(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122579
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20240902BHJP
【FI】
H01F37/00 M
H01F37/00 T
H01F37/00 S
H01F37/00 E
H01F37/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030187
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】服部 邦章
(72)【発明者】
【氏名】菅原 拓実
(57)【要約】
【課題】コイルの放熱性を高めつつ、テープから露出する粘着面を減少させたリアクトルを提供する。
【解決手段】リアクトル1はコア3とコイル2を備えている。コア3は、磁性体であり、2本の外脚部31と一対のヨーク部32が環状に繋がった環形状を有する。コイル2は、少なくとも1本の外脚部31に装着される。このリアクトル1は、テープ6によって巻き付けられる。テープ6は、コア3の環形状の周に沿ってコイル2とコア3に巻き付けられ、外脚部31のコイル2とコア3を含むリアクトル輪郭の凸包絡線を辿る。凸包絡線とリアクトル輪郭が囲む凸包の欠陥8のうち、少なくとも1箇所には、凸包絡線上に延在するテープ貼着面7が延設される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体であり、2本の外脚部と一対のヨーク部が環状に繋がった環形状を有するコアと、
少なくとも1本の前記外脚部に装着されるコイルと、
前記コアの前記環形状の周に沿って前記コイルと前記コアに巻き付けられ、前記外脚部の前記コイルと前記コアを含むリアクトル輪郭の凸包絡線を辿るテープと、
前記凸包絡線と前記リアクトル輪郭とが囲む凸包の欠陥のうち、少なくとも1箇所に設置され、前記凸包絡線上に延在するテープ貼着面と、
を備えること、
を特徴とするリアクトル。
【請求項2】
片側の前記ヨーク部の背面に配置される台座を備え、
前記台座は、前記ヨーク部の前記背面からはみ出した端部を有し、
前記テープは、更に前記台座の端部を通って巻き付けられ、前記外脚部の前記コイルと前記コアと前記台座を含むリアクトル輪郭の凸包絡線を辿り、
前記テープ貼着面は、前記外脚部に装着された前記コイルと前記台座との間の前記凸包絡線に沿って延在すること、
を特徴とする請求項1記載のリアクトル。
【請求項3】
前記テープ貼着面と前記台座との間に存在し、前記テープ貼着面が及ばないギャップを備えること、
を特徴とする請求項2記載のリアクトル。
【請求項4】
一面に前記テープ貼着面を有するテープ貼着板と、
前記テープ貼着板に対してT字状に立って、当該テープ貼着板を支持し、前記ヨーク部の間際まで延びる肉盛り部と、
を備えること、
を特徴とする請求項2記載のリアクトル。
【請求項5】
前記台座は、前記ヨーク部より幅広であり、前記テープと直交する横リブを有し、
前記ヨーク部は、角が面取りされた面取り部を有し、
前記横リブは、前記面取り部上に延設されていること、
を特徴とする請求項4記載のリアクトル。
【請求項6】
一対の鍔部を有し、当該鍔部間に前記コイルが巻回されるボビンを備え、
前記コイルは、2本の前記外脚部の各々に前記ボビンを介して装着され、
前記鍔部は、前記コイルの周面よりも突き出す延長部を有し、
前記ボビンは、前記延長部同士を接触させて配されること、
を特徴とする請求項2記載のリアクトル。
【請求項7】
一対の鍔部を有し、当該鍔部間に前記コイルが巻回されるボビンを備え、
前記テープ貼着面は、前記鍔部と前記コイルの境界を一端部とし、前記台座の前記端部に向けて延びること、
を特徴とする請求項2乃至5の何れかに記載のリアクトル。
【請求項8】
前記テープ貼着面は、前記外脚部の前記コイルと前記ヨーク部との間の前記凸包絡線に沿って延在すること、
を特徴とする請求項1記載のリアクトル。
【請求項9】
前記コアは、両外脚部を横切るように分割されたコア部材を組み合わせて形成され、
前記コア部材同士は、未接着であること、
を特徴とする請求項1記載のリアクトル。
【請求項10】
前記テープ貼着面は、前記テープが貼り付く溝を有すること、
を特徴とする請求項1記載のリアクトル。
【請求項11】
前記テープは、前記外脚部に装着された前記コイルの外面を巻軸に沿って通り、前記ヨーク部の少なくとも一方の背面を前記巻軸と直交する方向に沿って通ること、
を特徴とする請求項1記載のリアクトル。
【請求項12】
前記テープは、前記外脚部に装着された前記コイルの外面上を巻軸に沿って通り、前記ヨーク部の少なくとも一方の背面上を前記巻軸と直交する方向に沿って通り、前記台座の外面上を前記巻軸と直交する方向に沿って通ること、
を特徴とする請求項2記載のリアクトル。
【請求項13】
前記コアは、前記2本の外脚部と平行な1本又は2本以上の中脚部を有すること、
を特徴とする請求項1記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルとコアを備えるリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルは主としてコイルとコアとから成る。コイルは、通電により巻数に従って磁束を発生させる。以下、外部から通電されて磁束を発生させることにより誘導性リアクタンスとして機能するコイルを主コイルと呼ぶ。コアは、コイルが発生させた磁束を真空よりも高い透磁率に従って通す閉磁路となる。このリアクトルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品である。
【0003】
このようなリアクトルは、多種多様の用途に使用されている。代表的なリアクトルとして、昇圧リアクトル、直列リアクトル、並列リアクトル、限流リアクトル、始動リアクトル、分路リアクトル、中性点リアクトル及び消弧リアクトル等が挙げられる。
【0004】
昇圧リアクトルは、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等の車載用の昇圧回路に組み込まれる。直列リアクトルは、電動機回路に直列に接続し短絡時の電流を制限する。並列リアクトルは、並列回路間の電流分担を安定させる。限流リアクトルは、短絡時の電流を制限しこれに接続される。始動リアクトルは、機械を保護する電動機回路に直列に接続して始動電流を制限する。分路リアクトルは、送電線路に並列接続されて進相無効電力の補償や異常電圧を抑制する。中性点リアクトルは、中性点と大地間に接続して電力系統の地絡事故時に流れる地絡電流を制限するために使用する。消弧リアクトルは、三相電力系統の1線地絡時に発生するアークを自動的に消滅させる。
【0005】
このリアクトルは、部材を接着剤で接着したり、ボルト留めで固定したりして製造される。しかし、このような部材の固定方法を用いると、リアクトルの製造工数は増加し、リアクトル製造のタクトタイムは増加してしまう。そこで、リアクトルに粘着性のテープを巻き付ける方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
テープの粘着面が露出してしまうと、導電性の異物がテープの粘着面に付着する虞がある。この導電性の異物がテープから剥離してリアクトルのコイルやコアに落下すると、ショートの危険性が生じる。そこで、2本の外脚部と1本の中脚部を一対のヨーク部で挟み込んだコアを用意し、中脚部にコイルを装着するリアクトルにおいて、このテープによる部材固定方法が採用されている。テープは、2本の外脚部と一対のヨーク部を通るように巻き回せば、粘着面が露出しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、中脚部にコイルを装着すると、コイルの周面を4方向に区分したとき、外脚部に対面する2面は放熱効率が悪くなる。中脚部にコイルを装着すると、コアの環状面と平行な2面が主な放熱面となる。そのため、中脚部にコイルを装着するリアクトルは、テープによる部材固定方法を採用できるが、コイルの放熱性を是正する措置が必要となっていた。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、コイルの放熱性を高めつつ、テープから露出する粘着面を減少させたリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の実施形態に係るリアクトルは、磁性体であり、2本の外脚部と一対のヨーク部が環状に繋がった環形状を有するコアと、少なくとも1本の前記外脚部に装着されるコイルと、前記コアの前記環形状の周に沿って前記コイルと前記コアに巻き付けられ、前記外脚部の前記コイルと前記コアを含むリアクトル輪郭の凸包絡線を辿るテープと、前記凸包絡線と前記リアクトル輪郭とが囲む凸包の欠陥のうち、少なくとも1箇所に設置され、前記凸包絡線上に延在するテープ貼着面と、を備える。
【0011】
このとき、前記テープは、前記外脚部の前記コイルの外面を巻軸に沿って通り、前記ヨーク部の少なくとも一方の背面を前記巻軸と直交する方向に沿って通る。
【0012】
片側の前記ヨーク部の背面に配置される台座を備え、前記台座は、前記ヨーク部の前記背面からはみ出した端部を有し、前記テープは、更に前記台座の端部を通って巻き付けられ、前記外脚部の前記コイルと前記コアと前記台座を含むリアクトル輪郭の凸包絡線を辿り、前記テープ貼着面は、前記外脚部に装着された前記コイルと前記台座との間の前記凸包絡線に沿って延在するようにしてもよい。
【0013】
このとき、前記テープは、前記外脚部の前記コイルの外面上を巻軸に沿って通り、前記ヨーク部の少なくとも一方の背面上を前記巻軸と直交する方向に沿って通り、前記台座の外面上を前記巻軸と直交する方向に沿って通る。
【0014】
前記テープ貼着面と前記台座との間に存在し、前記テープ貼着面が及ばないギャップを備えるようにしてもよい。
【0015】
一面に前記テープ貼着面を有するテープ貼着板と、前記テープ貼着板に対してT字状に立って、当該テープ貼着板を支持し、前記ヨーク部の間際まで延びる肉盛り部と、を備えるようにしてもよい。
【0016】
前記台座は、前記ヨーク部より幅広であり、前記テープと直交する横リブを有し、前記ヨーク部は、角が面取りされた面取り部を有し、前記横リブは、前記面取り部上に延設されているようにしてもよい。
【0017】
一対の鍔部を有し、当該鍔部間に前記コイルが巻回されるボビンを備え、前記コイルは、2本の前記外脚部の各々に前記ボビンを介して装着され、前記鍔部は、前記コイルの周面よりも突き出す延長部を有し、前記ボビンは、前記延長部同士を接触させて配されるようにしてもよい。
【0018】
一対の鍔部を有し、当該鍔部間に前記コイルが巻回されるボビンを備え、前記テープ貼着面は、前記鍔部と前記コイルの境界を一端部とし、前記台座の前記端部に向けて延びるようにしてもよい。
【0019】
前記テープ貼着面は、前記外脚部に装着された前記コイルと前記ヨーク部との間の前記凸包絡線に沿って延在するようにしてもよい。
【0020】
前記コアは、両外脚部を横切るように分割されたコア部材を組み合わせて形成され、前記コア部材同士は、未接着であるようにしてもよい。
【0021】
前記テープ貼着面は、前記テープが貼り付く溝を有するようにしてもよい。
【0022】
前記コアは、前記2本の外脚部と平行な1本又は2本以上の中脚部を有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、外脚部に装着されたコイルは3面から放熱しつつ、テープから露出する粘着面を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図4】コイルの外面のうち、台座側に近い位置の拡大斜視図である。
【
図5】コイルの外面のうち、台座とは反対側の位置の拡大斜視図である。
【
図6】テープ貼着面の設置位置候補を示す模式図である。
【
図7】台座にかかるテープのテンションを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態のリアクトルについて説明する。各図面においては、理解容易のため、厚み、寸法、位置関係、比率又は形状等を強調して示している場合があり、本発明は、それら強調に限定されるものではない。
【0026】
(構成)
図1は、本実施形態のリアクトル1の平面図であり、説明の都合上、テープ6を厚く強調してある。
図2は、本実施形態のリアクトル1の斜視図である。
図3は、本実施形態のリアクトル1の分解図であり、説明の都合上、テープ6を省略している。
図1乃至
図3に示すように、リアクトル1は、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品である。
【0027】
このリアクトル1は、コイル2とコア3と台座5とを備える。コイル2は、リアクトル1が組み込まれる回路からの通電により巻数に従って磁束を発生させるインダクタであり、回路に誘導性リアクタンスを導入する。コア3は、磁性体を含む環形状体であり、例えば2個のコイル2が装着されている。コア3は、コイル2が発生させた磁束を真空よりも高い透磁率に従って通す閉磁路となる。台座5は、このリアクトル1を実装回路基板に取り付ける治具である。
【0028】
リアクトル1のコイル2は、エナメル被覆等の絶縁被覆が施された導電線を筒状に巻いた巻回体である。このコイル2は、巻軸に沿って1ターンごとに導電線の巻位置をずらしながら螺旋状に巻回することで形成される。コイル2の導電線は例えば平角線であり、コイル2は例えばエッジワイズコイルである。コイル2の導電線の幅広面は、コイル2の巻軸との直交方向に拡がる。コイル2としてはフラットワイズコイルを採用することもできる。
【0029】
コイル2は角筒形状を有している。コイル2の筒形状は、第1端面21と第2端面22と、これら第1端面21と第2端面22とを繋ぐ周面23とにより画成される。第1端面21と第2端面22は、導電線の巻き始め及び巻き終わりに位置し、巻軸と直交する。第1端面21と第2端面22は、導電線の巻回態様に合わせて環形状を有する。コイル2の周面23は、第1端面21と第2端面22と直交し、筒軸と平行な4枚の平坦面で構成される。平坦面を繋ぐ角は湾曲している。
【0030】
このコイル2は、ボビン4の外周に巻き付けられている。ボビン4は、両端開口及び中空筒状の樹脂成形品であり、コア3に挿嵌される。コイル2は、このボビン4を介してコア3に装着されている。ボビン4は、絶縁性及び耐熱性を備え、コイル2とコア3とを絶縁する。ボビン4の材質は、例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)、又はこれらの複合である。ボビン4に熱伝導性のフィラーを混入させてもよい。
【0031】
ボビン4は、筒の両端面に鍔部41を備える。鍔部41は、コイル2の巻軸と直交する径方向に拡がる板である。鍔部41は、ボビン4の周に沿って1周に亘り延出している。コイル2は、鍔部41間に巻回される。コイル2の第1端面21及び第2端面22は鍔部41と当接する。鍔部41は、コイル2を巻回するときの崩れを阻止している。
【0032】
鍔部41は、コイル2の第1端面21及び第2端面22と概略同形同大である。但し、コイル2の周面23に対して一段高い段差となる延長部41aを有している。この延長部41aは、コイル2の周面23を形成する平坦面のうちの1枚の範囲に拡がる。以下、コイル2の周面23のうち、延長部41aが拡がる範囲の平坦面を内面24と呼ぶ。一方、コイル2の周面23のうち、内面24以外の他の3枚の平坦面と鍔部41とは、境界が無段差で平らに揃っており、即ち面一である。以下、巻軸を挟んで内面24と対称位置の平坦面を外面25と呼ぶ。
【0033】
コイル2が装着されるコア3は、2本の外脚部31と2個のヨーク部32が連なった環状体である。2本の外脚部31は同長であり、コア3の最外側に分かれて配置され、平行に延びている。外脚部31は、コア3の環状面33を正面から眺める方向に当該コア3を投影したとき、ヨーク部32と共にコア3の外側の輪郭を構成する。以下、コア3の環状面33を正面から眺める方向を環状面方向という。
【0034】
この外脚部31は、コイル2が装着されており、又はコイル2が装着された外脚部31と平行に延びている。即ち、2本の外脚部31の少なくとも1本にはコイル2が装着されている。例えば、リアクトル1は2個のコイル2を有する。このコア3は、2本の外脚部31の両方にコイル2を装着している。2個のコイル2は、互いの内面24を対向させて装着されている。鍔部41の延長部41a同士が、接着剤等の接着処理無しで突き合わされており、2個のコイル2を接近させる方向の外力が加わったとしても、2個のコイル2は距離を保って絶縁される。
【0035】
ヨーク部32は、2本の外脚部31を両端面側から挟み込み、2本の外脚部31を繋いでいる。このヨーク部32は、2本の外脚部31の端から端までの距離と同長である。ヨーク部32は、外脚部31の延びと直交する方向、即ちコイル2の巻軸と直交する方向に沿って延びる。環状面方向及びヨーク部32の延び方向の両方と直交する方向を、リアクトル幅方向という。
【0036】
コア3は、両外脚部31を横切るように、リアクトル幅方向に沿って分割されている。一対のU字型コア部材34を組み合わせることで、環形状のコア3は形作られる。コア3は、コイル2が巻回されたボビン4を外脚部31に挿通させた後、U字型コア部材34の端面34a同士を接触させることで、環状体に形作られる。但し、U字型コア部材34間には、接着剤等の接着処理は施されない。また、一対のU字型コア部材34は、インサート成形等によってモールド樹脂等を介して固定されるものではない。
【0037】
尚、このようなコア3の磁性体としては、圧粉磁心、フェライト磁心、メタルコンポジットコア又は積層鋼板等が挙げられる。圧粉磁心は、磁性粉末を押し固めた圧粉成形体を焼鈍したものである。磁性粉末は、鉄を主成分とし、純鉄粉、鉄を主成分とするパーマロイ(Fe-Ni合金)、Si含有鉄合金(Fe-Si合金)、センダスト合金(Fe-Si-Al合金)又はこれら2種以上の粉末の混合粉などが挙げられる。磁性粉末は、アモルファス合金でもよいし、ナノ結晶合金粉末であってもよい。メタルコンポジットコアは、磁性粉末と樹脂とが混練され成形されて成るコアである。
【0038】
コア3には、磁性体が途絶することなく環状に分布していてもよい。また、コア3の途中に、インダクタンス低下を防止する磁気的なギャップが設けられていてもよい。磁気的なギャップとしては、非磁性体、セラミック、非金属、樹脂、炭素繊維、若しくはこれら2種以上の合成材、ギャップ紙又はエアギャップを用いることができる。
【0039】
リアクトル1を取り付ける台座5は、リアクトル1が備える板状部である。台座5は、片側のヨーク部32の背面32aに、台座5の裏面51を面接触させて配置される。ヨーク部32の背面32aは、コア3の外側の輪郭を構成する面である。このヨーク部32の背面32aは、台座5と面接触可能に平坦である。
【0040】
リアクトル1は、この台座5の外面52を実装回路基板に面接触させて取り付けられる。台座5の外面52は、ヨーク部32の背面32aと対面する裏面51とは反対の面である。台座5の外面52は、環状面方向にリアクトル1を投影したとき、リアクトル1の外側の輪郭を構成する。尚、リアクトル1は、台座5を介して実装回路基板に載せられてもよいし、台座5を介して実装回路基板から吊り下げられてもよい。
【0041】
台座5は、リアクトル幅方向がヨーク部32よりも長く拡がる。台座5は、板中心からリアクトル幅方向に離れた端部5aがヨーク部32からはみ出している。台座5がヨーク部32より拡がることで、リアクトル1の実装回路基板への取り付け強度が上がる。また、台座5は、例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)、又はこれらの複合であり、絶縁性を備えている。この台座5がヨーク部32より拡がることで、実装回路基板とコア3との沿面距離が長くなり、絶縁性能を向上させている。
【0042】
台座5の端部5aは、コイル2の外面25と揃うまで延長されることが好ましい。即ち、コイル2の外面25を含む仮想平面上に台座5の端部5aが位置するまで、台座5が延ばされることが好ましい。これにより、リアクトル1を大型化させずに、リアクトル1の取り付け強度を高くし、また実装回路基板とコア3との沿面距離を長くできる。
【0043】
このようなリアクトル1において、コイル2が巻回された各ボビン4、各U字型コア部材34及び台座5は、接着剤やボルト留めではなく、片面に粘着面を有するテープ6によって巻き止められる。リアクトル1はテープ6が巻き付けられることで一体性を保持している。
【0044】
テープ6は、環状面方向に沿ってリアクトル1を投影したときのリアクトル1の外側の輪郭を囲うように、リアクトル1に巻き付けられる。換言すると、テープ6は、コア3の環状面33を囲うように、コア3の環形状の周に沿って、リアクトル1に巻き付けられる。テープ6は、リアクトル1の凸包絡線と一致する。凸包絡線は、凸包(convex hull)の外形線である。
【0045】
即ち、2本の外脚部31にコイル2が装着される場合、リアクトル1の凸包絡線は、コイル2の外面25上を巻軸に沿って通り、一方のヨーク部32の背面32a上をリアクトル幅方向、即ち巻軸と直交する方向に沿って通り、及び台座5の両端部5aと外面52をリアクトル幅方向に沿って通る。テープ6は、この凸包絡線に沿って、これらに貼り付いて、リアクトル1に1周以上に亘って巻き付けられる。
【0046】
尚、1本の外脚部31にコイル2が装着される場合、リアクトル1の凸包絡線は、コイル2の外面25上を巻軸に沿って通り、一方のヨーク部32の背面32a上をリアクトル幅方向に沿って通り、コア3の外脚部31の1本を延び方向に沿って通り、及び台座5の両端部5aと外面52をリアクトル幅方向に沿って通る。テープ6は、この凸包絡線に沿って、これらに貼り付いて、リアクトル1に1周以上に亘って巻き付けられる。
【0047】
図4は、コイル2の外面25のうち、台座5側に近い位置の拡大斜視図である。鍔部41には、テープ貼着板42が立設している。テープ貼着板42は、テープ6が貼り付けられるテープ貼着面7を有する壁面である。テープ貼着面7は、テープ6のテンションによって台座5に掛かる負荷を減少させる。また、テープ貼着板42は、テープ6のテンションによって曲がろうとする台座5を支え、台座5の反りを抑制する。
【0048】
テープ貼着板42のテープ貼着面7は、テープ6より幅広である。テープ貼着面7には、テープ6が貼着される溝71を有する。溝71は、テープ6の損耗抑制のために、テープ6の厚みと同一の深さを有し、又はテープ6の厚みより深いことが好ましい。
【0049】
テープ貼着板42のテープ貼着面7は、コイル2の外面25とテープ6とが離れる輪郭端点25aから立ち上がり、鍔部41の側面を通って延びている。コイル2の外面25と鍔部41との境界は無段差であり、従って輪郭端点25aは無段差である。テープ貼着板42は、台座5に向けて立ち上がり、テープ貼着面7は、台座5とテープ6とが集合する端部5aを目指して延びる。台座5の端部5aがコイル2の外面25と揃うまで延びている場合、テープ貼着板42及びテープ貼着面7はコイル2の外面25に沿って延び、鍔部41に対して垂直に延びている。
【0050】
もっとも、テープ貼着面7は台座5に未到達である。テープ貼着板42と台座5との間にはギャップ43を設けている。このギャップ43は、テープ貼着板42と台座5の製造誤差を吸収し、テープ貼着板42によって台座5が反ることを防止する。
【0051】
テープ貼着板42は、テープ6のテンションによってテープ貼着板42自体が曲がったり、折れたりしないように、肉盛り部44で支持される。肉盛り部44は、ボビン4の鍔部41に立設している。肉盛り部44は、テープ貼着板42に対してT字状に突き当たるように立っており、テープ貼着板42に接続して、テープ貼着板42を裏側から支えている。肉盛り部44は、テープ貼着板42の変形を効果的に抑制するため、リアクトル幅方向において、ヨーク部32の間際まで延びている。
【0052】
台座5は、テープ6のテンションによって変形し得るのみならず、製造時によっても反りが発生し得る。そのため、台座5には、裏面51に縦リブ54が配設されている。縦リブ54はリアクトル幅方向に沿って延びる。縦リブ54は、コア3のヨーク部32を避けて、ヨーク部32の両側に平行に延びている。
【0053】
また、台座5は、環状面方向にヨーク部32よりも幅広である。この台座5は、環状面方向に湾曲するような反りが製造時に発生し得る。そのため、台座5の裏面51には、縦リブ54と直交する横リブ55が配設されている。横リブ55は、台座5の裏面51上に、環状面方向に沿って形成されている。この横リブ55と肉盛り部44との物理的衝突を避けるため、ヨーク部32は、角が切り落とされた面取り部32bを有しており、横リブ55は、ヨーク部32の面取り部32b上に形成されている。
【0054】
尚、台座5の外面52にも、テープ6が貼着される溝53が形成されている。この溝53についても、テープ6の損耗抑制のために、テープ6の厚みと同一の深さを有し、又はテープ6の厚みより深いことが好ましい。
【0055】
図5は、コイル2の外面25のうち、台座5とは反対側の位置の拡大斜視図である。
図5に示すように、台座5とは反対位置にもテープ貼着面7が存在する。台座5とは反対側にあるボビン4の鍔部41には、テープ貼着スロープ台45が膨出している。このテープ貼着スロープ台45の傾斜面がテープ貼着面7になっている。
【0056】
テープ貼着スロープ台45のテープ貼着面7は、コイル2の外面25とテープ6とが離れる輪郭端点25bを基端とする。コイル2の外面25と鍔部41との境界は無段差であり、従って輪郭端点25bは無段差である。テープ貼着スロープ台45のテープ貼着面7は、テープ6が這う凸包絡線から離れるコア3の輪郭端点3bに向けて延びる。
【0057】
(作用)
このようなリアクトル1では、外脚部31に装着されたコイル2は、コア3の環状面33と平行な2面の他、外面25からも放熱できる。しかし、
図6に示すように、外脚部31にコイル2を装着すると、リアクトル1の凸包絡線とリアクトル1の外側の輪郭が囲む凸包の欠陥8が生じる。凸包の欠陥8に沿って延びるテープ6は粘着面が露出してしまう。露出した粘着面に導電性の異物が付着し、この導電性の異物が振動等によってテープから剥離してリアクトルのコイルやコアに落下すると、ショートの危険性が生じる。
【0058】
そこで、外脚部31にコイル2を装着しつつ、粘着面の露出を少なくしながらテープ6で巻き止めるために、このリアクトル1は、リアクトル1の凸包絡線とリアクトル1の外側の輪郭が囲む凸包の欠陥8のうち、少なくとも1箇所に対し、凸包絡線上に延在するテープ貼着面7を設置している。テープ貼着面7の存在によって、テープ6から露出する粘着面は少なくなり、導電性の異物によるショートの虞を低減する。
【0059】
凸包の欠陥8は、リアクトル1の外側の輪郭と凸包絡線とが離間することで発生し、当該輪郭と凸包絡線とにより囲まれた領域である。各外脚部31に装着された2個のコイル2、コア3及び台座5により、台座5とコイル2との間の2箇所、及び台座5が無いヨーク部32とコイル2との間の2箇所に、凸包の欠陥8が発生する。
【0060】
このリアクトル1は、2個のコイル2を外脚部31に装着し、またヨーク部32より長い台座5を備えるようにし、2枚のテープ貼着板42と2台のテープ貼着スロープ台45を配したが、導電性の異物の付着可能性に応じて優先順位を設け、一部にテープ貼着面7を延在させるようにしてもよい。
【0061】
また、台座5が無い場合、又は台座5がヨーク部32の背面32aの範囲内に収まる場合、テープ貼着板42に代えて、テープ貼着スロープ台45を配置してもよい。テープ貼着スロープ台45は、鍔部41から膨出し、コイル2の外面25の輪郭端点25aと台座5の端部5a又はコア3の輪郭端点3bとの間に、テープ貼着面7を延ばすようにすればよい。
【0062】
台座5は、実装回路基板への取り付け強度及び沿面距離の確保の観点から、ヨーク部32よりも板長を長くすることが好ましい。しかし、
図7に示すように、台座5の端部5aとコイル2の外面25の輪郭端点25aとの間の凸包の欠陥8を解消しない場合には、台座5を折り曲げようとするテープ6のテンションが加わってしまう。そこで、テープ貼着板42が設けられている。
【0063】
テープ貼着板42のテープ貼着面7は、外脚部31のコイル2と台座5との間の凸包絡線に沿って延在しており、この間に延在しているテープ6が貼り付いている。そのため、テープ6が台座5を折り曲げようとするテンションは減少する。また、台座5をテープ貼着板42が支えるため、台座5が曲がりは最低限に抑制できる。従って、台座5の長さをヨーク部32より長くし、また端部5aがコイル2の外面25に揃うまで延長することが可能となる。
【0064】
もっとも、台座5、テープ貼着板42又は鍔部41等の製造上の個体差によっては、台座5をテープ貼着板42が突っ張ってしまい、台座5がテープ貼着板42によって曲げられてしまう虞がある。そこで、テープ貼着板42は、鍔部41から延びて台座5には未達となっている。そのため、台座5とテープ貼着板42との間にギャップ43が設けられる。このギャップ43が製造上の個体差を吸収して、台座5をテープ貼着板42が突っ張る事態を回避できる。
【0065】
尚、テープ貼着板42は、鍔部41に立設するようにしたが、これに限られない。台座5の裏面51からコイル2の外面25の輪郭端点25aに向けて、テープ貼着板42を延ばすようにしてもよい。この場合、テープ貼着板42と鍔部41との間にギャップ43を設ける。台座5側の鍔部41はテープ貼着板42のベースであるとともに、テープ貼着面7の始端となっている。台座5にテープ貼着板42を立設する場合には、コイル2の巻回における崩れが回避できれば、台座5側の鍔部41を排除することもできる。
【0066】
(効果)
このように、コイル2が外脚部31に装着されるリアクトル1にテープ6を巻き付けるようにした。テープ6は、コア3の環形状の周に沿ってコイル2とコア3に巻き付けられる。そして、テープ6は、外脚部31のコイル2とコア3を含むリアクトル1の輪郭の凸包絡線を辿る。このとき、この凸包絡線とリアクトル1の輪郭が囲む凸包の欠陥8に対して、凸包絡線上に延在するテープ貼着面7を備えるようにした。これにより、リアクトル1の放熱性能を向上させつつ、テープ6から露出する粘着面は少なくなって導電性の異物によるショートの虞を低減させることができる。
【0067】
尚、本実施形態では、両方の外脚部31にコイル2を装着させたが、これに限られない。片方の外脚部31にコイル2が装着されることで、凸包の欠陥8は発生するので、この凸包の欠陥8にテープ貼着面7を配置すればよい。また、コア3は、外脚部31の間に中脚部を有するようにしてもよい。この中脚部は、2本の外脚部31と平行に延び、コイル2が装着されていてもよい。この中脚部を有するリアクトル1であっても、片方の外脚部31にコイル2が装着されることで、凸包の欠陥8は発生するので、この凸包の欠陥8にテープ貼着面7を配置すればよい。
【0068】
ここで、複数の凸包の欠陥8の1箇所にテープ貼着面7を配置できれば、テープ6の露出した粘着面は減少する。従って、凸包絡線とリアクトル1の輪郭が囲む凸包の欠陥8のうち、少なくとも1箇所にテープ貼着面7が設置されるリアクトル1は、本発明に含まれるものである。
【0069】
また、コイル2が巻回されるボビン4を備え、一対の鍔部41間にコイル2を巻回するようにした。コイル2は、2本の外脚部31の各々にボビン4を介して装着される。この鍔部41は、コイル2の周面23よりも突き出す延長部41aを有するようにした。そして、コイル2は、ボビン4の延長部41a同士を接触させて配されるようにした。
【0070】
これにより、テープ6のテンションによりボビン4同士が位置ズレし、最悪の場合にコイル2同士が電気的に接触することを避けることができる。そして、この効果を得るために、2個のボビン4を一体成型する必要はなく、ボビン4の金型は単純化する。また、この効果を得るために、ボビン4同士を接着する必要はなく、リアクトル1の工数が削減される。
【0071】
その他、コア3は、両外脚部31を横切るように分割されたU字型コア部材34等のコア部材を組み合わせて形成され、コア部材同士は、未接着であるようにした。これにより、コア部材をインサート成形により一体化する必要はなく、コア3をモールドするモールド樹脂を備える場合、そのモールド樹脂の金型は単純化する。また、コア部材同士を接着する必要はなく、リアクトル1の工数が削減される。
【0072】
尚、1個の環形状を有するコア3は、U字型コア部材34に分割されるのみならず、各種コア部材によって形作られるようにしてもよい。例えば、C字型のコア部材と脚の長いU字型のコア部材34を組み合わせてコア3を形作るようにしてもよい。また、2本の直線状のヨーク部32と2本の直線状の外脚部31を組み合わせてコア3を形作るようにしてもよい。
【0073】
更に、2個の環形状が連なったコア3を採用することができ、コア3は、E字型のコア部材に分割されてもよい。更に、3個以上の環形状が連なったコア3を採用することができ、ヨーク部32から4本以上の脚部が延出した2個のコア部材を組み合わせるようにしてもよい。即ち、コア3は、外脚部31と平行に、2本の外脚部31に挟まれた1本又は2本以上の中脚部を有していてもよい。1本の外脚部31にコイル2が装着されていれば、各種形状のコア3を採用でき、各種のコア部材でコア3を形作ることができる。中脚部がある場合、この中脚部にコイル2を追加することもできる。
【0074】
また、片側のヨーク部32の背面32aに、ヨーク部32の背面32aからはみ出した端部5aを有する台座5を備えるようにした。そして、テープ貼着面7は、外脚部31のコイル2と台座5との間の凸包絡線に沿って延在するようにした。これにより、台座5の折れ曲がりを抑制することができ、リアクトル1の取り付け強度及び実装回路基板との絶縁性を向上させることができる。
【0075】
また、外脚部31のコイル2と台座5との間に存在し、テープ貼着面7が及ばないギャップ43を備えるようにした。これにより、テープ貼着面7を有するテープ貼着板42によって台座5を突っ張って曲げてしまうことを阻止できる。
【0076】
テープ貼着板42に対しては肉盛り部44をT字状に立て、テープ貼着板42を支持させるようにした。この肉盛り部44はヨーク部32の間際まで延ばすようにした。これに対し、ヨーク部32は、角が面取りされて、面取り部32bを有し、台座5は、テープ6と直交する横リブ55を面取り部32b上に延在させるようにした。これにより、台座5は、ヨーク部32より幅広にでき、リアクトル1の取り付け強度を向上させ、また実装回路基板との沿面距離を拡げて絶縁性能を高くすることができる。
【0077】
以上の本発明の実施形態は例として提示したものであって、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。そして、実施形態やその変形は本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
1 リアクトル
2 コイル
21 第1端面
22 第2端面
23 周面
24 内面
25 外面
25a 輪郭端点
25b 輪郭端点
3 コア
3b 輪郭端点
31 外脚部
32 ヨーク部
32a 背面
32b 面取り部
33 環状面
34 U字型コア部材
34a 端面
4 ボビン
41 鍔部
41a 延長部
42 テープ貼着板
43 ギャップ
44 肉盛り部
45 テープ貼着スロープ台
5 台座
5a 端部
51 裏面
52 外面
53 溝
54 縦リブ
55 横リブ
6 テープ
7 テープ貼着面
71 溝
8 凸包の欠陥