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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122573
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】計時装置、測距装置、光センサ装置
(51)【国際特許分類】
   G04F 10/00 20060101AFI20240902BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20240902BHJP
   H03K 5/26 20060101ALI20240902BHJP
   G01J 1/42 20060101ALI20240902BHJP
   G01J 11/00 20060101ALI20240902BHJP
【FI】
G04F10/00 Z
G01S7/481 Z
H03K5/26 C
G01J1/42 N
G01J11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030179
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】319006047
【氏名又は名称】シャープセミコンダクターイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆行
(72)【発明者】
【氏名】井上 高広
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 徹朗
(72)【発明者】
【氏名】有村 竜次
【テーマコード(参考)】
2G065
5J039
5J084
【Fターム(参考)】
2G065AA12
2G065AB09
2G065AB16
2G065AB22
2G065BA09
2G065BA33
2G065BA34
2G065BC08
2G065BC13
2G065BC17
2G065BC22
2G065DA15
5J039JJ07
5J039JJ15
5J039KK23
5J039KK24
5J039MM03
5J084AA05
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA36
5J084BA40
5J084BB02
5J084BB04
5J084CA32
(57)【要約】
【課題】高速計時を実現する。
【解決手段】複数の基準信号から得られる複数の第1パルス信号を用いてファインカウント値を出力する第1カウンタ(11)と、複数の基準信号から得られ、複数の第1パルス信号よりも周波数が小さい複数の第2パルス信号を用いてコースカウント値を出力する第2カウンタ(12)と、ラッチ信号によってラッチされたファインカウント値およびコースカウント値に基づいてコースカウント値の補正の要否を判定し、補正が必要な場合は、ファインカウント値と、コースカウント値を補正して得られるコース補正値とを用いてビン番号を算出する制御部(20)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一周期で位相の異なる複数の基準信号を生成する信号生成回路と、
前記複数の基準信号から得られる複数の第1パルス信号を用いてファインカウント値を出力する第1カウンタと、
前記複数の基準信号から得られ、前記複数の第1パルス信号よりも周波数が小さい複数の第2パルス信号を用いてコースカウント値を出力する第2カウンタと、
ラッチ信号によってラッチされたファインカウント値およびコースカウント値に基づいて前記コースカウント値の補正の要否を判定し、前記補正が必要な場合は、前記ファインカウント値と、前記コースカウント値を補正して得られるコース補正値とを用いてビン番号を算出する制御部とを備える、計時装置。
【請求項2】
前記第2カウンタは、前記第1カウンタよりもカウントアップの間隔が長い、請求項1に記載の計時装置。
【請求項3】
MおよびNを、M<Nの自然数として、
前記第1カウンタは、M個のファインカウント値を周期的に出力し、
前記第2カウンタは、N個のコースカウント値を周期的に出力する、請求項2に記載の計時装置。
【請求項4】
前記信号生成回路は、リングオシレータである、請求項3に記載の計時装置。
【請求項5】
前記第1カウンタは、前記リングオシレータの位相検出によってカウントを行い、
前記第2カウンタは、前記リングオシレータの発振回数の検出によってカウントを行う、請求項4に記載の計時装置。
【請求項6】
前記第1カウンタは、前記ファインカウント値をグレイコードで出力し、
前記第2カウンタは、前記コースカウント値をグレイコードで出力する、請求項3に記載の計時装置。
【請求項7】
前記ファインカウント値のグレイコードは、前記コースカウント値のグレイコードよりもビット数が多い、請求項6に記載の計時装置。
【請求項8】
M=2かつN=2として、
前記制御部は、前記ファインカウント値をXビットのバイナリコードに変換し、前記コースカウント値をYビットのバイナリコードに変換する、請求項3に記載の計時装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記ファインカウント値のバイナリコードの最上位ビットと、前記コースカウント値のバイナリコードの最下位ビットとが同一であればコースカウント値の補正は不要と判定し、前記ファインカウント値のバイナリコードの最上位ビットと、前記コースカウント値のバイナリコードの最下位ビットとが異なる場合にコースカウント値の補正が必要と判定する、請求項8に記載の計時装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記ファインカウント値のバイナリコードの最上位ビットと、前記コースカウント値のバイナリコードの最下位ビットとが異なる場合に、前記コースカウント値と隣り合う値を前記コース補正値とすることで、前記コースカウント値のバイナリコードの最下位ビットを前記ファインカウント値のバイナリコードの最上位ビットに一致させる、請求項9に記載の計時装置。
【請求項11】
前記ファインカウント値のバイナリコードの2番目に上位のビットが0である場合は、前記コースカウント値に1を加えた値を前記コース補正値とし、
前記ファインカウント値のバイナリコードの2番目に上位のビットが1である場合は、前記コースカウント値から1を減じた値を前記コース補正値とする、請求項10に記載の計時装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記コースカウント値を補正しない場合に、前記コースカウント値のバイナリコードの上位(Y-1)ビットを、前記ファインカウント値のバイナリコードの上位側に結合し、これによって得られる(X+Y-1)ビットのバイナリコードに対応するビン番号を算出する、請求項9に記載の計時装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記コースカウント値を補正する場合に、前記コース補正値のバイナリコードの上位(Y-1)ビットを、前記ファインカウント値のバイナリコードの上位側に結合し、これによって得られる(X+Y-1)ビットのバイナリコードに対応するビン番号を算出する、請求項10に記載の計時装置。
【請求項14】
前記第1カウンタが、M個のファインカウント値に対応するM種のグレイコードに含まれないミッシングコードを出力した場合に、前記制御部は、前記M個のファインカウント値から前記ミッシングコードに対応するファインカウント値を選択する、請求項6に記載の計時装置。
【請求項15】
前記制御部は、複数のミッシングコードと、前記M個のファインカウント値とを対応付けるテーブルを有する、請求項14に記載の計時装置。
【請求項16】
前記第1カウンタのカウント間隔は、前記複数の基準信号の周期の1/Mである、請求項3に記載の計時装置。
【請求項17】
前記カウント間隔が、1.0〔ナノ秒〕以下である、請求項16に記載の計時装置。
【請求項18】
前記リングオシレータは、M個のファインカウント値が出力される期間よりも長く動作し続ける、請求項4に記載の計時装置。
【請求項19】
前記リングオシレータは、N個のコースカウント値が出力される期間よりも長く動作し続ける、請求項4に記載の計時装置。
【請求項20】
同一周期で位相の異なる複数の基準信号を生成する信号生成回路と、
前記複数の基準信号から得られる複数の第1パルス信号を用いてグレイコードでファインカウント値を出力する第1カウンタと、
前記複数の基準信号から得られ、前記複数の第1パルス信号よりも周波数が小さい複数の第2パルス信号を用いてコースカウント値を出力する第2カウンタと、
前記グレイコードがミッシングコードである場合には、前記ミッシングコードに対応するファインカウント値と、前記コースカウント値とを用いてビン番号を算出する制御部とを備える、計時装置。
【請求項21】
Mを2以上の自然数として、
前記第1カウンタは、M個のファインカウント値を周期的に出力し、
前記第1カウンタが、M個のファインカウント値に対応するM種のグレイコードに含まれない前記ミッシングコードを出力した場合に、前記制御部は、M個のファインカウント値から前記ミッシングコードに対応するファインカウント値を選択する、請求項20に記載の計時装置。
【請求項22】
前記制御部は、前記ミッシングコードと、前記ファインカウント値とを対応付けるテーブルを有する、請求項21に記載の計時装置。
【請求項23】
前記制御部は、スタートラッチ信号、リファレンスラッチ信号およびリターンラッチ信号それぞれに対応するビン番号を算出する工程を1回以上行う、請求項1または20に記載の計時装置。
【請求項24】
前記制御部は、前記スタートラッチ信号および前記リファレンスラッチ信号に対応するビン番号差と、前記スタートラッチ信号および前記リターンラッチ信号に対応するビン番号差とについて、ビン番号差の度数を示すヒストグラムを作成する、請求項23に記載の計時装置。
【請求項25】
請求項24に記載の計時装置を備え、
前記制御部は、前記ヒストグラムに基づいて対象物との距離を測定する、測距装置。
【請求項26】
請求項25に記載の測距装置と、発光素子と、リファレンス用受光素子と、第1リターン用受光素子とを備え、
前記スタートラッチ信号は、前記発光素子の発光タイミングに応じた信号であり、
前記リファレンスラッチ信号は、前記発光素子からのリファレンス光を前記リファレンス用受光素子で受光したタイミングに応じた信号であり、
前記リターンラッチ信号は、前記発光素子から出射して前記対象物で反射した反射光を前記第1リターン用受光素子で受光したタイミングに応じた信号である、光センサ装置。
【請求項27】
前記第1リターン用受光素子とは異なる位置に配された第2リターン用受光素子を備え、
前記リターンラッチ信号は、前記発光素子から出射して前記対象物で反射した反射光を前記第1リターン用受光素子で受光したタイミングに応じた信号と、前記発光素子から出射して前記対象物で反射した反射光を前記第2リターン用受光素子で受光したタイミングに応じた信号とを含む、請求項26に記載の光センサ装置。
【請求項28】
請求項1または20に記載の計時装置を備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計時装置、測距装置、光センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つのTDC(Time to Digital Converter)を交互に動作させることにより1発光周期につき1つのイベントの時間を検出する計時装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-78690
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より高速な計時を可能とする計時装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る計時装置は、同一周期で位相の異なる複数の基準信号を生成する信号生成回路と、前記複数の基準信号から得られる複数の第1パルス信号を用いてファインカウント値を出力する第1カウンタと、前記複数の基準信号から得られ、前記複数の第1パルス信号よりも周波数が小さい複数の第2パルス信号を用いてコースカウント値を出力する第2カウンタと、ラッチ信号によってラッチされたファインカウント値およびコースカウント値に基づいて前記コースカウント値の補正の要否を判定し、前記補正が必要な場合は、前記ファインカウント値と、前記コースカウント値を補正して得られるコース補正値とを用いてビン番号を算出する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、より高速な計時が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る計時装置の構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る計時装置の動作を示すタイミングチャートである。
図3】第2パルス信号、コースカウント値のグレイコードおよびバイナリコードの関係を示す説明図である。
図4】第2パルス信号、コースカウント値のグレイコードおよびバイナリコードの関係を示す説明図である。
図5】ファインカウント値のグレイコードおよびバイナリコードの関係を示す表である。
図6】BIN番号の算出方法の一例を示すフローチャートである。
図7】BIN番号の算出方法の一例を示す説明図である。
図8】BIN番号の算出方法の一例を示す説明図である。
図9】BIN番号の算出方法の一例を示す説明図である。
図10】BIN番号の算出方法の一例を示す説明図である。
図11】BIN番号の算出方法の一例を示す説明図である。
図12】第1カウンタから出力されるグレイコードとファインカウント値の対応を示す説明図である。
図13】ミッシング(グレイ)コードとファインカウント値とを対応づける表(テーブル)である。
図14】テーブルを有する計時装置の構成を示すブロック図である。
図15】本実施形態に係る計時装置の構成を示すブロック図である。
図16】本実施形態に係る計時装置の動作を示すタイミングチャートである。
図17】時間算出部が生成するヒストグラムである。
図18】本実施形態に係る測距装置の構成を示すブロック図である。
図19】本実施形態に係る光センサ装置の構成を示す模式断面図である。
図20】本実施形態に係る光センサ装置の構成を示すブロック図である。
図21】本実施形態に係る光センサ装置の構成を示すブロック図である。
図22】本実施形態に係る計時装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本実施形態に係る計時装置の構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態に係る計時装置の動作を示すタイミングチャートである。図1および図2に示すように、本実施形態に係る計時装置30は、同一周期で位相の異なる複数の基準信号OSを生成する信号生成回路5と、TDC10(Time to Digital Converter)と、制御部20とを備える。
【0009】
TDC10は、複数の基準信号OSから得られる複数の第1パルス信号FPを用いてファインカウント値FVを出力する第1カウンタ11と、複数の基準信号OSから得られ、複数の第1パルス信号FPよりも周波数が小さい複数の第2パルス信号CPを用いてコースカウント値CVを出力する第2カウンタ21とを有する。複数の第1パルス信号FPは例えば8相信号、複数の第2パルス信号CPは例えば6相信号である。以下では、第1カウンタ11をFINEカウンタ、第2カウンタ12をCOARSEカウンタと称することがある。
【0010】
第1カウンタ11は、ファインカウント値FVをグレイコードで出力し、第2カウンタ12は、コースカウント値CVをグレイコードで出力し、第2カウンタ12は、第1カウンタ11よりもカウントアップの間隔が長い。
【0011】
制御部20は、ラッチ信号Lによってラッチされたファインカウント値FVおよびコースカウント値CVに基づいてコースカウント値CVの補正の要否を判定し、補正が必要な場合は、ファインカウント値FVと、コースカウント値CVを補正して得られるコース補正値CZとを用いて、ビン番号BINを算出する。なお、コースカウント値CVは、ファインカウント値FVのラッチタイミングから±4TR以内にラッチされたコースカウンタ値CVであってよい。ただし、これに限定されない。なお、4TRは、TDC10の最小時間分解能TR(例えば0.1ns)の4倍を意味する。図2の場合では、ラッチされたファインカウント値FV=4、コースカウント値CV=2、コースカウント値CVの補正は不要であり、ビン番号BIN=20である。基準信号OSの1周期(1.6ns)が16ビン番号に相当するため、BIN=20は、2.0〔ns〕となる。
【0012】
制御部20は、第1カウンタ11からのグレイコードFG(ファインカウント値)をバイナリコードFBに変換する第1コード変換部21と、第2カウンタ12からのグレイコードCG(コースカウント値)をバイナリコードCBに変換するとともに、必要に応じてコース補正値のバイナリコードZBを生成する第2コード変換部22と、第1コード変換部21からのバイナリコードFBおよび第2コード変換部22からのバイナリコードCB/ZBに基づいて、時間算出を行う時間算出部23とを有する。
【0013】
第1コード変換部21、第2コード変換部22および時間算出部23は機能ブロックであってよい。例えば、プロセッサとメモリを含む制御部20において、プロセッサがメモリと協働して計時プログラムを実行することで各機能ブロックの機能を実現してもよい。計時プログラムは、制御部20のメモリに格納されていてもよいし、外部の記憶装置に格納されていてもよい。
【0014】
図3および図4は、第2パルス信号、コースカウント値のグレイコードおよびバイナリコードの関係を示す説明図である。図5は、ファインカウント値のグレイコードおよびバイナリコードの関係を示す表である。
【0015】
図3および図4に示すように、MおよびNを、M<Nの自然数として、第1カウンタ11は、M個のファインカウント値FV(例えばM=16の場合、0~9およびA~Fの16個のファインカウント値)を周期的に出力し、第2カウンタ12は、N個のコースカウント値CV(例えばN=64の場合、0~63のコースカウント値)を周期的に出力する。
【0016】
図2に示すように、第1カウンタ11のカウント間隔は、複数の基準信号OSの周期の1/Mであってよい。第1カウンタ11のカウント間隔は、1.0〔ナノ秒〕以下であってよい。
【0017】
信号生成回路5は、リングオシレータであってよく、第1カウンタ11は、リングオシレータの位相検出によってカウントを行い、第2カウンタ12は、リングオシレータの発振回数の検出によってカウントを行ってよい。
【0018】
図3図5に示すように、ファインカウント値のグレイコードFGは、コースカウント値のグレイコードCGよりもビット数が多くてよい。例えば、グレイコードFGを8ビット、グレイコードCGを6ビットとしてもよい。
【0019】
図3図5に示すように、M=2かつN=2として、第1コード変換部21は、ファインカウント値をXビット(例えば、X=4ビット)のバイナリコードFBに変換し、第2コード変換部22は、コースカウント値をYビット(例えば、Y=6ビット)のバイナリコードCBに変換する。
【0020】
第2コード変換部22は、ファインカウント値のバイナリコードFBの最上位ビットと、コースカウント値のバイナリコードCBの最下位ビットとが同一であればコースカウント値CVの補正は不要と判定し、ファインカウント値のバイナリコードFBの最上位ビットと、コースカウント値のバイナリコードCBの最下位ビットとが異なる場合にコースカウント値CVの補正が必要と判定する。
【0021】
第2コード変換部22は、ファインカウント値のバイナリコードFBの最上位ビットと、コースカウント値のバイナリコードCBの最下位ビットとが異なる場合に、コースカウント値CVに隣り合う値をコース補正値CZとすることで、コースカウント値のバイナリコードCBの最下位ビットと、ファインカウント値のバイナリコードFBの最上位ビットとを一致させる。すなわち、コースカウント値CVおよびコース補正値CZの差は1となる。
【0022】
時間算出部23は、コースカウント値CVを補正しない場合に、コースカウント値のバイナリコードCBの上位(Y-1)ビットを、ファインカウント値のバイナリコードFBの上位側に結合し、これによって得られる(X+Y-1)ビットのバイナリコードに対応するビン番号BINを算出する。
【0023】
時間算出部23は、コースカウント値CVを補正する場合に、コース補正値のバイナリコードZBの上位(Y-1)ビットを、ファインカウント値のバイナリコードFBの上位側に結合し、これによって得られる(X+Y-1)ビットのバイナリコードに対応するビン番号BINを算出する。
【0024】
図6は、BIN番号の算出方法の一例を示すフローチャートである。図7図11は、BIN番号の算出方法の一例を示す説明図である。図6に示すように、ステップS1では、ファインカウント値のバイナリコードFB(4ビット)を算出し、ステップS2では、コースカウント値のバイナリコードCB(6ビット)を算出する。ステップS2では、FBの最上位ビットF3と、CBの最下位ビットC0が同じあるかを判定し、YES(同じ)であれば、ステップS4に進み、CB(6bit)の上位5ビットを、FB(4bit)の上位側に結合して得られる、9bitのバイナリコードに対応するBIN番号を算出する。
【0025】
ステップS3でNO(異なる)であれば、ステップS5に進み、F3=1かつC0=0かつF2=0であるかを判定し、YES(同じ)であれば、ステップS6に進み、コース補正値(C補正値)のバイナリコードZB(CBのC0を1に補正)を生成する。ステップS6の後は、ステップS14に進み、ZB(6bit)の上位5ビットを、FB(4bit)の上位側に結合して得られる、9bitのバイナリコードに対応するBIN番号を算出する。
【0026】
テップS5でNOであれば、ステップS8に進み、F3=1かつC0=0かつF2=1であるかを判定し、YESであれば、ステップS9に進み、C補正値(=CV-1)のバイナリコードZBを生成する。テップS8でNOであれば、ステップS10に進み、F3=0かつC0=1かつF2=0であるかを判定し、YESであれば、ステップS11に進み、C補正値(=CV+1)のバイナリコードZBを生成する。テップS10でNOであれば、F3=0かつC0=1かつF2=1である(ステップS12)から、ステップS13に進み、コース補正値(C補正値)のバイナリコードZB(CBのC0を0に補正)を生成する。ステップS9、S11、S13の後は、ステップS14に進み、ZB(6bit)の上位5ビットを、FB(4bit)の上位側に結合して得られる、9bitのバイナリコードに対応するBIN番号を算出する。
【0027】
このように、ファインカウント値の補正が必要な場合、ファインカウント値のバイナリコードFBの2番目に上位のビットF2が0であれば、コースカウント値CVに1を加えた値をコース補正値(C補正値)とし、ファインカウント値のバイナリコードFBの2番目に上位のビットF2が1であれば、コースカウント値CVから1を減じた値をコース補正値(C補正値)とする。
【0028】
図7はステップS3→S4の場合であり、ファインカウント値FVは5、コースカウント値CVは2、ビン番号BINは21となる。図8はステップS6→S7の場合であり、ファインカウント値FVはA、コースカウント値CVは2、コース補正値CZ(C補正値)は3、ビン番号BINは26となる。図9はステップS9→S14の場合であり、ファインカウント値FVはE、コースカウント値CVは2、コース補正値CZ(C補正値)は1、ビン番号BINは14となる。図10はステップS11→S14の場合であり、ファインカウント値FVは3、コースカウント値CVは3、コース補正値CZ(C補正値)は4、ビン番号BINは35となる。図11はステップS13→S14の場合であり、ファインカウント値FVは4、コースカウント値CVは5、コース補正値CZ(C補正値)は4、ビン番号BINは36となる。
【0029】
信号生成回路5は、リングオシレータであってよく、リングオシレータは、M個のファインカウント値が出力される期間よりも長く動作し続けてよい。リングオシレータは、N個のコースカウント値が出力される期間よりも長く動作し続けてよい。
【0030】
計時装置30では、コースカウント値CVのエラー補正を行うことにより、TDC10を止めずに連続で動作させることが可能となる。また、複数のTDC10を搭載する場合に、1つの信号生成回路5(例えば、リングオシレータ)にラッチ回路を接続するだけでよく、回路規模を小さくすることができる。複数のTDCを設けて多チャネル化した場合に、1つのリングオシレータが時間基準になるため、各チャネル間の時間バラツキを少なくすることができ、発光素子(例えば、VCSEL)の駆動信号も同時に出力することができる。
【0031】
図12は、第1カウンタから出力されるグレイコードとファインカウント値の対応を示す説明図である。図13は、ミッシング(グレイ)コードとファインカウント値とを対応づける表(テーブル)である。図14は、テーブルを有する計時装置の構成を示すブロック図である。
【0032】
図12図14に示すように、第1パルス信号FPの位相ずれ等に起因して、第1カウンタ11が、M個(例えば、16個)のファインカウント値FVに正しく対応するM種(例えば、0~9・A~Fの16種)のグレイコードに含まれないミッシングコードMGを出力した場合に、第1コード変換部21は、M個のファインカウント値から出力されたミッシングコードに対応するファインカウント値を選択してもよい。制御部20は、図13および図14に示すような、複数のミッシングコードMGと、M個のファインカウント値FVとを対応付けるテーブルTB(ルックアップテーブル:LUT)を有してよい。なお、図12のような位相ズレが発生している(ミッシングコードが発生している)場合、ファインカウント値FVとして0,8は出力されない。
【0033】
図15は、本実施形態に係る計時装置の構成を示すブロック図である。図16は、本実施形態に係る計時装置の動作を示すタイミングチャートである。図17は、時間算出部が生成するヒストグラムである。図15および図16に示すように、制御部20は、ラッチ信号Le(スタートラッチ信号)、ラッチ信号Ls(リファレンスラッチ信号)、およびラッチ信号Lr(リターンラッチ信号)それぞれに対応するビン番号BINを算出する工程を1回以上行ってよい。
【0034】
具体的には、ラッチ信号Leでラッチされたファインカウント値のグレイコードFGeをバイナリコードFBeに変換し、ラッチ信号Leでラッチされたコースカウント値のグレイコードCGeをバイナリコードCBeに変換するとともに必要に応じてコース補正値のバイナリコードZBeを生成し、バイナリコードFBeおよびバイナリコードCBe/ZBeを用いて、ラッチ信号Leに対応するビン番号BINを算出する。
【0035】
同様に、ラッチ信号Lsでラッチされたファインカウント値のグレイコードFGsをバイナリコードFBsに変換し、ラッチ信号Lsでラッチされたコースカウント値のグレイコードCGsをバイナリコードCBsに変換するとともに必要に応じてコース補正値のバイナリコードZBsを生成し、バイナリコードFBsおよびバイナリコードCBs/ZBsを用いて、ラッチ信号Lsに対応するビン番号BINを算出する。
【0036】
同様に、ラッチ信号Lrでラッチされたファインカウント値のグレイコードFGrをバイナリコードFBrに変換し、ラッチ信号Lrでラッチされたコースカウント値のグレイコードCGrをバイナリコードCBrに変換するとともに必要に応じてコース補正値のバイナリコードZBrを生成し、バイナリコードFBrおよびバイナリコードCBr/ZBrを用いて、ラッチ信号Lrに対応するビン番号BINを算出する。
【0037】
そして、図16に示すように、時間算出部23は、ラッチ信号Lsに対応するビン番号BINとラッチ信号Leに対応するビン番号BINとの差であるΔBNsと、ラッチ信号Lrに対応するビン番号BINとラッチ信号Leに対応するビン番号BINとの差であるΔBNrと、ΔBNrからΔBNsを減じた遅延時間DTとを算出する。図16では、ラッチ信号Lsに対応するビン番号BINが10、ラッチ信号Leに対応するビン番号BINが10、ラッチ信号Lrに対応するビン番号BINが36であるから、ΔBNs=0,ΔBNr=26となる。基準信号OSの1周期(1.6ns)が16ビン番号に相当するため、ΔBNr=26=2.6〔ns〕となる。
【0038】
ΔBNsおよびΔBNr並びに遅延時間DTを求める工程を複数回行うことで、図17のようなヒストグラムを作成することができる。時間算出部23は、例えば、図17のヒストグラムにおける最も度数の多い遅延時間DT(例えば、レーザ光が対象物との間を往復するのに要する時間)を出力することができる。
【0039】
図18は、本実施形態に係る測距装置の構成を示すブロック図である。図18に示すように、本実施形態に係る測距装置40は、計時装置30および距離算出部35を備え、距離算出部35は、時間算出部23の出力する遅延時間DTおよび対象物に照射するレーザ光の速度等を用いて対象物との距離を測定する。
【0040】
図19は、本実施形態に係る光センサ装置の構成を示す模式断面図である。図20は、本実施形態に係る光センサ装置の構成を示すブロック図である。図19および図20に示すように、光センサ装置50は、発光素子ED(例えば、VCSEL)と、リファレンス用光学フィルタKSと、リターン用光学フィルタKRと、集光レンズ4と、遮光壁SHと、リファレンス用SPADアレイSAおよびリターン用SPADアレイRA(受光素子)を含む受光IC3と、受光IC3に接続する測距装置40(図18)とを備える。発光素子2からの出射光(例えば、レーザ光)は、リファレンス用光学フィルタKSを経てSPADアレイSAに入射するとともに、検知対象物で反射し、集光レンズ4およびリターン用光学フィルタKRを経てSPADアレイRAに入射する。
【0041】
光センサ装置50では、発光素子駆動回路7での駆動電流の立ち上がりに応じてラッチ信号Leが立ち上がり、アレイ駆動回路8での受光電流の立ち上がりに応じてラッチ信号Lsが立ち上がり、アレイ駆動回路9での受光電流の立ち上がりに応じてラッチ信号Lrが立ち上がる。ラッチ信号Le(スタートラッチ信号)は、発光素子EDの発光タイミングに応じた信号であり、ラッチ信号Ls(リファレンスラッチ信号)は、発光素子からのリファレンス光をリファレンス用SPADアレイSA(リファレンス用受光素子)で受光したタイミングに応じた信号であり、ラッチ信号Lr(リターンラッチ信号)は、発光素子EDから出射して対象物で反射した反射光をリターン用SPADアレイRA(リターン用受光素子)で受光したタイミングに応じた信号である。制御部20は、ラッチ信号Le、ラッチ信号Ls、およびラッチ信号Lrそれぞれ対応する(各ラッチ信号の立ち上がりに対応する)ビン番号BINを算出し、ラッチ信号Lsに対応するビン番号BINとラッチ信号Leに対応するビン番号BINとの差であるΔBNsと、ラッチ信号Lrに対応するビン番号BINとラッチ信号Leに対応するビン番号BINとの差であるΔBNrと、ΔBNrからΔBNsを減じた遅延時間DTとを算出する。ΔBNsおよびΔBNr並びに遅延時間DTを求める工程を複数回行うことで、ヒストグラムを作成することができる。時間算出部23は、このヒストグラムにおける最も度数の多い遅延時間DT(例えば、出射光が対象物との間を往復するのに要する時間)を出力することができる。距離算出部35は、時間算出部23の出力する遅延時間DTおよび対象物に照射するレーザ光の速度等を用いて対象物との距離を測定する。
【0042】
図21は、本実施形態に係る光センサ装置の構成を示すブロック図である。図21に示すように、リターン用SPADアレイRAを複数(RA1~RAn)に分割し、対象物からの反射光を、異なる位置の複数のSPADアレイ(受光素子)で受ける構成でもよい。図21では、リターン用SPADアレイRA1での受光に応じたラッチ信号Lr1が第1および第2カウンタ11・12に入力され、リターン用SPADアレイRA2での受光に応じたラッチ信号Lr2が第1および第2カウンタ11・12に入力され、リターン用SPADアレイRAnでの受光に応じたラッチ信号Lrnが第1および第2カウンタ11・12に入力される。図21の構成では、対象物の三次元的な位置を把握することができる。
【0043】
図22は、本実施形態に係る計時装置の構成を示すブロック図である。図22並びに図12および図14に示すように、計時装置30は、同一周期で位相の異なる複数の基準信号を生成する信号生成回路5と、複数の基準信号から得られる複数の第1パルス信号FPを用いてグレイコードFGでファインカウント値FVを出力する第1カウンタ11と、複数の基準信号から得られ、複数の第1パルス信号よりも周波数が小さい複数の第2パルス信号を用いてコースカウント値CVを出力する第2カウンタ12と、グレイコードFGがミッシングコードMGである場合には、ミッシングコードMGに対応するファインカウント値FVと、コースカウント値CVとを用いてビン番号BINを算出する制御部とを備える。
【0044】
Mを2以上の自然数として、第1カウンタ11は、M個(例えば、0~9・A~Fの16個)のファインカウント値FVを周期的に出力し、第1カウンタ11が、M個のファインカウント値に対応するM種の正しいグレイコードに含まれないミッシングコードMGを出力した場合に、第1コード変換部21は、M個のファインカウント値FVからミッシングコードMGに対応するファインカウント値FVを選択してバイナリコードFBに変換する。制御部20は、図22および図13に示す、複数のミッシングコードMGと、M個のファインカウント値FVとを対応付けるテーブルTBを有してよい。
【0045】
本実施形態に記載の計時装置30は、レーザ距離測定装置等の電子機器に用いることができる。
【0046】
上述の各実施形態は、例示および説明を目的とするものであり、限定を目的とするものではない。これら例示および説明に基づけば、多くの変形形態が可能になることが、当業者には明らかである。
【符号の説明】
【0047】
5 信号生成回路(オシレータ)
10 TDC
11 第1カウンタ
12 第2カウンタ
20 制御部
21 第1コード変換部
22 第2コード変換部
23 時間算出部
30 計時装置
40 測距装置
50 光センサ装置
FV ファインカウント値
CV コースカウント値
CZ コース補正値
FG ファインカウント値グレイコード
CG コースカウント値グレイコード
FB ファインカウント値バイナリコード
CB コースカウント値バイナリコード
ZB コース補正値バイナリコード
MG ミッシング(グレイ)コード
TB テーブル
図1
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