(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024122580
(43)【公開日】2024-09-09
(54)【発明の名称】重量物の搬入設置システム、当該システムに用いられるガイド装置、及び、ジャッキアップ装置、並びに、重量物の搬入設置方法
(51)【国際特許分類】
B65G 7/04 20060101AFI20240902BHJP
B66F 3/24 20060101ALI20240902BHJP
E04G 21/16 20060101ALN20240902BHJP
【FI】
B65G7/04 Z
B66F3/24 A
E04G21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030197
(22)【出願日】2023-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】安江 洋平
(72)【発明者】
【氏名】浅野 京介
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174CA03
2E174CA06
2E174CA23
(57)【要約】
【課題】作業性の向上を図りつつ、安定した状態で、重量物を搬入、設置することができる重量物の搬入設置システム、当該システムに用いられるガイド装置、及び、ジャッキアップ装置、並びに、重量物の搬入設置方法を提供する。
【解決手段】架台1には、ガイド装置21と、爪ジャッキ43を備えたジャッキアップ装置41とが設けられる。ガイド装置21は、ローラ手段22と第1ガイド23、第2ガイド24とを備えており、逸脱することなく架台1上を移動させることが可能である。搬入ポジションで吊り上げ装置によって吊り上げられたPAC11は、各ガイド装置21上に設置され、固定ポジションへと搬送される。固定ポジションに搬送されたPAC11は、爪ジャッキ43によって、持ち上げられる。その間に、各ガイド装置21を取り外し、ジャッキダウンさせ、PAC11の架台1上への設置が完了する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内に設置された互いに平行に延びる一対の鉄骨架台上の所定の固定ポジションに、所定の搬入ポジションに搬入された所定の重量物を複数並列に設置固定するための重量物の搬入設置システムであって、
前記一対の鉄骨架台は、前記搬入ポジションから前記固定ポジションまで延びており、
前記一対の鉄骨架台上に、それぞれ前後一対で前記各鉄骨架台に沿って移動可能に設けられ、前記重量物を載置可能であり、かつ、載置された重量物を仮固定可能なガイド装置と、
前記搬入ポジションにおいて、前記重量物を吊り上げ、前記ガイド装置上に載置させるための吊り上げ装置と、
前記固定ポジション又はその近傍に仮設置可能であり、前記一対の鉄骨架台上に掛架される台座部、及び、前記台座部上に設置されるジャッキアップ器具を具備するジャッキアップ装置と
を備えることを特徴とする重量物の搬入設置システム。
【請求項2】
前記ガイド装置は、前記重量物を載置可能な台部を備えるとともに、前記鉄骨架台上を滑走可能なローラを備えるローラ手段と、
前記ローラ手段の両側部に固定され、前記鉄骨架台の両側部をガイドする左右一対のガイド手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の重量物の搬入設置システム。
【請求項3】
前記台部は、上面に開口し、前記重量物の下部に形成された孔部に対応するねじ穴を備えた固定部を有し、前記孔部と前記ねじ穴とを合致させた状態でボルトで締結することにより、前記重量物が前記台部に固定可能となっていることを特徴とする請求項2に記載の重量物の搬入設置システム。
【請求項4】
前記ジャッキアップ装置の前記台座部は、前記鉄骨架台に対し着脱可能に設けられることを特徴とする請求項1に記載の重量物の搬入設置システム。
【請求項5】
請求項3に記載の重量物の搬入設置システムに用いられるガイド装置。
【請求項6】
請求項4に記載の重量物の搬入設置システムに用いられるジャッキアップ装置。
【請求項7】
屋内に設置された互いに平行に延びる一対の鉄骨架台上の所定の固定ポジションに、所定の搬入ポジションに搬入された所定の重量物を仮設置固定するための重量物の搬入設置方法であって、
前記一対の鉄骨架台は、前記搬入ポジションから前記固定ポジションまで延設されており、かつ、前記搬入ポジションにおいて、前記重量物を吊り上げ可能な吊り上げ装置が設けられており、
前記重量物を載置可能であり、かつ、載置された重量物を仮固定可能なガイド装置を、前記一対の鉄骨架台に対し、それぞれ前後一対で前記各鉄骨架台に沿って移動可能に設置するガイド装置設置工程と、
前記搬入ポジションにおいて、前記吊り上げ装置を用いて前記重量物を吊り上げ、前記ガイド装置上に載置させた後、固定させる吊り上げ設置工程と、
前記一対の鉄骨架台上において、前記重量物、及び、前記ガイド装置を、前記固定ポジションまで搬送する搬送工程と、
前記固定ポジションにおいて、台座部を前記一対の鉄骨架台上に掛架し、当該台座部上にジャッキアップ器具を設置することで、前記台座部、及び、前記ジャッキアップ器具を具備するジャッキアップ装置を仮設置するジャッキアップ装置仮設置工程と、
前記重量物から前記ガイド装置を取外し、前記重量物を前記ジャッキアップ器具によって持ち上げるジャッキアップ工程と、
前記一対の鉄骨架台から前記ガイド装置を取外すガイド装置取外し工程と、
前記重量物を前記一対の鉄骨架台上に載置し固定する重量物設置工程とを備えることを特徴とする重量物の搬入設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量物の搬入設置システム、当該システムに用いられるガイド装置、及び、ジャッキアップ装置、並びに、重量物の搬入設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場等の大型施設で利用される業務用エアコンとして、箱形状の床置き型PAC(パッケージエアコン)が用いられる。工場やスーパーマーケットなど商業施設などの大型施設では、人が通行できてかつ生産装置などを設置できる躯体床の床面積の有効利用のため、常時人が通行しない中二階的な位置に、床置き型PAC室内機など空調装置を持ち上げる鉄骨だけで組んだぶどう棚的床面を設けることがある。大型施設の大空間に空調を行うため同型、あるいは奥行き寸法を揃えた床置き型PAC室内機を何台か並べて設置すると、ぶどう棚的床面が少なくて済みイニシャルコストが省略できる。この場合、床置き型PAC室内機を据え付けるための基礎の代わりになる鉄骨架台を、並べて設置する床置き型PAC室内機(以下、PACという。)の台数分プラスアルファ直線で延設するとコスト的に良い。
【0003】
PACは重量物であるため、当該PACを搬入ポジションから所定の固定ポジション(据付位置)まで搬送移動させる場合には、一般的に、大型の吊り上げ機構による揚重(固定ポジションへの運搬、及び、設置)が行われる(例えば、特許文献1等参照。)。尚、固定ポジションには、予め水平方向に平行に延びる一対の鉄骨架台が敷設されている。当該鉄骨架台があることによって、ぶどう棚的床面のいずれかの開口から揚重され、ぶどう棚的床面を水平移動して、レベルの異なる鉄骨架台上に再度揚重して、複数のPACを並列に鉄骨架台上に固定することが可能となっている。
【0004】
ところで、例えば工場等のように、施設場内への搬入場所から所定の固定ポジション(据付位置)までの距離が、大きく離れているケース(例えば50m程度)では、天井クレーンなど常設の吊り上げ機構があっても、その可動範囲が限られていることから、上述した吊り上げ機構のみによる、ぶどう棚的床面の搬入口から固定ポジションへの搬送移動は現実的ではない。
【0005】
上述したケースでは、主に、2つの搬入設置方法が考えられる。
【0006】
1つ目の方法としては、まず、ぶどう棚的床面の搬入口近辺(搬入ポジション)、及び、固定ポジション付近の天井梁等に対し、チェーンブロック等の比較的簡易な吊り上げ装置を、足場(複数の脚立と足場板を緊結する脚立足場、立ち馬等)を用いてそれぞれ設置する。その後、搬入口近辺の吊り上げ装置でPACを吊り上げ、業務用の大型台車に載置し、当該台車を固定ポジションの鉄骨架台の横まで移動させる。その際、ぶどう棚的床面上に閉塞した平面を形成するため、適宜、コンクリートパネルなど厚いベニヤ板等を敷きながら移動させる。移動後は、固定ポジションの吊り上げ装置を用いて、台車に載置されたPACを吊り上げ、鉄骨架台上の固定ポジションに固定させることで、PACの設置が完了する。
【0007】
2つ目の方法としては、予め鉄骨架台を、固定ポジションからぶどう棚的床面の搬入口近辺(搬入ポジション)まで延設させておく。そして、搬入ポジション付近の鉄骨架台上に、複数のコロ(例えば鉄パイプ)を、当該鉄骨架台と直交する方向に渡しておく。その後、ぶどう棚的床面の搬入口近辺(搬入ポジション)の吊り上げ装置でPACを吊り上げ、複数のコロの上に載置する。そして、PACを、ロープで引張ったり、手押ししたりすることで、鉄骨架台上の固定ポジションまで搬送する。その際、PACの移動状況に合わせて、適宜、コロの前後位置を入れ替えたり調整しながら移動させる。固定ポジションに到着後は、PACを位置調整しながらコロを外して鉄骨架台上に固定させることで、PACの設置が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、1つ目の方法では、ぶどう棚的床面の搬入口近辺(搬入ポジション)、及び、固定ポジションにおいて、PACの吊り上げを2回行う必要がある。PACの吊り上げに際しては、都度、足場や吊り上げ装置の設置が必要となることもある。加えて、床に凹凸があり、移動中の振動が懸念される場合には、適宜、ベニヤ板等を敷きながら移動させる必要が生じ、作業時間の増加に繋がってしまう。
【0010】
また、2つ目の方法では、鉄骨架台と直交する方向に渡されているコロは、固定されているわけではないため、PACが移動されるのに伴い、徐々に傾いてしまうことが懸念される。そのため、PACが脱落しないよう細心の注意を払って搬送作業を行わなければならず、また、場合によっては、PACが不安定な状態のまま搬送されてしまうおそれがある。また、固定ポジションまでコロを用いてPACを移動して、最後にコロを抜く際にもコロの高さ分PACを滑り落とすこととなり、鉄骨架台の固定開孔とPAC側の固定開孔とを合わせるのが至難の業であり、結局固定ポジションにおいても吊り上げを行うこととなる。
【0011】
本発明は上記例示した問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、作業性の向上を図りつつ、安定した状態で、重量物を搬入、設置することができる重量物の搬入設置システム、当該システムに用いられるガイド装置、及び、ジャッキアップ装置、並びに、重量物の搬入設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0013】
手段1.屋内に設置された互いに平行に延びる一対の鉄骨架台上の所定の固定ポジションに、所定の搬入ポジションに搬入された所定の重量物を複数並列に設置固定するための重量物の搬入設置システムであって、
前記一対の鉄骨架台は、前記搬入ポジションから前記固定ポジションまで延びており、
前記一対の鉄骨架台上に、それぞれ前後一対で前記各鉄骨架台に沿って移動可能に設けられ、前記重量物を載置可能であり、かつ、載置された重量物を仮固定可能なガイド装置と、
前記搬入ポジションにおいて、前記重量物を吊り上げ、前記ガイド装置上に載置させるための吊り上げ装置と、
前記固定ポジション又はその近傍に仮設置可能であり、前記一対の鉄骨架台上に掛架される台座部、及び、前記台座部上に設置されるジャッキアップ器具を具備するジャッキアップ装置と
を備えることを特徴とする重量物の搬入設置システム。
【0014】
手段1によれば、一対の鉄骨架台に設けられた各ガイド装置は、当該鉄骨架台に沿って移動すること、重量物を載置すること、及び、載置された重量物を固定することが可能である。また、搬入ポジションに備えられた吊り上げ装置を用いることで、重量物を吊り上げ、各ガイド装置上に載置、及び、固定することが可能である。すなわち、搬入ポジションに搬入された重量物は、吊り上げ装置を用いて吊り上げられ、各ガイド装置上に載置、及び、固定されることで、鉄骨架台に沿って移動可能となる。
【0015】
また、鉄骨架台は、搬入ポジションから固定ポジションまで延びており、各ガイド装置に設置された重量物は、ロープで引張ったり、手押ししたりすることで、搬入ポジションから固定ポジションへと搬送される。
【0016】
そして、固定ポジションに到達した重量物は、各ガイド装置と仮固定が解除され、ジャッキアップ装置(ジャッキアップ器具)を用いて、持ち上げられる。重量物が持ち上げられている間に、各ガイド装置を鉄骨架台から取り外すことで、持ち上げられた重量物を固定ポジションの鉄骨架台上に設置させることができる。
【0017】
本手段によれば、重量物の吊り上げは搬入ポジションにおいて1回のみ行われることとなる。そのため、従来のように、搬入、及び、固定ポジションにおいて、吊り上げを2回も行う必要がなく、その都度、足場や吊り上げ装置の設置が必要となるといった事態も回避することができ、作業性の飛躍的な向上を図ることができる。
【0018】
また、本手段では、重量物は各ガイド装置を介してスムースに鉄骨架台上を移動させることができる。すなわち、鉄骨架台がレールとして、ガイド装置が当該レールを移動する機構として、それぞれ機能するため、ガイド装置、ひいては重量物が鉄骨架台上から逸脱するおそれがない。そのため、ベニヤ板等を敷きながら重量物を移動させたり、次々にコロを渡して細心の注意を払いつつ搬送作業を行なったりする必要のあった従来技術とは異なり、安定した状態で、且つ、容易に固定ポジションまで搬送させることが可能となる。
【0019】
さらに、固定ポジションにおいて、重量物は、吊り上げ装置ではなく、簡易的なジャッキアップ器具を用いることで、その場で持ち上げることができるため、各ガイド装置を鉄骨架台から速やかに取外すことができ、作業時間を短縮させることが可能となる。
【0020】
手段2.前記ガイド装置は、前記重量物を載置可能な台部を備えるとともに、前記鉄骨架台上を滑走可能なローラを備えるローラ手段と、
前記ローラ手段の両側部に固定され、前記鉄骨架台の両側部をガイドする左右一対のガイド手段とを備えることを特徴とする手段1に記載の重量物の搬入設置システム。
【0021】
手段2によれば、各ガイド装置は、ローラ手段を有しているため、鉄骨架台上において、各ガイド装置を滑らかに移動させることができ、各ガイド装置に設置された重量物を、より迅速に搬送することが可能となっている。
【0022】
また、本手段によれば、各ガイド装置は、前記鉄骨架台の両側部をガイドする左右一対のガイドを備えている。そのため、鉄骨架台上の移動に際して、各ガイド装置が、鉄骨架台と直交する方向へ大きく変位するといった事態を防止することが可能となり、その結果、重量物をより一層安定した状態で搬送させることができる。
【0023】
手段3.前記台部は、上面に開口し、前記重量物の下部に形成された孔部に対応するねじ穴を備えた固定部を有し、前記孔部と前記ねじ穴とを合致させた状態でボルトで締結することにより、前記重量物が前記台部に固定可能となっていることを特徴とする手段2に記載の重量物の搬入設置システム。
【0024】
手段3によれば、重量物の下部に形成された孔部と、ガイド装置の台部のねじ穴とを合致させた状態でボルトで締結することにより、重量物と各ガイド装置とを容易かつ確実に固定させることが可能となる。その結果、重量物をより一層安定した状態で搬送させることができる。また、鉄骨架台の上面に開設された本設置用孔と、前記重量物の下部に形成された孔部とが予め合致(螺着)する位置とし、ガイド装置の台部のねじ穴の位置を合わせることで無駄な孔部を開設する必要がない。
【0025】
手段4.前記ジャッキアップ装置の前記台座部は、前記鉄骨架台に対し着脱可能に設けられることを特徴とする手段1に記載の重量物の搬入設置システム。
【0026】
手段4によれば、例えば、重量物のジャッキアップに際して、前方から重量物を持ち上げ、前方の各ガイド装置のみを鉄骨架台から取外した後、同様の手順で後方の各ガイド装置も取外すといったケースにおいて、前方でのガイド装置の取外し完了後、前方の台座部を取り外し、当該台座部を後方に設置するといったことができるようになり、台座部を前方、後方の2箇所に設置する必要がなくなる。すなわち、台座部の必要個数を極力減らすことが可能となり、且つ、台座部の位置を容易に変更させることが可能となる。加えて、上述したケース以外(例えば、同一鉄骨架台上に複数の重量物を並べて設置する場合)であっても、1つの台座部の位置を、適宜、移し替えることで柔軟に対応することが可能である。
【0027】
手段5.手段3に記載の重量物の搬入設置システムに用いられるガイド装置。
【0028】
手段5によれば、上記手段3と同様の作用効果が奏される。
【0029】
手段6.手段4に記載の重量物の搬入設置システムに用いられるジャッキアップ装置。
【0030】
手段6によれば、上記手段4と同様の作用効果が奏される。
【0031】
手段7.屋内に設置された互いに平行に延びる一対の鉄骨架台上の所定の固定ポジションに、所定の搬入ポジションに搬入された所定の重量物を仮設置固定するための重量物の搬入設置方法であって、
前記一対の鉄骨架台は、前記搬入ポジションから前記固定ポジションまで延設されており、かつ、前記搬入ポジションにおいて、前記重量物を吊り上げ可能な吊り上げ装置が設けられており、
前記重量物を載置可能であり、かつ、載置された重量物を仮固定可能なガイド装置を、前記一対の鉄骨架台に対し、それぞれ前後一対で前記各鉄骨架台に沿って移動可能に設置するガイド装置設置工程と、
前記搬入ポジションにおいて、前記吊り上げ装置を用いて前記重量物を吊り上げ、前記ガイド装置上に載置させた後、固定させる吊り上げ設置工程と、
前記一対の鉄骨架台上において、前記重量物、及び、前記ガイド装置を、前記固定ポジションまで搬送する搬送工程と、
前記固定ポジションにおいて、台座部を前記一対の鉄骨架台上に掛架し、当該台座部上にジャッキアップ器具を設置することで、前記台座部、及び、前記ジャッキアップ器具を具備するジャッキアップ装置を仮設置するジャッキアップ装置仮設置工程と、
前記重量物から前記ガイド装置を取外し、前記重量物を前記ジャッキアップ器具によって持ち上げるジャッキアップ工程と、
前記一対の鉄骨架台から前記ガイド装置を取外すガイド装置取外し工程と、
前記重量物を前記一対の鉄骨架台上に載置し固定する重量物設置工程とを備えることを特徴とする重量物の搬入設置方法。
【0032】
手段7によれば、搬入ポジションに備えられた吊り上げ装置を用いることで、重量物が吊り上げられ、一対の鉄骨架台に設けられた各ガイド装置上に載置され、固定される。次に、各ガイド装置に設置された重量物を、ロープで引張ったり、手押ししたりすることで、搬入ポジションから固定ポジションへと搬送させる。固定ポジションにおいては、ジャッキアップ装置を一対の鉄骨架台上に設置させる。固定ポジションに到達した重量物は、各ガイド装置との固定が解除され、ジャッキアップ装置(ジャッキアップ器具)を用いて、持ち上げられる。重量物が持ち上げられている間に、各ガイド装置を鉄骨架台から取り外すことで、持ち上げられた重量物が、固定ポジションの鉄骨架台上に設置される。
【0033】
本手段によれば、重量物の吊り上げは搬入ポジションにおいて1回のみ行うこととなる。そのため、従来のように、搬入、及び、固定ポジションにおいて、吊り上げを2回も行う必要がなく、その都度、足場や吊り上げ装置の設置が必要となるといった事態も回避することができ、作業性の飛躍的な向上を図ることができる。
【0034】
また、本手段では、重量物は各ガイド装置を介してスムースに鉄骨架台上を移動させることができる。すなわち、鉄骨架台がレールとして、ガイド装置が当該レールを移動する機構として、それぞれ機能するため、ガイド装置、ひいては重量物が鉄骨架台上から逸脱するおそれがない。そのため、ベニヤ板等を敷きながら重量物を移動させたり、次々にコロを渡して細心の注意を払いつつ搬送作業を行なったりする必要のあった従来技術とは異なり、安定した状態で、且つ、容易に固定ポジションまで搬送させることが可能となる。
【0035】
さらに、固定ポジションにおいて、重量物は、吊り上げ装置ではなく、簡易的なジャッキアップ器具を用いることで、その場で持ち上げることができるため、各ガイド装置を鉄骨架台から速やかに取外すことができ、作業時間を短縮させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図3】架台にガイド装置とジャッキアップ装置とが設置された状態を示す斜視図である。
【
図11】爪ジャッキをジャッキアップさせた状態を示す斜視図である。
【
図12】ガイド装置にPACが設置された状態を示す斜視図である。
【
図13】PACの前方側がジャッキアップされる直前の状態を示す斜視図である。
【
図14】PACの前方側がジャッキアップされた状態を示す斜視図である。
【
図15】PACの前方側がジャッキアップされている間に、各ガイド装置が取り外された状態を示す斜視図である。
【
図16】PACの後方側がジャッキアップされている間に、各ガイド装置が取り外された状態を示す斜視図である。
【
図17】PACが固定ポジションに設置された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0038】
先ず、本実施形態において搬入設置の対象である重量物としてのPAC(パッケージエアコン)11について説明する。
【0039】
図2に示すように、重量物としてのPAC11は、略直方体状の筐体12と、筐体12の下面に取付けられた防振装置13とを備えている。防振装置13は、上フレーム14と、吸振体としてのスプリング15と、下フレーム16とを備えている。そして、下フレーム16のうち、各短辺部には、それぞれ2箇所ずつに孔部17が設けられている。
【0040】
尚、筐体12の内部には、図示しない各種機器(モータ、シロッコファンもしくはプラグファン、熱交換器等)が設けられている。PAC11の設置後においては、当該各種機器を稼動させることで、工場等の大型施設であっても、設置箇所周辺の環境条件に適合した最適な気温を確保することが可能となる。
【0041】
次に、上記PAC11を搬入設置するためのシステムについて説明する。本実施形態では、所定の工場の入口部近傍の施設場内への搬入場所から天井クレーンなど揚重装置により、ぶどう棚的床面の搬入口近辺である搬入ポジションに対しPAC11が搬入され、その後工場内の特定の固定ポジション(据付エリア)にまでPAC11が搬送され、当該固定ポジションにて最終的に上記PAC11が設置固定されるようになっている。本実施形態では、前記搬入ポジションから固定ポジションに亘り、一対のレール状の架台1(鉄骨架台)が敷設されている。また、前記搬入ポジションには、図示しない吊り上げ装置が設けられている。吊り上げ装置は、比較的簡易なチェーンブロック等によって構成されており、当該吊り上げ装置によってPAC11が吊り上げられるようになっている。
【0042】
図1に示すように、一対の架台1は、それぞれ、上フランジ2、ウェブ3、及び、下フランジ4を有する溝形鋼5(Cチャンネル)と、当該溝形鋼5を支持する脚部6とを備えている。各架台1は、互いに略同一形状をなし、かつ、互いに平行に延びている。尚、各上フランジ2には、孔部7が所定位置に設けられている。
【0043】
そして、本実施形態では、
図3に示すように、上記架台1に対し、ガイド装置21と、ジャッキアップ装置41とが取付可能となっている。
【0044】
図4、及び、
図5に示すように、ガイド装置21は、ローラ手段22と、第1ガイド23と、第2ガイド24とを備えている。本実施形態では、これら第1ガイド23、第2ガイド24によって、ガイド手段が構成されている。ローラ手段22は、本体25と、本体25の中央部に設けられ、ねじ穴26を具備する台部27と、前後一対で設けられたローラ28とを備えている。尚、本体25には孔部29が4箇所に設けられ、各孔部29に対応するようにして、各ガイド23、24には、孔部30が2箇所ずつ設けられている。
【0045】
また、各ガイド装置21の架台1への設置に際しては、
図6に示すように、まず、上フランジ2(溝形鋼5)の上面に、ローラ手段22を載置させる。その際、各ローラ28が上フランジ2(溝形鋼5)に当接された状態となる。その後、本体25(ローラ手段22)の各孔部29と、各ガイド23、24の各孔部30とを位置合わせした上で、当該各ガイド23、24で、当該本体25を挟持させる。そして、各孔部29、30にボルト31を挿入し、ナット32で締結させることで、ガイド装置21の設置が完了する。その際、ウェブ3(溝形鋼5)と、各ガイド23、24との間には、若干の隙間が生じた状態となっている。
【0046】
図3に示すように、各架台1に対しては、前後に2つずつ、合計4つのガイド装置21が取付けられるようになっている。
【0047】
また、前記ジャッキアップ装置41は、基本的には前記固定ポジションにおいて架台1に取付けられるものであって、架台1に掛架される台座部42と、当該台座部42上に載置される爪ジャッキ43とを備えている。
【0048】
図7、及び、
図8に示すように、台座部42は、左右両側に引掛け部44を具備する板状のステージ45と、各引掛け部44の上面に取付けられる断面L字形状のストッパー46と、各引掛け部44の下方に位置する固定板47と、引掛け部44から離間した側のステージ45の下面に溶接固定された補強アングル48とを備えている。加えて、各引掛け部44には前後2箇所に孔部49が設けられており、当該孔部49に対応して、各ストッパー46には孔部50が、各固定板47には孔部51が、それぞれに2箇所ずつ設けられている。
【0049】
また、ジャッキアップ装置41の架台1への設置(仮設置)に際しては、
図9に示すように、まず、両側の引掛け部44を架台1上に載置させることで、当該ステージ45が一対の架台1の間に掛架される。その後、左右両側において引掛け部44の各孔部49と、ストッパー46の各孔部50と、固定板47の各孔部51とを、それぞれ位置合わせした上で、引掛け部44、及び、ストッパー46と、固定板47とで、上フランジ2(溝形鋼5)を挟持させる。そして、各孔部49、50、51にボルト52を挿入し、ナット53で締結させることで、台座部42の設置が完了する。
【0050】
図10に示すように、爪ジャッキ43は、ベース61と、ジャッキアップ高さを調整する操作部62と、油圧タンク63と、油圧タンク63の内部から鉛直方向に延び上下に出没可能なシャフト64と、シャフト64と連結されるジャッキアップ部65とを備えている。またジャッキアップ部65の下部には前記操作部62とは反対側に突出する爪部66が設けられている。
【0051】
爪ジャッキ43の使用に際しては、
図11に示すように、まず、操作部62を上下に繰り返し動かすことで、シャフト64が上昇する。シャフト64の動きに合わせて、同時にジャッキアップ部65(爪部66)も上昇し、持ち上げ(ジャッキアップ)が行われることとなる。また、持ち上げた後は、爪ジャッキ43の図示しない開放弁を緩めることで、ジャッキアップ部65(爪部66)を下降させることが可能である。
【0052】
次に、上記PAC11の搬入設置に際しての各工程について説明する。
【0053】
搬入設置に先立っては、予め前記搬入ポジションにおいて、上述のとおり各架台1に対し、前後に2つずつのガイド装置21が取付けられる。この取付は、前述したガイド装置21の設置手順に従って行われる。
【0054】
また、予め前記固定ポジションにおいて、架台1に対し、ジャッキアップ装置41が取付けられる。この取付は、前述したジャッキアップ装置41の設置手順に従って行われる。
【0055】
さて、図示しないクレーン等によって工場の入口部近傍の施設場内への搬入場所から揚重されて移動し、ぶどう棚的床面の搬入口近辺である搬入ポジションに搬入されたPAC11は、前記吊り上げ装置としてのチェーンブロックを用いて、搬入口近辺の天井部梁などに吊元を取り吊り上げられる。
【0056】
そして、
図12に示すように、吊り上げられたPAC11の下フレーム16の短辺部に設けられた各孔部17と、各ガイド装置21の台部27のねじ穴26とを位置合わせした上で、下フレーム16(PAC11)を各台部27(各ガイド装置21)に載置させ、各孔部17、各ねじ穴26の上方からボルト71を挿入し、締結させる。これにより、PAC11がガイド装置21に対し取付けられる。その後、PAC11に取付けられていたチェーンブロックが取外される。
【0057】
次に、各ガイド装置21に設置されたPAC11を、手押しすることで、搬入ポジションから固定ポジションへと搬送させる。このとき、各ガイド装置21の各ローラ28が転動することで、PAC11は上フランジ2(溝形鋼5)上を滑らかに移動することとなる。尚、ロープ等を用いてPAC11をけん引することとしてもよい。
【0058】
そして、
図13に示すように、PAC11がそれ自身の設置が予定される固定ポジション付近に到達したならば、今度はPAC11を、正確な固定ポジションに位置するように(下フレーム16に設けられた各ボルト71の下方に、上フランジ2の各孔部7が位置する状態となるように)、動かしながら調整する。その際、台座部41に各ストッパー46が設けられていることにより、各ガイド装置21が架台1の先端から、脱落してしまうといった事態が防止される。その後、爪ジャッキ43の爪部66が、下フレーム16の中央下方に位置するように、当該爪ジャッキ43の位置を調整させる。
【0059】
次に、
図14に示すように、下フレーム16に設けられた各ボルト71のうち前方(図の右方)側の2本を取り外す。そして、爪ジャッキ43を、前述した操作手順に従って、ジャッキアップさせることで、上昇中の爪部66が、前方の下フレーム16に当接し、当該下フレーム16(PAC11)が持ち上げられる。PAC11が持ち上げられている間に、
図15に示すように、前方の2つのガイド装置21を架台1から取り外す。その後、爪ジャッキ43の開放弁を緩めることで、爪部66、及び、前方の下フレーム16(PAC11)をジャッキダウンさせる。これにより、前方の下フレーム16が、上フランジ2上に載置され、当該下フレーム16に設けられた各孔部17の位置と、上フランジ2の各孔部7との位置とが互いに合わさった状態となる。その際、安全性確保のため、各孔部7、17同士を位置合わせした上で、仮止めしておくのが望ましい。
【0060】
次に、
図16に示すように、前方側のジャッキアップ装置41を後方側に移動させ、設置した後、上述した同様の手順にて、今度は、PAC11の後方側のジャッキアップ、各ガイド装置21の取外し、及び、ジャッキダウンといった一連の作業を行う。
【0061】
その後、
図17に示すように、ボルト71を、各孔部7、17に挿入し、図示しないナットで締結させることで、架台1に対してPAC11が固定されることとなり、固定ポジションへのPAC11の設置が完了する。
【0062】
尚、複数のPAC11を搬入設置する場合には、上述の作業を繰り返し行うこととなる。この場合、適宜固定ポジションは適宜異なる位置に変更させれられる。勿論、レール状の架台1を適宜分岐させたり、複数対の架台1を予め設置しておくこととしてもよい。ここで順繰りに複数のPAC11を一対の架台1をレールにして送り込むので、搬入ポジションから最遠に位置させて固定する所定のPAC11が最初に送り込まれて、上述の作業を繰り返し行っていく。
【0063】
以上詳述したように、本実施形態では、PAC11の吊り上げは搬入ポジションにおいて1回のみ行われることとなる。そのため、従来のように、搬入、及び、固定ポジションにおいて、吊り上げを2回も行う必要がなく、その都度、足場や吊り上げ装置の設置が必要となるといった事態も回避することができ、作業性の飛躍的な向上を図ることができる。
【0064】
また、本実施形態では、PAC11は各ガイド装置21を介してスムースに架台1上を移動させることができる。すなわち、架台1がレールとして、ガイド装置21が当該レールを移動する機構として、それぞれ機能するため、ガイド装置21、ひいてはPAC11が架台1上から逸脱するおそれがない。そのため、ベニヤ板等を敷きながらPAC11を移動させたり、次々にコロを渡して細心の注意を払いつつ搬送作業を行なったりする必要のあった従来技術とは異なり、安定した状態で、且つ、容易に固定ポジションまで搬送させることが可能となる。
【0065】
さらに、各ガイド装置21が、ローラ手段22を有しているため、架台1上において、各ガイド装置21を滑らかに移動させることができ、各ガイド装置21に設置されたPAC11を、より迅速に搬送することが可能となっている。
【0066】
加えて、各ガイド装置21は、架台1のウェブ3をガイドする各ガイド23、24を備えている。そのため、架台1上の移動に際して、各ガイド装置21が、架台1と直交する方向へ大きく変位するといった事態を防止することが可能となる。
【0067】
併せて、PAC11の下フレーム16に形成された孔部17と、ガイド装置21の台部27のねじ穴26とを合致させた状態でボルト71で締結することにより、PAC11と各ガイド装置21とを容易かつ確実に固定させることが可能となる。その結果、PAC11をより一層安定した状態で搬送させることができる。
【0068】
また、固定ポジションにおいて、吊り上げ装置ではなく、持ち運び可能な爪ジャッキ43を用いることで、PAC11をその場で持ち上げることができる。このため、各ガイド装置21を架台1から速やかに取外すことができ、作業時間を短縮させることが可能となる。その結果、作業性の飛躍的な向上をより一層図ることができる。
【0069】
また、台座部42は、架台1に対し、着脱可能である。そのため、台座部42を前方、後方の2箇所に設置する必要がない。すなわち、台座部42の必要個数を極力減らすことが可能となり、且つ、台座部42の位置を容易に変更させることが可能となる。加えて、上述したケース以外(例えば、同一架台1上に複数のPAC11を並べて設置する場合)であっても、1つの台座部42の位置を、適宜、移し替えることで柔軟に対応することが可能となる。
【0070】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0071】
(a)上記実施形態では、架台1は、断面C字形状の溝形鋼5(Cチャンネル)を備えることとしているが、その断面形状は特に限定されるものではない。例えば、断面I字形状や断面H字形やT字形状の鋼材を用いることとしても良い。
【0072】
(b)上記実施形態では、重量物としてPAC11を挙げているが、対象となる重量物は、PAC11に限定されるものではない。従って、例えば、大型の冷蔵庫や大型の計器類の搬入設置に適用することも可能である。
【0073】
(c)上記実施形態では、吊り上げたPAC11を、各ガイド装置21に載置させた後、ボルト71を用いて、PAC11を各ガイド装置21に固定させることとしているが、特に固定させなくても良い(単に載置するだけでも良い)。
【0074】
(d)上記実施形態では、一対の架台1に対して4箇所のガイド装置21を設けているが、各架台1に対して少なくとも前後一対で設けられていれば、設置箇所数は6箇所であっても8箇所であっても良い。
【0075】
(e)上記実施形態では、吊り上げ装置として、チェーンブロックを用いているが、特にチェーンブロックでなくても良い。例えば、ワイヤーホイストや、吊りフックが取付けられたフォークリフトを用いることとしても良い。
【0076】
(f)上記実施形態では、ジャッキアップ器具として、爪ジャッキ43を用いているが、特に爪ジャッキ43でなくても良い。例えば、テーブルリフトや、車載用のガレージジャッキを用いることとしても良い。
【符号の説明】
【0077】
1…架台、11…重量物としてのPAC、17…孔部、21…ガイド装置、22…ローラ手段、23…第1ガイド、24…第2ガイド、26…ねじ穴、27…台部、28…ローラ、41…ジャッキアップ装置、42…台座部、43…爪ジャッキ。