(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122571
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】巻厚測定システム
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030174
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000150110
【氏名又は名称】株式会社竹中土木
(71)【出願人】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕考
(72)【発明者】
【氏名】溝端 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 邦勝
(72)【発明者】
【氏名】森 桂一
(72)【発明者】
【氏名】大原 嘉幸
(72)【発明者】
【氏名】矢野 雅敬
(72)【発明者】
【氏名】青木 忠司
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA05
2D155BB02
2D155CA03
2D155LA13
2D155LA14
(57)【要約】
【課題】巻厚測定の手間を軽減できる巻厚測定システムを提供する。
【解決手段】巻厚測定システムは、トンネルT内に巻立空間Vを形成するセントル50と、セントル50における複数の測定点にそれぞれ固定された複数のシリンダ22と、複数のシリンダ22のそれぞれに装着され、セントル50の表面からトンネルTの孔壁へ向かって移動して孔壁へ押し当てられる目盛りM付きの計測スタッフ24と、巻立空間V及び巻立空間Vの巻厚を計測中の計測スタッフ24を撮影可能な撮影装置と、遠隔操作で、撮影装置を巻立空間の前記測定点まで移動させる移動装置と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に巻立空間を形成するセントルと、
前記セントルにおける複数の測定点にそれぞれ固定された複数のシリンダと、
前記複数のシリンダのそれぞれに装着され、前記セントルの表面から前記トンネルの孔壁へ向かって移動して前記孔壁へ押し当てられる目盛り付きの計測スタッフと、
前記巻立空間及び前記巻立空間の巻厚を計測中の前記計測スタッフを撮影可能な撮影装置と、
遠隔操作で、前記撮影装置を前記巻立空間の各前記測定点まで移動させる移動装置と、
を備えた巻厚測定システム。
【請求項2】
前記計測スタッフのストローク量を測定する測定装置と、
前記ストローク量から前記巻厚を導出する導出部を備えた管理装置と、
を備えた、
請求項1に記載の巻厚測定システム。
【請求項3】
前記管理装置は、
前記シリンダ、前記撮影装置、前記移動装置及び前記測定装置を制御する制御部と、
前記ストローク量及び前記撮影装置が撮影した画像を取得する取得部と、
前記巻立空間及び前記計測スタッフの画像並びに前記巻厚を表示画面に出力する出力部と、
各測定点における前記巻立空間及び前記計測スタッフの画像並びに前記巻厚を記憶する記憶部と、を備えている、
請求項2に記載の巻厚測定システム。
【請求項4】
前記管理装置は、
前記撮影装置が撮影した画像に、所定の文字情報を合成する合成部を備え、
前記出力部は前記文字情報が合成された画像を前記表示画面に出力し、
前記記憶部は前記文字情報が合成された画像を記憶する、
請求項3に記載の巻厚測定システム。
【請求項5】
前記移動装置は、
前記セントルの端面に沿って配置されたガイドレールと、
前記撮影装置が固定され、前記ガイドレール上をスライドするキャリアと、
を有する、請求項1~4の何れか1項に記載の巻厚測定システム。
【請求項6】
前記セントルの筒軸方向の中間部には、前記計測スタッフが挿通され、前記計測スタッフによって閉塞される貫通孔が形成され、
前記計測スタッフの端面には、付着したコンクリートを剥離させる剥離剤が塗布又は剥離材が接着されている、請求項1~4の何れか1項に記載の巻厚測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻厚測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トンネル内周に打設されるコンクリートの巻厚を測定するコンクリート巻厚測定装置が記載されている。このコンクリート巻厚測定装置においては、トンネル内周に向けて進退可能に設けられた棒体が、コンクリート打設用の型枠の外周に設けられている。また、棒体の進出距離を検出する距離検出手段によって、コンクリートの巻厚が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示されたコンクリート巻厚測定装置では、棒体の進出距離が自動的に計測されることにより、コンクリートの巻厚が自動的に測定される。一方で、施工管理上、巻厚を測定している様子を撮影した写真を保存しておくことが好ましい。しかしながら、撮影装置を棒体のある位置まで運んで撮影する場合、コンクリートの巻厚を自動的に測定しても、作業にかかる手間は軽減され難い。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、巻厚測定の手間を軽減できる巻厚測定システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の巻厚測定システムは、トンネル内に巻立空間を形成するセントルと、前記セントルにおける複数の測定点にそれぞれ固定された複数のシリンダと、前記複数のシリンダのそれぞれに装着され、前記セントルの表面から前記トンネルの孔壁へ向かって移動して前記孔壁へ押し当てられる目盛り付きの計測スタッフと、前記巻立空間及び前記巻立空間の巻厚を計測中の前記計測スタッフを撮影可能な撮影装置と、遠隔操作で、前記撮影装置を前記巻立空間の各前記測定点まで移動させる移動装置と、を備える。
【0007】
請求項1の巻厚測定システムでは、セントルに固定されたシリンダに、計測スタッフが装着されている。この計測スタッフは、セントルの表面から前記トンネルの孔壁へ向かって移動して、孔壁へ押し当てられる。そして、計測スタッフには目盛りが付いている。
【0008】
このため、撮影装置で巻立空間及び巻立空間を計測する計測スタッフを撮影することで、巻立空間に打設されるコンクリートの巻厚を推定できる。また、計測スタッフを持って巻立空間にセットする作業員が不要となり、工事コストを削減できる。
【0009】
また、この巻厚測定システムでは、移動装置が、遠隔操作で撮影装置を巻立空間の各測定点まで移動させる。このため、巻厚測定の手間を軽減できる。
【0010】
請求項2の巻厚測定システムは、請求項1に記載の巻厚測定システムにおいて、前記計測スタッフのストローク量を測定する測定装置と、前記ストローク量から前記巻厚を導出する導出部を備えた管理装置と、を備える。
【0011】
請求項2の巻厚測定システムでは、計測スタッフのストローク量を測定する測定装置を備え、管理装置が、ストローク量から巻厚を導出する。これにより巻立空間の巻厚を把握できる。また、撮影装置によって撮影した画像と、ストローク量から把握された巻厚とを併せて参照することで、巻厚測定結果の信頼性が向上する。
【0012】
請求項3の巻厚測定システムは、請求項2に記載の巻厚測定システムにおいて、前記管理装置は、前記シリンダ、前記撮影装置、前記移動装置及び前記測定装置を制御する制御部と、前記ストローク量及び前記撮影装置が撮影した画像を取得する取得部と、前記巻立空間及び前記計測スタッフの画像並びに前記巻厚を表示画面に出力する出力部と、各測定点における前記巻立空間及び前記計測スタッフの画像並びに前記巻厚を記憶する記憶部と、を備えている。
【0013】
請求項3の巻厚測定システムは、制御部、取得部、導出部、出力部及び記憶部を備えた管理装置を有する。これにより、巻厚測定、測定結果の確認及び記憶を自動化できる。
【0014】
請求項4の巻厚測定システムは、請求項3に記載の巻厚測定システムにおいて、前記管理装置は、前記撮影装置が撮影した画像に、所定の文字情報を合成する合成部を備え、前記出力部は前記文字情報が合成された画像を前記表示画面に出力し、前記記憶部は前記文字情報が合成された画像を記憶する。
【0015】
請求項4の巻厚測定システムは、撮影装置が撮影した画像に、所定の文字情報を合成する合成部を備えている。たとえは所定の文字情報として、工事場所、巻立空間における計測スタッフの位置、撮影日時などを合成すれば、施工管理上有用な工事写真を自動生成できる。
【0016】
請求項5の巻厚測定システムは、前記移動装置は、請求項1~4の何れか1項に記載の巻厚測定システムにおいて、前記セントルの端面に沿って配置されたガイドレールと、前記撮影装置が固定され、前記ガイドレール上をスライドするキャリアと、を有する。
【0017】
請求項5の巻厚測定システムは、ガイドレール上をキャリアがスライドして、撮影装置が移動する。このようにガイドレール上をスライドすることにより、撮影位置の精度が向上する。また、撮影画像がぶれ難くなる。
【0018】
請求項6の巻厚測定システムは、請求項1~4の何れか1項に記載の巻厚測定システムにおいて、前記セントルの筒軸方向の中間部には、前記計測スタッフが挿通され、前記計測スタッフによって閉塞される貫通孔が形成され、前記計測スタッフの端面には、付着したコンクリートを剥離させる剥離剤が塗布又は剥離材が接着されている。
【0019】
請求項6の巻厚測定システムでは、セントルの中間部には、前記計測スタッフが挿通される貫通孔が形成されている。これにより、セントルの端面だけでなく中間部の巻厚も測定できる。また、計測スタッフの端面には、剥離剤が塗布又は剥離材が接着されている。このため、巻立空間に打設したコンクリートが硬化後、計測スタッフごと、セントルを移動させやすい。
【0020】
なお、請求項6の巻厚測定システムは、請求項1~5の何れか1項に記載の巻厚測定システムにおいて、前記セントルの筒軸方向の中間部には、前記計測スタッフが挿通され、前記計測スタッフによって閉塞される貫通孔が形成され、前記計測スタッフの端面には、付着したコンクリートを剥離させる剥離剤が塗布又は剥離材が接着されているものとしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、巻厚測定の手間を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る巻厚測定システムの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る巻厚測定システムにおけるセントルと測定ユニットの配置を示す正面図である。
【
図3】(A)は本発明の実施形態に係る巻厚測定システムにおける測定ユニットを示す側面図で、(B)は(A)のB-B線矢視図である。
【
図4】(A)は測定ユニットの計測スタッフで巻厚を計測している状態を示す側面図で、(B)は(A)のB-B線矢視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る巻厚測定システムにおけるセントルと撮影ユニットの配置を示す正面図である。
【
図6】(A)は本発明の実施形態に係る巻厚測定システムにおける撮影ユニットの転動装置を示す断面図で、(B)は撮影装置を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る巻厚測定システムにおける管理装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る巻厚測定システムにおける管理装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る巻厚測定システムにおける巻厚管理処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る巻厚測定システム80について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0024】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0025】
<巻厚測定システム>
図1には、本発明の実施形態に係る巻厚測定システム80が示されている。巻厚測定システム80は、トンネル内周に打設されるコンクリートCの巻厚を測定すると共に、測定結果を、後述する表示部15(
図7参照)に出力し、また、記憶部13(
図7参照)に記憶するための情報処理システムである。
【0026】
巻厚測定システム80は、管理装置10、測定ユニット20、撮影ユニット30及びセントル50を備えて形成されている。
【0027】
なお、「コンクリートCの巻厚」とは、セントル50と補強コンクリート60との間の空間(巻立空間V)に打設されるコンクリートCの厚みである。補強コンクリート60は、削孔されたトンネルTの壁面を補強するために吹き付け施工されるコンクリートであり、図示しないロックボルト等を用いて地山と一体化されている。また、補強コンクリート60の表面には、トンネル内への漏水を防ぐために、防水シート(不図示)が敷設されている。
【0028】
(セントル)
図2に示すように、セントル50は断面形状がアーチ型の型枠52、型枠52を支持する支持フレーム54、支持フレーム54がトンネルTの延設方向に沿って走行可能な走行レール56等を備えて形成されている。走行レール56は、トンネルTの底面に敷設されている。
【0029】
型枠52は、複数のフォーム52Aに分割され、それぞれのフォーム52Aがヒンジ52Bを介して、互いに回動可能に連結されている。フォーム52Aは、支持フレーム54に固定された油圧シリンダ52C等によって、トンネルTの壁面TB及び補強コンクリート60の表面に対して接離するように移動することができる。これにより、セントル50はトンネルT内に巻立空間Vを形成する。なお、型枠52には、図示しないコンクリート打設用の貫通孔が形成されている。
【0030】
(測定ユニット)
測定ユニット20は、
図1にも示すように、セントル50における型枠52の端面に複数箇所(一例として7箇所)固定された装置である。測定ユニット20は、巻厚を測定する測定点に対応する部分として、アーチ型の型枠52における頂部、側部、頂部と側部との間などに分配して配置されている。
【0031】
図3(A)、(B)に示すように、測定ユニット20は、シリンダ22、計測スタッフ24及び測定装置26を備えて形成されている。
【0032】
シリンダ22は、上述したように、セントル50における複数の測定点にそれぞれ固定されている。シリンダ22は、固定治具20Aを用いてセントル50に固定されている。
【0033】
シリンダ22は筒状に形成され、筒軸方向に油圧で伸縮するロッド22Aが挿入されている。なお、
図3(A)には、ロッド22Aが最も伸びた状態が示されている。
【0034】
ロッド22Aの下端部には、計測スタッフ24の下端部が連結されている。計測スタッフ24は、目盛りM付きの板材であり、ロッド22Aが伸縮することに伴い、下方向または上方向に移動する。
【0035】
例えば
図3(A)に示された状態から
図4(A)に示したようにロッド22Aが縮むと、計測スタッフ24は上方向に移動する。計測スタッフ24が補強コンクリート60に接触して押し当てられることに伴い、ロッド22Aの移動は止まる。
【0036】
測定装置26は、ロッド22Aのストローク量を測定する巻尺式のストロークセンサである。測定装置26がロッド22Aのストローク量を測定することに伴って、計測スタッフ24のストローク量も測定することができる。
【0037】
ここで、セントル50の型枠52には、幕板52Dが固定されている。幕板52Dは、巻立空間Vに打設されるコンクリートC(
図1参照)に面取りを設けるために型枠52の上方へ突出して、側面視で略三角形状に形成された部分である。
【0038】
一例として、
図3(A)に示すように、計測スタッフ24の上端は、初期状態(巻厚の非計測時)において、幕板52Dの上端と高さ位置を揃えて配置される。
【0039】
そして、
図4(A)に示すように計測スタッフ24の上端が補強コンクリート60に接触した際に、測定装置26によって測定される計測スタッフ24のストローク量H1は、巻立空間Vの幅H2より小さい。
【0040】
具体的には、ストローク量H1は、幅H2より、型枠52の上面からの幕板52Dの突出幅H3だけ小さい。測定装置26が測定したストローク量H1は、後述する管理装置10に送信される。管理装置10の導出部11B(
図8参照)は、このストローク量H1に幕板52Dの突出幅H3を加味して、巻立空間Vの幅H2を算出する(H2=H1+H3)。そして、幅H2を、巻厚として導出する。
【0041】
(撮影ユニット)
図1に示すように、撮影ユニット30は、撮影装置32及び移動装置34を備えて形成されている。
【0042】
図1において移動装置34はセントル50及び測定ユニット20と離間して配置されているが、これは巻厚測定システム80の全体構成を図示し易くするための便宜的な配置である。
【0043】
移動装置34は、セントル50及び測定ユニット20と近接して配置することが好ましいが、撮影装置32によって測定ユニット20の目盛りM(
図3参照)を撮影できる位置であれば、移動装置34の位置は特に制限されない。
【0044】
移動装置34は、遠隔操作によって、撮影装置32を巻立空間Vの各測定点、すなわち測定ユニット20が設けられた位置まで移動させる装置であり、ガイドレール34A及びキャリア34Bを備えている。
【0045】
図5に示すように、ガイドレール34Aは、セントル50の型枠52に沿って配置され、アーチ状に形成されている。ガイドレール34Aは、
図6(A)に示すように、H形鋼を用いて形成されている。
【0046】
キャリア34Bは、ガイドレール34A上をスライドする運搬装置である。キャリア34Bは、ガイドレールに跨って配置される本体部34BA、本体部34BAに固定された保持輪34BB及び転動装置34Bdを備えている。
【0047】
保持輪34BBは、ガイドレール34Aのフランジを挟み込むように配置され、キャリア34Bをガイドレール34Aに沿って移動可能に固定する。
【0048】
転動装置34Bdは、図示しないモータを内蔵しており、このモータの駆動力により転動輪WHを回転させる。転動輪WHが回転することにより、キャリア34Bがガイドレール34A上をスライドする。
【0049】
図6(B)に示すように、キャリア34Bには撮影装置32が固定されている。撮影装置32は、キャリア34Bによって運搬されて、巻立空間V及び巻立空間Vの巻厚を計測中の計測スタッフ24(
図4参照)を撮影可能なカメラである。
【0050】
(中間部)
図1に示すように、セントル50の筒軸方向の中間部には、計測スタッフ24が挿通され、計測スタッフ24によって閉塞される貫通孔50Aが形成されている。貫通孔50Aに挿通された計測スタッフ24の端面には、付着したコンクリートを剥離させる剥離剤が塗布又は剥離材が接着されている。
【0051】
貫通孔50Aに挿通された計測スタッフ24は、撮影装置32によって撮影してもよいし、撮影装置32以外の撮影装置によって撮影してもよい。この場合、型枠52に穿孔したコンクリート打設用の貫通孔や点検孔から、撮影装置を巻立空間V内へ突き出して、撮影を実施する。
【0052】
<管理装置>
(管理装置の電気的な構成)
図7に示すように、管理装置10は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16、通信インタフェース(I/F)部18及び外部I/F部19を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16、通信I/F部18及び外部I/F部19はバスB1を介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0053】
(記憶部)
記憶部13はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、巻厚測定プログラム13Aが記憶されている。巻厚測定プログラム13Aは、巻厚測定プログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの巻厚測定プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶される。CPU11は、巻厚測定プログラム13Aを記憶部13から読み出してメモリ12に展開し、巻厚測定プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0054】
記憶部13には、後述する巻厚情報データベース13B及び入力情報データベース13Cが記憶される。
【0055】
(入力部)
入力部14では、巻厚測定システム80を利用するユーザによって、巻厚測定プログラム13Aを開始及び終了するための操作(測定開始指示、測定終了指示)が実行される。また、入力部14では、ユーザによって、入力情報データベースに記憶させる入力情報(後述)が入力される。
【0056】
(表示部)
表示部15には、巻厚測定プログラム13Aを開始及び終了するための情報や、詳しくは後述するが、表示部15には、巻立空間V及び計測スタッフ24の画像並びに巻厚等が表示される。なお、表示部15は、本発明における表示画面の一例である。
【0057】
(管理装置の機能的な構成)
次に、
図8を参照して、本実施形態に係る管理装置10の機能的な構成について説明する。
図8に示すように、管理装置10は、取得部11A、導出部11B、制御部11C、出力部11D及び合成部11Eを含む。管理装置10のCPU11は、巻厚測定プログラム13Aを実行することで、取得部11A、導出部11B、制御部11C、出力部11D及び合成部11Eとして機能する。
【0058】
(取得部)
取得部11Aは、計測スタッフ24のストローク量及び撮影装置32が撮影した画像を取得する。
【0059】
(導出部)
導出部11Bは、取得部11Aが取得した計測スタッフ24のストローク量H1から、巻立空間Vの巻厚(巻厚=幅H2+ストローク量H1+幕板52D突出幅H3:
図4参照)を導出する。
【0060】
(制御部)
制御部11Cは、シリンダ22、測定装置26、移動装置34及び撮影装置32を制御する。具体的には、制御部11Cは、シリンダ22を制御して、計測スタッフ24の上端を補強コンクリート60に押し当てる。このとき、測定装置26を制御して、測定装置26に計測スタッフ24のストローク量を測定させる。
【0061】
また、制御部11Cは、移動装置34を制御して、移動装置34に撮影装置32を移動させる。移動装置34は、上端が補強コンクリート60に押し当てられている状態の計測スタッフ24、すなわち、巻立空間Vの巻厚を計測中の計測スタッフ24を撮影可能な位置へ移動される。
【0062】
そして、制御部11Cは、撮影装置32を制御して、撮影装置32に巻立空間Vの巻厚を計測中の計測スタッフ24を撮影させる。このとき、制御部11Cは、撮影装置32の画角に、計測スタッフ24の上端から型枠52の上面までの範囲(すなわち、巻立空間V)及び巻立空間Vと重なる位置(セントル50の端面を正面視した場合に重なる位置)における計測スタッフ24の目盛りMが収まるように、当該画角を調整する。
【0063】
(合成部)
合成部11Eは、撮影装置32が撮影した画像に、所定の文字情報を合成する。所定の文字情報とは、一例として、工事名、工事場所、測定位置(撮影された画像が、巻立空間Vにおいてどの位置に配置された測定ユニット20を撮影した画像かを示す情報)、施工者、立合者などの情報、撮影日時、及び、導出部11Bによって導出された巻厚等である。これらの情報は、まとめて電子黒板等とも称される情報である。合成部11Eは、これらの文字情報に加えて、任意の図表などを合成することもできる。
【0064】
測定位置及び巻厚を除く文字情報は、ユーザによる入力部を介した入力によって、入力情報データベース13Cに記憶されている。
【0065】
一方、文字情報のうち、測定位置は、移動装置34の移動量情報や、撮影装置32が撮影した画像を元に、取得部11A、導出部11B、合成部11Eなどが生成できる。
【0066】
(出力部)
出力部11Dは、撮影装置32によって撮影された巻立空間V及び計測スタッフ24の画像、並びに、導出部11Bによって導出された巻厚を、表示部15に出力する。また、出力部11Dは、合成部11Eによって文字情報等が合成された画像を、表示部15に出力することもできる。
【0067】
(巻厚情報データベース)
巻厚情報データベース13Bには、撮影装置32によって撮影された、各測定点における巻立空間V及び計測スタッフ24の画像が記憶される。また、この画像に紐づけて、導出部11Bによって導出された巻厚が記憶される。
【0068】
このとき、巻厚情報データベース13Bには、撮影装置32によって撮影された画像を、合成部11Eによって生成された文字情報が合成された状態で記憶することができる。あるいは、撮影装置32によって撮影された画像に紐づけて、入力情報データベース13Cに記憶された情報と、合成部11Eによって生成された測定位置に関する情報と、を記憶してもよい。
【0069】
<作用>
次に、
図9を参照して、本実施形態に係る巻厚測定システム80の作用を説明する。ユーザからの入力部14を介した実行指示等に応じて、管理装置10のCPU11が巻厚測定プログラム13Aを実行することにより、
図9に示す巻厚測定処理が実行される。
【0070】
錯綜を避けるため、ここでは、入力情報データベース13Cが予め構築されている場合について説明する。
【0071】
(巻厚測定処理)
巻厚測定プログラム13Aの実行が開始されると、ステップ104で、CPU11は、測定開始指示の取得待ちを実行する。CPU11は、測定開始指示を取得するまで、ステップ104を繰り返し実行する。測定開始指示を取得すると、ステップ106へ移行する。
【0072】
ステップ106で、CPU11は、1つの測定ユニット20を制御する。具体的には、CPU11は、1つの測定ユニット20におけるシリンダ22を制御して、計測スタッフ24の上端を補強コンクリート60に接触させる。ステップ106の後は、ステップ108へ移行する。
【0073】
ステップ108で、CPU11は、測定装置26から、計測スタッフ24のストローク情報の取得待ちを実行する。CPU11は、ストローク情報を取得するまで、ステップ108を繰り返し実行する。ストローク情報を取得すると、ステップ110へ移行する。
【0074】
ステップ110で、CPU11は、取得したストローク情報から、巻立空間Vの巻厚を導出する。ステップ110の後は、ステップ112へ移行する。
【0075】
ステップ112で、CPU11は、撮影ユニット30を制御する。具体的には、CPU11は、移動装置34を制御して、撮影装置32を、上端が補強コンクリート60に接触した状態の計測スタッフ24を撮影できる位置へさせる。その後、撮影装置32を制御して、巻立空間V及び計測スタッフ24を撮影する。
【0076】
ステップ114で、CPU11は、撮影ユニット30から、巻立空間V及び計測スタッフ24を撮影した画像の取得待ちを実行する。CPU11は、画像を取得するまで、ステップ114を繰り返し実行する。画像を取得すると、ステップ116へ移行する。
【0077】
ステップ116で、CPU11は、撮影装置32が撮影した画像に、文字情報を合成する。ステップ116の後は、ステップ118へ移行する。
【0078】
ステップ118で、CPU11は、撮影装置32が撮影した画像、巻厚及び文字情報を表示部15へ出力する。また、これらの画像、巻厚及び文字情報を巻厚情報データベース13Bに記憶する。ステップ118の後は、ステップ120へ移行する。
【0079】
ステップ120で、CPU11は、所定箇所数の画像、巻厚及び文字情報を巻厚情報データベース13Bに記憶したか否かを判定する。
【0080】
ステップ120で否定判定となった場合はステップ106へ戻って、上記フローで制御した測定ユニット20と隣り合う測定ユニット20を制御する。一方、ステップ120で肯定判定となった場合は、ステップ122へ移行する。
【0081】
ステップ122で、CPU11は、巻厚測定処理の終了タイミングが到来したか否かを判定し、肯定判定となった場合は巻厚測定処理を終了する。この終了タイミングは、ユーザの入力部14を介した測定終了指示の入力によって到来する。ステップ112で否定判定となった場合は測定終了指示の入力待ちを実行する。
【0082】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る巻厚測定システム80では、
図3に示すように、セントル50に固定された測定ユニット20のシリンダ22に、計測スタッフ24が装着されている。この計測スタッフ24は、
図4に示すように、セントル50の表面からトンネルTの孔壁(補強コンクリート60の表面)へ向かって移動して、孔壁へ押し当てられる。
【0083】
そして、計測スタッフ24には目盛りMが付いている。このため、
図6に示す撮影装置32で巻立空間Vと巻立空間Vを計測する計測スタッフ24を撮影することで、巻立空間Vに打設されるコンクリートの巻厚を推定できる。また、計測スタッフ24を持って巻立空間Vにセットする作業員が不要となり、工事コストを削減できる。
【0084】
また、この巻厚測定システム80では、
図1に示す移動装置34が、遠隔操作で撮影装置32を巻立空間Vの各測定点まで移動させる。このため、巻厚測定の手間を軽減できる。
【0085】
また、本発明の実施形態に係る巻厚測定システム80では、
図3に示すように、計測スタッフ24のストローク量を測定する測定装置26を備え、
図8に示す管理装置10の導出部11Bが、ストローク量から巻厚を導出する。これにより巻立空間Vの巻厚を把握できる。また、撮影装置によって撮影した画像と、ストローク量から把握された巻厚とを併せて参照することで、巻厚測定結果の信頼性が向上する。
【0086】
また、本発明の実施形態に係る巻厚測定システム80は、制御部11C、取得部11A、導出部11B、出力部11D及び記憶部13を備えた管理装置10を有する。これにより、
図9のフロー図で示したように、巻厚測定、測定結果の確認及び記憶を自動化できる。
【0087】
また、本発明の実施形態に係る巻厚測定システム80は、
図8に示すように、撮影装置32が撮影した画像に、所定の文字情報を合成する合成部11Eを備えている。例えば所定の文字情報として、工事場所、巻立空間Vにおける計測スタッフの位置、撮影日時などを合成すれば、施工管理上有用な工事写真を自動生成できる。
【0088】
また、本発明の実施形態に係る巻厚測定システム80は、
図1に示すように、ガイドレール34A上をキャリア34Bがスライドして、撮影装置32が移動する。このようにガイドレール34A上をスライドすることにより、撮影位置の精度が向上する。また、撮影画像がぶれ難くなる。
【0089】
また、本発明の実施形態に係る巻厚測定システム80では、セントル50の中間部に、計測スタッフ24が挿通される貫通孔50Aが形成されている。これにより、セントル50の端面だけでなく中間部の巻厚も測定できる。また、計測スタッフ24の端面には、剥離剤が塗布又は剥離材が接着されている。このため、巻立空間Vに打設したコンクリートが硬化後、計測スタッフ24ごと、セントル50を移動させやすい。
【0090】
<変形例>
上記実施形態の巻厚測定システム80は、
図3に示すように、計測スタッフ24のストローク量を測定する測定装置26を備えているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば測定装置26は省略してもよい。測定装置26を省略する場合、管理装置10の導出部11Bも不要である。
【0091】
測定装置26を省略しても、撮影装置32で巻立空間Vと巻立空間Vを計測する計測スタッフ24を撮影することで、巻立空間Vに打設されるコンクリートの巻厚を推定できる。
【0092】
また、上記実施形態の巻厚測定システム80は、取得部11A、導出部11B、制御部11C、出力部11D及び合成部11Eを備えた管理装置10を有するが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0093】
例えば本発明の管理装置としては、撮影装置32を測定点まで移動させる移動装置34を遠隔操作できるものであればよい。移動装置34としては、ガイドレール34A及びキャリア34Bのほか、例えばドローンやロボット等を用いてもよい。
【0094】
また、上記実施形態の巻厚測定システム80では、制御部11Cが撮影装置32及び移動装置34を自動制御によって遠隔操作しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。撮影装置32及び移動装置34は、ユーザが入力部14を介した入力やコントローラを介した入力によって遠隔操作してもよい。
【0095】
また、上記実施形態において、例えば、取得部11A、導出部11B、制御部11C、出力部11D及び合成部11Eの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0096】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0097】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0098】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。このように、本発明は様々な態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0099】
10 管理装置
11A 取得部
11B 導出部
11C 制御部
11D 出力部
11E 合成部
13 記憶部
15 表示部(表示画面)
22 シリンダ
24 計測スタッフ
26 測定装置
32 撮影装置
34 移動装置
34A ガイドレール
34B キャリア
50 セントル
50A 貫通孔
80 巻厚測定システム