記憶する。
【0110】
プロセッサ10dは、
図5に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD10b等から読み出してメモリ10cに展開することで、
図5等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、ソフトセンサ10が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ10dは、取得部13a、算出部13b、更新部13c、推定部13d等と同様の機能を有するプログラムをHDD10b等から読み出す。そして、プロセッサ10dは、取得部13a、算出部13b、更新部13c、推定部13d等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0111】
このように、ソフトセンサ10は、プログラムを読み出して実行することで各種処理方法を実行する装置として動作する。また、ソフトセンサ10は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施形態と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施形態でいうプログラムは、ソフトセンサ10によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0112】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【0113】
〔その他〕
開示される技術特徴の組合せのいくつかの例を以下に記載する。
【0114】
(1)プラントで製造される製造物の性状を推定した値をバイアス値で補正して推定値として出力する制御部を有し、前記制御部は、前記製造物の性状を分析した分析値を取得し、前記分析値に対応付けられた前記製造物が分析された所定時刻における、前記プラントが有するデバイスによって測定された測定値の安定性を示す安定度を算出し、前記安定度に対応する変数値を用いて、前記分析値と前記推定値とに基づく前記バイアス値を更新する、推定装置。
【0115】
(2)前記制御部は、前記分析値と前記推定値との差分に、前記安定度が高いほど大きな値となる前記変数値を乗算した結果を用いて、前記バイアス値を更新する、(1)に記載の推定装置。
【0116】
(3)前記制御部は、前記プラントにおいて前記製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、前記分析値を取得し、前記安定度を算出し、前記安定度に対応する前記変数値を用いて前記バイアス値を更新し、前記所定時間ごとに更新される前記バイアス値を用いて、前記製造物の性状をリアルタイムに推定した前記推定値を出力する、(1)または(2)に記載の推定装置。
【0117】
(4)前記制御部は、前記プラントにおいて前記製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、化学的分析または物理的分析を用いて前記製造物の性状を分析した前記分析値を取得し、前記安定度を算出し、前記安定度に対応する前記変数値を用いて前記バイアス値を更新する、(1)~(3)のいずれか1つに記載の推定装置。
【0118】
(5)前記制御部は、前記プラントにおいて前記製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、オンラインアナライザを用いて前記製造物の性状を分析した前記分析値を取得し、前記安定度を算出し、前記安定度に対応する前記変数値を用いて前記バイアス値を更新する、(1)~(3)のいずれか1つに記載の推定装置。
【0119】
(6)前記制御部は、前記プラントにおいて前記製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、プロセスシミュレータを用いて前記製造物の性状を分析した前記分析値を取得し、前記安定度を算出し、前記安定度に対応する前記変数値を用いて前記バイアス値を更新する、(1)~(3)のいずれか1つに記載の推定装置。
【0120】
(7)前記制御部は、前記プラントにおいて前記製造物の製造が開始されてから所定時間ごとに、前記測定値の入力に応じて前記分析値を出力するように訓練された機械学習モデルを用いて前記製造物の性状を分析した前記分析値を取得し、前記安定度を算出し、前記安定度に対応する前記変数値を用いて前記バイアス値を更新する、(1)~(3)のいずれか1つに記載の推定装置。
【0121】
(8)前記デバイスは、石油精製プラントにおける温度計、圧力計および流量計のうち少なくとも1つであって、前記製造物の性状は、前記石油精製プラントで生産される石油の成分である、(1)~(7)のいずれか1つに記載の推定装置。
【0122】
(9)コンピュータが、プラントで製造される製造物の性状を推定した値をバイアス値で補正して推定値として出力し、前記製造物の性状を分析した分析値を取得し、前記分析値に対応付けられた前記製造物が分析された所定時刻における、前記プラントが有するデバイスによって測定された測定値の安定性を示す安定度を算出し、前記安定度に対応する変数値を用いて、前記分析値と前記推定値とに基づく前記バイアス値を更新する、処理を実行する推定方法。
【0123】
(10)コンピュータに、プラントで製造される製造物の性状を推定した値をバイアス値で補正して推定値として出力し、前記製造物の性状を分析した分析値を取得し、前記分析値に対応付けられた前記製造物が分析された所定時刻における、前記プラントが有するデバイスによって測定された測定値の安定性を示す安定度を算出し、前記安定度に対応する変数値を用いて、前記分析値と前記推定値とに基づく前記バイアス値を更新する、処理を実行させる推定プログラム。
【符号の説明】
【0124】
10 ソフトセンサ
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
13a 取得部
13b 算出部
13c 更新部
13d 推定部
20 外部機器
20A フィールド機器
20B オペレータ端末
20C 制御機器
100 性状推定システム